説明

口腔ケア方法および製品

【課題】動物の口の組織を治療するための方法、口腔ケア製品およびキットを実現する。
【解決手段】本発明は、炎症性サイトカイン前駆体、特にインターロイキン8が動物の口の組織の細胞から放出されることを阻害し、活性酸素種(ROS)による上記組織への損傷を軽減することができる非ペプチドポリアミンキレート剤、最も望ましくはトリエンチン、またはこれらの生理学的に許容可能な塩を使用または含む方法、口腔ケア製品およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、動物の口の組織を治療するための方法、口腔ケア製品およびキットを提供する。具体的には、本発明は、炎症性サイトカイン前駆体(pro-inflammatory cytokine)、特にインターロイキン8、が動物の口の組織内の細胞から放出されることを阻害し、活性酸素種(ROS)による上記細胞への損傷を軽減することができる非ペプチドポリアミンキレート剤、最も望ましくはトリエンチン、またはこれらの生理学的に許容可能な塩を使用するまたは含む方法、口腔ケア製品およびキットを提供する。
【0002】
〔背景技術〕
活性酸素種(ROS)は、フリーラジカル(例えば、スーパーオキシドアニオン並びにヒドロキシル、パーオキシルおよびアルコキシルラジカル)、および非ラジカル種(例えば、一重項酸素および過酸化水素)を含んでいる。ROSは、広範囲におよぶ分子、細胞および組織の損傷を引き起こす能力を持ち、様々な疾患および状態において重大な役割を果たすことが報告されている。実際、ROSは100以上の疾患および病原状態に関与しており、またROSがヒトの全疾患に関わる一般的な発病のメカニズムの構成要素となっている可能性があることが推測されている(Stohs, J. Basic Clin. Physiol. Pharmacol., 6, 205-228 (1995)参照)。ROS並びにその構造、ROSが分子、細胞および組織損傷を引き起こすメカニズム、並びにROSの疾患および病気への関わりについての記述は、Manso, Rev. Port. Cardiol., 11, 997-999 (1992); Florence, Aust. NZJ. Opthalmol., 23, 3-7 (1992); Stohs, J. Basic Clin. Physiol. Pharmacol., 6, 205-228 (1995); Knight, Ann. Clin. Lab. Sci., 25, 111-121 (1995); KerrらによるHeart&Lung, 25, 200-209 (1996); Roth, Acta Chir. Hung., 36, 302-305 (1997)などを参照されたい。
【0003】
金属イオン、主に遷移金属イオンは、ROSの生成および蓄積を引き起こす。具体的には、蓄積部位から放出された銅および鉄イオンが、ROSの生成を引き起こす主要な原因の1つである。このROSの生成により、虚血/再潅流傷害、並びに熱、冷気、外傷、過度の運動、毒素、放射線および感染による傷害が引き起こされる(Roth, Acta Chir. Hung., 36, 302-305 (1997)参照)。銅および鉄イオン並びにその他の遷移金属イオン(例えば、バナジウムおよびクロムイオン)は、ROS生成に対して触媒作用を及ぼすことが報告されている(例えば、Stohs, J. Basic Clin. Physiol. Pharmacol., 6, 205-228 (1995); HalliwellらによるFree Radicals In Biology And Medicine, pages 1-19(Oxford University 1989); MarxらによるBiochem. J., 236, 397-400 (1985); QuinlanらによるJ. Pharmaceutical Sci., 81, 611-614 (1992)参照)。その他の遷移金属イオン(例えば、カドミウム、水銀およびニッケルイオン)および他の金属イオン(例えば、ヒ素および鉛イオン)は、天然の抗酸化防御システムの分子の一部を激減させ、ROSの蓄積の増加を引き起こすことが報告されている(例えば、Stohs, J. Basic Clin. Physiol. Pharmacol., 6, 205-228 (1995)参照)。
【0004】
ROSは様々な理由によって口の中に存在する可能性がある。例えば、タバコ製品の使用、環境物質への暴露、放射線への暴露および活性酸素または過酸化水素を放出させる歯の漂白剤を含む口腔ケア製品の使用が原因となって、ROSは口の中に存在する(例えば、米国特許第5906811号、同6228347号および同6270781号参照)。ROSはまた、歯肉炎、歯周炎、負傷、手術、抜歯、ヘルペス、アフタ性口内炎および潰瘍を含む炎症および/または感染を伴う疾患および状態が原因となって口の中に存在する可能性がある(例えば、米国特許第6228437号および同6270781号参照)。さらには、唾液の標準pHは7.2であるが、例えば食品、特に炭水化物の分解が原因となって頻繁に口腔内が酸性状態となる(例えば、米国特許第6177097号参照)。酸性状態となることによって、銅イオンが結合しているタンパク質からの銅イオンの放出が促進され、上述の通り、遊離銅イオンがROSの生成を引き起こす。口の中に存在するROSは口の組織に損傷を与える。例えば、炎症性歯周病において、ROS並びにより高いレベルの遊離した鉄イオンおよび銅イオンが歯周ポケットの中で発見されており、歯周組織の破壊においてROSが重大な役割を担っていることを示唆している(例えば、WaddingtonらによるOral Dis., 6: 138-512000)参照)。
【0005】
インターロイキン8(IL−8)は炎症性サイトカイン前駆体であり、また好中球の有力な化学誘引物質および活性因子である。インターロイキン8はまた、Tリンパ球及び好酸球の化学誘引物質および活性因子であることが報告されている。IL−8は、免疫細胞(リンパ球、好中球、単球、およびマクロファージを含む)、線維芽細胞および上皮細胞によって生成される。歯肉炎および歯周病を含む多くの炎症性疾患の病原論におけるIL−8の重要な役割が様々な報告において示唆されている(SfakianakisらによるJ. Periodontal Res., 37(2):154-160 (April 2002)、FitzgeraldらによるOral Microbiol. Immunol., 10(5):297-303 (October 1995)、およびTakigawaらによるJ. Periodontol., 65(11):1002-1007 (November 1994)参照)。生理的に関連した濃度の銅への暴露後に、内皮細胞がより高いレベルのIL−8を分泌することが最近発見された(同時係属米国出願10/186168号(2002年6月27日出願)、米国出願番号20030130185号(2003年7月10日公開)、国際公開WO03/043518号(2003年5月30日公開)、およびBar-Or, Thomas, Yukl, Rael, Shimonkevitz, Curtis and Winklerによる“Copper Stimulates the Synthesis and Release of Interleukin-8 in Human Endothelial Cells: A Possible Early Role in systemic Inflammatory Responses,” Shock, 20(2): 1541から58 (August 2003)参照)。また、銅は、他の種類の細胞からIL−8の放出を引き起こすROSの生成に対しても触媒作用を及ぼす(例えば、KennedyらによるAm. J. Respir. Cell. Mol. Biol., 19(3):366-378 (1998)参照)。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、動物の口の組織内の細胞からの炎症性サイトカイン前駆体の放出を阻害する方法を提供する。該方法は、上記組織を効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩と接触させることを含む。
【0007】
本発明は、また、動物の口の組織の炎症を治療する方法を提供する。該方法は、上記組織を効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩と接触させることを含む。
【0008】
本発明は、さらに、動物の口の組織の炎症性疾患および状態を治療する方法を提供する。該方法は、上記組織を効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩と接触させることを含む。
【0009】
本発明は、また、活性酸素種によって動物の口の組織に与えられる損傷を軽減する方法を提供する。該方法は、上記組織を効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩と接触させることを含む。
【0010】
本発明は、さらに、動物の1本以上の歯を漂白する方法を提供する。該方法は、1本以上の歯、動物の口の別の組織、またはこれら両方を効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩と接触させることを含む。
【0011】
本発明は、また、動物の口の組織を治療する方法を提供する。該方法は、上記組織を約0.002mg〜約2.20mgのトリエンチン、またはその生理学的に許容可能な塩と接触させることを含む。
【0012】
本発明は、動物の口の組織の疾患あるいは状態を治療する方法をさらに提供する。該方法は、上記組織を、約0.002mg〜約2.20mgのトリエンチンまたは生理学的に許容可能な塩と接触させることを含む。
【0013】
本発明は、また、口腔ケア器具を提供する。該器具は、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む。
【0014】
本発明は、さらに、口腔ケア組成物を提供する。該組成物は、医薬品として許容できる基材、および約0.001〜約25重量%の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む。
【0015】
本発明は、また、歯の漂白組成物をさらに提供する。該組成物は、医薬品として許容できる基材、および非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む。
【0016】
本発明は、さらに、キットを提供する。該キットは口腔ケア製品を含み、該口腔ケア製品は、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む。上記口腔ケア製品は、口腔ケア器具または口腔ケア組成物であってもよい。
【0017】
〔好適な実施形態の詳細な説明〕
本明細書で使用されている通り、「非ペプチドポリアミンキレート剤」は、(i)ペプチドでもタンパク質でもなく、(ii)3つ以上、好ましくは4つ以上の窒素原子(N’s)を含み、但しN’sは1つ以上の、好ましくは2つ以上の炭素原子(C’s)によって引き離されており、(iii)銅イオン、鉄イオンまたは両者をキレートし、かつ、特に遷移金属イオンを含む別の金属イオンをキレートする化合物を意味する。N’sおよびC’sは非置換であってもよい。あるいは、1つ以上のN’sおよび/またはC’sは、金属イオンのキレート化を阻害せず、かつ結合して化学的に不安定な構造を生成しない置換基によって置換させることができる。多くの直鎖状および環状の非ペプチドポリアミンキレート剤が知られている。これらは市販されており、また公知の方法によって生成することができる(例えば、米国特許第5101041号、同5422096号、同5906996号および同6264966号、並びにPCT出願WO00/21941号およびWO99/39706号参照)。尚、上記明細書の全ての内容について、言及することにより本明細書に加えられたものとする。
【0018】
本発明の実施に際して使用される好適な非ペプチドポリアミンキレート剤は、下記化学式の構造を有している。
【0019】
NR[−(CR−NR]−(CR−NR
各R、R、R、およびRは、同じであっても異なっていてもよく、各R、R、R、およびRは、H、アルキル(直鎖または分岐状)、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されたアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されたアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されたアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されたアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリール、またはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。さらに、各Rおよび各Rは、
−CR−(CR−R
であってもよい。
【0020】
各R、R、およびRは、同じであっても異なっていてもよく、各R、R、およびRは、H、アルキル(直鎖または分岐)、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されたアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されたアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されたアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されたアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリール、またはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。
【0021】
は、H、ヒドロキシ、アミノ、アルキル(直鎖または分岐状)、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されたアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシアルキル、またはアルコキシアリールであってもよい。
【0022】
