説明

反応槽及び散気装置

【課題】
散気孔で付着物の除去効果を均一化でき、薬液の購入コストや管理の必要がなく、処理水質へ悪影響を及ぼさない散気孔洗が行える反応槽及び散気装置を提供する。
【解決手段】
反応槽24内に浸漬された複数の平膜28と、平膜28で膜ろ過された処理水を取り出すための配管30と、複数の平膜28の下方に設置され、複数の散気孔12を有する散気管10と、散気管10内に散気するための空気を送る注入装置と、散気管10内に設けられ散気孔12の付着物の剥離,除去部とを有する散気装置と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬型の膜モジュールを用いた反応槽及び散気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浸漬型の膜モジュールを用いた下水処理装置として、例えば、複数の外圧式固液分離平膜を、反応槽内に膜面が垂直となるよう配置するものがある。このような下水処理装置では、反応槽の下部に設置された散気管から空気気泡を曝気している。この空気気泡の曝気の目的は、反応槽内の活性汚泥を構成する微生物へ酸素を供給し、気泡上昇に伴って生成される水流により膜表面を洗浄して膜面の付着物を除去し、目詰まりを抑制することである。
【0003】
このような下水処理装置では濁質成分の流出を防ぐことが可能であるため、最終沈殿池で固液分離する場合と比べて活性汚泥の濃度を高くして運転することが可能である。その結果、装置を小型化でき、さらに発生汚泥を低減することが可能である。
【0004】
膜分離活性汚泥法では、活性汚泥濃度が高いことや、一定以上の大きさの気泡でなければ膜面の洗浄効果が得られないことから、散気管の散気孔の径は3〜10mmと比較的大きくする必要があり、一般に、このサイズの複数の孔をパイプに空けた構造の散気管が用いられる。
【0005】
膜表面の洗浄効果にばらつきが生じないように、散気管はそれぞれの散気孔から均一に気泡が反応槽内へ注入されるように設計,製作される。しかし、連続運転をしていると散気孔へ徐々に固形物が付着する。これは、加圧空気の温度が高いので、活性汚泥が乾燥することが原因の一つと考えられる。
【0006】
固形物が付着した散気孔では、通過する空気の流量が減少するため、散気孔の外側における活性汚泥液の並行流速度が低下し、付着物の付着がさらに加速される。その結果、散気孔ごとの付着物の量に差異が生じ、散気量の差異が生じて膜表面の洗浄が不均一となる。この散気管の付着物を除去するため、例えば、〔特許文献1〕から〔特許文献4〕に記載の従来の技術や手法が提案されている。
【0007】
〔特許文献1〕は、散気管が目詰まりした際に散気管へ供給する空気の流量を一時的に増大し、その空気の流体抵抗により付着物を除去するものである。〔特許文献2〕は、散気管が目詰まりした際に散気管の中に外部から水を注入し、供給空気の圧力で水を散気孔から押し出して、水の流体抵抗により付着物を除去するものである。〔特許文献3〕は、散気管の外側の活性汚泥を散気管内に逆流させ、付着物を湿潤化してから供給空気の圧力で活性汚泥とともに散気孔から押し出して、その活性汚泥および供給空気の流体抵抗により付着物を除去するものである。
【0008】
しかしながら、〔特許文献1〕〜〔特許文献3〕に記載の付着物除去技術および手法は、以下の問題点を有しており、十分な除去効果を得ることができない。液体あるいは気体を散気管内に注入し、その流体抵抗を利用して付着物を除去する方式は、散気孔を通過する流体の流速により除去効果が異なるという問題がある。
【0009】
散気管内に流体を同じ圧力で与えた場合、付着物が最も少ない散気孔での流体の流速が最も大きく、逆に最も付着物が多く目詰まりが進行している散気孔での流体流速が最も小さい。すなわち、最も付着物が多い散気孔の洗浄効果が最も小さい。その結果、散気の不均一を解決するためには長時間,多量の流体を流す必要があり、膜分離活性汚泥処理装置の運転停止時間が長くなる。長時間,多量の流体を流しても付着物が最も少ない散気孔における流体の流速が最も大きい現象に変わりはなく、場合によっては散気量の不均一がさらに悪化する場合もある。
【0010】
そこで、〔特許文献4〕に記載の従来の技術では、洗浄用薬液を散気管の中に注入し、薬液の化学反応を利用して付着物を除去している。
【0011】
