説明

収納凹部を有するシート

【課題】シートバックの背面に凹設された収納凹部を、ヘッドレストの収納と小物の収納とに兼用できるシートを提案する。
【解決手段】背面に収納凹部10が凹設されたシートバック2と、シートバック2上に位置する使用位置と、収納凹部内10に収納された収納位置との間で回動可能なヘッドレストと、収納凹部10の開口面を被覆可能な被覆部材12と、該被覆部材12とヘッドレスト3とを連動させる連結部材13とを備える。被覆部材12は柔軟性を有し、緊張した状態で開口面を被覆する被覆状態と、弛んだ状態で開口面を全面的に開口する退避状態との間で変位可能である。連結部材13の上端はステー4へ固定されている。ヘッドレスト3が収納位置にあるときは被覆部材12は退避状態にあり、ヘッドレスト3が使用位置へ回動されると、連結手段13によって被覆部材12が上方へ牽引されて被覆状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックとヘッドレストとを有し、シートバックの背面に収納凹部を有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシートとして、例えば特許文献1や特許文献2がある。特許文献1では、ヘッドレストが、シートバック上に位置する使用位置と、収納凹部内に収納された収納位置との間で回動可能にシートバックへ連結されている。すなわち特許文献1では、収納凹部がヘッドレストを収納するために設けられている。したがって、特許文献1では、収納凹部の開口面を被覆する被覆部材は設けられていない。
【0003】
一方、特許文献2では、ペットボトルや雑誌などの小物を収納するために収納凹部が設けられている。そのため特許文献2では、収納した小物の落下を防ぐため、収納凹部の開口面が被覆部材によって被覆されたポケット状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−297989号公報
【特許文献2】特開2002−238696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ではヘッドレストが使用位置にあるとき、収納凹部はただのカラ空間であり無駄となる。そこで、ヘッドレストが使用位置にあるときも、収納空間を小物を収納可能なポケットとして利用できれば利便性が向上する。しかし、特許文献1では収納空間の開口面を被覆する被覆部材は備えていないので、ポケットとして利用することは不可能である。一方、特許文献2ではポケットとして利用することはできるが、収納凹部の開口面は常時被覆部材によって被覆されているので、ヘッドレストを収納することはできない。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、その目的は、シートバックの背面に凹設された収納凹部を、ヘッドレストの収納と小物の収納とに兼用できるシートを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として本発明は、シートバックとヘッドレストとを有し、前記シートバックの背面に収納凹部が凹設されており、前記ヘッドレストが、前記シートバック上に位置する使用位置と、前記収納凹部内に収納された収納位置との間で回動可能に前記シートバックへ連結されたシートであって、前記収納凹部の開口面の少なくとも下部を被覆可能な被覆部材と、該被覆部材と前記ヘッドレストとを連動させる連結部材とを備える。なお、本発明において開口面の下部とは、開口面の下半分領域を意味する。前記被覆部材は柔軟性を有し、緊張した状態で前記収納凹部の開口面を被覆する被覆状態と、弛んだ状態で前記収納凹部の開口面を全面的に開口する退避状態との間で変位可能である。そのうえで、前記ヘッドレストが前記収納位置にあるとき前記被覆部材は退避状態にあり、前記ヘッドレストが前記使用位置へ回動されると、前記連結手段によって前記被覆部材が上方へ牽引されて前記被覆状態となることを特徴とする。
【0008】
すなわち、ヘッドレストが収納位置にあるときには被覆部材に牽引力(張力)が作用しておらず、弛んだ状態で退避しており、ヘッドレストを使用位置へ回動すると、連結部材を介して被覆部材に張力が作用することで、緊張した被覆状態となる。これによれば、ヘッドレストが収納位置にあるときは収納凹部の開口面が開口されていることで、ヘッドレストを被覆部材によって阻害されることなく収納凹部へ収納することができる。一方、ヘッドレストを使用位置へ回動すると、これに連動して収納凹部の開口面が被覆部材によって被覆されているので、小物を収納するポケットとして利用でき、利便性が向上する。