は、−COOR10、−CON(R10、−OR10、−C(OR10、−COR10、−N(R10、アルキルアリール、またはアルキルへテロアリールのいずれかあってよい。
【0023】
10は、H、アルキル(直鎖または分岐状)、アリール、またはヘテロアリールであってよい。
【0024】
xは、それぞれ独立して2または3であってもよく、yは1〜10(好ましくは1〜5、さらに好ましくは2〜4、最も好ましくは2)であり、zは0〜6である。
【0025】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤の生理学的に許容可能な塩もまた、本発明の実施に際して使用することができる。生理学的に許容可能な塩としては、無機酸(例えば、塩酸、臭酸、硫酸、リン酸、硝酸など)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸など)、または無機および有機塩基(例えば、薬剤として許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩)などから得られる塩のような公知の非毒性塩が含まれる。例えば、上記塩は、遊離塩基型の化合物を酸で中和するといった従来の方法で作成することができる。
【0026】
非ペプチドポリアミンキレート剤およびその生理学的に許容可能な塩による金属イオン、特に銅および/または鉄イオンとの結合が、上記金属イオンによって引き起こされるROSの生成および/またはROSの蓄積を阻害(すなわち、軽減または抑制)する。その結果、上記金属イオンの結合が存在していない場合に引き起こされるROSによる損傷は軽減される。さらに、非ペプチドポリアミンキレート剤およびその生理学的に許容可能な塩による銅イオンの結合は、細胞からの炎症性サイトカイン前駆体、特にIL−8の放出を阻害(軽減または抑制)する。従って、上記非ペプチドポリアミンキレート剤およびその生理学的に許容可能な塩は、動物の口の組織の炎症疾患および状態の治療に使用することができる。
【0027】
非ペプチドポリアミンキレート剤は、R、R、RおよびRが全てHであり、各xが独立して2または3であり、かつ、yが1〜5であるものが好ましい。上記好適な非ペプチドポリアミンキレート剤としては、ジエチレントリアミン、トリエンチン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ヘキサプロピレンヘプタミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)プロパンジアミンおよびN,N’−ビス(2−アミノプロピル)エタンジアミンが含まれる。
【0028】
本発明の実施に際しての使用に非常に好適なものはトリエンチンである。トリエンチンは、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,2−エタンジアミンおよびその他の名称で知られている(The Merck Index, page 1382, entry 9483 (10th ed. 1983)参照)。トリエンチンの化学式は、
NH−CH−CH−NH−CH−CH−NH−CH−CH−NH
である。トリエンチンおよびその生理学的に許容可能な塩は、例えば、Merck & Co., Inc., USA、Research Diagnostics Inc., USA、Akzo Nobel Functional Chemicals, Sweden、Ciba Specialty Chemicals, USA、Diamines & Chemicals Ltd., India、Fluka Chemie AG, Switzerland、Guangzhou Chemical Research Factory, China、Huntsman Chemical Corp., USA、ITI International Trade Inc., USA、Seratec S.A.R.I., France、Dow Chemical Co., USA、Tosoh Corporation, JapanおよびUnion Carbide Corp., USAから市販されている。また、トリエンチンは、米国特許第5225599号、同4980507号、同4827037号、同4720588号、同4404405号および同4323558号、並びにThe Merck Index, page 1382, entry 9483 (10th ed. 1983)に引用されている参考文献、の記述に従って生成することもできる。トリエンチンの生理学的に許容可能な塩は、例えば、遊離塩基型の化合物を酸で中和するといった従来の方法により作成することができる。
【0029】
トリエンチンおよびその生理学的に許容可能な塩は、銅のキレート剤である。これらは、高い親和性でCu(II)と結合し、またCu(I)とも結合する。さらに、上記化合物は、Ni(II)、Zn(II)、Co(II)およびFe(III)と結合する。トリエンチンおよびその生理学的に許容可能な塩による銅および鉄イオンとの結合は、これらの金属イオンによって引き起こされるROSの生成および/またはROSの蓄積を阻害(すなわち、軽減または抑制)する。その結果、トリエンチンによる銅および鉄イオンの結合が存在していない場合に引き起こされるROSによる損傷は軽減される。さらに、トリエンチンによる銅イオンの結合が、細胞からの炎症性サイトカイン前駆体、特にIL−8、の放出を阻害(軽減または抑制)する。従ってトリエンチンは、動物の口の組織の炎症疾患および状態を治療するために使用することができる。
【0030】
具体的には、トリエンチンは歯肉炎および歯周炎の治療に極めて効果的であることが分かっている。トリエンチンを使用して得られたデータと、抗菌化合物(クロルヘキシジン)およびコラゲナーゼ阻害剤(少量のドキシサイクリンハイクレート(doxycyline hyclate))を含む歯肉炎および歯周炎に対するその他の治療に関する公開報告書とを比較すると、トリエンチンは、その他の治療と比べて数倍効果的であり、より短い治療期間で、かつ、より少ない副作用でその効果を生み出すことが示唆される。さらには、トリエンチンを使用した歯肉炎および歯周炎に対する効果的な治療は、非常に少量の上記化合物を使用することにより達成される。さらに、非常に驚くべきことに、漂白剤が存在しない場合であっても、トリエンチンは酷く着色した歯の漂白に効果的であることが予備データによって示唆されている。
【0031】
本発明は、さらに、非ペプチドポリアミンキレート剤およびその生理学的に許容可能な塩を含有する口腔ケア製品を提供する。口腔ケア製品は、口腔ケア組成物および口腔ケア器具を含む。
【0032】
本発明の口腔ケア組成物は、洗浄液、リンス剤、うがい薬、溶液、ドロップ、乳液、懸濁液、液体、ペースト、ゲル、軟膏、クリーム、スプレー、粉末、錠剤、ガム、トローチ剤、ミント、フィルム、傷当ておよび歯の漂白組成物を含む。本発明の口腔ケア組成物は、消費者および患者による使用を対象とした組成物、および歯科専門家(歯科衛生士、歯科医および口腔外科医)による使用を対象とした組成物を含む。
【0033】
本発明の口腔ケア組成物は、薬剤として許容できる1つ以上の基材を含有する混合剤中に有効成分として非ペプチドポリアミンキレート剤およびその生理学的に許容可能な塩を含む。本発明の口腔ケア組成物は、通常、約0.001重量%〜約25重量%、好ましくは約2.5重量%〜約12.5重量%、最も好ましくは約5.0重量%〜約6.0重量%の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む。本発明の口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物として従来使用されている他の活性化合物および/または他の成分を含む、1つ以上の他の許容できる成分をさらに含んでいてもよい。各基材および成分は、処方における他の成分と相性が良く、動物に対して有害ではないという意味において「許容可能」でなければならない。
【0034】
口腔ケア組成物としての使用に際して、薬剤として許容可能な基材を含む適切な成分および口腔ケア組成物を生成、並びに使用する方法は、従来技術においてよく知られている(例えば、米国特許第4847283号、同5032384号、同5043183号、同5180578号、同5198220号、同5242910号、同5286479号、同5298237号、同5328682号、同5407664号、同5466437号、同5707610号、同5709873号、同5738840号、同5817295号、同5858408号、同5876701号、同5906811号、同5932193号、同5932191号、同5951966号、同5976507号、同6045780号、同6197331号、同6228347号、同6251372号および同6350438号、並びにPCT出願WO95/32707号、WO96/08232号およびWO02/13775号、並びに欧州特許出願471396号などを参照)。尚、上記明細書の全ての内容について、言及することにより本明細書に加えられたものとする。
【0035】
口腔ケア組成物に使用されている従来の成分には、水、アルコール、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、研磨剤、香料添加剤、甘味剤、抗菌剤、虫歯予防剤、歯石防止薬、抗結石剤、pH調整薬およびその他多くのものが含まれる。
【0036】
口腔ケア組成物に使用される水のイオン含有量は少ない方が好ましい。また、有機不純物が含まれていていないことが好ましい。
【0037】
上記アルコールは非毒性でなければならず、エタノールであることが好ましい。エタノールは溶剤であり、また抗菌剤およびアストリンゼンとして作用する。
【0038】
口腔ケア組成物の使用に適した保湿剤としては、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、マンニトールおよびラクチトールのような食用の多価アルコールが含まれる。保湿剤は、ペーストのような口腔ケア組成物の空気接触による硬化を抑制することを促進させ、口への湿感を口腔ケア組成物に付与し、そして所望の甘味を与える。
【0039】
界面活性剤は、陰イオン、非イオン、両性、両性イオンおよび陽イオンの合成洗剤を含む。陰イオン界面活性剤は、アルキルラジカル部位が8〜20の炭素原子を含有するアルキル硫酸塩の水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、8〜20の炭素原子を含有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、およびココナツモノグリセリドスルホン酸塩ナトリウム(sodium coconut monoglyceride sulfonates))、サルコシネート(例えば、ラウロイルサルコシネート、ミリストイルサルコシネート、パルミトイルサルコシネート、ステアリン酸サルコシネートおよびオレオイルサルコシネートのナトリウムおよびカリウム塩)、タウレート、高級アルキルスルフォアセテート(例えば、ラウリルスルフォアセテートナトリウム)、イセチオン酸(例えば、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム)、ラウレスカルボン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびこれらの混合物を含む。炭水化物の分解によって口腔内における酸形成を阻害する働きをするため、サルコシネートが好適である。
【0040】
非イオン性界面活性剤は、ポロクサマー(商標名Pluronicとして市販)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(商標名Tweenとして市販)、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドと脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、多価アルコール及びポリプロピレンオキシドとの縮合物から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三アミンオキシド、長鎖第三ホスフィン酸化物、ジアルキルスルホキシドおよびこれらの混合物を含む。
【0041】
両性イオン界面活性剤は、ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン)、脂肪族第二アミンおよび第3アミンの誘導体およびこれらの混合物を含む。上記脂肪族第二アミンおよび第3アミンの誘導体は、脂肪族置換基の1つが8〜18の炭素原子を含み、1つが陰イオン水溶性基(例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、またはホスホン酸塩)を含む、脂肪族ラジカル部位が直鎖または分岐状であるものである。両性イオン界面活性剤は、脂肪族ラジカル部位が直鎖または分岐状であり、脂肪族置換基のうちの1つが約8〜18の炭素原子を含み、脂肪族置換基のうちの1つが陰イオン水溶性基(例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩またはホスホン酸塩)を含む脂肪族第4アンモニウム、ホスホニウム、およびスルホニウム化合物の誘導体を含む。
【0042】
陽イオン界面活性剤は、約8〜18の炭素原子を含む長鎖アルキルを1つ有する脂肪族第4アンモニウム化合物(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物、セチルトリメチルアンモニウム臭化物、ジイソブチルフェノキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ココナツアルキルトリメチルアンモニウム亜硝酸塩、セチルピリジニウムフッ化物)を含む。また、特定の陽イオン界面活性剤は、抗菌薬としても作用させることができる。
【0043】
増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース)、ラポナイト、セルロースエーテルの水溶性塩(例えば、カルボキシルメチルセルロースのナトリウム塩、およびカルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロースのナトリウム塩)、天然ゴム(例えば、カラヤゴム、キサンタンゴム、アラビアゴム、トラガカントゴム)、高分子ポリエーテル化合物(例えば、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド)、ペンタエリスリトールのアルキルエーテルと架橋したアクリル酸のホモポリマー、サッカロースのアルキルエーテル、カルボマー(商標名Carbopolで市販)、デンプン、ラクチドとグリコリド(glycolide)モノマーとのコポリマー(該コポリマーの平均分子量は約1000〜120000)、コロイド状マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、および細かく解砕させたシリカを含む。口腔ケア組成物が所望の粘調度となるように、十分な量の増粘剤が加えられる。
