可変データ平版印刷システム用のインク流動性制御サブシステム
【課題】湿潤溶液の可変パターン形成と各種態様の可変作像平版マーキングシステムの改良法を提供する。
【解決手段】可変データ平版印刷システム10の作像面に塗布するインクの流動性を制御するインク流動性制御サブシステムは、インク貯槽と、インク貯槽からのインクを第1のインク温度にて作像面に塗布するインク塗布サブシステム46と、インクの複素粘弾性係数を、このインクを作像面から下地へ転写する前にインク貯槽での第1の値から第2の値へ改変するインク複素粘弾性係数制御サブシステムとを備える。インク複素粘弾性係数制御サブシステムには、光硬化ステージ等の一部硬化ステージを設けることができる。インクには、一部硬化を支援する光重合開始剤を任意選択として含めることができる。あるいは、インク複素粘弾性係数制御サブシステムは、インク予熱サブシステムおよび/または塗布後冷却システムで構成する。
【解決手段】可変データ平版印刷システム10の作像面に塗布するインクの流動性を制御するインク流動性制御サブシステムは、インク貯槽と、インク貯槽からのインクを第1のインク温度にて作像面に塗布するインク塗布サブシステム46と、インクの複素粘弾性係数を、このインクを作像面から下地へ転写する前にインク貯槽での第1の値から第2の値へ改変するインク複素粘弾性係数制御サブシステムとを備える。インク複素粘弾性係数制御サブシステムには、光硬化ステージ等の一部硬化ステージを設けることができる。インクには、一部硬化を支援する光重合開始剤を任意選択として含めることができる。あるいは、インク複素粘弾性係数制御サブシステムは、インク予熱サブシステムおよび/または塗布後冷却システムで構成する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在、オフセット平版印刷は、印刷の一般的な方法である。(本願明細書において、用語「印刷」と「マーキング」は互換可能とする)。一般の平版プロセスでは、平板や胴面やベルト等であってもよい版板が、疎水性および親油性材料で出来た「画像領域」と親水性材料で出来た「非画像領域」とを有するように形成される。画像領域は、インク等の印刷材料あるいはマーキング材料で占有される最終印刷物(すなわち、目標とする下地)の領域に対応する領域であるが、非画像領域は前記マーキング材料で占有されない最終印刷物上の領域に対応する。親水性領域は、一般に湿し水(通常、水と少量のアルコールに加え表面張力を低減する他の添加剤および/または界面活性剤もまた含む)と呼ばれる水をベースとした流体を受容して容易に湿潤させる。疎水性領域は、湿し水をはじいてインクを受容するが、親水性領域上に形成される湿し水は、インクをはじく流体「解放層」を形成する。それ故、版板上の親水性領域は、非印刷領域、すなわち最終印刷物の「非画像領域」に対応する。
【0002】
インクは、用紙等の下地に対し直接転写することができ、あるいはオフセット印刷システム内のオフセット(ブランケット)胴等の中間面に塗布することができる。オフセット胴は、下地のきめに形状適合させることのできる面を有する形状適合可能な被覆すなわちスリーブで覆われており、下地は、作像版の表面頂部−谷部間の深さを若干上回る表面頂部−谷部間の深さを有することができる。また、オフセットブランケット胴の表面粗さは、斑点模様等の欠陥の無い下地に印刷材料のより均一な層を供給するのに役立つ。オフセット胴から下地への画像転写には、十分な圧力が用いられる。オフセット胴と圧胴との間での下地の締め付けがこの圧力をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、可変データ平版印刷とオフセット平版印刷を提供するシステムおよび方法に関し、上記に示した欠点に加えて本開示から明らかになる他の欠点にも対処する。本開示は、湿潤溶液の可変パターン形成と前述の方法とに基づく各種態様の可変作像平版マーキングシステムの改良に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、印刷インクの流動性を改変する方法とシステムとが提供される。インク流動性は、前述の再作像可能表層にインクを塗布した後、改変することができる。この改変は流れの初動のし易さをもたらすのに役立ち、インクが親水性領域を覆う非マーキング領域から露出疎水性領域を覆うマーキング領域空隙内に簡単に分離され、続いてより粘性のある粘着状態になり、再作像可能表層から下地あるいはオフセット・ブランケットドラムへの完全な転写を促進するのに役立つ。