【0009】
前記連結部材によって前記被覆部材と前記ヘッドレストとを連動させる形態、すなわち前記ヘッドレストの回動に伴って前記連結部材によって前記被覆部材を牽引する形態としては、例えば前記連結部材の下端を前記被覆部材の上端に固定したうえで、前記連結部材の上端を前記ヘッドレストのステーの回動中心より回動先端側へ固定することができる。
【0010】
これによれば、ヘッドレストが収納位置にあるときは、連結部材の上端はヘッドレストのステーの回動中心より下方にあることで、被覆部材に張力は作用していない。一方、ヘッドレストが使用位置にあるときは、連結部材の上端がヘッドレストのステーの回動中心より上方にくることで、被覆部材を牽引して張力を作用させることができる。このように、ヘッドレストの回動に伴う連結部材の上端固定部の高さ位置の変化を利用して、被覆部材へ張力を作用させることができる。
【0011】
また、前記ヘッドレストの回動に伴って前記連結部材によって前記被覆部材を牽引する他の形態として、例えば前記連結部材の下端を前記被覆部材の上端に固定したうえで、前記連結部材の上端を、前記ヘッドレストが収納位置から使用位置へ回動する回動軌跡の中途部において該ヘッドレストのステーの回動軌跡を前記連結部材の上端部が横切るように固定することもできる。
【0012】
これによれば、連結部材の上端部がステーの回動軌跡を横切っているが、ヘッドレストが収納位置にある場合は、ステーと連結部材とは干渉していない。一方、ヘッドレストを収納位置から使用位置へ回動させると、その中途部において連結部材がステーの回動軌跡を横切っていることで、被覆部材がステーによって押し込められる。これにより、連結部材の下端部が上方へ移動することで被覆部材を牽引することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヘッドレストの回動に連動して被覆部材が被覆状態と退避状態との間で変位することで、シートバックの背面に凹設された収納凹部を、ヘッドレストの収納と小物の収納とに兼用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の斜視図である。
【図2】実施例1の要部拡大図である。
【図3】実施例2の斜視図である。
【図4】実施例2の縦断要部拡大図である。
【図5】実施例3の斜視図である。
【図6】変形例1の要部拡大図である。
【図7】変形例2の要部拡大図である。
【図8】変形例3の要部拡大図である。
【図9】変形例4の要部拡大図である。
【図10】変形例5の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、適宜図面を参照しながら本発明に係るシートの代表的な実施形態について説明する。
【0016】
(実施例1)
図1,2を参照しながら、本発明の実施例1について説明する。シート1は自動車などの車輌用のシートであって、乗員の背凭れとなるシートバック2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト3と、乗員の着座部となる図外のシートクッションとを有する。シートバック2の背面上部には、収納凹部10が凹設されている。シートバック2の内部には、該シートバック2の骨格を成す門型形状のバックフレーム2aが設けられている。ヘッドレスト3は、下方へ突出する左右二本のステー4を有する。両ステー4の下端部は、バックフレーム2aへ前後方向に回動可能に連結されている。詳しくは、バックフレーム2aの途中において、平面視コ字型のブラケット20が左右の軸ピン21を介して回動可能に設けられており、当該ブラケット20の内部にステー4の下端部が接合されている。したがって、ステー4及びこれと一体的に回動するヘッドレスト3の回動中心は、軸ピン21となる。シートバック2の背面上部には、各ステー4をそれぞれ受け入れ可能な縦長の溝5が、左右二箇所に凹設されている。各溝5は、シートバック2の上面から収納凹部10の上面に至る。これによりヘッドレスト3は、シートバック2上に位置する図1(a)に示す使用位置と、収納凹部10内に収納された図1(c)に示す収納位置との間で回動可能となっている。収納凹部10は、少なくともヘッドレスト3を収納可能な大きさに形成されている。
