説明

反応生成物の製造方法及びその装置

【課題】反応生成物を工業的規模で連続生産するとともに、太陽光から得られるエネルギ量の増減に伴って反応生成物の生成量を増減させる。
【解決手段】製造装置10は、熱媒を流通させるための第1及び第2熱媒流通路形成部材12、14と、出発原料としてのCO及びCを流通・反応させるための流通路・反応室を形成する第1及び第2流通路・反応部形成部材16、18と、第1〜第3太陽光照射手段50、60、62とを有する。Cを供給するための第1供給管34、及びCOを供給するための第2供給管36には、開度を調整自在な供給量調整バルブ38、40がそれぞれ設けられる。すなわち、C及びCOの供給量は、供給量調整バルブ38、40の開度を調整することによって変更可能である。また、第1〜第3太陽光照射手段50、60、62には、開度を調整自在なシャッタが設けられる。シャッタの開度が小さくなることに伴い、太陽光が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応生成物の製造方法及びその装置に関し、一層詳細には、2種類以上の出発原料を加熱する手段として太陽光を用いる反応生成物の製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、環境保護の観点から、地球温暖化ガスの排出量を低減することに関心が払われている。大気中の地球温暖化ガスの濃度が高くなると、いわゆる温室効果が大きくなり、平均気温が上昇してしまうからである。これを回避するべく、各国において、1997年議決の京都議定書に定められた地球温暖化ガスの削減目標を達成する努力がなされている。さらに、日本では、2007年にクールアース50計画が発表され、世界全体の地球温暖化ガスの排出量を2050年までに現在の半分にするべきことが提案されている。
【0003】
その一環として、COの排出量を低減することが試みられている。現況、COは、火力発電プラント、製鉄プラント、セメントプラント、化学プラント等から大気に排出された後、安定に存在して温室効果を高めているからである。
【0004】
COの排出量を低減する一方策としては、排出されたCOを他の物質と反応させ、反応生成物(好適には、各種有機物の出発原料となるCO)を得ることが想起される。この場合、排出されたCOを出発原料として消費するので、COの排出量を低減することができる。
【0005】
例えば、特許文献1には、Hの存在下にCOを太陽光によって加熱し、これによりCOを還元してCOを得る技術が開示されている。なお、この特許文献1記載の技術では硫化モリブデン触媒が用いられており、反応温度は500℃程度に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−23207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の技術は、触媒に対して太陽光を照射することにより前記触媒を活性化するものである。ここで、太陽の位置は、地球の自転・公転に伴って時間・季節の経過とともに変化するので、触媒に対する太陽光の照射角度も変化する。さらには、晴天時と雨天時では、太陽光の強さが相違することになる。
【0008】
以上のような理由から、太陽光から得られるエネルギを長時間にわたって一定とすることが困難である。このため、特許文献1記載の技術では、出発原料であるCOとHとの反応効率、ひいては反応生成物であるCOの収量を一定とすることも困難である。従って、特許文献1記載の技術は、反応生成物を工業的規模で連続生産するには適切ではない。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、太陽光からエネルギが得られなくとも反応生成物を継続して得ることが可能であり、このため、反応生成物を工業的規模で連続生産するに適切な、しかも、太陽光が得られるときには反応生成物の生成量を増加させることが可能な反応生成物の製造方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
[1]2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得る反応生成物の製造方法であって、
前記出発原料を加熱する第1の加熱源として太陽光を用い、第2の加熱源として太陽光とは別の加熱源を用いて、互いに混合される前の前記出発原料の各々を個別に加熱して活性化する工程と、
活性化された前記出発原料同士に反応を生起させて反応生成物を得る工程と、
を有し、
前記出発原料を加熱する前記第1の加熱源のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御するか、又は、前記出発原料の供給量に応じて前記第1の加熱源のエネルギ量を制御する反応生成物の製造方法。
【0012】
[2]2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得る反応生成物の製造方法であって、
前記出発原料同士を混合して混合物を得た後、前記混合物を、第1の加熱源として太陽光を用い、第2の加熱源として太陽光とは別の加熱源を用いて加熱することで活性化するとともに、活性化された前記出発原料同士に反応を生起させて反応生成物を得る工程を有し、
前記混合物を加熱する前記第1の加熱源のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御するか、又は、前記出発原料の供給量に応じて前記第1の加熱源のエネルギ量を制御する反応生成物の製造方法。
【0013】
[3]2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得る反応生成物の製造方法であって、
前記出発原料を加熱する第1の加熱源として太陽光を用い、第2の加熱源として太陽光とは別の加熱源を用いて、互いに混合される前の前記出発原料の各々を個別に加熱して活性化する工程と、
活性化された前記出発原料同士を混合して活性混合物を得るとともに、該活性混合物を前記第1の加熱源又は前記第2の加熱源によって加熱することで、活性化された前記出発原料同士によって生起する還元反応を促進させて反応生成物を得る工程と、
を有し、
前記出発原料及び前記活性混合物を加熱する前記第1の加熱源のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御するか、又は、前記出発原料の供給量に応じて前記第1の加熱源のエネルギ量を制御する反応生成物の製造方法。
