説明

受光ユニット及び濃度測定装置

【課題】小型で、複数種類の気体の濃度測定を精度良く行うことができる濃度測定装置を提供する。
【解決手段】濃度測定装置は、雰囲気が充填されたセル内の一端部に赤外線を放射する光源を配し他端部に赤外線を受光する受光ユニット8を配した気体サンプル室を有している。受光ユニット8は、光源と相対する側に開口部11aが形成されたユニット本体11と、前記一端部から前記他端部に向かう方向に沿って延びユニット本体11の内部空間を複数の空間10a,10bに分割する分割部材12と、空間10a,10bの開口部11a側に夫々配され透過する赤外線の波長が互いに異なる複数のフィルタ15a,15bと、空間10a,10b夫々に配されフィルタ15a,15bを透過した赤外線を受光する複数のセンサ14a,14bと、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、雰囲気に含まれる二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素などの所定の気体の濃度を測定する濃度測定装置に用いられる受光ユニット及びこの受光ユニットを有した濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素などの所定の気体の濃度を測定する濃度測定装置には、従来から種々の気体サンプル室が用いられてきた。従来の気体サンプル室は、雰囲気が充填された筒状のセルと、セルの一端部に配された赤外線を放射する光源と、セルの他端部に配された受光器と、を有している(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
上記受光器は、赤外線センサと、この赤外線センサと光源との間に配置されて所定の波長の赤外線のみを透過させるフィルタとを有している。フィルタを透過する赤外線波長は、測定対象の気体に対する測定濃度範囲により定められている。即ち、フィルタを透過する赤外線波長は、測定対象の気体の測定範囲が0ppmから数千ppmオーダーであれば最も減衰し易い赤外線波長が選択されるなど、測定対象の気体の測定濃度範囲に応じて適切に選ばれている。
【0004】
上述した従来の気体サンプル室即ち濃度測定装置は、フィルタを介して赤外線センサが受光した光源からの赤外線の強さを測定することで、前記雰囲気中の前述した測定対象の気体の濃度を測定する。
【0005】
また、上述した従来の濃度測定装置は、測定対象の気体が複数種類ある場合は、上述した構成の気体サンプル室を複数設けていた。このため、濃度測定装置が大型化する傾向にあった。
【0006】
そこで、1つのセル内に複数の受光部を設けることにより小型化を図った濃度測定装置が特許文献2に考案されている。しかしながらこの濃度測定装置は、単純に1つのセル内に複数の受光器を設けた構成であることから、一つの受光器のフィルタを透過した赤外線が他の受光器の赤外線センサに受光されてしまう可能性があり、精度の高い濃度測定ができないという問題があった。
【特許文献1】特開平05−052742号公報
【特許文献2】特開2003−172700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、雰囲気中の測定対象となる複数種類の気体の濃度測定を同時に精度良く行うことができ、搭載される装置を小型化できる受光ユニット及びこの受光ユニットを有した濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、雰囲気が充填されるセルの一端部に配された光源からの光を受光する、前記セルの他端部に配された受光ユニットであって、前記光源と相対する側に開口部が形成された箱状の箱状部材と、前記一端部から前記他端部に向かう方向に沿って延び、前記箱状部材の内部空間を複数の空間に分割する分割部材と、前記複数の空間の前記開口部側にそれぞれ配され、予め定められた波長の光のみを透過させるとともに透過させる光の波長が互いに異なる複数のフィルタと、前記複数の空間それぞれに配され、前記フィルタを透過した光を受光する複数のセンサと、を有していることを特徴とする受光ユニットである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記分割部材が、ユニット本体内の空間を、互いに容積が異なる複数の空間に分割していることを特徴とするものである。このため、容積が大きな空間に配されたセンサは、容積が小さな空間に配されたセンサと比較して、光源からの光をより多く受光することが可能となり、測定対象の気体の濃度について、より高感度で測定することができる。