【0017】
収納凹部10の開口面には、柔軟性及び伸縮性を有する長尺部材であるゴム紐12が、開口面の左右側縁の間を往復するように配索されている。詳しくは、収納凹部10の左右両側面には上下に複数段の挿通フック11が設けられており、各挿通フック11にゴム紐12が順次挿通されている。挿通フック11は開口面のほぼ下半分領域に設けられており、左右の挿通フック11の高さ位置は互い違いとなっている。これにより、開口面の少なくとも下部がゴム紐12によって被覆可能となっている。最下段にある挿通フック11は開口面の下縁に臨んで設けられており、当該最下段の挿通フック11にゴム紐12の下端が抜け外れ不能に固定されている。ゴム紐12が、本発明の被覆部材に相当する。
【0018】
ゴム紐12の上端には、当該ゴム紐12とヘッドレスト3とを連動させる連結部材として、非伸縮性のケーブル13の下端が連結されている。なおケーブル13は、金属製のほか合成樹脂製や天然素材製とすることもできる。ケーブル13は収納凹部10の内面に沿って配索されており、その上端はステー4に固定されている。詳しくは、ケーブル13の上端は、ヘッドレスト3の回動中心より回動先端側(ヘッドレスト3側)に固定されている。符号14は、ケーブル13を収納凹部10の内面に沿って摺動可能に保持する保持プレートである。符号15は、ケーブル13の上端を一定の高さ位置で固定する固定プレートである。ゴム紐12とケーブル13との合計長さ寸法は、当該ゴム紐12及びケーブル13の配索経路の全長より若干短く設計されている。
【0019】
次に、収納凹部10の使用形態について説明する。図1(a)に示すように、ヘッドレスト3が使用位置にあるとき、ゴム紐12は緊張した状態で収納凹部10の開口面を被覆する被覆状態となっている。詳しくは、図2(a)に示すように、ケーブル13の上端がヘッドレスト3の回動中心(軸ピン21)より上方に位置している。そして、ゴム紐12とケーブル13との合計長さ寸法が配索経路の全長より若干短いことで、ケーブル13が上方に牽引されてゴム紐12に張力が作用した状態となっている。これにより収納凹部10はポケットとして機能し、ペットボトルや雑誌等の小物Wを収納凹部10内へ収納することができる。
【0020】
一方、ヘッドレスト3を収納する場合は、小物Wを取り出してから、図1(b)に示すように、ヘッドレスト3を後方側へ回動させる。すると、図2(b)に示すように、ケーブル13の上端がヘッドレスト3の回動中心より下方へ移動する。これにより、ゴム紐12とケーブル13との合計長さ寸法が配索経路の全長に対して余裕が生じることで、ケーブル13による張力が除去される。すると、図1(c)に示すように、ゴム紐12がその復元力及び自重によって弛んだ状態で収納凹部10の開口面を全面的に開口する退避状態となり、ゴム紐12によって阻害されること無くヘッドレスト3を収納凹部10内へ収納することができる。再度ヘッドレスト3を収納位置から使用位置へ回動させると、これに伴いケーブル13が上方へ牽引されてゴム紐12に張力が作用することで、収納凹部10の開口面がゴム紐12によって被覆されたポケット状態となる。
【0021】
(実施例2)
図3,4を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。実施例2も基本的構成は実施例1と同様であり、背面に収納凹部10が凹設されたシートバック2と、シートバック2上に位置する使用位置と収納凹部内10に収納された収納位置との間で回動可能にシートバック2へ連結されたヘッドレスト3とを有する。また、収納凹部10の開口面の左右側縁の間を往復するように配索されて開口面の少なくとも下部を被覆可能な被覆部材と、該被覆部材とヘッドレスト3とを連動させる連結部材とを備え、被覆部材は柔軟性を有し、緊張した状態で収納凹部10の開口面を被覆する被覆状態と、弛んだ状態で収納凹部10の開口面を全面的に開口する退避状態との間で変位可能であり、ヘッドレスト3が収納位置にあるとき被覆部材は退避状態にあり、ヘッドレスト3が使用位置へ回動されると、連結手段によって被覆部材が上方へ牽引されて被覆状態となる。したがって、ここでは実施例1との相違点を中心に説明する。
