説明

口腔内殺菌用ソフトカプセル

【課題】口腔内殺菌剤を、服用しやすく、良好な食感が得られ、外観の魅力にも優れた形態で提供できるようにする
【解決手段】カプセル皮膜と、該カプセル皮膜内に収容された内容物とを有するソフトカプセルであって、前記内容物が、有効成分としてラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を含有する口腔内殺菌用ソフトカプセル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔内殺菌用ソフトカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、口腔内の悩みとして齲蝕に次いで第二番目に多い疾患である。歯周病は、歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨等の歯周組織を破壊し、その機能を侵す疾患である。歯周病の次に多い口腔内の悩みが口臭である。口臭症は歯周病等の原疾患に起因する病的口臭と他の原因による生理的口臭に分類されるが、その口臭原因物質である揮発性硫黄化合物の産生には、歯周病菌をはじめとする種々の口腔内細菌の関与が明らかにされている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】 臨床家のための口臭治療のガイドライン、八重垣建編、クインテッセンス出版、東京、2000年、第13−26頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
口腔内殺菌剤を提供するにあたっては、天然物質由来の成分を用いることにより、副作用等を気にせずに口腔ケアを行うことを技術的課題として、鋭意検討を重ねた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、口腔内殺菌剤を、服用しやすく、良好な食感が得られ、外観の魅力にも優れた形態で提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]〜[6]である。
[1]カプセル皮膜と、該カプセル皮膜内に収容された内容物とを有するソフトカプセルであって、前記内容物が口腔内殺菌用効果を有するラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を含有する、口腔内殺菌用ソフトカプセル。
[2]前記カプセル皮膜が、香料含量の異なる少なくとも2種の皮膜用基材から構成されている透明のカプセル皮膜である、[1]に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
[3]前記皮膜用基材がゼラチン基材である、[2]に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
[4]前記カプセル皮膜内の前記内容物中に、該カプセル皮膜よりも小さい小ソフトカプセルが少なくとも1つ収容された多重カプセル構造を有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
[5]前記カプセル皮膜は前記小ソフトカプセルの皮膜よりも口腔内での溶解性が高く、前記小ソフトカプセルの皮膜が胃溶性または腸溶性を有する、[4]記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
[6]口臭除去用である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
【発明の効果】
【0006】
本発明の口腔内殺菌用ソフトカプセルは、唾液と混合されることにより口腔内細菌を殺菌する効果を発揮する有効成分を含み、服用しやすく、良好な食感が得られ、外観の魅力にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[口腔内殺菌用の有効成分]
本発明の口腔内殺菌用ソフトカプセル(以下、単にソフトカプセルということもある。)の内容物として用いられる口腔内殺菌用の有効成分(以下、口腔内殺菌用組成物ともいう)は、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を含有する。
