説明

口腔及び経肺投与用ミセル薬学的組成物

【課題】混合ミセル形態の高分子薬剤を含む薬学的組成物の提供。
【解決手段】混合ミセルは、アルカリ金属アルキルサルフェートと、ヒアルロン酸ナトリウム、モノオレイン及び飽和リン脂質等の少なくとも3種類の異なるミセル形成化合物から形成される。ミセルのサイズは、約1−10ナノメータの範囲。組成物を製造及び使用する方法。組成物を投与する方法は、口腔領域を通じて行なうのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミセル形態の高分子薬剤を含む改良された薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、特に、口腔及び経肺による投与に有効である。本発明はまた、これらの薬学的組成物の調製及び使用方法に関する。高分子薬剤の吸収速度を高める方法についても開示する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドや蛋白質などの高分子に関して、安全で効果的な経口調製物を得るという目標については、ここ何年もの間、相対的な進歩はほとんどないといってよい。蛋白質及びペプチドの経口調製物を発展させる上で大きな障壁となっているものに、固有浸透性(intrinsic permeability)の不足、ルーメン及び細胞の酵素分解、クリアランスの速さ及び、胃腸(gastrointestinal: GI)管での化学的不安定性などがある。これらの障壁に取り組むための薬学的アプローチは、従来の低分子量の有機薬剤に対しては成功しているが、ペプチドや蛋白質の調製物では成功していない。
【0003】
蛋白質やペプチドについては、注射以外の様々な投与ルートが研究されているが、殆んど又は全く成功していない。投与ルートは、経口と鼻孔について大いに関心がもたれている。分子が口粘膜を透過する能力は、分子量、脂質溶解度及びペプチド蛋白質のイオン化と関係があると考えられる。1000ダルトンより小さい分子は、口粘膜を速やかに通過すると考えられる。分子量が増すにつれて、分子の透過性は急激に低下する。脂質溶解性化合物は、非脂質溶解性分子よりも多く浸透する。吸収が最大となるのは、イオン化されていないか、電荷がニュートラルのときである。それゆえ、荷電分子の最大の課題は、口粘膜を通じて吸収させることにある。
【0004】
蛋白質薬剤分子の多くは、分子量が6000ダルトンを越える極めて大きな分子である。これら分子は、高分子であることに加え、脂質溶解性が大変乏しく、事実上、不浸透性であることもしばしばである。高分子(例えば、>1000ダルトン)の生体膜への吸収又は運搬を容易にする物質は、当該分野において、エンハンサー(enhancers)又は吸収助剤(absorption aids)と称される。これらの化合物として、一般的には、キレート化剤、胆汁酸塩、脂肪酸、合成親水性化合物、合成疎水性化合物、及び生物分解性の重合体化合物などが挙げられる。エンハンサーの多くは、刺激(irritation)に関して満足し得る安全プロファイルの欠如、バリヤー機能の低下、粘膜毛様体クリアランス保護メカニズムの欠陥などの問題がある。
【0005】
エンハンサーの中でも特に胆汁酸塩や、また蛋白質溶解剤には、極端に苦く不快な味をもたらすものがある。このため、人間が毎日それらを摂取することは殆ど不可能である。胆汁酸塩ベースの送達システムに関して味を改良するために、口腔粘膜用パッチ、二層タブレット、放出制御されたタブレット、プロテアーゼ阻害剤が用いられたり、種々のポリマーマトリックスが用いられている。
しかしながら、これまでの技術では、所望される治療濃度の蛋白質含有薬剤を送達することはできなかった。さらにまた、フィルムパッチは、口内にかなりの組織損傷を生じることがあった。その他に、1種類の胆汁酸又はエンハンサーを、プロテアーゼ阻害剤及び生体分解性ポリマー物質と組み合わせて使用し、高分子を口、鼻、直腸及び膣のルートを経て送達しようとするものもあったが、同じように、蛋白質含有薬剤を患者の治療レベルに到達させることはできなかった。1種類のエンハンサーでは、粘膜を通過するのに必要な時間内で、高分子がさらなる分解を起こすことなく、口、鼻、直腸及び膣などの腔内で強固な細胞結合を分離させることはできない。これらの問題があるため、上記システムの商業的目的での使用を不可能にしている。
それゆえ、治療用調製物、特に口腔投与及び経肺投与として有用な高分子を含む治療用調製物の改良が依然として要請されている。また、このような調製物の製造及び使用する方法もまた要請されている。
【発明の概要】
【0006】
上記要請に応えるために、本発明は、改良された薬学的組成物を提供するもので、該組成物は、適当な溶媒の中に、高分子薬剤、アルカリ金属アルキルサルフェート及び少なくとも3種類のミセル形成化合物を含んでいる。
薬剤は、1又は2種以上の蛋白質、ペプチド、ホルモン、ワクチン又は薬物(drug)であってよい。高分子薬剤の分子量は、約1000−2000000ダルトンの範囲が望ましい。薬剤は混合ミセル形態で存在し、ミセルのサイズは約1−10ナノメータ(nm)である。この明細書で用いられる「混合ミセル(mixed micelles)」は、各々が異なるミセル形成化合物を用いて形成された異なる2種類以上のミセルを意味する。例えば、本発明の組成物は、4種類以上の異なるミセル、つまり、薬剤とアルカリ金属アルキルサルフェートとの間で形成されたミセル、薬剤と本明細書に記載した3種類以上の異なる追加のミセル形成化合物との間で形成されたミセルの混合物を含んでいる。
個々のミセルもまた、2種類以上のミセル形成化合物から作られることは理解されるであろう。本発明の混合ミセルは、口腔又はGI管の中の膜の孔よりも小さい傾向がある。それゆえ、本発明の混合ミセルのサイズは極端に小さいため、被包された(encapsulated)高分子が口粘膜を通して効率良く浸透するのを補助する役割を果たすと考えられる。それゆえ本発明の組成物は、当該分野で既知の薬学的調製物と比べて、特に口粘膜を通る活性薬剤の生物学的利用能を高めることができる。
【0007】
本発明はまた、高分子薬剤の吸収速度を高める方法に関し、該方法は、高分子薬剤を含む組成物を、アルカリ金属アルキルサルフェート及び3種類以上のミセル形成化合物と共に投与することを含んでいる。この方法は、組成物が口腔領域に投与されるときに特に効果的である。
本発明の薬学的組成物を製造及び使用する方法もまた、本発明の範囲内である。
【0008】
それゆえ、本発明の目的は、高分子薬剤と複数のミセル形成化合物を含む薬学的組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、高分子薬剤がミセル形態の薬学的組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、高分子薬剤を、特に患者の口腔及び肺の領域へ投与する方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、高分子薬剤とミセル形成化合物を含む薬学的組成物を製造する方法を提供することである。
本発明のこれらの目的及び他の目的については、以下の説明及び請求の範囲の記載から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、有効量の高分子薬剤と、アルカリ金属アルキルサルフェートと、3種類以上のミセル形成化合物と、適当な溶媒とを含む薬学的組成物に関するもので、前記ミセル化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、それらの薬学的に許容される塩、それらのアナローグ、及びその混合物又は組合せからなる群から選択される。
