説明

可動接点体及びこれを用いたスイッチ

【課題】各種電子機器の操作に用いられる可動接点体、及びこれを用いたスイッチに関し、簡易な構成で、多様な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】感圧導電層12上方のベースシート11上面に略ドーム状の可動接点15を載置すると共に、感圧導電層12の外周を下方へ略リング状に突出形成することによって、感圧導電層12の中央部と外周部から、複数の電気的接離と抵抗値変化が得られるため、簡易な構成で、多様な操作の可能な可動接点体17、及びこれを用いたスイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられる可動接点体、及びこれを用いたスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電子カメラ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むに伴い、これらの操作に用いられる可動接点体やスイッチにも、安価で多様な操作の行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の可動接点体やスイッチについて、図5を用いて説明する。
【0004】
なお、この図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図5は従来のスイッチの断面図であり、同図において、1は可撓性を有するフィルム状のベースシート、2は合成樹脂内にカーボン等が分散された感圧導電層で、ベースシート1下面に感圧導電層2が形成されている。
【0006】
また、3は絶縁樹脂製のスペーサで、ベースシート1下面に感圧導電層2を囲むように形成されると共に、スペーサ3下面には接着層3Aが設けられて、可動接点体4が形成されている。
【0007】
さらに、5は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、上面には複数の固定接点6が設けられると共に、この配線基板5上面にベースシート1が貼付され、感圧導電層2が複数の固定接点6と所定の間隙を空けて対向して、スイッチが構成されている。
【0008】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話や電子カメラ等の電子機器の操作面に装着されると共に、感圧導電層2中央上方に押釦(図示せず)等が上下動可能に配置され、複数の固定接点6が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0009】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子等の表示手段(図示せず)に、氏名や機能等の複数のメニューやカーソル(図示せず)等が表示された状態で、押釦等を下方へ押圧操作すると、この下面に押圧されてベースシート1中央部が下方へ撓み、この下面の感圧導電層2が複数の固定接点6に接触することによって、複数の固定接点6が感圧導電層2を介して電気的に接続される。
【0010】
また、この後、さらに押圧力を加えると、この押圧力によって感圧導電層2の複数の固定接点6への接触面積が増えるため、複数の固定接点6の間の抵抗値が小さくなり、電子回路への出力電圧が変化する。
【0011】
そして、この複数の固定接点6の電気的接続や、抵抗値の変化を電子回路が検出し、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば、固定接点6の電気的接続が行われた場合には所定の速度で、さらに押圧され抵抗値が変化した場合には、これより速い速度で移動させる。
【0012】
つまり、機器の表示手段を見ながら、押釦等への押圧力を変えて押圧操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を異なる速さで移動させて、メニューの選択等を容易に行えるように構成されているものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−311208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の可動接点体及びこれを用いたスイッチにおいては、押圧操作して感圧導電層2を固定接点6に接触させた際の、感圧導電層2を介した複数の固定接点6の電気的接続と、さらに押圧してこの抵抗値を変化させる、押圧力に応じた二つの出力は得られるが、より多様な操作を行おうとした場合には、さらに多くの感圧導電層や固定接点あるいは可動接点等が必要となり、複雑な構成になると共に、使用部品数が増え、高価なものになってしまうという課題があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、多様な操作の可能な可動接点体及びこれを用いたスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明は、感圧導電層上方のベースシート上面に略ドーム状の可動接点を載置すると共に、感圧導電層の外周を下方へ略リング状に突出形成して可動接点体を構成したものであり、スイッチを形成した際、感圧導電層の中央部と外周部によって、複数の電気的接離と抵抗値変化が得られるため、簡易な構成で、多様な操作の可能な可動接点体を得ることができるという作用を有する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の可動接点体を、上面に固定接点が形成された配線基板上面に、感圧導電層の外周が固定接点と所定の間隙を空けて対向するように貼付してスイッチを構成したものであり、安価で、多様な操作の可能なスイッチを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で、多様な操作の可能な可動接点体、及びこれを用いたスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同操作時の断面図
