説明

受信装置及び受信方法

【課題】通信フレームが検出された時刻と実際の受信時刻との差をできるだけ小さくする
【解決手段】各受信部2は、それぞれ同一の通信フレームを受信する。各遅延部5は、受信部2のそれぞれから入力した通信フレームの位相が一致するように、それぞれの通信フレームを遅延させる。通信フレーム取得部6は、各遅延部5から入力したそれぞれの通信フレームを合成することで1つの通信フレームを取得する。遅延部5と並列に設けられたT1計測部8、演算部9、前値比較部10、1・2系比較部11及び選択部12は、協働して、受信部2から入力した通信フレームのフレームパルスを検出した時刻を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向装置から無線送信された通信フレームを受信し、その受信時刻を特定する受信装置及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、列車の高速化や無人化運転が進んでいる。こうした背景で列車を制御するには、当該列車の現在の位置に応じて列車の加減速を制御する必要がある。そのため、列車の制御システムは、経時的に変化する列車の位置を正確に特定する必要がある。
【0003】
特許文献1、2には、線路の沿線に設置された基地局装置と列車に設置された移動局装置との間で無線通信を行い、その下り通信と上り通信との遅延差を用いて列車の位置を特定する方法が開示されている。
【0004】
以下に、列車の位置を特定する具体的な処理を説明する。
基地局装置及び移動局装置は、それぞれ所定の間隔で通信フレームの送信を行う。
基地局装置は、移動局装置から通信フレームを受信した時刻から、次回移動局装置へ通信フレームを送信する時刻までの時間T1を算出する。
移動局装置は、前回基地局装置に通信フレームを送信した時刻から、基地局装置から通信フレームを受信した時刻までの時間T2を算出する。そして、移動局装置は、次回送信する通信フレームに、当該算出した時間T2を示す情報を格納する。
通信フレームの受信時刻は、基地局装置及び移動局装置が通信フレームのフレームパルスを検出し、その検出時刻を特定することで行う。
【0005】
次に、基地局装置は、算出した時間T1と、移動局装置から受信した通信フレームに格納された時間T2との時間差を算出し、当該時間差を2で除算することで、基地局装置と移動局装置との間の電波伝搬遅延時間である時間T3を算出する。そして、基地局装置は、当該時間T3に光速c(299792458m/s)を乗算することで、基地局装置から移動局装置までの距離を算出することができる。
【0006】
ところで、特許文献1に記載の方法を用いて列車の位置を特定する場合、特定した位置情報に誤りが含まれないよう、基地局装置及び移動局装置が備える受信装置は、複数のアンテナを備え、空間ダイバーシティ処理を行うことで受信した通信フレームのビット誤り率を低減させることが好ましい。
空間ダイバーシティを行う場合、特にそれぞれのアンテナが受信した通信フレームを合成させる最大比合成方式を用いる場合、それぞれの通信フレームを遅延させ、位相を調節する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2738464号公報
【特許文献2】特開2007−331629号公報
【特許文献3】特開2000−033875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したように、遅延処理がなされた通信フレームに対して空間ダイバーシティ処理がなされるため、受信装置が当該通信フレームのフレームパルスを検出したとしても、その時刻は、実際にアンテナが通信フレームを受信した時刻に遅延時間を加算した時刻となり、実際の受信時刻に対して大きく誤差が生じることとなる。
