説明

収納庫

【課題】気密性が良く、扉開閉のために要するスペースの小さな開閉機構を提供する。
【解決手段】閉位置にある扉12の前方で、扉12と干渉しない間隔を開けて扉11を
左右方向Wにスライドさせるための主ガイド溝21と、主ガイド溝21から、扉11およ
び12のそれぞれを、閉位置に移動するためのサブガイド溝22aおよび22bとを有す
る開閉機構20を提供する。扉11をサブガイド溝22aおよび22bにより主ガイド溝
21に移動すると、閉位置にある扉12の前方側で、扉12を左右方向Wに移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の扉により開口部を開閉する開閉機構およびそれを用いた収納庫に関す
るものである。
【背景技術】
【0002】
玄米や豆類などが収容された袋体などの貯蔵物を貯蔵する収納庫が知られており、この
収納庫では、扉が旋回することにより収納庫の開口部を開閉する観音開き方式、扉をスラ
イドして開口部を開閉するスライド方式の機構が採用されている。特許文献1には、1枚
の旋回式の扉を有する飯米の貯蔵庫が開示され、特許文献2には、スライド扉用のレール
構造が開示されている。
【特許文献1】特開2000−106745号公報
【特許文献2】特開2001−46192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
観音開き、または旋回式の扉は、開口部の縁を形成する戸当たりに前面から扉を当てて
密着できるので密閉性の点で優れており、庫内の温度を管理したり、湿度を管理する必要
のある収納庫の扉に適している。しかしながら、旋回式の扉は、開けるために、収納庫の
前方に扉を旋回させるだけのスペースが必要になるので、収納庫を設置できる場所が限ら
れる。また、多少旋回できる程度のスペースが扉の前にあっても、旋回可能な角度が小さ
いと開口部が開く範囲が限られてしまい、貯蔵物の搬入、搬出が困難になる。扉の幅を狭
くすることにより旋回に必要なスペースを小さくできるが、扉の開閉により開く面積が小
さくなり、実用的ではない。
【0004】
スライド式の扉は、扉を動かすために収納庫の前方にスペースが基本的に不要であり、
作業員などが扉にアクセスできるスペースがあれば良い。したがって、旋回式の扉を備え
た収納庫に比較すると、設置場所に対する制約は少ない。しかしながら、開口部の縁を形
成する戸当たりに対して扉をスライドさせて閉じるので、戸当たりと扉を密着させること
が難しい。さらに、複数の扉を交互にスライドさせるために扉の間にある程度の隙間がな
いとスムーズにスライドできない。このため、扉同士の隙間を密封することが難しい。
【0005】
そこで、本発明においては、スライド式の扉のように、収納庫の前方に扉を旋回するス
ペースがなくても開閉でき、旋回式の扉のように戸当たりに扉を前方から押し付けて密着
し、気密性および断熱性を高めることができる開閉機構および収納庫を提供することを目
的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明においては、開口部を所定の方向に分割して閉じることができるパネ
ル状の複数の扉と、これら複数の扉の少なくとも1つの扉を、閉位置にある他の扉の前方
で、他の扉と干渉しない間隔を開けて所定の方向にスライドさせるためのメインガイドと
、このメインガイドから、複数の扉のそれぞれを、閉位置に移動するための複数のサブガ
イドとを有する開閉機構を提供する。この開閉機構においては、少なくとも1つの扉を、
メインガイドからサブガイドにより閉位置に移動すると、少なくとも1つの扉はメインガ
イドから退避し、メインガイドにより他の扉の少なくともいずれかを所定の方向に移動で
きる。
【0007】
本発明の開閉機構では、扉をサブガイドにより閉位置に移動することにより、扉はメイ
ンガイドから退避すると共に、開口部の縁を形成する戸当たりに対してメインガイドのあ
る前方から扉が当たる。したがって、旋回式の扉と同様に、扉により開口部を密封できる
