説明

反応性金属酸化物の抽出方法

【課題】ボーキサイト鉱石と赤泥残渣からのアルミナ、イルメナイトからの二酸化チタンの無廃棄物抽出方法を提供する。
【解決手段】C飽和鋳鉄合金の融点より高温で酸化鉄を還元して金属鉄と、高C鉄合金とAlおよびTi金属酸化物に富むスラグを生成し、炭酸アルカリで処理してアルミン酸アルカリおよびチタン酸塩を形成する。アルミニウムアルカリを水浸出により分離し、CO2吹き込みによりアルミナ水酸化物を沈殿させる。水浸出の残渣を硫酸で処理し、TiO2を加水分解ルートにより沈殿させる。金属のほとんどを回収し、pH4〜5で、土壌調整に使用できるケイ酸質残渣を生成する。炭酸アルカリの存在下で酸化的焙焼を行い、焙焼物の水浸出を行い、TiO2をpH4未満の調節条件下で選択的に沈殿させ、TiO2に富む酸化物をチタニア鉄鉱石/残渣物質から選択的に分離する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタニアおよび/またはアルミナに富む混合物から金属酸化物を回収する方法および二酸化チタン含有組成物から二酸化チタンを回収する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアルミナおよびTiO2抽出方法は埋立地で処分される有害廃棄物を多量に生成する。埋立地の管理は、環境保護規制がますます厳しくなりつつあるため、大きな問題となっている。
【0003】
ボーキサイト鉱からアルミナを抽出するのに用いられているベイヤー(Bayer)法は多くの文献等により報告されている[例えば、「ボーキサイト残渣処理および利用のための技術ロードマップ」2000年2月、アルミニウム協会、http:www.aluminum.org参照(Technology Roadmap for Baxite Residue Treatment and Utilisation,Feb 2000,The Aluminum Association see http:www.aluminum.org);非特許文献1:ファティ・ハバシ著「抽出金属学ハンドブック」第II巻、ワイリー−ブイ.シー.エイチ.、ベルリン、1997年(Ed.Fathi Habashi, Hand Book of Extractive Metallurgy, Vol.II, Publ:Wiley−VCH,Berlin,1997);非特許文献2:アダムソン等著「ベイヤー法デザインの基礎原理、アルミニウムの金属学」第I巻、インターサイエンス社、ニューヨーク、1963年(Adamson et al,Basic Principles of Bayer Process Design,Extractive Metallurgy of Aluminium,Vol.I,Publ.:Interscience,New York,1963);非特許文献3:カーク−オスマー著「化学技術の百科事典」第1巻第4版、ジョン・ワイリー社、ニューヨーク、1991−98年(Kirk−Othmer,Encyclopaedia of Chemical Technology, Vol.1,4th edition,John Wiley, New York,(1991−98);および非特許文献4:クロケット著「ボーキサイト、アルミナおよびアルミニウム」エイチ.エム.エス.オー.社、ロンドン、1978年(Crockett,Bauxite, Alumina and Aluminium, Publ.:H.M.S.O.,London(1978))]。ベイヤー法は赤泥として知られる高アルカリ性残渣を多量に生成する。多量の赤泥の処分は大きな問題となっている。アルカリ性浸出物の表面および地下水への浸透と維持管理が不適切な埋立地から飛来する乾燥ダストは深刻な環境問題を惹き起こしている。環境規制が厳しい国々では、赤泥処分の総コストはトン当り5ドル($)になることがあり、アルミナの現在の販売価格の少なくとも5%になることがある。もっとも好適なボーキサイト堆積物および濃縮物からのアルミナの抽出の最高抽出効率は55%と60%の間を変動している。このことは少なくとも45%のアルミナがベイヤー法により生じた残渣のなかに閉じ込められていることを意味する。
【0004】