上述したように、基地局装置は、基地局装置及び移動局装置の通信フレームの受信時刻を用いて列車の位置を特定する。したがって、基地局装置及び移動局装置が備える受信装置には、通信フレームが検出された時刻と実際の受信時刻との差をできるだけ小さくすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、対向装置から無線送信された通信フレームを受信し、その受信時刻を特定する受信装置であって、同一の通信フレームを受信する複数の受信部と、前記受信部のそれぞれから入力した通信フレームの位相が一致するように、前記それぞれの通信フレームを遅延させる遅延部と、前記遅延部から入力したそれぞれの通信フレームを合成することで、または受信レベルが高い方の通信フレームを選択することで、1つの通信フレームを取得する通信フレーム取得部と、前記遅延部と並列に設けられ、前記受信部から前記通信フレームを入力し、当該通信フレームのフレームパルスを検出した時刻を特定する時刻特定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、対向装置から無線送信された通信フレームを受信し、その受信時刻を特定する受信方法であって、前記受信装置の複数の受信部は、それぞれ同一の通信フレームを受信し、前記受信装置の遅延部は、前記受信部のそれぞれから入力した通信フレームの位相が一致するように、前記それぞれの通信フレームを遅延させ、前記受信装置の通信フレーム取得部は、前記遅延部から入力したそれぞれの通信フレームを合成することで、または受信レベルが高い方の通信フレームを選択することで、1つの通信フレームを取得し、前記遅延部と並列に設けられた前記受信装置の時刻特定部は、前記受信部から前記通信フレームを入力し、当該通信フレームのフレームパルスを検出した時刻を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、時刻特定部は、遅延部に並列に設けられている。したがって、時刻特定部は、受信部から入力された通信フレーム、すなわち遅延部による遅延処理がなされる前の通信フレームのフレームパルスを検出することで時刻を特定する。これにより、受信装置は、通信フレームが検出された時刻と実際の受信時刻との差をできるだけ小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による受信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】通信フレームからデータを抽出する動作を示すフローチャートである。
【図3】通信フレームの受信時刻に基づいて列車の位置を特定する動作を示す第1のフローチャートである。
【図4】通信フレームの受信時刻に基づいて列車の位置を特定する動作を示す第2のフローチャートである。
【図5】時間T1、時間T2と電波伝搬時間T3との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による受信装置の構成を示す概略ブロック図である。
受信装置は、線路の沿線に設置された基地局装置に備えられ、列車に設置された移動局装置から通信フレームを受信し、当該通信フレームを用いて列車の位置を特定する。
受信装置は、アンテナ1、受信部2、同期部3、遅延制御部4、遅延部5、通信フレーム取得部6、データ抽出部7、T1計測部8(個別時刻特定部、時間算出部)、演算部9、前値比較部10、1・2系比較部11、選択部12(時刻選択部)を備える。
なお、受信装置は、アンテナ1、受信部2、同期部3、遅延部5、T1計測部8、演算部9、前値比較部10をそれぞれ2つずつ備え、2冗長構成としている。
【0014】
アンテナ1は、移動局装置から送信された電波を捕捉する。
受信部2は、対応するアンテナ1が捕捉した電波をダウンコンバートすることで、通信フレームを受信する。受信部2は、例えば、バンドパスフィルタ、リミッタ、直交復調器、A/D変換器、FM復調器、ローパスフィルタの組み合わせによって実現される。
同期部3は、対応する受信部2から通信フレームを入力し、当該通信フレームと位相を同期させたクロック信号を出力する。これにより、受信装置はフレームを認識することができる。同期部3は、例えばPLL(Phase Locked Loop)回路によって実現される。
【0015】
遅延制御部4は、同期部3から通信フレーム及びクロック信号を入力し、全ての同期部3から通信フレームを入力したときに、各遅延部5に通信フレームを出力させる出力信号を出力する。具体的には、遅延制御部4は、2ビットの記憶回路を備える。当該記憶回路のビットは、一方のビットが1系の同期部3に対応し、他方のビットが2系の同期部3に対応するものである。また、遅延制御部4は、同期部3から通信フレームを入力したとき、当該同期部3に対応するビットを1に書き換える。そして、記憶回路の両方のビットが1となった時に、各遅延部5に出力信号を出力する。