。一方、サブガイドにより、閉位置からメインガイドに扉を移動すると、閉位置にある扉
の間には干渉しない間隔(クリアランス)が確保されるので、メインガイドに沿って扉を
所定の方向または第1の方向にスライドさせることができる。さらに、それぞれの扉はサ
ブガイドによりメインガイドから導かれて個々に閉位置に移動するので、閉位置では扉同
士を重ねずに、並列に並べることができる。このため、閉位置において扉同士が重なるこ
とはなく、扉同士が重なった隙間を密封する必要がなくなる。
【0008】
このように、本発明の開閉機構は、スライド式と同様にスライドすることにより扉を移
動でき、旋回式と同様に戸当たりに前面から扉を当てて閉めることができる。したがって
、収納庫の前方に扉を旋回するスペースがなくても開閉でき、前方にアクセスするための
スペースがあればよく、また、扉により気密性および断熱性を高めることが容易な開閉機
構を提供できる。第1の方向または所定の方向は垂直(鉛直)方向(上下方向)でも良く
、水平方向(左右方向)でも良い。鉛直方向に扉をスライドさせる場合は、安全に扉を停
止させるために、適当なストッパを設けることが望ましい。
【0009】
収納室と、収納室の開口部を所定の方向に分割して閉じることができるパネル状の複数
の扉と、これらの複数の扉の少なくとも一つの扉を、閉位置にある他の扉の前方で、他の
扉と干渉しない間隔を開けて所定の方向にスライドさせるためのメインガイドと、このメ
インガイドから、複数の扉のそれぞれを、閉位置に移動するための複数のサブガイドとを
有し、少なくとも一つの扉を、メインガイドからサブガイドにより閉位置に移動すると、
少なくとも一つの扉はメインガイドから退避し、メインガイドにより、他の扉のいずれか
を所定の方向に移動できる本発明の収納庫は、本発明の開閉機構を備えた収納庫であり、
収納庫を置いて前方にアクセスできるだけのスペースがあれば設置することができ、さら
に、密封性も高くできる。このため、本発明の収納庫は、温度や湿度などの庫内の環境温
度を保持することが求められる用途に適している。さらに、収納室の内部の環境条件を調
整する手段を設けることにより、収納庫が設置された周囲の環境に対して、庫内を積極的
に所望の条件に保ち、食料品あるいはその他の製品を保存するのに適した環境を提供でき
る。また、所望の環境を維持するためには、複数の扉を閉位置に移動させて開口部を閉じ
た状態において、収納室を密閉するシール構造を設けておくことが望ましい。
【0010】
複数の扉は、メインガイドおよびサブガイドによりガイドされる連結ピンを備えている
ことが望ましい。フックなどにより、メインおよびサブガイドの外側あるいは内側によっ
て扉をガイドすることも可能であるが、レール溝あるいはスリットのように、連結ピンを
ガイドする方式であれば、メインガイドとサブガイドとの間の乗り移りが容易となり、切
り替え機構を設けなくてもメインガイドとサブガイドとの間を乗り換えできる。
【0011】
複数の扉の各々を1つの連結ピンで支持することも可能であるが、メインガイドでスラ
イドさせたり、サブガイドで閉位置に移動するときの姿勢が安定し難く、他の扉と干渉し
たり、不用意に戸当たりと衝突する可能性がある。したがって、所定の方向の両端近傍に
第1の連結ピンおよび第2の連結ピンをそれぞれ設けることが望ましい。扉をスライドさ
せる方向(所定の方向)の両端の2箇所に連結ピンを取り付けることにより、扉をスライ
ドさせているときの姿勢を安定化できる。また、それらの連結ピンに対応するように、そ
れぞれの連結ピンをガイドする第1のサブガイドおよび第2のサブガイドを設けることに
より閉位置に動かすときの姿勢も安定する。
【0012】
第1および第2のサブガイドを平行に配置して、各々の扉をメインガイドから閉位置に
動かすときに前後方向あるいは斜め方向に直線的に動くようにしても良い。メインガイド
から斜めに第1の連結ピンをガイドする第1のサブガイドと、第1の連結ピンが閉位置に
到達した位置で、第2の連結ピンをメインガイドとほぼ直交する方向にガイドする第2の
