説明

可動乗員室における音および振動快適性を最適化するための方法

本発明は、可動車両乗員ユニットにおける音響快適性を最適化するための方法に関し、本方法は、乗員室の全体設計を提供するための設計チーム、および/または乗員室の部品の設計を提供するための少なくとも1つの機器製造業者によって実行され、適切に識別された快適指数のために達成されるべき目標値を確立し、乗員室に関する全体的なデータを取得するために、複数の機器製造業者に関連する制約および入力データを規定して、快適指数の値を推定し、その推定値を目標値と比較し、最後に、それらを目標値と相関させるために、入力データを個別にまたは組み合わせて改変することを含む。
【その他】 本願に係る特許出願人の国際段階での記載住所は「フランス国 クールブヴォア エフ−92400 アヴニュ ダルザス 18 “レ ミロワール”」ですが、識別番号399052888を付与された国内書面に記載の住所が適正な住所表記であります。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員室、さらに詳細には、車両、特に自動車などの可動乗員室における音および振動の不愉快さを緩和するための方法に関する。
【0002】
自動車、またはトラック、バス、農業用機器などの他のタイプの車両に加えて、本発明は、航空機、列車、船舶、潜水艦などの囲まれているか、または実質的に囲まれている乗員室を有する、すべてのタイプの移動施設に適用する。
【背景技術】
【0003】
列車および自動車などの現代の輸送手段における快適性に寄与するすべての品質の中で、音および振動の快適性は、決定的要因になりつつある。具体的に言えば、機械、熱、視認性などの煩わしさの原因となる他の発生源は、制御下でかなり改善されてきている。しかし、音および振動の快適性の向上は、新たな問題点を呈する。
【0004】
車両における音の快適性に対する破壊には異なるタイプがある。すなわち、
空気力学的原因の雑音、すなわち移動中に車両で空気の摩擦によって形成される雑音と、
たとえば他の車両を通過するときに発生される雑音、またはエンジン雑音など(特に、トンネルの通行時またはコンクリートの壁などの音波を反響する物体に近い場合)の空気によって伝達される外部の雑音、排気管の口からの雑音、ロードノイズ、または他のバックミラー雑音(空気力学的原因を有するが、空気を通して伝搬される雑音)と、
車両に当たる雨などの衝撃雑音と、
固体伝搬雑音、すなわち、たとえば、その原因として排気系、緩衝装置、駆動伝達系などから(特に、一定のエンジン回転速度で)エンジンの振動を有する車両のボディシェルによって伝達される雑音とである。
【0005】
同様に、振動の快適性の破壊には異なるタイプがある。すなわち、
ボディシェルに伝達される走行装置から生じる振動、たとえば、舗装道路上を走行することによって発生され、緩衝装置によってボディシェルに伝達される振動と、
駆動伝達系(エンジン、変速装置、排気系)から生じ、ボディシェルに伝達される振動とである。
【0006】
車両設計において、組立工業者および機器供給業者は、一般に区別される。
【0007】
組立業者は、直接的、または部分的または総合的な下請けの利用のいずれかによって、車両の全体的な設計、組立、および販売を行う。
【0008】
機器供給業者は、直接的または部分的または総合的な下請けの利用のいずれかによって、車両の構造に用いられる機器の一定の部品または品目の設計および製作を行う。
【0009】
全体的な車両または機器の一定の部品または品目における設計作業において、組立業者、およびその機器供給業者の1つまたは複数の業者から構成されるチームが、「設計チーム」と呼ばれる。
【0010】
たとえば、車両内部に吸収塗装を用いることによって、または車両の機械系に関してエラストマ連結部品を提供することによって、あるいは窓ガラスユニットに技術的な補強を行うことによって、車両の乗員室内の音および振動の快適性を向上させるために、組立業者および一定の機器供給業者によって様々な努力がなされてきている。特に、
窓ガラスユニットの形状が改変され、空気の浸透が改善され、それ自体が雑音発生源である乱流が削減され、
その中間層が、乗員室に空気力学的雑音および/または空気伝搬雑音および/または固体伝搬雑音に対する優れた保護を提供する、振動減衰および遮音を改善するための特性を有する層状の窓ガラスユニットが作られ、言及されることができる中間層は、欧州特許第387148B1号明細書および欧州特許出願公開第844075号明細書に記載された特徴を有し、
車両の車体構造と窓ガラスとの間に配置され、その特性が振動の減衰を可能にする1つまたは複数の材料からなるシールが利用され、仏国特許出願公開第PCT03/02417号明細書および仏国特許出願公開第PCT04/09807号明細書は、そのようなシールによって提供される特性の詳細を明らかにし、