種々の技術が赤泥からアルカリ、アルミナ、Fe/F23、TiO2、SiO2等の物質を回収し、レンガや耐火物を製造するために開発されている(例えば、非特許文献5:タクール等著「赤泥の分析および利用」ワイリー・イースタン社、ニュー・デリー、1994年(Thakur et al,Red Mud Analysis and Utilization,Publ:Wiley Eastern Limited,New Delhi,1994);特許文献1:米国特許第6、248、302号明細書;特許文献2:米国特許第5、106、797号明細書;特許文献3:米国特許第4、668、485号明細書;特許文献4:米国特許第3、989、513号明細書)。しかしながら、これらの技術のほとんどがコスト高であり工業的に使用されていない。ほとんどのアルミナ産業では、赤泥処分の一般的方法は、アルミナを高度に濃厚化してアルミナとソーダを回収した後、湿スラリー貯蔵または乾燥貯蔵している(www.alcoa.com.au/environment/bauxiter.shtml;www.former.alcan.com/Evironment.nsf/SubTopics−E/raw?OpenDocum)。可能な限り、赤泥はまた海洋でまたは河川の流域で処分される。しかしながら、この慣行は、海洋生態系に長期的な影響を与えるため徐々に廃止されている。乾燥貯蔵は湿スラリー貯蔵法よりもいくつかの長所を有するが、この方法は高額の初期投資が必要である。乾燥貯蔵法では、高度濃厚化後に、スラリーを特別設計の池で天日乾燥する。これが満杯になると、これらサイトを覆い、土地を他の用途に復元し、追跡監視プログラムを設置して環境適合性を保証している。
【0005】
精錬により天然ガスを用いて種々の鉄酸化物の還元に関する研究も行われている。しかしながら、鉄の分離は、二酸化チタンの回収にとって依然として大きな問題である(例えば、タクール[既出];および非特許文献6:スリカント等著「TMS 第130回年次総会および会議」米国ニュー・オルリーンズ、2001年2月11−15日(Srikanth et al,TMS 130th Annual meeting and conference,New Orleans,USA,Feb.11−15,2001)。
【0006】
イルメナイト鉱は金属TiおよびTiO2の主要な入手源である。イルメナイト鉱は世界のTi埋蔵量の90%を占め、残り10%は(ルチルとして知られる)TiO2として天然に産する。TiO2自体は(特に、ペンキ、塗料、紙、印刷インク、合成繊維および医薬において)顔料として用いられ、さらにガラス、ガラス・セラミックス、電気セラミックスおよび溶接フラックスに用いられている重要な無機物である。鉄酸化物がイルメナイト中に存在すると廃棄物が生じたり、顔料の品質に影響を与えたりする。
【0007】
現在、イルメナイト(FEO.TiO2)は化学的または熱的方法により合成ルチルに転換される(例えば、非特許文献1:ファティ・ハバシ著「抽出金属学ハンドブック」第II巻、ワイリー−ブイ.シー.エイチ.、ベルリン、1997年(Ed.Fathi Habashi, Hand Book of Extractive Metallurgy, Vol.II, Publ:Wiley−VCH,Berlin,1997)。鉄は塩酸または硫酸で浸出することが可能であり、後には90%〜96%の合成ルチルが残る。浸出物は池または海で処分され、鉄の大半が失われてしまう。炭素還元法では、イルメナイトは電気アーク炉内で約1650℃で還元されて銑鉄の形の金属FeとTiO2を生成する。融点を下げるために若干のFeOを意図的に残している。スラグのTiO2含有量はイルメナイト鉱の鉱物学的性質によって65%と80%の間を変動することがある。次いで、高温塩素化および酸素化工程または(低品質スラグ用の)硫酸を用いる浸出とが高品質のTiO2を製造するのに必要とされる(例えば、特許文献5:米国特許第5、068、093号明細書、特許文献6:米国特許第5、997、606号明細書、および特許文献7:米国特許第6、090、354号明細書)。高品質TiO2はルチルからも製造される。ルチルの塩素化を用いてTiClを生成し、次いでこれを酸化してTiO2を製造する。塩酸および硫酸のような物質の使用およびこれらの方法により生成された多量の酸廃棄物の処分に関連する環境問題を考慮すると、新しい、より環境に受け入れられ易い、TiO2抽出のアプローチを開発することが必須である。
【0008】
イルメナイトをソーダとともに炭素を用いた還元雰囲気での焙焼について少数の実験室規模の研究がなされているがいずれも成功していない。TiO2の収率は50%未満である。この方法の大きな欠点は、鉄が金属の形で分離されることも、あるいは浸出可能な生成物が生成されることもないことである(例えば、非特許文献1:ファティ・ハバシ著「抽出金属学ハンドブック」第II巻、ワイリー−ブイ.シー.エイチ.、ベルリン、1997年(Ed.Fathi Habashi, Hand Book of Extractive Metallurgy, Vol.II, Publ:Wiley−VCH,Berlin,1997)。イルメナイトを還元して鉄とTiO2を抽出することが広範囲に研究されている。しかしながら、還元された鉱石からTiO2を抽出すると、Ti−オキシカーバイド相および酸化物相が微細に分布するので不都合である(スリンカト[既出])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6、248、302号明細書
