説明

収穫穀粒処理装置の制御装置

【課題】従来から、収穫した穀粒を制御処理するにあたり、その穀粒の登熟の良否が重要な要素となって、各制御に影響することが知られている。しかしながら、従来の制御手段には、穀粒の特性である登熟に関する情報を入力して制御の基礎データとしておらず、穀粒が持つ固有の資質に合った制御が行われていない課題があった。
【解決手段】この発明は、上記課題を解消するために、収穫した穀粒の処理をする収穫穀粒処理装置(5)に装備した制御手段(6)に、外部情報を入力する入力手段(7)を接続し、該情報入力手段(7)に、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報を入力する構成とし、前記収穫穀粒処理装置(5)には、入力情報に基づいて前記制御手段(6)が判断した好ましい運転制御情報を報知する表示部(8)を設けて構成した収穫穀粒処理装置の制御装置としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収穫穀粒処理装置の制御手段において、処理の対象とする穀粒が固有する情報として入力された登熟に関する情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を報知し、制御信号を出力することができる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、収穫した穀粒を処理する装置、例えば、コンバインの脱穀装置や、穀物乾燥装置や、籾摺揺動選別装置や、更には、米選機等において、それぞれの装置には特有の機能を備えた装置を自動的に運転制御する固有の制御手段が装備されていて、選別制御、乾燥制御、揺動選別制御、米選機の選別制御等の各装置ごとの特殊な処理作用が自動制御の下に行われる構成となっている。
【0003】
例えば、コンバインの脱穀装置は、既に広く知られているように、脱穀処理物の選別制御を行う制御手段が装備され、脱穀処理作用中に、機体内部を流動する未処理物の層厚(例えば、揺動選別棚上を流動する被選別物の量)を接触センサー、又は非接触センサーで検出し、その検出情報をコントローラ(制御手段)に入力する構成となっている。そして、コントローラは、上記の入力された検出情報と、予めメモリーに記憶させている基準値等の制御に関する基礎データとを比較演算しながら、判断して唐箕やチャフシーブを操作するアクチュエータ側に制御信号を出力し、選別風やチャフ漏下量を制御調節する選別制御を行う構成となっている。
【0004】
この場合、脱穀装置の選別制御装置は、主として圧風唐箕の回転を制御するか、或いは、圧風唐箕の吸気口を広く・狭く制御調節して、機体内の選別室に吹き込む選別風力(量)を制御し、併せて、揺動選別棚上のチャフシーブの選別目合を広く・狭く制御調節してチャフから下方に漏下する処理量を自動的に制御調節する構成が一般的で広く知られている。
【0005】
そして、既に特許公報に掲載されている乾燥制御方法としては、特許第3573316号公報に、複数の穀物乾燥機の各制御部に、記憶装置を備えたパーソナルコンピューターをそれぞれ接続し、乾燥運転に必要な過去の乾燥経験データを前記各記憶装置に入力して記憶する一方、現在の乾燥運転によって取得した乾燥経験データを前記記憶装置に記憶するとともに、これら各パーソナルコンピューターを通信ラインで接続して前記記憶装置に記憶された乾燥経験データを互いにやり取りし、該やりとりした乾燥経験データに基づき、乾燥対象穀物に最適な乾燥プログラムを前記各パーソナルコンピューターにおいてそれぞれ作成するとともに前記記憶装置に記憶し、これを各乾燥機の制御部に連絡することを特徴とする乾燥制御方法が開示されている。
【0006】
上記特許は、乾燥経験データを穀物乾燥機相互間で交換することにより、他の穀物乾燥機による乾燥の経験も利用して、その収穫シーズンの天候や穀粒の組成に合ったより良い乾燥プログラムが作成できると述べられている。更に、長年の経験に頼ることなく、また、限定された何種かの乾燥プログラムから選択するだけでなく、乾燥対象穀物にとって、その年の最適な乾燥プログラムに調整・変更できると述べられている。