【0005】
インク給体ロールから再作像可能面へのインク転写中、インクの粘弾性係数を十分低くし、インク層がインク給体ロールの表面から容易に分離して再作像可能面へ転写され、再作像可能面上に欠陥の無い被覆(インク層)が形成されるようにしなければならない。さらに、再作像可能面から下地へのインクの転写時点で、インクの粘弾性係数を十分高くし、インク層が分離に抵抗し、実質全てのインクが再作像可能面から下地へ転写され、それによって過剰な清掃の必要性を伴わずに、次の画像形成準備の整った実質的に清浄な再作像可能面を残す必要がある。
【0006】
したがって、再作像可能面との間の転写を向上させるようにインクの流動性(粘弾性係数)を操作することが望ましいこともあることが理解される。これは、様々なサブシステムにより様々な方法で達成することができる。
【0007】
少量の低分子量モノマーを添加するか、あるいはインク配合内により低粘度のオリゴマーを用いることで、例えば改善された初期インク流を得ることができる。再作像可能表層上へのインク塗布に続く部分的な架橋UV硬化を遂行するUVインクの硬化は、その後にインクを再作像可能表層上に存在させたままインクの凝集性と粘性を増大させる。別の選択肢として、インクは第1の暖温(インク/マーキング材の粘弾性係数が十分に低く、再作像可能面への欠陥を伴わない転写を保証する温度)にて再作像可能面上に塗布し、続いて加熱時点と下地への転写時点との間、再作像可能面上で冷却し、分離に抵抗する十分に高い粘弾性係数を保証するような低い温度を達成することができる。
【0008】
インクの凝集性を増大させる別の選択肢は、インク組成物中に低分子量の添加剤(溶剤等)を含有させ、再作像可能表層上に置かれている間にそこから逸出させるものである。本実施形態では、インクの流動性はインクに含まれる溶剤(例えば、有機溶剤やアイソパー溶剤や他の任意の「粘性低減」液)の量を、例えばインク給体ロールから再作像可能面へのインク転写に先立つ適当な溶剤の添加と、続く再作像可能面から下地へのインクの転写に先立つ再作像可能面上のインク層からの所望量の溶剤の除去(例えば、空気等の搬送気体への蒸発および/または吸収を介し)を調整することで、能動的に操作することができる。再作像可能面への転写前のインク内の高い溶剤含有量は、再作像可能面の作像領域上に所望の厚さの欠陥の無い層を形成するのに必要な範囲へ粘弾性係数を低減する筈であることを理解されたい。同様に、下地への転写直前のインク内の低い溶剤含有量は、再作像可能面から下地への転写中の分離にインク層が抵抗できるようにするのに必要な範囲へインク粘弾性係数を増大させ、それによって前記した如く転写後清掃を最小限にしか必要としない清浄な再作像可能面を残す筈であることを理解されたい。
【0009】
本発明において、用語「光学波長」や「放射線」あるいは「光」は、湿潤溶液のパターン形成を達成するのにシステム内で使用するのに適した電磁放射線の波長を指し、これらの電磁波長が人の裸眼に通常可視であるか否かとは無関係であり、可視光波長、紫外線(UV)波長、赤外線(IR)波長、マイクロ波放射線等を含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の一実施形態による、可変平版印刷用システムの側面図である。