【0014】
[4]2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得るための反応生成物の製造装置であって、
第1の加熱源である太陽光を、互いに混合される前の前記出発原料の各々、又は、混合された後の前記出発原料に対して照射する太陽光照射手段と、
前記出発原料を加熱するための、太陽光とは別の第2の加熱源と、
互いに混合された前記出発原料同士を反応させるための反応部と、
を備え、
さらに、前記出発原料に照射される前記太陽光照射手段からの太陽光のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御する出発原料供給量制御手段を具備する反応生成物の製造装置。
【0015】
[5]2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得るための反応生成物の製造装置であって、
第1の加熱源である太陽光を、互いに混合される前の前記出発原料の各々、又は、混合された後の前記出発原料に対して照射する太陽光照射手段と、
前記出発原料を加熱するための、太陽光とは別の第2の加熱源と、
互いに混合された前記出発原料同士を反応させるための反応部と、
を備え、
さらに、前記出発原料の供給量に応じて前記出発原料に照射される前記太陽光照射手段からの太陽光のエネルギ量を制御する太陽光エネルギ制御手段を具備する反応生成物の製造装置。
【0016】
前記製造装置は、例えば、互いに当接し、各々の前記出発原料を合流させて反応させるための反応部を形成する1組の反応部形成部材と、
前記1組の反応部形成部材を挟持する1組のスペーサと、
前記1組のスペーサを挟持する1組の保持部材と、
を有するものとして構成することができる。この場合、前記1組のスペーサの中の一方に、各々の前記出発原料を流通させるための流通路が形成されるとともに、残余の一方に、反応生成物を流通させるための流通路が形成される。また、前記1組の保持部材中の少なくとも一方の保持部材の一部には、レンズが設けられる。前記太陽光照射手段は、前記レンズに対して太陽光を導入する。
【0017】
以上の構成において、前記反応部を複数個形成するようにしてもよい。この場合、それぞれの前記反応部で反応生成物を得る反応が生起されること、換言すれば、反応部毎に反応生成物が得られることは勿論である。
【0018】
なお、出発原料としては、CO及び還元剤が好適である。この場合、還元剤によってCOを還元することでCOを反応生成物として得る。
【0019】
還元剤の好適な例としては、炭素が揚げられる。この場合、炭素とCOとでブードア反応が生起され、COが還元されてCOが生成する。
【0020】
ここで、炭素は粉末として供給すればよい。この場合、移送手段としてはスクリュコンベア等が適切である。又は、粉末をキャリアガスに同伴して供給するようにすることもできる。
【0021】
ブードア反応を生起させるには、触媒を使用すればよい。この場合、500℃近傍の比較的低温であっても、COの還元反応が容易に進行する。勿論、反応温度を、1100℃程度の比較的高温域に設定することも可能である。
【0022】
固体である炭素は、気体であるCOに比して温度上昇が緩やかである。そこで、炭素の供給開始から反応部に到達するまでの時間を、COの供給開始から反応部に到達するまでの時間に比して長く設定するようにしてもよい。これにより、炭素の温度を十分に上昇させることが可能となる。
【0023】
具体的には、例えば、炭素を供給するための供給管を、COを供給するための供給管に比して大径に設定すればよい。
【0024】
又は、炭素を供給するための供給管の内部に螺旋溝を形成し、炭素に旋回流を生じさせるようにしてもよい。
【0025】
さらにまた、炭素を供給するための供給管の内部で乱流を形成するようにしてもよい。このためには、供給管の内径と炭素の供給速度(流速)とを、乱流が起こるように設定すればよい。
【0026】
いずれの場合においても、第2の加熱源の好適な例としては、ヒートポンプで回収した熱を挙げることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、混合される前の出発原料か、又は、混合された後の出発原料を加熱するに際し、第1の加熱源である太陽光と、太陽光以外の加熱源である第2の加熱源とを使用し、太陽光のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御するか、又は、前記出発原料の供給量に応じて前記第1の加熱源のエネルギ量を制御するようにしているので、太陽光が得られるときには出発原料の供給量を多くして反応生成物の生成量を増加し、一方、太陽光が得られないときには出発原料の供給量を少なくして反応生成物の生成量を低減する等、生産の調整を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る製造装置の要部概略斜視図である。
【図2】図1の製造装置の要部分解斜視図である。
【図3】図1の製造装置の要部縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る製造装置の要部概略分解斜視図である。
【図5】図4の製造装置を構成する単セルの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る反応生成物の製造方法につき、それを実施する製造装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、出発原料としてCO及び炭素を選定し、反応生成物としてCOを得る場合を例示して説明する。
【0030】
図1〜図3は、それぞれ、第1実施形態に係る製造装置10の要部概略斜視図、要部分解斜視図、要部縦断面図である。この製造装置10は、熱媒を流通させるための第1熱媒流通路形成部材12及び第2熱媒流通路形成部材14と、CO及びCを流通させるための第1流通路・反応部形成部材16及び第2流通路・反応部形成部材18とを備える。
【0031】
図2及び図3から諒解されるように、第1熱媒流通路形成部材12には、その厚み方向に沿って、第1熱媒供給管20及び第2熱媒供給管22に連通する第1熱媒供給路24及び第2熱媒供給路26が貫通形成される。第1熱媒流通路形成部材12には、さらに、熱媒排出管28に連通する熱媒排出路30が貫通形成される。
【0032】