【0044】
研磨剤は、シリカ(ゲルおよび沈殿物を含む)、アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、リン酸塩、ヒドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、トリメタリン酸塩、不溶性ポリメタリン酸塩(例えば、不溶性ポリメタリン酸ナトリウムおよびポリメタリン酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、樹脂研磨材(例えば、尿素とホルムアルデヒドとの粒子状縮合物)、粒子状熱硬化性重合樹脂(適切な樹脂は、メラミン、フェノール、尿素、メラミン−尿素、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド、エポキシドにより架橋されたもの、およびポリエステルにより架橋されたものを含む)、およびこれらの組み合わせを含む。歯のエナメル質または象牙質を過度に研磨することなく優れた歯の洗浄力および研磨力を示すため、シリカ研磨剤が好適である。
【0045】
香料添加剤は、ペパーミント、油、スペアミント油、ウィンターグリーン油、クローヴ、メンソール、ジヒドロアネトール、エストラゴール、メチルサリチル酸塩、オイカリプトール、カッシア、1−メチル酢酸、セージ、ユージノール、パセリ油、メントン、オキサノン(oxanone)、アルファ−イリソン、アルファ−イオノン、アニス、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール(propenyl guaethol)、シナモン、バニラ、バニリン酸エチル、チモール、リナロール、リモネン、酢酸イソアミル、ベンズアルデヒド、エチルブチラート、フェニルエチルアルコール、ベツラレンタ、桂皮アルデヒド、桂皮アルデヒドグリセロールアセタール(CGAとして知られている)、およびこれらの混合物を含む。
【0046】
甘味剤は、スクロース、グルコース、サッカリン、デキストロース、果糖、乳糖、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、麦芽糖、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、チクロ塩およびこれらの混合物を含む。
【0047】
上記の香料添加剤および甘味剤に加えて、上記口腔ケア組成物は、任意成分として、冷却剤、催唾剤、加温剤、およびしびれ剤を含んでいてもよい。冷却材は、カルボキサミド、メンソール、パラメンタン(paramenthan)カルボキサミド、イソプロピルブタンアミド、ケタール、ジオール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メントングリセロールアセタール、メンチル乳酸塩およびこれら混合物を含む。催唾剤は、Jambu(登録商標)(Takasago製)を含む。加温剤は、唐辛子およびニコチネートエステル(例えば、ベンジルニコチネート)を含む。しびれ剤は、ベンゾカイン、リドカイン、クローヴの芽油、およびエタノールを含む。
【0048】
抗菌剤および歯石防止剤は、トリクロサン、サンギナリンおよび血根草、第4アンモニウム化合物、セチルピリジニウムクロリド、テトラデシルピリジニウムクロリドおよびN−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ビスクアニド(bisquanide)、クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、ヘキセチジン、オクテニジン、アレキシジン、ハロゲン化ビスフェノール化合物、2,2’−メチレンビス−(4−クロロ−6−ブロモフェノール)、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、デルモピノール(delmopinol)、オクタピノール(octapinol)、その他のピペラジノ(piperadino)誘導体、ナイシン、亜鉛スズイオン剤、抗生剤(例えば、オージメンチン(augimentin)、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシドサイクリン、ミノサイクリンおよびメトロニダゾール)、上記の類似物並びに塩、およびこれらの混合物を含む。
【0049】
虫歯予防剤は、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、フッ化カリウム、フッ化アミン、フッ化インジウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ストロンチウム塩およびポリアクリル酸ストロンチウムを含む。
【0050】
抗結石剤は、ジアルカリ金属ピロリン酸塩およびテトラアルカリ金属ピロリン酸塩(例えば、水和および非水和状態の酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸4ナトリウム塩、およびピロリン酸4カリウム塩)のようなピロリン酸塩を含む。ピロリン酸塩以外に使用される、またはピロリン酸塩に加えて使用される抗結石剤としては、合成アニオン性ポリマー(例えば、ポリアクリル酸塩、および無水マレイン酸またはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー)、ポリアミノプロパンスルホン酸、クエン酸亜鉛3水和物、ポリリン酸塩(例えば、トリポリリン酸塩およびヘキサメタリン酸塩)、ポリホスホン酸塩(例えば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(EHDP)2ナトリウム塩、メタンジスホスホン酸、および2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸)、およびポリペプチド(例えば、ポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸)が含まれる。
【0051】
酸性状態では上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩の効果が小さくなるため、本発明の口腔ケア組成物のpHは酸性であってはならない。従って本発明の口腔ケア組成物のpHは約6.5より高く、好ましくは約7.0〜約8.5であり、より好ましくは約7.2〜約7.6である。従って、上記口腔ケア組成物には、pH調整剤および/または緩衝剤若しくは緩衝薬剤が含まれている必要がある。上記pH調整剤は、所望するpHを達成し得るあらゆる化合物または化合物の混合物であればよい。適切なpH調整剤は、安息香酸、クエン酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムのような有機酸および無機酸、並びに有機塩基および無機塩基を含む。緩衝剤は、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム(重曹としても知られている)のようなアルカリ金属の重炭酸塩)、グルコン酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、安息香酸塩、硝酸塩(例えば、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウムおよびリン酸ナトリウム)、および所望のpHを得るため、または維持するために必要なこれらの組み合わせを含む。
【0052】
本発明の口腔ケア組成物は、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩以外に、1つ以上の酸化防止剤、抗炎症化合物および/または金属結合化合物をさらに含んでいてもよい。
【0053】
適切な抗炎症剤は、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アスピリン、ケトロナック(kertorolac)、ナプロキセン、インドメタシン、ピロキシカム、メクロフェナム酸、ステロイドおよびこれらの混合物を含む。
【0054】
適切な酸化防止剤は、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、エブセレン、グルタチオン、システイン、N−アセチルシステイン、ペニシラミン、アロプリノール、オキシプリノール、アスコルビン酸、α‐トコフェロール、トロロックス(水溶性α‐トコフェロール)、ビタミンA、ベータカロチン、脂肪酸結合タンパク質、フェノザン(fenozan)、プロブコール、シアニダノール‐3、ジメルカプトプロパノール、インダパミド、エモキシパイン(emoxipine)、ジメチルスルホキシド、およびその他を含む(例えば、DasらによるMethods Enzymol., 233, 601-610 (1994); Stohs, J. Basic Clin. Physiol. Pharmacol., 6, 205-228 (1995)参照)。
【0055】
適切な金属結合化合物は、PCT出願WO01/25265号およびWO02/64620号、並びに同時係属米国出願10/186168号(2002年6月27日出願)に記載されているような金属結合ペプチドおよび/または非ペプチド・キレート剤を含む。尚、上記明細書の内容および上記3つの出願で引用されている文献の内容の全てについて、言及することにより本明細書に加えられたものとする。他の適切な金属結合化合物としては、従来技術において知られているものが含まれる。
【0056】
本発明の口腔ケア組成物は、付加的な治療効果を目的として、酵素阻害物質を含んでいてもよい。例えば、一部のプロテアーゼは炎症過程に関与しており、他のプロテアーゼは口腔内の組織分解に関与している。適切なプロテアーゼ阻害物質は、米国特許第6403633号、同6350438号、同6066673号、同5622984号および同4454338号に記載されているような金属プロテアーゼおよびセリンプロテアーゼ阻害物質を含む。尚、上記明細書の全ての内容について、言及することにより本明細書に加えられたものとする。さらに、Periostat(登録商標)低用量ドキシサイクリン(CollaGenex製)のようなコラゲナーゼ阻害物質も含まれる。
【0057】
口腔ケア組成物に組み入れることができる、その他多くの成分が知られている。これらには、懸濁化剤(例えば、多糖類(米国特許第5466437号参照))、活性成分の運搬を推進する高分子化合物(例えば、DE942643号および米国特許第5466437号に記載の無水マレイン酸とポリビニルメチルエーテルとのコポリマーおよび運搬促進ポリマー)、油、ワックス、シリコン、着色剤(例えば、FD&C色素)、色変化システム、防腐剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、および安息香酸ナトリウム)、不透明化剤(例えば、二酸化チタン)、植物エキス、可溶化剤(例えば、プロピレングリコール(米国特許第5466437号参照))、酵素(例えば、デキストラナーゼおよび/またはムタナーゼ(mutanase)、アミログルコシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼを含有するブドウ糖酸化酵素およびノイラミニダーゼ)、合成または天然ポリマー、歯の漂白剤(例えば、約0.1〜約10重量%の過酸素化合物(歯の漂白組成物に関する後述の説明を参照)、アルカリ金属の重炭酸塩(例えば、約0.01〜約30重量%の一般的に存在する重炭酸ナトリウム(重曹としても知られている))、減感剤(例えば、カリウム塩(例えば、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、酒石酸カリウム、重炭酸カリウムおよびシュウ酸カリウム)、およびストロンチウム塩)、鎮痛剤(例えば、リドカインまたはベンゾカイン)、抗真菌剤、抗ウイルス薬等が含まれる。
【0058】
多量の銅および鉄イオン塩を含有させることは避けることが望ましい。多量の銅および鉄イオン塩が口腔ケア組成物に含有されていると、トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩における、口腔内で発見される銅および鉄イオンと結合する機能が低下してしまう。
【0059】
言うまでもなく、上述した成分および従来技術における他の公知の成分、または開発され得る成分を用いて、多種多様の口腔ケア組成物を作成することができる。適切な成分および成分の組み合わせを選択し、公知の知識および本明細書に記載の手引きを考慮しながら特定の口腔ケア組成物に含有させるために、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩の適切な量を決定することは、従来技術の範疇である。
【0060】
次に、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を組み入れることができる口腔ケア組成物の幾つかの例について説明する。異なる成分および/または異なる成分量を有する、別の種類の口腔ケア組成物およびさらに別の口腔ケア組成物を、公知の知識ならびに技術、および本明細書に記載の手引きを利用することで生成することができるということが当業者に理解されるであろう。
【0061】