アルカリ金属アルキルサルフェートの濃度は、組成物全体の0.1−20wt./wt.%であり、各ミセル形成化合物の濃度は、組成物全体の0.1−20wt./wt.%であり、アルカリ金属アルキルサルフェートとミセル形成化合物の合計濃度は、組成物全体の50wt./wt.%よりも少ない。
【0011】
この明細書で用いられる「高分子(macromolecular)」という語は、分子量が約1000ダルトンよりも大きい薬剤を意味する。本発明の高分子薬剤の分子量は2000−2000000ダルトンが望ましいが、さらに大きな分子量であってもよい。
【0012】
この明細書で用いられる「薬剤(pharmaceutical agent)」という語は、広範囲に亘る物質を含むものであり、人間及び人間以外の動物に用いられる物質で、治療及び研究用のもが挙げられるが、これに限定されるものではない。この語には、蛋白質、ペプチド、ホルモン、ワクチン、ドラッグが含まれる。
【0013】
望ましい薬剤として、インシュリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン(分子量が約5000よりも少ない)、ヒルログ、ヒルゲン、フリジン、インターフェロン、サイトカイン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、イムノグロビン、化学治療剤、ワクチン、糖蛋白、細菌トキソイド、ホルモン、カルシトニン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、高分子抗生物質(例えば、約1000ダルトンよりも多い)、蛋白質基の血栓溶解化合物、血小板阻害剤、DNA、RNA、遺伝子治療剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オピオイド、麻酔薬、鎮痛薬(narcotics)、ステロイド及び鎮痛剤(pain killers)を挙げることができる。
【0014】
本発明の組成物に含まれるホルモンとして、チロイド、アンドロゲン、エストロゲン、プロスタグランジン、ソマトトロピン、ゴナドトロピン、エリトロポエチン、インターフェロン、ステロイド及びサイトカインを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。サイトカインは、小蛋白質で、局部的に作用するホルモンとしての特性を有しており、限定するものではないが、種々の形態のインターロイキン(IL)及び成長因子を挙げることができる。成長因子には、形質転換成長因子(TGP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)及びインシュリン様成長因子(IGF)などの様々な形態を挙げることができる。本発明にかかる組成物に用いられるワクチンには、細菌性ワクチン及びウイルス性ワクチンがあり、例えば、肝炎、インフルエンザ、結核、カナリア痘、水疱瘡、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、肺炎、BCG、HIV及びAIDSに対するワクチンがある。細菌トキソイドには、ジフテリア、破傷風、シュードモナス(pseudonomas sp.)及びミコバクテリウム結核(Mycobacterium tuberculosis)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。薬物(drug)、より具体的には、血管作動剤又は血栓溶解剤の例として、ヘパリン、ヒルゲン、ヒルロス(hirulos)及びヒルジンを挙げることができる。本発明に含まれる高分子薬剤として、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び免疫グロビンがある。なお、この記載は全てを網羅しているわけでないことは理解されるべきである。
【0015】
本発明にかかる望ましい高分子薬剤はインシュリンである。この明細書で用いられる「インシュリン」は、天然抽出されたヒトインシュリン、又は、ウシ、ブタその他の哺乳類から抽出したインシュリン、ヒト、ウシ、ブタその他の哺乳類から組換え作製されたインシュリン、インシュリンのアナローグ、インシュリンの誘導体、これらインシュリン製品の混合物を含むものである。この「インシュリン」という語は、インシュリンポリペプチドを含んでおり、該インシュリンポリペプチドは、ほぼ精製されたものであってもよいし、追加の賦形剤が加えられた市販のものでもよい。様々な形態のインシュリンは商業的に広く入手可能である。
「インシュリンのアナローグ」は、前記のインシュリンにおいて、ポリペプチド鎖内の1又は2種以上のアミノ酸が代替アミノ酸と置換されたもの、1又は2種以上のアミノ酸が削除されたもの、1又は2種以上のアミノ酸が追加されたものを含むものである。「インシュリンの誘導体」は、少なくとも1種の有機置換基がインシュリン鎖の1又は2種以上のアミノ酸に結合されたインシュリン又はそのアナローグを意味する。
【0016】
高分子薬剤は、本発明の薬学的組成物の中ではミセル形態で存在する。当該分野の専門家であれば理解されるように、ミセルは、分子の有極親水性部分が外向きに延び、分子の非極親水性部分が内向きに延びる両親媒性分子のコロイド凝集体である。以下で説明するように、本発明の調製物を得るために、ミセル形成化合物の様々な組合せが用いられる。ミセルはすぐれた吸収能力を有し、またサイズが小さいことから、その存在は、高分子薬剤の吸収を著しく向上させる。さらにまた、薬剤をミセルの中に被包すると、薬剤は、GI環境での急速な劣化から保護される。
【0017】
ミセルの粒子サイズは、典型的には、1−10ナノメータの範囲であり、1−5ナノメータの範囲のものが多い。ミセルの形状は、様々で、例えば長細い形状、楕円球、球状などがあるが、球状ミセルがもっとも一般的である。
【0018】
本発明の組成物には、有効量の高分子薬剤が含まれるべきである。この明細書で用いられる「有効量(effective amount)」という語は、例えば、患者の疾患の治療又は予防を予定とおり達成し、患者の生理学的状態を調節するといった所望の結果をもたらすのに必要な薬剤の量を意味する。それゆえ、この量は、患者に治療及び/又は予防効果を有するものと理解されるであろう。この明細書で用いられる「患者(patient)」は、動物界の動物を意味し、人間に限定されるわけではない。なお、有効量は、用いられる薬剤、薬剤について決められるパラメータ、治療される疾患の性質及び程度、治療される患者、及び投与ルートに応じて異なる。有効量の決定は、当該分野の専門家の能力範囲内で行われる。典型的には、本発明の調製物に含まれる薬剤の濃度は、組成物全体の0.1−20wt./wt.%であり、1−10wt./wt.%が望ましい。
【0019】
適合性(compatibility)の問題が起こらない限り、どんなアルカリ金属アルキルサルフェート(alkali metal alkyl sulgate)であっても、本発明の組成物に用いることができる。アルキルは、C8−C22アルキルが望ましく、ラウリル(C12)がより望ましい。どのアルカリ金属を用いてもよいが、ナトリウムが望ましい。アルカリ金属アルキルサルフェートの濃度は、一般的には組成物全体の0.1−20wt./wt.%であるが、約5wt./wt.%よりも少ない濃度が望ましい。
【0020】