窓ガラスユニットの全体的な放射を低減するために、振動場にさらされる窓ガラスユニットの励振によって形成される放射域に、位相が反対の放射域が形成され、
周囲のシールで窓ガラスと車体構造との間の連結を局所的に改変するための提案がなされており、たとえば、窓ガラスユニットの周囲の限られた部分にわたってのみ、窓ガラスユニットが音場によって励振される場合には、周囲のシールにおける窓ガラスユニットの動きの低減は、少なくとも第1の奇数放射モードがない、窓ガラスユニットを作成することを可能にする(欧州特許出願公開第908866号明細書)。
【0011】
しかし、各機器供給業者および組立業者によって独立に提案された種々の解決策が、必ずしもすべての車両に対して適切であるとは限らないことが分かっている。本発明者らは、特に車両のサイズ、その乗員室、その構造に用いられる材料のタイプもまた、振動場を伝搬し、これらの振動場が、音または振動の快適性に対する破壊の原因となるさらに特定の周波数に対しても役割を担っていることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、音および振動のレベルを低減することにのみ向けられるのではなく、特に雑音または残余振動を改善し、例えば間欠雑音より連続雑音の方を好むことにある、音および振動の快適性の向上にも向けられることを強調することが重要である。
【0013】
また、本発明の目的は、音および振動の点における一般的な快適性と、乗員室の各タイプに適した一般的な快適性の両方を提供する解決策の設計における新たなアプローチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、車両のタイプと、その形状と、その構成材料と、窓ガラスユニットの構造物および窓ガラスユニット/乗員室の境界において、特にガラスユニットの形状にある特に窓ガラスユニットの振動音挙動とを考慮して、乗員室を通り、その内部で振動場および音場の発生、伝搬、および伝達に影響を及ぼす、主な変数を組み合わせて考えることを提案する。
【0015】
本発明は、乗員室内の音および振動の快適性の制御を最適化すると同時に、音性能、振動性能、および快適性の改善性能を得るために用いられるべき手段のコストに関して、製造業者によって供給される仕様に準拠し、窓ガラスユニットの厚さが重量のために無分別に増大せず、窓ガラスユニットを通る光学品質が損なわれず、乗員室の機械的強度が損なわれない特に要素の実行可能性を確実にし、窓ガラスユニットが、その形状などに応じて拭きとられ得ることを確実にするための方法を提供する。
【0016】
本発明の方法は、乗員室の全体的な設計を行うことを意図する組立業者によって、および/または乗員室の一部の設計を行うことを意図する機器供給業者によって適用される。
【0017】
本発明によれば、可動乗員室内の音および振動の性能を最適化するための方法は、
音および振動の性能の品質を規定する基準である快適指数のリストを確立し、かつこれらの快適指数の目標値を設けるステップと、
乗員室全体の一部またはすべてに関し、複数の機器供給業者に関連する要件のリストを確立するステップであって、要件が、音または振動の快適性に関する情報以外のすべての要求に関連する情報である、前記要件のリストを確立するステップと、
乗員室内で振動場および音場の発生、伝搬、および伝達に影響を及ぼす入力データを規定するステップであって、入力データが、複数の機器供給業者と関連付けられ、一定の入力データが、要件によって制限される、前記入力データを規定するステップと、
入力データに基づいて、乗員室の快適指数の値を推定するステップと、
推定値を目標値と比較するステップと、
推定値が目標値に適合しない場合には、入力データの一部またはすべてに個別にまたは組み合わせて作用するステップと、
目標値への快適指数の値の収束を確実にするように、乗員室の快適指数値を推定するステップと、推定値を目標値と比較するステップと、入力データに作用するステップとを反復態様で繰り返すステップとを含む。
【0018】
「値の収束」とは、目標値を正確に取得するか、または固定されている差の許容範囲に基づいて目標値に実質的に近い値を取得することを意味する。
【0019】
音および振動の性能の品質は、タイプ、車両範囲、標的市場、快適性に関して促進したいイメージ、顧客によって提供される仕様などに応じて、組立業者によって決定される快適性の目的に対応する。
【0020】
性能の品質を規定する目的または基準は、可動乗員室の内部に関連し、乗員室の機器の部品または品目に関連付けられる測定可能な物理的指数の形で反映される。
【0021】