【特許文献2】米国特許第5、106、797号明細書
【特許文献3】米国特許第4、668、485号明細書
【特許文献4】米国特許第3、989、513号明細書
【特許文献5】米国特許第5、068、093号明細書
【特許文献6】米国特許第5、997、606号明細書
【特許文献7】米国特許第6、090、354号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ファティ・ハバシ著「抽出金属学ハンドブック」第II巻、ワイリー−ブイ.シー.エイチ.、ベルリン、1997年(Ed.Fathi Habashi, Hand Book of Extractive Metallurgy, Vol.II, Publ:Wiley−VCH,Berlin,1997)
【非特許文献2】アダムソン等著「ベイヤー法デザインの基礎原理、アルミニウムの金属学」第I巻、インターサイエンス社、ニューヨーク、1963年(Adamson et al,Basic Principles of Bayer Process Design,Extractive Metallurgy of Aluminium,Vol.I,Publ.:Interscience,New York,1963)
【非特許文献3】カーク−オスマー著「化学技術の百科事典」第1巻第4版、ジョン・ワイリー社、ニューヨーク、1991−98年(Kirk−Othmer,Encyclopaedia of Chemical Technology, Vol.1,4th edition,John Wiley, New York,(1991−98);およびクロケット著「ボーキサイト、アルミナおよびアルミニウム」エイチ.エム.エス.オー.社、ロンドン、1978年(Crockett,Bauxite, Alumina and Aluminium, Publ.:H.M.S.O.,London(1978))
【非特許文献4】クロケット著「ボーキサイト、アルミナおよびアルミニウム」エイチ.エム.エス.オー.社、ロンドン、1978年(Crockett,Bauxite, Alumina and Aluminium, Publ.:H.M.S.O.,London(1978))
【非特許文献5】タクール等著「赤泥の分析および利用」ワイリー・イースタン社、ニュー・デリー、1994年(Thakur et al,Red Mud Analysis and Utilization,Publ:Wiley Eastern Limited,New Delhi,1994)
【非特許文献6】スリカント等著「TMS 第130回年次総会および会議」米国ニュー・オルリーンズ、2001年2月11−15日(Srikanth et al,TMS 130th Annual meeting and conference,New Orleans,USA,Feb.11−15,2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、金属酸化物を単離する前に鉄の大部分を分離することにより鉄含有混合物からの金属酸化物の回収を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、一態様によれば、少なくとも1種の金属酸化物をチタニア鉄またはアルミナ鉄混合物から回収する方法であって、
(A)還元剤の存在下で前記混合物を精錬して溶融スラグを生成する工程であって、それによって、前記チタニア鉄またはアルミナ鉄混合物中に存在する鉄の実質的に全部が還元されて前記溶融スラグ中で溶融金属鉄になり、前記還元剤は溶融鋳鉄を含み、または溶融鋳鉄であり、前記金属鉄は鋼である、工程と、
(B)前記溶融スラグにアルカリを添加する工程と、
(C)前記溶融スラグから溶融鉄を単離して残留スラグを生成する工程と、
(D)前記残留スラグから前記金属酸化物を回収する工程と、
を含む方法を提供する。
【0013】
「チタニア鉄混合物」はチタニア(TiO2)を含む、化合物の形の金属酸化物種(スピーシーズ)と、酸化第一鉄種(スピーシーズ)または酸化第二鉄種(スピーシーズ)のような、少なくとも1種の鉄種(好ましくはFeO、Fe23またはFe34のような鉄酸化物)の混合物を意味する。チタニア鉄混合物は合成または(好ましくは)天然のもの、例えば粉末、鉱石または無機物であってもよい。好ましいのは、チタンに富む物質、例えばチタニア鉄無機物または鉱石(例えば、イルメナイト浜砂、天然ルチルまたはペロブスカイト)である。好ましくは、チタニア鉄混合物はさらにアルミナを含む。好ましくは、チタニア鉄混合物はさらにシリカを含む。
【0014】