本発明の組成物は、3種類以上のミセル形成化合物をさらに含んでおり、該ミセル形成化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート及びデオキシコレートからなる群から選択される。これらのうちのどの化合物についても、その薬学的に許容される塩及びアナローグもまた、これら化合物の混合物又は組合せとして本発明の範囲内である。3種類以上の前記ミセル形成化合物の各々は、組成物全体の約0.1−20wt./wt.%の濃度で存在する。より望ましくは、これらミセル形成化合物の各々の濃度は組成物全体の約5wt./wt.%よりも少ない濃度で存在する。本発明の高分子薬剤、特にインシュリンを送達する場合、ミセル形成化合物を3種類以上用いると、蓄積効果がもたらされる。このため、使用するミセル形成化合物が1種又は2種の場合と比べて、送達可能な薬剤の量は著しく増加する。また、ミセル形成化合物を3種類以上用いると、薬剤組成物の安定性も向上する。
【0021】
アルカリ金属アルキルサルフェートはミセル形成化合物として機能し、前記の3種類以上のその他ミセル形成化合物に加えて、組成物へ加えられる。アルカリ金属アルキルサルフェートと、3種類以上の追加のミセル形成化合物の合計濃度は、組成物の50wt./wt.%よりも少ない。
【0022】
ミセル形成化合物の幾つかは、一般的に、脂肪酸、胆汁酸又はそれらの塩として記載される。使用に最も良いミセル形成化合物は、用いられる薬剤によって異なるが、当該分野の専門家であれば容易に決定できることである。一般的に、胆汁塩は、親水性薬剤との使用に特に適しており、脂肪酸塩は疎水性薬剤との使用に特に適している。本発明で用いる胆汁酸塩は比較的低濃度であるため、これら塩の使用に関連する毒性の問題は、たとえ避けられないまでも、最少にすることができる。
【0023】
レシチンは、飽和又は不飽和のどちらでもよく、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、セファリン及びリゾレシチンからなる群から選択されることが望ましい。
【0024】
ヒアルロン酸の望ましい塩は、アルカリ金属のヒアルロン酸塩であり、特に、ヒアルロン酸ナトリウム、アルカリ土類のヒアルロン酸塩、ヒアルロン酸アルミニウムが望ましい。本発明の組成物にヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩を用いるとき、濃度は、組成物全体の約0.1−約5wt./wt.%が望ましく、約3.5wt./wt.%より少なくのがより望ましい。
【0025】
特に適したミセル形成化合物の組合せとして、(i)ヒアルロン酸ナトリウム、モノオレイン及び飽和リン脂質、(ii)飽和リン脂質、モノオレイン及びグリコール酸、(iii)ヒアルロン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエーテル及びレシチン、(iv)ポリオキシエチレンエーテル、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン及びレシチン、(v)ポリドカノール9ラウリルエーテル、ポリリジン及びトリオレイン、(vi)飽和リン脂質、ポリオキシエチレンエーテル及びグリコール酸、(vii)トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、レシチン及びケノデオキシコレート(viii)トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、デオキシコレート及びグリシン、(ix)ポリドカノール10ラウリルエーテル、ナトリウムオキソコラニルグリシン及びレシチン、(x)ポリドカノール10ラウリルエーテル、ホスファチジルコリン及びオレイン酸、(xi)ポリドカノール10ラウリルエーテル、ヒアルロン酸ナトリウム及びレシチン、(xii)ポリドカノール20ラウリルエーテル、マツヨイグサ油及びレシチン、を挙げることができる。
【0026】
本発明の組成物の前記成分は、適当な溶媒の中に入れられる。この明細書で用いられる「適当な溶媒(suitable solvent)」は、本発明の成分を安定化させることができ、適合性の問題を起こすことなく、患者に投与することができる溶媒を意味する。溶媒は、水性又は非水性のどちらでも用いることができる。特に望ましい溶媒は水である。その他の適当な溶媒として、アルコール溶液、特にエタノールを挙げることができる。アルコールは、本発明の成分が析出しない濃度で用いられるべきである。なお、組成物中の成分全ての合計が100wt./wt.%となるように、十分な量の溶媒、つまり十分に足りるだけの量(q.s.)の溶媒が加えられるべきである。ミセル形成化合物の添加前に薬剤を可溶にするために、典型的には、溶媒の一部分が最初に用いられることになるであろう。
【0027】
本発明は、安定剤及び/又は防腐剤を選択的に含んでいる。フェノール化合物は、組成物を安定化させるだけでなく、細菌増殖から保護し、組成物の吸収を促進する作用を有するから、この目的のために特に適している。フェノール化合物は、1又は2以上のヒドロキシ基がベンゼン環に直接結合した化合物を意味するものと理解されるであろう。本発明に係る望ましいフェノール化合物として、フェノール、メチルフェノール(m−クレゾールとも称される)及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0028】
本発明の組成物は、無機塩、酸化防止剤、プロテアーゼ阻害剤及び等張剤のうちの1種又は2種以上をさらに含むことができる。これらのどの選択的成分についても、本発明の組成物に用いる量は、当該分野の専門家であれば適宜決めることはできるであろう。当該分野の専門家であれば、着色剤、着香剤、及びその他の化合物でも治療的作用をもたらさない量であれば、調製物の中に含まれてもよいことは理解し得るであろう。代表的な着香剤として、メントール、ソルビトール及びフルーツ着香剤がある。従って、メントールをミセル形成化合物の1つとして用いるとき、メントールは、組成物に香りをもたらすことにもなる。
【0029】
例えば、インシュリンを含む組成物は、少なくとも一種の無機塩を含んでもよい。無機塩は、胃腸管のチャネルを開く作用を有しており、インシュリンを放出するための追加の刺激を与えることもできる。無機塩の例として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及び亜鉛塩などを挙げることができ、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛及び炭酸水素ナトリウムなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
当該分野の専門家であれば、多くの薬学的組成物について、薬学的活性成分の分解と酸化を防止するために、少なくとも一種の酸化防止剤を加えてもよいことは理解されるであろう。酸化防止剤は、トコフェロール、デターオキシムメシレート(deteroxime mesylate)、メチルパラベン、エチルパラベン、アスコルビン酸及びそれらの混合物からなる群から選択することができるが、その他にも薬学分野で既知の酸化防止剤であってよい。望ましい酸化防止剤はトコフェロールである。パラベンは、組成物の防腐効果も有する。
【0031】