【特許文献1】特開2003−181480号公報
【特許文献2】特開2005−152777号公報
【特許文献3】特開2002−166290号公報
【特許文献4】特開2003−154236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
〔特許文献4〕に記載の方法では、付着物の量に関係なく全ての散気孔に対して等しい洗浄効果を期待することができる。しかし、洗浄用薬液を用いる方法は、薬液の購入コストや管理業務が発生する上、微生物の活性や処理水質への悪影響がある。処理水質に悪影響を及ぼさないよう、洗浄後の薬液を散気管から逆に吸引回収することも可能であるが、その場合には新たに回収薬液の廃液処理に関するコストや手間が発生する問題がある。
【0013】
また、散気管の散気孔ごとの散気量の不均一が問題であるのに対し、不均一の程度を外部から計測して評価する技術的な提案は、これまでみられない。
【0014】
本発明の目的は、散気孔で付着物の除去効果を均一化でき、薬液の購入コストや管理の必要がなく、処理水質へ悪影響を及ぼさない散気孔洗が行える反応槽及び散気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明は、反応槽内に浸漬して配置され複数の散気孔を有する散気管と、散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、散気管内に設けられ前記散気孔の付着物の剥離,除去部と、を備えたものである。
【0016】
又、反応槽内に浸漬された複数の平膜と、平膜で膜ろ過された処理水を取り出すための配管と、複数の平膜の下方に設置され、複数の散気孔を有する散気管と、散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、散気管内に設けられ前記散気孔の付着物の剥離,除去部とを有する散気装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、散気管の散気孔の付着物を効果的に除去できるため、均一な散気状態を維持することができ、膜分離活性汚泥法の場合には膜面付着物の除去効果が高まり水処理性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1のノズルを備えた散気装置の模式図である。この散気装置は図2で示すように、例えば膜分離活性汚泥処理装置の反応槽24の底部に浸漬して設置される。反応槽24には処理対象となる被処理水26が入っており、散気管10の散気管接続口14から流入する散気用空気22は、複数の散気孔12から被処理水26の中へ気泡として注入される。散気用空気22を注入する装置には、図示しない例えばブロワ,圧縮機などが用いられ、散気管内連通配管48により散気用空気22を散気管10内に送るようになっている。
【0020】
反応槽24内には、平膜28が複数枚、垂直方向に設置されており、平膜28間を曝気された気泡が上昇して膜表面を洗浄して付着物を除去し、平膜28の目詰まりを抑制している。
【0021】
反応槽24内に流入した被処理水26は、平膜28によりろ過されて処理水として、配管30から取り出される。被処理水26は、例えば高濃度の活性汚泥を含んだ液体であるが、濃度が低い活性汚泥液でも良い。
【0022】
散気管10は、例えば図1に示すように、円筒形状であり、両端が板により封止されている。散気管10の上方には、洗浄用流体配管18が設けられ、散気管10内には空間が形成されている。散気管10には、散気孔12に向けてノズル16が備えられる。ノズル16は、洗浄用流体配管18と連通しており、洗浄用流体配管18は、図示しない配管によって図示しない洗浄用流体注入装置と接続されている。洗浄用流体注入装置を稼動させることによって、洗浄用流体20を洗浄用流体配管18から散気孔12に向けて噴出する。洗浄用流体注入装置は、ポンプあるいはブロワで構成される。ここで、図1で示すように、ノズル16の噴出口の位置は、散気管接続口14より鉛直方向の上方に位置することが望ましい。
【0023】
なお、図1に示す例では、散気孔12は鉛直方向の下方に、ノズル16は鉛直方向の上方に配置しているが、散気孔12,ノズル16の配置はこれに限らず、例えば散気孔12が鉛直方向の下方以外にある場合や1つの散気孔12に対しノズル16が複数本存在してもよく、洗浄用流体20が散気孔12に向けて噴出される構造であれば良い。