【図2A】図2Aは吸収性粒子を再作像可能表層内に分散させた本発明の一実施形態による、中間層を用いない場合と用いる場合それぞれの作像ドラム、プレート、またはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図2B】図2Bは吸収性粒子を再作像可能表層内に分散させた本発明の一実施形態による、中間層を用いない場合と用いる場合それぞれの作像ドラム、プレート、またはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図3】再作像可能表層を光吸収用に着色した本開示の別の実施形態による、作像ドラムまたはプレートあるいはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図4】再作像可能表層が光学的に透明もしくは半透明であって光学的吸収層上に配置された本開示の別の実施形態による、作像ドラム、プレート、またはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図5】本開示の一実施形態による、その上に塗布されビームBによりパターン形成された湿潤溶液を有する図2に示す再作像部分の拡大切欠き側面図である。
【図6】本開示の一実施形態による、湿潤溶液のパターン形成により露出した湿潤溶液のパターン形成層と再作像可能表層の一部を覆う均一なインク層を塗布するのに用いるインク塗布サブシステムの側面図である。
【図7】図1に示した硬化サブシステムに代わるフラッシュヒートランプサブシステムを示す本開示の別の実施形態による可変平版印刷用のシステムの側面図である。
【図8】本開示の一実施形態による、ねばねばした粘着性のあるローラと硬質の副次ローラとドクターブレードとを含む清掃サブシステムの側面図である。
【図9】本開示の一実施形態による、2段清掃サブシステムの側面図である。
【図10】残留湿潤溶液を除去する転写後空気ナイフを有する別の清掃システムとインク残渣の粘性と粘着性をさらに増大させる任意選択のUV露光システムの側面図である。
【図11A】図11AはそれぞれRSmとRaを規定するために作像面のきめの特徴空間と特徴振幅とを説明する図である。
【図11B】図11BはそれぞれRSmとRaを規定するために作像面のきめの特徴空間と特徴振幅とを説明する図である。
【図12】本開示の一実施形態による、湿潤溶液のパターン形成層と湿潤溶液のパターン形成により露出した再作像可能表層の一部に対するインクの予加熱を介して制御された流動性を持たせたインクの均一層の塗布に用いるインク塗布サブシステムの側面図である。
【図13】本開示の一実施形態による、ローラの長手方向軸に平行な方向の個別に対処可能な領域へ分割したインクローラの斜視図である。
【図14】本開示の一実施形態による、転写ニップローラと比較して相対的にずっと大きな直径のインク塗布ローラを示すインク塗布ローラと転写ニップローラの側面図である。
【図15】3つの異なるインク配合について、100Hz発振周波数での複素粘度対温度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照するに、本開示の一実施形態による可変平版印刷用のシステム10が図示されている。システム10は、作像部材12、本実施形態ではドラムを備えるが、等価的に、下記に詳述する幾つかのサブシステムによって囲まれたプレートやベルトとすることができる。作像部材12はニップ16において下地14にインク画像を塗布し、ニップ16では作像部材12と加圧ローラ18との間で下地14が締め付けられる。紙、プラスチック、複合シートフィルム、セラミック、ガラス等の多種多様な下地を用いることができる。本説明の明瞭さと簡潔さに配慮し、我々は、下地として用紙を想定するが、本開示がこの形態の下地に限定されないことを理解されたい。例えば、厚紙、波形包装材、木材、セラミックタイル、織物(例えば、衣服、生地、衣類等)、透明フィルムもしくはプラスチックフィルム、金属箔等の他の下地を含めることができる。これらに限定はされないが、包装に有用な金属インクや白色インクを含む10重量%を上回る顔料密度を有するものを含む様々な露光寛容度のマーキング材料を用いることができる。本開示のこの部分の明瞭さと簡潔さとに配慮し、我々は、インクという用語を概ね用いるが、この用語は、本願明細書に開示するシステムと方法とに適用することのできるインク、顔料、他の材料等の一定範囲のマーキング材料を含むと理解される。
【0012】