歯摩剤(dentrifices)は、練り歯磨き粉、歯磨きゲル、歯磨き粉および液状歯摩剤を含む。練り歯磨き粉および歯磨きゲルは、一般的に、歯研磨剤、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、香料添加剤、甘味剤、着色剤および水を含む。練り歯磨き粉および歯磨きゲルは、不透明化剤、虫歯予防剤、抗結石剤、歯の漂白剤および他の任意の成分をさらに含んでいてもよい。一般的に、練り歯磨き粉または歯磨きゲルは、約5%〜約70%、好ましくは約10%〜50%の研磨剤、約0.5%〜約10%の界面活性剤、約0.1%〜約10%の増粘剤、約10%〜約80%の保湿剤、約0.04%〜約2%の香料添加剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色剤、約0.05%〜約0.3%の虫歯予防剤、約0.1%〜約13%の抗結石剤および約2%〜約45%の水を含有する。言うまでもなく、歯磨き粉も実質的に全ての非液状成分を含み、一般的に、約70%〜99%の研磨剤を含有する。液状歯摩剤は、水、エタノール、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、研磨剤(研磨剤が含まれている場合は、懸濁化剤(例えば、高分子量の多糖類)が含有されていなければならない(米国特許第5466437号参照))、抗菌剤、虫歯予防剤、香料添加剤、および甘味剤を含んでいてもよい。一般的な液状歯摩剤は、約50%〜約85%の水、約0.5%〜約20%のエタノール、約10%〜40%の保湿剤、約0.5%〜約5%の界面活性剤、約0.1%〜約10%の増粘剤を含み、そして約10%〜約20%の研磨剤、約0.3%〜約2%の懸濁化剤、約0.05%〜約4%の抗菌剤、約0.0005%〜約3%の虫歯予防剤、約0.1%〜約5%の香料添加剤、および約0.1%〜約5%の甘味料を含んでいてもよい。
【0062】
ゲルは、歯摩剤ゲル(前述の説明を参照のこと)、非研磨ゲル、および歯肉縁下ゲルを含む。一般的に、非研磨ゲルおよび歯肉縁下ゲルは、増粘剤、保湿剤、香料添加剤、甘味剤、着色剤および水を含む。上記のようなゲルは、1つ以上の虫歯予防剤および/または抗結石剤をさらに含んでいてもよい。一般的に、上記のようなゲルは、約0.1%〜約20%の増粘剤、約10%〜約55%の保湿剤、約0.04%〜約2%の香料添加剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色剤、およびこれらを調和させるための水を含む。上記ゲルは、約0.05%〜約0.3%の虫歯予防剤、および約0.1%〜約13%の抗結石剤をさらに含んでいてもよい。
【0063】
クリームは、一般的に、増粘剤、保湿剤および界面活性剤を含んでおり、また香料添加剤、甘味剤および着色剤を含んでいてもよい。一般的に、クリームは、約0.1%〜約30%の増粘剤、約0%〜約80%の保湿剤、約0.1%〜約5%の界面活性剤、約0.04%〜約2%の香料添加剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色剤、および約2%〜約45%の水を含んでいる。
【0064】
口への使用に適切な軟膏は、米国特許第4847283号、同5855872号および同5858408号などに記載されている。尚、上記明細書の全ての内容について、言及することにより本明細書に加えられたものとする。軟膏は一般的に、脂肪、油、ワックス、パラフィン、シリコン、軟膏基材(plastibase)、アルコール、水、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、タルク、ベントナイト、酸化亜鉛、アルミニウム化合物、防腐剤、抗ウイルス化合物、およびその他の成分の1つ以上を含む。上記軟膏は、例えば、約80%〜約90%のペトロラタム、および約10%〜約20%のエタノールまたはプロピレングリコールを含む。別の例として、上記軟膏は、約10%のペトロラタム、約9%のラノリン、約8%のタルク、約32%の肝油、および約40%の酸化亜鉛を含んでいてもよい。第3の例として、上記軟膏は、約30%〜約45%の水、約10%〜約30%の油(例えば、ペトロラタムまたは鉱物油)、約0.1%〜約10%の乳化剤(例えば、ワックスNF)、約2%〜約20%の保湿剤(例えば、プロピレングリコール)、約0.05%〜約2%の防腐剤(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、および約10%〜約40%のステロールアルコールを含んでいてもよい。
【0065】
マウスウォッシュ、ゆすぎ液、うがい薬およびスプレーは、一般的に、水、エタノール、および/または保湿剤を含んでおり、好ましくは界面活性剤、香料添加剤、甘味剤および着色剤をさらに含み、増粘剤および1つ以上の虫歯予防剤および/または抗結石剤をさらに含んでいてもよい。一般的な組成としては、約0%〜80%の保湿剤、約0.01%〜約7%の界面活性剤、約0.03%〜約2%の香料添加剤、約0.005%〜約3%の甘味剤、約0.001%〜約0.5%の着色剤およびこれらを調和させるための水を含んだものである。別の一般的な組成としては、約5%〜60%、好ましくは約5%〜約20%のエタノール、約0%〜約30%、好ましくは約5%〜約20%の保湿剤、約0%〜約2%の乳化剤、約0%〜約0.5%の甘味剤、約0%〜約0.3%の香料添加剤およびこれらを調和させるための水を含んだものである。さらに別の一般的な組成としては、約45%〜約95%の水、約0%〜約25%のエタノール、約0%〜約50%の保湿剤、約0.1%〜約7%の界面活性剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.4%〜約2%の香料添加剤および約0.001%〜約0.5%の着色剤を含んだものである。上記組成において、約0.05%〜約0.3%の虫歯予防剤および約0.1%〜約3%の抗結石剤をさらに含んでいてもよい。
【0066】
溶液は、一般的に、水、防腐剤、香料添加剤および甘味剤を含み、増粘剤および/または界面活性剤を含んでいてもよい。一般的に、溶液は、約85%〜約99%の水、約0.01%〜約0.5%の防腐剤、約0%〜約5%の増粘剤、約0.04%〜約2%の香料添加剤、約0.1%〜約3%の甘味剤および約0%〜約5%の界面活性剤を含む。
【0067】
好適な口腔ケア組成物としては、トリエンチンを含有するマウスウォッシュ、ゆすぎ液、うがい薬、スプレーおよび溶液であり、濃度が約1.0μM〜約1.0mM、好ましくは約10μM〜約750μM、さらに好ましくは約50μM〜約500μM、最も好ましくは約200μM〜約300μMのトリエンチンを含有するマウスウォッシュ、ゆすぎ液、うがい薬、スプレーおよび溶液である。
【0068】
トローチ剤およびミントは一般的に、基材、香料添加剤および甘味剤を含む。上記基材は、キャンディー基材(硬いシュガーキャンディー)、グリセリンゼラチンまたは、砂糖と十分な量の粘液との組み合わせのような、組成物に形状を与えるためのものであってもよい(米国特許第6350438号、およびRemington, The Science And Practice Of pharmacy, 19thedition (1995)参照)。トローチ剤の組成物はまた、一般的に、1つ以上の充填剤(例えば、圧縮砂糖(compressible sugar))および滑剤を含む。
【0069】
チューインガム、チュアブル錠およびチュアブルトローチ剤については、米国特許第6471991号、同6296868号、同6146661号、同6060078号、同5869095号、同5709873号、同5476647号および同5312626号、並びにPCT出願WO84/04453号およびWO99/02137号、並びにLiebermanらによるPharmaceutical Dosage Forms, 2nd ed. (1990)に記載されている。尚、上記明細書の内容の全てについて、言及することにより本明細書に加えられたものとする。
【0070】
圧縮チュアブル錠は、例えば、水分解性であり圧縮性の炭水化物(例えば、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、デキストロース、サッカロース、キシリトール、乳糖、およびこれらの混合物)、結合剤(例えば、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、デンプン、加工デンプンおよびこれらの混合物)、および任意で滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルクおよびワックス)、甘味剤、着色剤、香料添加剤、界面活性剤、防腐剤およびその他の成分を含有する。非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む、上記全ての成分は、乾式混合され、錠剤へと圧縮される。
【0071】
別の例として、チュアブル錠は、外層に囲まれた芯を有していてもよい。上記芯は外層によって覆われている。上記芯には、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含んでいてもよく、また、それ以外の活性成分がゼリー基材またはチュアブル基材に任意に含有されていてもよい。上記外層は、チュアブル基材であってもよい。上記ゼリー基材は、ペクチン、ソルビトール、マルチトール(maltitol)、イソマルト、液状グルコース、砂糖、クエン酸および/または香料添加剤を含有していてもよい。上記芯または外層のチュアブル基材は、ガム、ソフトキャンディー、ヌガー、キャラメルまたはハードキャンディーであってもよい。上記錠剤は、押し出し成形によって上記芯および外層をロープ状に整形し、その後該ロープをカットすることによって錠剤の形にする。
【0072】
チューイングガムの組成は、一般的に、ガム基材、香料添加剤および甘味剤を含む。適切なガム基材は、ジェルトン、ゴム、ラテックス、チクルおよびビニライト樹脂であり、望ましくは従来の可塑剤または軟化剤を共に含むものである。可塑剤は、トリアセチン、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチルおよびアセチル化モノグリセリドを含む。一般的に、チューイングガムの組成としては、約50%〜約99%のガム基材、約0.4%〜約2%の香料添加剤および約0.01%〜約20%の甘味剤が含まれる。上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩、およびその他の活性成分は、例えば、これらを暖かいガム基材の中へ攪拌混合する、またはこれらをガム基材の外面へコーティングすることにより、ガム基材へ含有させることができる。
【0073】
フィルムおよびシート、並びにラクチド/グリコリドのコポリマーから生成される口腔内で固体となるゲルは、米国特許第5198220号、同5242910号および同6350438号に開示されている。口の中での使用に適切な別のポリマーフィルムとしては、PCT出願WO95/32707号に記載されている。上記全ての物質は、口腔内でこれらの物質に含まれている活性成分を持続放出する。活性成分を持続放出することができる上記以外の成分(ペースト、ゲル、軟膏、液体、およびフィルムを含む)もまた知られている(例えば、米国特許第5032384号、同5298237号、同5466437号、同5709873号および同6270781号参照)。
【0074】
歯の漂白組成物は歯の漂白剤を含む。歯の漂白剤は、アルカリまたはアルカリ土類金属の過酸化物、過炭酸塩および過ホウ酸塩、または過酸化水素を含有する錯化合物を含む。歯の漂白剤は、アルカリまたはアルカリ土類金属の過酸化物塩をさらに含む。最も一般的に使用されている歯の漂白剤は、過酸化カルバミドである。上記以外の一般的に使用されている歯の漂白剤は、過酸化水素、ペルオキシ酢酸および過ホウ酸ナトリウムである。これらの歯の漂白剤は、約0.1%〜約90%の濃度で歯の漂白組成物中に存在し、一般的に、歯の漂白組成物中の過酸化カルバミド濃度は約10%〜約25%である。
【0075】
水溶液、ゲル、ペースト、液体、フィルム、ストリップ(strip)、1部分系(one-part system)、2部分系(two-part system)、歯の漂白剤の活性を要する成分(例えば、照射されたときに漂白剤を活性化させる、実質的に共鳴した炭化水素のような、放射エネルギーまたは熱エネルギー吸収物質を含む)などの多くの歯の漂白組成物が従来技術において知られている(例えば、米国特許第5302375号、同5785887号、同5858332号、同5891453号、同5922307号、同6322773号および同6419906号、並びにPCT出願WO99/37236号、WO01/89463号およびWO02/07695号参照)。上記明細書の全ての内容について、言及することにより本明細書に加えられたものとする。また、上記以外の多くの口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き粉)および器具(例えば、糸ようじ)にも歯の漂白剤が含まれている。
【0076】
歯の漂白組成物または歯の漂白剤を含む多くの口腔ケア組成物または器具の使用は、ROSの生成を招き、口の組織の炎症を引き起こす。歯の漂白剤を含む歯の漂白組成物または他の口腔ケア組成物および器具に、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含ませると、炎症および/またはROSの生成が軽減または抑制される。尚、上記のような組成物にペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有させると、漂白により効果的である。これは、過酸化水素タイプの漂白剤による歯の漂白を担う過酸化水素がヒドロキシラジカルへと変換されないため、より長く活性状態を保つからである。また、炎症および/またはROSの生成を軽減または抑制させるための別の方法として、歯の漂白剤を含む歯の漂白組成物、口腔ケア組成物または器具の使用の前後に、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む口腔ケア組成物または器具を使用する方法がある。
【0077】
例えば、一般的に、歯科用トレイまたはボウルを使用して歯の漂白組成物を歯に塗布することにより、歯は漂白される。非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、上記トレイまたはボウル中で使用される歯の漂白組成物の中に含有させることができる。別の方法としては、歯の漂白組成物の塗布が完了した後に、洗浄したトレイ若しくは別のトレイまたはボウルを使用して、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する別の組成物を塗布する方法がある。さらに別の方法としては、歯の漂白組成物の塗布前後に、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する洗浄液またはゆすぎ液を使用して口をゆすぐ方法がある。
【0078】