【0024】
また、洗浄用流体20は液体であることが望ましいが、気体であっても良く、液体と気体の混合物であっても良い。さらに洗浄効果を高めるため、温度が高い温水や水蒸気を洗浄用流体20として用いても良い。
【0025】
このように構成された散気装置の動作について説明する。散気装置は、付着物の剥離,除去部であるノズル16から噴出する流体の運動エネルギーによって付着物を除去する。散気管の外部から流体を衝突させる方法が考えられるが、活性汚泥液の粘性が高いため、付着物に達するまでに洗浄用流体の運動エネルギーの大半が散逸し、効果的な洗浄は難しい。さらに、ノズルの噴出口が活性汚泥液に接触するため、ノズルの噴出口の目詰まりが生じやすい。
【0026】
これに対して、本実施例では、上述したように、ノズル16を散気管10の内部に設けているので、ノズル16から噴出される洗浄用流体20は、十分な運動エネルギーを有しているので、散気用空気22中を通過して散気孔12に到達する。洗浄用流体20は、散気孔12を通過した後、被処理水26の中に入って運動エネルギーを失う。
【0027】
従って、散気孔12付近に生じる付着物に対し、ほとんどロスなく洗浄用流体20の運動エネルギーを付着物の剥離,除去に使うことができる。また、散気管10中には散気用空気22が満たされているため、ノズル16の噴出口は被処理水26に含まれる活性汚泥などの固形物による目詰まりがほとんど生じない。
【0028】
その結果、いずれの散気孔12から同等の運動エネルギーを有する洗浄用流体20を噴出できるため、散気孔12の付着物の量に関係なく均一な洗浄効果が得られ、散気量の均一化が実現される。
【0029】
長期的には、ノズル16の噴出口の目詰まりも想定されるが、その都度、洗浄用流体配管18内に洗浄用の薬液や温水,高温水蒸気などを加圧注入することで容易に対処可能である。このノズル16の洗浄頻度は極めて低く、必要となる薬液などの量も洗浄用流体配管18とノズル16の容積程度で済むため極めて少量ですむ。
【0030】
ノズル16から散気孔12の付着物に向けて噴出される洗浄用流体20の運動エネルギーは、その質量に比例し、噴出速度の2乗に比例する。従って、質量が等しければ噴出速度が速いほうが効果は大きく、噴出速度が等しければ質量が大きいほうが望ましい。
【0031】
より大きな洗浄効果を得るためには、洗浄用流体20として温水を用いることが良い。温水は冷水に比べて粘性抵抗が小さいため、ノズル16からより早い速度で噴出される。また、付着物が乾燥している場合には、冷水よりも温水のほうが湿潤化するために要する時間が短く、より短時間で付着物を除去することができる。
【0032】
このように、洗浄用流体20は液体、特に温度の高い液体であることが望ましいが、気体であっても噴出速度が充分速ければ問題はない。また、洗浄用流体20は、液体と気体の混合物であっても良く、洗浄用流体20は洗浄に寄与する固体を含んでいても良い。
【0033】
実用上は、ノズル16の噴出口の位置を散気管接続口14より鉛直方向の上方に位置することが望ましく、これにより噴出口の目詰まりの可能性を低減することができる。通常、散気用空気22が注入されて気泡を生成している期間は散気管10内に被処理水26が流入することはない。しかし、散気用空気22を注入する装置、例えばブロワや弁,配管などの不具合が生じた場合は、散気管10内へ被処理水26が流入する可能性がある。その場合、例えば図1で示すようにノズル16の噴出口の位置が散気管接続口14に比べて鉛直上方であると、被処理水26が散気管10内に流入してもノズル16の噴出口を含む空間に空気溜まりが生じるため、ノズル16の噴出口が被処理水26に接触することがない。その結果、ノズル16からいずれの散気孔12に対しても同等の運動エネルギーの洗浄用流体20を噴出する機能をより長期間にわたって維持できる。
【実施例2】
【0034】
図3は、本発明の実施例2の摺動体を備えた散気装置の模式図である。本実施例の散気装置も、図2で示すように、例えば膜分離活性汚泥処理装置の反応槽24の底部に浸漬して設置される。反応槽24には処理対象となる被処理水26が入っており、散気管10の散気管接続口14から流入する散気用空気22は複数の散気孔12から被処理水26の中へ気泡として注入される。被処理水26は例えば高濃度の活性汚泥を含んだ液体が想定されるが、濃度が低い活性汚泥液でも良い。