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記複数のセンサの受光面が、前記一端部から前記他端部に向かう方向に対して傾斜して配されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、セル内の一端部に光源を配し、他端部に前記光源からの光を受光する受光ユニットを配した気体サンプル室と、前記受光ユニットが受光した前記光源からの光の強さに基づいて、前記気体サンプル室内の予め定められた気体の濃度を算出する濃度算出部と、を有した濃度測定装置において、前記受光ユニットとして、請求項1〜3のうち1項に記載の受光ユニットを有していることを特徴とする濃度測定装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、雰囲気が充填されるセルの一端部に配された光源からの光を受光する、前記セルの他端部に配された受光ユニットが、前記光源と相対する側に開口部が形成された箱状の箱状部材と、前記一端部から前記他端部に向かう方向に沿って延び、前記箱状部材の内部空間を複数の空間に分割する分割部材と、前記複数の空間の前記開口部側にそれぞれ配され、予め定められた波長の光のみを透過させるとともに透過させる光の波長が互いに異なる複数のフィルタと、前記複数の空間それぞれに配され、前記フィルタを透過した光を受光する複数のセンサと、を有していることから、雰囲気中の測定対象となる複数種類の気体の濃度測定を同時に精度良く行うことができ、搭載される装置を小型化できる受光ユニットを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、前記分割部材が、ユニット本体内の空間を、互いに容積が異なる複数の空間に分割していることから、雰囲気中の測定対象となる複数種類の気体の濃度測定を同時に精度良く行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、前記複数のセンサの受光面が、前記一端部から前記他端部に向かう方向に対して傾斜して配されていることから、光源から各センサまでの距離を短くすることができるので、光源の光が拡散する前に各センサが多量の光を受光でき、そのために、各気体の濃度を高精度に測定することができる。
【0015】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のうち1項に記載の受光ユニットを有していることから、小型で、雰囲気中の測定対象となる複数種類の気体の濃度測定を同時に精度良く行うことができる濃度測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る濃度測定装置を、図1乃至図6を参照して説明する。
【0017】
濃度測定装置1は、図2に示すように、濃度の測定対象の気体を含んだ雰囲気が充填される気体サンプル室2と、制御回路部3と、受光回路部4と、濃度算出部としてのマイクロコンピュータ(以下、μcomと記載する)5と、を有している。
【0018】
上記気体サンプル室2は、図1に示すように、セル6と、光源7と、受光ユニット8とを有している。セル6は、筒状に形成されている。図示例では、セル6は、四角筒状に形成されている。セル6には、セル6内に雰囲気を導く吸入口9aと、セル6内の雰囲気を外部に導く出口9bと、が設けられている。即ち、気体サンプル室2は、吸入口9a、出口9bを有している。これら吸入口9a、出口9bは、セル6の外壁6aを貫通していて、セル6内の気体を雰囲気と等しくするものである。
【0019】
上記光源7は、セル6内でかつ当該セル6の一端部6bに設けられている。光源7は、電圧が印加されることで、光としての赤外線をセル6の他端部6cに向かって放射する。また、この光源として、例えば黒体炉、電球等が用いられる。
【0020】
上記受光ユニット8は、図3及び図4に示すように、箱状部材としてのユニット本体11と、分割部材12と、4つのセンサとしての赤外線センサ14a,14b,14c,14dと、4つのフィルタ15a,15b,15c,15dと、集光部材13と、を有している。また、ユニット本体11即ち受光ユニット8は、セル6内でかつ当該セル6の他端部6cに設けられている。
【0021】
上記ユニット本体11は、光源7と相対する側に開口部11aが形成され、外形が円柱状に形成された箱状に形成されている。
【0022】
上記分割部材12は、ユニット本体11内に配されており、第1分割板12aと、第2分割板12bと、で構成されている。これら第1分割板12a,第2分割板12bは、セル6の一端部6bから他端部6cに向かう方向に沿って延びた板状に形成されている。また、これら第1分割板12a,第2分割板12bは、互いに平面方向が直交する向きで、互いに一体形成されている。即ち、分割部材12は平面視が十字状に形成されている。このような分割部材12は、ユニット本体11内の空間を、互いに容積が等しい4つの空間10a,10b,10c,10dに分割している。また、上記開口部11aは、これら4つの空間10a,10b,10c,10dに跨って形成されている。
