説明

収納容器

【課題】物品の汚染を抑制し、容器本体や蓋体に関する水分放出量を低減し、しかも、十分な機械的強度を確保できる収納容器を提供する。
【解決手段】複数枚の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体1と、この容器本体1の開口した正面部を着脱自在に開閉する蓋体20とを備え、容器本体1を樹脂混合物含有の成形材料により射出成形する。成形材料の樹脂混合物を、溶融粘度が相対的に高い樹脂と低い樹脂とを混合することにより調製し、溶融粘度が相対的に低い樹脂を低吸水率及び低透湿性の樹脂とし、この溶融粘度が相対的に低い樹脂により、容器本体1の周壁3の内外面を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに代表される基板等を収納する収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを収納する従来の収納容器は、図示しないが、例えばφ300mmの薄い半導体ウェーハを収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面部をガスケットを介して開閉する着脱自在の蓋体とを備えて構成されている。
【0003】
容器本体は、熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂等を含む成形材料を使用して射出成形され、複数枚の半導体ウェーハを上下に並べて整列収納する。
【0004】
ところで、収納容器は、容器本体に収納する半導体ウェーハの汚染を防止するため、容器本体を構成する樹脂に含有あるいは残留する金属成分、遊離イオン、アウトガス、その他の不純物を可能な限り低減することが望まれている。しかしながら、容器本体を構成する樹脂に含有あるいは残留する成分を完全に除去することは、技術的及びコスト的に限界がある。
【0005】
一方、上記残留物や不純物が半導体ウェーハの表面を汚染する原因として、容器本体内の水分量(湿度)があげられることから、従来においては、容器本体内を窒素ガス等で置換していわゆる絶乾状態とし、この絶乾状態の容器本体内に半導体ウェーハを収納する方法が採用されている。しかしながら、例え容器本体内を絶乾状態にしても、容器本体を構成する樹脂から放出されたり、あるいは容器本体外から透過する水分により、容器本体内の湿度が経時的に上昇し、その結果、半導体ウェーハの表面に微小な結露が生じて不純物が付着することになる。
【0006】
そこで、容器本体を構成する成形材料として、吸水性及び透湿性が低い成形材料を使用する方法が提案されている。しかし、係る成形材料を使用する場合には、容器本体の強度、特に耐落下衝撃性が不足するので、搬送時や輸送時に容器本体や半導体ウェーハの破損を招くおそれがある。
上記に鑑み、容器本体の成形材料に関係なく、容器本体の表面をバリヤ性の皮膜により被覆し、容器本体の強度を維持する方法が提示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2005−521236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、容器本体の表面をバリヤ性の皮膜により被覆する方法を採用する場合には、容器本体の強度を維持することができるものの、複雑な凹凸形状を有する容器本体の表面に皮膜を均一、かつ安定的に施すことが困難であり、しかも、容器本体の成形コストの上昇を招くという問題がある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、物品の汚染を抑制し、容器本体や蓋体に関する水分放出量を低減し、しかも、十分な機械的強度を確保することのできる収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、物品を収納する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを備え、これら容器本体と蓋体のうち、少なくとも容器本体を樹脂混合物含有の成形材料により成形したものであって、
成形材料の樹脂混合物を、溶融粘度が相対的に高い樹脂と低い樹脂とを混合することにより調製し、溶融粘度が相対的に低い樹脂を低吸水率及び低透湿性の樹脂とし、この溶融粘度が相対的に低い樹脂により、容器本体の少なくとも物品に面する内面を形成するようにしたことを特徴としている。
【0010】
なお、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に嵌め合わされる着脱自在の蓋体とを備えることができる。
また、溶融粘度の相対的な高低差を0.2×10〜1.0×10Pa・sとすることができる。
また、溶融粘度が相対的に高い樹脂と低い樹脂との相対的な粘度差をMFR値で1〜100とすることができる。
【0011】
また、溶融粘度が相対的に低い樹脂を、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、又は末端長鎖アルキル基導入ポリカーボネート樹脂とすることも可能である。