【0035】
散気管10の内部には、付着物の剥離,除去部である、摺動体駆動装置36と、摺動体駆動装置36によって駆動される摺動体34が備えられる。付着物を除去する洗浄時には、摺動体34は散気孔12を貫通して移動する。通常運転時には、摺動体34は散気孔12を流れる散気用空気22の流れを邪魔しない位置に移動する。摺動体34は固形物であればどのような形状でも良いが、活性汚泥液に含まれる繊維状物質の絡み付きを考えると、ブラシではなく円柱状やテーパー付円柱状が好ましい。
【0036】
摺動体駆動装置36は、摺動体34を散気孔12に向けて並行移動できる機構であれば良く、電磁気的駆動,モータ駆動,水圧駆動,空気圧駆動,ワイヤ駆動のうちいずれでも良い。特に電磁気的駆動やモータ駆動の場合は、それぞれの摺動体34を個別に動作させることが比較的容易なため、特に付着物が多い散気孔12の摺動体34を集中的に繰り返し動作させて付着物を効果的に除去することが可能となる。また、その際の電圧電流波形と動作時間の関係から、付着物の状況等を外部でモニタリングすることも可能となる。また、摺動体駆動装置36の設置位置は、散気管接続口14に比べて鉛直方向の上方に位置することが望ましい。
【0037】
このように構成された散気装置の動作,作用について説明する。
【0038】
付着物は摺動体34の運動エネルギーによって機械的に除去される。散気管10内に摺動体34と摺動体駆動装置36が設けられているので、摺動体34および摺動体駆動装置36は被処理水26に含まれる活性汚泥などの固形物による目詰まりや不具合がほとんど生じない。その結果、いずれの散気孔12に対しても同等の運動エネルギーを与えて付着物を除去できるため、散気孔12の付着物の量に関係なく均一な洗浄効果が得られる。その結果、散気量の均一化が実現される。
【0039】
実用上は、摺動体駆動装置36の位置は散気管接続口14より鉛直方向の上方に位置することが望ましく、これにより摺動体駆動装置36に不具合が発生する可能性を低減することができる。通常、散気用空気22が注入されて気泡を生成している期間は、散気管10内に被処理水26が流入することはない。しかし、散気用空気22を注入する装置、例えばブロワや弁,配管などの不具合が生じた場合には、散気管10内へ被処理水26が流入する可能性ある。その場合、摺動体駆動装置36の位置が散気管接続口14より鉛直方向上方にあると、被処理水26が散気管10内に流入しても摺動体駆動装置36を含む空間に空気溜まりが生じるため、摺動体駆動装置36が被処理水26に接触することがない。その結果、摺動体34が同等の運動エネルギーで付着物を除する機能をより長期間にわたって維持できる。
【0040】
なお、摺動体駆動装置36が被処理水26に接触しても機能上問題が生じない場合には、摺動体駆動装置36を散気管10の内部に備える必要性はなく、散気管10の外部に備えても良い。
【実施例3】
【0041】
図4は、本発明の実施例3の弁機構を備えた散気装置の模式図である。本実施例の散気装置も図2で示すように、例えば膜分離活性汚泥処理装置の反応槽24の底部に浸漬して設置される。反応槽24には処理対象となる被処理水26が入っており、散気管10の散気管接続口14から流入する散気用空気22は複数の散気孔12から被処理水26の中へ気泡として注入される。被処理水26は例えば高濃度の活性汚泥を含んだ液体が想定されるが、濃度が低い活性汚泥液でも良い。
【0042】
散気管10の内部には、付着物の剥離,除去部である、弁機構駆動装置40と、弁機構駆動装置40によって駆動される弁機構38が備えられている。弁機構駆動装置40は、弁機構38を移動させて、複数個の散気孔12のうちの一部の散気孔12を閉じる、或いは一部の散気孔12の有効面積を縮小する。弁機構駆動装置40としては、電磁気的駆動,モータ駆動,水圧駆動,空気圧駆動,ワイヤ駆動のうちいずれかが適用される。特に電磁気的駆動やモータ駆動とすると、それぞれの弁機構38を個別に動作させることが比較的容易に実現できるため望ましい。また、弁機構38の動作状況を動作電力供給時の電圧電流波形および動作時間の関係に基づき外部でモニタリングすることも可能となる。弁機構駆動装置40の設置位置は、散気管接続口14より鉛直方法の上方に位置することが望ましい。
【0043】