サブガイドとを設けることが可能である。このような第1および第2のサブガイドの配置
であれば、扉を閉位置に動かすときは、まず、第1の連結ピンの側が閉位置に到達し、次
に、第2の連結ピンの側を旋回させることになる。したがって、扉の動きをさらに旋回方
式に近づけることが可能となり、開口部の周囲の戸当たりに徐々に扉を密着させる、高い
気密性が得られる動きをさせることができる。
【0013】
さらに、扉を開くときは、まず、扉の第2の連結ピンの側を前方に引っ張って旋回させ
、次に、スライドさせることによりメインガイドに扉を導くことができ、そのままスライ
ドさせて扉を開けることができる。したがって、片手で扉を簡単に開閉することが可能と
なる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の開閉機構により、スライド式の扉と、旋回式の扉の長所を併せ持った扉により
開口部を開閉することができる。このため、本発明の開閉機構を用いて、前方にスペース
がほとんどなくても扉を開閉でき、また、気密性の高い収納部を備えた収納庫を提供でき
る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1に本発明に係る収納庫の外
観を示してある。図1では、2枚の扉の一方をスライドさせて他方の扉に重ねた状態で開
口部を開いている状態を示してある。収納庫1は、ベース5と、その上に固定された断熱
性の箱本体3と、箱本体3の内部の収納部(収納室)6の温度および湿度を制御できる空
調ユニット4とを備えている。空調ユニット4は、収納部6の酸素濃度などまでを制御で
きる環境制御ユニットであっても良い。収納庫1は、さらに、収納室6の前面の開口部2
を水平方向(幅方向または左右方向(所定の方向または第1の方向))Wに分割して閉じ
ることができる断熱性のパネル状の2つの扉11および12と、これらの扉11および1
2を水平方向Wにスライドするように、扉11および12の上下をガイドする上ガイド板
14および下ガイド板15とを備えている。
【0016】
本例においては、2つの扉11および12と、上ガイド板14および下ガイド板15に
より、開閉機構20が構成されている。上ガイド板14および下ガイド板15のそれぞれ
は、扉11および12を水平方向(左右の方向)Wにスライドさせるためのメインガイド
となる主ガイド溝21と、主ガイド溝21から閉位置にそれぞれの扉11および12を移
動するためのサブガイドとなるサブガイド溝22とを備えている。それぞれの扉11およ
び12は、上端および下端に、主ガイド溝21およびサブガイド溝22に挿入された状態
で、扉11および12をガイドするための連結ピン35を備えている。
【0017】
図2に、収納庫1の開口部2の周辺の戸当たり部分の構造を、断面を用いて拡大して示
してある。図2は、扉11が閉位置にあり、扉12が主ガイド溝21によりスライドされ
て扉11とほぼ重なった位置にある状態を示してある。扉11および12は、それらの上
部および下部の、左右方向Wの両端近傍の2箇所に取り付けられたアーム36を備えてお
り、それぞれの先端に、連結ピン(第1の連結ピン35aおよび第2の連結ピン35b)
が取り付けられている。これらの連結ピン35aおよび35bが上ガイド板14および下
ガイド板15の主ガイド溝21およびサブガイド溝22に挿入された状態で扉11および
12は移動できるようになっている。主ガイド溝21は、閉位置にある扉の前方で、閉位
置の扉と干渉せずに、主ガイド溝21に沿って開位置にある扉を左右方向Wに移動するこ
とができる位置に配置されている。本図は、サブガイド溝22により扉11が閉位置にあ
り、その前方で主ガイド溝21に支持された開状態の扉12が扉11と干渉せずに、左右
方向Wに移動することができる。
【0018】
閉位置においては、それぞれの扉11および12は、開口部2の正面の方向から、開口
部2の縁を形成する戸当たり部分2aに向かって押し付けられる。したがって、スライド
