収納トレー及び収納体
【課題】収納部がより密集した状態で数多く配置され、一度に多くの被収納物を効率良く収納すること。
【解決手段】複数の被収納物を収納するトレーであって、薄板10と、薄板の上面側が開口となるように薄板に凹み形成され、被収納物を内部に収納する複数の有底状の収納部11と、を備え、複数の収納部が、少なくとも隣り合う他の1つの収納部に対して近接するように配置され、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋がっている収納トレー1を提供する。
【解決手段】複数の被収納物を収納するトレーであって、薄板10と、薄板の上面側が開口となるように薄板に凹み形成され、被収納物を内部に収納する複数の有底状の収納部11と、を備え、複数の収納部が、少なくとも隣り合う他の1つの収納部に対して近接するように配置され、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋がっている収納トレー1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械時計や電子部品等の被収納物、例えば、時計駆動装置(時計ムーブメ
ント)を収納する収納トレー及びこれを備える収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計ムーブメントを代表とする小型で精密な機械部品や電子部品は、破損し易いものであるため、保管、搬送するにはこれらを収納する収納部が複数形成された収納トレーが一般的に用いられている。これにより、1枚の収納トレーで複数の被収納物を安全に保管したり、搬送したりすることができる。
【0003】
この種の収納トレーの1つとして、時計ムーブメントを収納するケース体が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
このケース体は、熱可塑性の樹脂をフォーミング加工して形成されたものであり、全面に亘って時計ムーブメントを収納するための収納部が複数形成されている。これら各収納部は、ケース体の上面から凹んだ凹部であり、その中央には台形状凸部が形成されている。これにより、時計ムーブメントを収納部に収納した場合には、台形状凸部の上面に載置された状態で収納されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−13385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、時計ムーブメントのような被収容物は、通常大量生産されるものであるので、1枚の収納トレーにできるだけ多くの被収納物を収納することが望まれる。しかしながら、収納トレーは、主に下記の条件によって大きさの制約を受けてしまうものであった。
【0007】
・客先からの要求や、収納トレー自体を収容するダンボール等のサイズ条件
・収納トレーを製造する側の設備条件
・予め決められた収納トレーのサイズ条件
等である。
【0008】
従って、収納トレー自体のサイズを変更せずに、収納部の数をできるだけ多く確保できるように設計することが求められている。
【0009】
この点、特許文献1に記載されているケース体は、単に収納部が整列しているだけのものであり、収納部の数をできるだけ多く確保するための工夫は何らなされていない。そのため、被収納物を1つのケース体で数多く収納して、効率の良い収納を行うことは難しいものであった。
【0010】
特に、大量の被収納物を保管、搬送する場合には、収納トレーを数十段、多いときには数百段重ねて取り扱う場合があるが、1枚の収納トレーに効率良く被収納物を収納できないと、段数が高くなってしまう。
【0011】
従って、多段に重ねた収納トレーを人手によって搬送する際に、かさばって扱い難くなってしまうだけでなく、重量が重くなってしまい搬送する者への負担が大きくなってしまう。その結果、重ね合わせる段数が制限されてしまい、効率の良い搬送を行えなかった。また、トラック便や航空便等として運送する場合には、容積によって運送費が変わるので、段数と運送費とのバランスが合わず、コスト高を招いてしまうものであった。
【0012】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、収納部がより密集した状態で数多く配置され、一度に多くの被収納物を効率良く収納することができる収納トレー及びこれを備える収納体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
【0014】
本発明に係る収納トレーは、上記本発明の収納トレーにおいて、前記膨出部が、一定の間隔を開けて不連続的に形成され、複数の前記収納部のうち前記薄板の外縁側に配置された収納部が、前記膨出部の非形成領域にて外縁に近接するように配置され、前記凹みが前記非形成領域において部分的に外側に連通していることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る収納トレーにおいては、薄板の外縁に膨出部が一定の間隔を開けて不連続的、即ち、途切れ途切れに形成されている。そして、複数の収納部のうち薄板の外縁側に配置された収納部は、膨出部が形成されていない非形成領域において外縁に近接するように配置されており、凹みが部分的に外側に連通している。つまり、収納部を薄板の外縁にできるだけ近づけており、薄板の限られたスペースを最大限に有効利用して収納部を配置している。従って、より多くの収納部を得ることができ、被収納物をさらに収納することができる。
【0016】
なお、収納部の凹みが部分的に外側に連通しているので、収納トレーを仮に多段に重ねた場合であっても、側方から収納部内に被収納物が収納されているか否かの有無を確認し易い。
【0017】
また、本発明に係る収納トレーは、上記本発明の収納トレーにおいて、不連続的に形成された前記膨出部が、凹みが部分的に外側に連通した前記収納部の外形ラインから所定距離離間した状態で形成されていることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る収納トレーにおいては、不連続的に形成された膨出部が、非形成領域を利用して凹みが部分的に外側に連通している収納部(外縁に近接した収納部)の外形ラインから所定距離離間している。そのため、収納部の凹み形成とは完全に切り離した状態で膨出部を形成することができる。従って、潰れや変形等を生じさせずに、膨出部を狙い通りの形状に高精度に形成することができる。
【0019】
また、本発明に係る収納トレーは、上記本発明の収納トレーにおいて、前記膨出部が、前記薄板の下方に向けて折曲される際、薄板の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように折曲されていることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る収納トレーにおいては、膨出部が、薄板の下方に向けて折曲される際、薄板の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように折曲されている。そのため、収納部に収納した被収納物が仮に薄板の外縁から部分的に外側に飛び出している状況で、収納トレーを多段に重ね合わせたとしても、膨出部が被収納物に干渉してしまうことを防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る収納体は、上記本発明の収納トレーと、前記収納トレーの前記収納部に収納された被収納物と、を備えていることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る収納体においては、大量の被収納物を効率良く1枚の収納トレーで収納することができる。
【0023】
また、本発明に係る収納体は、上記本発明の収納体において、前記被収納物が、時計駆動装置であることを特徴とする。
【0024】
この発明に係る収納体においては、小型で精密な時計駆動装置を、安全に且つ効率良く収納することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る収納トレーによれば、収納部がより密集した状態で数多く配置され、一度に多くの被収納物を効率良く収納することができるので、大量の被収納物を小スペースで効率良く保管したり、コスト高を招いたり人手に負担を与えることなく搬送したりすることができる。
【0026】
また、本発明に係る収納体によれば、上記収納トレーを有しているので、大量の被収納物を効率良く1枚の収納トレーで収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る収納トレーの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す収納トレーに収納する時計ムーブメントを示す図であって、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】図1に示す収納トレーの上面図である。