一方、第2熱媒流通路形成部材14の下端面には、該下端面が略平板形状に切り欠かれたような形状の第1流通路32と、直線形状の第2流通路33とが陥没形成される。第1流通路32は、矢印A方向に沿って延在する辺と矢印B方向に沿って延在する辺とが略同寸法の正方形形状であり、第2流通路33は、矢印B方向に沿って延在する辺が長尺な縦長の長方形形状である。勿論、これら第1流通路32、第2流通路33は互いに連通する。
【0033】
第1熱媒供給路24及び第2熱媒供給路26の開口は、後述する第1流通路42及び第2流通路44の始点(第1流通路・反応部形成部材16における矢印A方向の端部)に略対応する位置に形成される。また、熱媒排出路30の開口の位置は、第2流通路33の終点(矢印B方向の端部)に対応する。
【0034】
従って、第1熱媒供給管20、第2熱媒供給管22の各々から供給された熱媒は、第1熱媒供給路24、第2熱媒供給路26を通過して第1流通路32で合流し、さらに、第2流通路33に到達する。熱媒は、その後、熱媒排出路30を流通して熱媒排出管28から排出される。
【0035】
第1熱媒供給管20、第2熱媒供給管22及び熱媒排出管28は、図示しないヒートポンプ(第2の加熱源)とともにヒートポンプシステムを構成する。すなわち、熱媒は、前記ヒートポンプによって加温された後に第1熱媒供給管20、第2熱媒供給管22に供給され、後述するように、CO及びCに対して熱を伝達することで温度が低下した後、前記ヒートポンプに戻される。以降はこのサイクルが繰り返される。
【0036】
第1流通路・反応部形成部材16及び第2流通路・反応部形成部材18の外部には、炭素材(C)を供給するための第1供給管34と、COを供給するための第2供給管36とが設けられる。第1供給管34は、第2供給管36に比して若干大径に設定される。
【0037】
第1供給管34、第2供給管36には、開度を調整自在な供給量調整バルブ38、40が介装される。これら供給量調整バルブ38、40の開度を調整することにより、炭素材、COの供給量が変更される。
【0038】
また、第1流通路・反応部形成部材16の上端面には、略T字形状の溝が陥没形成される。この溝の中、矢印A方向に沿って延在するとともに第1流通路・反応部形成部材16の側面で開口する部分は、それぞれ、第1流通路42、第2流通路44として機能する(図3参照)。前記第1供給管34は第1流通路42に接続され、且つ前記第2供給管36は第2流通路44に接続される。
【0039】
第1流通路42、第2流通路44の各々は、第1供給管34、第2供給管36の各々と略同寸法に設定される。すなわち、第1流通路42は、第2流通路44に比して若干幅広である(図2参照)。第1流通路42及び第2流通路44は、前記第1流通路32の略上方に位置する。
【0040】
第1流通路42、第2流通路44は、合流して矢印B方向に沿って延在し、通路状の反応部46を形成する。なお、反応部46は、前記第2流通路33の略上方に位置する(図1及び図2参照)。
【0041】
反応部46は、第1流通路・反応部形成部材16及び第2流通路・反応部形成部材18の外部に設けられたCO排出管48に連通する。従って、COと炭素材が反応することで得られた反応生成物、すなわち、COは、CO排出管48から排出される。
【0042】
反応部46には、担体に担持されたブードア反応触媒(いずれも図示せず)が配置される。このブードア反応触媒は、反応転化率を向上させるとともに、反応時間を短縮し、且つ反応温度を低下させる作用を営む。
【0043】
このような作用を営む具体的な物質としては、周期律表第4周期〜第6周期の第5族〜第10族元素、好適には鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タングステン、イリジウム等を含むものが挙げられる。この中、入手が容易で比較的安価であり、しかも、触媒活性が大きいことから、鉄、コバルト、ニッケルが特に好適である。
【0044】
このような元素を含む物質の代表的なものとしては、上記元素のいずれか1種からなる単体金属や、上記元素の2種以上を含む合金が挙げられる。又は、上記元素を含む有機金属化合物であってもよい。
【0045】
ブードア反応触媒を担持する担体の素材は、COと炭素材とを反応させる際の温度において安定なものが選定される。そのようなものの好適な例としては、鉄、ニッケル、コバルト等の金属や、シリカ、アルミナ、ジルコニア、珪藻土、カオリナイト、スメクタイト、タルク、ゼオライト、フェライト(酸化鉄)等のセラミックスが挙げられる。
【0046】
CO排出管48には、後述する分離装置(図示せず)が設けられる。COに含まれる未反応のCOは、この分離装置で分離される。
【0047】
図1に示すように、第1流通路42の上方には、太陽光(第1の加熱源)を照射するための第1太陽光照射手段50が設けられる。この第1太陽光照射手段50は、集光レンズ52と、集光部54と、光ファイバ56と、光照射部58とを有する。すなわち、集光レンズ52によって集光された太陽光は、集光部54及び光ファイバ56によって光照射部58に導かれ、該光照射部58から第1流通路42の上方に照射される。
【0048】
第1太陽光照射手段50は、さらに、太陽光を遮断するための図示しないシャッタを備える。このシャッタは開度を自在に調節することが可能であり、従って、該シャッタの開度を調節することにより、太陽光の遮断の度合いを制御することができる。
【0049】
第2流通路44及び反応部46の上方には、それぞれ、第2太陽光照射手段60、第3太陽光照射手段62が設けられる。これら第2太陽光照射手段60、第3太陽光照射手段62は、第1太陽光照射手段50と同様に構成されており、従って、第1太陽光照射手段50の構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
反応部46の上方には、熱電対や放射温度計等の温度測定手段64が配設される。すなわち、反応部46の温度は、温度測定手段64によって常時検出される。
【0051】
以上の構成において、前記供給量調整バルブ38、40、前記シャッタ、及び前記温度測定手段64は、信号線66を介して制御回路68に電気的に接続される。すなわち、制御回路68は、温度測定手段64によって検出された温度を常時モニタリングしている。
【0052】
このように構成される製造装置10は、例えば、火力発電プラントや製鉄プラント、セメントプラント、化学プラント等に設けられる。
【0053】
次に、この製造装置10を用いて実施される反応生成物(この場合、CO)の製造方法につき説明する。
【0054】