【0022】
本実施例2では、実施例1のゴム紐12やケーブル13に替えて、非伸縮性の帯ベルト16を配索している。帯ベルト16は収納凹部10の下縁からステー4まで配索されており、その下端部が被覆部材として、その上端部が連結部材として機能する。すなわち、実施例2では、被覆部材と連結部材とを兼ねる一連の長尺部材を使用している。帯ベルト16の下端は、実施例1と同様に最下段の挿通フック11へ抜け外れ不能に固定されているが、帯ベルト16の折り返し部には、当該帯ベルト16の上下摺動を許容する縦長の長孔25aを有するガイド25が設けられている。長孔25aは、収納凹部10の上下中間位置から下端部にかけて形成されている。
【0023】
帯ベルト16の上端部(連結部材として機能する部分)は、シートバック2の内部に配索されている。したがって、実施例1の保持プレート14のような部材は設けられていない。そのうえで、帯ベルト16の上端は、ヘッドレスト3が収納位置から使用位置へ回動する回動軌跡の中途部において、左右のステー4の回動軌跡を帯ベルト16の上端部が横切るように固定されている。帯ベルト16の先端は、シートバック2に内蔵されたバックフレーム2aや緩衝材であるバックパッド2bへ接着等により固定すればよい。したがって、実施例1の固定プレート15のような部材は有しない。帯ベルト16の上端部は、ヘッドレスト3の回動中心より上方において、ステー4の回動軌跡を横切っている。なお、帯ベルト16の長さ寸法は、配索経路の全長に対して若干長く設計されている。
【0024】
次に、実施例2における収納凹部10の使用形態について説明する。図3(a)に示すように、ヘッドレスト3が使用位置にあるとき、帯ベルト16の下端部は緊張した状態で収納凹部10の開口面を被覆する被覆状態となっている。詳しくは、図4(a)に示すように、帯ベルト16の上端部がステー4の回動奇跡を横切るように配索されていることで、当該帯ベルト16の上端部が左右のステー4によって溝5の奥方へ押し込まれている。これにより、帯ベルト16が全体的に牽引されて張力が作用した被覆状態となり、収納凹部10をポケットとして使用可能となる。なお、一定の面積(幅寸法)を有する帯ベルト16を使用しているので、実施例1のゴム紐12よりも広い範囲において開口面を被覆することができる。
【0025】
一方、ヘッドレスト3を収納するためにヘッドレスト3を後方側へ回動させると、図4(b)に示すように、ステー4がこれの回動中心より下方へ移動することで、ステー4が帯ベルト16から離間する。すると、図3(b)に示すように、帯ベルト16がその自重によって全体的に下方へ下がることで、帯ベルト16の下端部に弛みが生じる。しかも、帯ベルト16の折り返し部も、ガイド25の長孔25aに沿って下方へ摺動する。これにより、帯ベルト16の下端部が弛んだ状態で収納凹部10の開口面を全面的に開口する退避状態となる。而して、帯ベルト16によって阻害されること無くヘッドレスト3を収納凹部10内へ収納することができる。
【0026】
再度ヘッドレスト3を収納位置から使用位置へ回動させると、この方向へのステー4の回動軌跡の中途部に帯ベルト16が配索されていることで、帯ベルト16の上端部が溝5の奥方へ押し込まれる。このとき、帯ベルト16は一定の面積(幅寸法)を有するので、ステー4によって的確に押し込むことができる。これによって帯ベルト16に張力が作用し、且つ折り返し部がガイド25の長孔25aに沿って上方へ摺動することで、収納凹部10の開口面が帯ベルト16によって被覆されたポケット状態となる。その他は実施例1と同様なので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0027】
(実施例3)