非限定実施例として、物理的指数は、乗員室の一定の点における音圧のレベルと、乗員室の一定の点における振動の動き、速度、または加速度のレベルと、乗員室の一定の点における心理音響学的指数または了解度指数と、機器の部品または品目によって放射される音響出力のレベルと、機器の部品または品目によって導入される力のレベルと、機器の一定の部品または品目の吸音率と、機器の一定の部品または品目の遮音と、機器の一定の部品または品目によって提供される振動減衰率と、機器の2つの部品または品目の間の固定系によって提供される振動減衰とである。
【0022】
1つの特徴によれば、利用者は、絶対要件のリストを確立し、該絶対要件は、すなわち不可欠と見なされ、かつ作用しないことは緊急事態であると考えられる一定の機能を確実にするために必ず満たさなければならず、利用者がさらに、未規定の要件のリストを確立し、該未規定の要件は、すなわち、これらの未規定の要件の値が、可変であってもよい割合または範囲を規定することによって、可動乗員室の全体的な品質を損なうことなく、値が変化してもよい特性である。
【0023】
別の特徴によれば、乗員室および車両の構成要素の幾何形状および/または寸法、材料の物理的特性、ならびに音および振動の励起に対する可動乗員室の構成要素の挙動状態などの入力データは、値、モーダルベース、伝達関数、スペクトル、またはインタスペクトルなどの形で規定される。
【0024】
入力データが絶対要件に適合する場合には、入力データは凍結されてもよく、入力データが未規定の要件に適合する場合には、一定のコンテキストで変更されてもよく、入力データが規定された要件に関連しない場合には、入力データは、依然として自由であってもよい。
【0025】
推定作業、測定作業、または計算作業のすべてを始める前に、音および振動の性能の品質を規定する基準の目標値と相関される大きさを正確に推定し、該大きさを目標値と比較するために用いられる設計手段を規定することが好ましい。
【0026】
設計手段は、実験的なアプローチ、完全に数値予測的なアプローチ、またはこれらのアプローチの組み合わせに基づいてもよい。
【0027】
予測設計手段は、原則的には、製作前に、可動乗員室、機器の部品または品目で取得可能な快適指数の値を推定することを可能にしてもよい。これらの予測設計手段はまた、規定された快適目的に対する複数の可能な解決策に、階層構造を適用することを可能にしてもよい。この階層構造は、どの解決策が、目的に最も近づくことを可能にするかを示す。
【0028】
予測手段は、乗員室またはそのサブシステムが製作される前に、指数の推定を可能にするという利点を有する。原型の製作は、コストが嵩み、時間がかかることが多く、予測手段の適用は、時間を節約し、かつ設計コストを削減する可能性がある。しかし、予測手段は、モデル化中に行われる仮説に基づき、定量化が困難であり、かつ不適切である場合がある精度で指数の推定を与える。設計手段に関して必要な信頼性の程度は、検討された現象が、快適性に関してどの程度重要であるかに適合させてもよい。たとえば、設計チームが、影響され易いと考えられる目的に取り組んでいる場合には、問題を予見するために、信頼性の高い手段をそれ自体に装備しなければならない。設計手段に関して必要な信頼性の程度は、設計段階に適合させてもよい。たとえば、相当大まかで、低コストの結果を与える手段は、音または振動の快適性に関して、一定の大きな指針を決定するための予備計画段階で十分であるように思えるのに対し、さらに多くのリソースを必要とする手段は、そのさらに優れた信頼性のために、詳細な設計段階で好まれる。
【0029】
目的は、絶対要件によって凍結される入力データを依然として変更しない間、または未規定の要件に関する枠組みの設定の中で、未規定の要件に関連する入力データを改変することによって、または任意の要件に関係ない入力データを自由に改変することによって、入力データを改変することによって達成される。
【0030】
入力データの変形は、音場および振動場の専門家であることが多い1人の主導で、その人の経験、種々の現象に関する知識、最適化手段の使用に基づいて、選択されてもよい。入力データの変形の選択は、たとえば、最適化アルゴリズムに基づいて、部分的または完全に自動化されてもよい。
【0031】
非包括的な態様で、特に乗員室に関連する窓ガラスユニットに対する快適性の最適化に関係するために、一定の入力データで実行される入力データを改変するための以下の動作を挙げることが可能である。すなわち、
入力データの項目を構成する窓ガラスユニットの放射モードの形状は、前記窓ガラスユニットが、音場または振動場によって励起される場合には、空間的な態様で改変される。したがって、たとえば、窓ガラスユニットに関して少なくとも第1の奇数モードの応答を削減することによって、窓ガラスユニットに関して、乗員室の1つまたは複数の空洞モードと連結される少なくとも1つの放射モードまたは複数の放射モードを除去することが可能である。これは特に、窓ガラスユニットと乗員室との間で結合される周辺シールにおいて、窓ガラスユニットの局所的に低減される動きによって行われ、