【特許文献1】特許第3573316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、収穫した穀粒を処理する場合、対象とする穀粒の登熟の良否が重要な要素となって、選別制御や乾燥制御の仕上がり具合に影響することが知られている。上述した特許公報に開示されている従来の乾燥制御方法は、各地(例えば県ごと)の乾燥機が実作業を通して経験した乾燥経験データを元に作成された乾燥プログラムにしたがって乾燥制御を行う方法であるから、優れた一方法だと認められる。しかしながら、上記乾燥プログラムには、本件出願の発明が主張する登熟に関する農水省情報、例えば、水稲の作況予測指数情報等の基礎データとなる数値情報が入力されておらず、対象とする穀粒が持つ固有の資質に合った乾燥制御が行われていない課題がある。
【0008】
すなわち、収穫する穀粒は、毎年の農林水産統計に見られるように、年次ごと、全国の地区ごとに精度の高い情報、登熟に関する数値情報が発信されており、具体的には単位面積あたりの収量、作況予測指数、穂数の多少、1穂当りのもみ数の多少、全もみ数の多少、更には登熟の良否等が地区ごとの予測値として発表されている。
【0009】
したがって、収穫穀粒処理装置は、各装置が固有する制御手段に基づいて自動制御をする場合、制御の条件に影響する情報、例えば、制御の対象とする穀粒の作況予測指数を制御情報として入力し、該入力情報に基づいて各装置の制御手段が、その穀粒に好ましい運転制御内容を決めてオペレータに報知し、それにしたがって制御を行うことが、安定した制御作用が行われることになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、コンバイン(1)の如く収穫作業中に、選別制御を行う脱穀装置(2)や、収穫後の穀粒を乾燥するために乾燥制御を行う穀物乾燥装置(3)や、乾燥後の穀粒の籾摺選別制御を行う籾摺揺動選別装置(4)等の収穫した穀粒の処理をする収穫穀粒処理装置(5)において、それぞれの装置ごとに特有の制御作用を可能にした制御手段(6)を装備し、該制御手段(6)には、外部情報の入力を行う情報入力手段(7)を接続して装置し、該情報入力手段(7)に、制御に必要な各種の情報と供に、前記収穫穀粒処理装置(5)が処理の対象としている収穫穀粒に固有の登熟に関する情報を入力する構成とし、前記収穫穀粒処理装置(5)には、入力情報に基づいて前記制御手段(6)が判断した好ましい運転制御情報を報知する表示部(8)を設けて構成した収穫穀粒処理装置の制御装置であって、各制御手段(6)に接続して設けている情報入力手段(7)に、処理の対象とする穀粒が固有する登熟に関する情報を入力することによって、制御手段(6)がその入力情報と他の基準値となる情報等とを比較演算しながら、その登熟の情報に適合した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示することによって、オペレータに具体的な制御内容を報知することができるものである。
【0011】
このようにして、各装置の制御手段(6)は、処理対象の穀粒が固有する登熟の度合に適合した好ましい制御の内容をオペレータに報知した上で制御作用を行うものである。
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記収穫穀粒処理装置(5)がコンバイン(1)である場合に、刈取対象とする圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記選別制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、脱穀装置(2)に選別制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置であって、コンバイン(1)によって刈取・脱穀作業を行うにあたり、脱穀装置(2)の選別制御を、処理の対象とする穀粒に合わせた制御で処理できるものとなっている。この場合、選別制御は、機体内部の選別室を流動する未処理物の検出量に、その未処理物に含まれている穀粒固有の資質となる登熟に関する作況指数に適合した好ましい制御が自動的に行われるもので、運転制御が安定して行われることになる。
【0012】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記収穫穀粒処理装置(5)が穀物乾燥装置(3)である場合に、対象とする穀粒を収穫した圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記乾燥制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、穀物乾燥装置(3)に乾燥制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置であって、乾燥制御についても、乾燥の対象とする穀粒の資質となる登熟に関する情報として作況指数を入力するものである。