【0023】
上記4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、互いに同一構成であり、上述した4つの空間10a,10b,10c,10dそれぞれに1つずつ配されているとともに、ユニット本体11の上記開口部11aから離れた側、即ちセル6の他端部6c側、に取り付けられている(図4を参照。)。即ち、これら複数の赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、同一平面上に配され、それぞれの受光面が、一端部6bから他端部6cに向かう方向に対して垂直に配されている。また、これら赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、例えば、焦電型、サーモパイル型のものが用いられる。このような赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、光源7により発せられかつ後述するフィルタ15a,15b,15c,15dを透過した赤外線を受光し、この赤外線の熱を電気エネルギーに変換して、センサ出力としてμcom5に出力する。
【0024】
上記4つのフィルタ15a,15b,15c,15dは、上述した4つの空間10a,10b,10c,10dそれぞれに対応して設けられており、上述した開口部11aを覆う格好でユニット本体11に取り付けられて、赤外線センサ14a,14b,14c,14dと光源7との間に配置されている。即ち、これら複数のフィルタ15a,15b,15c,15dは、同一平面上に配置されている。
【0025】
また、上記フィルタ15a,15b,15c,15dは、それぞれ、光源7からの赤外線のうち予め定められた波長の赤外線のみを透過させて、当該透過させた波長の赤外線を赤外線センサ14a,14b,14c,14dまで導く。即ち、複数のフィルタ15a,15b,15c,15dは、互いに透過させる赤外線の波長が異なる。
【0026】
また、上記フィルタ15a,15b,15c,15d各々を透過する赤外線波長は、濃度測定装置1が濃度の測定対象とする気体に対する測定濃度範囲により定められている。即ち、フィルタ15a,15b,15c,15d各々を透過する赤外線波長は、測定範囲が0ppmから数千ppmオーダーであれば最も減衰し易い赤外線波長が選択されるなど、測定対象の気体の測定濃度範囲に応じて適切に選ばれている。
【0027】
また、本実施形態では、空間10a内に配された赤外線センサ14a、及び空間10aの開口部11a側に配されたフィルタ15aは、二酸化炭素の濃度を測定するために設けられている。また、このフィルタ15aは、例えば本実施形態では、二酸化炭素中で減衰しやすい波長である4.27μmの赤外線のみを透過させるように設けられている。
【0028】
また、本実施形態では、空間10b内に配された赤外線センサ14b、及び空間10bの開口部11a側に配されたフィルタ15bは、水蒸気の濃度を測定するために設けられている。また、このフィルタ15bは、例えば本実施形態では、水蒸気中で減衰しやすい波長である1.9μmの赤外線のみを透過させるように設けられている。
【0029】
また、本実施形態では、空間10c内に配された赤外線センサ14c、及び空間10cの開口部11a側に配されたフィルタ15cは、一酸化炭素の濃度を測定するために設けられている。また、このフィルタ15cは、例えば本実施形態では、一酸化炭素中で減衰しやすい波長である4.64μmの赤外線のみを透過させるように設けられている。
【0030】
また、本実施形態では、空間10d内に配された赤外線センサ14d、及び空間10dの開口部11a側に配されたフィルタ15dは、基準(リファレンス)として設けられている。また、このフィルタ15dは、例えば本実施形態では、大気中で全く減衰しない波長である4.0μmまたは1.5μmの赤外線のみを透過させるように設けられている。
【0031】
なお、本発明のフィルタ15a,15b,15c,15dは、必ずしも前述した波長の赤外線のみを透過させるように設けられていなくても良く、前述したように、測定対象の気体の測定濃度範囲に応じて、これら気体の濃度測定に最適な波長の赤外線のみを透過させるように設けられていれば良い。
【0032】
なお、図6は、二酸化炭素に対する赤外線の透過率を示しており、図6中の横軸は赤外線の波長(μm)を示し、図6中の縦軸は赤外線の透過率(%)を示している。図6によれば、波長が4.27μmの赤外線の二酸化炭素中の透過率が、略零であることが示されており、波長が4.27μmの赤外線は、二酸化炭素中を殆ど透過しない(殆ど吸収されてしまう)ことが示されている。