本発明に使用するラクトパーオキシダーゼは、ほ乳類の乳等から得ることができ、例えば、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の乳等から得ることができる。中でも牛乳由来のものが好ましい。例えば、乳等未加熱のホエーまたは脱脂乳から、常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー等)に従って工業的に製造することが好ましく、更に、市販の天然物由来のラクトパーオキシダーゼ(例えばバイオポール社製等)、又は組換え型ラクトパーオキシダーゼを使用することも可能である。
【0008】
本発明に使用するグルコースオキシダーゼは、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)等の微生物の産生する酵素である市販品のグルコースオキシダーゼ(例えば、新日本化学工業社製等)を使用することができる。
本発明に使用するグルコースは、例えば、市販品の食品添加物用のグルコース(例えば、日本食品化工社製等)を使用することができる。
【0009】
本発明に使用するpH調節成分としては、ソフトカプセルの内容物のpHを、4.4〜5.9の弱酸性に安定させるための緩衝能があればどのようなものであってもよく、例えば有機酸及び/又は有機酸の塩類を使用することができる。
例えば、市販食品添加物のクエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルタミン酸等からなる群より選択される少なくとも1種以上の酸、及びクエン酸塩(例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム等)、乳酸塩(例えば、乳酸ナトリウム等)、リンゴ酸塩(例えば、リンゴ酸ナトリウム等)、コハク酸塩(例えば、コハク酸一ナトリウム、コハク酸ニナトリウム等)、酒石酸塩(例えば、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム等)、グルタミン酸塩(例えば、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム等)等からなる群より選択される少なくとも1種以上の塩類の組み合わせを使用することが可能である。
【0010】
これらのラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、有機酸、及び塩類はいずれも食品添加物として広く利用されており、また市販されており容易に入手可能である。
ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、およびpH調節成分は、これらが唾液と混合されることにより口腔内細菌を殺菌する作用を有しており、本発明の有効成分である。ここで、「有効成分」とは、口腔内細菌を殺菌する作用に寄与する成分を意味する。なお、ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、およびpH調節成分以外に、口腔内細菌を殺菌する作用を有する公知の有効成分が含まれていてもよい。
【0011】
また、乳中の他の有用な蛋白質であるラクトフェリン、リゾチーム、免疫グロブリン、カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン等やプロバイオティクスとして働く乳酸菌等が含まれていてもよい。
また、内容物である口腔内殺菌用の有効成分には、後述する胃内において消臭効果を有する物質を含有させてもよい。内容物は口腔内に放出された後に飲み込まれるため、該物質を含有させておくと、口腔内の殺菌効果に加えて、胃内での消臭効果が期待できる。
その他、口腔内細菌を殺菌する効果を損なわず、ソフトカプセルを製造可能な範囲で、他の成分を適宜含有させることができる。例えば内容物に、必要に応じて矯味矯臭剤、安定剤、増粘剤等の添加剤を含有させることができる。安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。香料として、例えばレモンオイル、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、ライムオイル、ペパーミント、スペアミント、ハッカ等の精油が挙げられる。
【0012】
口腔内殺菌用の有効成分(内容物)の性状は、液状媒体中に有効成分等が溶解または分散した液体(溶液または懸濁液)、該液体を高粘度化したとろみのある液状体、又は該液体をゲル化したゲル状体が好ましい。懸濁液の場合は、界面活性剤等の懸濁化剤を用いることが好ましい。とろみのある液状体、又はゲル状体の場合は、増粘剤やゲル化剤を適宜用いることができる。液状媒体としては、公知の油性基材(例えばトウモロコシ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、サフラワー油、ヤシ油、小麦胚芽油等の植物油)、または公知の水性基材を用いることができる。