作像部材12からのインク塗布画像は、本開示を逸脱することなく、小から大まで多種多様な下地規格に適用することができる。一実施形態では、作像部材12は、少なくとも29インチ幅とし、標準的な四葉折り丁頁あるいはより大きな媒体規格に対応できるようにしてある。作像部材12の直径は、その周面周りの様々なサブシステムに対応するよう十分大きくしなければならない。一実施形態では、作像部材12は、10インチの直径を有するが、本開示の用途に応じてより大きな直径あるいはより小さな直径も妥当であろう。
【0013】
図2を参照するに、作像部材12の一部が断面で示される。一実施形態では、作像部材12は、構造的装着層22(例えば、金属、セラミック、プラスチック等)上に形成した薄い再作像可能層20を備え、これらが合わさって再書き込み可能な印刷ブランケットを形成する再作像可能部分24を形成する。再作像可能部分24にはさらに、再作像可能表層20の下側で構造的装着層22の上側もしくは下側のいずれかに図2Bに示した中間層21等の追加の構造層を設けることができる。中間層21は、電気的絶縁性(あるいは導電性)でかつ遮熱性(あるいは伝熱性)とし、多様な圧縮性とデュロメータ等を有することができる。一実施形態では、中間層21は、極めて薄い接着剤層を合わせて積層した閉塞セルポリマー発泡シートと編組みメッシュ層(例えば、木綿)とで構成される。通常、ブランケットは、最適化された粗さと表層エネルギ特性とを有するよう設計された薄い上面表層20を有する1〜3mmの間の厚さである3〜4枚の層を用い、圧縮性とデュロメータの点で最適化される。再作像可能部分24は、独立ドラムやウェブあるいは胴コア26周りに巻き付けられた平坦なブランケットの形であってもよい。別の実施形態では、再作像可能部分24は、胴コア26上に配置した連続的な弾性スリーブである。平板、ベルト、およびウェブ構成(下敷きとなるドラム構成により支持されてもされなくてもよい)もまた、本開示の範囲内である。下記説明する際、再作像可能部分24は胴コア26により担持されていることを前提としているが、本開示では前述した多くの異なる構成を熟慮してあることを理解されたい。
【0014】
再作像可能表層20は、例えばシリコーンを強化し、そのデュロメータを最適化するのに役立つシリカ等の耐摩耗性充填材を有するポリジメチルシロキサン(PDMS、より一般的にはシリコーンと呼ばれる)等のポリマーからなり、シリコーン材料を硬化させて架橋させるのに役立つ触媒粒子を含むことができる。別の選択肢として、触媒硬化(別名白金硬化)シリコーンとは対照的なシリコーン加湿硬化(別名スズ硬化)シリコーンを用いることができる。図2Aに戻るに、再作像可能表層20には、任意選択としてレーザエネルギを極めて効率よく吸収することのできる少量の放射線感応微粒材料27をその中に分散含有させることができる。一実施形態では、放射線感度は、少量のカーボンブラックを例えばマイクロスケール粒子(例えば、平均粒径10μm未満)もしくはナノスケール粒子(例えば、平均粒径1000nm未満)あるいはナノチューブの形状でポリマーに混合することで得ることができる。シリコーン中に配置することのできる他の放射線感応材料には、グラフェン、酸化鉄ナノ粒子、ニッケルメッキしたナノ粒子等が含まれる。
【0015】
別の選択肢として、再作像可能表層20は、着色するか、そうでなければ図3に示す如く、均一に放射線感応性となるよう処置することができる。さらにまた、再作像可能表層20は、下記にさらに説明する光源からの光学エネルギを実質透過させるものとすることができ、構造的装着層あるいは層群22は、図4に示す如くそうした光学エネルギを吸収することができる(例えば、層22は少なくとも部分的に吸収性である成分を含む)。
【0016】
再作像可能表層20は、界面においてインクに対して弱い付着力を有するが、インクに対しては良好な親油性湿潤特性を持ち、再作像可能面の均一な(ピンホール、ビード、またはその他の欠陥が無い)インク塗布を促し、かつ下地へのインクの後続の前方転写離脱を促す必要がある。シリコーンは、この特性を有する一つの材料である。ポリウレタンやフルオロカーボン等の特定の混合物等、この特性を備える他の材料を代替的に採用することもできる。湿潤溶液(水をベースとする湿し水)の適切な湿潤を提供する点で、シリコーン面は必ずしも親水性とは限らず、実際には疎水性とすることができ、何故ならシリコーングリコールコポリマー等の湿潤界面活性剤を湿潤溶液に添加することにより、湿潤溶液がシリコーン面を湿潤できるからである。