柔軟性のあるストリップが、歯の漂白成分を塗布するための製品として最近開発された(例えば、米国特許第5891453号および同6419906号参照)。非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、上記ストリップに含有させることができる。例えば、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を歯の漂白組成物に含有させ、該漂白組成物をストリップへ塗布することにより非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記ストリップに含有させることができる。あるいは、非ペプチドポリアミンキレート剤若しくはその生理学的に許容可能な塩を含む溶液、ゲルまたは他の組成物を、その製造中または患者が使用する直前に、上記方法とは別に、ストリップへ塗布させることにより、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記ストリップへ含有させることができる。さらに別の方法として、歯の漂白組成物を含有するストリップと、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有するストリップとの両方を患者に与え、順次使用する方法がある。
【0079】
前述したとおりトリエンチンは、酷く着色した歯の漂白に効果的であることが予備データによって示唆されている。従って、歯の漂白にトリエンチンを単独で使用することが可能であり、また、先の2段落に渡る記載通りにトリエンチンを使用すると、そのような漂白剤の使用前、使用と共に、またはその使用後の何れかの時点であるかに関係なく、公知の歯の漂白剤による歯の漂白を助長する。
【0080】
本発明に係る口腔ケア組成物は、単一または複数の相を含む。例えば、一部の成分が互いに混合不可である場合、一部の成分が不安定である場合、または成分がその使用時に最もよく一体化する場合には、複数の相が用いられる。従って、相の中の1つが成分の一部を含み、該成分の残りの部分が1つ以上のさらに別の相の中に含まれる。複数の相は、複数の別個の成分であってもよく、この場合、複数の相は複数の別個の容器、またはひとつの容器にある複数の区画の中に用意され、該複数の相は使用時に混合される。あるいは、上記複数の相は、成分の一部をカプセル化することによって形成され、この場合、該複数の相は、全て1つの容器に収容できる。多相口腔ケア組成物については、米国特許第5302375号、同5906811号、同5976507号、同6228347号および同6350438号、並びにPCT出願WO99/37236号等に記載されている。
【0081】
本発明は、さらに、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する口腔ケア器具を提供する。本発明の口腔ケア器具は、消費者および患者による使用を対象とした器具、および歯科専門家(例えば、歯科衛生士、歯科医および口腔外科医)による使用を対象とした器具を含む。
【0082】
本発明の口腔ケア器具は、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が外科用器具に接着され、吸収され、結合され、付着され、取り込まれ、封入され、コーティングされ、または含有された外科用器具(例えば、縫合糸およびスポンジ)、糸ようじ、テープ、チップ、ストリップ、繊維、ようじまたはラバーチップ、注射器、人工歯根および歯科装置(例えば、状況に応じて歯周組織に、ぴったりと装着され、歯および歯周組織を覆うトレイ並びにボウル)を含む。上記のような口腔ケア器具およびこれらに化合物を含有させる方法については、米国特許第5709873号、同5863202号、同5891453号、同5967155号、同5972366号、同5989249号、同6026829号、同6080481号、同6102050号、同6350438号および同6419906号、並びにPCT出願WO02/13775号、並びに欧州特許出願752833号等の記載を参照されたい(上記明細書の内容の全てについて、言及することにより本明細書に加えられたものとする)。
【0083】
例えば、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、結合剤(例えば、ワックスまたはポリマー)に含有され、糸ようじ上にコーティングすることができる。糸ようじを非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する液体の槽の中に浸漬させることにより、非ペプチドポリアミンキレート剤若しくはその生理学的に許容可能な塩で糸ようじへの含浸、またはコーティングを行うことができる。固形の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、歯への適用に適しているポリマーフィルムに含有させることができる。溶液またはゲル中の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、歯への適用に適している柔軟なストリップへ塗布させることができる。また、縫合糸またはその他の外科用器具では、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する溶液に含浸し、その後、上記溶液を取り除くことにより、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記縫合糸または外科用器具と会合(結合、取り込み、コーティング等)させることができる(例えば、米国特許第5891453号、同5967155号、同5972366号、同6026829号、同6080481号、同6102050号および同6419906号参照)。
【0084】
本発明の範疇には、食品、咀嚼物、玩具といった、動物用の口腔ケア製品も含まれている。適切な製品としては、米国特許第6350438号に開示されているものが挙げられる。
【0085】
非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、動物の口の組織の治療に使用することができる。本明細中で使われている「口」とは、外側では口唇と隣接し、内側では、舌、歯茎および歯を取り囲む咽頭と隣接する空洞を意味する。従って、口の組織は、口唇、舌、歯茎、頬組織、口蓋および歯を含む。1つの組織、複数の組織、1つ以上の組織の一部、口の組織の全部若しくはほぼ全部、またはこれらの組み合わせに対して、本発明により治療することができる。本明細中で使用されている「治療」およびその変化したものは、治癒すること、改善すること、緩和すること、抑制すること、予防すること、病気または状態の可能性または症状の程度を低減させること、または病気または状態の少なくとも幾つかの症状または影響を低減させること、を意味する。
【0086】
口の組織を治療するために、上記組織を、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩に接触させる。例えば、組織を、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する口腔ケア組成物に接触させる。口の組織を口腔ケア組成物と接触させる方法は、従来技術においてよく知られている。適切な方法としては、組織を溶液(例えば、マウスウォッシュ、ゆすぎ液、スプレー、液状歯摩剤またはその他の溶液)でゆすぐ、歯を歯摩剤(例えば、練り歯磨き粉、歯磨きゲルまたは歯磨き粉)で磨く、非研磨溶液、ゲル、ペースト、クリームまたは軟膏を直接組織に塗布する(塗布器を使用して、または使用せずに)、ガムを噛む、トローチ剤、ミントまたは錠剤を噛むまたは舐める、およびその他多くの局所的な適用方法が含まれる。溶液、ゲル、ペースト、クリームまたは軟膏などの口腔ケア組成物を組織へ塗布する適切な塗布器は、歯の没入、および任意で例えばゲルまたは溶液中の歯周組織への没入を可能にする綿棒、棒、プラスチックのへら、点滴器、注射器、ストリップ(米国特許第5891453号および同6419906号に開示されているようなもの)、指、または歯科用トレイまたは器具(米国特許第5863202号および同5980249号、並びに欧州特許出願752833号に記載されているようなもの)を含む。上記に加えて、口の組織を治療するために、該組織を、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する口腔ケア機器に接触させることも可能である。口の組織を口腔ケア機器に接触させる方法は、従来技術でよく知られている。例えば、外科創傷または抜歯による創傷を閉じるために縫合糸を使用する方法、歯を掃除するために糸ようじを使用する方法、またその他の方法により行うことができる。
【0087】
組織の治療は予防的治療であってもよい。例えば、組織は、予防的口腔ケア治療の一部として治療されてもよい。非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、練り歯磨き粉、歯磨きゲル、マウスウォッシュまたはゆすぎ液または上記のような治療に使用される糸ようじのような口腔ケア組成物または器具に含有させることができ、好ましくは一日に少なくとも一回、さらに好ましくは一日に2回または3回使用される。別の方法として、上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、予防的口腔ケア治療で用いられる組成物および器具とは別に使用される組成物および器具に含有されていてもよい。例えば、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、マウスウォッシュまたはゆすぎ液、ガム、トローチ剤またはチュアブル錠に含有させることができ、好ましくは一日に少なくとも一回、さらに好ましくは少なくとも一日に2回または3回使用される。タバコ製品を使用する患者にとっては特に、予防的口腔ケア治療の一部として非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を使用して、タバコ製品によって損傷を受けた口の組織の改善を試みることは有益である。
【0088】
一般的に、金属塩、特に銅塩を、抗菌剤、歯石防止剤、虫歯予防剤および抗歯肉炎剤として練り歯磨き粉およびその他の口腔ケア組成物に含有させることが知られている(例えば、米国特許第5286479号、同5298237号および同6355706号、欧州特許出願658565号、PCT出願WO92/08441号、日本国出願4159211号、並びにWaerhaugらによるJ. Clin. Periodontol., 11:176-180(1984)等を参照)。フリーの銅イオンは、ROSの形成に対して触媒作用を及ぼすため、銅塩を含有する口腔ケア組成物の使用は口の組織にとって有害と成り得る。従って、銅を含有する組成物を使用した後の適切な時点(すなわち、これらの銅塩が活動するための十分な時間を置く)における本発明の口腔ケア組成物の使用は、上記製品(銅を含有する組成物)の使用の結果として口腔内に存在する銅イオンによって生成されたROSによる損傷を軽減させるのに非常に有益である。例えば、上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、銅を含有する組成物の使用後に噛まれる、または舐められるガム、トローチ剤またはチュアブル錠の中に都合よく含有させることができる。
【0089】
外科手術および抜歯を含む様々な歯科処置と関連させて、組織を予防的に治療することもできる。例えば、外科手術が施される組織、外科手術が施される部位の近傍組織、または治療を簡略化するため口の組織の全部若しくはほぼ全部に対して、手術前、手術中、手術後、またはその組み合わせにおける何れかの時点で治療を行うことができる。抜歯においても同様に、抜かれる歯を取り囲む組織、近傍組織、または、治療を簡略化するため、口の組織全部若しくはほぼ全部に対して、抜歯前、抜歯中、抜歯後またはこれら組み合わせにおける何れかの時点において治療を行うことができる。例えば、手術または抜歯前に、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する溶液で口をゆすぐことにより行うことができる。また、手術または抜歯による創傷を非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する縫合糸で閉じることにより行うこと、および/または、手術または抜歯の直後および/またはその後間をおいて非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する溶液で口をゆすぐことにより行うことができる。
【0090】
さらに、歯科用エックス線のような放射線と関連させて、組織を予防的に治療することもできる。また、前述した通り、動物の歯の漂白と関連させて組織を予防的に治療することができる。
【0091】
非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩は、動物の口の組織の疾患または状態の治療に使用することができる。本発明によって治療可能な疾患または状態は、炎症、歯肉炎および歯周炎のような炎症性疾患並びに状態、ROSによって引き起こされる、または悪化するあらゆる疾患または状態を含む。
【0092】
動物の口の組織の治療に必要な非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩の投与量が、使用される口腔ケア組成物の種類、治療が予防的なものかどうか、または疾患または状態の治療のためなのかどうか、治療する病気または状態の特徴、治療する病気または状態の重症度、治療期間、その動物へ投与する他の薬剤の特徴、その動物の年齢、大きさ、および種類、並びに医学および獣医学における公知の同様の要素、によって変化することは、当業者には理解できるであろう。
【0093】
一般的に、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩の適切な一日の投与量は、治療効果を生み出すために効果的な最低の投与量における化合物の量である。約0.001〜約25重量%、好ましくは約2.5〜約12.5重量%、最も好ましくは約5.0〜約6.0重量%の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有する口腔ケア組成物による一日一回以上の使用は、効果的な一日の投与量となることが予想される。しかしながら、実際に採用される一日の投与量、一日の治療回数、および治療期間は、健全な医学的判断の範疇において、担当医、歯医者または獣医によって決定される。
【0094】