上記したようなプラントの操業に伴って発生したCOは、より活性なガス等の不純物が除去された後、製造装置10の第2供給管36及び第2流通路44を介して反応部46に供給される。なお、不純物を除去するための手法としては、活性炭吸着法、膜分離、洗浄法等の公知の手法が挙げられる。
【0055】
一方の炭素材としては、不純物の含有量が少ないものが好ましい。例えば、産業廃棄物を炭化して得られた炭素材、カーボンブラック、活性炭、バイオマス系の炭から得られた炭素材等である。
【0056】
産業廃棄物から炭素材を得る場合には、先ず、産業廃棄物を固定型バッチ式炉、ロータリ炉、スクリュ炉等で炭化することで炭素を得る。次に、薬品賦活法や水蒸気賦活法等によって不純物を除去することにより、高純度の炭素材を得ることができる。
【0057】
カーボンブラックは、周知の通り、天然ガス、石炭又は石油等の化石燃料を不完全燃焼させたり、熱分解させたりすることによって得られる数百μm程度の微細粉末であり、市販品として容易に入手可能である。
【0058】
活性炭は、椰子殻、石炭、おが屑等を炭化及び賦活することによって得られるものであり、その表面には、10〜100Å程度の微細な細孔が多数形成されている。この細孔が吸着サイトとして機能することにより、活性炭に吸着作用が発現する。
【0059】
残余のバイオマス系の炭は、木材や竹等を用いて得られる代表的な炭素材として公知である。
【0060】
本実施の形態では、上記したような炭素材は、微細に粉砕されて微粒子として供給される。微粒子は、比表面積が大きく、このため、COとの反応領域が大きいので、バルク体に比してCOと効率よく反応するからである。すなわち、微粒子を用いることにより、COの還元反応を促進することができる。
【0061】
なお、炭素材は、気流式粉砕機、縦型ローラミル、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌式ミル、圧密剪断ミル、コロイドミル等の公知の粉砕機によって粉砕することが可能である。
【0062】
ここで、カーボンブラックや活性炭は凝集粉末であり、粉砕を行うことなく使用することも可能であるが、上記したような粉砕機によって凝集を解消して一層の微粒子とし、これを使用するようにしてもよい。
【0063】
炭素材の微粒子は、例えば、図示しない貯留容器からスクリュコンベアによって移送され、第1供給管34及び第1流通路42を経て反応部46に供給される。又は、不活性ガスやCOをキャリアガスとして流通し、このキャリアガスに微粒子を同伴させて第1供給管34、第1流通路42から反応部46に供給するようにしてもよい。
【0064】
その一方で、前記ヒートポンプによって加温された熱媒が第1熱媒供給管20、第2熱媒供給管22を介して第1流通路32に供給され、若干の間滞留する。熱媒がCO排出管48とは反対側に回り込むからである。このようにして第1流通路32内に滞留する熱媒により、炭素材及びCOが予備加熱される。
【0065】
夏季の昼間且つ晴天で、しかも、前記シャッタが全開であるときには、太陽光は、第1太陽光照射手段50、第2太陽光照射手段60及び第3太陽光照射手段62の各集光レンズ52によって集光され、集光部54及び光ファイバ56に導かれた後、光照射部58から第1流通路42、第2流通路44及び反応部46に照射される。第1流通路42、第2流通路44に対する太陽光の照射に伴い、炭素材及びCOがさらに予備加熱される。このとき、第1供給管34、第2供給管36に設けられた供給量調整バルブ38、40は全開に設定される。
【0066】
ここで、第1供給管34及び第1流通路42は、第2供給管36及び第2流通路44に比して大径に設定されている。このため、炭素材の滞留時間は、COに比して長い。従って、炭素材が熱媒及び太陽光によって加熱される時間も長くなる。固体である炭素材は、気体であるCOよりも温度が上昇し難いが、このようにして加熱時間を長くすることができるため、炭素材の温度を十分に上昇させることが可能となる。
【0067】
以上のようにして予備加熱されたCO及び炭素材は、第1流通路42と第2流通路44が合流することによって混合され、反応部46に到達する。
【0068】
反応部46に対しては、第1流通路32を通過して第2流通路33に到達した熱媒から熱が供給されるとともに、第3太陽光照射手段62によって太陽光が照射される。従って、反応部46の温度が十分に高温に保たれる。
【0069】
反応部46には、上記したように、担体に担持されたブードア反応触媒(いずれも図示せず)が配置されている。従って、COと炭素材が効率よく反応する。すなわち、下記の式(1)に示されるブードア反応が生起され、これによりCOが生成される。
CO+C→2CO …(1)
【0070】
ブードア反応触媒の存在下では、この反応は、反応部46の温度が500℃程度の比較的低温であっても容易に進行する。
【0071】
なお、晴天の夏季昼間であっても、COの生成量を低減するべくCOと炭素材の供給量を低減するときには、制御回路68は、前記シャッタを所定の開度となるように閉止する。すなわち、第1太陽光照射手段50、第2太陽光照射手段60及び第3太陽光照射手段62から照射される太陽光のエネルギ量が、炭素材、COの供給量に見合った量に低減するように変更される。これにより、炭素材とCOの反応効率を略一定に維持することができる。
【0072】
これに対し、例えば、冬季の昼間で曇天であるようなときには、第1太陽光照射手段50、第2太陽光照射手段60及び第3太陽光照射手段62のシャッタの全てを全開にしても、太陽光のみでは反応部46の温度を500℃以上に維持することが容易でなくなる可能性がある。従って、CO及び炭素材の供給量を上記の場合と同一とすると、反応効率が低下してCOの収量が低減する。のみならず、未反応のCOの排出量が増大してしまう。
【0073】
これを回避するべく、制御回路68は、供給量調整バルブ38、40に対し、開度を小さくする制御信号を発する。その結果、炭素材、COの供給量が、熱媒から供給されるエネルギ量に見合った量に低減するように変更される。これにより、炭素材とCOの反応効率を略一定に維持することができる。
【0074】
また、熱媒から熱が供給されるので、太陽光が得られ難い夜間であってもブードア反応を継続して生起させることができる。従って、COを連続的に消費する一方、COを連続的に生産することができる。このことから諒解されるように、第1実施形態によれば、COを工業規模で連続生産することが可能である。
【0075】