【0017】
したがって、水をベースとした溶液は本開示の実施形態に用いることのできる湿潤溶液の一実施形態であるが、疎油性で気化可能で分解可能、そうでなければ選択的に除去可能な低表面張力を有する他の非水性湿潤溶液を用いることもできることは、理解されるであろう。この分類の液体は、ミネソタ州セントポール市の3M社が製造するNovec brand Engineered Fluids等のハイドロフルオロエーテル(HFE)類である。これらの液体は、本開示に照らし下記の有益な特性を有する。(1)気化熱が水よりもずっと低く、それは湿潤溶液を選択的に蒸発させて潜像を形成するのに光学レーザを用いるときに、所与の印刷速度に要求されるより低いレーザ出力や、所与のレーザ出力に対するより高い印刷速度に転換される。(2)より低い熱容量で、同じ利点に転換される。(3)それらは、蒸発後に固形残渣を実質的に一切残さず、そのことで清掃要件が緩和され、かつ/または長期安定性が改善されることに転換することができる。(4)蒸気圧力と沸点は巧みに処理することができ、それらは空間的に選択的に強制された蒸発プロセスの改善された耐性に転換することができる。(5)それらは、作像部材の適切な湿潤に必要な低い表面張力を有する。(6)それらは、環境と毒性の点で良性である。湿潤溶剤の導電性を制御するのに、追加の添加剤を用いることができる。他の適当な代替例には、上記特性の全てあるいは大半を有するフロリナートや当分野で公知の他の液体が含まれる。これらの種の流体は、その非希釈形態で使用されるだけでなく、水溶性や非水溶性の溶液中の成分あるいはエマルジョンにも使用できることもまた、理解されたい。
【0018】
加えて、シリコーン中の充填材ナノ粒子の厳密な量と、加えて異なる分布のポリマー鎖長や末端基キャッピング化学物質で構成することのできるシリコーン材料の厳密な化学的性質もまた制御し特定することで、良好な湿潤特性を提供するようにシリコーンの表面エネルギを最適化することができる。例えば、低濃度のシリカ充填材を用いたスズ触媒作用による単一成分硬化シリコーンが24〜26ダイン/cmの間の分散表面エネルギを有することが分かっている。マーキング材料の表面張力を劇的に低減し、シリコーンに対するその表面湿潤特性を改善すべく、マーキング材料に対して特定の添加剤を添加することもできる。これらの添加剤には、例えば簡単な分散と硬化用に他のポリマー群もまた取り入れた公知のコポリマーフルオロもしくはシリコーン化合物をベースとするレベリング剤を含めうる。例えば、インク表面張力を21ダイン/cmに低減することのできるレベリング剤である。
【0019】
再作像可能表層20としてシリコーンを用いる場合、シリコーンの硬化と架橋の触媒作用に役立つよう他の粒子27を層20内に埋め込むこともできる。
【0020】
一実施形態によれば、再作像可能表層20は、湿潤溶液をより良く捕捉しかつ所望の非作像領域境界を越えた拡散を阻止すべく、所望の湿潤溶液層の厚さの程度の粗さを有する。例えば、再作像可能表層20は、下記の如く定義される被計測表面粗さ特性RSm,Raを有することができる。
【数1】
および
【数2】
さらに、図11Aと図11Bを参照するに、ここではRSmは試料長L内で輪郭要素の幅X(s)の平均値として定義され、Raは試料長Lに対する平均基準線計測値に対する平均化ピークに関連付けられる。このようにして、RSmはピーク間隔の特性を示し、Raはピーク高さの特性を示す。この種の定義は、寸法A〜L2を有する特性サンプリング領域Aを用いて二次元に拡張することができる。
【0021】