【0033】
上記集光部材13は、上述したユニット本体11よりも光源7側、即ちセル6の一端部6b側、に配されている。この集光部材13は、例えば300度などの所定の角度の範囲の赤外線を集光して、フィルタ15a,15b,15c,15dつまり赤外線センサ14a,14b,14c,14dに集中させる。このことにより、光源7から直接入射する赤外線以外にも、セル6の外壁6aの内面で反射する赤外線も赤外線センサ14a,14b,14c,14dに集めることができるので、赤外線の受光効率を良くすることができる。なお、集光部材13として、フレーネルレンズ等を用いることができる。
【0034】
上記制御回路部3は、図2に示すように、発振器16、クロック分周回路17、定電圧回路18などを有しており、μcom5の命令に従って所定の周波数で光源7を点滅させる。
【0035】
上記受光回路部4は、図5に示すように、複数のアンプ19と、切り換え器20と、A/D変換器21とを有している。アンプ19は、それぞれ、赤外線センサ14a,14b,14c,14dと1対1に対応して設けられている。アンプ19は、対応する赤外線センサ14a,14b,14c,14dからの信号を増幅して、切り換え器20を介してA/D変換器21に向かって出力する。A/D変換器21は、赤外線センサ14a,14b,14c,14dからの信号をデジタル信号に変換して、μcom5に向かって出力する。
【0036】
上記μcom5は、制御回路部3及び受光回路部4と接続して、これらの動作を制御することで、濃度測定装置1全体の動作をつかさどる。μcom5は、予め定められたプログラムに従って動作するコンピュータである。このμcom5は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)、CPUのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM、各種のデータを格納するとともにCPUの処理作業に必要なエリアを有する読み出し専用のメモリであるRAM等を有して構成している。
【0037】
また、μcom5には、濃度測定装置1自体がオフ状態の間も記憶内容の保持が可能で、電気的消去・書き換え可能で、読み出し・書き込み自在なメモリ(EEPROM)が接続している。そして、このメモリには、濃度の算出に必要な吸光係数、測定距離、濃度変換係数等の各種情報を記憶するとともに、算出した濃度を外部から読出可能に時系列的に記憶する。
【0038】
上述した構成の濃度測定装置1の動作について以下説明する。まず、発振器16が発振してパルス信号を出力すると、クロック分周回路17がパルス信号を分周して所望の周波数のパルス信号を定電圧回路18に出力する。定電圧回路18は、クロック分周回路17からのパルス信号の入力に応じて光源7に定電圧を供給し、パルス信号の遮断に応じて光源7への定電圧の供給を遮断する。これにより、光源7にはパルス状の定電圧が供給され、光源7が点滅する。
【0039】
上述のように光源7に定電圧が供給されると、光源7からの赤外線がセル6に入射され、ユニット本体11の各空間10a,10b,10c,10dに入射される。この際、測定対象の気体に応じてそれぞれ定められた波長の赤外線のみが各フィルタ15a,15b,15c,15dを透過し、各空間10a,10b,10c,10dに入射される。そして、各フィルタ15a,15b,15c,15dを透過した赤外線は、それぞれ、各赤外線センサ14a,14b,14c,14dに向かって各空間10a,10b,10c,10d内を進み、これら各赤外線センサ14a,14b,14c,14dに受光される。
【0040】
また、本発明では、4つの空間10a,10b,10c,10dが分割部材12により互いに隔てられていることから、仮に一つのフィルタ(例えば15a)を透過した赤外線がこの一つのフィルタ(例えば15a)が配された一つの空間(10a)以外の他の空間(10b,10c,10d)に向かって進んでも、分割部材12に当たって反射されることによりこの赤外線が一つの空間(10a)内の一つの赤外線センサ(14a)に受光され、他の赤外線センサ(14b,14c,14d)に受光されてしまうことがない。よって、同一のセル6内に配置した複数の赤外線センサ14a,14b,14c,14dにより、複数の種類の気体の濃度を同時に精度良く測定することができる。
【0041】