窓ガラスユニットの放射モードは、乗員室の空洞モードに対して周波数に関してずれており、
音の現象は、乗員室における放射に対して逆位相で発生され、これは、一般に能動制御と呼ばれ、
乗員室の外側におけるデフレクタの結合によるなど、窓ガラスユニットと接触する気流が、改変され、
窓ガラスユニットと乗員室との間で結合される周辺シールの材料の性質に基づいて、動作がなされ、
窓ガラスユニットと乗員室との間の機械的な連結が改変され、乗員室材料の性質、および窓ガラスユニットと乗員室との間の中間要素の性質に応じた、剪断作業または引張/圧縮作業に基づき、振動エネルギの散逸をさらに助け、
窓ガラスユニットの形状、厚さ、および/または構成材料が改変される。
【0032】
比較および入力データにおける作用のために、指数の値を推定するためのステップを複数回反復した後、引き起こされた問題の複雑さに応じて、十分であると判断される場合には、設定された入力データが、目的を達成することを可能にせず、特に入力データと、必要に応じて要件とを再規定することによって、目的が再規定される。
【0033】
最適化方法が終了すると、目的を達成することを可能にした入力データのリストが確立される。
【0034】
最適化方法は、乗員室に関して、以下を確実にする最適な解決策に収束するために、設計チームによって適用されることが好ましい。すなわち、
要件の順守、絶対的要件の厳密な順守、何が設定されているかに関して未規定の要件の順守、
厳密であるか、または妥協アプローチを用いて可能な限り近いかのいずれで、音および振動快適性の目的の達成。妥協アプローチは、十分な解決策を獲得可能にするために、目的を上または下に再規定することにある。
【0035】
本発明による最適化アプローチは、この情報のすべてを完全であると見なすために、種々の機器供給業者の要件と入力データとの間の必要な相互作用を確実にする。
【0036】
他の特徴および利点は、図1の概略図に関する説明の残る部分で明白となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
車両、この場合には自動車などの可動乗員室内の音および振動の性能を最適化するための方法は、本発明によれば、以下のステップに従い、
音および振動の性能の品質を規定する基準である快適指数のリストを確立し、これらの快適指数の目標値を設けるステップ(図1のブロック1)と、
音または振動の快適性に関する情報以外のすべての要求に関連する情報に対応する、要件のリストを確立するステップ(ブロック2)と、
乗員室内で振動場および音場の発生、伝搬、および伝達に影響を及ぼす入力データを規定するステップ(ブロック3)であって、一定の入力データが、要件に連結可能である(ブロック2からブロック3への矢印)、入力データを規定するステップと、
設計手段(ブロック5)のおかげで入力データに基づいて、乗員室の快適指数の値を推定するステップ(ブロック4)と、
推定値を目標値と比較するステップ(ブロック6)と、
推定値が目標値に適合しない場合には、入力データの一部またはすべてに個別にまたは組み合わせて作用するステップと、
目標値への快適指数の値の収束を確実にするように、乗員室の快適指数値を推定するステップと、推定値を目標値と比較するステップと、入力データに作用するステップを反復態様で繰り返すステップとを含む。
【0038】
第一に、この手段は、音および振動の性能の品質を規定する基準のリストを確立する(ブロック1)。この品質は、タイプ、車両範囲、標的市場、快適性に関して促進したいイメージ、顧客によって提供される仕様などに応じて、組立業者によって決定される快適性の目的に対応する。
【0039】
快適性の目的は、車両の内部に関して測定可能、または車両の機器の部品または品目に関連付けられることによって測定可能な物理的指数の形で反映される。
【0040】
車両の内部で測定可能な物理的指数は、完全に車両を特徴付ける。たとえば、
乗員室の一定の点、たとえば、運転者の耳、前部乗員の耳、または後部乗員の耳における音圧のレベル(線形または重み付けされる)と、
乗員室の一定の点、たとえば床、ハンドル、変速レバー、または内部バックミラーの基部における振動の動き、速度、または加速度のレベル(線形または重み付けされる)と、
乗員室の一定の点における心理音響学的指数(音の大きさまたは粗さなど)、または了解度指数(RASTIまたはSTIなど)とである。これらの指数は、車両で測定される音圧信号の特定の処理によって取得される値である。
【0041】
快適性の目的はまた、機器の部品または特定の品目に関連付けられてもよく、たとえば、以下を含む。