頂部(ピーク)と谷部(バレー)を若干無作為的に分散させ、直線スクリーンパターンとのモアレ干渉の可能性を低減することが望ましい。加えて、頂部間の空間距離は最小の直線スクリーンドット寸法よりも若干小さく、例えば10μm未満とすることが望ましい。この粗さは表面が湿潤溶液を簡単に保持するのに役立ち、一方でモアレ効果を取り除き、さらに下記に説明するように、インク塗布の均一性と転写とを改善するよう機能する。一実施形態では、RSmを約20μm未満、Raを約4.0μm未満とし、より具体的な実施形態では、RSmを10μm未満、Raを0.1μmと4.0μmの間とする。
【0022】
加えて、再作像可能表層20は、その表面のインクを多孔質あるいは粗い紙媒体へ均一に転写し切るべく、耐摩耗性とし、(たとえ張力を受けても)若干の撓曲性を可能としなければならない。再作像可能表層20は、適当な弾性とデュロメータおよび異なるレベルの粗さを有する異なる媒体タイプに対してインクを被覆するのに必要な十分な撓曲性とを獲得できるよう十分な厚さとすることができる。勿論、システムは特定の媒体タイプに対する印刷用に設計し、様々な媒体タイプに対応する必要性を取り除くことができる。一実施形態では、再作像可能表層20を形成するシリコーン層の厚さは0.5μm〜4mmの範囲とする。
【0023】
最後に、再作像可能表層20は、均一性を有し、かつビード形成や乾燥を伴うことなく、その表面へのインク流を促進しなければならない。シリコーン等の様々な材料を製造あるいは作成し、一定範囲の表面エネルギを持たせることができ、この種のエネルギは添加剤を用いて調整することができる。再作像可能表層20は、名目上は低い値の動的化学的付着力を有するが、インクの乾燥やビード形成を伴うことなくインクの効果的な湿潤/親和性を増進させるべく、十分な表面エネルギを持たせることができる。
【0024】
図1に戻るに、作像部材12周りの第1の位置に配置したのが湿潤溶液サブシステム30である。湿潤溶液サブシステム30は、再作像可能表層20の表面を均一に湿潤する一連のローラ(湿潤ユニットと呼ぶ)を概ね備える。多くの異なるタイプおよび構成の湿潤ユニットが存在することが、熟知されている。湿潤ユニットの目的は、均一で制御可能な厚さを有する湿潤溶液32の層をもたらすことにある。一実施形態では、この層は0.2μm〜1.0μmの範囲で、ピンホールを持たず極めて均一である。湿潤溶液32は、主に水と、任意選択として、その固有表面張力を低減し、加えて後のレーザによるパターン形成に必要な気化エネルギを下げるべく添加される少量のイソプロピルアルコールあるいはエタノールとで構成することができる。加えて、適当な界面活性剤を理想的には少量の重量%だけ添加し、再作像可能表層20に対する大量の湿潤を増進させる。一実施形態では、この界面活性剤は、少量の重量%の添加で22ダイン/cm未満の均一な拡散と表面張力とを増進するトリシロキサンコポリオール化合物やジメチコーンコポリオール化合物等のシリコーングリコールコポリマー系列からなる。他のフルオロ界面活性剤もまた、考えられる表面張力低減剤である。任意選択として、湿潤溶液32に、下記にさらに説明するパターン形成工程においてレーザエネルギを一部吸収する放射線感応染料を含有させることができる。
【0025】
化学的方法に加え、あるいは置き換えて、物理的/電気的方法を用い、再作像可能表層20上への湿潤溶液32の湿潤を促進することができる。一例では、静電補助剤を湿潤ローラと再作像可能表層20との間の高電界の印加により作動させ、再作像可能表層20上に湿潤溶液32の均一膜を吸着する。この電界は、湿潤ローラと再作像可能表層20との間に電圧を印加するか、あるいは再作像可能表層20自体に一過性ながら十分持続する電荷を帯電させることで、生成することができる。湿潤溶液32は、導電性とすることができる。それ故、本実施形態では湿潤ローラおよび/または下側再作像可能表層20に対し絶縁層(図示せず)を付加することができる。静電補助剤を用いることで、湿潤溶液からの界面活性剤の低減や除去が可能となる。
【0026】
湿潤溶液サブシステム30による再作像可能表層20上への湿潤溶液32の計量供給に続き、計量供給された湿潤溶液の厚さを、Wenglor Sensors社(オハイオ州ビーバークリーク市)が販売しているような現場用の非接触レーザ光沢センサあるいはレーザコントラストセンサ等のセンサ34を用いて計測する。この種のセンサは、湿潤溶液サブシステム30の制御を自動化するのに用いることができる。