熱媒は、上記のようにしてCO及び炭素材に熱を付与することに伴って温度低下を起こす。この状態で、熱媒排出路30を介して熱媒排出管28から排出された後、前記ヒートポンプに戻される。熱媒は、このヒートポンプから熱を付与されることで再び温度上昇を起こし、その後、第1熱媒供給管20、第2熱媒供給管22に供給される。以降は、上記のサイクルを繰り返す。
【0076】
なお、第1太陽光照射手段50及び第2太陽光照射手段60を設ける一方で第3太陽光照射手段62を取り外すようにしてもよいし、第3太陽光照射手段62のみを設けて第1太陽光照射手段50及び第2太陽光照射手段60を取り外すようにしてもよい。この取り外しによって、反応部46の温度を制御するようにしてもよい。
【0077】
また、第1実施形態では、炭素材に対して十分な予備加熱を施すべく、第1供給管34及び第1流通路42を、第2供給管36及び第2流通路44に比して大径に設定することで炭素材の滞留時間を長くするようにしているが、例えば、第1供給管34の内部に螺旋溝を形成し、これにより炭素材に旋回流を生じさせた状態で移送を行うようにすることでも、炭素材の滞留時間を長くすることが可能である。
【0078】
又は、第1供給管34の内径や炭素材の供給速度(例えば、キャリアガスの流速)を、第1供給管34内に乱流が生じる範囲に設定するようしてもよい。乱流が生じることにより、層流である場合に比して滞留時間が長くなる。
【0079】
次に、第2実施形態に係る製造装置につき説明する。
【0080】
図4は、第2実施形態に係る製造装置80の要部概略分解斜視図であり、図5は、製造装置80に形成される1つの単セル82の概略縦断面図である。この製造装置80は、第1熱媒流通路形成部材84と、第2熱媒流通路形成部材86とを具備するとともに、第2熱媒流通路形成部材86上に、ディスク状の基板88と、第1スペーサ90と、第1反応部形成部材92及び第2反応部形成部材94と、第2スペーサ96と、レンズ98とが下方からこの順序で積層されて構成される。
【0081】
図4及び図5から諒解されるように、第1反応部形成部材92及び第2反応部形成部材94は第1スペーサ90と第2スペーサ96とで挟持され、さらに、第1スペーサ90及び第2スペーサ96は、ともに保持部材である基板88及びレンズ98とで挟持される。
【0082】
この中、第1熱媒流通路形成部材84の外部には、第1実施形態に係る製造装置10と同様に、図示しないヒートポンプシステムを構成し、ヒートポンプから熱媒を流通させるための熱媒供給管100及び熱媒排出管102が設けられる。また、第1熱媒流通路形成部材84には、その厚み方向に沿って、これら熱媒供給管100及び熱媒排出管102に連通する熱媒供給路104、熱媒排出路106が貫通形成される。
【0083】
さらに、第1熱媒流通路形成部材84の上端面には、熱媒供給路104及び熱媒排出路106に連通し、断面略矩形状である熱媒流通路108が形成される。この熱媒流通路108は、第2熱媒流通路形成部材86によって閉塞される。
【0084】
基板88は、例えば、シリコンウェハから形成される。また、基板88には、その厚み方向に沿って、第1流通孔110、第2流通孔112及び第3流通孔114が貫通形成される。この中の第1流通孔110及び第2流通孔112には第1供給管116、第2供給管118がそれぞれ接続され、第3流通孔114にはCO排出管120が接続される。
【0085】
これら第1供給管116、第2供給管118、CO排出管120は、炭素材及びCOを供給する一方、反応生成物であるCOを排出するためのものである。この中、CO排出管120には、COに含まれる未反応のCOを分離するための分離装置(図示せず)が設けられる。
【0086】
第1供給管116、第2供給管118には、開度を調整自在な供給量調整バルブ122、124が介装される。これら供給量調整バルブ122、124の開度を調整することにより、炭素材、COの供給量が変更される。
【0087】
第1スペーサ90において、基板88に設けられた第1流通孔110、第2流通孔112及び第3流通孔114の位置に対応する位置には、第1通過孔126、第2通過孔128及び第3通過孔130がそれぞれ貫通形成される。
【0088】
第1スペーサ90には、さらに、略正方形状の第1窓132が複数個形成される。また、該第1スペーサ90の上端面には、第1通過孔126、第2通過孔128のそれぞれから各第1窓132の近傍まで延在する第1供給溝134と、第2供給溝136とが形成される。これら第1供給溝134と第2供給溝136は、各第1窓132の近傍で合流する。
【0089】
この第1スペーサ90及び後述する第2スペーサ96は、例えば、シリコンウェハに対してエッチングを行うことで作製することができる。
【0090】
第1反応部形成部材92には、第1スペーサ90の第1供給溝134と第2供給溝136の合流箇所に対応する位置に、供給孔138が貫通形成される。また、第3通過孔130に対応する位置には、排出連通孔139が貫通形成される。
【0091】
さらに、第1スペーサ90の第1窓132に対応する位置には、第2窓140が形成される。この第2窓140には、第1流通反応部形成部141が橋架されるように設けられる。この第1流通反応部形成部141の上端面には、断面略矩形状の反応溝142が形成される。この反応溝142の始点は、供給孔138の開口である。
【0092】
第2反応部形成部材94には、第1反応部形成部材92の第2窓140に対応する位置に、第3窓143が形成される。該第3窓143には、第2流通反応部形成部144が橋架されるように設けられる。この第2流通反応部形成部144の下端面には、断面略矩形状の反応溝145(図5参照)が形成される。この反応溝145が前記反応溝142に重畳されることによって、流通路と反応部を兼ねる流通反応部146が形成される。
【0093】
この流通反応部146には、上記したような担体に担持されたブードア反応触媒(いずれも図示せず)が配置される。このブードア反応触媒により、反応転化率が向上する。また、反応時間を短縮し得、且つ反応温度を低下させることもできる。
【0094】
さらに、第2反応部形成部材94には、前記反応溝、ひいては流通反応部146の終点に、第1排出孔148がそれぞれ貫通形成される。また、図4における右方前方に、1個の第2排出孔150が貫通形成される。
【0095】
以上のように構成される第1反応部形成部材92及び第2反応部形成部材94は、好適には黒色無機物からなる。この場合、太陽光が容易に吸収されるため、流通反応部146の温度を容易に上昇させることができるとともに、温度を保持することも容易であるからである。黒色無機物の好適な具体例としては、炭素材が挙げられる。