【0042】
機器の部品または品目によって放射される音響出力のレベル。これは、乗員室内の通気孔によって放射される音響出力、乗員室外の排気によって放射される音響出力、乗員室外のエンジンによって放射される音響出力、外部バックミラーの周囲の気流によって放射される音響出力、車輪と道路との間の接触によって発生される音響出力を含み得る。
【0043】
機器の部品または品目によって導入される力のレベル。これは、付属装置部品(エンジン、変速装置、排気系などの全体または1つまたは複数のそのサブシステム)を介して駆動伝達系によってボディシェルの中に導入される力、走行装置(軸箱、駆動軸、緩衝装置、サスペンションなど)によってボディシェルの中に導入される力を含み得る。
【0044】
機器の一定の部品または品目の吸音率。これは、乗員室の内部塗装、ボンネット内に配置された塗装によって提供される吸音を含み得る。
【0045】
機器の一定の部品または品目の遮音、たとえば、車体構造を形成する一定の要素の遮音、または車体構造に装着される窓ガラスユニットによる遮音。
【0046】
機器の一定の部品または品目によって提供される振動減衰率。これは、金属薄板に接合される歴青質製品によってボディシェルで提供される振動減衰、2枚のガラスシート間に挿入される中間層によってボディシェルおよび/または窓ガラスに提供される振動減衰、固定接着剤によって1つまたは複数の部品に提供される振動減衰を含み得る。
【0047】
一方が振動発生源を構成する機器の2つの部品または品目の間の固定系によって提供される振動減衰。これは、エンジンブロックとボディシェルとの間に介在される可撓性要素によって提供される振動減衰、走行装置とボディシェルとの間に介在されるサスペンション系によって提供される振動減衰、排気系とボディシェルとの間に介在される可撓性要素によって提供される振動減衰を含み得る。
【0048】
いずれの場合も、音および振動の快適性を判断するための各快適指数に割り当てられる目標値は、固有(たとえば、使用構造に関係なく、超えてはならない閾値)であってもよく、または種々の変数、たとえば、周波数、エンジン回転速度、エンジン負荷、速度および走行状態、機器の種々の品目が稼動中または停止されているという事実などに左右されてもよい。
【0049】
本発明の方法において、音および振動の快適性に関する情報以外のすべての要求、たとえば正確な機能、乗員の安全性、美的価値観、価格、顧客によって提供される仕様などを満たすために、車両の設計に基づいて組立業者によって設定される要件(ブロック2)を考慮する必要がある。
【0050】
これらの要件すべてに準拠すると同時に、音および振動の快適性の目的は、達成されなければならない。これらの要件は、たとえば窓ガラスを供給する機器供給業者の場合には、要件は、窓ガラスの形状、その組成(用いられる材料、厚さ)、その色、必要な光学品質などの各機器供給業者にとっての仕様の形態で記載されてもよい。
【0051】
要件は、2つのグループに分割される。
【0052】
絶対要件として知られる要件、すなわち、組立業者が不可欠と考える一定の機能(安全性、車両の動作など)を確実にするために満たされなければならない要件。たとえば、窓ガラスユニットの場合には、透明度が絶対要件であってもよい。
【0053】
未規定として知られる要件、すなわち、車両の全体品質を損なうことなく、一定の範囲で(連続的または離散的に)発展されてもよい要件。たとえば、窓ガラスユニットの場合には、組立業者が、(条件が一定の範囲内にあるかどうかに関係なく)複数の厚さが許容可能であると考えるのであれば、窓ガラスユニットの厚さは、未規定の要件であってもよい。
【0054】
また、所望の目的および要件に基づいて、設計チームによって規定される入力データを確立する(ブロック3)ことが必要である。
【0055】
入力データは、車両内の振動場および音場の発生、伝搬、および伝達に影響を及ぼす。したがって、音および振動の快適性を最適化するために、これらのデータに作用することが必要である。
【0056】
データは、きわめて可変であってもよい。車両の全要素の間には、著しい機械的関係および音の関係があることから、最適な態様で乗員室を設定するために、データは、それぞれが、別個に機器供給業者と関係がある車両の特定の部品に関するほか、車両の全体にも関する。たとえば、車体構造の接合は、その挙動に対する窓ガラスの動的挙動を変化させるため、個別に捉える場合には、車体構造の動的挙動を正確に知ることなく、車両内の快適性に関して、窓ガラスを最適化することは不可能である。
【0057】
また、入力データは、車両全体で考えられなければならず、ある機器供給業者が、別の機器供給業者に関連するデータを知ることが必要である。
【0058】
たとえば、入力データは、
