説明

受信装置

【課題】主に自動車のドアの施解錠等に用いられる受信装置に関し、送信装置とのペアリングが容易で、安価なものを提供することを目的とする。
【解決手段】記憶手段12に暫定コードDを設けると共に、制御手段13がこの暫定コードDを書換え、ここに送信装置6からのローリングコードを記憶させることによって、送信装置6の製作時や搬送時等に、誤って所定回数以上に送信装置6が操作された場合にも、送信装置6とのペアリングを容易に行うことが可能で、安価な受信装置14を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車に装着され、ドアの施解錠等の遠隔操作に使用される受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のドアの施解錠等を、機械式キーにより直接操作することに加え、運転者が携帯した送信装置によって、離れた箇所から遠隔操作することが広く行われており、誤操作がなく確実な操作が可能なものが求められている。
【0003】
このような従来の受信装置について、図5を用いて説明する。
【0004】
図5は従来の受信装置のブロック回路図であり、同図において、1はアンテナ、2はIC等の記憶手段、3はマイコン等の制御手段で、この制御手段3にアンテナ1と記憶手段2が電気的に接続されて、受信装置4が構成されている。
【0005】
そして、このような受信装置4が自動車の所定箇所に取付けられると共に、制御手段3がコネクタやリード線(図示せず)等によって、モータやソレノイド等から形成された車両の駆動手段5に電気的に接続される。
【0006】
また、6は携帯用の送信装置で、上面から複数の押釦6Bが突出した絶縁樹脂製のケース6A内には、収納されたアンテナやスイッチ、マイコン等によって送信手段や、送信装置毎に異なる識別コードや駆動コード等が登録された記憶手段(図示せず)等が形成されている。
【0007】
以上の構成において、受信装置4の近傍で、これと一対の送信装置6の押釦6Bを押圧操作すると、各々の受信装置4と送信装置6に固有の識別コードA1と、押釦6Bの操作回数を示すローリングコードB1等が、電波信号として送信装置6から送信される。
【0008】
そして、この電波信号をアンテナ1が受信して、制御手段3が記憶手段2に予め記憶された固有の識別コードA1と、受信した識別コードA1が一致するか否かを確認すると共に、受信したローリングコードB1を記憶手段2の空白領域Cに記憶させ、送信装置6と受信装置4の各コードを適合させることによって、一対の送信装置6と受信装置4の遠隔操作が可能となる、所謂ペアリングが行われる。
【0009】
つまり、個々の車両の製作途中で、上記のように所定の送信装置6から受信装置4へ識別コードA1とローリングコードB1を送信し、これを受信装置4が受信して記憶することによって、この後の遠隔操作時に、受信装置4が受信した電波信号がペアリングされた送信装置6からの適合したものであるか否かを判定し、適合する場合にのみ、制御手段3が駆動手段5を駆動して、ドアの施錠や解錠等の遠隔操作が行われるように構成されている。
【0010】
なお、送信装置6から送信される電波信号のローリングコードB1は、送信装置6の押釦6Bの操作回数によって順次変化するものであるため、1回目の操作時にはカウント1のローリングコードB1が送信されるが、2回目の操作時にはカウント2、3回目の操作時にはカウント3というように、操作回数に応じて順次カウント数の増加したローリングコードが送信される。
【0011】
したがって、送信装置6の製作時や搬送時等に、受信装置4から離れ電波信号が届かない場所で、誤って何回か押釦6Bが押圧操作されてしまった場合には、受信装置4とのペアリングを行う際、カウント1のローリングコードB1ではなく、例えばカウント5、カウント10といったローリングコードが送信装置6から受信装置4へ送信される。
【0012】
このため、所定回数までは、例えば数十回前後までは、受信装置4の制御手段3が固有の識別コードA1が一致した場合には、そのカウントのローリングコードを記憶手段2の空白領域Cに記憶させ、ペアリングが行われるようになっているが、空白領域Cの記憶容量にも限界があるため、所定回数以上に押釦6Bが操作された送信装置6については、別途分解等によりローリングコードのリセット作業を行う必要のあるものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002−320286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の受信装置においては、送信装置6の操作時や搬送時等に、誤って所定回数以上の押釦6Bが押圧操作された場合でも、受信装置4とのペアリングを行えるようにするには、受信装置4の記憶手段2の空白領域Cの記憶容量を大きく設けるか、あるいは、別途ローリングコードのリセット作業等を行う必要があるため、製作に手間がかかり、高価のものとなってしまうという課題があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、送信装置とのペアリングが容