遅延部5は、同期部3から通信フレームを入力し、当該通信フレームを出力せずに記憶する。また、遅延部5は、遅延制御部4から出力信号を入力した時に、記憶していた通信フレームを通信フレーム取得部6に出力する。すなわち、遅延部5は、他の遅延部5が出力する通信フレームと位相が一致するように、それぞれの通信フレームを遅延させる。
【0016】
通信フレーム取得部6は、各遅延部5から通信フレームを入力し、それぞれの通信フレームを合成することで1つの通信フレームを取得する。通信フレーム取得部6は、例えばビットコンバイナによって実現される。
データ抽出部7は、通信フレーム取得部6から通信フレームを入力し、当該通信フレームから主信号及び時間T2を抽出する。なお、時間T2とは、移動局装置が受信装置に通信フレームを送信した時刻から、受信装置から通信フレームを受信した時刻までの時間である。データ抽出部7は、例えばデマルチプレクサによって実現される。
【0017】
T1計測部8は、対応する同期部3から通信フレームのフレームパルスを入力し、当該フレームパルスを検出した時刻を特定する。また、T1計測部8は、基地局装置が備える送信装置が送信する通信フレームのフレームパルスを入力し、当該フレームパルスを検出した時刻(所定の時刻)を特定する。また、T1計測部8は、同期部3から入力したフレームパルスを検出した時刻と送信装置から入力したフレームパルスを検出した時刻との差を算出することで時間T1を算出する。なお、時間T1とは、移動局装置から通信フレームを受信した時刻から、次回移動局装置へ通信フレームを送信する時刻までの時間である。
演算部9は、対応するT1計測部8から時間T1を示す信号を入力し、さらにデータ抽出部7から時間T2を示す信号を入力する。また、演算部9は、時間T1と時間T2とを用いて、列車の位置を算出する。
【0018】
前値比較部10は、演算部9から列車の位置情報を示す信号を入力し、当該信号が示す列車の位置情報を一時的に保持する。また、前値比較部10は、演算部9から入力した信号が示す列車の位置情報と、前回取得した列車の位置情報とを比較し、その差が所定の閾値未満であるか否かを判定する。なお、前値比較部10が演算部9から入力した信号が示す列車の位置情報と、前回取得した列車の位置情報とを比較する処理は、T1計測部8が算出した時間T1と、T1計測部8が前回算出した時間T1とを比較する処理と等価である。また、前値比較部10は、演算部9から入力した列車の位置情報を示す信号、及び比較判定結果を示す信号を出力する。
1・2系比較部11は、各前値比較部10から、列車の位置情報を示す信号を入力し、それぞれの列車の位置情報を比較し、その差が所定の閾値未満であるか否かを判定する。
選択部12は、各前値比較部10から、列車の位置情報を示す信号を入力する。また、選択部12は、各前値比較部10及び1・2系比較部11から判定結果を示す信号を入力し、当該判定結果に基づいて、各前値比較部10から入力した列車の位置情報を示す信号のうちの何れか1つを出力するか、または信号を出力しないかを決定する。また、選択部12は、2ビットの記憶回路を備え、前回いずれの前値比較部10から入力した信号を選択したかを記憶する。
つまり、T1計測部8、演算部9、前値比較部10、1・2系比較部11及び選択部12は、協働して(時刻抽出部)、受信部2から入力した通信フレームのフレームパルスを検出した時刻に基づいて、列車の位置を特定する。
【0019】
受信装置は、上記構成を有することで、以下の処理を実行する。
各受信部2は、それぞれ同一の通信フレームを受信する。各遅延部5は、受信部2のそれぞれから入力した通信フレームの位相が一致するように、それぞれの通信フレームを遅延させる。通信フレーム取得部6は、各遅延部5から入力したそれぞれの通信フレームを合成することで1つの通信フレームを取得する。遅延部5と並列に設けられたT1計測部8、演算部9、前値比較部10、1・2系比較部11及び選択部12は、協働して、受信部2から入力した通信フレームのフレームパルスを検出した時刻を特定する。
これにより、受信装置は、通信フレームが検出された時刻と実際の受信時刻との差をできるだけ小さくすることができる。
【0020】
次に、受信装置の動作を説明する。
アンテナ1が移動局装置から送信された無線信号を捕捉すると、受信部2は、当該無線信号をダウンコンバートし、通信フレームを再現し、当該通信フレームを同期部3に出力する。次に、同期部3は、受信部2から入力した通信フレームからクロック信号を生成し、当該クロック信号と通信フレームとを遅延制御部4及び遅延部5に出力し、通信フレームのフレームパルスをT1計測部8に出力する。