車両およびその構成要素(窓ガラスユニット、シール、連結部品など)の幾何形状および寸法(長さ、幅、および厚さ)に関する情報と、
剛性率、剪断弾性率、および密度などの、系を形成する材料の物理的特性に関する情報と、
振動励起に関する情報、たとえば、固体伝搬に起因する雑音および振動快適性に場合には、検討される系に導入される力(車両のボディシェルで駆動伝達系によって発生される力、または車両と道路との間の接触によって発生される力など)のスペクトルと、
音の励起および空気力学的励起に関する情報、たとえば、空気を介して伝達される外部雑音の場合には、発生源および指向性図によって放射される音響出力のスペクトル、または空気力学に起因する雑音の場合には、(特に、エネルギスペクトル密度および空間的相互相関に関する情報を供給することによる)壁を励振する圧力場の記載と、
衝突による励起に関する情報、たとえば、雨雑音の場合には、決定論名形態または確率論的な形態で壁に導入される力の詳細とを含み得る。
【0059】
これらのデータは、任意の形式、特に線図の形態における設計図、紙面上の工業図、またはたとえば、コンピュータ支援設計ソフトウェアプログラムによって作成および読出し可能なコンピュータデータファイルに対応してもよい。
【0060】
たとえば、技術情報の機密保持または既に他の場所で行われる作業を繰り返さなければならないことを避けるために、設計チームの一員が、設計チーム全体にあまり情報を与えたがらない場合には、音および振動の快適性に対する機器の品目または車両の一部またはすべての部品の挙動を表す入力データは、さらに複雑であってもよい。次に、これらの他の系を完全にモデル化することなく、他の系と機器の品目または部品の連結をモデル化することが可能であるように、データの準備は、用いられる設計手段と互換性がなければならない。たとえば、入力データは、
完全であっても、削減されていてもよく、測定または計算による車両、機器の部品または品目の一部のモーダルベースと、
車両、機器の部品または品目の一部を特徴付ける、測定または計算による伝達関数、スペクトル、またはインタスペクトルの集合と、
車両、機器の部品または品目の一部を特徴付ける、エネルギ統計的解析という意味における連結による損失率および減衰による損失率と、
車両、機器の部品または品目の一部を特徴付ける、凝縮モデルまたはスーパ要素系(有限要素の意味で)とであってもよい。
【0061】
一旦、快適指数が、それぞれに関する目標値で規定され、要件および入力データが車両に関して確立されると、後に規定されることになる設計手段の助け(ブロック4)によって、快適指数の値が前記車両に関して推定され(ブロック5)、これらの推定値が、目標値と比較される(ブロック6)。
【0062】
これらの値の少なくとも1つが、目的の設定と異なる場合には、絶対要件によって凍結される入力データを依然として変更しない間、またはそれらに関する枠組みの設定の中で、未規定の要件に関連する入力データを改変することによって、または任意の要件に関係ない入力データを自由に改変することによって、入力データの一部またはすべてが、個別にまたは組み合わせて改変される。
【0063】
新たな入力データ設定は、反復方法によって快適指数を達成するために、目標値と再び比較される快適指数の値を再推定するために、再利用される。
【0064】
設計チームによって、引き起こされた問題の複雑さに応じて、十分であると判断された複数回の反復の後、設定された入力データが、目的を達成することは可能ではない場合には、目的は再規定され、本方法は、次に、入力データと、必要に応じて要件とを再規定することによって補正される。
【0065】
目的が達成されると、目的を達成することを可能にした入力データのリスト(ブロック7)が確立される。満足を与える入力データは、音および振動の観点から車両設計を凍結することを可能にする。
【0066】
最適化方法の種々の動作を実行するために、音および振動の快適性の目的を達成する車両を設計するために用いられる設計手段が、最初に規定された。これらの手段は、達成される目的の性質、要件のタイプ、および利用可能な技術的手段(科学知識および技術知識、測定システム、予測計算システムなど)に応じて、設計チームのメンバーによって共同で規定される。これらの手段は、一定数の入力データに基づいて、直接的または間接的に、快適指数と相関される大きさの推定値を取得し、規定された目的と取得された値を比較することを可能にする。
【0067】
設計手段は、1つまたは複数の実験的なアプローチに基づいてもよい。たとえば、
音圧のレベル、振動の動き、速度、または加速度のレベル、心理音響学的指数の値、別の部品に対して1つの部品によって導入される力、機器の部品または品目によって放射される出力、機器の部品または品目によって提供される吸音、機器の部品または品目によって提供される振動減衰、機器の部品または品目の遮音、機器の部品または機器の振動減衰を確認することを可能にする、機器の部品、品目、または車両全体に関する実際の測定と、