プロテアーゼ阻害剤は、蛋白質分解酵素の作用により薬剤の分解抑制に寄与する。プロテアーゼ阻害剤を用いる場合、組成物の約0.1−3wt./wr.%の濃度が望ましい。蛋白質分解作用を有する物質であれば、適合性の問題がない限り、どんな物質を用いることもできる。プロテアーゼ阻害剤の例として、バシトラシン、バシトラシンメチレンジサリシレートなどのバシトラシン誘導体、大豆トリプシン、アプロチニンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。バシトラシン及びその誘導体は、組成物全体の1.5−2wt./wt.%の濃度で用いるのが望ましい。大豆トリプシンとアプロチニンの場合、組成物全体の約1−2wt./wt.%濃度で用いるのが望ましい。
【0032】
混合ミセル組成物の調製後、グリセリン又は第二リン酸ナトリウムの如き等張剤を加えることもできる。等張剤は、溶液中のミセルを保持する作用を有する。グリセリンがミセル形成化合物の1つとして用いられる場合、そのグリセリンは等張剤としても作用する。第二リン酸ナトリウムが用いられる場合、細菌の成長阻害作用も有する。
【0033】
本発明の薬学的組成物のpHは、一般的には5−8の範囲であり、6−7が望ましい。組成物を所定のpHに調節するのに、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いることができる。
【0034】
本発明の組成物は室温又は低温で保存することができる。蛋白質性薬物は、薬物の劣化を防止し、貯蔵寿命を延ばすために、低温で保存することが望ましい。
【0035】
それゆえ、本発明は、ミセル形成剤との組合せによって形成された混合ミセルの中に高分子薬剤が封じ込められた薬学的組成物を提供することである。組成物は、口腔又は肺を経て送達されるが、口腔を経た送達が望ましい。口と鼻の粘膜を経て投与された薬物は迅速に吸収され、迅速に作用を開始して、治療血漿レベルに達するので、肝臓での代謝の初回通過効果(first pass effect)が回避され、胃腸管の不適環境にさらされないという送達効果がもたらされる。追加の利点として、膜部位へのアクセスが容易となるので、薬物の適用、特定場所への集中化、除去を容易に行なうことができる。
【0036】
投与形態は経口ルートが特に有利である。舌下粘膜は、舌の腹面の膜と口の床部を含んでおり、頬粘膜(buccal mucosa)は頬の内層である。舌下粘膜と頬粘膜は、適度に浸透性を有するから、多くの薬物について、迅速な吸収が可能であり、生物学的利用能にすぐれている。さらにまた、舌下粘膜と頬粘膜は、都合が良く、非回避的(non-evasive)であり、利用し易い。胃腸管やその他の器官と比べ、口腔内環境は、酵素活性が低くpHは中性であるので、薬物のインビボでの有効時間を長くすることができる。なお、この明細書では、舌下粘膜及び頬粘膜を総称して、「口粘膜(oral mucosae)」として記載する。
【0037】
本発明の混合ミセル調製物の浸透及び吸収を改善するには、本発明の組成物を噴射剤(propellant)と共に投与することによって達成することができる。噴射剤として、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロエタン、ジメチルフルオロプロパン、テトラフルオロプロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル並びにその他の非CFC噴射剤及びCFC噴射剤を挙げることができる。薬剤と噴射剤の比は、5:95乃至25:75であることが望ましい。望ましい噴射剤は、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテル及びジエチルエーテルである。より望ましい噴射剤は、HFA−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)である。
【0038】
本発明の組成物は、計量付き吸入器(metered dose inhaler)又はスプレー装置により送達されることが望ましい。計量付き吸入器は知られており、薬剤の肺への送達形態として普及している。計量付き吸入器を用いる1つの利点は、用法毎に正確な薬剤量を送達できることであり、もう一つの利点は、装置自らが収容されているので汚染可能性が可及的に少なくなることである。
【0039】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物を製造する方法を提供するものである。本発明の組成物は、高分子薬剤の溶液、アルカリ金属アルキルサルフェート、3種類以上のミセル形成化合物、または所望により安定剤及びその他の添加剤を混合することによって調製することができる。薬剤を加える量は、目的に合った有効量とすべきである。ミセル形成化合物は、同時に加えてもよいし、順次加えてもよい。混合ミセルは、ほぼどんな種類の成分混合方法でも形成されるが、約10ナノメータ以下のサイズを得るには、激しく撹拌を行なうことが望ましい。薬剤、溶媒、アルカリ金属アルキルサルフェート、ミセル形成化合物及び前述した選択的添加剤は全て、本発明の方法の使用に適している。
【0040】
一方法として、第1ミセル組成物は、薬学的活性剤を含む溶液を、少なくともアルカリ金属アルキルサルフェートと混合することにより調製される。第1ミセル組成物は次に、3種類以上の追加のミセル形成化合物と混合され、混合ミセル組成物を形成する。他の方法として第1ミセル組成物の調製は、薬学的活性剤、アルカリ金属アルキルサルフェート及び少なくとも1種の追加のミセル形成化合物を含む溶液を混合することによって行ない、該組成物に、残りのミセル形成化合物を加え、激しく撹拌する。なお、アルカリ金属アルキルサルフェートと3種類以上のミセル形成化合物の全てを一度に薬剤溶液へ加えるべきでない。
【0041】
調製物を安定化させ、細菌成長から保護するために、安定剤を混合ミセル組成物に添加することができる。安定剤は、フェノール及び/又はm−クレゾールが望ましい。或いはまた、いづれかのミセル形成成分と同時に、安定剤を加えることもできる。混合ミセル組成物の形成後、等張剤を加えることもできる。同様に、この時、前述した他の選択的添加剤を加えることもできる。エアロゾルによる投与形態が所望される場合、調製物は次に、エアロゾルディスペンサーに入れて、ディスペンサーに噴射剤を充填する。噴射剤は、圧力状態にあるとき、ディスペンサーの中では液状である。本発明の組成物がディスペンサーの中にあるとき、液相は、噴射剤相と分離していてもよい。しかしながら、液相と噴射剤相が1つ、つまり一相となるように、成分の比率を簡単な実験により調節することが望ましい。2相である場合、例えば計量弁を通じて内容物の一部を分配する前に、ディスペンサーを振る必要がある。計量弁を通じて、所定量の薬剤が微細なスプレーの状態で送り込まれる。
【0042】
本発明の具体的一実施例は、薬学的組成物を作る方法を提供するものであって、(a) 適当な溶媒の中で、高分子薬剤をアルカリ金属アルキルサルフェートと混合し、該混合物に少なくとも3種類のミセル形成化合物を添加して、混合ミセル高分子薬学的組成物を生成することを含んでおり、前記ミセル形成化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、それらの薬学的に許容される塩、それらのアナローグ、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択される。
【0043】
アルカリ金属アルキルサルフェートを含むミセル形成化合物の各々は、濃度が組成物全体の0.1−20wt./wt.%であり、その合計濃度は、組成物全体の50wt./wt.%よりも少ない。
【0044】