【0096】
第2スペーサ96には、第2反応部形成部材94の第3窓143に対応する位置に、略正方形状の第4窓152が複数個形成される。また、該第2スペーサ96の下端面には、前記第1排出孔148に連通する有底の排出穴154が第4窓152の近傍に陥没形成されるとともに、各々の排出穴154を始点とするCO排出溝156が形成される。各CO排出溝156は、集約穴158で合流する。
【0097】
以上の構成において、第1流通孔110、第1通過孔126、及び第1供給溝134によって炭素材供給路160が形成されるとともに、第2流通孔112、第2通過孔128及び第2供給溝136によってCO供給路162が形成される。また、第1排出孔148、排出穴154、CO排出溝156、集約穴158、第2排出孔150、排出連通孔139、第3通過孔130及び第3流通孔114によってCO排出路164が形成される。
【0098】
レンズ98は、太陽光照射手段170によって集光・照射された太陽光を透過し、流通反応部146の温度を上昇させる役割を果たす。なお、図5から諒解されるように、レンズ98は、第4窓152及び太陽光照射手段170に指向して膨出した凸部を有する凸レンズである。
【0099】
基板88、第1スペーサ90、第1反応部形成部材92、第2反応部形成部材94、第2スペーサ96、レンズ98が積層・接合されると、図5に示すように、1個の第1流通反応部形成部141、第2流通反応部形成部144同士によって1個の単セル82が形成される。すなわち、この製造装置80には、単セル82が複数個形成される。この単セルには、第1窓132及び第4窓152が含まれる。
【0100】
単セル82の内部は、真空引きが行われることによって空気等が排出されている。従って、各単セル82からは、いわゆる真空断熱効果によって熱が放出することが抑制される。
【0101】
レンズ98の上方には、太陽光を照射するための太陽光照射手段170が設けられる。この太陽光照射手段170は、第1実施形態における第1太陽光照射手段50、第2太陽光照射手段60及び第3太陽光照射手段62と同様に構成されており、従って、図1に示される構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0102】
この太陽光照射手段170も、太陽光を遮断するための図示しないシャッタを具備する。また、レンズ98の上方に、制御回路172に電気的に接続された温度測定手段174が配設されるのも、第1実施形態と同様である。勿論、この制御回路172には、前記供給量調整バルブ122、124及び前記シャッタが信号線176を介して電気的に接続される。
【0103】
製造装置80もまた、火力発電プラントや製鉄プラント、セメントプラント、化学プラント等に設けることができる。このようなプラントの操業に伴って発生したCOは、第2供給管118、CO供給路162(第2流通孔112、第2通過孔128及び第2供給溝136)を流通して単セル82に供給される。その一方で、該単セル82には、第1供給管116、炭素材供給路160(第1流通孔110、第1通過孔126及び第1供給溝134)を介し、上記した第1実施形態と同様にして炭素材の微粒子が供給される。
【0104】
その一方で、前記ヒートポンプによって加温された熱媒が熱媒供給管100、熱媒供給路104を介して熱媒流通路108に供給され、若干の間滞留する。熱媒流通路108が熱媒供給路104に比して大容積であるからである。このようにして熱媒流通路108に滞留した熱媒により、単セル82が予備加熱される。
【0105】
COと炭素材の微粒子は、第1供給溝134及び第2供給溝136の合流箇所で合流した後、供給孔138を介して流通反応部146に導入されて該流通反応部146を流通する。
【0106】
夏季の昼間且つ晴天で、しかも、前記シャッタが全開であるときには、太陽光は、太陽光照射手段170の集光レンズ52によって集光され、集光部54及び光ファイバ56に導かれた後、光照射部58から流通反応部146に照射される。従って、該流通反応部146を流通する炭素材及びCOが500℃程度まで加熱される。なお、第1供給管116、第2供給管118に設けられた供給量調整バルブ122、124は、予め全開に設定されている。
【0107】
第1反応部形成部材92、第2反応部形成部材94が黒色無機物で構成されている場合、太陽光が容易に吸収される。従って、流通反応部146の温度が容易に上昇する。しかも、温度を保持することも容易である。
【0108】
さらに、第2実施形態では、単セル82の第1窓132及び第4窓152が真空排気された空間であるので、真空断熱効果によって熱が放出することが抑制される。このため、流通反応部146の温度を保持することが一層容易となる。
【0109】
流通反応部146には、上記したように、担体に担持されたブードア反応触媒(いずれも図示せず)が配置されているので、COと炭素材が効率よく反応する。すなわち、上記式(1)に示されるブードア反応が生起され、これによりCOが生成される。
【0110】
ブードア反応によって生成されたCOは、流通反応部146の終点から第1排出孔148(図4参照)を上昇し、第2スペーサ96の排出穴154に到達する。COは、その後、排出穴154に連通するCO排出溝156、集約穴158、第2排出孔150、排出連通孔139、第3通過孔130及び第3流通孔114、すなわち、CO排出路164を経由し、さらに、CO排出管120を介して製造装置80の外部に排出される。そして、CO排出管120に設けられた前記分離装置の作用下に、COとCOが分離される。
【0111】
このように、第2実施形態においても、COからCOを容易に生成させることができる。上記から諒解されるように、太陽光、必要に応じては熱媒によって、流通反応部146を、ブードア反応を生起するために必要な温度に保つことができるからである。
【0112】
しかも、第2実施形態では、流通反応部146に対して真空断熱を行うようにしている。このため、単セル82から熱が放出されることが抑制されるので、温度保持が容易である。このことも、ブードア反応を効率よく進行させることに寄与する。
【0113】
その上、第2実施形態に係る製造装置80では、単セル82毎にブードア反応が生起される。従って、単セル82毎にCOを消費するとともに、COを得ることが可能である。このため、COの処理量及びCOの生成量が増大する。すなわち、第2実施形態によれば、多量のCOを処理することが可能であり、また、COの収量を増大することができる。