一定の雑音または振動の発生、伝搬、または増幅を理解することを可能にする、機器の部品、品目、または車両全体に関する診断測定とに基づいてもよい。
【0068】
設計手段はまた、1つまたは複数の完全に数値予測的なアプローチに基づいてもよい。たとえば、
車両の部品またはすべてと、必要に応じて乗員室または車両の外部環境に含まれる流体(空気)との間の機械的および/または音の相互作用を記載する、有限要素モデル化および/または有限/無限要素モデル化アプローチと、
車両の部品またはすべてと、必要に応じて乗員室または車両の外部環境に含まれる流体との間の機械的および/または音の相互作用を記載する、フロンティア要素モデル化アプローチと、
乗員室内および車両の外部環境における音の伝搬を記載する、光線シューティングモデル化アプローチと、
車両の種々の要素と、必要に応じて乗員室または車両の外部環境に含まれる流体との間の振動エネルギおよび/または音エネルギの交換および散逸を特徴付ける、統計的プロセスを必要としてもよく、必要としなくてもよいエネルギモデル化アプローチとに基づいていてもよい。
【0069】
設計手段はまた、予測的なアプローチおよび実験的アプローチを組み合わせた混合アプローチに基づいてもよい。
【0070】
したがって、本発明による車両内の音および振動の性能を最適化するための方法は、要件を考慮し、車両を構成する本質的な特性のすべてを考慮し、これらの特性を組み合わせて調整、プログラミング、改変する際に、音および振動の性能の品質を規定する一連の基準を考慮する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による可動乗員室内の音および振動の性能を最適化するための方法のフロー図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動乗員室内の音および振動の性能を最適化するための方法であって、
音および振動の性能の品質を規定する基準である快適指数のリストを確立し、かつ該快適指数の目標値を設けるステップと、
乗員室全体の一部またはすべてに関し、複数の機器供給業者に関連する要件のリストを確立するステップであって、要件が、音または振動の快適性に関する情報以外のすべての要求に関連する情報である、前記要件のリストを確立するステップと、
乗員室内で振動場および音場の発生、伝搬、および伝達に影響を及ぼす入力データを規定するステップであって、入力データが、複数の機器供給業者と関連付けられ、一定の入力データが、要件によって制限される、前記入力データを規定するステップと、
入力データに基づいて、乗員室の快適指数の値を推定するステップと、
推定値を目標値と比較するステップと、
推定値が目標値に適合しない場合には、入力データの一部またはすべてに個別にまたは組み合わせて作用するステップと、
目標値への快適指数の値の収束を確実にするように、乗員室の快適指数値を推定するステップと、推定値を目標値と比較するステップと、入力データに作用するステップとを反復態様で繰り返すステップとを含む最適化方法。
【請求項2】
音および振動の性能の品質を規定する基準が、可動乗員室全体、または乗員室の機器の部品または品目に関連付けられる測定可能な物理的指数からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
物理的指数が、特に、乗員室の一定の点における音圧のレベルと、乗員室の一定の点における振動の動き、速度、または加速度のレベルと、乗員室の一定の点における心理音響学的指数または了解度指数と、機器の部品または品目によって放射される音響出力のレベルと、機器の部品または品目によって導入される力のレベルと、機器の一定の部品または品目の吸音率と、機器の一定の部品または品目の遮音と、機器の一定の部品または品目によって提供される振動減衰率と、機器の2つの部品または品目の間の固定系によって提供される振動減衰とを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
利用者が、絶対要件のリストを確立し、該絶対要件は、不可欠と見なされ、かつ作用しないことは緊急事態であると考えられる一定の機能を確実にするために必ず満たさなければならず、利用者がさらに、発展範囲に関連付けられる未規定の要件のリストを確立し、該未規定の要件は、すなわち、それら未規定の要件の値が、可変であってもよい割合または範囲を規定することによって、可動乗員室の全体的な品質を損なうことなく値が変化してもよい特性であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