式の扉と異なり、閉位置においては、扉11および12の裏面と戸当たり部分2aとの間
に隙間を設ける必要はない。このため、扉11および12の裏面を戸当たり部分2aに密
着することが容易となる。本例では、各々の扉11および12の裏面の四方の縁部分に、
シール構造となるパッキン9が取り付けられており、戸当たり部分2aとの間に隙間が発
生しにくいようになっている。パッキン9は、戸当たり部分2aに取り付けても良い。ま
た、開口部2の中央には、収納室6の底面から天井に延びるようにセンターピラー8が取
り付けられており、その前面が戸当たり部分8aとなり、扉11および12の裏側の縦方
向に延びた縁に取り付けられたパッキン9と当たり、センターピラー8と扉11または1
2とが密着する。したがって、扉毎に、その扉により開閉する開口部2を密封することが
できる。シール構造は、平面的なパッキンに限らず、1つまたは複数のフィンを当てて空
気の流れを遮断するようなものなど、他の公知のシール構造を適用することができる。
【0019】
図3および図4に、扉11により開口部2を開閉する様子を上ガイド板14と共に示し
てある。これらの図においては、図1および2とは逆に、扉12を閉位置にした状態で、
扉11を開ける様子を示してある。また、これらの図では、扉11および12と、上ガイ
ド板14に形成された主ガイド溝21およびサブガイド溝22との関係および動きを説明
するために、これらを実線で示し、他の部分を破線で示してある。また、開閉する扉11
のアームを実線で示し、閉位置に保持したままの扉12のアームは破線で示してある。上
下のガイド板14および15は上下対称の構成をしているので、以下では、上ガイド板1
4に設けられた主ガイド溝21およびサブガイド溝22により扉11および12が支持さ
れている状態を説明するが、下ガイド板15においても同様である。また、本例の上ガイ
ド板14は、左右2枚の平板材14aおよび14bの組合せにより構成されているが、一
枚のガイド板14として説明する。
【0020】
上述したように、主ガイド溝21は、閉位置にある扉の前方で左右方向にほぼ直線的に
延びており、開状態にある扉を支持し、主ガイド溝21に支持された扉を、閉位置にある
扉と干渉せずに左右方向Wに移動させるためのものである。サブガイド溝22aおよび2
2bは、この主ガイド溝21から開口部2の方向(後方)に延びており、左右の扉11お
よび12のそれぞれを、閉位置に移動するためのものである。また、2つのサブガイド溝
22aおよび22bは、1つの扉11を、主ガイド溝21から閉位置に移動するために、
それぞれの扉の両側に取り付けられた第1の連結ピン35aおよび第2の連結ピン35b
に対応して配置されている。したがって、本例では、2つの扉を、それぞれの閉位置に導
くために、主ガイド溝21からは4つのサブガイド溝が後方に延びている。
【0021】
このため、本例の主ガイド溝21およびサブガイド溝22aおよび22bにより、扉1
1および12の内、一方の扉を閉位置にした状態で、他方の扉を開いて、左右方向Wにス
ライドし、開口部2を開閉できる。主ガイド溝21により扉をスライドするときは、扉の
両端の連結ピン35aおよび35bが主ガイド溝21に挿入された状態で動くので、扉の
姿勢は、主ガイド溝21に沿って直線的に保持され、閉位置にある他方の扉に当たること
がない。また、主ガイド溝21に支持された位置から、閉位置までは、扉の両側の連結ピ
ン35aおよび35bが、それぞれ、サブガイド溝22aおよび22bにより導かれるの
で、サブガイド溝22aおよび22bにより決まる姿勢で扉は移動する。したがって、扉
がぐらついたり、旋回して不用意に扉の端と戸当たりが衝突したりすることはなく、誰に
でも簡単に、安定した状態で扉11および12を開閉することができる。
【0022】
サブガイド溝22aおよび22bの内、主ガイド溝21の両端に位置する第1のサブガ
イド溝22aは、主ガイド溝21の端から斜め後方に末広がりとなるように延びている。
したがって、主ガイド溝21の端に扉を移動すると、扉の端は後方の開口部2の方向に自