「アルミナ鉄混合物」はアルミナ(Al23)を含む金属種(例えば、金属元素、化合物または合金の混合物)と、酸化第一鉄種(スピーシーズ)または酸化第二鉄種(スピーシーズ)のような、少なくとも1種の鉄種(好ましくはFeO、Fe23またはFe34のような鉄酸化物)と、回収すべき金属酸化物の混合物を意味する。アルミナ鉄混合物は合成または(好ましくは)天然のもの、例えば粉末、鉱石または無機物であってもよい。好ましいアルミナ鉄混合物はアルミニウムに富む混合物、例えばアルミニウム無機物または鉱石(例えば、ボーキサイト)あるいは赤泥(またはボーキサイトと赤泥の混合物)である。好ましくは、アルミナ鉄混合物はさらにチタニアを含む。好ましくは、アルミナ鉄混合物はさらにシリカを含む。
【0015】
本発明の方法は完全な、効率的なかつ経済性の高い、従来の方法に伴う環境問題を軽減する、金属酸化物の再生方法を提供する。この方法は好適には実質的に廃棄物を出さない方法にすることが可能である。
【0016】
本発明の一実施形態では、金属酸化物はアルミナ、TiO2およびFe23の1種以上である。
【0017】
本発明の一実施形態は、さらに1種以上の金属水酸化物を回収することを含む。
【0018】
本発明の方法は、一実施形態では、前記少なくとも1種の金属酸化物は少なくとも2種の金属酸化物TiO2とAl23である。
【0019】
工程(A)において、前記チタニア鉄またはアルミナ鉄混合物中に存在する鉄(例えば、酸化鉄)の大部分(75重量%未満、例えば70重量%〜75重量%)が還元されて前記溶融スラグ中で溶融金属鉄になってもよい。
【0020】
好ましくは、前記金属鉄は鋼(例えば、高炭素鋼)である。このために、還元剤は、好ましくは溶融鋳鉄を含み(または、であり)、前記工程(A)は好ましくは溶融鋳鉄浴中で行われる。溶融鋳鉄中にもともと存在する炭素とケイ素は還元剤として作用し、例えば式1および式2に示すように(SiO2のような脈石無機酸化物を主に含む)溶融スラグを生成する。
【0021】
【化1】

【0022】
チタニア鉄混合物またはアルミナ鉄混合物の詳しい組成によって、工程(A)は有利に鉄を高炭素鋼に転換し追加のエネルギー消費に対する要求を増すことがない。その理由は反応(1)および(2)および発生したCOの燃焼は全ΔHが−305Kcal/モルの発熱反応である。好ましくは、金属鉄は0.8%〜1.0%C鋼である。これは4%〜4.5%Cの鋳鉄から導くことが可能であり、スラグも溶融状態にとどまる工程(A)の間、高C鋼の融点を約1475℃に維持することを可能にする。鋼中の炭素含有量は低下させることが可能であるけれども、その場合は液体状金属の温度を維持するために追加のエネルギーが必要となる。
【0023】
好適な一実施形態では、還元剤は炭素源を含む。炭素源は固形炭素、グラファイト(石墨)、微粉石炭または粉コークスであってもよい。上記工程が浴中の溶融鋳鉄の存在下に行われるときは、炭素源は有利に反応(1)および(2)を支援して平衡に到達させる。
【0024】
好適な一実施形態では、前記工程(A)は還元剤と石灰(すなわちCaOまたはCa(OH)2)の存在下で前記混合物を精錬することを含む。下記式(6)に示すように、石灰を添加すると式(1)により形成されたシリカと混合物中に存在していればそのシリカが固定され、工程(B)におけるケイ酸アルカリの形成においてアルカリの消費が減少する。過剰のシリカはこのようにして、例えば等量比の石灰をアルミン酸ケイ酸ナトリウム・スラグ中に添加することにより固定することが可能である。SiO2が存在すると工程(D)(例えば、水による急冷の間)におけるTiO2の分離が容易になる。しかしながら、過剰量の石灰を用いると、アルミン酸ナトリウムとアルミノケイ酸カルシウムの間のアルミナの選択的分配が容易になる。アルミノケイ酸カルシウム・スラグの形成はアルミナを完全に抽出するためには望ましくない。CaOを添加するとアルミン酸ナトリウムを形成することにより、アルミナとシリカの化学的会合が酸化ナトリウムに変化するが、一方TiO2は純粋な形態(すなわちTiO2飽和スラグ)とケイ酸カルシウム相とに不均化する。
【0025】
アルミナ鉄混合物がボーキサイトまたは赤泥である場合、石灰と過剰炭素をそこに混合し、工程(A)において溶融鋳鉄浴内に挿入するのが好ましい。チタニア鉄混合物がイルメナイトである場合、工程(A)において鉱石を鋳鉄浴中に挿入して溶融鋳鉄中に存在する炭素とケイ素により鉄酸化物の還元を促進する。
【0026】
工程(B)では、アルカリを理論量の50%過剰量以下の量で溶融スラグに添加することが可能である。好ましいアルカリは1種以上の酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩または炭酸水素塩(特に好ましくは、炭酸塩)である。炭酸塩は周期律表Ia族またはIIaの金属またはそれらの混合物の炭酸塩であってもよい。好ましくは、炭酸塩は炭酸ナトリウム(ソーダ)および炭酸カリウム(カリ)からなる群から選ばれる。好適な一実施形態(例えば、アルミナ鉄混合物がボーキサイトまたは赤泥である場合)では、炭酸塩は1500℃を越える温度でスメルト(精錬溶融物)に添加することが可能である。炭酸塩はスラグの流動性を増加し、金属の分離を容易にする。二酸化チタンの場合、炭酸塩を900℃未満の温度でスメルトに添加してチタン酸ナトリウム相をとアルミン酸名とリム相を形成することが可能である。