【0027】
厳密で均一な量の湿潤溶液を塗布した後、一実施形態では、光学的なパターン形成サブシステム36を用い、例えばレーザエネルギを用いて湿潤溶液層を像様に蒸発させることで湿潤溶液内に選択的に潜像を形成する。再作像可能表層20が理想的には出来る限り上面28(図2)に近いエネルギの大半を吸収し、湿潤溶液の加熱に浪費されるあらゆるエネルギを最小化するとともに熱の側方拡散を最小化し、高い空間解像能力を維持すべきであることに、留意されたい。別の選択肢として、例えば入射放射線の波長において少なくとも一部吸収性である湿潤溶液内に適当な放射線感応成分を含めることで、あるいは湿潤溶液(例えば、水は2.94μmの波長近傍にピーク吸収帯域を有する)により容易に吸収される適当な波長の放射線源を選択することで、湿潤溶液層自体の中で入射放射(例えば、レーザ)エネルギの大半を吸収することもまた望ましいであろう。
【0028】
再作像可能面上へ湿潤溶液をパターン形成するエネルギを給送する様々な異なるシステムと方法を、本願明細書に開示し特許請求の範囲に記載した様々なシステム構成要素と共に用いることができる点は、理解されるであろう。しかしながら、特定のパターン形成システムや方法が本開示を限定することはない。
【0029】
図5を参照するに、この図は再作像可能表層20上に塗布された湿潤溶液層32を有する再作像可能部分24の領域の拡大図であり、光学的なパターン形成サブシステム36からの光学的なパターン形成エネルギの印加(例えば、ビームB)は、湿潤溶液32の層の一部の選択的蒸発をもたらす。蒸発した湿潤溶液は、システム10を囲む周囲雰囲気の一部となる。これが、再作像可能表層20上に湿潤溶液領域38とインク受容空隙40のパターンを生み出す。作像部材12と光学的なパターン形成サブシステム36との間の例えば矢印Aの方向の相対的な動きが、湿潤溶液32の層の処理方向パターン形成を可能にする。
【0030】
図1に戻るに、湿潤溶液層32のパターン形成に続き、インク塗布サブシステム46を用い、湿潤溶液32の層と再作像可能表層20の上に図6に示すインクの均一層48を塗布する。加えて、空気ナイフ44を任意選択として再作像可能表層20に向け案内し、清浄な乾燥空気供給と制御された空気温度の維持と塵埃汚染の低減とを目的とするインク塗布サブシステム46の前の表層上で空気流を制御することができる。インク塗布サブシステム46は、1以上の形成ローラ46a,46bにオフセットインクを計量供給するアニロックスローラを用いて「キーレス」システムで構成することができる。別の選択肢として、インク塗布サブシステム46は、精密なインク給送速度を特定する電機キーを用いる一連の計量供給ローラを有する、より伝統的な要素で構成することができる。インク塗布サブシステム46の一般的な態様は、本開示の用途に依存し、当業者にはよく理解されるであろう。
【0031】
インク塗布サブシステム46からのインクが再作像可能表層20上を最初に湿潤するようにすべく、インクは、再作像可能表層20(インク受容湿潤溶液空隙40)の露出部分上で分離させるのに十分低い凝集エネルギを有さなければならず、湿潤溶液領域38においてはじかれるのに十分な疎水性も有さなければならない。湿潤溶液は低粘度で疎油性であるため、湿潤溶液で覆われた領域は、当然のことながら全てのインクをはじき、何故なら分離は当然のことながら極めて低い動的凝集エネルギを有する湿潤溶液層内で生ずるからである。湿潤溶液を伴わない領域において、インク間の凝集力がインクと再作像可能表層20との間の付着力を十分に下回る場合、形成ローラニップの出口におけるこれらの領域の間でインクが分離することになる。したがって、用いるインクは、空隙40のより優れた充填と再作像可能表層20へのより優れた付着とを増進させるべく、比較的低い粘度を有するべきである。例えば、それ以外の公知のUVインクを用い、再作像可能表層20がシリコーンで構成される場合、インクの粘度と粘弾性を若干改変してその凝集性を低下させ、それによってシリコーンを湿潤できるようにする必要がありそうである。インク組成物内に少量の低分子量モノマーを添加しあるいはより低い粘性のオリゴマーを用いることで、この流動性の改変を達成することができる。加えて、シリコーン面を良好に湿潤すべくその表面張力をさらに低下させるよう、インクに対し湿潤レべリング剤を添加することができる。