易で、安価な受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、記憶手段に暫定コードを設けると共に、制御手段がこの暫定コードに、送信装置からのローリングコードを記憶させるように受信装置を構成したものであり、制御手段が記憶手段の暫定コードを書換え、ここにローリングコードを記憶させることによって、送信装置の製作時や搬送時等に、誤って所定回数以上に送信装置が操作された場合にも、送信装置とのペアリングを容易に行うことが可能で、安価な受信装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、送信装置とのペアリングが容易で、安価な受信装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0019】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0020】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による受信装置のブロック回路図であり、同図において、1はアンテナ、12はIC等の記憶手段、13はマイコン等の制御手段で、この制御手段13にアンテナ1と記憶手段12が電気的に接続されている。
【0021】
また、記憶手段12には、図1や図3(a)の波形図に示すように、24ビット前後の固有の識別コードA1と、16ビット前後の暫定コードDが予め記憶されて、受信装置14が構成されている。
【0022】
そして、このような受信装置14が自動車の所定箇所に取付けられると共に、制御手段13がコネクタやリード線(図示せず)等によって、モータやソレノイド等から形成された車両の駆動手段5に電気的に接続される。
【0023】
さらに、6は携帯用の送信装置で、上面から複数の押釦6Bが突出した絶縁樹脂製のケース6A内には、収納されたアンテナやスイッチ、マイコン等によって送信手段や、送信装置毎に異なる識別コードや駆動コード等が登録された記憶手段(図示せず)等が形成されている。
【0024】
以上の構成において、受信装置14の近傍で、これと一対の送信装置6の押釦6Bを押圧操作すると、図2(a)の波形図に示すように、各々の受信装置14と送信装置6に固有の識別コードA1と、押釦6Bの操作回数を示すローリングコードB1等が、電波信号として送信装置6から送信される。
【0025】
そして、この電波信号をアンテナ1が受信して、制御手段13が記憶手段12に予め記憶された固有の識別コードA1と、受信した識別コードA1が、一致するか否かを確認すると共に、図3(b)に示すように、記憶手段12の暫定コードDを書換え、ここに受信したローリングコードB1を記憶させ、送信装置6と受信装置14の各コードを適合させることによって、一対の送信装置6と受信装置14の遠隔操作が可能となる、所謂ペアリングが行われる。
【0026】
つまり、個々の車両の製作途中で、上記のように所定の送信装置6から受信装置14へ識別コードA1とローリングコードB1を送信し、これを受信装置14が受信して記憶することによって、この後の遠隔操作時に、受信装置14が受信した電波信号が、ペアリングされた送信装置6からの適合したものであるか否かを判定し、適合する場合にのみ、制御手段13が駆動手段5を駆動して、ドアの施錠や解錠等の遠隔操作が行われるように構成されている。
【0027】
なお、送信装置6から送信される電波信号のローリングコードB1は、送信装置6の押釦6Bの操作回数によって順次変化するものであるため、1回目の操作時には上記のように、カウント1のローリングコードB1が送信されるが、2回目の操作時にはカウント2、3回目の操作時にはカウント3というように、操作回数に応じて順次カウント数の増加したローリングコードが送信装置6から送信される。
【0028】
したがって、受信装置14とのペアリングを行う前に、誤って何回か押釦6Bが押圧操作されてしまった場合には、ペアリングの際、カウント1のローリングコードB1ではなく、例えば、2回操作をしてしまった場合には、図2(b)に示すようにカウント2のローリングコードB2、3回操作をしてしまった場合には、図2(c)に示すようにカウント3のローリングコードB3、というように操作回数に応じて順次カウント数の増加したローリングコードが送信される。
【0029】
しかし、本発明においては、これらのローリングコードB2やB3を受信した場合にも、図3(c)や図3(d)に示すように、制御手段13が記憶手段12の暫定コードDを書換え、ここに受信したローリングコードB2やB3を記憶させ、各コードを適合させて、一対の送信装置6と受信装置14のペアリングが行われる。
【0030】
さらに、10回、50回と誤操作が行われてしまい、図2(d)や図2(e)に示すように、カウント10のローリングコードB10やカウント50のローリングコードB50が送信装置6から送信された場合にも、図3(e)や図3(f)に示すように、制御手段13が記憶手段12の暫定コードDを書換えて、ここに受信したローリングコードB10やB50を記憶させる。
【0031】