【0027】
例えば、耐火性酸化物(refractory oxide)と炭酸アルカリの反応によりアルミン酸塩、珪酸塩およびチタン酸塩が式(3)〜(5)に示すように形成される。
【0028】
【化2】

【0029】
チタニア鉄混合物がイルメナイト出ある場合、前記工程(A)は前記混合物を理論量比で50%以下のアルカリ/アルミナ混合物またはアルミン酸ナトリウムの存在下で精錬することを含む。これによりスラグ中のアルミン酸ナトリウム形成が促進され、従って、スラグは純粋なTiO2またはFeO.TiO2スラグよりも融点がずっと低い。アルミン酸ナトリウム・スラグは、また、残りの未還元酸化鉄およびシリカの非常によいシンク(sink)となる。
【0030】
工程(C)において、溶融鉄(例えば、鋼)と残留スラグは好ましくは別々にタッピングされる。好ましくは残留スラグのタッピングの間にアルカリが添加される。好ましくは、アルカリは量を調節することにより添加される。これにより、未反応のAl23とTiO2が有利にアルミン酸塩とチタン酸塩に転換され、一方耐火物ライニングに対するアルカリの攻撃の危険も最低限になる。
【0031】
好適な一実施形態では、工程(D)は
(D1)前記残留スラグに水溶液を添加し、
(D2)金属酸塩残渣から金属酸塩溶液を分離し、
(D3)前記金属酸塩からおよび/または前記金属酸塩残渣から前記金属酸化物を単離する
ことを含む。
【0032】
この水溶液は水または希釈アンモニア溶液であってもよい。水溶液は昇温されていてもよい。金属酸塩溶液はアルミン酸塩溶液であってもよい。金属酸塩残渣はチタン酸塩および/または珪酸塩を含んでいてもよい。
【0033】
工程(D2)はろ過により行うことが可能である。金属酸塩残渣を十分に洗浄してすべての金属酸塩溶液とアルカリを回収することが可能である。
【0034】
一実施形態では、工程(D3)は
(D3a)前記金属酸塩溶液から金属水酸化物を沈殿させる
ことを含む。
【0035】
工程(D3a)は酸を添加することにより行うことが可能である。典型的には、この酸は無機酸(例えばフッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、酸性酸化物およびそれらの混合物からなる群から選ばれる無機酸)である。好ましくは、酸は酸性酸化物、特に好ましくは二酸化炭素である。例えば、工程(D3a)はCO2ガスを前記金属酸塩溶液を通して(または蓚酸を通過させてから)前記金属塩溶液に吹き込むことを含んでいてもよい。好ましくは、CO2ガスは工程(A)の間に生成される。
【0036】
金属水酸化物沈殿は十分に洗浄される。工程(D3a)において形成された水酸化アルミニウムをか焼してアルミナを生成することが可能である。
【0037】
一実施形態では、前記工程(D3)は
(D3b)前記金属酸塩残渣を酸浸出して酸浸出物を生成し、
(D3c)前記酸浸出物から前記金属酸化物の水和塩を選択的に沈殿させ、かつ
(D3d)前記水和塩を前記金属酸化物に転換する
ことを含んでいてもよい。
【0038】
前記工程(D3b)は
(D3b1)前記金属酸塩残渣を酸性にしてスラリーを生成し、
(D3b2)前記スラリーを加水分解し、
(D3b3)不溶性残渣を分離する
ことを含んでいてもよい。
【0039】
工程(D3b1)において、前記金属残渣を酸(例えば、硫酸)の中で分解して前記工程(D3b3)においてろ過して不溶性残渣(例えば、珪酸塩)を分離することが可能である。当業者によく知られている慣行に従って、前記工程(D3c)において、pHを1に調整し、次いで前記ろ過された溶液を加水分解して水和酸化チタンを生成する。ろ過され、洗浄された沈殿を(工程D3dにおいて)か焼して顔料等級のTiO2を生成する。ろ液は酸分解工程において再利用することが可能である。
【0040】
不溶性残渣は種として珪酸塩からなり、pHは5〜6である。これは中和してpH7にすることが可能であり、K+イオンを含む土壌調整剤として有益に処分することが可能である。
【0041】
本発明の実施形態の種々の段階からの廃水およびろ液を(前記工程(A)および(B)の間に生成された)CO2ガスで処理して炭酸アルカリを回収することが可能であり、回収された炭酸アルカリは次に工程(B)において再利用することが可能である。
【0042】
本発明は、さらに、イルメナイトおよび他の酸化チタン源からのTiO2 抽出の改善されたルートを提供することを目的とする。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、酸化チタン含有生成物から二酸化チタンを回収する方法であって、