前記方法は、安定剤を添加するステップをさらに含むことができる。安定剤として、フェノール、m−クレゾール及びそれらの混合物からなる群から選択されるフェノール化合物が挙げられる。安定剤の添加は、アルカリ金属アルキルサルフェートの添加前、添加中又は添加後のいづれでもよいし、ミセル形成化合物の添加前、添加中、添加後のいづれでもよい。
前記方法は、組成物をエアゾールディスペンサーに入れ、ディスペンサーに噴射剤を充填するステップをさらに含むことができる。
【0045】
本発明の他の実施例において、本発明の方法は、(a) 適当な溶媒の中で、高分子薬剤を、アルカリ金属アルキルサルフェート及び少なくとも1種類のミセル形成化合物と混合して、第1の混合ミセル高分子薬学的組成物を生成することを含んでおり、前記ミセル形成化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、それらの薬学的に許容される塩、それらのアナローグ、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択され、(b) ステップ(a)で加えたものと同じ群から選択されるが、ステップ(a)で加えたものとは異なる少なくとも2種類のミセル形成化合物を第1組成物に加えることを含んでいる。
【0046】
また、ステップ(a)の際、或いはステップ(a)の後で、前述した安定剤を組成物に加えることもできる。混合は、激しくてもそうでなくてもよい。激しい混合は、例えば、磁気攪拌機又はプロペラ攪拌機などの高速攪拌機や、ソニケータによって行なうことができる。混合は激しく行なうのが望ましい。
【0047】
本発明はまた、本発明の組成物及び噴射剤が入れられた計量付きエアロゾルディスペンサーを提供するもので、該ディスペンサーの中で、高分子薬剤及び噴射剤を含む溶液は単相である。
【0048】
本発明はまた、計量付きスプレー装置を用いて、内部で混合された組成物を口の中へスプレーすることにより、本発明の薬学的組成物を投与する方法を提供するものである。投与は、吸入器なしで口腔内へスプレーすることにより行なう。本発明の薬学的組成物と噴射剤を口腔内へスプレーする前に、ディスペンサーを揺することが必要な場合があり、またそうすることが望ましい。本発明のインシュリン含有組成物を経口投与したときの血漿値(plasma level)と血糖値(blood glucose level)は、インシュリンを注入したときに達成されるレベルと同等である。本発明の方法は、無痛及び無針治療であること、また使い勝手が良いことなど、注射の場合と比べて、生活の質を著しく改善することができる。
【0049】
口腔を通じて投与されるインシュリンの場合、第1ミセル溶液の調製は、まず水その他の溶媒を、次に塩酸(典型的には5M)を粉末インシュリンに加え、粉末が溶解し、透明な溶液が得られるまで撹拌することにより行なう。次に、溶液を水酸化ナトリウムで中和する。中和した溶液に、アルキル硫酸ナトリウムを、単独で、又は少なくとも一種のミセル形成化合物と共に加え、低速で撹拌する。アルキル硫酸ナトリウムとしてのラウリル硫酸ナトリウムは、水溶液の一般的な濃度は、溶液の約5wt./wt.%よりも少ない。典型的には、ミセル溶液中に存在するインシュリンは、最終組成物の約0.1−20wt./wt.%の濃度である。
【0050】
このようにして作製された溶液を、ソニケータ又は高速撹拌によって激しく混合することにより、ミセル溶液が生成される。前述したように、その他のミセル形成化合物を加えることもできる。組成物の中でミセルの均一な粒子サイズを確実に得るには、混合は、高速ミキサー又はソニケータによって行なえばよい。
【0051】
望ましい実施例では、本発明のミセル薬学的組成物を調製した後、フェノール及び/又はm−クレゾールを添加する。前述したように、他の成分、例えば等張剤、酸化防止剤、塩、プロテアーゼ阻害剤又は薬学的に許容しうる化合物などをエアロゾルディスペンサーに加えることもできる。調製物はエアロゾルディスペンサーに入れられる。ディスペンサーには、公知の要領にて、噴射剤が充填される。
【0052】
上記成分の具体的濃度については、当該分野の専門家であれば、ここで提供される一般的ガイドラインに基づいて決定することができる。成分の量は、スプレーしたときに、泡が生成するような組成物にならないようにその限界を定め、微細なスプレーとする必要がある。口腔を通じて吸収させるには、注射又は胃腸管を通じて投与するときの通常の薬量の2倍又は3倍に増やすことが望ましいことがある。
【0053】
エアロゾルディスペンサーからスプレーされるエアロゾル液滴のサイズは、薬剤が送達されるべき場所にその一部は依存している。例えば、肺の中へ送達する場合、粒子サイズは約5μmよりも小さいサイズが望ましい。一方、口腔に吸収させる場合、粒子サイズは約5−10μmが望ましい。
【0054】
本発明はまた、高分子薬剤の吸収速度を高める方法に関するもので、高分子薬剤を、アルカリ金属アルキルサルフェートと3種類以上の前記ミセル形成化合物と共に投与することを含んでいる。この方法は、組成物を患者の口腔領域に直接投与することが望ましい。
【0055】
本発明のどの方法の場合にも、口腔への投与は、調製物を口の中へスプレーすることにより行われ、吸入器は用いないので、液滴は肺の中へ引き込まれることなく、口腔内に滞留する。
【0056】
<実験>
次の実験は、発明の例示を目的とするものであって、いかなる意味においても発明を限定するものと解すべきではない。
<実験1>
約1000mgの粉末インシュリンを撹拌器付きガラスビーカの中へ入れた。10mlの蒸留水を加え、溶液を低速で撹拌した。この溶液に、5M HCl(pH2)溶液を滴下し、インシュリンを完全に溶解した。次に、この溶液に5M NaOH溶液をゆっくりと撹拌しながら滴下して中和し、pHを約7−8とした。この溶液に、ラウリル硫酸ナトリウム50mg、デオキシコレート36mg、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン(グリコール酸ナトリウム)50mg、及び第二リン酸ナトリウム20mgを加え、化合物を完全に溶解した。次に、グリセリン250mgを、例えば2000rpmの高速で撹拌しながら加えた。溶液を30分間撹拌した後、10℃で貯蔵した。この混合物に、m−クレゾール40mg、フェノール40mgを加えた。なお、デオキシコレートに代えて、ケノデオキシコレート又はポリオキシエチレンエーテルを加えることもできる。
【0057】
溶液を、ピペットにて、10ml容量のガラス瓶の中へ入れた(1ml/瓶)。ガラス瓶にはHFA−134a噴射剤を充填し、室温で貯蔵した。
インシュリンの吸収能を調べるために、幾人かの糖尿病患者に対してこの調製物を投与した。糖尿病の被験者(ボランティア)10人には、前夜からの絶食と、投与前に朝食を採らないように依頼した。被験者は、インシュリンの投与後、高カロリーの食事をとった。さらに4時間後、血糖値を測定した。結果を表1に示す。第1日目、被検者には、プラセボパフ(placebo puffs)と経口血糖降下剤(メトフォルミン、錠剤)を施した。第2日目、前述の通り調製した経口インシュリンを70ユニット投与した。第3日目、本発明の経口インシュリン組成物を70ユニット投与した。表1に示されるように、本発明の経口インシュリン組成物は、血糖値の制御という点で、経口血糖降下剤よりも遙かに良好な結果を示した。
【0058】
【表1】

【0059】
上記の手順を繰り返し行ない、その結果を次に示す。
【表2】

【0060】
<実験2>