動的に導かれる。このため、図3(b)に示すように、開状態の扉11を、その扉により
開閉される開口の側、すなわち、左方向の開口の側にスライドさせると、第1の連結ピン
35aが第1のサブガイド溝22aにガイドされ、扉11の左側が閉位置に到達する。
【0023】
他方の第2のサブガイド溝22bは、主ガイド溝21の略中央で、主ガイド溝21から
ほぼ垂直に後方に延びている。この第2のサブガイド溝22bの位置は、扉の一方の端の
連結ピン35aが第1のサブガイド溝22aによりガイドされて、閉位置に到達したとき
に、扉の他方の端の連結ピン35bが主ガイド溝21の上で到達する位置である。したが
って、図3(b)に示すように、扉11の左側の第1の連結ピン35aが閉位置に到達す
ると、扉11の右側の第2の連結ピン35bは、第2のサブガイド溝22bに入る位置に
なる。第2のサブガイド溝22bは、その位置から後方にほぼ直線状に延びているので、
扉11の右側を押すことにより、扉11は左側を軸に旋回し、第2の連結ピン35bは第
2のサブガイド溝22bに導かれて、閉位置に到達し、開口部2を密封する。扉11を開
くときは、上記と逆の手順で扉11を動かすことになる。
【0024】
図3および図4を参照して、主ガイド溝21およびサブガイド溝22を備えた開閉機構
20により扉11を開ける手順を説明する。図3(a)は、左右の扉11および12が閉
位置にあり、開口部2を閉じている状態を示している。開口部2を閉じた状態においては
、左右の扉11および12はいずれもサブガイド溝22aおよび22bにより主ガイド溝
21から閉位置に退避した位置にあり、開口部2を密閉している。閉位置では、扉11お
よび12は左右方向Wに並列に配置され、扉の前面は揃っており、前後方向に段違いにな
らない。
【0025】
図3(b)に示すように、扉11を開く際は、扉11の表面の右側(内側)にある取手
17を、扉11を操作する作業員から見て手前(収納庫1の前方)に引く。これにより、
第2の連結ピン35bは、第2のサブガイド溝22bにガイドされて主ガイド溝21の方
向に移動し、扉11は第1の連結ピン35aを中心として旋回する。第2の連結ピン35
bが主ガイド溝21に到達した状態で、扉11を旋回できなくなり、扉11は、右側にス
ライドできる状態になる。
【0026】
次に、図4(a)に示すように、左扉11を右方向に引っ張る。これにより、第2の連
結ピン35bが主ガイド溝21によりガイドされ、第1の連結ピン35aは第1のサブガ
イド溝22aによりガイドされて移動する。第1のサブガイド溝22aは、扉11の左側
を右斜め前方に移動させながら、第1の連結ピン35aが主ガイド溝21に到達すると、
扉11は扉12に対して略平行な状態になり、左扉11と、閉位置にある右扉12との間
に間隔Xが確保される。
【0027】
図4(b)に示すように、さらに左扉11を右側に引っ張る(押しても良い)。これに
より、扉11の2つの連結ピン35aおよび35bが主ガイド溝21によりガイドされ、
左扉11は、右扉12と平行な姿勢の状態で、右扉12と干渉することなく右方向にスラ
イドする。左扉11が右扉12にほぼ重なり合った位置になると、右側の連結ピン35b
が動けなくなるので、左扉11は停止する。この状態で、開口部2のほぼ左半分が開放さ
れる。このとき、左扉11の右側が右扉12の表面と干渉する可能性があるが、左扉11
の裏面には密閉用のパッキン9が設けられており、干渉材として機能する。
【0028】
開いた左扉11を閉じる際は、上記と逆に扉11を操作する。すなわち、図4(b)の
状態から、取手17を用いて左扉11を左方向にスライドする。左扉11は、主ガイド溝
21によってガイドされ、右扉12の前方を左方向に真直ぐに移動する。左扉11の第1
の連結ピン35aが主ガイド溝21の左端に達すると、第1の連結ピン35aは自動的に
第1のサブガイド22aに入り、第1のサブガイド22aによりガイドされ、図3(b)
に示すように、左扉11の左側の部分は閉位置に達する。この状態になると、第2の連結