【図4】図3に示す収納トレーの断面矢視A−A図である。
【図5】図3に示す収納トレーの一部拡大図である。
【図6】図5に示す収納トレーを矢印E方向から見た側面図である。
【図7】図3に示す収納トレーの断面矢視B−B図である。
【図8】図3に示す収納トレーの断面矢視C−C図である。
【図9】図3に示す収納トレーの各収納部に時計ムーブメントを収納した状態を示す断面図である。
【図10】収納トレーの各収納部に時計ムーブメントを収納した後に、各収納トレーを互いに逆向きで重ね合わせる際の向きを示す図である。
【図11】図10に示す向きで収納トレーを重ね合わせたときの断面図である。
【図12】収納トレーを図10に示す向きで重ね合わせたときの、突起部と嵌合孔との関係を示す断面図である。
【図13】収納トレーを同じ向きで重ね合わせてしまったときの、突起部と時計ムーブメントとの関係を示す断面図である。
【図14】本発明に係る収納トレーの変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1から図13を参照して説明する。なお、本実施形態では、被収納物の一例として、指針軸を有する時計ムーブメント(時計駆動装置)を収納するトレーを例に挙げて説明する。
【0029】
本実施形態の収納トレー1は、図1に示すように、時計ムーブメントMを一度に複数収納することができるトレーである。なお、収納トレー1に複数の時計ムーブメントMが収納されると、収納パッケージ(収納体)Pとなる。
【0030】
ここで、時計ムーブメントMについて、先に簡単に説明する。本実施形態の時計ムーブメントMは、図2(a)及び図2(b)に示すように、直径が22mm〜24mm程度の小型な精密部品であって、上面の中心に指針軸M1が突出している。この指針軸M1は、直径が0.2mm程度の軸であり、時計に組み込まれた時に針が取り付けられるようになっている。また、時計ムーブメントMは、周縁に鍔部M2が形成されるように下面側が段付きになるように外形形成されている。
【0031】
収納トレー1は、図3及び図4に示すように、厚さ1mm以下の薄板10を真空成形等の手法で成形したものであり、全面に亘って時計ムーブメントMを収納する複数(50個)の収納部11が互いに直交する縦方向(矢印L1方向)及び横方向(矢印L2方向)の2方向に沿って格子状に並んだ状態で形成されている。
【0032】
薄板10は、ポリスチレン樹脂等からなる樹脂シートであり、横方向の長さよりも縦方向の長さが長い平面視矩形状に形成されている。
【0033】
収納部11は、薄板10の上面側が開口となるように該薄板10に凹み形成されることで、有底状に形成されている。この際、各収納部11は、底部がさらに1段凹んだ段付き状に形成されており、段部11aが設けられている。このように、各収納部11は段付き状に形成されているので、面内強度が高く、剛性が増した状態となっている。また、段付き状に形成されているので、時計ムーブメントMの外形に倣った形状となっている。これにより、収納部11内に時計ムーブメントMを収納する際に、指針軸M1を上方に向け、鍔部M2を段部11aに当接させた状態で収納することが可能である。
【0034】
ところで、複数の収納部11は、横方向に一定間隔を開けて5列並び、且つ、一列あたり縦方向に10個連続して並ぶように形成されている。この際、収納部11は、縦方向に関しては薄板10の横中心ラインC1を中心として左右対称に形成されていると共に、横方向に関しては薄板10の縦中心ラインC2を中心として左右非対称に形成されている。
【0035】
しかも、縦方向に並んだ収納部11は、隣り合う他の収納部11に対して近接するように配置されており、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋がった状態となっている。つまり、縦方向に並んだ収納部11は、密集した状態となっており、薄板10の限られたスペース内でできるだけ多く多数個取りされるように設計されている。加えて、縦方向に並んだ収納部11のうち、薄板10の外縁側に配置された収納部11は、後述する膨出部15が形成されていない非形成領域にて外縁に近接するように配置されており、凹みが部分的に外側に連通した状態となっている。つまり、薄板10のスペースを最大限に利用して、収納部11は縦方向に数多く(10個)配置されている。
【0036】
また、これら複数の収納部11は、時計ムーブメントMのサイズより若干大きいサイズに形成されており、内周壁の全体が時計ムーブメントMの側面に接して遊びを極力抑えている。具体的には、時計ムーブメントMを収納した際に、僅か0.15mm程度の遊びしか生じないようにサイズ設計されている。よって、収納時の時計ムーブメントMの位置ずれを防止することができるようになっている。
【0037】
そして、縦方向に並んだ収納部11は、時計ムーブメントMが収納されたときに、時計ムーブメントM間の間隔が僅か1mm程度になるように近接している。この際、上述したように時計ムーブメントMは、位置ずれが防止されているので、僅か1mm程度の隙間であっても互いに干渉することがない。仮に、隣り合う時計ムーブメントMが0.15mmの遊び分ずつ接近したとしても、両者の間にはまだ0.7mmの余裕が残されている。そのため、やはり互いに干渉することがない。
【0038】
また、薄板10の外縁側に設けられた収納部11に収納された時計ムーブメントMは、膨出部15の外側に飛び出さないようになっている。
【0039】
次に、横方向に関する収納部11の配列について説明する。
【0040】
横方向に関して、収納部11は一定間隔B0を開けて5列に並んでいる。この際、両端
の2列に並んだ収納部11は、薄板10の外縁に形成された後述する膨出部15の外側からそれぞれ下記に示す距離だけ離間するように設計されている。
【0041】
即ち、一方の列に並んだ収納部11は、距離B1だけ離間し、他方の列に並んだ収納部
11は距離〔B1+(D+B0)/2〕だけ離間するように設計されている。
【0042】
なお、上記Dは、収納部11の横方向の長さである。
【0043】
そのため、50個の収納部11は、全体的に片側(図3の紙面に対して右側)に寄っており、上述したように縦中心ラインC2を中心として左右非対称となっている。このように収納部11の形成位置が設計されているため、収納トレー1を多段に重ね合わせる際に、180度向きが異なった状態で重ね合わせると、上段側の収納トレー1の収納部11と下段側の収納トレー1の収納部11とが横方向に半ピッチずれた状態で重なるようになっている。つまり、上段側の収納トレー1の収納部11の下面が、下段側の収納トレー1の後述する隙間領域20の上面に当接した状態で重なるようになっている。この際、下段側の収納トレー1の収納部11の上方には、上段側の収納トレー1の後述する隙間空間21が位置するようになっている。
【0044】
なお、収納トレー1を同じ向きで重ねてしまった場合には、それぞれの収納部11が重なり合う状態となる。
【0045】
ところで、薄板10の外縁には、該薄板10の上方に向けて折曲された後、薄板10の下方に向けて折曲された膨出部15が略全周に亘って形成されている。特に、膨出部15は、薄板10の下方に向かって折曲される際に、薄板10の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように、外拡がりテーパ状に形成されている。なお、傾斜角度θとしては、垂直な状態から5°程度傾斜している。この膨出部15は、収納トレー1を重ね合わせた時に、上段側の収納トレー1に形成された膨出部15と重なり合うようになっている。これにより、重ね合わされた収納トレー1は、縦方向及び横方向の2方向(平面方向)に対して位置決めされるようになっている。
【0046】
膨出部15の下端は、水平方向に向けて折曲された縁部15aとなっている。この縁部15aは、薄板10の四隅に相当する角部のうち3箇所が曲面加工(R加工)されているが、1箇所が斜めにカットされた切欠部16となっている。この切欠部16は、収納トレー1を重ね合わせる際の向きを認識するための目印として機能するものである。
【0047】
このように形成された膨出部15は、薄板10の長手方向に沿って連続的に形成されていると共に、短手方向に沿って一定の間隔を開けて不連続的、即ち、途切れ途切れに形成されている。そして、膨出部15が形成されていない非形成領域においては、上述したように、収納部11の凹みが部分的に外側に連通している。
【0048】