図5を参照しながら、本発明の実施例3について説明する。実施例3も基本的構成は実施例1と同様なので、実施例1との相違点を中心に説明する。本実施例3では、被覆部材として上端縁にヘッドバー17を備える被覆布18を使用している。被覆布18の上端縁には左右両端が開口する筒部が形成されており、当該筒部に一定の剛性を有するヘッドバー17が挿通されている。ヘッドバー17は被覆布18の幅寸法より長尺である。収納凹部10の左右両側面には、それぞれ上下中間位置から下端に至る案内溝26が凹設されており、当該左右の案内溝26にヘッドバー17の左右両端が上下摺動自在に嵌合されている。被覆布18は、これの下縁が収納凹部10の下縁に縫着されている。また、ヘッドバー17の左右両端部には、ヘッドバー17及び被覆布18を常時下方へ付勢する付勢ゴム19が連結されている。付勢ゴム19の下端は、収納凹部10の下面に固定されている。また、ヘッドバー17の左右両端部には、被覆布18とヘッドレスト3とを連動させる連結部材として、実施例1と同じケーブル13が設けられている。左右の両ケーブル13は、それぞれ実施例1と同様にしてステー4に固定されている。なお、図示していないが、本実施例3でも、ケーブル13は保持プレート14によって保持されている。
【0028】
次に、収納凹部10の使用形態について説明する。図5(a)に示すように、ヘッドレスト3が使用位置にあるとき、ケーブル13の上端がヘッドレスト3の回動中心より上方に位置していることで、被覆布18は緊張した状態で収納凹部10の開口面を被覆している。一方、ヘッドレスト3を収納するために後方側へ回動させると、図5(b)に示すように、ケーブル13の上端がヘッドレスト3の回動中心より下方へ移動し、牽引力が除去される。すると、ヘッドバー17が付勢ゴム19の付勢力によって左右の案内溝26に沿って下方へ摺動することで、被覆布18が弛んだ状態で収納凹部10の開口面をほぼ全面的に開口する。これにより、被覆布18やヘッドバー17によって阻害されること無くヘッドレスト3を収納凹部10内へ収納することができる。再度ヘッドレスト3を収納位置から使用位置へ回動させると、これに伴いケーブル13が上方へ牽引されることで、ヘッドバー17が付勢ゴム19の付勢力に抗して案内溝26内を上方へ摺動する。これにより被覆布18に張力が作用することで、収納凹部10の開口面が被覆されたポケット状態となる。その他は実施例1と同様なので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0029】
(変形例)
以上、本発明の代表的な実施の形態について説明したが、これに限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、実施例2においても、実施例1のようなゴム紐12やケーブル13を使用することができる。逆に、実施例1においても、実施例2のような帯ベルト16を使用することができる。また、帯ベルト16の下端部には、伸縮性を有する帯ベルトを使用することもできる。被覆部材として伸縮性を有する長尺部材を使用する場合は、その全部において伸縮性を有しても良いし、伸縮性を有する部材と非伸縮性の部材とを連結して、その一部において伸縮性を有していても良い。実施例3では、実施例2と同様にしてケーブル13の上端を固定することもできる。
【0030】
また、被覆部材として、全体的に非伸縮性の紐部材を使用することもできる。この場合、図6に示す変形例1のように、紐部材27の折り返し部をリング28へ挿通すると共に、当該リング28へ、その両端が収納凹部10の内面に固定されたゴム部材等からなる弾性体29を挿通すればよい。この場合、ヘッドレスト3が使用位置にあるときには、図6(a)に示すように、紐部材27に張力が作用することで、リング28及び紐部材27の折り返し部は、弾性体29の付勢力に抗して上方へ位置している。一方、ヘッドレスト3を収納位置へ回動させると、紐部材27への張力が除去されることで、リング28及び紐部材27の折り返し部は、弾性体29の付勢力によって下方へ移動し、開口面をほぼ全面的に開口することができる。
【0031】
また、紐部材27を使用する場合、図7に示す変形例2のような形態も採用できる。具体的には、紐部材27の折り返し部に、斜め上下方向に延びる長孔30aを備えるガイド30を設け、当該長孔30aに紐部材27を上下摺動可能に挿通する。この場合、紐部材27の折り返し部付近に、当該紐部材27の折り返し部を常時下方へ付勢するゴム部材等からなる弾性体31を連結することが好ましい。この場合、ヘッドレスト3が使用位置にあるときには、図7(a)に示すように、紐部材27に張力が作用することで、紐部材27の折り返し部が弾性体31の付勢力に抗して、ガイド30の長孔30aの上端に位置している。一方、ヘッドレスト3を収納位置へ回動させると、紐部材27への張力が除去されることで、紐部材27の折り返し部は、弾性体31の付勢力によって長孔31a内を下方へ移動し、開口面をほぼ全面的に開口することができる。