本発明はさらに、本発明による口腔ケア製品を含むキットを提供する。口腔ケア製品が口腔ケア組成物である場合、上記キットは、歯の没入、および任意で、例えばゲルまたは溶液中の歯周組織の没入を可能にする綿棒、棒、プラスチックのへら、点滴器、注射器、ストリップ(例えば、米国特許第5891453号および同6419906号に開示されているようなもの)、または歯科用トレイまたは器具(米国特許第5863202号、同5980249号、および欧州特許出願752833号に記載されているようなもの)のような、口腔ケア組成物を動物の口の組織へ塗布する塗布器を含んでいてもよい。上記キットは、さらに、本発明の口腔ケア組成物の、使用目的に必要な量を調剤および/または測定するためのカップ、バイアルまたはその他の器具を含んでいてもよい。もちろん、上記キットは、本発明に係る口腔ケア組成物分と口腔ケア器具との両方を含んでいてもよい。
【0095】
本発明に係る口腔ケア組成物および/または口腔ケア器具に加えて、上記キットは、歯の漂白組成物、歯の漂白剤を含有するストリップ、口腔ケア組成物を塗布する塗布器等のような、別のタイプの口腔ケア組成物または器具をさらに含んでいてもよい。本発明に係るキットは、本発明のキットおよび/または本発明の口腔ケア製品の使用に関する使用説明書をさらに含んでいてもよく、またその他の任意の品目を備えていてもよい。
【0096】
尚、原文において、実在物に付く「a」または「an」は、そのものが1つ以上あることを意味する。例えば、「a cell」は1つ以上の細胞を意味する。
【0097】
〔実施例〕
(例1)IL−8放出の阻害
インターロイキン8(IL−8)は炎症性サイトカイン前駆体であり、好中球の化学誘引物質および活性因子である。また、インターロイキン8は、Tリンパ球および好酸球の化学誘引物質および活性因子であることも報告されている。IL−8は、免疫細胞(リンパ球、好中球、単球およびマクロファージを含む)、線維芽細胞および上皮細胞によって生成される。IL−8の重要な役割を示唆する報告が、歯肉炎および歯周病を含む多くの炎症性疾患の病原論において成されている。
【0098】
最近、生理的に関連した濃度の銅への暴露後に、内皮細胞がより高いレベルのIL−8を分泌することが発見されている(例えば、同時係属米国出願10/186168号(2002年6月27日出願)、米国特許出願公開2003/0130185号(2003年7月10日公開)、およびBar-Or, Thomas, Yukl, Rael, Shimonkevitz, Curtis and Winkler, “Copper Stimulates the Synthesis and Release of Interleukin-8 in Human Endothelial Cells: A Possible Early Role in Systemic Inflamamtory Responses,” Shock, 20(2): 154-158 (August 2003)参照;さらにはPCT出願WO03/043518号(2003年5月30日公開)参照)。上記の例は、銅誘起性IL−8の内皮細胞からの分泌に対するトリエンチン添加の効果について研究されたものである。
【0099】
37℃、10%二酸化炭素の条件下で、内皮細胞基礎培地−2(EGM培地)(Cambrex)中の組織培養プレート(Griener)へ集合するように、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養した。次に上記細胞を、37℃の無血清培地(インスリン・トランスファーリング・ナトリウム・セレナイト培地サプリメント(insulin transferring sodium selenite medium supplement)(Sigma)により補われた、血清およびアスコルビン酸を含有しないEGM培地)と共に2度洗浄し、(i)50μMのCuCl、(ii)50μM、100μM、150μMまたは250μMのSyprine(登録商標)塩酸トリエンチン(Merck & Co., Inc.)、または(iii)上記の両方(両方ともn=3)で24時間処理した。Syprine(登録商標)塩酸トリエンチン(N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,2−エタンジアミン二塩酸塩)は、ペニシラミン不耐性ウィルソン病患者への経口投与によって過剰な銅を除去することで現在承認されている薬である(Merck & Co., Inc.、公開7664604、2001年1月発行)。Syprine(登録商標)塩酸トリエンチンはカプセルで販売されており、1つのカプセルの内容物が培地中で溶解すると、100mMの塩酸トリエンチンを含有する溶液が生じる。CuClおよび/またはSyprine(登録商標)塩酸トリエンチンでインキュベートした後、培地を各細胞から除去し、酵素免疫測定(ELISA)法を用いてIL−8を解析した。
【0100】
上記IL−8の酵素免疫測定法を以下のように実施した。抗ヒトIL−8抗体(Pierce Endogen, Rockford, IL; カタログナンバーM801−E、ロットナンバーCK41959)を、pH7.2〜7.4のリン酸緩衝生理食塩水で1μg/mLに希釈し、上記希釈した抗体100μLを、Nunc Maxisorb ELISA帯状プレートの各くぼみ(well)へと加えた。上記プレートを室温で一晩インキュベートした。上記液体をくぼみから吸引し、上記プレートを紙タオルでふき取った。次に、200μLの検定緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.2〜7.4、4%のウシ血清アルブミンを含有(Sigma, St. Louis, MO; ELISグレード=低値の脂肪酸およびIgG))を各くぼみに加え、上記プレートを1時間室温でインキュベートした。上記液体をくぼみから吸引し、該くぼみを洗浄緩衝液(50mMトリス、0.2%Tween-20、pH7,9〜8.1)で3回洗浄し、紙タオルでふき取った。標準液およびサンプル(50μL/くぼみ;標準液は保存緩衝液に希釈)をくぼみに加え、プレートを1時間室温で緩やかに振動させながらインキュベートした。上記液体を吸引し、くぼみを洗浄緩衝液で3回洗浄し、プレートを紙タオルでふき取った。
【0101】
次に、検定緩衝液で60ng/mLに希釈したビオチン標識抗ヒトIL−8(Pierce Endogen, Rockford, IL; カタログナンバーM802−E、ロットナンバーCE49513)100μLを各くぼみに加えた。上記プレートを1時間室温でインキュベートし、上記液体を吸引し、上記くぼみを洗浄緩衝液で3回洗浄し、プレートを紙タオルでふき取った。そして、検定緩衝液中のHRP結合ストレプトアビジン(Pierce Endogen, Rockford, IL; カタログナンバーN100)100μLを各くぼみに加えた。上記プレートを30分間室温でインキュベートし、上記液体を吸引し、上記くぼみを洗浄緩衝液で3回洗浄し、プレートを紙タオルでふき取った。最後に、TMB基質溶液(Pierce Endogen, Rockford, IL; カタログナンバーN301)100μLを各くぼみに加え、上記プレートを30分間室温でインキュベートした。くぼみ1つあたり100μLの0.18MHSOを加えることで反応を止めた。450nmおよび530nmにおける光学濃度を、ELISAプレート読取機上で読み取り、差(OD450−OD530)を計算した。
【0102】
上記結果を図1に示す。図1から分かる通り、50μMのCuClで24時間インキュベートしたHUVECは、水でインキュベートしたコントロールと比べて2倍以上高いIL−8の分泌を示した。全ての濃度においてSyprine(登録商標)塩酸トリエンチンは、CuClによって引き起こされたIL−8の分泌を阻害した(CuCl単体と、図1に示す様々な濃度のSyprine(登録商標)トリエンチンを加えたCuClとを比較)。また、目視検査では、全ての細胞が24時間生存しているように見えた。
【0103】
ここに示す結果は、Cu(II)イオンが酸化的ストレスとは無関係にヒト内皮細胞からのIL−8の分泌を刺激すること、および、高親和性Cu(II)結合化合物であるトリエンチンが銅誘起性の内皮細胞のIL−8分泌を著しく阻害することを証明している。Cu(I)イオンは、上記以外の種類の細胞からのIL−8分泌をもたらすROSの生成に対して触媒作用を及ぼす。トリエンチンはCu(I)とCu(II)との両方と結合するため、二つの異なるメカニズムによって、複数の種類の細胞からのIL−8を減少させることができる。
【0104】
Cu(II)誘起性の内皮IL−8分泌のメカニズムとしては、ヒト線維芽細胞で報告されているセリン−トレオニンキナーゼAkt(プロテインキナーゼB)の活性化である可能性がある(OstrakhovitchらによるArch. Biophys. 397, 232 (2002)参照)。もし同様の経路が生体内のヒト内皮細胞で刺激されると、核因子−カッパB(NF−カッパB)を活性化させることによって、銅は全身性炎症の発生に大きく寄与する。NF−カッパBは、血管性および細胞性炎症反応を顕著に増大させる高レベルのサイトカインを刺激することでよく知られている炎症転写因子である。
【0105】
(例2)歯肉炎治療における効果
ヒトを対象とした歯肉炎の治療において、治療用口内洗浄剤として少量のトリエンチンを使用したときの効果を測定する調査を行った。
【0106】
本研究のために、登録薬剤師がトリエンチンを含有する口内洗浄剤を準備した。銅を含まないガラス製容器中の脱イオン水にSyprine(登録商標)塩酸トリエンチン(Merck & Co., Inc. USA)カプセルの内容物を溶解し、塩酸トリエンチンの最終的な濃度が250μM(55mg/L)となるように上記口内洗浄剤を準備した。
【0107】
5人の成人の志願者(ヒト)の身元確認をした。これらの志願者は18歳〜65歳であり、4人が男性で1人が女性であった。これら志願者の中で、本調査の開始前3ヶ月以内に1日1箱を越える量のタバコを吸った者はいなかった。銅キレートまたは通常の炎症反応を妨げ得る薬剤を服用した志願者もいなかった。自己免疫疾患または通常の炎症または免疫反応を妨げ得る病気になった志願者もいなかった。
【0108】
治療に先立って、歯周治療専門医が上記5人の志願者の口内検査を行った。口腔病変、歯の数、歯肉炎部位の数、歯肉炎指数(GI)、歯垢指数(PI)、プロービング時の出血(BOP)およびプローブの深さ(PD)を記録し、歯の写真を撮影した。最近口腔外科手術を受けた志願者、口腔外傷の経験、または酷い口腔病変がある志願者はいなかった。
【0109】
GI、PI、BOPおよびPDは、歯周病学でよく知られている標準用語である。具体的には、PIは以下のように点数付けした。
0‐歯垢なし。
1‐歯における歯肉の遊離縁およびその近傍部位に薄い歯垢が付着。顕示液を塗布した後または歯の表面にプローブを使用した後にのみ、歯垢がそのまま見られる。
2‐歯肉ポケット内、または歯および歯肉の縁に、肉眼で確認することができる柔らかい堆積物の緩やかな蓄積が見られる。
3‐歯肉ポケット内および/または歯の上に、多量の柔らかい物質が見られる。
【0110】
GIは以下のように点数付けした。
0‐目に見える炎症の兆候なし。
1‐色と質感にわずかな変化が見られる。
2‐かなりの炎症およびプローブ時の出血が見られる。
3‐顕著な炎症および自然出血が見られる。
SilnessおよびLoeによるActa Odontol Scan, 22:292、およびLoeおよびSilnessによるActa Odontol Scan, 21:533-551を参照されたい。
【0111】
歯肉縁に触れないよう注意しながら、各志願者の歯の2分の1から歯肉縁上の歯垢を除去した。練り歯磨き粉使用の前または後に、10mLの塩化トリエンチン口内洗浄剤(塩化トリエンチン0.55mg含有)で朝と寝る前に30秒間(一回分の使用量を測って提供した)、ゆすぎ、うがい、および喀痰をするように指示したことを除き、全志願者には通常の口腔衛生の手順に従うように指示した。上記志願者が口内洗浄剤を通常使用している場合は、その口内洗浄剤の代わりにトリエンチン口内洗浄剤を使用するように上記志願者に指示した。上記各志願者はトリエンチン口内洗浄剤を14日間使用し、その間、各志願者は歯周治療専門医のもとで繰り返し口内検査を受けた。トリエンチン口内洗浄剤を使用した14日間の治療後に、歯肉炎の部位数、GI、PI、BOPおよびPDを記録し、写真を撮影した。
【0112】
上記GI、PI、BOPおよびPDの結果を、表1A〜3Cに示す。これらの表において、「6‐ポイント」とは、各歯(前部の内側、内面、後部の内側、前部の外側、外面、および後部の外側)において6つの測定がなされたことを意味する。「平均」は、15本または30本の歯を規定通りに指示された測定を行った平均、および「標準偏差」はその標準偏差である。
【0113】
トリエンチン口内洗浄剤を用いた治療をわずか14日間続けた後、GIおよびBOPがそれぞれ60%以上および45%以上減少したことが分かった(表3A〜Cを参照)。このような改善は統計的に有意である(それぞれ、p<0.0001およびp<0.01)。また、改善の量は統計的に有意なものではないが、PIおよびPDも改善した(表3A〜Cを参照)。
【0114】
上記志願者の歯の写真は、トリエンチン口内洗浄剤を用いた治療により一部の歯の漂白に改善の見込みがあることを示していた。特に、志願者の酷く着色した歯が、トリエンチン口内洗浄剤を用いた14日間の治療後に明るくなったように思われた。しかし、治療前にほとんど着色を示していなかった志願者の歯は、トリエンチン口内洗浄剤を用いた14日間の治療後にわずかに暗くなっていた。
【0115】
各10mLのトリエンチン口内洗浄剤は0.55mgの塩酸トリエンチンを含有していたため、各患者は1日あたり1.10mgの塩酸トリエンチンを使用したことになる。Syprine(登録商標)塩酸トリエンチンは、分割投与で750〜1250mg/日を初期推奨投与量としたウィルソン病の治療用として米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。従って、上記各志願者は、承認されている適応における塩酸トリエンチンの承認済初期投与量の約1/682〜約1/1136の使用量で治療されたことになる。よって、トリエンチン口内洗浄剤の少量での使用で、歯肉炎およびプローブ時の出血を大幅に軽減させたことになる。
【0116】