(a)アルカリ金属炭酸塩およびアルミナ含有物質の存在下に前記組成物を焙焼して焙焼された塊を生成し、かつ
(b)前記焙焼された塊から酸化チタンを回収する
ことを含む方法を提供する。
【0044】
本発明の方法は廃棄物の量を実質的に減少させる。
【0045】
前記酸化チタン含有組成物は合成または(好ましくは)天然のもの、例えば粉末、鉱石または無機物であってもよい。好ましいのは、酸化チタン含有無機物(例えば、イルメナイト、天然ルチルまたはペロブスカイト)である。
【0046】
前記アルカリ金属炭酸塩は炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムであってもよい。アルカリ金属炭酸塩の量はアルカリ金属チタン酸塩とアルカリ金属アルミン酸塩の形成に基づいて計算することが可能である。抽出効率をよりよくするために、理論量比に対して50%過剰量以下の炭酸アルカリを使用する。
【0047】
前記アルミナ含有物質はアルミナであってもよく、このアルミナは典型的には前記工程 (a)に10重量%〜30重量%の量で存在する。アルミン酸塩(例えば、NaAlO2 )を用いてもよい。
【0048】
前記工程(a)は800℃〜1250℃の範囲内の温度で行うことが可能である。好ましくは、前記工程(a)は900℃未満で行われて、水性、アルカリまたは酸媒体において分離することが困難なチタン酸アルカリ複塩の形成を減少させることが可能である。
【0049】
前記工程(b)は、
(b1)前記焙焼された塊に水性媒体を添加して水溶液および不溶性残渣を生成する
ことを含んでいてもよい。
【0050】
前記水性媒体は水であってもよい。典型的には、水を昇温された温度で用いる(例えば、熱水)。
【0051】
前記方法は、さらに、
(b2)前記不溶性残渣を酸浸出して酸浸出物を生成し、かつ
(b3)前記酸浸出物から酸化チタンを回収する
ことを含んでいてもよい。
【0052】
前記不溶性残渣を酸容液(例えば、5重量%〜20重量%鉱酸(例えばHCL/H2SO4)溶液)で浸出して、鉄化合物を除去し、チタン酸ナトリウムを分解してTiO2 にすることが可能である。溶解された鉄は溶液のpHを調整することにより分離することが可能である。ろ過され、洗浄された残渣は90%〜95%のTiO2 からなることがある。さらにこのTiO2 の精製を行うことが可能である。例えば、さらなる精製は低温焙焼により硫酸水素アルカリを用いて、または電解精製技術を用いて行うことが可能である。
【0053】
好適な一実施形態では、前記方法は、さらに
(c)前記水溶液からアルミナ含有物質(好ましくはアルミナ)を回収する
ことを含む。
【0054】
前記工程(c)は酸の添加により行うことが可能である。典型的には、この酸は無機酸(例えばフッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、酸性酸化物およびそれらの混合物からなる群から選ばれる無機酸)である。好ましくは、この酸は酸性酸化物、特に好ましくは二酸化炭素である。例えば、前記工程(c)はCO2 ガスを前記金属酸塩溶液を通して(または蓚酸を通過させてから)前記金属塩溶液に吹き込むことを含んでいてもよい。好ましくは、CO2 ガスは工程(A)の間に生成される。
【0055】
好適な一実施形態では、前記方法は、さらに
(d)前記工程(a)において精製された二酸化炭素を回収し、かつ
(e)前記二酸化炭素をアルカリ金属炭酸塩に転換する
ことを含む。
【0056】
前記工程(c)〜(e)において回収された前記アルミナ含有物質(例えば、アルミナ)および/またはアルカリ金属炭酸塩は有利に再利用することが可能であり、それによりこれらの実施形態はコスト的に有望である。炭酸塩を再生することで、上述の方法は環境的に安全であり、温室効果ガスCO2 の発生が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1−a】実施例IおよびIIにおいて実施される方法を説明する概略図である。
【図1−b】チタニア鉄廃棄物について実施される方法を説明する概略図である。
【図2】実施例IIIにおいて実施される方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に添付図面を参照して本発明を非限定的な例により説明する。
【0059】
実施例I:ガーナ産ボーキサイト鉱石
図1は実施例1において実施される方法を説明する概略図である。
【0060】
Si1%および炭素4.2%を含有する灰色鋳鉄を誘導炉内で溶融した。ガーナ産ボーキサイト鉱石(概略組成:Al23 55%、Fe23 12%、TiO2 2%、SiO2 2%、および水分)を石灰および過剰の炭素と均一に混合し、溶融浴に徐々に添加した。浴の温度を調整して金属含有スラグを溶融状態に維持した。
【0061】