また、容器本体の周壁は、溶融粘度が相対的に高い樹脂により形成される高粘度樹脂層と、溶融粘度が相対的に低い樹脂により形成されて高粘度樹脂層に対向する低粘度樹脂層と、これら高粘度樹脂層と低粘度樹脂層との間に介在される傾斜樹脂層とを備えた多層構造であると良い。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における物品には、少なくともφ200、300、450mmの半導体ウェーハ、フォトマスク材、リードフレーム、ガラス基板、電子部品、デバイス部品、雑貨等が必要数含まれる。また、容器本体と蓋体とは、容器本体を樹脂混合物含有の成形材料により成形しても良いが、蓋体も樹脂混合物含有の成形材料により成形しても良い。容器本体は、フロントオープンボックスタイプ、トップオープンボックスタイプ、ボトムオープンボックスタイプ、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。
【0013】
成形材料は、樹脂混合物のみからなる材料でも良いが、樹脂混合物の他、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、導電性ポリマー、帯電防止剤、難燃剤等からなる各種のフィラーを適宜含有しても良い。
【0014】
本発明によれば、樹脂混合物中の溶融粘度が相対的に高い樹脂が少なくとも容器本体を形成してその強度や剛性を確保する。また、溶融粘度が相対的に低く、かつ低吸水率及び低透湿性の樹脂が少なくとも容器本体の内面として物品に面し、容器本体に対する水分の放出や透過を防ぎ、容器本体内の湿度が経時的に上昇するのを抑制する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形材料の樹脂混合物を、溶融粘度が相対的に高い樹脂と低い樹脂とを混合することにより調製し、溶融粘度が相対的に低い樹脂を低吸水率及び低透湿性の樹脂とし、この溶融粘度が相対的に低い樹脂により、容器本体の少なくとも物品に面する内面を形成するので、物品の汚染を抑制し、容器本体や蓋体に関する水分放出量を低減し、しかも、十分な機械的強度を確保することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における収納容器は、図1ないし図3に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体1と、この容器本体1の開口した正面部をガスケットを介して着脱自在に開閉する蓋体20とを備え、容器本体1を樹脂混合物含有の成形材料により射出成形して容器本体1の周壁3を高粘度樹脂層3a、低粘度樹脂層3b、及び傾斜樹脂層3cにより形成するようにしている。
【0017】
半導体ウェーハWは、図2に示すように、例えばφ300mmの薄いシリコンウェーハからなり、周縁部に図示しない位置合わせや識別用のノッチが切り欠かれており、容器本体1に25枚が上下に並べて整列収納される。
【0018】
容器本体1は、図1や図2に示すように、不透明のフロントオープンボックスタイプに成形され、内部両側には、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース2が上下方向に並べて配列形成されており、開口した横長の正面部を水平横方向に向けた状態で半導体加工装置や気体置換装置上に位置決めして搭載されたり、洗浄槽の洗浄液により洗浄される。
【0019】
容器本体1の周壁3である底板4には、平面略Y字形のベースプレート5が装着され、このベースプレート5の前部両側と後部中央とには、収納容器、具体的には容器本体1を位置決めする位置決め具6がそれぞれ螺着される。ベースプレート5の後部には、複数の識別孔が穿孔され、この複数の識別孔に図示しない着脱自在の情報識別パッド7が選択的に挿入されることにより、収納容器の種類や半導体ウェーハWの枚数等が半導体加工装置等に識別される。
【0020】
容器本体1の周壁3である天板8には、工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ9が水平に螺着される。また、容器本体1の周壁3である背面壁10には、透明の覗き窓が二色成形法等により縦長に形成され、この覗き窓により、容器本体1の内部が外部から視覚的に観察・把握される。背面壁10の内面には、半導体ウェーハWの周縁部後端を保持するリヤリテーナ11が装着される。
【0021】
容器本体1の周壁3である両側壁12の表面には、握持操作を可能とするグリップハンドル13がそれぞれ装着される。また、容器本体1の正面部は、周縁に外方向に張り出すリムフランジ14が膨出形成され、このリムフランジ14内に着脱自在の蓋体20が蓋体開閉装置により嵌合される。
【0022】
蓋体20は、所定の樹脂を含有する成形材料により射出成形される。この成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、あるいは環状オレフィン樹脂等があげられる。成形材料には、カーボン、導電性ポリマー、帯電防止剤等が必要に応じて選択的に添加される。
【0023】
蓋体20は、図1に示すように、容器本体1の開口したリムフランジ14内に嵌合する横長の筐体21と、この筐体21の開口した表面(正面)を被覆する表面プレートとを備え、これら筐体21と表面プレートとの間には施錠機構が選択的に介在設置される。筐体21は、基本的には枠形の周壁を備えた浅底の断面略皿形に形成され、裏面両側部には、半導体ウェーハWの周縁部前端を弾発的に保持するフロントリテーナ22がそれぞれ着脱自在に装着される。
【0024】
筐体21の両側部には、前後方向に回転可能な矩形の係止片23がそれぞれ軸支され、この一対の係止片23の切り欠き部が容器本体1のリムフランジ14における両側部から突き出た係止突部15にそれぞれ嵌合係止する。
【0025】