入力データが、値、モーダルベース、伝達関数、スペクトル、またはインタスペクトルなどの形で、車両および車両の構成要素の幾何形状および/または寸法、材料の物理的特性値、ならびに音および振動の励起に対する車両の構成要素の挙動状態を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
設計手段が、音および振動の性能の品質を規定する基準の目標値と相関されるように設計される大きさを推定し、該大きさを目標値と比較するために用いられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記設計手段が、快適指数の値を推定するための任意のステップの前に規定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
設計手段が、実験的アプローチおよび/または完全に数値予測的アプローチに基づいていることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
絶対要件によって凍結される入力データを依然として変更しない間、または未規定の要件に関する枠組みの設定の中で、未規定の要件に関連する入力データを改変することによって、または任意の要件に関係ない入力データを自由に改変することによって、入力データが改変されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
引き起こされた問題の複雑さに応じて、十分であると判断された複数回の反復の後、設定された入力データが、目的を達成することを可能にしない場合には、特に入力データと、必要に応じて要件とを再規定することによって、目的が再規定されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
最適化方法が終了すると、目的を達成することを可能にした入力データのリストが確立されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
窓ガラスユニットの放射モードの形状は、前記窓ガラスユニットが音場または振動場によって励振される場合には、空間的な態様で改変されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
窓ガラスユニットに関して、乗員室の1つまたは複数の空洞モードと連結される少なくとも1つの放射モードまたは複数の放射モードが、除去されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
窓ガラスユニットの放射モードが、乗員室の空洞モードに対して周波数に関してずれていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
音の現象が、乗員室における放射に対して逆位相で発生されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
窓ガラスユニットと乗員室との間で結合される周辺シールの材料の性質に基づいて、動作がなされることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
窓ガラスユニットと乗員室との間の機械的な連結が、改変されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
乗員室の全体的な設計を行うことを意図する組立業者によって、および/または乗員室の一部の設計を行うことを意図する少なくとも1つの機器供給業者によって適用されることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
車両、特に自動車、トラック、バス、農業用機械、または列車用の乗員室に適用されることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
航空機、船舶、または潜水艦用の乗員室に適用されることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−510550(P2009−510550A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530589(P2008−530589)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050910
【国際公開番号】WO2007/034113
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(399052888)サン−ゴバン グラス フランス (23)
【Fターム(参考)】