この際、不連続的に形成された膨出部15は、図5及び図6に示すように、凹みが部分的に外側に連通した収納部11の外形ラインから所定距離H離間した状態で形成されている。つまり、収納部11の凹み形成とは完全に切り離された状態で膨出部15が形成されている。そのため、膨出部15は、潰れや変形等が生じ難く、狙い通りの形状に高精度に形成されている。
【0049】
また、図3及び図4に示すように、薄板10の残りの領域のうち、横方向に隣り合う収納部11の間に位置する領域は、隙間領域20とされている。この隙間領域20は、薄板10の下面側に谷間状に窪んだ隙間空間21が確保されている領域である。つまり、各収納部11は、凹み形成されたものであるので、収納部11間には谷間状に窪んだ隙間空間21が存在する。そして、薄板10の下面側にこの隙間空間21が確保された領域が隙間領域20となる。
【0050】
また、薄板10には、図7及び図8に示すように、複数の突起部22及び嵌合孔23がそれぞれ形成されている。本実施形態では、それぞれ12個ずつ形成されている場合を例にしている。但し、この数に限定されるものではない。
【0051】
突起部22は、薄板10から収納部11よりも下方に突出するように形成されている。嵌合孔23は、収納トレー1を互いに逆向きに(180度向きが異なった状態で)重ね合わせた時に、突起部22に対向する位置に形成されており、該突起部22が嵌り込んで収容される孔である。ところで、これら複数の突起部22は、収納トレー1を同じ向きで重ね合わせた時に、収納部11に収納された時計ムーブメントMの上面に当接するようになっている。この点については、後に詳細に説明する。
【0052】
また、図3に示すように、薄板10の外縁から距離〔B1+(D+B0)/2〕だけ離間した列の収納部11と、膨出部15との間には、長穴状に凹んだ凹部24が複数形成されている。この凹部24は、薄板10の剛性低下を防ぐ補強目的のためのものであり、縦方向に沿って間隔を空けた状態で膨出部15の近傍に形成されている。
【0053】
なお、この凹部24の下面は、収納部11の下面と同じ高さで面一となるように設計されており、収納トレー1を重ね合わせた時に、下段の収納トレー1に収納された時計ムーブメントMを上から押さえる役割も担っている。
【0054】
次に、このように構成された収納トレー1を利用して、時計ムーブメントMを収納する場合について説明する。
【0055】
初めに、収納トレー1を複数枚用意した後、各収納トレー1の収納部11に時計ムーブメントMを順次収納する。この際、図9に示すように、指針軸M1が上方に向くように時計ムーブメントMを収納する。すると、時計ムーブメントMは、鍔部M2が収納部11の段部11a上に載った状態で収納される。これにより、時計ムーブメントMは、安定して各収納部11に収納される。
【0056】
特に、縦方向に並んだ収納部11は、隣り合う他の収納部11に対して近接しており、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋っている。しかも、薄板10の外縁側に配置された収納部11は、膨出部15が形成されていない非形成領域において外縁に近接しており、凹みが外側に連通している。
【0057】
このように、薄板10の限られたスペースを最大限に利用して、複数の収納部11を密集させた状態で縦方向に数多く配置している。これにより、収納トレー1自体のサイズを従来のサイズから変更することなく、より多くの収納部11を確保することができる。その結果、1枚の収納トレー1で、50個という多くの時計ムーブメントMを効率良く収納することができる。
【0058】
また、時計ムーブメントMを収納した際、収納部11の内周壁が時計ムーブメントMの側面に接して、両者の遊びを僅か0.15mm程度に抑えている。これにより、時計ムーブメントMは、収納部11内での位置ずれが防止され、がたつくことなく安定に収納される。特に、縦方向に近接し合っている収納部11に時計ムーブメントMが収納されていても、時計ムーブメントM同士ががたつき等によって干渉することがなく、両者の間には少なくとも0.7mmの隙間が確保されている。従って、時計ムーブメントMの品質を確実に維持した状態で収納を行うことができる。
【0059】
因みに、隣り合う収納部11同士の間に連通溝12を設けずに、仮に隙間領域20との間隔を極力狭めようとしても、製造上の限界から以上に示した小さな隙間は実現できず、収納トレー1は大型化してしまう。この点、連通溝12を設けた本実施形態の収納トレー1によれば、このような問題もなく数多くの収納部11を確保することができる。
【0060】
また、各収納部11は、底部が1段凹んだ段付き状に形成されて、剛性が増しているので、収納された時計ムーブメントMを安定した状態で保管することができる。しかも、各収納部11の剛性増加に伴って、収納トレー1全体の剛性が上がることが期待できるので、撓みや捩れ等を抑えることができる。従って、収納に適した高品質なトレーとすることができる。
【0061】
更に、薄板10の外縁には膨出部15が形成されているので、トレー全体の剛性が高まっている。この点においても、収納トレー1全体の撓みや捩れ等をより効果的に抑えることができる。また、収納トレー1を摘む際に、膨出部15の部分を利用して掴むことができるので、収納された時計ムーブメントMに触ることなく持ち運びを行うことも可能である。
【0062】
上述したように、各収納トレー1に50個の時計ムーブメントMを収納することで、収納パッケージPを得ることができる。次に、各収納トレー1に時計ムーブメントMを収納した後、図10に示すように、各収納トレー1を交互に重ね合わせながら積み重ねていく。なお、図10では、4段だけ図示している。この際、互いに逆向きとなるように収納トレー1を重ね合わせていく。このとき収納トレー1の縁部15aには、方向認識用の切欠部16が形成されているので、該切欠部16の向きが交互に反対側に位置するように重ね合わせることで、向きを間違えることなく収納トレー1を重ね合わせることができる。
【0063】
従って、重ね合わせ作業を確実且つ効率良く行うことができる。しかも、各収納トレー1には、膨出部15が形成されているので、この膨出部15を重ねはじめの手掛かりとして利用できる。よって、スピーディに重ね合わせ作業を行うことができる。
【0064】
そして、収納トレー1を重ねると、図11に示すように、上段側の収納トレー1の収納部11の下面が、下段側の収納トレー1の隙間領域20の上面に当接する。これにより、重ね合わされた収納トレー1は高さ方向に位置決めされると共に、密着した状態で安定的に重なった状態となる。なお、図11では、4段だけ図示している。
【0065】
しかもこの際、上段側の収納トレー1の隙間空間21、即ち、凹み形成によって突出した収納部11間に形成された谷間状の窪みが、下段側の収納トレー1の収納部11の上方に位置するようになっている。そのため、下段側の収納トレー1に収納されている時計ムーブメントMの上方に、空間を確保することができる。
【0066】
従って、収納トレー1を多段に重ね合わせた際に、上段の収納トレー1が指針軸M1に接触することがなく、該指針軸M1に何ら影響(負荷)を与えることがない。よって、指針軸M1への接触を未然に防いで悪影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0067】
その結果、大量の時計ムーブメントMを、品質を保ったまま少ないスペースで効率良く保管したり、コスト高を招いたり、人手に負担を与えることなく搬送したりすることができる。
【0068】
特に、1枚の収納トレー1で多くの時計ムーブメントMを収納できるので、同じ数の時計ムーブメントMを保管する場合には、従来に比べて段数を少なくすることができる。よって、多段に収納トレー1を搬送する際に、取り扱いが容易になるだけでなく、運送費を抑えて低コスト化を図ることができる。
【0069】
なお、多段に重ねた後に搬送する場合には、蓋の役割として空の状態の収納トレー1を最上段に載せるのが好ましい。また、多段に重ねた後に搬送する場合には、全体を熱収縮フィルムで覆って梱包することが好ましい。こうすることで、時計ムーブメントMに塵埃等が付着してしまうことを効果的に防止することができる。
【0070】
また、各収納トレー1を安定して重ね合わせることができるので、多段に重ねても安定性に優れている。特に、収納トレー1を重ね合わせると、図11に示すように、膨出部15同士が重なり合う。そのため、収納トレー1は、面内方向に対して位置決めされるので、重ね合わせの途中でずれてしまうことがない。従って、より安定した状態で重ね合わせを行うことができると共に、時計ムーブメントMの指針軸M1に対して何ら負荷を与えない状態を確実に維持し続けることができる。
【0071】
加えて、薄板10の外縁側に配置された収納部11は、凹みが部分的に外側に連通しているので、収納トレー1を多段に重ねた場合であっても、側方から収納部11内に時計ムーブメントMが収納されているか否かの有無を確認し易い。