【0013】
したがって、穀物乾燥装置(3)の制御手段(6)は、入力された作況指数に適合した好ましい制御内容を演算の末に決めて表示部(8)によって表示してオペレータに報知した後、乾燥制御を行うもので、安定した制御作用ができる。
【0014】
つぎに、請求項4に記載した発明は、前記収穫穀粒処理装置(5)が籾摺揺動選別装置(4)である場合に、対象とする穀粒を収穫した圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記籾摺揺動選別制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、籾摺揺動選別装置(4)に揺動選別制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置であって、籾摺揺動選別装置(4)の制御手段(6)は、入力された作況指数に基づいて演算の結果判断した運転制御内容に関する情報を表示部(8)に表示して、オペレータに報知して安定した選別制御を行うものである。
【0015】
つぎに、請求項5に記載した発明は、前記収穫穀粒処理装置(5)が米選機(9)である場合に、対象とする穀粒を収穫した圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記米選別制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、米選機(9)に米選別制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置であって、選別の対象とする穀粒に固有の資質に相当する作況指数を情報として入力することによって、その入力情報に基づく好ましい運転制御情報の表示が行われる。そして、米選別機(9)の制御手段(6)は、表示内容に沿った制御信号をアクチュエータ側に出力して、安定した米選機制御を行うものである。
【発明の効果】
【0016】
まず、請求項1に記載した発明は、各制御手段(6)に接続して設けている情報入力手段(7)に、処理の対象とする穀粒が固有する登熟に関する情報を入力することによって、制御手段(6)が、その入力情報と他の基準値となる各情報とを比較演算しながら、その登熟の情報に適合した好ましい運転制御内容を決めて表示部(8)に情報表示をすることにより、オペレータに具体的な制御内容を報知することができる特徴がある。
【0017】
更に、従来のこの種の制御装置は、既に述べた上記乾燥プログラムの特許にみられるように、本件発明が主張する登熟に関する農水省情報、例えば、水稲の作況予測指数情報等の基礎データとなる数値情報が運転制御内容を決定するデータとして組み込まれておらず、処理の対象とする穀粒が持つ固有の資質に合った制御が行われていない課題があった。
【0018】
これに対して、この発明は、従来の制御上の欠陥を解消して、運転制御の内容をオペレータに報知した後、穀粒の持つ固有の資質に合わせて安定した制御ができる特徴がある。
そして、請求項2に記載した発明は、刈取対象とする圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として選別制御の制御手段(6)に、情報入力手段(7)を介して入力することによって、処理の対象とする穀粒に合わせた制御内容で処理できる特徴を有するものである。
【0019】
そして、請求項3に記載した発明は、穀物乾燥装置(3)による乾燥制御についても、乾燥の対象とする穀粒の資質となる登熟に関する情報として作況指数を入力するものであるから、入力された作況指数に適合した好ましい制御内容を演算の末に決めて表示部(8)によって表示し、オペレータに報知した後、乾燥制御を行うもので、きわめて安定した制御作用が行われる特徴がある。
【0020】
そして、請求項4に記載した発明は、籾摺揺動選別装置(4)の制御手段(6)が、入力された作況指数に基づいて演算の結果判断した運転制御内容に関する情報を表示部(8)に表示して、オペレータに報知して安定した選別制御を行う特徴がある。
【0021】