【図4】同特性図
【図5】従来のスイッチの断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0023】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、ポリイミド等の可撓性を有するフィルム状のベースシートで、この下面には、合成樹脂内にカーボン粉等を分散した低抵抗体層12Aと、下面が細かな凹凸状の高抵抗体層12Bが、重ねて印刷形成された複数の感圧導電層12が設けられている。
【0025】
また、ベースシート11下面には、厚さ20μm前後でポリエステルやエポキシ等の略リング状の絶縁層13が印刷等によって形成され、この絶縁層13によって感圧導電層12中央部が上方へやや窪むと共に、感圧導電層12外周部が下方へ略リング状に突出形成されている。
【0026】
そして、14はベースシート11と同様の可撓性を有するフィルム状のカバーシート、15は略ドーム状で銅合金や鋼等の導電金属薄板製の可動接点で、カバーシート14下面に複数の可動接点15が、アクリルやゴム等の接着剤(図示せず)によって貼付されている。
【0027】
さらに、このカバーシート14がベースシート11上面に重ねて貼付され、複数の感圧導電層12上方のベースシート11上面に、複数の可動接点15が載置されると共に、可動接点15中央上方のカバーシート14上面には、絶縁樹脂等によって突起部14Aが形成されている。
【0028】
そして、16はポリエステルやエポキシ、不織布等のスペーサで、ベースシート11下面に感圧導電層12を囲むように形成されると共に、スペーサ16下面にはアクリルやゴム等の接着層16Aが設けられて、可動接点体17が構成されている。
【0029】
また、18はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、あるいは紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面には銅箔等によって複数の配線パターンが形成されると共に、上面にはカーボンや銀、銅箔等によって、略円形状の中央固定接点19Aと、これを囲む略円弧状で一対の外周固定接点19Bから形成された、複数の固定接点19が設けられている。
【0030】
さらに、この配線基板18上面に可動接点体17が、感圧導電層12の外周部下面が固定接点19と20μm前後の所定の間隙を空けて対向するように、接着層16Aによって貼付されて、スイッチが構成されている。
【0031】
なお、これら複数の可動接点15は、図2に示すように、カバーシート14下面の左右及び前後方向に貼付された四つの可動接点15は、同じく下面の左右及び前後方向に四つの感圧導電層12が形成された、ベースシート11上面に載置されているが、中央の可動接点15のみはベースシート11中央の貫通孔を挿通し、配線基板18中央の固定接点19の、略リング状の外周固定接点19C上に載置されている。
【0032】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話や電子カメラ等の電子機器の操作面に装着されると共に、上方に略リング状の操作体やこの中央に取付けられた押釦(図示せず)等が揺動及び上下動可能に配置され、複数の固定接点19が配線パターン等を介して、マイコン等から形成された機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0033】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子等の表示手段(図示せず)に、氏名や機能等の複数のメニューやカーソル(図示せず)等が表示された状態で、操作体の左右または前後いずれかの端部を下方へ揺動操作すると、図3(a)の断面図に示すように、この下面の突起部14Aが押圧されて、左右または前後いずれかの、カバーシート14や可動接点15が下方へ移動し、ベースシート11が下方へ撓んで、この下面の下方へ略リング状に突出形成された感圧導電層12外周部が、固定接点19の一対の外周固定接点19Bに接触することによって、一対の外周固定接点19Bが感圧導電層12外周部を介して電気的に接続される。
【0034】
また、この後、さらに押圧力を加えると、感圧導電層12外周部の下面には細かな凹凸状の高抵抗体層12Bが形成されているので、この押圧力によって感圧導電層12外周部の一対の外周固定接点19Bに対する接触面積が増えるため、一対の外周固定接点19Bの間の抵抗値が小さくなり、電子回路への出力電圧が変化する。
【0035】
つまり、このような押圧力が変化した操作に応じて、一対の外周固定接点19Bから電子回路へは、図4の特性図に示すような、出力電圧V1が出力される。
【0036】
そして、この後、さらに押圧し続け所定の押圧力が加わると、図3(b)に示すように、可動接点15がクリック感を伴って下方へ弾性反転して、図4に示すように、操作力がP1からP2に変化し、この直後に感圧導電層12中央部が中央固定接点19Aに接触して、中央固定接点19Aと外周固定接点19Bが感圧導電層12を介して電気的に接続される。
【0037】
さらに、この状態で押圧力を加えると、感圧導電層12中央部の中央固定接点19Aに対する接触面積が増えるため、中央固定接点19Aと外周固定接点19Bの間の抵抗値が小さくなり、電子回路への出力電圧が変化して、図4に示すような、出力電圧V2が出力される。