【0013】
口腔内殺菌用ソフトカプセルの内容物に含まれる有効成分の含有量(ラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、およびpH調節成分の合計量)は、特に限定されないが、0.005〜20質量%が好ましく、0.05〜12.5質量%がより好ましい。
【0014】
[ソフトカプセル]
本発明のソフトカプセルは、カプセル皮膜と、該カプセル皮膜内に収容された内容物(口腔内殺菌用の有効成分)とを有する。本発明のソフトカプセルは、カプセル皮膜を口腔内で溶解させて、または咀嚼して、内容物を口腔内に放出させて服用するものである。
カプセル皮膜は、口腔内で溶解させるタイプのカプセル皮膜として公知の材料、またはカプセル皮膜を咀嚼して服用するタイプのカプセル皮膜として公知の材料を用いて形成することができる。カプセル皮膜は透明であってもよく、不透明であってもよい。また着色されていてもよい。ソフトカプセルの構造、形状、大きさは、公知のものを適宜適用することができる。
【0015】
[第1の実施形態]
本実施形態の口腔内殺菌用ソフトカプセルは、一重の透明なカプセル皮膜内に内容物が収容されたものである。
本実施形態においてカプセル皮膜を構成する基材(皮膜用基材)は、透明性に優れているものが好ましい。皮膜用基材の主成分(皮膜形成成分)の例としては、ゼラチン;寒天;ジェランガム;アルギニン酸またはアルギン酸の塩;ペクチン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、プルラン等の各種のハイドロコロイド;などが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
透明性に優れる点で、寒天、ゼラチン、またはジェランガムを用いることが好ましい。
カプセル皮膜を口腔内で溶解または咀嚼するのに適した性状が得られやすい点でゼラチンが特に好ましい。
【0016】
通常、ゼラチンを主成分とするゼラチン皮膜用基材は、ゼラチン、可塑剤及び水を含むゼラチン皮膜液(カプセル皮膜液)から調製される。可塑剤の配合量が多いほどカプセル皮膜が柔らかくなる。
ここでのゼラチンには、ゼラチン、酸性ゼラチン、アルカリ性ゼラチン、ペプタイドゼラチン、低分子ゼラチン、ゼラチン誘導体等がいずれも包含される。
【0017】
可塑剤としては、グリセリン;プロピレングルコールやポリエチレングリコール等のグリコール類;コーンシロップ、スクロース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール等の液状糖類;結晶セルロース、デンプン類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースなどの水不溶性セルロース等を挙げることができる。なお、これらの可塑剤は1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくはグリセリンであり、とりわけ濃グリセリンが好ましい。
ゼラチン皮膜用基材に配合する可塑剤の割合としては、ゼラチン100質量%に対して可塑剤10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0018】
本実施形態において、カプセル皮膜(皮膜用基材)に香料が配合されていることが好ましい。これにより服用したときに口腔内でのフレーバー感を得ることができ、口臭除去用として提供することが可能である
香料は、合成品でも天然物でもよく、特に限定されない。食品添加物に指定されている可食性の香料を使用することが好ましい。具体例としては、レモンオイル、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、ライムオイル、ペパーミント、スペアミント、ハッカ、ラベンダー等の精油が挙げられる。これらの香料は、1種単独で使用しても任意の2種以上を混合して使用することもできる。香料は、カプセル皮膜液の調合工程において、ゼラチン等の基材の主成分や可塑剤とともに水に溶解して使用される。
【0019】