本実施例では、このように構成しているので、一部の散気孔12を個別に閉じる、或いは一部の散気孔12の有効面積を減少できる。その結果、散気用空気22を残りの開状態の散気孔12から集中的に被処理水26内へ散気することができる。
【0044】
弁機構38の動作状況を動作電力供給時の電圧電流波形および動作時間の関係に基づき外部でモニタリングすることによって、付着物の多い散気孔12を判別し、開状態とする散気孔12として付着物の多い散気孔12を重点的に選択することで、付着物を取り除くことができ、それぞれの散気孔12からの散気量を均一化することができる。又、開状態とする散気孔12を順番に周期的に変更するようにしてもよい。
【0045】
散気用空気22の代わりに水又は洗浄用液体を散気管接続口14から散気管10内に導入して洗浄する場合、或いは被処理水26を一旦散気管10内に逆流させてから散気用空気22を吹き込んで、液体の流体抵抗を用いて付着物を除去する場合についても、同様に開状態とする散気孔12として付着物の多い散気孔12を重点的に選択することで、それぞれの散気孔12からの散気量を均一化することができる。
【0046】
実用上、弁機構駆動装置40の位置は、散気管接続口14より鉛直方向の上方に位置することが望ましく、これにより弁機構駆動装置40に不具合が発生する可能性を低減することができる。
【0047】
通常、散気用空気22が注入されて気泡を生成している期間は、散気管10内に被処理水26が流入することはない。しかし、散気用空気22を注入する装置、例えばブロワや弁,配管などの不具合が生じた場合は、散気管10内へ被処理水26が流入する可能性がある。
【0048】
また、散気用空気22の代わりに水あるいは洗浄用液体を散気管接続口14から散気管10内に導入して洗浄する場合、或いは被処理水26を一旦散気管10内に逆流させてから散気用空気22を吹き込んで液体の流体抵抗を用いて付着物を除去する場合には、散気管10内に液体が存在することとなる。
【0049】
その場合、弁機構駆動装置40の位置が散気管接続口14より鉛直方向の上方にあると、被処理水26などの液体が散気管10内に流入しても弁機構駆動装置40を含む空間に空気溜まりが生じるため、弁機構駆動装置40が被処理水26などの液体に接触することがない。その結果、弁機構38の機能をより長期間にわたって維持できる。
【0050】
なお、弁機構駆動装置40が被処理水26に接触しても機能上問題が生じない場合には、弁機構駆動装置40を散気管10の内部に備える必要性はなく、散気管10の外部に備えても良い。
【実施例4】
【0051】
図5は、本発明の実施例4である洗浄用流体加熱装置を備えた散気装置の模式図である。散気管10と接続された散気管内連通配管48には洗浄用流体注入装置44が設けられており、洗浄用流体注入装置44は、洗浄用流体加熱装置42と接続されている。
【0052】
洗浄用流体46は、洗浄用流体加熱装置42により加熱されて温水又は水蒸気として、洗浄用流体注入装置44へ供給される。洗浄用流体注入装置44は、散気管10内と連通配管48で接続されており、洗浄用流体46を散気管10の内部まで送液する。
【0053】
このように構成された散気装置の動作,作用について説明する。
【0054】
温水又は水蒸気である洗浄用流体46は、一様に散気孔12に付着した付着物まで到達するので、付着物の湿潤化が速くでき、洗浄効果も高まる。付着物の存在する領域を超えて被処理水26の中に入った洗浄用流体46は熱を失い、無害な低水温の水となる。従って、化学薬品などの薬液を用いる場合と異なり、微生物活性の低下や処理水質に残存する薬液の影響,反応副生成物の問題が発生しない。このため、廃液処理装置および廃液処理作業,廃液回収装置および廃液回収作業などが不要である。
【0055】
温水あるいは水蒸気は、水を加熱するだけで生成でき、薬液を用いる場合に比べて、イニシャルコストおよびランニングコストのいずれも極めて小さい。
【実施例5】
【0056】
図6は、本発明の実施例5の気泡生成センサを備えた散気装置の模式図である。
【0057】
気泡生成センサ50は、散気管10の外面に配置される。散気用空気22が送気されない時には、気泡生成センサ50は被処理水26の中に浸漬された状態であり、散気用空気22が送気される時には、気泡生成センサ50の少なくとも一部に気泡が発生する。気泡生成センサ50は、気泡の発生によって生じる圧力変動,電気抵抗変動,電気容量変動,温度変動などの時間的な変化を電気的信号に変換する。このような気泡生成センサ50には、例えばひずみゲージ,導電性ゴムなどの圧力センシングデバイス,対向配置される露出電極,対向配置される非露出電極,サーミスタなどの温度センシングデバイスが用いられる。