【0021】
以降、受信装置は、通信フレームを受信した後、当該通信フレームからデータを抽出する処理と、当該通信フレームの受信時刻に基づいて列車の位置を特定する処理とを並列に実行する。
まず、受信装置が通信フレームからデータを抽出する動作を説明する。
図2は、通信フレームからデータを抽出する動作を示すフローチャートである。
遅延制御部4は、同期部3から通信フレームとクロック信号とを入力すると、当該同期部3から通信フレームを入力したことを記憶回路に記憶させる(ステップS1)。すなわち、遅延制御部4は、記憶回路のビットのうち、通信フレームを入力した同期部3に対応するビットを1に書き換える。このとき、各遅延部5は、同期部3から通信フレームを入力し、当該通信フレームを記憶回路に記憶させる(ステップS2)。
【0022】
次に、遅延制御部4は、全ての同期部3から通信フレームを入力したか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、遅延制御部4は、記憶回路の両方のビットが1になっているか否かを判定する。
遅延制御部4は、通信フレームを入力していない同期部3があると判定した場合(ステップS3:NO)、すなわち記憶回路の何れかのビットが0である場合、ステップS1に戻り、通信フレームの入力を待機する。
他方、遅延制御部4は、全ての同期部3から通信フレームを入力したと判定した場合(ステップS3;YES)すなわち記憶回路の両方のビットが1になっている場合、各遅延部5に出力信号を出力する(ステップS4)。
【0023】
遅延部5は、遅延制御部4から出力信号を入力すると、記憶回路に記憶していた通信フレームを通信フレーム取得部6に出力する(ステップS5)。これにより、遅延部5は、他の遅延部5が出力する通信フレームと位相が一致するように、それぞれの通信フレームを遅延させることができる。
通信フレーム取得部6は、各遅延部5から通信フレームを入力すると、各通信フレームのうち信号対雑音比が高い方の通信フレームに重みづけをし、合成後の信号対雑音比が最大となるように各通信フレームを合成する(ステップS6)。そして、データ抽出部7は、通信フレームが合成した通信フレームを入力し、当該通信フレームから主信号及び時間T2を抽出する(ステップS7)。
【0024】
このように、本実施形態による受信装置は、2冗長構成をなす受信部2から入力したそれぞれの通信フレームを、位相を合わせた後に合成することで、通信フレームの信号対雑音比を高くすることができる。これにより、受信装置が抽出するデータの信頼性を高めることができる。
【0025】
次に、受信装置が通信フレームの受信時刻に基づいて列車の位置を特定する動作を説明する。
図3は、通信フレームの受信時刻に基づいて列車の位置を特定する動作を示す第1のフローチャートである。
図4は、通信フレームの受信時刻に基づいて列車の位置を特定する動作を示す第2のフローチャートである。
T1計測部8は、同期部3から通信フレームのフレームパルスを入力すると、当該フレームパルスの入力を検出し、検出した時刻からの経過時間の計測を開始する(ステップS11)。経過時間の計測は、例えばクロック数を計数することで行うと良い。これにより、T1計測部8は、対応する同期部3から通信フレームのフレームパルスを入力し、当該フレームパルスを検出した時刻を特定することとなる。次に、T1計測部8は、送信装置から通信フレームのフレームパルスの入力を待機し、送信装置からのフレームパルスを検出したか否かを判定する(ステップS12)。
【0026】
T1計測部8は、送信装置からのフレームパルスを検出できなかった場合、経過時間の計測を継続する。他方、T1計測部8は、送信装置からのフレームパルスを検出した場合、経過時間の計測を終了し(ステップS13)、当該経過時間である時間T1を示す信号を演算部9に出力する。これにより、T1計測部8は、送信装置からのフレームパルスを検出した時刻を特定し、同期部3からのフレームパルスを検出した時刻と送信装置からのフレームパルスを検出した時刻との差である時間T1を算出することができる。
【0027】
図5は、時間T1、時間T2と電波伝搬時間T3との関係を示す図である。
次に、演算部9は、対応するT1計測部8から入力した信号から時間T1を再現し、予めデータ抽出部7から入力していた信号から時間T2を再現する。次に、演算部9は、時間T2が時間T1より大きいか否かを判定する(ステップS14)。