香料の配合量は、多いほどフレーバー感が良好に得られ、少ないほどカプセル皮膜の透明性が良好となる。具体的に、良好なフレーバー感を得るためには、基材の主成分100質量%に対して、香料を0.5質量%以上配合することが好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。一方、カプセル皮膜の良好な透明性を得るためには、香料の含有量を、基材の主成分100質量%に対して0.5質量%以下とすることが好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。
【0020】
また、カプセル皮膜を香料含有量の異なる少なくとも2種の皮膜用基材で構成することも好ましい。すなわち、基材の主成分100質量%に対して香料の含有量が0.5質量%以下の範囲内である(ゼロでもよい)皮膜用基材(1)と、基材の主成分100質量%に対して香料の含有量が0.5〜40質量%の範囲内である皮膜用基材(2)の、少なくとも2種の香料含有量が互いに異なる皮膜用基材を用いてカプセル皮膜を形成する。皮膜用基材(1)は透明性が良好であり、皮膜用基材(2)はフレーバー感に優れるため、カプセル皮膜の透明性が良好であり、かつフレーバー感に優れたソフトカプセルを実現できる。
上記の皮膜用基材(1)の香料含有量は、基材の主成分100質量%に対して0.3質量%以下が好ましく、皮膜用基材(2)の香料含有量は、基材の主成分100質量%に対して5〜20質量%が好ましい。
【0021】
本実施形態において、カプセル皮膜には、透明性および口腔内でのフレーバー感を損なわない範囲で、上記成分以外に、必要に応じて色素や顔料等の着色剤、防腐剤、崩壊剤、界面活性剤、矯味剤、矯臭剤、甘味料、クエン酸やリンゴ酸等の有機酸等を配合することができる。
特に粉体の甘味料を用いると、ソフトカプセルの呈味性や風味を向上させて服用しやくできる点で好ましい。また内容物が油性基材を含む場合には、カプセル皮膜に粉体の甘味料を含有させることにより、ソフトカプセルの油っぽさや独特の臭いが軽減されやすい点で好ましい。
カプセル皮膜を2種以上の皮膜用基材で構成する場合は、少なくとも1つの皮膜用基材が、甘味料を含むことが好ましい。
甘味料の種類は、用いる皮膜用基材と相溶性があって、カプセル皮膜の透明性および口腔内でのフレーバー感を損なわないものであればよく、特に制限されない。例えば、ショ糖;キシロースやキシリトールなどの低甘味度甘味料;サッカリンナトリウム、ステビオサイド、酵素処理ステビオサイト、アスパルテーム、カンゾウ抽出物、ソーマチン等の高甘味度甘味料;等を挙げることができる。
甘味料の皮膜用基材への配合割合は、特に制限されないが、ソフトカプセルを口に入れた際の呈味及び風味の良さの点から、甘味料を糖度の点からショ糖に換算した割合で、基材の主成分100質量%に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%の範囲がさらに好ましい。
【0022】
本実施形態においては、カプセル皮膜内が透明であるため、その中に充填される内容物も透明であることが好ましい。これによりソフトカプセル全体としての清澄性、透明性、クリア感、高級感、清涼感が得られる。
【0023】
本実施形態のソフトカプセルは、従来公知のソフトカプセルの製造法、例えば平板法またはロータリーダイ法に準じて調製することができる。
以下、カプセル皮膜が、香料含有量が互いに異なる2種の皮膜用基材で構成されたソフトカプセルの製造方法の例について説明する。
まず、基材の主成分、可塑剤、水、香料(基材の主成分100質量%に対して0〜0.5質量%)、及びその他の任意成分を配合して加熱溶融し、皮膜用基材(1)のカプセル皮膜液を調製する。これとは別に、基材の主成分、可塑剤、水、香料(基材の主成分100質量%に対して0.5〜40質量%)、及びその他の任意成分を配合して加熱溶融し、皮膜用基材(2)のカプセル皮膜液を調製する。なお、カプセル皮膜液の調製工程において脱泡を行い、これによってカプセル皮膜中に泡が残存しないようにすることが好ましい。
次いで、得られた2種のカプセル皮膜液をそれぞれ用いて、2種のカプセル皮膜用基材シート(基材シート(1)、基材シート(2))を作成する。基材シートの厚みとしては、光透過性、食感及び溶け易さ等の点から、0.2〜1.5mmが好ましく、0.4〜0.7mmがより好ましい。
これら2枚の皮膜用基材シートを、対向方向に回転する一対の円筒型カプセル形成用金型間に供給し、同時にそのシート間に内容物を封入しながら両シートを接着させて金型形状のカプセル部分を打ち抜く方法によって、ソフトカプセルが得られる。このようにして得られるソフトカプセルは、乾燥後、タンブラー等で磨きをかけて仕上げられる。