実験1と同じ要領にてインシュリンを調製した。この溶液に、ラウリル硫酸ナトリウム7mg、ポリオキシエチレンエーテル(10ラウリル)7mg、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン7mgを加え、完全に溶解させた。次に、水アルコール溶液(7mg/mL)に溶解した7mgのレシチンを、例えば2000rpmの高速で撹拌しながら加えた。溶液を30分間撹拌した後、10℃で貯蔵した。得られた混合ミセル溶液のインシュリンは、約200ユニットである。この混合物に、フェノール5mg、m−クレゾール5mg及びグリセリン10mgを加えた。
【0061】
溶液を、ピペットにて、10ml容量のガラス瓶の中へ入れた(1ml/瓶)。自動ガス充填装置(Paramasol 2008)を用いて、HFA−134a噴射剤をガラス瓶に充填した。噴射剤の量は、エアロゾル瓶の1操作につき2ユニットのインシュリンが供給されるように、9mLのショットサイズに調節されている。瓶のバルブは、操作1回につき、2ユニットのインシュリンが含まれる100μLのスプレーが供給されるように設計されている。ガラス瓶の中の調製物は、噴射剤を含み、単一相で、均一であった。
【0062】
空気力学的な粒子サイズは、USP Anderson(登録商標)の8段カスケードインパクタMark IIにより求めた。インパクタはメタノールで清浄化し、30℃で空気乾燥した。ガラスファイバーフィルタを受け皿の上に載せた。アクチュエータをインパクタのマウスピースに取り付け、USPの導入ポート及びジェット台に組み付けた。真空ポンプを接続し、空気の流量を28.3L/分に設定した。瓶は10秒間揺する操作を2回繰り返した後、排出した。ショットの送達は、アクチュエータをマウスピースの中へ排出する操作を25回繰り返し行なった。水10mL中に0.6mLのEDTAを含むpH8.7の液を用いて、マウスピースを洗浄し、堆積したインシュリンを集めた。フィルターを取り除いて、シンチレーション瓶に入れ、15分間ソニケータに付した。次に、RP−HPLCを用いて、インシュリンの量を分析した。得られた結果を表3(1操作につき2ユニット)及び表4(1操作につき4ユニット)に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
これらの試験結果では、平均粒子サイズは約7μmであった。また、3−8ステージでのインシュリン堆積は認められなかった(ステージの全てを示しているわけではない)。これらは、大部分の粒子が約6μmよりも大きいことを意味する。これは、組成物の大部分は口腔で堆積し、深く肺のところでは堆積しないことを示唆する。
【0066】
さらに、ショットサイズを正確に求めるための試験を行なった。試験は、ティール管の中へショットを発射し、サンプル収集前後の管の重量を測定することにより行なった。試験の結果は、1操作当たり2ユニットのショットの場合、0.075−0.083グラムであり、約±5%の範囲内であった。試験の結果は、1操作当たり4ユニットのショットの場合、0.076−0.083グラムであり、約±5%の範囲内であった。試験の結果は、1操作当たり6ユニットのショットの場合、0.070−0.082グラムであり、約±8%の範囲内であった。HPLCの分析結果では、送達された投与量は、1操作当たり2ユニットの場合、2.01−2.07ユニット、1操作当たり4ユニットの場合、3.9−4.4ユニット、1操作当たり6ユニットの場合、5.8−6.3ユニットであった。
【0067】
糖尿病の被験者10人に対して、前夜からの絶食と、投与前に朝食を採らないように依頼した。第1日目、被験者に10ユニットのインシュリン(エリ・リリー(Eli Lilly)から入手した即効性インシュリン)を注射した。第2日目、この実験のインシュリン60ユニット(6ユニットずつ10パフ)を、被験者の口の中へ吸入器なしで投与した。RIA法により3時間間隔で血漿インシュリン値を測定した。測定結果の平均値(マイクロモル/mL)を表5に示す。また、バイヤーのグルコメータ・エリート(Bayer's Glucometer Elite)を用いて、血糖値を3時間毎にモニターした。測定結果の平均値(ミリモル/L)を表6に示す。
【0068】
【表5】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、血漿インシュリン値は略同等の結果を示した。
【0069】
【表6】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、血糖値は略同等の結果を示した。
【0070】
試験は、10パフずつ40ユニットをスプレーしたものと、10ユニット注射したものについて、前述の血漿値と血糖値を測定し、比較した。試験結果を、表7(血漿)及び表8(血糖)に示す。
【0071】
【表7】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、血漿インシュリンは略同等の結果を示した。
【0072】
【表8】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、血糖値は略同等の結果を示した。
【0073】
<実験3>
実験1と同じ要領にてインシュリンを調製した。この溶液に、インシュリン溶液1mlにつき、ラウリル硫酸ナトリウム30.4mg、ポリドカノール9ラウリルエーテル30.4mg、ポリリジン10.0mgを加え、化合物を完全に溶解した。次に、インシュリン溶液1mlにつきトリオレイン15.2mgを、例えば2000rpmの高速で撹拌しながら加えた。溶液を30分間撹拌した後、10℃で貯蔵した。得られた溶液は混合ミセル溶液である。この混合物に対し、インシュリン溶液1mlにつき、m−クレゾール15.2mgを加えた。
【0074】
溶液を、ピペットにて、ガラス瓶の中へ入れた(1mL/瓶)。自動ガス充填装置(Paramasol 2008)(なお、Paramasolは登録商標)を用いて、HFA−134a噴射剤10.8gをガラス瓶に充填した。瓶のバルブは、操作1回につき、6ユニットのインシュリンが含まれる100μLのスプレーが供給されるように設計されている。ガラス瓶の中の調製物は、噴射剤を含み、単一相で、均一であった。
【0075】
糖尿病の被験者10人に対して、前夜からの絶食と、投与前に朝食を採らないように依頼した。第1日目、被験者に10ユニットのインシュリンを注射した。第2日目、この実験のインシュリン60ユニット(6ユニットずつ10パフ)を、被験者の口の中へ吸入器なしで投与した。RIA法により3時間間隔で血漿インシュリン値を測定した。測定結果の平均値(マイクロモル/mL)を表9に示す。また、バイヤーのグルコメータ・エリート(Bayer's Glucometer Elite)を用いて、血糖値を3時間毎にモニターした。測定結果の平均値(ミリモル/L)を表10に示す。
【0076】
【表9】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、血漿インシュリン値は略同等の結果を示した。
【0077】
【表10】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、血糖値は略同等の結果を示した。
【0078】
<実験4>
実験1と同じ要領にてインシュリンを調製した。溶液1mlにつきインシュリンが600ユニットになるまで、溶液を蒸留水で希釈した。次に、この溶液1mlを10mL容量のガラス瓶に移し、半自動ガス充填装置(Paramasol 2008)を用いて、HFA−134a噴射剤10.8gをガラス瓶に充填した。
【0079】
気相と液相がはっきりと分離していることが観察された。瓶を揺すってみたが、それでも組成物は均質にはならなかった。