さらに、今回の調査で得られたデータと、抗菌化合物(クロルヘキシジン)およびコラゲナーゼ阻害剤(低用量ドキシサイクリン)を含む歯肉炎および歯周炎への他の治療に関する公開報告とを比較すると、他の治療に比べてトリエンチンは数倍効果的であり、また、より短い治療期間でより少ない副作用でその効果を生み出すことが示唆された。具体的には、クロルヘキシジンは口腔ケア治療を判断するための基準とされており、今回の調査で得られたデータと、同様の条件および回数で行ったクロルヘキシジンの臨床試験に関する公開報告(CatonらによるJ. Clin.. Periodontol., 20:172-178(1993); HaseらによるJ. Clin.. Periodontol., 22:533-539(1995); BorrajoらによるJ. Periodontol., 73:317-321(2002))とを比較すると、トリエンチンがクロルヘキシジンよりも一貫して優れていることが明らかとなった。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
【表7】

【0124】
(例3)抗菌作用の不足
ヘモフィルス・アクチノミセテムコミタンス(アクチノバチルスとしても知られる)およびポルフィロモナス・ジンジバーリスは、歯周病の開始および重症度に密接に関係する嫌気性細菌である(MorinushiらによるJ. Periodontal. 71(3):403-409 (March 2000)参照)。
【0125】
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から、増殖させるためにヘモフィルス・アクチノミセテムコミタンス(ATCC29522)およびポルフィロモナス・ジンジバーリス(ATCC33277)を入手し、補水して嫌気性の培地で培養した。各微生物の未使用の二次培養菌から、0.5マクファーランド標準懸濁液を作成した。各微生物懸濁液の菌叢を、米疾病対策および予防センター(CDC)嫌気性血液寒天およびチョコレート寒天で培養した。2つの培地上の各微生物に対して、所定の濃度のSyprine(登録商標)塩酸トリエンチン(Merck & Co., Inc.)で試験を行った。上記Syprine(登録商標)塩酸トリエンチンの濃度は、27.5mg/L、55mg/Lおよび100mg/L(Syprine(登録商標)塩酸トリエンチンのカプセルの内容物を脱イオン水に溶解し、0.45ミクロンのフィルターで濾過して上記溶液を作成)である。
【0126】
上記試験を行うため、各3種類の濃度のSyprine(登録商標)塩酸トリエンチンをそれぞれ0.25mL、各プレート上の無菌ディスクへ加えた。上記プレートを、嫌気状態(Gas Pak Pouch system)で計48時間インキュベートした。その結果、いずれのプレートにも阻害域は存在しなかった。従って、上記濃度のSyprine(登録商標)塩酸トリエンチンは、上記2つの微生物の発育を阻害しなかった。尚、例2で使用した口内洗浄剤は、55mg/Lの塩酸トリエンチンを含有していた。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】ヒト臍帯静脈内皮細胞から銅に起因してIL−8が放出されることに対する、Syprine(登録商標)塩酸トリエンチンの影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を、動物の口の組織と接触させることを含む、上記組織内の細胞からの炎症性サイトカイン前駆体の放出を阻害する方法。
【請求項2】
動物の口の組織内の細胞からのインターロイキン8の放出を阻害する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア組成物に含有している請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記口腔ケア組成物が、マウスウォッシュまたは口内洗浄剤である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記口腔ケア組成物が、うがい薬、スプレーまたは溶液である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
上記口腔ケア組成物が、ゲル、ペーストまたは粉末である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
上記口腔ケア組成物が、軟膏またはクリームである請求項3に記載の方法。
【請求項8】
上記口腔ケア組成物が、ガム、トローチ剤またはミントである請求項3に記載の方法。
【請求項9】
上記口腔ケア組成物が、歯の漂白組成物である請求項3に記載の方法。
【請求項10】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア器具に含まれている請求項1に記載の方法。
【請求項11】
予防的口腔療法の一部として、上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記組織と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
手術前、手術中、手術後またはこれら組み合わせにおける何れかの時点において、上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記組織と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
抜歯前、抜歯中、抜歯後またはこれら組み合わせにおける何れかの時点において、上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記組織と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を、動物の口の組織と接触させることを含む上記組織の炎症を治療する方法。
【請求項15】
予防的口腔療法の一部として、上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記組織と接触させる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア組成物に含まれている請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア器具に含まれている請求項14に記載の方法。
【請求項18】
効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を、動物の口の組織と接触させることを含む上記組織の炎症性疾患または状態を治療する方法。
【請求項19】
上記疾患または状態が歯肉炎である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記疾患または状態が歯周炎である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
予防的口腔療法の一部として、上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を上記組織と接触させる請求項18に記載の方法。
【請求項22】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が口腔ケア組成物に含まれている請求項18に記載の方法。
【請求項23】
上記口腔ケア組成物が、マウスウォッシュまたは口内洗浄剤である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記口腔ケア組成物が、うがい薬、スプレーまたは溶液である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
上記口腔ケア組成物が、ゲル、ペーストまたは粉末である請求項22に記載の方法。
【請求項26】
上記口腔ケア組成物が、軟膏またはクリームである請求項22に記載の方法。
【請求項27】
上記口腔ケア組成物がガム、トローチ剤またはミントである請求項22に記載の方法。
【請求項28】
上記口腔ケア組成物が、歯の漂白組成物である請求項22に記載の方法。
【請求項29】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア器具に含まれている請求項18に記載の方法。
【請求項30】
効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を、動物の口の組織と接触させることを含む、活性酸素種(ROS)による上記組織への損傷を軽減させる方法。
【請求項31】
予防的口腔療法の一部として、上記組織を治療する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
活性酸素または過酸化水素を遊離させる歯の漂白剤を使用した結果として、上記ROSが生成される請求項30に記載の方法。
【請求項33】
タバコ製品を使用した結果として、上記ROSが生成される請求項30に記載の方法。
【請求項34】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア組成物に含まれている請求項30に記載の方法。
【請求項35】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア器具に含まれている請求項30に記載の方法。
【請求項36】
動物の1本以上の歯、動物の口の別の組織またはこの両方と、効果的な量の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を接触させることを含む、動物の1本以上の歯を漂白する方法。
【請求項37】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア組成物に含まれている請求項36に記載の方法。
【請求項38】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、歯の漂白組成物に含まれている請求項36に記載の方法。
【請求項39】
さらに、上記歯の漂白組成物には、活性酸素または過酸化水素を遊離する歯の漂白剤が含まれている請求項38に記載の方法。
【請求項40】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩が、口腔ケア器具に含まれている請求項36に記載の方法。
【請求項41】
上記口腔ケア器具が、注射器、トレイまたはボウルである請求項40に記載の方法。
【請求項42】
上記口腔ケア器具が、ストリップである請求項40に記載の方法。
【請求項43】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、以下の化学式の構造を有する請求項1〜42の何れか1項に記載の方法。
NR[−(CR−NR]−(CR−NR
(ここで、各xは独立して2または3であってもよく、yは1〜10であり、各R、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。また、各RおよびRは以下の式の構造であってもよい。
−CR−(CR−R
ここで、各R、R、およびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。
は、H、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシアルキルまたはアルコキシアリールであってもよい。
は、−COOR10、−CON(R10、−OR10、−C(OR10、−COR10、−N(R10、アルキルアリールまたはアルキルへテロアリールであってもよい。
10は、H、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであってもよく、zは0〜6である。)
【請求項44】
、R、RおよびRが全てHであり、各xがそれぞれ独立して2または3であり、かつ、yが1〜5である請求項43に記載の方法。
【請求項45】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、ジエチレントリアミン、トリエンチン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ヘキサプロピレンヘプタミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)プロパンジアミンまたはN,N’−ビス(2−アミノプロピル)エタンジアミンである請求項44に記載の方法。
【請求項46】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、トリエンチンである請求項45に記載の方法。
【請求項47】
約0.002mg〜約2.20mgのトリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、動物の口の組織と接触させることを含む、上記組織を治療する方法。
【請求項48】
約0.25mg〜約1.25mgの上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、上記組織と接触させる請求項47に記載の方法。
【請求項49】
約0.50mg〜約0.60mgの上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、上記組織と接触させる請求項47に記載の方法。
【請求項50】
上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、上記組織と一日2回以上接触させる請求項47に記載の方法。
【請求項51】
予防的口腔療法として、上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を上記組織と接触させる請求項47に記載の方法。
【請求項52】
約0.002mg〜約2.20mgのトリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、動物の口の組織と接触させることを含む、上記組織の疾患または状態を治療する方法。
【請求項53】
約0.25mg〜約1.25mgの上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、上記組織と接触させる請求項52に記載の方法。
【請求項54】
約0.50mg〜約0.60mgの上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、上記組織と接触させる請求項52に記載の方法。
【請求項55】
上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、上記組織と一日2回以上接触させる請求項52に記載の方法。
【請求項56】