そして、請求項5に記載した発明は、米選機(9)の選別対象とする穀粒に固有の資質に相当する作況指数を情報として入力することによって、制御手段(6)が、その入力情報に基づく好ましい運転制御内容を決めて表示し、オペレータに報知できる特徴がある。そして、この発明は、米選機(9)の制御手段(6)が、表示内容に沿った制御信号をアクチュエータ側に出力して、安定した米選機の制御を行う優れた特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、この出願の発明は、コンバイン1の如く収穫作業中に、選別制御を行う脱穀装置2や、収穫後の穀粒を乾燥するために乾燥制御を行う穀物乾燥装置3や、乾燥後の穀粒の籾摺選別制御を行う籾摺揺動選別装置4等の収穫した穀粒の処理をする収穫穀粒処理装置5の制御装置に関するものである。この発明は、それぞれの装置ごとに特有の制御作用を行う制御手段6を装備し、該制御手段6には、外部情報の入力を、例えばインターネット等の通信手段を利用して行うように接続した情報入力手段7に、前記収穫穀粒処理装置5が処理の対象としている収穫穀粒に固有の登熟に関する情報を入力する構成としている。そして、前記収穫穀粒処理装置5には、入力情報に基づいて前記制御手段6が判断した好ましい運転制御内容の情報を報知する表示部8を設けて構成した収穫穀粒処理装置の制御装置であって、今から処理しようとしている穀粒の登熟に関する情報を入力して、その情報に基づき好ましい制御内容を決め、これを表示部8に表示してオペレータに報知し、オペレータに登塾の度合に対応させた好ましい制御内容を知らせて制御信号を出力するものである。
【0023】
従来、この種の制御においては、冷害による不作対応や高温による過剰豊作対応は、収穫直前から農水省情報や地域の営農情報から精度の高い情報が発信されているが、これらの情報は実作業面にはほとんど活用されておらず、収穫穀粒を処理するオペレータには、具体的にどのように装置を運転するのが適するのか?が理解されないまま作業が行われていた。
【0024】
そこで、この出願の発明は、制御手段6に接続した外部からの情報入力手段7を利用して、例えば、インターネット、電話回線等の通信手段、その他FD、CFカード等を利用して、個々の装置の制御手段6に登熟に関する情報を入力し、好ましい運転制御の内容を決めて情報としてオペレータに報知し、安定した制御運転を行うものである。
【0025】
以下、具体例として、コンバイン1、穀物乾燥装置3、籾摺揺動選別装置4、米選機9等の収穫穀粒処理装置5について、その運転制御のシステムの構成例とフローチャートに示す制御作用を説明する。
【0026】
まず、収穫穀粒処理装置5の制御システムは、図1に示すように、制御手段6を装備し、この制御手段6には情報入力手段7(コンピュータ1)を接続し、外部情報を入力できる構成としている。そして、制御手段6は、図1に示すように、上記情報入力手段7を接続する他に、表示部8と記憶部10とを付属装置として接続して設けており、該表示部8には運転制御内容やその他、必要な情報の表示を可能にしており、前記記憶部10には入力された制御に必要とする各情報を記憶する構成としている。
【0027】
そして、ホストコンピュータ11は、図1に示すように、各装置の制御手段6に接続している前記情報入力手段7とインターネットの通信手段で接続できる構成とし、例えば、農作業支援センター(仮称)等に装置され、農水省が発信する農林水産統計が配布用に準備して記憶・保持されているものとする。そして、各農家は、作業にあたり自己の情報入力手段7(コンピュータ1)を、上記農作業支援センターのホストコンピュータ11にインターネットで接続して、農林水産統計の他に、農作業の支援に関する情報を入手できる作業支援システムを構成している。この場合、各農家は、例えば、コンバイン1や穀物乾燥機3の制御に関し、品種ごとの制御プログラムや、地域ごとの圃場に合った制御プログラムが用意されているホストコンピュータ11に情報入力手段7をインターネットで接続して各自の収穫穀粒処理装置5の制御手段6にダウンロードすることができるシステムに構成され、これに基づいて各種の制御が品種や地域の特性に合致して適確にできるように農作業の支援システムとなっている。
【0028】
なお、農水省の発信する登熟に関する情報は、インターネット以外の通信手段で入手することも可能であって、手近な方法として電話回線による通信、FDやCFカード等を媒体とする方法等が考えられる。
【0029】
つぎに、各装置ごとに制御の手順を表示したフローチャートに基づいて制御作用の要点のみを説明する。