炭酸ナトリウムまたはカリウムを還元の終わりに添加し(理論量の20%過剰)、流動スラグをタッピングした。スラグを熱水中で分解し、ろ過した。ろ液を二酸化炭素で酸性にして水溶性アルミン酸ナトリウム/カリウムをAl(OH)3の沈殿に転換した。Al(OH)3をろ過し、か焼して純粋なAl23を生成した。アルミナの抽出効率はほぼ65%であった。残存するアルミナはアルミノケイ酸複塩を形成した。ろ液を濃縮して炭酸ナトリウムを回収した。
【0062】
二酸化チタン(TiO2)を含有する残渣を98%H2SO4と混合してスラリーを調製した。残渣に対するH2SO4の比率は、加水分解により生成されたサスペンジョン中のH2SO4のTiO2に対する重量比が2〜2.5に維持されるように選択した。約75%のTiO2を抽出した。分解により得られたスラリーを水に溶解した。ケイ酸塩を含有する溶解しなかった固形物質をろ過により完全に除去した。酸化チタン水和物を375K〜390Kの範囲の温度でろ液から加水分解により沈殿させた。酸化チタン水和物を溶液からろ過し、1050〜1300Kの範囲の温度でか焼して純粋な酸化チタンを生成した。
【0063】
(図1−bは、イルメナイト等のチタニア鉄廃棄物について実施された、実施例Iと図1−aの方法の類似方法を説明する概略図である。)
【0064】
実施例II:(赤泥)
図1は実施例IIにおいて実施された方法を説明する概略図である。
【0065】
赤泥(概略組成:Fe23 46%、Al23 22%、TiO2 8%、MgOおよびCaO 3〜4%、および点火時の損失 10〜12重量%)を過剰の石灰および炭素とともに灰色鋳鉄浴に挿入した。炭酸ナトリウム/カリウム(理論量比の20%過剰)をタッピング前にスラグに添加した。上述の実施例Iについて記載したのと同様に実験を行った。アルミナの抽出効率は75%を越えていた。この方法で約75%のTiO2を抽出した。残酸はアルミノケイ酸複塩を含有していた。
【0066】
この場合に得られた赤泥はカリウム・イオンの形でアルカリを含み、肥料または土壌調整剤として使用することができない赤泥中のソーダの有害な影響を示さない。
【0067】
実施例III:(イルメナイトのアルカリ焙焼)
図2は実施例IIIにおいて実施される方法を説明する概略図である。
【0068】
TiO2 63%、Fe23 32%、およびAl23 2%を含有するイルメナイト鉱石をアルミナ10%および過剰の炭酸アルカリと混合し、空気中で1200℃で2時間焙焼した。炭酸ナトリウムまたはカリウムを添加(理論量比Na2O:TiO2の20%過剰)した。焙焼された塊を水で浸出し、溶液をろ過して残渣を分離した。ろ液を二酸化炭素で酸性にして水溶性アルミン酸ナトリウム/カリウムをAl(OH)3の沈殿に転換した。Al(OH)3をろ過し、第1の工程で再利用した。ろ液を濃縮して炭酸ナトリウムを回収した。二酸化チタン(TiO2)を含有する残渣を5%HCl溶液で浸出した。残渣をろ過し、酸溶液で洗浄し、次いで水で洗浄した。残渣中の二酸化チタンの濃度はこの方法の終点で90%より高く増加した。
【0069】
実施例IV:イルメナイト焙焼実験
イルメナイト鉱石(Ill−1)および酸化イルメナイト(Ill−oxi)鉱石(空気中で1200℃で2時間熱処理されたもの)を空気中で焙焼した。
【0070】
【表1】

【0071】
焙焼したサンプルを最初に浸出し、熱水中でろ液のpHが約7に達するまで洗浄した。次いで、残渣を浸出し、5%HCl酸溶液で洗浄した。各段階からのサンプルをオーブンで100℃で3時間乾燥させ、次いでXRFで分析した。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の金属酸化物をチタニア鉄またはアルミナ鉄混合物から回収する方法であって、
(A)還元剤の存在下で前記混合物を精錬して溶融スラグを生成する工程であって、それによって、前記チタニア鉄またはアルミナ鉄混合物中に存在する鉄の実質的に全部が還元されて前記溶融スラグ中で溶融金属鉄になり、前記還元剤は溶融鋳鉄を含み、または溶融鋳鉄であり、前記金属鉄は鋼である、工程と、
(B)前記溶融スラグにアルカリを添加する工程と、
(C)前記溶融スラグから溶融鉄を単離して残留スラグを生成する工程と、
(D)前記残留スラグから前記金属酸化物を回収する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記チタニア鉄混合物はイルメナイト、ルチルまたはペロブスカイトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミナ鉄混合物はアルミニウム無機物、鉱石または赤泥であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミナ鉄混合物はボーキサイトまたは赤泥であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属酸化物はアルミナ、TiOおよびFeの1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらに、