ピン35bは第2のサブガイド溝22bに挿入可能な状態になるので、左扉11の右側を
後方に押すと、第2の連結ピン35bが第2のサブガイド22bによりガイドされながら
移動し、扉11は、第1の連結ピン35aを中心に旋回して閉位置に到達する。したがっ
て、図3(a)に示したように、左扉11および右扉12が共に閉位置において同一平面
上に配置された状態で、開口部2が閉じられる。
【0029】
開口部2を閉じるときの左扉11の動きは、まず、左扉11の左側が閉位置に移動し、
その後に、左扉11の右側が扉の左側を軸として旋回しながら閉位置に移動する、2段階
の動きとなる。したがって、閉じるときの扉11の動きは、観音開きなどのような旋回型
の扉と同じ動きになり、旋回軸の方向から順番に(徐々に)扉11の裏面に設けられたパ
ッキン9と開口部2の戸当たり部分2aとが接触する。パッキン9を開口部2の戸当たり
部分2aに押し付けるだけでも、十分に高い密封性能は得られるが、一方向から順にパッ
キン9を戸当たり部分2aに押し付けることにより、パッキン9をスムーズに変形させる
ことができ、しわがよって空気路ができたり、空気がパッキン9と戸当たり部分2aの間
に入ったりすることによる小さなリークも防止できる。したがって、高い密閉性を得るこ
とができる。
【0030】
また、旋回型の扉は、扉を開閉するときに、旋回させる側に設けられた取手などを引い
たり押したりするだけでよく、操作が簡単であるが、本例の開閉機構20は、そのメリッ
トも備えている。例えば、扉11は、扉12の側に設けられた取手17により扉11を引
いたり、押したりするだけで扉11を開閉でき、片手で簡単に操作できる。
【0031】
さらに、本例の開閉機構20では、扉をいったん主ガイド溝21に移動させると、主ガ
イド溝21に沿ってスライドさせることができる。したがって、スライド式の扉と同様に
、開口部2の前面に扉を旋回するようなスペースがなくても、開口部2を開閉できる。ス
ライド式の扉は、密封性を高くすることが難しいが、上記のように、本例の開閉機構20
では密封性は非常に良い。このように、本例の開閉機構20は、旋回式の扉と、スライド
式の扉とのディメリットはなく、それらのメリットを兼ね備えたものとなっている。
【0032】
さらに、本例の主ガイド溝21とサブガイド溝22aおよび22bは、長穴の形式を採
用し、それに連結ピン35aおよび35bを挿入している。したがって、主ガイド溝21
と、サブガイド溝22aおよび22bとの間の乗り移りは簡単であり、特別な機構は不用
であり、乗り移りもスムーズに行なわれる。主ガイド溝21とサブガイド溝22aおよび
22bは、カーテンレールのように断面がC字型になったガイドであっても良い。レール
の外側あるいは内側で扉11および12をガイドするような機構を採用することは可能で
ある。その場合は、レールを横断して主ガイドとサブガイドとの乗り移りを行なえるよう
な切り替え機構を設けておくことが望ましい。
【0033】
また、本例の開閉機構20では、L字型に折れ曲がったアーム36を扉11および12
に設けて、その先に連結ピン35aおよび35bを取り付けている。したがって、主ガイ
ド溝21の飛び出しを、扉11および12の閉位置の付近に止め、扉を開けたときに開口
部2へアクセスし易い形態にしている。主ガイド溝21を扉がスライドする位置に配置す
ることは可能であり、この場合は、連結ピン35aおよび35bを扉11および12に直
に取り付けることも可能である。
【0034】
なお、上記では、左扉11を開閉する例を説明したが、右扉12についても左右の方向
が反転するだけで同様に開閉することが可能である。また、左右に2枚の扉11および1
2を備えた収納庫1を例に本発明の開閉機構を説明したが、扉の枚数は2枚に限定されず
に、3枚以上であっても良い。
【0035】
図5に3枚扉の収納庫1aに採用された本発明に係る開閉機構20aの一例を示してあ
る。また、図6に4枚扉の収納庫1bに採用された本発明にかかる開閉機構20bの一例