上述のように赤外線を受光した赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、その強度を信号として受光回路部4に向かって出力する。また、受光回路部4は、各赤外線センサ14a,14b,14c,14dからの信号をデジタル信号に変換して、μcom5に向かって出力する。また、μcom5は、各赤外線センサ14a,14b,14c,14dが受光した赤外線の強さに基づいて、予め定められた気体の雰囲気中の濃度を測定する。
【0042】
具体的には、濃度測定装置1のμcom5は、基準として用いられる赤外線センサ14dで受光した赤外線の強さと、二酸化炭素を測定するための赤外線センサ14aで受光した赤外線の強さと、水蒸気を測定するための赤外線センサ14bで受光した赤外線の強さと、一酸化炭素を測定するための赤外線センサ14cで受光した赤外線の強さと、を比較して、測定対象の二酸化炭素、水蒸気及び一酸化炭素の濃度を測定する。
【0043】
本実施形態によれば、濃度測定装置1は、互いに透過する赤外線の波長が異なる4つのフィルタ15a,15b,15c,15dと、これらに対応した4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dと、を有した受光ユニット8が配された気体サンプル室2を有しているので、雰囲気に含まれる複数の種類の気体の濃度を同時に測定することができるとともに、その小型化が可能となる。
【0044】
そして、これら4つのフィルタ15a,15b,15c,15dと4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dとの間の空間が分割部材12により4つに分割されているので、一つのフィルタ(例えば15a)を透過した赤外線が、この一つのフィルタ(例えば15a)が配された一つの空間(10a)以外の他の空間(10b,10c,10d)に配された他の赤外線センサ(14b,14c,14d)に受光されてしまうことがなく、精度の良い濃度測定を行うことができる。
【0045】
また、4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dが同一のパッケージ即ちユニット本体11に配されており、さらに同一の光源7からの赤外線を受光するので、温度条件や光源7の経時劣化等の環境的な条件が全て同一になり、4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14d間の環境的な特性に対する感度補正を容易に行うことができる。
【0046】
また、上記気体サンプル室2が機械的な駆動系を有していないので、長期に亘って安定した濃度測定を行うことができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る濃度測定装置を、図7を参照して説明する。また、同図において、前述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
本実施形態の濃度測定装置は、図7に示す受光ユニット108を有する気体サンプル室(図1を参照。)を有し、それ以外は第1の実施形態と同一の構成となっている。
【0049】
上記受光ユニット108は、ユニット本体11と、分割部材112と、4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14d(不図示)と、4つのフィルタ115a,115b,115c,115dと、集光部材13(不図示)と、を有している。また、ユニット本体11即ち受光ユニット108は、セル6内でかつ当該セル6の他端部6cに設けられている(図1を参照。)。
【0050】
上記分割部材112は、ユニット本体11内に配された4つの分割板112aで構成されている。これら分割板112aは、それぞれ、セル6の一端部6bから他端部6cに向かう方向(図1を参照。)に沿って延びた板状に形成され、幅方向の一端部同士が互いに連ねられ、幅方向の他端部がユニット本体11の内表面に連ねられて、互いに一体形成されている。このような分割部材112は、ユニット本体11内の空間を、互いに容積が異なる4つの空間110a,110b,110c,110dに分割している。また、上記4つの空間110a,110b,110c,110dのうち、最も容積が大きく形成された空間110aは、雰囲気中の測定対象となる複数種類の気体のうち、最も低濃度の気体の濃度を測定するために設けられた空間である。また、ユニット本体11の開口部11aは、これら4つの空間110a,110b,110c,110dに跨って形成されている。
【0051】
上記4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、互いに同一構成であり、第1の実施形態と同様に、上述した4つの空間110a,110b,110c,110dそれぞれに1つずつ配されているとともに、ユニット本体11の開口部11aから離れた側、即ちセル6の他端部6c側、に取り付けられている。