ところで、容器本体1を成形する成形材料の樹脂混合物は、同一条件で測定される溶融粘度が相対的に高い樹脂と低い樹脂とを混合することにより調製され、溶融粘度が相対的に低い樹脂が低吸水率及び低透湿性の樹脂とされており、容器本体1の周壁3、換言すれば、容器本体1の底板4、天板8、背面壁10、側壁12を形成する。
【0026】
樹脂混合物としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系ポリマー樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、熱可塑性フッ素樹脂、シンジオタクティックポリスチレン樹脂、末端長鎖アルキル基導入ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸系生分解性樹脂、脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂、脂肪芳香族コポリエステル系生分解性樹脂等があげられる。これらの樹脂は、溶融粘度が相対的に高低の関係となり、相対的に低粘度の樹脂が低吸水率及び低透湿性を有するよう任意に選択される。
【0027】
具体的には、相対的に高溶融粘度の樹脂として、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン系樹脂、末端長鎖アルキル基導入ポリカーボネート、液晶ポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、変性ポリフェニレンエーテル樹脂があげられ、これらの樹脂が適宜選択される。
【0028】
相対的に低溶融粘度で低吸水率、かつ低透湿性の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、末端長鎖アルキル基導入ポリカーボネート樹脂があげられ、これらの樹脂が適宜選択される。具体的には、吸水率が0.1%以下、透湿度が3g/m・24h以下の樹脂である。吸水率は、例えばASTM D 570等により評価される。
【0029】
樹脂混合物は、予め使用する樹脂をヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸混練装置等により混練し、適当な分散状態にして使用されることが好ましい。この分散状態は、使用する樹脂の相対的粘度の高低差や射出成形された容器本体1の低粘度樹脂層3bの厚さを考慮し、適宜調整することにより選択される。
【0030】
相対的な粘度の測定には、MFR、MVR、あるいはキャピラリレオメータ、高化式フローテスターによる溶融粘度の値を利用することができる。これらの中では、MFRが有益である。キャピラリレオメータにより、測定温度とせん断速度との関係で測定した値を元に相対的な粘度差を設定することも可能である。
【0031】
相対的な粘度差としては、MFR値の場合、1〜100、好ましくは3〜50の範囲である。また、溶融粘度の相対的な高低差は、同一測定条件で測定して得られた溶融粘度の差の範囲が0.2×10〜1.0×10Pa・s、好ましくは1.0×10〜1.0Pa・sの範囲であることが好適である。
【0032】
容器本体1の周壁3は、図3に示すように、溶融粘度が相対的に高い樹脂により形成される周壁本体の高粘度樹脂層3aと、溶融粘度が相対的に低い樹脂により形成されて高粘度樹脂層3aの内外面にそれぞれ対向する一対の低粘度樹脂層3bと、これら高粘度樹脂層3aと一対の低粘度樹脂層3bとの間に介在される一対の傾斜樹脂層3cとを備えた多層構造に形成され、低粘度樹脂層3bがスキン層として周壁3の内外面(表裏面でもある)を形成する。
【0033】
すなわち、容器本体1の周壁3は、中心部に相対的に高粘度の樹脂が高粘度樹脂層3aとして存在し、内外面方向に向かって相対的に高粘度の樹脂から低粘度の樹脂の比率が徐々に高まる傾斜樹脂層3cが形成されており、露出する内外面が最も低粘度の樹脂により低粘度樹脂層3bに形成されるとともに、内側の低粘度樹脂層3bが半導体ウェーハWに面する。
【0034】
容器本体1の周壁3の肉厚は、容器本体1の機械的強度や運搬時の重量を考慮し、2.0mm〜10.0mm、好ましくは3.0mm〜7.0mmの範囲とされる。これは、2.0mm未満の場合には、容器本体1の強度が不足し、落下時の衝撃で破損するおそれがあるからである、これに対し、10.0mmを超える場合には、金型を用いた射出成形時に低粘度の樹脂が金型面へ流動しづらく、所定の低粘度樹脂層3bが得にくく、しかも、容器本体1の重量が重くなりすぎ、運搬作業性が低下するからである。
【0035】
低粘度樹脂層3bの厚さは、上記したように容器本体1内の湿度変化防止や容器本体1の機械的強度、低粘度樹脂層3bの剥離等を考慮し、1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上が良い。これは、1μm未満の場合には、相対的に高粘度の樹脂中に存在する水分の容器本体1内への放出を抑制することができないからである。また、低粘度樹脂層3bの強度不足により、容器本体1からの剥離、摩擦による磨耗を生じやすいからである。低粘度樹脂層3bの厚さは、樹脂混合物中の樹脂粘度差や射出成形時の成形温度、及び射出圧力、金型のキャビティ形状等により調整することが可能である。
【0036】
上記において、容器本体1を製造する場合には、金型に樹脂混合物含有の成形材料を射出して成形すれば良い。この際、成形圧力と樹脂流動の関係から、相対的に低粘度の樹脂が金型の表面側、すなわち容器本体1の周壁3の内外面側に多く存在することとなる。これに対し、相対的に高粘度な樹脂は、容器本体1の周壁3内部を占有し、周壁3の内外面側に向かうに従い比率が徐々に低下する。この結果、成形された容器本体1の周壁3は、内部が相対的に高粘度の樹脂で構成され、内外面全体が相対的に低粘度、特に樹脂混合物中で最も低粘度の樹脂で構成される。