【0038】
すなわち、所定の感圧導電層12や可動接点15を押圧操作すると、先ず、一対の外周固定接点19Bから電子回路へ出力電圧V1が出力され、この後、さらに押圧力を加えると、可動接点15が弾性反転した後、中央固定接点19Aと外周固定接点19Bから出力電圧V2が出力される。
【0039】
なお、押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点15上方へ弾性反転すると共に、ベースシート11も弾性復帰力によって元の状態に戻るため、感圧導電層12下面が中央固定接点19Aや一対の外周固定接点19Bから離れて、これらが電気的に切断された図1の状態に復帰する。
【0040】
そして、この中央固定接点19Aや一対の外周固定接点19Bの、複数の電気的接離と抵抗値の変化を電子回路が検出し、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば、所定の速度やより速い速度等、様々な速度で移動させる。
【0041】
また、このようにカーソル等が所望のメニュー上に位置した状態で、操作体中央の押釦を下方へ押圧操作すると、中央の可動接点15が弾性反転して、中央固定接点19Aと外周固定接点19Cが可動接点15を介して電気的に接続され、これを電子回路が検出して、例えば、メニューの確定や次メニューの表示等が行われる。
【0042】
つまり、機器の表示手段を見ながら、操作体の左右または前後の端部への押圧力を変えて揺動操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を様々な速さで移動させて、メニューの選択等を行うと共に、中央の押釦を押圧操作することによって、メニューの確定や次メニューの表示等が行えるように構成されている。
【0043】
そして、この時、上述したように一回の操作で、先ず感圧導電層12外周部が、一対の外周固定接点19Bに接触して出力電圧V1が出力され、次に感圧導電層12中央部が、中央固定接点19Aに接触して出力電圧V2が出力されるため、これらの複数の電気的接離と抵抗値変化によって、例えば、表示されたメニュー上のカーソル等を様々な速度で移動できるようになっている。
【0044】
すなわち、絶縁層13によって感圧導電層12の外周を下方へ略リング状に突出形成することで、この感圧導電層12の中央部と外周部によって、複数の電気的接離と抵抗値変化が得られるため、他の固定接点や可動接点等の構成部品を設けなくとも、簡易な構成で、多様な操作が行えるように構成されている。
【0045】
さらに、感圧導電層12上方のベースシート11上面に略ドーム状の可動接点15を載置して、この可動接点15が弾性反転する前に出力電圧V1を出力し、弾性反転した後に出力電圧V2を出力することによって、どの出力電圧が出力されているかという操作状態を明確に感知できると共に、クリック感のある良好な操作感触を得ることができる。
【0046】
このように本実施の形態によれば、感圧導電層12上方のベースシート11上面に略ドーム状の可動接点15を載置すると共に、感圧導電層12の外周を下方へ略リング状に突出形成することによって、感圧導電層12の中央部と外周部から、複数の電気的接離と抵抗値変化が得られるため、簡易な構成で、多様な操作の可能な可動接点体17、及びこれを用いたスイッチを得ることができるものである。
【0047】
なお、以上の説明では、中央に押圧操作用の可動接点15を配置すると共に、この周囲の左右及び前後に、揺動操作用の複数の感圧導電層12や可動接点15を設けた、いわゆる複合スイッチの構成について説明したが、例えば単独のプッシュスイッチや、左右方向に揺動操作可能なシーソスイッチ等、様々なスイッチにおいても本発明の実施は可能である。
【0048】
また、ベースシート11下面に低抵抗体層12Aと高抵抗体層12Bを積層して、感圧導電層12を形成した構成について説明したが、シリコーンゴム等にカーボン等の導電粒子を分散して感圧導電層を形成した構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による可動接点体及びこれを用いたスイッチは、簡易な構成で、多様な操作の可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0050】
11 ベースシート
12 感圧導電層
12A 低抵抗体層
12B 高抵抗体層
13 絶縁層
14 カバーシート
14A 突起部
15 可動接点
16 スペーサ
16A 接着層
17 可動接点体
18 配線基板
19 固定接点
19A 中央固定接点
19B、19C 外周固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状のベースシートと、この下面に形成された感圧導電層と、この感圧導電層上方の上記ベースシート上面に載置された略ドーム状の可動接点からなり、上記感圧導電層の外周を下方へ略リング状に突出形成した可動接点体。
【請求項2】
請求項1記載の可動接点体を、上面に固定接点が形成された配線基板上面に、感圧導電層の外周が上記固定接点と所定の間隙を空けて対向するように貼付したスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−89238(P2012−89238A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232182(P2010−232182)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】