演算部9は、時間T2が時間T1より大きいと判定した場合(ステップS14:YES)、時間T1と時間T2との間の時間差を2で除算して得られる値を、電波伝搬時間T3として算出する(ステップS15)。
【0028】
時間T2が時間T1より大きい場合、時間T2は、図5(A)に示すように、移動局装置が送信した通信フレームを送信した時刻から、送信装置が当該通信フレームを受信した後に送信した通信フレームを移動局装置が受信した時刻までの時間を示すこととなる。
したがって、時間T1と時間T2との間の時間差は、移動局装置と基地局装置との間を電波が往復する時間となる。つまり、時間T1と時間T2との間の時間差を2で除算することで、移動局装置と基地局装置との間の電波伝搬時間T3を算出することができる。
【0029】
他方、演算部9は、時間T2が時間T1以下であると判定した場合(ステップS14:NO)、時間T1と時間T2との間の時間差にマルチフレーム長Tm(移動局装置による通信フレームの送信間隔)を加算し、当該値を2で除算して得られる値を、電波伝搬時間T3として算出する(ステップS16)。
【0030】
時間T2が時間T1以下である場合、時間T2は、図5(B)に示すように、移動局装置が送信した通信フレームを送信した時刻から、送信装置が当該通信フレームを受信する前に送信した通信フレームを移動局装置が受信した時刻までの時間を示すこととなる。
したがって、時間T2が時間T1より大きい場合と同様の方法で電波伝搬時間を算出するには、送信装置が当該通信フレームを受信する前に送信した通信フレームを移動局装置が受信した時刻を用いて、送信装置が当該通信フレームを受信した後に送信した通信フレームを移動局装置が受信した時刻を推定する必要がある。そのため、送信装置が当該通信フレームを受信する前に送信した通信フレームを移動局装置が受信した時刻に、移動局装置による通信フレームの送信間隔を加算することで、送信装置が当該通信フレームを受信した後に送信した通信フレームを移動局装置が受信した時刻を推定することができる。
したがって、時間T1と時間T2との間の時間差にマルチフレーム長Tmを加算した時間は、移動局装置と基地局装置との間を電波が往復する時間となる。つまり、時間T1と時間T2との間の時間差にマルチフレーム長Tm(移動局装置による通信フレームの送信間隔)を加算し、当該値を2で除算することで、移動局装置と基地局装置との間の電波伝搬時間T3を算出することができる。
【0031】
演算部9は、ステップS15またはステップS16で電波伝搬時間T3を算出すると、当該時間T3に光速度を乗算することで、基地局装置と移動局装置との間の距離を算出する(ステップS17)。これにより、演算部9は、列車の位置(キロ程)を算出することができる。演算部9は、列車の位置情報を示す信号を前値比較部10に出力する。
次に、前値比較部10は、演算部9から列車の位置情報を示す信号を入力し、当該信号が示す列車の位置情報と記憶回路が記憶する列車の位置情報とを比較し、その差が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS18)。なお、記憶回路が記憶する列車の位置情報は、後述するステップS21によって記憶された前回算出された列車の位置情報である。
前値比較部10は、今回算出した列車の位置情報と前回算出した列車の位置情報との差が所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS18:YES)、演算部9から入力した列車の位置情報を示す信号に、当該データが有効であることを示すフラグ(比較判定結果)を付加して選択部12に出力する(ステップS19)。
他方、前値比較部10は、今回算出した列車の位置情報と前回算出した列車の位置情報との差が所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS18:NO)、演算部9から入力した列車の位置情報を示す信号に、当該データが無効であることを示すフラグを付加して選択部12に出力する(ステップS20)。
【0032】
前値比較部10は、ステップS19、ステップS20で、演算部9から入力した列車の位置情報を示す信号とフラグとを出力すると、当該列車の位置情報を記憶回路に記憶させる(ステップS21)。このとき、既に記憶回路に記憶されている前回の列車の位置情報は削除される。