予防的口腔療法として、上記トリエンチンまたはその生理学的に許容可能な塩を、上記組織と接触させる請求項52に記載の方法。
【請求項57】
上記疾患または状態が歯肉炎である請求項52に記載の方法。
【請求項58】
上記疾患または状態が歯周炎である請求項52に記載の方法。
【請求項59】
上記動物がヒトである請求項1〜58の何れか1項に記載の方法。
【請求項60】
さらに、効果的な量の別の金属結合化合物を、上記組織と接触させること含む請求項1〜58の何れか1項に記載の方法。
【請求項61】
非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む口腔ケア器具。
【請求項62】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、下記化学式の構造を有する請求項61に記載の口腔ケア器具。
NR[−(CR−NR]−(CR−NR
(ここで、各xは独立して2または3であってもよく、yは1〜10であり、各R、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。また、各RおよびRは以下の式の構造であってもよい。
−CR−(CR−R
ここで、各R、R、およびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。
は、H、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシアルキルまたはアルコキシアリールであってもよい。
は、−COOR10、−CON(R10、−OR10、−C(OR10、−COR10、−N(R10、アルキルアリールまたはアルキルへテロアリールであってもよい。
10は、H、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであってもよく、zは0〜6である。)
【請求項63】
、R、RおよびRが全てHであり、各xがそれぞれ独立して2または3であり、かつ、yが1〜5である請求項62に記載の口腔ケア器具。
【請求項64】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、ジエチレントリアミン、トリエンチン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ヘキサプロピレンヘプタミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)プロパンジアミンまたはN,N’−ビス(2−アミノプロピル)エタンジアミンである請求項63に記載の口腔ケア器具。
【請求項65】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、トリエンチンである請求項64に記載の口腔ケア器具。
【請求項66】
縫合糸または糸ようじである請求項61〜65の何れか1項に記載の口腔ケア器具。
【請求項67】
注射器、トレイまたはボウルである請求項61〜65の何れか1項に記載の口腔ケア器具。
【請求項68】
ストリップである請求項61〜65の何れか1項に記載の口腔ケア器具。
【請求項69】
上記ストリップが、さらに、活性酸素または過酸化水素を遊離する歯の漂白剤を含む請求項68に記載の口腔ケア器具。
【請求項70】
医薬品として許容できる基材と、約0.001〜約25重量%の非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩とを含む口腔ケア組成物。
【請求項71】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、以下の化学式の構造を有する請求項70に記載の口腔ケア組成物。
NR[−(CR−NR]−(CR−NR
(ここで、各xは独立して2または3であってもよく、yは1〜10であり、各R、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。また、各RおよびRは以下の式の構造であってもよい。
−CR−(CR−R
ここで、各R、R、およびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。
は、H、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシアルキルまたはアルコキシアリールであってもよい。
は、−COOR10、−CON(R10、−OR10、−C(OR10、−COR10、−N(R10、アルキルアリールまたはアルキルへテロアリールであってもよい。
10は、H、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであってもよく、zは0〜6である。)
【請求項72】
、R、RおよびRが全てHであり、各xが独立して2または3であり、かつyが1〜5である請求項71に記載の口腔ケア組成物。
【請求項73】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、ジエチレントリアミン、トリエンチン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ヘキサプロピレンヘプタミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)プロパンジアミンまたはN,N’−ビス(2−アミノプロピル)エタンジアミンである請求項72に記載の口腔ケア組成物。
【請求項74】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤がトリエンチンである請求項73に記載の口腔ケア組成物。
【請求項75】
約2.5%〜約12・5%の上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む請求項70〜74までの何れか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項76】
約5.0%〜約6.0%の上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む請求項75に記載の口腔ケア組成物。
【請求項77】
洗浄液、ゆすぎ液、うがい薬、スプレーまたは溶液である請求項70〜76の何れか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項78】
ゲル、ペーストまたは粉末である請求項70〜76の何れか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項79】
軟膏またはクリームである請求項70〜76の何れか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項80】
ガム、トローチ剤またはミントである請求項70〜76の何れか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項81】
医薬品として許容できる基材と、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩とを含む歯の漂白組成物。
【請求項82】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が下記の化学式の構造を有する請求項81に記載の歯の漂白組成物。
NR[−(CR−NR]−(CR−NR
(ここで、各xは独立して2または3であってもよく、yは1〜10であり、各R、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。また、各RおよびRは以下の式の構造であってもよい。
−CR−(CR−R
ここで、各R、R、およびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。
は、H、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシアルキルまたはアルコキシアリールであってもよい。
は、−COOR10、−CON(R10、−OR10、−C(OR10、−COR10、−N(R10、アルキルアリールまたはアルキルへテロアリールであってもよい。
10は、H、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであってもよく、zは0〜6である。)
【請求項83】
、R、RおよびRが全てHであり、各xがそれぞれ独立して2または3であり、かつ、yが1〜5である請求項82に記載の歯の漂白組成物。
【請求項84】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、ジエチレントリアミン、トリエンチン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ヘキサプロピレンヘプタミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)プロパンジアミンまたはN,N’−ビス(2−アミノプロピル)エタンジアミンである請求項83に記載の歯の漂白組成物。
【請求項85】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤がトリエンチンである請求項84に記載の歯の漂白組成物。
【請求項86】
さらに、活性酸素または過酸化水素を遊離する歯の漂白剤を含む請求項81〜85の何れか1項に記載の歯の漂白組成物。
【請求項87】
口腔ケア製品を含むキットであり、
上記口腔ケア製品が、非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含有するキット。
【請求項88】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が下記の化学式の構造を有する請求項87に記載のキット。
NR[−(CR−NR]−(CR−NR
(ここで、各xは独立して2または3であってもよく、yは1〜10であり、各R、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。また、各RおよびRは以下の式の構造であってもよい。
−CR−(CR−R
ここで、各R、R、およびRは同じであっても異なっていてもよく、各R、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルケニル、1つ以上の窒素原子(−N−)によって中断されているアルケニル、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアリール、アミノアリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアリールまたはヒドロキシアリールアルキルであってもよい。
は、H、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、1つ以上の酸素原子(−O−)によって中断されているアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシアルキルまたはアルコキシアリールであってもよい。
は、−COOR10、−CON(R10、−OR10、−C(OR10、−COR10、−N(R10、アルキルアリールまたはアルキルへテロアリールであってもよい。
10は、H、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであってもよく、zは0〜6である。)
【請求項89】
、R、RおよびRが全てHであり、各xがそれぞれ独立して2または3であり、かつ、yが1〜5である請求項88に記載のキット。
【請求項90】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤が、ジエチレントリアミン、トリエンチン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ヘキサプロピレンヘプタミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)プロパンジアミンまたはN,N’−ビス(2−アミノプロピル)エタンジアミンである請求項89に記載のキット。
【請求項91】
上記非ペプチドポリアミンキレート剤がトリエンチンである請求項90に記載のキット。
【請求項92】
上記口腔ケア製品が口腔ケア器具であり、
上記口腔ケア器具が上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む請求項87〜91の何れか1項に記載のキット。
【請求項93】
上記口腔ケア器具が、縫合糸または糸ようじである請求項92に記載のキット。
【請求項94】
上記口腔ケア器具が、注射器、トレイまたはボウルである請求項92に記載のキット。
【請求項95】
上記口腔ケア器具がストリップである請求項92に記載のキット。
【請求項96】
上記ストリップが、さらに、活性酸素または過酸化水素を遊離する歯の漂白剤を含む請求項95に記載のキット。
【請求項97】
さらに、活性酸素または過酸化水素を遊離する歯の漂白剤を含む請求項95に記載のキット。
【請求項98】
上記口腔ケア製品が口腔ケア組成物であり、
上記口腔ケア組成物が上記非ペプチドポリアミンキレート剤またはその生理学的に許容可能な塩を含む請求項87〜91の何れか1項に記載のキット。
【請求項99】
上記口腔ケア組成物が歯の漂白組成物である請求項98に記載のキット。
【請求項100】
上記口腔ケア組成物がゲルである請求項99に記載のキット。
【請求項101】
さらに、活性酸素または過酸化水素を遊離する歯の漂白剤を含有するストリップを含む請求項99に記載のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2006−528690(P2006−528690A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532833(P2006−532833)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/014208
【国際公開番号】WO2004/100884
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(502113644)ディーエムアイ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】DMI BIOSCIENCES,INC.
【Fターム(参考)】