まず、コンバイン1における脱穀装置2の選別制御は、図2、乃至図4に示すように、主として唐箕15の回転数を制御して選別室17に吹き込む選別風を調節し、更に、チャフシーブ16の選別目合を調節して漏下量を制御する構成としている。
【0030】
そして、コンバイン1の制御手段6は、図1において、収穫穀粒処理装置5として説明したように、情報入力手段7をホストコンピュータ11にインターネットで接続して刈取・脱穀作業を行う圃場が該当する地域の作況指数を入力し、その入力値を、図2に示すフローチャートで解るように、基準値95に対比して実施例の場合、3段階の制御パターンを用意している。
【0031】
まず、第一の制御パターンは、図2に示すように、作況指数が基準値95未満の数値の範囲、第二の制御パターンは、作況指数が基準値95以上で105以下の範囲に該当する場合、更に、第三の制御パターンは、作況指数が105より大きい場合の3パターンに分類している。したがって、制御手段6は、情報入力手段7を介してその圃場の地域(県単位)の作況指数を入力すると、図2に示すフローチャートのいずれかの制御パターンに属し、刈取りする穀粒に適合した制御内容を決定するものである。
【0032】
そして、制御手段6は、それぞれの制御パターンごとに、表示部8には、図2のフローチャートに示すように、制御情報(「未熟粒 注意」、「唐箕回転数 高調節」、「シーブレバー高く調節」、「刈高さやや高めに調節」)の表示をしてオペレータに制御内容を報知するのである。
【0033】
そして、制御手段6は、上記表示情報(第一の制御パターン)に合わせて制御信号を出力して選別制御を行うものである。
このようにして、制御手段6は、第二の制御パターン、及び第三の制御パターンについても、入力された作況指数に対応して制御パターンが決められ、制御内容を表示部8に表示した後、制御信号を出力して脱穀装置2の選別制御を行うものである。
【0034】
従来、通常行われている脱穀装置2の選別制御作用は、図4で説明すると、超音波センサ20によって揺動選別棚21上を流動する未処理物の層厚(量)を検出し、これに基づいて制御手段6が制御信号を出力して唐箕15の回転制御やチャフシーブ16の選別目合を制御調節するものであるが、上記実施例の場合には、従来行われている選別制御に対象穀粒の作況指数が情報として追加され、これらを総合して判断した制御内容が決定され、実行される。
【0035】
したがって、制御手段6は、収穫した穀粒に最も好ましいと思われる制御内容の信号を出力して制御を行うことができる。
つぎに、穀物乾燥装置3について、その乾燥制御作用を図5、及び図6に基づいて説明する。
【0036】
まず、穀物乾燥装置3の制御手段6は、図5に示すように、情報入力手段7を介して、乾燥の対象とする穀粒の作況指数が入力されると、予め記憶部10に記憶・保持している基準値作況指数95と比較演算しながら、当該穀粒が第一から第三の3つの制御パターンのどれに属するかを決定する。
【0037】
このようにして、制御手段6は、入力された作況指数に基づいて制御パターンを決定し、仮に、第一の制御パターンに属する場合には、表示部8に表示信号を出力して制御情報(「未乾燥 不稔粒 注意」、「設定水分やや高めに調節」、「乾燥速度 控えめに」)が表示され、オペレータに報知される。そして、制御手段6は、図5に示すように、排塵機風量調節弁を全閉するようにアクチュエータに制御信号を出力して制御作用を行うのである。
【0038】
このように、穀物乾燥装置3は、制御手段6の制御信号に基づいて乾燥制御を行うが、そのとき、機体の側部に上下に設けている揚穀装置25によって機体内の穀粒を循環しながら乾燥室内にバーナー26の燃焼による乾燥風を吹き込んで乾燥するのである。なお24は排塵機である。
【0039】
この場合、制御手段6は、機体内部に設置している図示しない水分測定装置によって乾燥中の穀粒の水分値が測定され、そのデーターを乾燥穀粒の水分値(%)として、連続的に入力されており、その実測値が初期設定している設定(目標)水分値(%)に達するまで乾燥制御を継続することになる。
【0040】
つぎに、籾摺揺動選別装置4について、その揺動選別制御作用を図7、及び図8に基づいて説明する。
まず、籾摺揺動選別装置4の制御手段6は、図7に示すように、情報入力手段7を介して、籾摺の対象とする穀粒の作況指数が入力されると、予め記憶部10に記憶・保持している基準値作況指数95と比較演算しながら、当該穀粒が、既に説明した第一から第三の3つの制御パターンのどれに属するかを決定する。