【0072】
ところで、収納トレー1を重ね合わせた際、図12に示すように、上段側の収納トレー1に形成された突起部22は、下段側の収納トレー1に形成された嵌合孔23内に嵌り込んで収納される。そのため、この突起部22に邪魔されることなく、収納トレー1同士を重ね合わせることができる。
【0073】
次に、収納トレー1を重ね合わせる際に、逆向きに重ねるのではなく、間違って同じ向きで重ねてしまった場合について説明する。
【0074】
この場合には、図13に示すように、上段側の収納トレー1に形成された突起部22が、下段側の収納トレー1の収納部11に収納されている時計ムーブメントMの指針軸M1を除く上面に当接する。しかも突起部22は、収納部11よりも下方に突出するように形成されているので、収納トレー1が完全に重なり合うよりも前に当接する。そのため、収納トレー1がこれ以上重なり合うことがない。よって、指針軸M1に上段側の収納トレー1が接触する等して負荷を与えてしまうことを防止することができる。従って、同じ向きで重ねてしまった場合であっても、時計ムーブメントMの品質を維持することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、収納トレー1を同じ向きで重ねてしまった際に、突起部22が下段側の収納トレー1に収納されている時計ムーブメントMの指針軸M1を除く上面に当接するように構成したが、この場合に限られず、下段側の収納トレー1の隙間領域20の上面に当接するようにしても構わないし、両方に当接するようにしても構わない。
【0076】
また、上記実施形態では、各収納トレー1に時計ムーブメントMを先に収納した後に、重ね合わせる場合を例にしたが、この場合に限定されるものではない。例えば、最初の収納トレー1に時計ムーブメントMを収納した後、空の収納トレー1を重ね、その後、この空の収納トレー1に時計ムーブメントMを収納する順番でも良い。このような順番としても、同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、被収納物の一例として、指針軸M1を有する時計ムーブメントMを例に挙げて説明したが、他の精密機械部品や電子部品であっても構わない。
【0079】
また、時計ムーブメントの一例として、下面側が段付きとなって周縁に鍔部M2が形成された時計ムーブメントMを例に挙げて説明したが、この形状に限定されるものではない。例えば、周縁に段の無い平面視丸型でも構わないし、平面視角型の時計ムーブメントでも構わない。この場合には、収納部11の内周壁を時計ムーブメントの形状に応じて変え、時計ムーブメントの位置ずれを防止すれば良い。
【0080】
また、上記実施形態では、時計ムーブメントMを収納部11に収納した際に、鍔部M2が段部11aに当接する場合を例に挙げて説明したが、鍔部M2が段部11aに当接する前に時計ムーブメントMの最下面が収納部11に当接することで収納される形でも構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
時計ムーブメントMの厚みと収納部11の深さとの関係で、鍔部Mと段部11aとが当接するか否か別れるが、いずれの場合であっても同様の作用効果を奏することができる。つまり、厚みの異なる時計ムーブメントMであっても、問題なく収納することが可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、収納部11の内周壁全体が時計ムーブメントMの側面に接することで遊びを抑え、収納時の時計ムーブメントMの位置ずれを防止したが、内周壁の少なくとも一部が時計ムーブメントMの側面に接して遊びを抑えるように構成しても構わない。
【0083】
また、上記実施形態では、複数の収納部11のうち、縦方向に並んだ収納部11だけを近接させ、密集した状態としたが、この場合に限られず、図14に示すように横方向にも密集した状態となるように形成しても構わない。つまり、複数の収納部11を、縦方向及び横方向に格子状に配置して隣り合う全ての収納部11に対して近接させ、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋がった状態にしても構わない。このように収納トレー30を構成することで、より多くの収納部11(70個)を確保することができ、1枚の収納トレー30でさらに多くの時計ムーブメントMを効率良く収納することができる。
【0084】
なお、この場合において、複数の収納部11を縦方向及び横方向に格子状に配置するのではなく、千鳥状に配列しても構わない。
【0085】
また、上記実施形態では突起部22及び嵌合孔23がそれぞれ12個ずつ形成されている場合を例にしたが、この数に限定されるものではなく、自由に設計して構わない。例えば、30個以上形成しても構わない。この場合には、突起部22及び嵌合孔23として機能に加え、収納トレー1自体の強度を上げて、剛性がより高まることが期待できる。
【0086】
また、上記実施形態では、薄板10の縁部15aの一部を斜めにカットした切欠部16を方向認識用の目印としたが、切り欠きではなく何らかの指標を記すことで目印としても構わない。
【0087】
また、上記実施形態において、収納トレー1に時計ムーブメントMを収納する作業や、収納トレー1を重ねる作業を、ロボット等の機械で行っても良い。特に、ロボット等の機械を利用して収納トレー1を重ね合わせ作業を行う場合には、切欠部16が形成されていることが好ましい。即ち、切欠部16を指標とするようにプログラミングすることで、収納トレー1の向きを高精度に認識できるので、作業をより確実に行えると共に、制御が非常に容易になる。
【0088】
また、収納トレー1を重ね合わせた時に、上段側の収納トレー1の収納部11の下面が下段側の収納トレー1の隙間領域20の上面に当接することで、高さ方向の位置決めをしたが、膨出部15に段差部を形成し、この段差部を利用して高さ方向の位置決めをしても構わない。
【0089】
また、薄板10の外縁側の収納部11に時計ムーブメントMを収納した際、時計ムーブメントMが膨出部15の外側に飛び出さないようにしたが、若干飛び出たとしても重ね合わされた上段側の収納トレー1に接触することがない。つまり、膨出部15は、薄板10の下方に向けて折曲される際に、外方に向けて傾斜する傾斜面となるように外拡がりテーパ状に折曲されているので、膨出部15と時計ムーブメントMとが直接干渉し難い。従って、収納部11をより薄板10の外縁側に寄せることができ、さらなる時計ムーブメントMの多数取りに繋げることができる。
【符号の説明】
【0090】
M…時計ムーブメント(時計駆動装置、被収納物)
P…収納パッケージ(収納体)
1…収納トレー
10…薄板
11…収納部
12…連通溝
15…膨出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械時計や電子部品等の被収納物、例えば、時計駆動装置(時計ムーブメ
ント)を収納する収納トレー及びこれを備える収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計ムーブメントを代表とする小型で精密な機械部品や電子部品は、破損し易いものであるため、保管、搬送するにはこれらを収納する収納部が複数形成された収納トレーが一般的に用いられている。これにより、1枚の収納トレーで複数の被収納物を安全に保管したり、搬送したりすることができる。
【0003】
この種の収納トレーの1つとして、時計ムーブメントを収納するケース体が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
このケース体は、熱可塑性の樹脂をフォーミング加工して形成されたものであり、全面に亘って時計ムーブメントを収納するための収納部が複数形成されている。これら各収納部は、ケース体の上面から凹んだ凹部であり、その中央には台形状凸部が形成されている。これにより、時計ムーブメントを収納部に収納した場合には、台形状凸部の上面に載置された状態で収納されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−13385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、時計ムーブメントのような被収容物は、通常大量生産されるものであるので、1枚の収納トレーにできるだけ多くの被収納物を収納することが望まれる。しかしながら、収納トレーは、主に下記の条件によって大きさの制約を受けてしまうものであった。
【0007】
・客先からの要求や、収納トレー自体を収容するダンボール等のサイズ条件
・収納トレーを製造する側の設備条件
・予め決められた収納トレーのサイズ条件
等である。
【0008】
従って、収納トレー自体のサイズを変更せずに、収納部の数をできるだけ多く確保できるように設計することが求められている。