1種以上の金属水酸化物を回収することを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の金属酸化物は少なくとも2種の金属酸化物TiOとAlであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属鉄は0.8%〜1.0%炭素鋼であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤は炭素源を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(A)は前記混合物を還元剤と石灰の存在下で精錬することを含むことを特徴とする請求項1〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリは炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭酸塩は周期律表Ia族またはIIa族の金属あるいはこれらの混合物の炭酸塩であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炭酸塩は炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選ばれることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記チタニア鉄混合物はイルメナイトであり、前記工程(A)は理論量の50%以下のアルカリ/アルミナ混合物またはアルミン酸ナトリウムの存在下で前記混合物を精錬することを含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記チタニア鉄混合物は
前記工程(C)において、前記溶融鉄および残留スラグは別々にタッピングされることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記残留スラグのタッピングの間、アルカリを添加量調節することにより添加することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(D)は
(D1)前記残留スラグに水溶液を添加し、
(D2)金属酸塩残渣から金属酸塩溶液を分離し、
(D3)前記金属酸塩からおよび/または前記金属酸塩残渣から前記金属酸化物を単離する
ことを含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(D3)は
(D3a)前記金属酸塩溶液から金属水酸化物を沈殿させる
ことを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(D3a)は
COガスを前記金属酸塩溶液を通して前記金属塩溶液に吹き込む
ことを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記COガスは前記工程(A)の間に生成されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(D3)は
(D3b)前記金属酸塩残渣を酸浸出して酸浸出物を生成し、
(D3c)前記酸浸出物から前記金属酸化物の水和塩を選択的に沈殿させ、かつ
(D3d)前記水和塩を前記金属酸化物に転換する
ことを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記工程(D3b)は
(D3b1)前記金属酸塩残渣を酸性にしてスラリーを生成し、
(D3b2)前記スラリーを加水分解し、
(D3b3)不溶性残渣を分離する
ことを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図1−a】
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【図1−b】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−121798(P2012−121798A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275827(P2011−275827)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2006−516420(P2006−516420)の分割
【原出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【出願人】(505465438)ザ ユニヴァーシティ オヴ リーズ (2)
【Fターム(参考)】