【0033】
1・2系比較部11は、各前値比較部10から、列車の位置情報を示す信号を入力し、それぞれの列車の位置情報を比較し、その差が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS21)。1・2系比較部11は、列車の位置の差が所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS21:YES)、各前値比較部10から入力した信号が有効であることを示す比較結果信号を出力する(ステップS22)。他方、1・2系比較部11は、列車の位置の差が所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS21:NO)、各前値比較部10から入力した信号が無効であることを示す比較結果信号を出力する(ステップS23)。
つまり、各演算部9が算出した列車の位置情報がそれぞれ異なる場合、何れかの演算部9の算出結果が誤っていることが分かる。このとき、何れの演算部9の算出結果が誤っているかを判断することはできないため、1・2系比較部11は、そのような場合にいずれの算出結果も無効とすることで、誤った計算結果を出力することを防ぐことができる。
【0034】
選択部12は、各前値比較部10から列車の位置情報を示す信号を入力し、1・2系比較部11から比較結果信号を入力する。次に、選択部12は、1・2系比較部11から入力した比較結果信号が有効を示すか否かを判定する(ステップS24)。
選択部12は、1・2系比較部11から入力した比較結果信号が無効を示すと判定した場合(ステップS24:NO)、列車の位置を算出できなかったことを示す信号を出力する(ステップS25)。
【0035】
他方、選択部12は、1・2系比較部11から入力した比較結果信号が有効を示すと判定した場合(ステップS24:YES)、2ビットの記憶回路の何れのビットが1を示すかを判定し、当該ビットに対応する前値比較部10(前回選択した前値比較部10)から入力した信号に付加されたフラグを読み出す。そして、選択部12は、当該フラグが有効を示すか否かを判定する(ステップS26)。
選択部12は、フラグが有効を示すと判定した場合(ステップS26:YES)、前回選択した前値比較部10から入力した列車の位置情報を示す信号を出力する(ステップS27)。
【0036】
他方、選択部12は、フラグが無効を示すと判定した場合(ステップS26:YES)、他方の前値比較部10(前回選択しなかった前値比較部10)から入力した信号に付加されたフラグを読み出す。そして、選択部12は、当該フラグが有効を示すか否かを判定する(ステップS28)。
選択部12は、フラグが有効を示すと判定した場合(ステップS28:YES)、前回選択しなかった前値比較部10から入力した列車の位置情報を示す信号を出力し(ステップS29)、2ビットの記憶回路の、前回選択した前値比較部10に対応するビットを0にし、前回選択しなかった前値比較部10に対応するビットを1にする。
他方、選択部12は、フラグが無効を示すと判定した場合(ステップS28:NO)、列車の位置を算出できなかったことを示す信号を出力する(ステップS25)。
【0037】
このように、本実施形態による受信装置は、2冗長構成をなす受信部2から入力したそれぞれの通信フレームの位相を合わせずに、それぞれの通信フレームのフレームパルスを入力した時刻を特定し、当該時刻(当該時刻を用いて算出した列車の位置)を選択部12にて比較する。これにより、受信装置は、列車の位置をより正確に算出することができる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態による受信装置は、基地局装置に備えられる場合を説明したが、これに限られず、移動局装置に備えられていても良い。但しこの場合、受信装置は、T1計測部8の代わりに時間T2を計測するT2計測部を備え、列車の位置を算出する必要が無いため、演算部9を備えない構成となる。なお、前値比較部10及び1・2系比較部11は、前回と今回の列車の位置情報を比較する代わりに前回と今回の時間T2を比較することとなる。
【0039】
また、本実施形態では、通信フレーム取得部6が、各遅延部5から通信フレームを入力し、それぞれの通信フレームを合成することで1つの通信フレームを取得する場合を説明したが、これに限られない。例えば、通信フレーム取得部6は、各遅延部5から通信フレームを入力し、受信レベルが高い方の通信フレームを選択することで、1つの通信フレームを取得する構成であっても良い。