【0009】
この点、特許文献1に記載されているケース体は、単に収納部が整列しているだけのものであり、収納部の数をできるだけ多く確保するための工夫は何らなされていない。そのため、被収納物を1つのケース体で数多く収納して、効率の良い収納を行うことは難しいものであった。
【0010】
特に、大量の被収納物を保管、搬送する場合には、収納トレーを数十段、多いときには数百段重ねて取り扱う場合があるが、1枚の収納トレーに効率良く被収納物を収納できないと、段数が高くなってしまう。
【0011】
従って、多段に重ねた収納トレーを人手によって搬送する際に、かさばって扱い難くなってしまうだけでなく、重量が重くなってしまい搬送する者への負担が大きくなってしまう。その結果、重ね合わせる段数が制限されてしまい、効率の良い搬送を行えなかった。また、トラック便や航空便等として運送する場合には、容積によって運送費が変わるので、段数と運送費とのバランスが合わず、コスト高を招いてしまうものであった。
【0012】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、収納部がより密集した状態で数多く配置され、一度に多くの被収納物を効率良く収納することができる収納トレー及びこれを備える収納体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
【0014】
本発明に係る収納トレーは、上記本発明の収納トレーにおいて、前記膨出部が、一定の間隔を開けて不連続的に形成され、複数の前記収納部のうち前記薄板の外縁側に配置された収納部が、前記膨出部の非形成領域にて外縁に近接するように配置され、前記凹みが前記非形成領域において部分的に外側に連通していることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る収納トレーにおいては、薄板の外縁に膨出部が一定の間隔を開けて不連続的、即ち、途切れ途切れに形成されている。そして、複数の収納部のうち薄板の外縁側に配置された収納部は、膨出部が形成されていない非形成領域において外縁に近接するように配置されており、凹みが部分的に外側に連通している。つまり、収納部を薄板の外縁にできるだけ近づけており、薄板の限られたスペースを最大限に有効利用して収納部を配置している。従って、より多くの収納部を得ることができ、被収納物をさらに収納することができる。
【0016】
なお、収納部の凹みが部分的に外側に連通しているので、収納トレーを仮に多段に重ねた場合であっても、側方から収納部内に被収納物が収納されているか否かの有無を確認し易い。
【0017】
また、本発明に係る収納トレーは、上記本発明の収納トレーにおいて、不連続的に形成された前記膨出部が、凹みが部分的に外側に連通した前記収納部の外形ラインから所定距離離間した状態で形成されていることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る収納トレーにおいては、不連続的に形成された膨出部が、非形成領域を利用して凹みが部分的に外側に連通している収納部(外縁に近接した収納部)の外形ラインから所定距離離間している。そのため、収納部の凹み形成とは完全に切り離した状態で膨出部を形成することができる。従って、潰れや変形等を生じさせずに、膨出部を狙い通りの形状に高精度に形成することができる。
【0019】
また、本発明に係る収納トレーは、上記本発明の収納トレーにおいて、前記膨出部が、前記薄板の下方に向けて折曲される際、薄板の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように折曲されていることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る収納トレーにおいては、膨出部が、薄板の下方に向けて折曲される際、薄板の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように折曲されている。そのため、収納部に収納した被収納物が仮に薄板の外縁から部分的に外側に飛び出している状況で、収納トレーを多段に重ね合わせたとしても、膨出部が被収納物に干渉してしまうことを防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る収納体は、上記本発明の収納トレーと、前記収納トレーの前記収納部に収納された被収納物と、を備えていることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る収納体においては、大量の被収納物を効率良く1枚の収納トレーで収納することができる。
【0023】
また、本発明に係る収納体は、上記本発明の収納体において、前記被収納物が、時計駆動装置であることを特徴とする。
【0024】
この発明に係る収納体においては、小型で精密な時計駆動装置を、安全に且つ効率良く収納することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る収納トレーによれば、収納部がより密集した状態で数多く配置され、一度に多くの被収納物を効率良く収納することができるので、大量の被収納物を小スペースで効率良く保管したり、コスト高を招いたり人手に負担を与えることなく搬送したりすることができる。
【0026】
また、本発明に係る収納体によれば、上記収納トレーを有しているので、大量の被収納物を効率良く1枚の収納トレーで収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る収納トレーの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す収納トレーに収納する時計ムーブメントを示す図であって、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】図1に示す収納トレーの上面図である。
【図4】図3に示す収納トレーの断面矢視A−A図である。
【図5】図3に示す収納トレーの一部拡大図である。
【図6】図5に示す収納トレーを矢印E方向から見た側面図である。
【図7】図3に示す収納トレーの断面矢視B−B図である。
【図8】図3に示す収納トレーの断面矢視C−C図である。
【図9】図3に示す収納トレーの各収納部に時計ムーブメントを収納した状態を示す断面図である。
【図10】収納トレーの各収納部に時計ムーブメントを収納した後に、各収納トレーを互いに逆向きで重ね合わせる際の向きを示す図である。
【図11】図10に示す向きで収納トレーを重ね合わせたときの断面図である。
【図12】収納トレーを図10に示す向きで重ね合わせたときの、突起部と嵌合孔との関係を示す断面図である。
【図13】収納トレーを同じ向きで重ね合わせてしまったときの、突起部と時計ムーブメントとの関係を示す断面図である。
【図14】本発明に係る収納トレーの変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1から図13を参照して説明する。なお、本実施形態では、被収納物の一例として、指針軸を有する時計ムーブメント(時計駆動装置)を収納するトレーを例に挙げて説明する。
【0029】
本実施形態の収納トレー1は、図1に示すように、時計ムーブメントMを一度に複数収納することができるトレーである。なお、収納トレー1に複数の時計ムーブメントMが収納されると、収納パッケージ(収納体)Pとなる。
【0030】
ここで、時計ムーブメントMについて、先に簡単に説明する。本実施形態の時計ムーブメントMは、図2(a)及び図2(b)に示すように、直径が22mm〜24mm程度の小型な精密部品であって、上面の中心に指針軸M1が突出している。この指針軸M1は、直径が0.2mm程度の軸であり、時計に組み込まれた時に針が取り付けられるようになっている。また、時計ムーブメントMは、周縁に鍔部M2が形成されるように下面側が段付きになるように外形形成されている。
【0031】
収納トレー1は、図3及び図4に示すように、厚さ1mm以下の薄板10を真空成形等の手法で成形したものであり、全面に亘って時計ムーブメントMを収納する複数(50個)の収納部11が互いに直交する縦方向(矢印L1方向)及び横方向(矢印L2方向)の2方向に沿って格子状に並んだ状態で形成されている。
【0032】
薄板10は、ポリスチレン樹脂等からなる樹脂シートであり、横方向の長さよりも縦方向の長さが長い平面視矩形状に形成されている。
【0033】
収納部11は、薄板10の上面側が開口となるように該薄板10に凹み形成されることで、有底状に形成されている。この際、各収納部11は、底部がさらに1段凹んだ段付き状に形成されており、段部11aが設けられている。このように、各収納部11は段付き状に形成されているので、面内強度が高く、剛性が増した状態となっている。また、段付き状に形成されているので、時計ムーブメントMの外形に倣った形状となっている。これにより、収納部11内に時計ムーブメントMを収納する際に、指針軸M1を上方に向け、鍔部M2を段部11aに当接させた状態で収納することが可能である。