【0052】
上記4つのフィルタ115a,115b,115c,115dは、上述した4つの空間110a,110b,110c,110dそれぞれに対応して設けられており、ユニット本体11の開口部11aを覆う格好でユニット本体11に取り付けられて、赤外線センサ14a,14b,14c,14dと光源7との間に配置されている。
【0053】
上述した構成の受光ユニット108を有する濃度測定装置は、第1の実施形態と同様に、光源7に定電圧が供給されると、光源7からの赤外線がセル6に入射され、ユニット本体11の各空間110a,110b,110c,110dに入射される。この際、測定対象の気体に応じてそれぞれ定められた波長の赤外線のみが各フィルタ115a,115b,115c,115dを透過し、各空間110a,110b,110c,110dに入射される。そして、各フィルタ115a,115b,115c,115dを透過した赤外線は、それぞれ、各赤外線センサ14a,14b,14c,14dに向かって各空間110a,110b,110c,110d内を進み、これら各赤外線センサ14a,14b,14c,14dに受光される。そして、第1の実施形態と同様に、予め定められた気体の雰囲気中の濃度を測定する。
【0054】
本実施形態によれば、雰囲気中の測定対象となる複数種類の気体のうち、最も低濃度の気体の濃度を測定する空間110aの容積が、他の空間110b,110c,110dの容積よりも大きく形成されていることから、この空間110aに配された赤外線センサ14aに受光される赤外線量を多くすることができるので、前記最も低濃度の気体の濃度を高精度に測定することができる。
【0055】
このように、本発明では、ユニット本体11内の空間を、測定対象の気体の濃度に応じて互いに容積が異なる複数の空間110a,110b,110c,110dに分割することにより、低濃度の気体の濃度を高精度に測定することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る濃度測定装置を、図8を参照して説明する。また、同図において、前述した第1,2の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施形態の濃度測定装置は、図8に示す受光ユニット208を有する気体サンプル室(図1を参照。)を有し、それ以外は第1の実施形態と同一の構成となっている。
【0058】
上記受光ユニット208は、ユニット本体11と、分割部材12と、4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dと、4つのフィルタ15a,15b,15c,15dと、集光部材13と、を有している。また、ユニット本体11即ち受光ユニット208は、セル6内でかつ当該セル6の他端部6cに設けられている(図1を参照。)。
【0059】
上記4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、互いに同一構成であり、4つの空間10a,10b,10c,10dそれぞれに1つずつ配されているとともに、ユニット本体11の開口部11aから離れた側、即ちセル6の他端部6c側、に取り付けられている。
【0060】
また、4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dは、それぞれの受光面が、セル6の一端部6bから他端部6cに向かう方向(図8中に矢印Kで示す。)に対して傾斜して配されている。また、これら4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dの受光面の縁部でかつ最も開口部11a寄りに位置付けられた縁部から開口部11aまでの距離は互いに等しくされている。さらに、これら4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dの受光面の縁部でかつ最も開口部11aから離れた側に位置付けられた縁部同士は、互いに同一平面状に位置付けられている。
【0061】
本実施形態によれば、4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dの受光面が、一端部6bから他端部6cに向かう方向Kに対して傾斜して配されていることから、光源7から4つの赤外線センサ14a,14b,14c,14dの受光面の縁部でかつ最も開口部11a寄りに位置付けられた縁部までの距離、即ち光源7から各赤外線センサ14a,14b,14c,14dまでの距離、を短くすることができるので、各フィルタ15a,15b,15c,15dを透過した赤外線が拡散する前に各赤外線センサ14a,14b,14c,14dが多量の赤外線を受光でき、そのために、各気体の濃度を高精度に測定することができる。