【0058】
気泡生成センサ50の出力信号は、無線あるいは有線の通信回線を経由して伝送され、計測値が収集される。計測値は、常時収集することが望ましいが、急を要しない場合には、気泡生成センサ50と信号的に繋がっているコネクタ端子を反応槽24の外部に備えておき、メンテナンス時など時間間隔を置いて適宜コネクタ端子に情報機器を接続して情報を収集しても良い。
【0059】
気泡生成センサ50は、気泡の生成によって生じる時間的変化を捉えることができればよく、散気管10の外面のどこに配置されても良いが、一部が散気孔12に接するように配置されることが望ましい。気泡生成センサ50をこのように配置することで、例えば実施例1から実施例4で説明した散気孔12の洗浄方法により、センサ表面に付着した付着物も同時に除去することが可能となる。散気孔12に接するよう配置できない場合には、散気管10の下半分の外面で、気泡が高頻度で通過する箇所に配置しても良い。
【0060】
このように構成された散気装置の動作,作用を説明する。
【0061】
複数の散気孔12を有する散気管10は、図2で示すように反応槽24の底部に浸漬される。反応槽24の中には活性汚泥液など一般に不透明の被処理水26が入っているので、散気孔12に付着物がどの程度付着しているかは、外部からは全く計測できない。
【0062】
本実施例では、上記のように構成しているので、散気孔12にどの程度付着物が付着しているか、外部から計測することが可能となる。この計測値に基づいて、どの散気孔12を集中的に洗浄すべきかが判断でき、より効率的に均一な散気量を実現できる。
【0063】
気泡生成センサ50として、圧力センシングデバイスを用いた場合の信号例を図7に示す。多量の付着物が付着している散気孔12から発生する気泡の径は、小さく、発生頻度も低い。逆に、付着物が少ない散気孔12から発生する気泡の径は大きく、発生頻度も高い。
【0064】
これらの判別は、得られた信号から行うことができる。具体的には、図7中に示す周期Tから気泡の発生頻度が分かる。また、時間t1は気泡の通過時間を示しており、この値から気泡径を推測することができる。また、変化量Δpは気泡の浮力によって生じるため、平均値と最大値,最小値から気泡径を推測することができる。結果として、周期Tが最も長く、かつ時間t1および変化量Δpの平均値が最も小さい散気孔12が最も付着物が多いと判断され、その散気孔12を集中的に洗浄することで散気量をより均一化することが可能となる。
【0065】
図8は、気泡生成センサ50で得られた気泡生成情報54をとりこみ、その情報を操作員に提示する散気装置の監視装置52を備えた膜分離活性汚泥処理装置の模式図である。
【0066】
散気装置の監視装置52は、表示装置の画面上には、散気管の番号を一つの軸に、もう一つの軸に散気孔の番号をとった表あるいはグラフが表示される。表あるいはグラフの中には少なくともそれぞれの散気孔から発生している気泡に関する物理量を数値,色,濃淡を用いて表示する。この表示により、操作員はどの散気管10のどの散気孔12に最も多量の付着物があるかを容易に判断でき、洗浄をより効率的に実施することができる。
【0067】
散気装置の監視装置52には、気泡生成センサ50で得られた気泡生成情報54に基づき、洗浄実施タイミングを決定する洗浄実施タイミング決定部を有する自動洗浄制御装置が備えられていることが望ましい。洗浄実施のタイミングは、例えば付着物の量が設定された値を超過した場合、あるいは全散気孔12の付着物推定値の平均値からの偏差が設定された値以上となった場合などにより決定される。自動洗浄制御装置は、例えば実施例1で説明した洗浄機構を稼動させる信号を発生し、その信号により、例えば実施例1に示すノズル16を用いる場合には、洗浄用流体20を送液するポンプが起動される。又、実施例2に示す摺動体34を用いる場合には、摺動体駆動装置36に電力が送られる、又は駆動用流体を送るためのポンプ,ブロワが起動される。実施例3で説明した弁機構38を用いる場合には、弁機構駆動装置40に電力が送られる、又は駆動用流体を送るためのポンプ,ブロワが起動される。実施例4で説明した洗浄用流体46を用いる場合には、洗浄用流体加熱装置42と洗浄用流体注入装置44に電力が送られる。自動洗浄制御装置は、既存の洗浄機構に対して洗浄実施のタイミングを信号を送っても良い。