【0034】
ところで、複数の収納部11は、横方向に一定間隔を開けて5列並び、且つ、一列あたり縦方向に10個連続して並ぶように形成されている。この際、収納部11は、縦方向に関しては薄板10の横中心ラインC1を中心として左右対称に形成されていると共に、横方向に関しては薄板10の縦中心ラインC2を中心として左右非対称に形成されている。
【0035】
しかも、縦方向に並んだ収納部11は、隣り合う他の収納部11に対して近接するように配置されており、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋がった状態となっている。つまり、縦方向に並んだ収納部11は、密集した状態となっており、薄板10の限られたスペース内でできるだけ多く多数個取りされるように設計されている。加えて、縦方向に並んだ収納部11のうち、薄板10の外縁側に配置された収納部11は、後述する膨出部15が形成されていない非形成領域にて外縁に近接するように配置されており、凹みが部分的に外側に連通した状態となっている。つまり、薄板10のスペースを最大限に利用して、収納部11は縦方向に数多く(10個)配置されている。
【0036】
また、これら複数の収納部11は、時計ムーブメントMのサイズより若干大きいサイズに形成されており、内周壁の全体が時計ムーブメントMの側面に接して遊びを極力抑えている。具体的には、時計ムーブメントMを収納した際に、僅か0.15mm程度の遊びしか生じないようにサイズ設計されている。よって、収納時の時計ムーブメントMの位置ずれを防止することができるようになっている。
【0037】
そして、縦方向に並んだ収納部11は、時計ムーブメントMが収納されたときに、時計ムーブメントM間の間隔が僅か1mm程度になるように近接している。この際、上述したように時計ムーブメントMは、位置ずれが防止されているので、僅か1mm程度の隙間であっても互いに干渉することがない。仮に、隣り合う時計ムーブメントMが0.15mmの遊び分ずつ接近したとしても、両者の間にはまだ0.7mmの余裕が残されている。そのため、やはり互いに干渉することがない。
【0038】
また、薄板10の外縁側に設けられた収納部11に収納された時計ムーブメントMは、膨出部15の外側に飛び出さないようになっている。
【0039】
次に、横方向に関する収納部11の配列について説明する。
【0040】
横方向に関して、収納部11は一定間隔B0を開けて5列に並んでいる。この際、両端
の2列に並んだ収納部11は、薄板10の外縁に形成された後述する膨出部15の外側からそれぞれ下記に示す距離だけ離間するように設計されている。
【0041】
即ち、一方の列に並んだ収納部11は、距離B1だけ離間し、他方の列に並んだ収納部
11は距離〔B1+(D+B0)/2〕だけ離間するように設計されている。
【0042】
なお、上記Dは、収納部11の横方向の長さである。
【0043】
そのため、50個の収納部11は、全体的に片側(図3の紙面に対して右側)に寄っており、上述したように縦中心ラインC2を中心として左右非対称となっている。このように収納部11の形成位置が設計されているため、収納トレー1を多段に重ね合わせる際に、180度向きが異なった状態で重ね合わせると、上段側の収納トレー1の収納部11と下段側の収納トレー1の収納部11とが横方向に半ピッチずれた状態で重なるようになっている。つまり、上段側の収納トレー1の収納部11の下面が、下段側の収納トレー1の後述する隙間領域20の上面に当接した状態で重なるようになっている。この際、下段側の収納トレー1の収納部11の上方には、上段側の収納トレー1の後述する隙間空間21が位置するようになっている。
【0044】
なお、収納トレー1を同じ向きで重ねてしまった場合には、それぞれの収納部11が重なり合う状態となる。
【0045】
ところで、薄板10の外縁には、該薄板10の上方に向けて折曲された後、薄板10の下方に向けて折曲された膨出部15が略全周に亘って形成されている。特に、膨出部15は、薄板10の下方に向かって折曲される際に、薄板10の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように、外拡がりテーパ状に形成されている。なお、傾斜角度θとしては、垂直な状態から5°程度傾斜している。この膨出部15は、収納トレー1を重ね合わせた時に、上段側の収納トレー1に形成された膨出部15と重なり合うようになっている。これにより、重ね合わされた収納トレー1は、縦方向及び横方向の2方向(平面方向)に対して位置決めされるようになっている。
【0046】
膨出部15の下端は、水平方向に向けて折曲された縁部15aとなっている。この縁部15aは、薄板10の四隅に相当する角部のうち3箇所が曲面加工(R加工)されているが、1箇所が斜めにカットされた切欠部16となっている。この切欠部16は、収納トレー1を重ね合わせる際の向きを認識するための目印として機能するものである。
【0047】
このように形成された膨出部15は、薄板10の長手方向に沿って連続的に形成されていると共に、短手方向に沿って一定の間隔を開けて不連続的、即ち、途切れ途切れに形成されている。そして、膨出部15が形成されていない非形成領域においては、上述したように、収納部11の凹みが部分的に外側に連通している。
【0048】
この際、不連続的に形成された膨出部15は、図5及び図6に示すように、凹みが部分的に外側に連通した収納部11の外形ラインから所定距離H離間した状態で形成されている。つまり、収納部11の凹み形成とは完全に切り離された状態で膨出部15が形成されている。そのため、膨出部15は、潰れや変形等が生じ難く、狙い通りの形状に高精度に形成されている。
【0049】
また、図3及び図4に示すように、薄板10の残りの領域のうち、横方向に隣り合う収納部11の間に位置する領域は、隙間領域20とされている。この隙間領域20は、薄板10の下面側に谷間状に窪んだ隙間空間21が確保されている領域である。つまり、各収納部11は、凹み形成されたものであるので、収納部11間には谷間状に窪んだ隙間空間21が存在する。そして、薄板10の下面側にこの隙間空間21が確保された領域が隙間領域20となる。
【0050】
また、薄板10には、図7及び図8に示すように、複数の突起部22及び嵌合孔23がそれぞれ形成されている。本実施形態では、それぞれ12個ずつ形成されている場合を例にしている。但し、この数に限定されるものではない。
【0051】
突起部22は、薄板10から収納部11よりも下方に突出するように形成されている。嵌合孔23は、収納トレー1を互いに逆向きに(180度向きが異なった状態で)重ね合わせた時に、突起部22に対向する位置に形成されており、該突起部22が嵌り込んで収容される孔である。ところで、これら複数の突起部22は、収納トレー1を同じ向きで重ね合わせた時に、収納部11に収納された時計ムーブメントMの上面に当接するようになっている。この点については、後に詳細に説明する。
【0052】
また、図3に示すように、薄板10の外縁から距離〔B1+(D+B0)/2〕だけ離間した列の収納部11と、膨出部15との間には、長穴状に凹んだ凹部24が複数形成されている。この凹部24は、薄板10の剛性低下を防ぐ補強目的のためのものであり、縦方向に沿って間隔を空けた状態で膨出部15の近傍に形成されている。
【0053】
なお、この凹部24の下面は、収納部11の下面と同じ高さで面一となるように設計されており、収納トレー1を重ね合わせた時に、下段の収納トレー1に収納された時計ムーブメントMを上から押さえる役割も担っている。
【0054】
次に、このように構成された収納トレー1を利用して、時計ムーブメントMを収納する場合について説明する。
【0055】
初めに、収納トレー1を複数枚用意した後、各収納トレー1の収納部11に時計ムーブメントMを順次収納する。この際、図9に示すように、指針軸M1が上方に向くように時計ムーブメントMを収納する。すると、時計ムーブメントMは、鍔部M2が収納部11の段部11a上に載った状態で収納される。これにより、時計ムーブメントMは、安定して各収納部11に収納される。
【0056】
特に、縦方向に並んだ収納部11は、隣り合う他の収納部11に対して近接しており、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋っている。しかも、薄板10の外縁側に配置された収納部11は、膨出部15が形成されていない非形成領域において外縁に近接しており、凹みが外側に連通している。
【0057】