ショットサイズを正確に求めるための試験を行なった。試験は、ティール管の中へショットを発射し、サンプル収集前後の管の重量を測定することにより行なった。試験の結果は、1操作当たり6ユニットのショットを5回続けて行なったところ、0.094、0.110、0.200、0.150及び0.050グラムであり、平均値の約±60%の範囲内であった。これは、実験2(本発明の範囲内の組成物について記載している)の±8%と対比される。
【0080】
HPLCの分析結果による平均送達量は、ショット5〜10では1操作当たり5.4ユニット、ショット45〜50では1操作当たり7.1ユニット、ショット85〜90では1操作当たり8.6ユニットであった。
これらの結果によれば、実験2の結果とこの実験の比較により、本発明のミセル形成成分を含むときに均一送達が達成され、該成分なしでは達成できないことを示した。
【0081】
<実験5>
1mlにつき10000ユニットを含む濃縮インシュリン10mlを、ガラスビーカの中へ入れた。この溶液に、ラウリル硫酸ナトリウム7mg、ポリオキシエチレンエーテル(10ラウリル)7mg、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン7mg、レシチン7mgを加えた。それらが完全に溶解するまで、撹拌を行なった。この溶液に、フェノール7mg及びm−クレゾール7mgを加え、十分に撹拌した。
【0082】
次に、この溶液1mlをピペットにて10mL容量のガラス瓶に入れた。次に、ガス充填装置(Paramasol 2008)を用いて、HFA−134a噴射剤をガラス瓶に充填した。噴射剤の量は、バルブ操作1回につき10ユニット(1操作につき100μLのショット)が供給されるように、瓶1本につき9mLに調節されている。ガラス瓶の中の調製物は、噴射剤を含み、単一相で、均一であった。
糖尿病の被験者10人に対して、前夜からの絶食と、投与前に朝食を採らないようにしてもらった。第1日目、各被験者に7ユニットのインシュリン(エリ・リリー(Eli Lilly)が市販する標準の迅速作用インシュリン)を注射した。第2日目、この実験のインシュリン70ユニット(10ユニットずつ7パフ)を、被験者の口の中へ吸入器なしで投与した。血液サンプルを集め、バイヤーのグルコメータ・エリート(Bayer's Glucometer Elite)を用いて、血漿血糖値を3時間毎に測定した。測定結果の平均値(ミリモル/L)を表11に示す。また、インシュリン値は、RIA法により3時間間隔でモニターした。測定結果の平均値(マイクロモル/L)を表12に示す。
【0083】
【表11】

【0084】
【表12】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、インシュリン値は略同等の結果を示した。
【0085】
<実験6>
1mlにつき10000ユニットを含む濃縮インシュリン10mlを、ガラスビーカの中へ入れた。この溶液に、ラウリル硫酸ナトリウム15mg、ケノデオキシコレート15mg、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン15mg、レシチン7mgを加えた。それらが完全に溶解するまで、撹拌を行なった。この溶液に、フェノール7mg及びm−クレゾール7mgを加え、十分に混合した。
【0086】
次に、この溶液1mlをピペットで採取し、10mL容量のガラス瓶に入れた。瓶は、計量計付きバルブを有している。次に、ガス充填装置(Paramasol 2008)を用いて、HFA−134a噴射剤をガラス瓶に充填した。噴射剤の量は、バルブ操作1回につき10ユニット(1操作につき100μLのショット)が供給されるように、瓶1本につき9mLに調節されている。ガラス瓶の中の調製物は、噴射剤を含み、単一相で、均一であった。
【0087】
糖尿病の被験者10人に対して、前夜からの絶食と、投与前に朝食を採らないようにしてもらった。第1日目、各被験者に7ユニットのインシュリン(エリ・リリー(Eli Lilly)が市販する標準の迅速作用インシュリン)を注射した。インシュリンを投与して15分後、各被験者は250カロリーのSustacal(登録商標)ドリンクを与えられ、各被験者は10分以内にこれを飲んだ。第2日目、この実験のインシュリン70ユニット(10ユニットずつ7パフ)を、被験者の口の中へ吸入器なしで投与した。インシュリンを投与して15分後、各被験者は250カロリーのSustacal(登録商標)ドリンクを与えられ、各被験者は10分以内にこれを飲んだ。血液サンプルを集め、バイヤーのグルコメータ・エリート(Bayer's Glucometer Elite)を用いて、血漿血糖値を4時間毎に測定した。測定結果の平均値(ミリモル/L)を表13に示す。
【0088】
【表13】

この試験は、本発明の組成物を送達する上で、インシュリン直接注入法とスプレー法とでは、血糖値は略同等の結果を示した。
【0089】
この発明の具体的実施例を例示したが、当該分野の専門家であれば、特許請求の範囲に記載された発明から逸脱することなく、本発明の詳細について種々の変形をなし得ることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、 有効量の高分子薬剤と、 アルカリ金属アルキルサルフェートと、 レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、それらの薬学的に許容される塩、それらのアナローグ、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択される3種類以上のミセル形成化合物と、 適当な溶媒と、を含んでおり、 アルカリ金属アルキルサルフェート及びミセル形成化合物の各々は、濃度が組成物全体の約0.1−20wt./wt.%で存在しており、アルカリ金属アルキルサルフェートとミセル形成化合物の合計濃度は、組成物全体の50wt./wt.%よりも少なく、 前記高分子薬剤はミセルの形態である薬学的組成物。
【請求項2】
アルカリ金属アルキルサルフェートの濃度は、組成物全体の約5wt./wt.%よりも少ない請求項1の組成物。
【請求項3】
アルカリ金属アルキルサルフェートは、アルカリ金属C8−C22アルキルサルフェートである請求項1の組成物。
【請求項4】
アルカリ金属C8−C22アルキルサルフェートはラウリル硫酸ナトリウムである請求項3の組成物。
【請求項5】
3種類以上のミセル形成化合物の各々は、濃度が、組成物全体の約0.1−5wt./wt.%である請求項1の組成物。
【請求項6】
レシチンは、飽和又は不飽和であり、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、セファリン及びリゾレシチンからなる群から選択される請求項1の組成物。
【請求項7】
ミセル形成化合物の1種は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩、ポリドカノールアルキルエーテル、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンの薬学的に許容される塩、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエーテルのアナローグ、ケノデオキシコレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、ミセル形成化合物の濃度は、組成物全体の約0.1−5wt./wt.%である請求項1の組成物。
【請求項8】