を示してある。図5および図6では、図3および図4と同様に、上レール板14の主ガイ
ド溝21およびサブガイド溝22と、扉11および12を実線で示し、収納庫1aおよび
1bの他の部分は破線で示してある。また、開いた扉のアームを実線で示し、閉じた扉の
アームは破線で示してある。図5に示した収納庫1aの開閉機構20aは、3枚のパネル
状の扉11、12および13と、これらの扉を水平方向Wにスライドするための主ガイド
溝21およびこれらの扉を閉位置に導くための3組のサブガイド溝22とを備えている。
主ガイド溝21およびサブガイド溝22は、3枚の扉と同じピッチで分割した3枚の平板
材14a〜14cにより構成している。
【0036】
この収納庫1aでは、中央の扉13を、上述した右扉12と同じ操作で開閉できるよう
にしている。すなわち、収納庫1aは、3枚の扉11、13および12により覆われる開
口部2aの幅で延びた主ガイド溝21と、その主ガイド溝21から左右の扉11および1
2を閉位置に移動するサブガイド22aおよび22bと、中央の扉13の右側を斜めに閉
位置に移動するための第1のサブガイド溝22aと、扉13の左側をほぼ真後ろに閉位置
に移動するための第2のサブガイド溝22bとを備えている。したがって、中央の扉13
は、右側の扉12と同様に、左側を旋回することにより開閉する。中央の扉13を、左側
の扉11と同様に、右側を旋回することにより開閉するように構成することも可能である

【0037】
図6に示した収納庫1bの開閉機構20bは、4枚のパネル状の扉11a、12a、1
1bおよび12bと、これらを水平方向Wにスライドさせる主ガイド溝21と、これらの
扉を閉位置に導く4組のサブガイド溝22とを備えている。本例においては、左扉11お
よび右扉12の組合せを左右に並べて4枚扉の開閉機構を実現している。したがって、主
ガイド溝21およびサブガイド溝22の構成は、図3に示した主ガイド溝21およびサブ
ガイド溝22の組合せを左右に2つ並べて、主ガイド溝21を接続したものとなっている
。この4枚の扉を備えた開閉機構20bにおいては、任意の2枚の扉を開くことができ、
他の閉位置にある扉の前に移動することにより、開口部2のほぼ半分を開放することがで
きる。中央の2枚の扉は、左扉および右扉のいずれでも構成することができ、左−右−左
−右の代わりに、左−左−左−右、左−右−右−右、左−左−右−右といった組合せが可
能である。
【0038】
さらに、上記では、左右方向(水平方向)Wを所定の方向(第1の方向)とし、この方
向に扉が開かれる収納庫を例に本発明を説明したが、所定の方向は上下方向でも良く、開
口部を上下に複数の扉で分割して開閉する開閉機構にも本発明は適用可能である。この場
合は、複数のパネル状の扉が上下に動くように主ガイド溝を配置し、その主ガイド溝に対
しては上記と同様にサブガイド溝を配置することができる。
【0039】
また、上記では、密封性に優れた旋回動作が可能な開閉機構の例を説明したが、サブガ
イド溝により、直線的に後方に、あるいは斜め後方に主ガイド溝から扉をスライドして閉
位置に導くことも可能である。さらに、独立した空調機構付きの収納庫を例に本発明を適
用した例を説明したが、空調のない収納庫であっても本発明の開閉機構を適用することに
よりスペース効率が良く密封性の高い収納庫を提供できる。また、本発明の開閉機構は、
気密性が良く、扉を開閉するために要するスペースの小さな開閉機構であるので、独立し
た収納庫に限らず、家庭内の収納スペースを開閉するための機構などの他の用途にも適用
できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る収納庫の外観を示す斜視図である。
【図2】収納庫の開口部の戸当たり部分を拡大して示す断面図である。
【図3】図3(a)は左右の扉で開口部を閉じた様子を模式的に示す図、図3(b)は左扉を開き始めた様子を模式的に示す図である。
【図4】図4(a)は、左扉を右扉の側にスライドしている様子を模式的に示す図、図4(b)は左扉を右扉の側にスライドしきった様子を模式的に示す図である。