【0041】
このようにして、制御手段6は、入力された作況指数に基づいて制御パターンを決定し、仮に、第一の制御パターンに属する場合には、表示部8に表示信号を出力して制御情報(「未熟粒 注意」、「選別板角度 高めに調節」、「玄米仕切板 玄米側に調節」)が表示され、オペレータに報知される。そして、制御手段6は、図7のフローチャートが示すように、二番風量調節弁26が3/4閉まり側に制御調節する制御信号をアクチュエータに出力して制御作用を行うのである。
【0042】
なお、図8において、28は籾漏斗、29は籾摺ロール、30は摺落米移送棚、31はバケット揚穀機、32は揺動選別装置、33は玄米仕切板、34は混合米移送螺旋、35は籾移送螺旋、36は籾揚穀装置、37は玄米揚穀機を示している。
【0043】
つぎに、米選機9について、その米選機の制御作用を図9、及び図10に基づいて説明する。
まず、米選機9の制御手段6は、図9に示すように、情報入力手段7を介して、選別の対象とする穀粒の作況指数が入力されると、予め記憶部10に記憶・保持している基準値作況指数95と比較演算しながら、当該穀粒が第一から第三の3つの制御パターンのどれに属するかを決定する。
【0044】
このようにして、制御手段6は、入力された作況指数に基づいて制御パターンを決定し、仮に、第一の制御パターンに属する場合には、表示部8に表示信号を出力して制御情報(「未熟粒 注意」、「インバータレバー 高選別側調節」、「目幅やや広めに設定 注意」)が表示され、オペレータに制御内容の情報として報知される。そして、制御手段6は、図9のフローチャートが示すように、インバータレバーを高選別側に制御調節するように制御信号をアクチュエータに出力して制御作用を行うのである。
【0045】
なお、図10において、40は投入漏斗、41は選別網筒、42は外周に揚穀螺旋43を設けた揚穀装置、44は駆動用のモーター、45は未熟米取出口、46は精粒取出口を示している。
【0046】
以上述べたように、この発明の各実施例、すなわち、選別制御を行う脱穀装置2や、収穫後の穀粒を乾燥制御する穀物乾燥装置3や、乾燥後の穀粒の籾摺選別制御を行う籾摺揺動選別装置4や、更には、米の選別制御を行う米選機9は、従来から広く知られているように、それぞれの装置ごとに特有の制御作用を行う制御手段6を装備している。
【0047】
そして、各実施例は、該制御手段6に外部情報の入力を、例えばインターネット等の通信手段を利用して行うように接続した情報入力手段7により、これらの装置が処理の対象としている収穫穀粒に固有の登熟に関する情報を入力する構成としている。この場合、各実施例は、作況予測指数を情報入力手段7を介して制御手段6に入力し、その入力情報に基づいて前記制御手段6が基準値としている作況予測指数95に比較して3つの制御パターンのどれかに属するかを決め、そこで判断した好ましい運転制御内容の情報を報知する表示部8を設けてオペレータに制御内容を情報として報知する優れた特徴を有するものである。
【0048】
このように、各装置の制御手段6は、今から処理を始める穀粒について、その穀粒が固有する登熟に関する情報を入力して、その情報に基づき制御パターンに分類して好ましい制御内容を決め、これを表示部8に表示してオペレータに報知し、オペレータに登塾の度合に対応させた好ましい制御内容を知らせて制御信号を出力するものである。
【0049】
従来、この種の制御においては、冷害による不作対応や高温による過剰豊作対応は、収穫直前から農水省情報や地域の営農情報から精度の高い情報が発信されているが、これらの情報は、各農家の実作業面にはほとんど利用されておらず、収穫穀粒を処理するオペレータには、具体的にどのように装置を運転するのが適するのかが全く理解されないまま作業が行われていた。
【0050】
そこで、この発明の各実施例は、制御手段6に接続した外部からの情報入力手段7を利用して、インターネットにより個々の装置の制御手段6に登熟に関する情報を入力し、好ましい運転制御の内容を決めて情報としてオペレータに報知し、安定した制御運転を行うことを可能にしたものである。
【0051】
なお、上記の各装置の実施例は、制御パターンを、第一、第二、第三の3つに分類したが、これにこだわることはなく、更に、細かく細分化して多くの制御パターンに分類することは自由である。
【0052】