【0062】
また、前述した第1〜3の実施形態では、光として赤外線を用いている。しかしながら、本発明では、赤外線以外の種々の光を用いても良い。
【0063】
また、前述した第1〜3の実施形態では、濃度測定装置1が二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素の濃度を測定している。しかしながら、本発明では、濃度測定装置1がNOx、SOx、H2S、O3、CH4、NOなどの二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素以外の種々の気体の濃度を測定しても良い。
【0064】
また、前述した第1〜3の実施形態では、分割部材12,112がユニット本体11内の空間を、4つの空間10a,10b,10c,10d/110a,110b,110c,110dに分割していたが、本発明は「4つの空間」に限定されず、分割部材がユニット本体11内の空間を、2つ以上の複数の空間に分割しているもの全てを含む。
【0065】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる濃度測定装置を構成する気体サンプル室の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示された濃度測定装置の構成を示す説明図である。
【図3】図1に示された気体サンプル室の受光ユニットの正面を模式的に示す説明図である。
【図4】図3中のA−A線に沿った断面を模式的に示す説明図である。
【図5】図2に示された濃度測定装置の受光回路の構成を示す説明図である。
【図6】二酸化炭素に対する赤外線の透過率を示したグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる濃度測定装置を構成する受光ユニットの正面を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる濃度測定装置を構成する受光ユニットの断面を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 濃度測定装置
2 気体サンプル室
5 マイクロコンピュータ(濃度算出部)
6 セル
7 光源
8,108,208 受光ユニット
10a,10b,10c,10d 空間
11 ユニット本体(箱状部材)
11a 開口部
12,112 分割部材
14a,14b,14c,14d 赤外線センサ(センサ)
15a,15b,15c,15d フィルタ
110a,110b,110c,110d 空間
115a,115b,115c,115d フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気が充填されるセルの一端部に配された光源からの光を受光する、前記セルの他端部に配された受光ユニットであって、
前記光源と相対する側に開口部が形成された箱状の箱状部材と、
前記一端部から前記他端部に向かう方向に沿って延び、前記箱状部材の内部空間を複数の空間に分割する分割部材と、
前記複数の空間の前記開口部側にそれぞれ配され、予め定められた波長の光のみを透過させるとともに透過させる光の波長が互いに異なる複数のフィルタと、
前記複数の空間それぞれに配され、前記フィルタを透過した光を受光する複数のセンサと、
を有していることを特徴とする受光ユニット。
【請求項2】
前記分割部材が、ユニット本体内の空間を、互いに容積が異なる複数の空間に分割している
ことを特徴とする請求項1に記載の受光ユニット。
【請求項3】
前記複数のセンサの受光面が、前記一端部から前記他端部に向かう方向に対して傾斜して配されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受光ユニット。
【請求項4】
セル内の一端部に光源を配し、他端部に前記光源からの光を受光する受光ユニットを配した気体サンプル室と、
前記受光ユニットが受光した前記光源からの光の強さに基づいて、前記気体サンプル室内の予め定められた気体の濃度を算出する濃度算出部と、を有した濃度測定装置において、
前記受光ユニットとして、請求項1〜3のうち1項に記載の受光ユニットを有していることを特徴とする濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−128111(P2009−128111A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301725(P2007−301725)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】