【図5】3枚扉の収納庫において中央扉を左扉の側にスライドした様子を模式的に示す図である。
【図6】4枚扉の収納庫において、左側から2番目の扉および右端の扉をスライドした様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1、1a、1b 収納庫
2 開口部
6 収納室
11、11a、12、12a、13 扉
14、15 レール板
20、20a、20b 開閉機構
21 主ガイド溝
22a 第1のサブガイド溝
22b 第2のサブガイド溝
35a 第1の連結ピン
35b 第2の連結ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を所定の方向に分割して閉じることができるパネル状の複数の扉と、
これら複数の扉の少なくとも1つの扉を、閉位置にある他の扉の前方で、前記他の扉と
干渉しない間隔を開けて前記所定の方向にスライドさせるためのメインガイドと、
このメインガイドから、前記複数の扉のそれぞれを、前記閉位置に移動するための複数
のサブガイドとを有し、
前記少なくとも1つの扉を、前記メインガイドから前記サブガイドにより前記閉位置に
移動すると、前記少なくとも1つの扉は前記メインガイドから退避し、前記メインガイド
により前記他の扉の少なくともいずれかを前記所定の方向に移動できる、開閉機構。
【請求項2】
請求項1において、前記複数の扉は、前記メインガイドおよびサブガイドによりガイド
される連結ピンを備えている開閉機構。
【請求項3】
請求項2において、前記複数の扉の各々は、前記所定の方向の両端近傍に第1の連結ピ
ンおよび第2の連結ピンをそれぞれ備えており、さらに、前記第1の連結ピンおよび前記
第2の連結ピンをそれぞれガイドする第1のサブガイドおよび第2のサブガイドを有する
開閉機構。
【請求項4】
請求項3において、前記第1のサブガイドは前記メインガイドから斜めに前記第1の連
結ピンをガイドし、前記第2のサブガイドは、前記第1の連結ピンが前記閉位置に到達し
た位置で、前記第2の連結ピンを前記メインガイドとほぼ直交する方向にガイドする、開
閉機構。
【請求項5】
請求項4において、前記メインガイドの前記所定の方向の両端は、前記第1のサブガイ
ドに繋がっている、開閉機構。
【請求項6】
収納室と、
前記収納室の開口部を所定の方向に分割して閉じることができるパネル状の複数の扉と

これらの複数の扉の少なくとも一つの扉を、閉位置にある他の扉の前方で、前記他の扉
と干渉しない間隔を開けて前記所定の方向にスライドさせるためのメインガイドと、
このメインガイドから、前記複数の扉のそれぞれを、前記閉位置に移動するための複数
のサブガイドとを有し、
前記少なくとも一つの扉を、前記メインガイドから前記サブガイドにより前記閉位置に
移動すると、前記少なくとも一つの扉は前記メインガイドから退避し、前記メインガイド
により、前記他の扉のいずれかを前記所定の方向に移動できる、収納庫。
【請求項7】
請求項6において、前記収納室の内部の環境条件を調整する手段を有する収納庫。
【請求項8】
請求項6において、前記複数の扉を前記閉位置に移動させて前記開口部を閉じた状態に
おいて、前記収納室を密閉するシール構造を有する収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−2152(P2009−2152A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206589(P2008−206589)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【分割の表示】特願2004−314041(P2004−314041)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(591150797)GAC株式会社 (69)
【出願人】(000144898)株式会社山本製作所 (144)
【Fターム(参考)】