なお、本発明、及び本実施例では作況指数に基づいた制御を行っているが、収穫時期の生籾をサンプルにして近赤外線を照射して予め求められた検量線で籾の黄化度や玄米の未熟米率といった熟度係数を測定し、その数値を作況指数の代わりに入力して収穫機や乾燥・調製機を制御する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】制御システムの構成図
【図2】脱穀装置の選別制御のフローチャート図
【図3】コンバインの側面図
【図4】脱穀装置の切断側面図
【図5】穀物乾燥装置の乾燥制御のフローチャート図
【図6】穀物乾燥装置の斜面図
【図7】籾摺揺動選別装置の揺動選別制御のフローチャート図
【図8】籾摺揺動選別装置を内部の側面図
【図9】米選機の選別制御のフローチャート図
【図10】米選機の一部を破断した側面図
【符号の説明】
【0054】
1 コンバイン 2 脱穀装置
3 穀物乾燥装置 4 籾摺揺動選別装置
5 収穫穀粒処理装置 6 制御手段
7 情報入力手段 8 表示部
9 米選機 10 記憶部
11 ホストコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバイン(1)の如く収穫作業中に、選別制御を行う脱穀装置(2)や、収穫後の穀粒を乾燥するために乾燥制御を行う穀物乾燥装置(3)や、乾燥後の穀粒の籾摺選別制御を行う籾摺揺動選別装置(4)等の収穫した穀粒の処理をする収穫穀粒処理装置(5)において、それぞれの装置ごとに特有の制御作用を可能にした制御手段(6)を装備し、該制御手段(6)には、外部情報の入力を行う情報入力手段(7)を接続して装置し、該情報入力手段(7)に、制御に必要な各種の情報と供に、前記収穫穀粒処理装置(5)が処理の対象としている収穫穀粒に固有の登熟に関する情報を入力する構成とし、前記収穫穀粒処理装置(5)には、入力情報に基づいて前記制御手段(6)が判断した好ましい運転制御情報を報知する表示部(8)を設けて構成した収穫穀粒処理装置の制御装置。
【請求項2】
前記収穫穀粒処理装置(5)がコンバイン(1)である場合に、刈取対象とする圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記選別制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、脱穀装置(2)に選別制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置。
【請求項3】
前記収穫穀粒処理装置(5)が穀物乾燥装置(3)である場合に、対象とする穀粒を収穫した圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記乾燥制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、穀物乾燥装置(3)に乾燥制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置。
【請求項4】
前記収穫穀粒処理装置(5)が籾摺揺動選別装置(4)である場合に、対象とする穀粒を収穫した圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記籾摺揺動選別制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、籾摺揺動選別装置(4)に揺動選別制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置。
【請求項5】
前記収穫穀粒処理装置(5)が米選機(9)である場合に、対象とする穀粒を収穫した圃場の作況指数を、収穫穀粒に固有の登熟に関する情報として前記米選別制御の制御手段(6)に接続した情報入力手段(7)に入力可能に構成し、前記制御手段(6)は、入力された作況指数情報に基づいて判断した好ましい運転制御情報を表示部(8)に表示すると供に、米選機(9)に米選別制御信号の出力を行う構成とした請求項1記載の収穫穀粒処理装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−333839(P2006−333839A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165543(P2005−165543)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】