つまり、受信装置14とのペアリングを行う前の、送信装置6の製作時や搬送時等に、受信装置14から離れ電波信号が届かない場所で、誤って何回か押釦6Bが押圧操作されてしまい、ペアリングの際、送信装置6からローリングコードB2やB3、B10、B50等が送信された場合でも、記憶手段12に予め記憶された暫定コードDを、制御手段13がこれらのローリングコードに書換えて、送信装置6とのペアリングが行われるように構成されている。
【0032】
すなわち、記憶手段12に暫定コードDを設けると共に、ペアリング時には、制御手段13がこの暫定コードDを書換え、送信装置6からのローリングコードを記憶させることによって、送信装置6の製作時や搬送時等に、誤って所定回数以上に送信装置6が操作された場合にも、送信装置6とのペアリングを確実に行うことが可能なようになっている。
【0033】
なお、暫定コードDのビット数とカウント数の関係は、ビット数Xに対し(2のX乗−1)のカウント数となるため、例えば、4ビットではカウント15、8ビットではカウント255というように、暫定コードDのビット数を大きくするほど記憶容量が大きくなり、記憶できるローリングコードのカウント数は増える。
【0034】
したがって、ビット数を大きくするほど、送信装置6が何回誤操作されてもローリングコードを記憶させることができるが、16ビットで6万回以上、20ビットでは100万回以上のカウントが可能であるため、通常はこの程度のビット数とすれば、暫定コードDのローリングコードの記憶容量として充分なものが得られる。
【0035】
つまり、16〜20ビット前後の暫定コードDによって、記憶容量を極端に大きくすることなく、且つ、分解等によるローリングコードのリセット作業も不要となり、製作が容易で、安価な受信装置14を実現することができるようになっている。
【0036】
なお、以上の説明では、送信装置6から送信され受信装置14が受信する電波信号について、主に識別コードA1とローリングコードB1〜B50を中心として説明したが、一般に車両のドアの施解錠等を遠隔操作する際には、図4の波形図に示すように、24ビット前後の識別コードA1と、16ビット前後のローリングコードB50の前後に、190ビット前後の起動コードE1と4ビット前後の駆動コードF1が付加されたものが用いられる。
【0037】
そして、この電波信号を受信装置14が受信すると、先ず、起動コードE1によって受信装置14が、例えば間欠動作状態から連続動作状態に起動し、次に、識別コードA1とローリングコードB50によって、受信した電波信号がペアリングされた送信装置6からの適合したものであることを判定した後、駆動コードF1に応じた駆動信号を駆動手段5に出力して、例えばドアの施錠や解錠等の遠隔操作が行われるように構成されている。
【0038】
このように本実施の形態によれば、記憶手段12に暫定コードDを設けると共に、制御手段13がこの暫定コードDを書換え、ここに送信装置6からのローリングコードを記憶させることによって、送信装置6の製作時や搬送時等に、誤って所定回数以上に送信装置6が操作された場合にも、送信装置6とのペアリングを容易に行うことが可能で、安価な受信装置14を得ることができるものである。
【0039】
なお、以上の説明では、運転者が携帯した送信装置6から車両の受信装置14へ電波信号を送信する、いわゆるキーレスシステムについて説明したが、送信装置と受信装置の双方に送信手段と受信手段を設け、送信装置と受信装置が互いに通信を行う、いわゆるスマートエントリシステムにおいても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明による受信装置は、送信装置とのペアリングが容易で、安価なものが得られ、主に自動車のドアの施解錠等の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態による受信装置のブロック回路図
【図2】同波形図
【図3】同波形図
【図4】同波形図
【図5】従来の受信装置のブロック回路図
【符号の説明】
【0042】
1 アンテナ
5 駆動手段
6 送信装置
6A ケース
6B 押釦
12 記憶手段
13 制御手段
14 受信装置
A1 識別コード
B1、B2、B3、B10、B50 ローリングコード
D 暫定コード
E1 起動コード
F1 駆動コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置からの電波信号を受信するアンテナと、上記電波信号の識別コード及びローリングコードを記憶する記憶手段と、上記アンテナ及び上記記憶手段に接続された制御手段からなり、上記記憶手段に暫定コードを設けると共に、上記制御手段が上記暫定コードに上記ローリングコードを記憶させる受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−278506(P2009−278506A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129388(P2008−129388)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】