【0040】
また、本実施形態では、前値比較部10及び1・2系比較部11が、前回と今回の列車の位置情報を比較することで、当該情報が有効であるか否かを判定する場合を示したが、これに限られない。例えば、前値比較部10及び1・2系比較部11は、T1計測部8が計測した時間T1を比較することで情報の有効性を判定しても良いし、演算部9が算出した電波伝搬時間T3を比較することで情報の有効性を判定しても良い。
【0041】
また、本実施形態では、アンテナ1、受信部2、同期部3、遅延部5、T1計測部8、演算部9、前値比較部10をそれぞれ2つずつ備え、2冗長構成とする場合を説明したが、これに限られず、それぞれを3つ以上備えた冗長構成としても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…アンテナ 2…受信部 3…同期部 4…遅延制御部 5…遅延部 6…通信フレーム取得部 7…データ抽出部 8…T1計測部 9…演算部 10…前値比較部 11…1・2系比較部 12…選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向装置から無線送信された通信フレームを受信し、その受信時刻を特定する受信装置であって、
同一の通信フレームを受信する複数の受信部と、
前記受信部のそれぞれから入力した通信フレームの位相が一致するように、前記それぞれの通信フレームを遅延させる遅延部と、
前記遅延部から入力したそれぞれの通信フレームを合成することで、または受信レベルが高い方の通信フレームを選択することで、1つの通信フレームを取得する通信フレーム取得部と、
前記遅延部と並列に設けられ、前記受信部から前記通信フレームを入力し、当該通信フレームのフレームパルスを検出した時刻を特定する時刻特定部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記時刻特定部は、
前記受信部のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記受信部から前記通信フレームを入力し、当該通信フレームのフレームパルスを検出した時刻を特定する個別時刻特定部と、
前記個別時刻特定部のそれぞれが特定した時刻のうち1つまたは0を選択する時刻選択部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記個別時刻特定部のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記個別時刻特定部が特定した時刻と所定の時刻との間の時間を算出する時間算出部と、
前記通信フレームの受信毎に前記時間算出部が算出した時間を順次取得し、前回算出した時間と今回算出した時間との時間差が所定の閾値以上であるか否かを判定する前値比較部と
を備え、
前記時刻選択部は、前記前値比較部によって時間差が所定の閾値以上であると判定された時間差に対応する時刻を選択しない
ことを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
対向装置から無線送信された通信フレームを受信し、その受信時刻を特定する受信方法であって、
受信装置の複数の受信部は、それぞれ同一の通信フレームを受信し、
前記受信装置の遅延部は、前記受信部のそれぞれから入力した通信フレームの位相が一致するように、前記それぞれの通信フレームを遅延させ、
前記受信装置の通信フレーム取得部は、前記遅延部から入力したそれぞれの通信フレームを合成することで、または受信レベルが高い方の通信フレームを選択することで、1つの通信フレームを取得し、
前記遅延部と並列に設けられた前記受信装置の時刻特定部は、前記受信部から前記通信フレームを入力し、当該通信フレームのフレームパルスを検出した時刻を特定する
ことを特徴とする受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−80172(P2012−80172A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220818(P2010−220818)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】