本例のソフトカプセルにおいて、カプセル皮膜を構成する皮膜用基材(1)と皮膜用基材(2)の割合は、例えば表面積比で1:1が好ましいが、これに制限されることなく任意に定めることができる。
【0024】
ソフトカプセルの形状は、特に制限されずオーバール(フットボール)型、オブロング(長楕円)型、及びラウンド(球状)型等の一般的な形状のほか、涙型、三角形などの変形(異形)型を採用することもできる。
ソフトカプセルの大きさも特に制限されないが、直径30mm以下であると服用しやすく、食感も好ましい。例えば直径1〜10mmの範囲が好ましい。
【0025】
本実施形態の口腔内殺菌用ソフトカプセルは、内容物が、口腔内細菌を殺菌する作用を有する。したがって、本発明の口腔内殺菌用ソフトカプセルを、唾液の存在下で口腔内に作用させることにより、例えば口腔内細菌によって惹起される歯周病、口臭症、又は誤嚥性肺炎等の各種の疾患の予防及び治療効果が得られる。すなわち、本発明の口腔内殺菌用ソフトカプセルは口臭除去用ソフトカプセル、歯周病予防用ソフトカプセルとしての効果も有する。
またソフトカプセルの内容物は、その有効成分が乳タンパク質、酵素、糖類、酸、及び塩類等の食品素材及び食品添加物に使用されるものであるので、ヒトに対する安全性が高い。
また、ソフトカプセルの形態であるため、日常的に経口摂取することができ、服用しやすく、良好な食感が得られ、外観の魅力に優れる。特に本実施形態の本実施形態のソフトカプセルは、カプセル皮膜が透明であるため審美性に優れる。
【0026】
[第2の実施形態]
本実施形態の口腔内殺菌用ソフトカプセルは、カプセル皮膜(以下、外側カプセル皮膜ということもある。)内の内容物中に、該外側カプセル皮膜よりも小さい小ソフトカプセルが少なくとも1つ収容された多重カプセル構造を有するものである。
小ソフトカプセルは、カプセル皮膜(以下、内側カプセル皮膜ということもある。)と、該内側カプセル皮膜内に収容された内容物(以下、内側カプセル内容物ということもある。)とを有するものが好ましい。小ソフトカプセルが内容物を有さずカプセル皮膜のみからなっていてもよい。
外側カプセル皮膜は、口腔内で溶解させるタイプのカプセル皮膜として公知の材料、またはカプセル皮膜を咀嚼して服用するタイプのカプセル皮膜として公知の材料を用いて形成することができる。外側カプセル皮膜は透明であってもよく、不透明であってもよい。また着色されていてもよい。例えば上記第1の実施形態におけるカプセル皮膜を用いることができる。
小ソフトカプセルは、そのカプセル皮膜(内側カプセル皮膜)を口腔内で溶解させて服用するものであってもよく、咀嚼して服用するものであってもよく、または外側カプセル皮膜を口腔内で溶解させた後に小ソフトカプセル飲み込んで服用するものであってもよい。小ソフトカプセルは特に限定されず、カプセル皮膜を口腔内で溶解させて服用するタイプの公知のソフトカプセル、カプセル皮膜を咀嚼して服用するタイプの公知のソフトカプセル、飲み込んで服用するタイプの公知のソフトカプセルを、用途等に応じて適宜用いることができる。
【0027】
小ソフトカプセルが飲み込んで服用されるものである場合、外側カプセル皮膜は小ソフトカプセルの皮膜(内側カプセル皮膜)よりも口腔内での溶解性が高く、内側カプセル皮膜が胃溶性または腸溶性を有することが好ましい。かかる内側カプセル皮膜は、胃溶性ソフトカプセルのカプセル皮膜として公知の材料、または腸溶性ソフトカプセルのカプセル皮膜として公知の材料を用いて形成することができる。
例えば、ゼラチン皮膜用基材で外側カプセル皮膜を形成し、該ゼラチン皮膜用基材に寒天および/またはアラビアゴムを添加した基材で内側カプセル皮膜を形成することにより、内側カプセル皮膜が、口腔内で外側カプセル皮膜よりも溶解しにくく、胃内で溶解するように構成することができる。または、該ゼラチン皮膜用基材にペクチンを添加した基材で内側カプセル皮膜を形成することにより、内側カプセル皮膜が、口腔内で外側カプセル皮膜よりも溶解しにくく、胃内でも溶解しにくく、腸内で溶解するように構成することができる。
【0028】
内側カプセル皮膜が胃溶性である場合、内側カプセル内容物としては、例えば胃内において消臭効果を有する物質を含む組成物が好ましい。これにより、外側カプセル内容液による口腔内の殺菌効果に加えて、摂食した食品が胃で消化された後、口腔内に戻ってくることによる口臭、いわゆる「戻り臭」を抑える効果が得られる。該内容物はさらに食用植物油脂を含むことが好ましい。食用植物油脂は安定性向上に寄与する。