【0037】
上記構成によれば、容器本体1の内外面を構成する樹脂が低吸水率、かつ低透湿なので、容器本体1内の湿度上昇、容器本体1が置かれている雰囲気に対する容器本体1内への湿度変化影響の防止が可能となり、半導体ウェーハWの汚染防止が大いに期待できる。また、従来のように、容器本体1の成形材料を無視し、容器本体1の表面をバリヤ性の皮膜により被覆するのではないので、容器本体1の成形コストの上昇を招くおそれがない。
【0038】
また、容器本体1には、半導体ウェーハWの搬送、運搬において、使用上問題のない程度の機械的強度(衝撃強度等)が要求されるが、例えば相対的に高粘度の樹脂として、ポリカーボネート樹脂を使用した場合、容器本体1の周壁3内は、周壁本体がポリカーボネート樹脂で構成されるので、十分な機械的強度を得ることができる。さらに、ポリカーボネート樹脂に相対的に低粘度である樹脂を混合して射出成形すれば、容器本体1の内外面が低吸水率、低透湿度の樹脂で被覆されるので、十分な機械的強度と内部の湿度上昇を抑えることが可能な容器本体1を得ることができる。
【0039】
なお、上記実施形態では溶融粘度が相対的に高い樹脂と低い樹脂とを単に示したが、溶融粘度が相対的に高い樹脂を複数としても良いし、溶融粘度が相対的に低い樹脂を複数としても良い。また、リヤリテーナ11、蓋体20の筐体21やフロントリテーナ22を樹脂混合物含有の成形材料により射出成形して高粘度樹脂層3a、低粘度樹脂層3b、及び傾斜樹脂層3cにより形成しても良い。
【実施例】
【0040】
以下、本発明に係る収納容器の実施例を説明するが、本発明に係る収納容器は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
先ず、同一条件で測定される溶融粘度が相対的に高い樹脂Aと低い樹脂Bとを表1に示す組成・配合比で組み合わせ、二軸押出機で混合して樹脂混合物を成形材料として調製し、樹脂混合物をペレット化して金型に射出し、図1に示す半導体ウェーハを収納する収納容器の容器本体を射出成形した。
【0041】
溶融粘度が相対的に高い樹脂Aとしては、表1に示すように、(1)ポリカーボネート:ノバレックス7022R(商品名:三菱エンジニアリングプラスチックス社製)、(4)ポリプロピレン−2:ノバテックPP MA3H(商品名:日本ポリプロ社製)、(5)シクロオレフィン系ポリマー‐2:ゼオノア1020R(商品名:日本ゼオン社製)を選択的に使用した。
【0042】
溶融粘度が相対的に低い樹脂Bとして、表1に示すように、(2)シクロオレフィン系ポリマー‐1:ゼオノア1060R(商品名:日本ゼオン社製)、(3)ポリプロピレン−1:ノバテックPP MA1B(商品名:日本ポリプロ社製)を使用した。
【0043】
溶融粘度が相対的に高い樹脂A・BのMFR値、吸水率、透湿度については、予め測定して表2にまとめた。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
収納容器の容器本体を射出成形したら、容器本体内を純窒素ガス(純度99.999%以上)で置換し、図1に示す蓋体により密閉して収納容器内を絶対乾燥状態とした。この際、容器本体内に温湿度測定用のデータロガーを配置し、窒素ガス置換後からの容器本体内の温湿度の経時変化を測定し、表3、4にまとめた。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
上記実施例から、収納容器の容器本体は、十分な機械的強度を有し、かつ内部への水分放出が極めて少ないため、半導体ウェーハの汚染防止に効果的であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る収納容器の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面説明図である。
【図3】図2のIII部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
3 周壁
3a 高粘度樹脂層
3b 低粘度樹脂層
3c 傾斜樹脂層
4 底板
8 天板
10 背面壁
12 側壁
20 蓋体
21 筐体
W 半導体ウェーハ(物品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを備え、これら容器本体と蓋体のうち、少なくとも容器本体を樹脂混合物含有の成形材料により成形した収納容器であって、
成形材料の樹脂混合物を、溶融粘度が相対的に高い樹脂と低い樹脂とを混合することにより調製し、溶融粘度が相対的に低い樹脂を低吸水率及び低透湿性の樹脂とし、この溶融粘度が相対的に低い樹脂により、容器本体の少なくとも物品に面する内面を形成するようにしたことを特徴とする収納容器。
【請求項2】
基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部に嵌め合わされる着脱自在の蓋体とを備えた請求項1記載の収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−52781(P2010−52781A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221172(P2008−221172)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】