【実施例6】
【0068】
図9は、本発明の実施例6の加湿装置を備えた散気装置の模式図である。散気管10と接続された散気管内連通配管48には加湿装置56が設けられており、加湿装置56は水蒸気あるいは霧状の水の粒子を散気管10の内部に注入する。
【0069】
このように構成されているので、散気用空気22の湿度が高くなり、散気孔12付近の活性汚泥が乾燥することを予防でき、付着物の発生を抑制することができる。
【0070】
このため、特別な散気孔の洗浄機構や洗浄用薬液,洗浄工程が不要となる。加湿装置56は、水を加熱あるいは噴霧するだけで良く、イニシャルコストおよびランニングコストは極めて小さい。なお、加湿装置56として霧状の水の粒子を噴出する機構を備えた場合には、水の粒子が散気用空気22内で蒸発する際に熱を奪うため、散気用空気22の温度を下げる効果もあり、結果として散気孔12付近の活性汚泥の乾燥をさらに予防することが可能となる。
【実施例7】
【0071】
図10は、本発明の実施例7の冷却機構を備えた散気装置の模式図である。散気管10と接続された散気管内連通配管48には冷却機構58が設けられている。冷却機構58は散気用空気22の温度を下げる機能を有すれば良く、熱交換器を備える。冷却の原理は空冷や水冷のほか、機械的冷却や電気的冷却のいずれでも良い。また、実施例6でも述べたように、噴霧した霧状の水の気化熱により散気用空気22の温度を下げる方法でも良い。
【0072】
このように構成されているので、散気用空気22の温度が低くなる。その結果、散気孔22付近の活性汚泥が乾燥することを予防でき、付着物の発生を抑制することができ、特別な散気孔の洗浄機構や洗浄用薬液,洗浄工程が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1であるノズルを備えた散気装置の模式図。
【図2】膜分離活性汚泥処理装置の模式図。
【図3】本発明の実施例2である摺動体を備えた散気装置の模式図。
【図4】本発明の実施例3である弁機構を備えた散気装置の模式図。
【図5】本発明の実施例4である洗浄用流体加熱装置を備えた散気装置の模式図。
【図6】本発明の実施例5である気泡生成センサを備えた散気装置の模式図。
【図7】気泡生成センサが出力する信号の模式図。
【図8】本発明の実施例5である散気装置の監視装置を備えた膜分離活性汚泥処理装置の模式図。
【図9】本発明の実施例6である加湿装置を備えた散気装置の模式図。
【図10】本発明の実施例7である冷却機構を備えた散気装置の模式図。
【符号の説明】
【0074】
10 散気管
12 散気孔
14 散気管接続口
16 ノズル
18 洗浄用流体配管
20 洗浄用流体
22 散気用空気
24 反応槽
26 被処理水
28 平膜
30 配管
32 散気装置
34 摺動体
36 摺動体駆動装置
38 弁機構
40 弁機構駆動装置
42 洗浄用流体加熱装置
44 洗浄用流体注入装置
46 洗浄用流体
48 散気管内連通配管
50 気泡生成センサ
52 散気装置の監視装置
54 気泡生成情報
56 加湿装置
58 冷却機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内に浸漬して配置され複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、前記散気管内に設けられ前記散気孔の付着物の剥離,除去部と、を備えた散気装置。
【請求項2】
前記付着物の剥離,除去部が、前記散気管に設けられ洗浄用流体が内部を流れる洗浄用流体配管と、前記洗浄用流体を洗浄用流体配管内に注入する洗浄用流体注入装置と、散気管内に配置され、洗浄用流体を前記散気孔に向けて噴出するノズルで構成される請求項1に記載の散気装置。
【請求項3】
前記付着物の剥離,除去部が、前記散気管内に配置され、散気孔の付着物を機械的に除去する摺動体と、該摺動体を駆動する摺動体駆動装置で構成される請求項1に記載の散気装置。
【請求項4】
前記付着物の剥離,除去部が、前記散気管内に配置され、一部の散気孔を閉じる或いは散気孔の有効面積を縮小する弁機構と、該弁機構を駆動する弁機構駆動装置で構成される請求項1に記載の散気装置。