胃内において消臭効果を有する物質の例としては、パセリシードオイル、レモンオイル、ペパーミントオイル、コーヒー抽出物、ゴボウ抽出物、ローズオイル、緑茶ポリフェノール、ウーロン茶ポリフェノール、アップルポリフェノール、柿ポリフェノールなどの各種ポリフェノール、ヨモギ焙煎抽出物、ジンジャーエキス、ハッカ、タイム、ショウキョウ、アマチャ、チョウジなどの各種ハーブ等が挙げられる。
食用植物油脂としては、例えば、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ゴマ油、ナタネ油、グレープ種子油、およびこれらの混合物が挙げられる。
上記胃内において消臭効果を有する物質の配合量は、内側カプセル内容物100質量%に対し、1〜100質量%、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%である。1質量%より少ないと悪臭の消臭効果が充分に得られない可能性がある。
また上記胃内において消臭効果を有する物質に加えて、例えば、シャンピニオンエキス、ルイボスおよびファルネソールから選択される薬剤を更に含有してもよい。
該薬剤の配合量は、内側カプセル内容物100質量%に対し、0.01〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%である。上記薬剤が0.01質量%より少ないと配合したことによる効果が十分に得られない可能性がある。
【0029】
内側カプセル皮膜が腸溶性である場合、内側カプセル内容物としては、例えば腸内において消臭効果を有する物質が好ましい。これにより、外側カプセル内容液である口腔内殺菌用組成物による口腔内の殺菌効果に加えて、腸管から血液に吸収された腐敗臭(インドール、メルカプタン類、スカトール、アンモニア)が、肺の呼気として出てくる臭いによる口臭を抑える効果が得られる。さらに上記と同様の食用植物油脂を含むことが好ましい。
腸内において消臭効果を有する物質の例としては、パセリシードオイル、シャンピニオンエキス、レモンオイル、ペパーミントオイル、コーヒー抽出物、ゴボウ抽出物、ローズオイル、ラクトフェリン、緑茶ポリフェノール、ウーロン茶ポリフェノール、アップルポリフェノール、柿ポリフェノールなどの各種ポリフェノール、ヨモギ焙煎抽出物、ジンジャーエキス、ハッカ、タイム、ショウキョウ、アマチャ、チョウジなどの各種ハーブ等およびそれらの混合物が挙げられる。
上記腸内において消臭効果を有する物質の配合量は、内側カプセル内容物100質量%に対し、1〜100質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜40質量%である。1質量%より少ないと悪臭の消臭効果が弱くなる可能性がある。
【0030】
本実施形態の多重ソフトカプセルの製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。
例えば、内側カプセル皮膜用基材シートを形成し、これを用いてロータリー式充填機で、内側カプセル内容物を封入することにより小ソフトカプセルを形成し、次いで、外側カプセル皮膜用基材シートを形成し、これを用いてロータリー式充填機で、上記で製造した小ソフトカプセルと口腔内殺菌用組成物を同時に封入することにより、継ぎ目を有するソフトカプセルを製造できる。
または同芯多重ノズルを用いることにより、シームレスのソフトカプセルを製造することができる。例えば特開昭59−131355号公報に開示されている、同芯多重ノズル、特に同芯四重ノズルを用いる方法を好適に用いることができる。
【0031】
本実施形態において、外側カプセル皮膜の外径は特に限定されないが、30mm以下が服用しやすい。例えば2.0〜20mm、好ましくは3.0〜10mmであり、小ソフトカプセルの外径は、例えば0.5〜18mm、好ましくは1.0〜9mmである。
【実施例】
【0032】
[調製例1]
エリスリトール(日研化学社製)150g、アセロラ香料(高砂香料工業社製)7.5g、クエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)25.8g、クエン酸三ナトリウム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)52.1g、キシリトール(東和化成社製)180.1g、グルコース(日本食品化工社製)45g、ラクトパーオキシダーゼ(バイオポール社製)0.5g、グルコースオキシダーゼ(新日本化学工業社製)4gの各粉末を、ヤシ油1035gに添加して、均一に混合し口腔内殺菌用組成物を調製する。
【実施例1】
【0033】