このように、薄板10の限られたスペースを最大限に利用して、複数の収納部11を密集させた状態で縦方向に数多く配置している。これにより、収納トレー1自体のサイズを従来のサイズから変更することなく、より多くの収納部11を確保することができる。その結果、1枚の収納トレー1で、50個という多くの時計ムーブメントMを効率良く収納することができる。
【0058】
また、時計ムーブメントMを収納した際、収納部11の内周壁が時計ムーブメントMの側面に接して、両者の遊びを僅か0.15mm程度に抑えている。これにより、時計ムーブメントMは、収納部11内での位置ずれが防止され、がたつくことなく安定に収納される。特に、縦方向に近接し合っている収納部11に時計ムーブメントMが収納されていても、時計ムーブメントM同士ががたつき等によって干渉することがなく、両者の間には少なくとも0.7mmの隙間が確保されている。従って、時計ムーブメントMの品質を確実に維持した状態で収納を行うことができる。
【0059】
因みに、隣り合う収納部11同士の間に連通溝12を設けずに、仮に隙間領域20との間隔を極力狭めようとしても、製造上の限界から以上に示した小さな隙間は実現できず、収納トレー1は大型化してしまう。この点、連通溝12を設けた本実施形態の収納トレー1によれば、このような問題もなく数多くの収納部11を確保することができる。
【0060】
また、各収納部11は、底部が1段凹んだ段付き状に形成されて、剛性が増しているので、収納された時計ムーブメントMを安定した状態で保管することができる。しかも、各収納部11の剛性増加に伴って、収納トレー1全体の剛性が上がることが期待できるので、撓みや捩れ等を抑えることができる。従って、収納に適した高品質なトレーとすることができる。
【0061】
更に、薄板10の外縁には膨出部15が形成されているので、トレー全体の剛性が高まっている。この点においても、収納トレー1全体の撓みや捩れ等をより効果的に抑えることができる。また、収納トレー1を摘む際に、膨出部15の部分を利用して掴むことができるので、収納された時計ムーブメントMに触ることなく持ち運びを行うことも可能である。
【0062】
上述したように、各収納トレー1に50個の時計ムーブメントMを収納することで、収納パッケージPを得ることができる。次に、各収納トレー1に時計ムーブメントMを収納した後、図10に示すように、各収納トレー1を交互に重ね合わせながら積み重ねていく。なお、図10では、4段だけ図示している。この際、互いに逆向きとなるように収納トレー1を重ね合わせていく。このとき収納トレー1の縁部15aには、方向認識用の切欠部16が形成されているので、該切欠部16の向きが交互に反対側に位置するように重ね合わせることで、向きを間違えることなく収納トレー1を重ね合わせることができる。
【0063】
従って、重ね合わせ作業を確実且つ効率良く行うことができる。しかも、各収納トレー1には、膨出部15が形成されているので、この膨出部15を重ねはじめの手掛かりとして利用できる。よって、スピーディに重ね合わせ作業を行うことができる。
【0064】
そして、収納トレー1を重ねると、図11に示すように、上段側の収納トレー1の収納部11の下面が、下段側の収納トレー1の隙間領域20の上面に当接する。これにより、重ね合わされた収納トレー1は高さ方向に位置決めされると共に、密着した状態で安定的に重なった状態となる。なお、図11では、4段だけ図示している。
【0065】
しかもこの際、上段側の収納トレー1の隙間空間21、即ち、凹み形成によって突出した収納部11間に形成された谷間状の窪みが、下段側の収納トレー1の収納部11の上方に位置するようになっている。そのため、下段側の収納トレー1に収納されている時計ムーブメントMの上方に、空間を確保することができる。
【0066】
従って、収納トレー1を多段に重ね合わせた際に、上段の収納トレー1が指針軸M1に接触することがなく、該指針軸M1に何ら影響(負荷)を与えることがない。よって、指針軸M1への接触を未然に防いで悪影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0067】
その結果、大量の時計ムーブメントMを、品質を保ったまま少ないスペースで効率良く保管したり、コスト高を招いたり、人手に負担を与えることなく搬送したりすることができる。
【0068】
特に、1枚の収納トレー1で多くの時計ムーブメントMを収納できるので、同じ数の時計ムーブメントMを保管する場合には、従来に比べて段数を少なくすることができる。よって、多段に収納トレー1を搬送する際に、取り扱いが容易になるだけでなく、運送費を抑えて低コスト化を図ることができる。
【0069】
なお、多段に重ねた後に搬送する場合には、蓋の役割として空の状態の収納トレー1を最上段に載せるのが好ましい。また、多段に重ねた後に搬送する場合には、全体を熱収縮フィルムで覆って梱包することが好ましい。こうすることで、時計ムーブメントMに塵埃等が付着してしまうことを効果的に防止することができる。
【0070】
また、各収納トレー1を安定して重ね合わせることができるので、多段に重ねても安定性に優れている。特に、収納トレー1を重ね合わせると、図11に示すように、膨出部15同士が重なり合う。そのため、収納トレー1は、面内方向に対して位置決めされるので、重ね合わせの途中でずれてしまうことがない。従って、より安定した状態で重ね合わせを行うことができると共に、時計ムーブメントMの指針軸M1に対して何ら負荷を与えない状態を確実に維持し続けることができる。
【0071】
加えて、薄板10の外縁側に配置された収納部11は、凹みが部分的に外側に連通しているので、収納トレー1を多段に重ねた場合であっても、側方から収納部11内に時計ムーブメントMが収納されているか否かの有無を確認し易い。
【0072】
ところで、収納トレー1を重ね合わせた際、図12に示すように、上段側の収納トレー1に形成された突起部22は、下段側の収納トレー1に形成された嵌合孔23内に嵌り込んで収納される。そのため、この突起部22に邪魔されることなく、収納トレー1同士を重ね合わせることができる。
【0073】
次に、収納トレー1を重ね合わせる際に、逆向きに重ねるのではなく、間違って同じ向きで重ねてしまった場合について説明する。
【0074】
この場合には、図13に示すように、上段側の収納トレー1に形成された突起部22が、下段側の収納トレー1の収納部11に収納されている時計ムーブメントMの指針軸M1を除く上面に当接する。しかも突起部22は、収納部11よりも下方に突出するように形成されているので、収納トレー1が完全に重なり合うよりも前に当接する。そのため、収納トレー1がこれ以上重なり合うことがない。よって、指針軸M1に上段側の収納トレー1が接触する等して負荷を与えてしまうことを防止することができる。従って、同じ向きで重ねてしまった場合であっても、時計ムーブメントMの品質を維持することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、収納トレー1を同じ向きで重ねてしまった際に、突起部22が下段側の収納トレー1に収納されている時計ムーブメントMの指針軸M1を除く上面に当接するように構成したが、この場合に限られず、下段側の収納トレー1の隙間領域20の上面に当接するようにしても構わないし、両方に当接するようにしても構わない。
【0076】
また、上記実施形態では、各収納トレー1に時計ムーブメントMを先に収納した後に、重ね合わせる場合を例にしたが、この場合に限定されるものではない。例えば、最初の収納トレー1に時計ムーブメントMを収納した後、空の収納トレー1を重ね、その後、この空の収納トレー1に時計ムーブメントMを収納する順番でも良い。このような順番としても、同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、被収納物の一例として、指針軸M1を有する時計ムーブメントMを例に挙げて説明したが、他の精密機械部品や電子部品であっても構わない。
【0079】
また、時計ムーブメントの一例として、下面側が段付きとなって周縁に鍔部M2が形成された時計ムーブメントMを例に挙げて説明したが、この形状に限定されるものではない。例えば、周縁に段の無い平面視丸型でも構わないし、平面視角型の時計ムーブメントでも構わない。この場合には、収納部11の内周壁を時計ムーブメントの形状に応じて変え、時計ムーブメントの位置ずれを防止すれば良い。
【0080】
また、上記実施形態では、時計ムーブメントMを収納部11に収納した際に、鍔部M2が段部11aに当接する場合を例に挙げて説明したが、鍔部M2が段部11aに当接する前に時計ムーブメントMの最下面が収納部11に当接することで収納される形でも構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