ヒアルロン酸の塩は、アルカリ金属のヒアルロン酸塩、アルカリ土類のヒアルロン酸塩及びヒアルロン酸アルミニウムからなる群から選択され、前記塩の濃度は組成物全体の約0.1−5wt./wt.%である請求項7の組成物。
【請求項9】
3種類のミセル形成化合物は、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、ポリオキシエチレンエーテル及びレシチンである請求項4の組成物。
【請求項10】
3種類のミセル形成化合物は、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、デオキシコレート及びグリセリンである請求項4の組成物。
【請求項11】
3種類のミセル形成化合物は、ポリドカノール9ラウリルエーテル、ポリリジン及びトリオレインである請求項4の組成物。
【請求項12】
薬剤は、インシュリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヒルログ、ヒルゲン、フリジン、インターフェロン、サイトカイン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、イムノグロビン、化学治療剤、ワクチン、糖蛋白、細菌トキソイド、ホルモン、カルシトニン、グルカゴン様ペプチド、高分子抗生物質、蛋白質基の血栓溶解化合物、血小板阻害剤、DNA、RNA、遺伝子治療剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オピオイド、麻酔薬、鎮痛薬、ステロイド及び鎮痛剤からなる群から選択される請求項1の組成物。
【請求項13】
薬剤は、インシュリンである請求項1の組成物。
【請求項14】
組成物のpHは、5乃至8の範囲である請求項1の組成物。
【請求項15】
ミセルのサイズは、約1〜10ナノメータである請求項1の組成物。
【請求項16】
溶媒は、水及びエタノールからなる群から選択される請求項1の組成物。
【請求項17】
フェノール化合物、酸化防止剤、プロテアーゼ阻害剤及び無機塩からなる群から選択される1又は2種以上の要素をさらに含んでいる請求項1の組成物。
【請求項18】
組成物は、フェノール、m−クレゾール及びそれらの混合物からなる群から選択されるフェノール化合物を、組成物全体の約0.1−10wt./wt.%の濃度で含んでいる請求項17の組成物。
【請求項19】
酸化防止剤は、トコフェロール、デターオキシムメシレート、メチルパラベン、エチルパラベン、アスコルビン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項17の組成物。
【請求項20】
プロテアーゼ阻害剤は、バシトラシン、バシトラシン誘導体、大豆トリプシン及びアプロチニンからなる群から選択される請求項17の組成物。
【請求項21】
無機塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及び亜鉛の塩からなる群から選択される請求項17の組成物。
【請求項22】
混合ミセルの薬学的組成物であって、アルカリ金属アルキルサルフェート及び少なくとも3種類の化合物を用いて形成されたミセルに被包された高分子薬剤を含んでおり、前記化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、それらの薬学的に許容される塩、それらのアナローグ、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項23】
薬学的組成物を作る方法であって、 有効量の高分子薬剤組成物を、適当な溶媒の中で、アルカリ金属アルキルサルフェート及び3種類以上ののミセル形成化合物と混合することを含んでおり、前記化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、それらの薬学的に許容される塩、それらのアナローグ、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択され、 アルカリ金属アルキルサルフェート及びミセル形成化合物の各々は、濃度が組成物全体の0.1−20wt./wt.%で存在し、アルカリ金属アルキルサルフェートとミセル形成化合物の合計濃度は、組成物全体の50wt./wt.%よりも少ない濃度である、方法。
【請求項24】
a)高分子薬剤は適当な溶媒の中でアルカリ金属アルキルサルフェートと混合され、第1のミセル組成物を生成し、b)3種類以上の追加のミセル形成化合物は、ステップaの第1ミセル組成物と混合される請求項23の方法。
【請求項25】
ミセル形成化合物の1種はアルカリ金属アルキルサルフェートと同時に加えられ、第1ミセル組成物を生成する請求項24の方法。
【請求項26】
安定剤を加えるステップをさらに含んでいる請求項23の方法。
【請求項27】
防腐剤、酸化防止剤、プロテアーゼ阻害剤及び無機塩のうちの1又は2種以上を、混合ミセル薬学的組成物に加えるステップをさらに含んでいる請求項23の方法。
【請求項28】
混合は、磁気攪拌機、プロペラ攪拌機及びソニケータからなる群から選択される高速攪拌機を用いて行われる請求項23の方法。
【請求項29】
請求項1の有効量の薬学的組成物を患者に投与することを含んでいる患者の治療方法。
【請求項30】
投与は経口投与である請求項29の方法。
【請求項31】
投与は口腔投与である請求項30の方法。
【請求項32】
患者における高分子薬剤の吸収速度を高める方法であって、高分子薬剤を含む組成物を、アルカリ金属アルキルサルフェート及び3種類以上のミセル化合物と共に投与することを含んでおり、前記化合物は、レシチン、ヒアルロン酸、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、マツヨイグサ油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル、ポリドカノールアルキルエーテル、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、それらの薬学的に許容される塩、それらのアナローグ、及びそれらの混合物又は組合せからなる群から選択される、方法。
【請求項33】
3種類のミセル形成化合物は、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、ケノデオキシコレート及びグリセリンである請求項4の組成物。
【請求項34】
3種類のミセル形成化合物は、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン、ポリオキシエチレンエーテル及びグリセリンである請求項4の組成物。
【請求項35】
アルカリ金属アルキルサルフェートとミセル形成化合物の合計濃度は、組成物全体の4wt./wt.%よりも少ない濃度である請求項1の組成物。
【請求項36】
溶媒は水である請求項1の組成物。

【公開番号】特開2012−6934(P2012−6934A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−157744(P2011−157744)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2001−583737(P2001−583737)の分割
【原出願日】平成13年5月7日(2001.5.7)
【出願人】(501120627)ジェネレクス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】GENEREX PHARMACEUTICALS INC.
【Fターム(参考)】