【0032】
また、実施例2のように被覆部材として帯ベルト16を使用する場合は、図8に示す変形例3のように、ガイド25の長孔25aの上端部を、帯ベルト16の配索方向に対して直角となる方向へ傾斜させておくことが好ましい。これによれば、一定の幅寸法を有する帯ベルト16に皺や捩れを生じさせること無く綺麗に配索することができる。なお、実施例2や変形例3においても、帯ベルト16の折り返し部付近に、当該帯ベルト16の折り返し部を常時下方へ付勢するゴム部材等からなる弾性体を連結することも好ましい。
【0033】
また、実施例1のように被覆部材として伸縮性を有する長尺状のゴム紐12を使用する場合、図9に示す変形例4のように、一定の幅寸法を有する筒状のカバー32内にゴム紐12を挿通し、帯状にすることもできる。
【0034】
また、実施例2のように、連結部材としての帯ベルト16の上端部を、ヘッドレスト3が収納位置から使用位置へ回動する回動軌跡の中途部においてステー4の回動軌跡を横切るように配索する場合は、図10に示す変形例5のように、左右の溝5の間にガイド帯33を設け、当該ガイド帯33に帯ベルト16を挿通することが好ましい。ガイド帯33は、皮製、布製、合成樹脂製など、ある程度の強度を有する平板部材であって、左右両側方部に、縦長の切込み34が形成されている。そのうえで帯ベルト16は、ガイド帯33の表面側から一方の切込み34を介して裏面側に挿通され、他方の切込み34を介して裏面側から表面側へ挿通されている。これによれば、帯ベルト16の摺動を安定化させることができる。
【0035】
実施例2や変形例5において、帯ベルト16やガイド帯33は、シートバック2の背面に露出した状態で設けることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 シート
2 シートバック
2a バックフレーム
3 ヘッドレスト
4 ステー
5 溝
10 収納凹部
11 挿通フック
12 ゴム紐
13 ケーブル
16 帯ベルト
17 ヘッドバー
18 被覆布
19 付勢ゴム
25 ガイド
26 案内溝
27 紐部材
28 リング
29・31 弾性体
30 ガイド
32 カバー
33 ガイド帯



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックとヘッドレストとを有し、前記シートバックの背面に収納凹部が凹設されており、前記ヘッドレストが、前記シートバック上に位置する使用位置と、前記収納凹部内に収納された収納位置との間で回動可能に前記シートバックへ連結されたシートであって、
前記収納凹部の開口面の少なくとも下部を被覆可能な被覆部材と、該被覆部材と前記ヘッドレストとを連動させる連結部材とを備え、
前記被覆部材は柔軟性を有し、緊張した状態で前記収納凹部の開口面を被覆する被覆状態と、弛んだ状態で前記収納凹部の開口面を全面的に開口する退避状態との間で変位可能であり、
前記ヘッドレストが前記収納位置にあるとき前記被覆部材は退避状態にあり、前記ヘッドレストが前記使用位置へ回動されると、前記連結手段を介して前記被覆部材へが上方へ牽引されて前記被覆状態となることを特徴とする、シート。
【請求項2】
前記連結部材の下端は前記被覆部材の上端に固定され、
前記連結部材の上端は前記ヘッドレストのステーの回動中心より回動先端側へ固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記連結部材の下端は前記被覆部材の上端に固定され、
前記連結部材の上端は、前記ヘッドレストが収納位置から使用位置へ回動する回動軌跡の中途部において該ヘッドレストのステーの回動軌跡を前記連結部材の上端部が横切るように固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のシート。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−126203(P2012−126203A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278019(P2010−278019)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】