混合容器内で、水100質量部と濃グリセリン40質量部を混合し、約5℃で1時間程度静置する。これにゼラチン100質量部を加えて撹拌し、60℃の湯浴に3〜5時間浸漬し、溶融する。これに色素0.015質量部および甘味料(蔗糖)0.5質量部を入れて撹拌し、軽く蓋をして、さらに3時間、上記湯浴にて浸漬して脱泡し、カプセル皮膜液を調製する。
このカプセル皮膜液を厚さが0.5〜0.6mmになるように均一に押し広げ、温度22℃、湿度20%の環境下にて約12時間乾燥してカプセル皮膜用基材シート(基材シート(1))を作製する。
上記カプセル皮膜液の調製工程において、色素および甘味料を添加する際に、さらに香料0.5質量部を加える他は同様にしてカプセル皮膜液調製し、これを用いてカプセル皮膜用基材シート(基材シート(2))を作製する。
ロータリーダイ式ソフトカプセル製造機を用い、この2枚の基材シート(1)(2)の間に、調製例1で得られる口腔内殺菌用組成物(内容物)を圧入するとともに、両基材シートを接着させて、短径6mm、長径8mmのオーバール型のソフトカプセルを製造する。カプセル皮膜を形成する基材シート(1)と(2)の表面積の比は1:1である。
【0034】
[調製例2]
ヤシ油60.0質量部に、レモンオイル2.5部、パセリシードオイル6.0質量部を添加して、均一に混合して内側カプセル内容物Aを調製する。
[調製例3]
ヤシ油6.0質量部に、シャンピニオンエキス1.0部、パセリシードオイル3.0質量部を添加して、均一に混合して内側カプセル内容物Bを調製する。
【実施例2】
【0035】
水10質量部に、ゼラチン12質量部およびソルビトール3質量部を加えて撹拌し、60℃に加温して溶融し、脱泡して、外側カプセル皮膜液を調製する。
水5質量部に、ゼラチン4質量部、ソルビトール1質量部、ペクチン1質量部、色素0.5質量部を加えて撹拌し、60℃に加温して溶融し、脱泡して、内側カプセル皮膜液を調製する。
上記外側ソフトカプセル皮膜液、調製例1で得られる口腔内殺菌用組成物(外側カプセル内容物)、上記内側ソフトカプセル皮膜液、および調製例2で得られる内側カプセル内容物Aを、シームレスカプセル製造機内の同心四重ノズルの各ノズルから同時に押し出し、冷却液中に放出した後、乾燥させて、外側カプセル皮膜内の口腔内殺菌用組成物中に、小ソフトカプセルが1個収容されたソフトカプセルを得る。
【実施例3】
【0036】
実施例2において、調製例2で得られる内側カプセル内容物Aに代えて、調製例3で得られる内側カプセル内容物Bを用いる他は同様にして、外側カプセル皮膜内の口腔内殺菌用組成物中に、小ソフトカプセルが1個収容されたソフトカプセルを得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル皮膜と、該カプセル皮膜内に収容された内容物とを有するソフトカプセルであって、
前記内容物が口腔内殺菌用効果を有するラクトパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、及びpH調節成分を含有する、口腔内殺菌用ソフトカプセル。
【請求項2】
前記カプセル皮膜が、香料含量の異なる少なくとも2種の皮膜用基材から構成されている透明のカプセル皮膜である、請求項1に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
【請求項3】
前記皮膜用基材がゼラチン基材である、請求項2に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
【請求項4】
前記カプセル皮膜内の前記内容物中に、該カプセル皮膜よりも小さい小ソフトカプセルが少なくとも1つ収容された多重カプセル構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
【請求項5】
前記カプセル皮膜は前記小ソフトカプセルの皮膜よりも口腔内での溶解性が高く、前記小ソフトカプセルの皮膜が胃溶性または腸溶性を有する、請求項4記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。
【請求項6】
口臭除去用である請求項1〜5のいずれか一項に記載の口腔内殺菌用ソフトカプセル。

【公開番号】特開2013−95750(P2013−95750A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255516(P2011−255516)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(511284580)
【Fターム(参考)】