【請求項5】
反応槽内に浸漬して配置され複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、温水あるいは水蒸気を生成する洗浄用流体加熱装置と、該洗浄用流体加熱装置で生成された温水あるいは水蒸気を前記散気管内に注入する洗浄用流体注入装置と、を備えた散気装置。
【請求項6】
反応槽内に浸漬して配置され複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、水蒸気あるいは霧状の水の粒子を前記散気管内に注入する加湿装置と、を備えた散気装置。
【請求項7】
反応槽内に浸漬して配置される複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、前記散気管内に散気する空気を冷却する冷却機構と、を備えた散気装置。
【請求項8】
前記複数の散気孔に、散気管の外部に配置され、気泡生成に関する物理量を計測する気泡生成センサを具備した請求項1から7のいずれかに記載の散気装置。
【請求項9】
反応槽内に浸漬された複数の平膜と、該平膜で膜ろ過された処理水を取り出すための配管と、前記複数の平膜の下方に設置され、複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、前記散気管内に設けられ前記散気孔の付着物の剥離,除去部とを有する散気装置と、を備えた反応槽。
【請求項10】
前記付着物の剥離,除去部が、前記散気管に設けられ洗浄用流体が内部を流れる洗浄用流体配管と、前記洗浄用流体を洗浄用流体配管内に注入する洗浄用流体注入装置と、散気管内に配置され、洗浄用流体を前記散気孔に向けて噴出するノズルで構成される請求項9に記載の反応槽。
【請求項11】
前記付着物の剥離,除去部が、前記散気管内に配置され、散気孔の付着物を機械的に除去する摺動体と、該摺動体を駆動する摺動体駆動装置で構成される請求項9に記載の反応槽。
【請求項12】
前記付着物の剥離,除去部が、前記散気管内に配置され、一部の散気孔を閉じる或いは散気孔の有効面積を縮小する弁機構と、該弁機構を駆動する弁機構駆動装置で構成される請求項9に記載の反応槽。
【請求項13】
反応槽内に浸漬された複数の平膜と、該平膜で膜ろ過された処理水を取り出すための配管と、前記複数の平膜の下方に設置され、複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、温水あるいは水蒸気を生成する洗浄用流体加熱装置と、該洗浄用流体加熱装置で生成された温水あるいは水蒸気を前記散気管内に注入する洗浄用流体注入装置とを有する散気装置と、を備えた反応槽。
【請求項14】
反応槽内に浸漬された複数の平膜と、該平膜で膜ろ過された処理水を取り出すための配管と、前記複数の平膜の下方に設置され、複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、水蒸気あるいは霧状の水の粒子を前記散気管内に注入する加湿装置とを有する散気装置と、を備えた反応槽。
【請求項15】
反応槽内に浸漬された複数の平膜と、該平膜で膜ろ過された処理水を取り出すための配管と、前記複数の平膜の下方に設置され、複数の散気孔を有する散気管と、該散気管内に散気するための空気を送る注入装置と、前記散気管内に散気する空気を冷却する冷却機構とを有する散気装置と、を備えた反応槽。
【請求項16】
前記複数の散気孔に、散気管の外部に配置され、気泡生成に関する物理量を計測する気泡生成センサを具備し、該気泡生成センサからの信号を受信して散気孔から発生している気泡に関する物理量を数値あるいは図を用いて表示する表示装置を具備する請求項9から15のいずれかに記載の反応槽。
【請求項17】
前記気泡生成センサの計測値に基づき洗浄実施タイミングを決定する洗浄実施タイミング決定部を備えた請求項16に記載の反応槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−106874(P2009−106874A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282597(P2007−282597)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】