【0114】
なお、晴天の夏季昼間であっても、COの生成量を低減するべくCOと炭素材の供給量を低減するときには、制御回路172は、前記シャッタを所定の開度となるように閉止する。すなわち、太陽光照射手段170から照射される太陽光のエネルギ量が、炭素材、COの供給量に見合った量に低減するように変更される。これにより、第2実施形態においても、炭素材とCOの反応効率を略一定に維持することができる。
【0115】
これに対し、例えば、冬季の昼間で曇天であるようなときには、太陽光照射手段170のシャッタを全開にしても、太陽光のみでは反応部の温度を500℃以上に維持することが容易でなくなる可能性がある。従って、CO及び炭素材の供給量を上記の場合と同一とすると、反応効率が低下してCOの収量が低減し、一方、未反応のCOの排出量が増大してしまう。
【0116】
これを回避するべく、制御回路172は、供給量調整バルブ122、124に対し、開度を小さくする制御信号を発する。その結果、炭素材、COの供給量が、熱媒から供給されるエネルギ量に見合った量に低減するように変更される。これにより、炭素材とCOの反応効率を略一定に維持することができる。
【0117】
この第2実施形態においても熱媒から熱が供給されるので、太陽光が得られ難い夜間であってもブードア反応を継続して生起させることができる。従って、COを工業規模で連続生産することができる。
【0118】
第2実施形態において、炭素材及びCOに対して予備加熱を行う場合には、第1供給管116、第2供給管118に対して太陽光を照射することが可能な太陽光照射手段を別個に設けるようにすればよい。この場合において、炭素材に対して十分な予備加熱を行うべく、第1供給管116を第2供給管118に比して大径に設定するようにしてもよい。
【0119】
なお、十分な予備加熱を行うために炭素材の滞留時間を長くするには、第1供給管116を大径に設定する他、第1供給管116の内部に螺旋溝を形成し、炭素材に旋回流を生じさせた状態で移送を行うようにしてもよい。
【0120】
又は、第1供給管116内に乱流を生じさせるようにしてもよい。この場合、第1供給管116の内径や炭素材の供給速度(例えば、キャリアガスの流速)を、乱流が生じるような範囲に設定すればよい。
【0121】
また、ヒートポンプを設ける場合には、第1窓132を設けることなく第1スペーサ90を構成するようにしてもよい。この場合、第1窓132側の真空断熱を特に行わなくとも、ヒートポンプによって単セル82が十分に予備加熱されるからである。
【0122】
そして、第1実施形態及び第2実施形態のいずれにおいても、第2の加熱源は、ヒートポンプに特に限定されるものではない。例えば、廃棄物焼却炉やボイラー等の廃熱を第2の加熱源として利用するようにしてもよい。
【0123】
さらに、ブードア反応触媒を用いることなくCOと炭素材を反応させるようにしてもよい。この場合、反応温度を1000〜1100℃程度に設定すればよい。
【0124】
さらにまた、出発原料は、CO及び炭素材に特に限定されるものではなく、互いに反応することが可能なものであればよい。勿論、反応を生起するために触媒を用いる必要は特にない。
【符号の説明】
【0125】
10、80…製造装置
12、14、84、86…熱媒流通路形成部材
16、18…流通路・反応部形成部材 20、22、100…熱媒供給管
24、26、104…熱媒供給路 28、102…熱媒排出管
30、106…熱媒排出路 32、33、42、44…流通路
34、36、116、118…供給管
38、40、122、124…供給量調整バルブ
46…反応部 48、120…CO排出管
50、60、62、170…太陽光照射手段
52…集光レンズ 56…光ファイバ
58…光照射部 64、174…温度測定手段
68、172…制御回路 82…単セル
88…基板 90、96…スペーサ
92、94…反応部形成部材 98…レンズ
108…熱媒流通路 134、136…供給溝
132、140、143、152…窓 141、144…流通反応部形成部
146…流通反応部 156…CO排出溝
160、162…供給路 164…CO排出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得る反応生成物の製造方法であって、
前記出発原料を加熱する第1の加熱源として太陽光を用い、第2の加熱源として太陽光とは別の加熱源を用いて、互いに混合される前の前記出発原料の各々を個別に加熱して活性化する工程と、
活性化された前記出発原料同士に反応を生起させて反応生成物を得る工程と、
を有し、
前記出発原料を加熱する前記第1の加熱源のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御するか、又は、前記出発原料の供給量に応じて前記第1の加熱源のエネルギ量を制御することを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項2】
2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得る反応生成物の製造方法であって、
前記出発原料同士を混合して混合物を得た後、前記混合物を、第1の加熱源として太陽光を用い、第2の加熱源として太陽光とは別の加熱源を用いて加熱することで活性化するとともに、活性化された前記出発原料同士に反応を生起させて反応生成物を得る工程を有し、
前記混合物を加熱する前記第1の加熱源のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御するか、又は、前記出発原料の供給量に応じて前記第1の加熱源のエネルギ量を制御することを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項3】
2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得る反応生成物の製造方法であって、
前記出発原料を加熱する第1の加熱源として太陽光を用い、第2の加熱源として太陽光とは別の加熱源を用いて、互いに混合される前の前記出発原料の各々を個別に加熱して活性化する工程と、
活性化された前記出発原料同士を混合して活性混合物を得るとともに、該活性混合物を前記第1の加熱源又は前記第2の加熱源によって加熱することで、活性化された前記出発原料同士によって生起する還元反応を促進させて反応生成物を得る工程と、
を有し、