時計ムーブメントMの厚みと収納部11の深さとの関係で、鍔部Mと段部11aとが当接するか否か別れるが、いずれの場合であっても同様の作用効果を奏することができる。つまり、厚みの異なる時計ムーブメントMであっても、問題なく収納することが可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、収納部11の内周壁全体が時計ムーブメントMの側面に接することで遊びを抑え、収納時の時計ムーブメントMの位置ずれを防止したが、内周壁の少なくとも一部が時計ムーブメントMの側面に接して遊びを抑えるように構成しても構わない。
【0083】
また、上記実施形態では、複数の収納部11のうち、縦方向に並んだ収納部11だけを近接させ、密集した状態としたが、この場合に限られず、図14に示すように横方向にも密集した状態となるように形成しても構わない。つまり、複数の収納部11を、縦方向及び横方向に格子状に配置して隣り合う全ての収納部11に対して近接させ、共通の連通溝12を介して互いの凹みが部分的に繋がった状態にしても構わない。このように収納トレー30を構成することで、より多くの収納部11(70個)を確保することができ、1枚の収納トレー30でさらに多くの時計ムーブメントMを効率良く収納することができる。
【0084】
なお、この場合において、複数の収納部11を縦方向及び横方向に格子状に配置するのではなく、千鳥状に配列しても構わない。
【0085】
また、上記実施形態では突起部22及び嵌合孔23がそれぞれ12個ずつ形成されている場合を例にしたが、この数に限定されるものではなく、自由に設計して構わない。例えば、30個以上形成しても構わない。この場合には、突起部22及び嵌合孔23として機能に加え、収納トレー1自体の強度を上げて、剛性がより高まることが期待できる。
【0086】
また、上記実施形態では、薄板10の縁部15aの一部を斜めにカットした切欠部16を方向認識用の目印としたが、切り欠きではなく何らかの指標を記すことで目印としても構わない。
【0087】
また、上記実施形態において、収納トレー1に時計ムーブメントMを収納する作業や、収納トレー1を重ねる作業を、ロボット等の機械で行っても良い。特に、ロボット等の機械を利用して収納トレー1を重ね合わせ作業を行う場合には、切欠部16が形成されていることが好ましい。即ち、切欠部16を指標とするようにプログラミングすることで、収納トレー1の向きを高精度に認識できるので、作業をより確実に行えると共に、制御が非常に容易になる。
【0088】
また、収納トレー1を重ね合わせた時に、上段側の収納トレー1の収納部11の下面が下段側の収納トレー1の隙間領域20の上面に当接することで、高さ方向の位置決めをしたが、膨出部15に段差部を形成し、この段差部を利用して高さ方向の位置決めをしても構わない。
【0089】
また、薄板10の外縁側の収納部11に時計ムーブメントMを収納した際、時計ムーブメントMが膨出部15の外側に飛び出さないようにしたが、若干飛び出たとしても重ね合わされた上段側の収納トレー1に接触することがない。つまり、膨出部15は、薄板10の下方に向けて折曲される際に、外方に向けて傾斜する傾斜面となるように外拡がりテーパ状に折曲されているので、膨出部15と時計ムーブメントMとが直接干渉し難い。従って、収納部11をより薄板10の外縁側に寄せることができ、さらなる時計ムーブメントMの多数取りに繋げることができる。
【符号の説明】
【0090】
M…時計ムーブメント(時計駆動装置、被収納物)
P…収納パッケージ(収納体)
1…収納トレー
10…薄板
11…収納部
12…連通溝
15…膨出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被収納物を収納する収納トレーであって、
薄板と、
前記薄板の上面側が開口となるように該薄板に凹み形成され、前記被収納物を内部に収納する複数の有底状の収納部と、
前記薄板の外縁において該薄板の上方に向けて折曲された後、薄板の下方に向けて折曲された膨出部と、
を備え、
前記膨出部は、一定の間隔を開けて不連続的に形成され、
複数の前記収納部のうち前記薄板の外縁側に配置された収納部は、前記膨出部の非形成領域にて外縁に近接するように配置され、前記凹みが前記非形成領域において外側に連通しており、収納トレー2枚をこれらが重ねられる方向の軸周りに一方の収納トレーに対して他方の収納トレーを180度回転させた状態で前記一方の収納トレーの上に前記他方の収納トレーを重ねたときに前記一方の収納トレーの膨出部の非形成領域は前記他方の収納トレーの膨出部で覆われることを特徴とする収納トレー。
【請求項2】
請求項1に記載の収納トレーにおいて、
前記膨出部は、収納トレー同士を重ねた際に、他方の収納トレーの膨出部に重なって平面方向の位置決めを行うことを特徴とする収納トレー。
【請求項3】
請求項1に記載の収納トレーにおいて、
不連続的に形成された前記膨出部は、凹みが部分的に外側に連通した前記収納部の外形ラインから所定距離離間した状態で形成されていることを特徴とする収納トレー。
【請求項4】
請求項1に記載の収納トレーにおいて、
前記膨出部は、前記薄板の下方に向けて折曲される際、薄板の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように折曲されていることを特徴とする収納トレー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の収納トレーと、
前記収納トレーの前記収納部に収納された被収納物と、を備えていることを特徴とする収納体。
【請求項6】
請求項5に記載の収納体において、
前記被収納物は、時計駆動装置であることを特徴とする収納体。
【請求項1】
複数の被収納物を収納する収納トレーであって、
薄板と、
前記薄板の上面側が開口となるように該薄板に凹み形成され、前記被収納物を内部に収納する複数の有底状の収納部と、
前記薄板の外縁において該薄板の上方に向けて折曲された後、薄板の下方に向けて折曲された膨出部と、
を備え、
前記膨出部は、一定の間隔を開けて不連続的に形成され、
複数の前記収納部のうち前記薄板の外縁側に配置された収納部は、前記膨出部の非形成領域にて外縁に近接するように配置され、前記凹みが前記非形成領域において外側に連通しており、収納トレー2枚をこれらが重ねられる方向の軸周りに一方の収納トレーに対して他方の収納トレーを180度回転させた状態で前記一方の収納トレーの上に前記他方の収納トレーを重ねたときに前記一方の収納トレーの膨出部の非形成領域は前記他方の収納トレーの膨出部で覆われることを特徴とする収納トレー。
【請求項2】
請求項1に記載の収納トレーにおいて、
前記膨出部は、収納トレー同士を重ねた際に、他方の収納トレーの膨出部に重なって平面方向の位置決めを行うことを特徴とする収納トレー。
【請求項3】
請求項1に記載の収納トレーにおいて、
不連続的に形成された前記膨出部は、凹みが部分的に外側に連通した前記収納部の外形ラインから所定距離離間した状態で形成されていることを特徴とする収納トレー。
【請求項4】
請求項1に記載の収納トレーにおいて、
前記膨出部は、前記薄板の下方に向けて折曲される際、薄板の外方に向けて傾斜する傾斜面となるように折曲されていることを特徴とする収納トレー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の収納トレーと、
前記収納トレーの前記収納部に収納された被収納物と、を備えていることを特徴とする収納体。
【請求項6】
請求項5に記載の収納体において、
前記被収納物は、時計駆動装置であることを特徴とする収納体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−269853(P2010−269853A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196656(P2010−196656)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【分割の表示】特願2008−276505(P2008−276505)の分割
【原出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(305018823)盛岡セイコー工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【分割の表示】特願2008−276505(P2008−276505)の分割
【原出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(305018823)盛岡セイコー工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
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