前記出発原料及び前記活性混合物を加熱する前記第1の加熱源のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御するか、又は、前記出発原料の供給量に応じて前記第1の加熱源のエネルギ量を制御することを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法において、前記出発原料としてCO及び還元剤を選定し、前記還元剤によってCOを還元することでCOを反応生成物として得ることを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法において、前記還元剤として炭素を用い、ブードア反応を生起させてCOを還元することを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法において、炭素を粉末とし、キャリアガスに同伴して供給することを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項7】
請求項4又は5記載の製造方法において、触媒を使用し、且つ500〜1100℃でCOを還元することを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の製造方法において、炭素の供給開始から反応部に到達するまでの時間を、COの供給開始から反応部に到達するまでの時間に比して長く設定することを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法において、ヒートポンプで回収した熱を前記第2の加熱源とすることを特徴とする反応生成物の製造方法。
【請求項10】
2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得るための反応生成物の製造装置であって、
第1の加熱源である太陽光を、互いに混合される前の前記出発原料の各々、又は、混合された後の前記出発原料に対して照射する太陽光照射手段と、
前記出発原料を加熱するための、太陽光とは別の第2の加熱源と、
互いに混合された前記出発原料同士を反応させるための反応部と、
を備え、
さらに、前記出発原料に照射される前記太陽光照射手段からの太陽光のエネルギ量に応じて前記出発原料の供給量を制御する出発原料供給量制御手段を具備することを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項11】
2種類以上の出発原料を加熱して反応生成物を得るための反応生成物の製造装置であって、
第1の加熱源である太陽光を、互いに混合される前の前記出発原料の各々、又は、混合された後の前記出発原料に対して照射する太陽光照射手段と、
前記出発原料を加熱するための、太陽光とは別の第2の加熱源と、
互いに混合された前記出発原料同士を反応させるための反応部と、
を備え、
さらに、前記出発原料の供給量に応じて前記出発原料に照射される前記太陽光照射手段からの太陽光のエネルギ量を制御する太陽光エネルギ制御手段を具備することを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項12】
請求項10又は11記載の装置において、前記反応部は、各々の前記出発原料を個別に流通するための流通路に連通し、
前記太陽光照射手段は、前記流通路又は前記反応部の少なくともいずれか一方に太陽光を照射することを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項13】
請求項10又は11記載の装置において、互いに当接し、各々の前記出発原料を合流させて反応させるための反応部を形成する1組の反応部形成部材と、
前記1組の反応部形成部材を挟持する1組のスペーサと、
前記1組のスペーサを挟持する1組の保持部材と、
を有し、
前記1組のスペーサの中の一方に、各々の前記出発原料を流通させるための流通路が形成されるとともに、残余の一方に、反応生成物を流通させるための流通路が形成され、
前記1組の保持部材中の少なくとも一方の保持部材の一部にレンズが設けられ、
前記太陽光照射手段は、前記レンズに対して太陽光を導入することを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、前記反応部が複数個形成され、各々の前記反応部で反応生成物を得る反応が生起されることを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項15】
請求項13又は14記載の装置において、前記1組の保持部材の間が真空排気されたことを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載の装置において、前記出発原料としてのCOを供給するCO供給源と、COを還元する還元剤を供給する還元剤供給源とを有することを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置において、前記還元剤供給源が炭素を供給するものであることを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項18】
請求項17記載の装置において、炭素を供給するための供給管が、COを供給するための供給管に比して大径に設定されたことを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項19】
請求項17記載の装置において、炭素を供給するための供給管の内部に螺旋溝が形成されたことを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項20】
請求項17記載の装置において、炭素を供給するための供給管の内部で乱流が形成されることを特徴とする反応生成物の製造装置。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれか1項に記載の装置において、ヒートポンプで回収した熱を前記第2の加熱源とすることを特徴とする反応生成物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101199(P2012−101199A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253451(P2010−253451)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】