【0032】
この流動力学的な考察に加え、インク組成物が疎水特性を維持し、それが湿潤溶液領域38によってはじかれるようにすることもまた重要である。これは、疎水性で無極性化学基(分子)であるオフセットインク樹脂と溶剤とを選択することで、維持することができる。湿潤溶液が層20を被覆すると、インクは湿潤溶液に素早く分散しあるいは乳化することはできず、湿潤溶液がインクよりもずっと低粘度であるため、膜分離が湿潤溶液層内の全体で発生し、それによって適切な量の湿潤溶液で被覆された層20上の領域へのインクの付着は一切拒まれる。一般に、この湿潤溶液の厚みの被覆層20は、表面のきめの厳密な特性に応じて0.1μm〜4.0μmの間、一実施形態では0.2μm〜2.0μmの間とすることができる。
【0033】
ローラ46aと任意選択のローラ46b上に被覆されるインクの厚さは、分配ローラを用いたローラシステムを介してインクの給送速度を調整し、給送ローラと最終形成ローラ46a,46b(任意選択)との間の圧力を調整し、インクトレイ(46の一部として図示)からの流離を調整するインクキーを用いることで、制御することができる。理想的には、形成ローラ46a,46bに提示されるインクの厚さは、膜分離が発生する際に再作像可能層20への転写が望まれる最終的な厚さの少なくとも2倍とすべきである。均一に形成されたインク担持ピットを有するアニロックスローラを用い、所望のインク粘度を獲得する温度に維持することで、全体のインクの膜厚を制御することのできるキーレスシステムを用いることも可能である。通常、最終的な膜厚は約1〜2μmとすることができる。
【0034】
理想的には、最適化されたインクシステム46は約50対50の比率で再作像可能面上に分離(すなわち、各パスごとに、50%がインク形成ローラ上に残留し、50%が再作像可能面上に転写)される。しかしながら、分離比が良好に制御されている限り、他の分離比も容認可能とすることができる。例えば、70対30の分離では、再作像可能表層20上のインク層は、これが形成ローラの外面上に存するときのその公称厚さの30%となる。インク層の厚さを低減することでさらに分離するその能力を低減することは、良く知られている。この厚さの低減は、残留背景インクを残した状態で再作像可能面から極めて清浄にインクを離脱させるのに役立つ。しかしながら、インクの凝集力すなわち内部粘着性もまた重要な役割を有する。
【0035】
この時点で、所望の2つの競合結果が存在する。まず、インクは、簡単に空隙40内に流入し、続く画像形成向けに適切に配置されるようにしなければならない。さらに、インクを湿潤溶液領域38上で簡単に流し流離させなければならない。しかしながら、湿潤溶液領域38からの分離工程においてインクが互いに固着することは望ましいことであり、究極的には空隙40から下地へ転写される際にインクが下地とそれ自体に付着し、インクの完全転写(空隙40を完全に空にすること)と下地におけるインクの吹き出しの制限の両方を行なうこともまた望ましい。これらの競合結果は、インクが再作像可能表層20上に存在する間に、インクの複素粘弾性率の凝集性成分と粘性成分とを修正することで得ることができる。
【0036】
インクが再作像可能表層20上に存在する間に、インクの凝集性と粘性を増大させる幾つかの方法が、存在する。まずは、一例として200〜450ナノメートル(nm)の範囲の波長で硬化する光学的に硬化可能(光硬化可能)なインクと、再作像可能表層20に対するインク塗布に続き部分的架橋を遂行する流動性(複素粘弾性率)制御サブシステム50とを用いるものである。部分硬化は、再作像可能表層20に対するその付着力に対しインクの凝縮力を増大させる。紫外線(UV)オフセットインクを用いる一実施形態では、この部分硬化はUV誘導アレイ52の出力端に対するインクの露光を含む。UV誘導アレイ52は通常、360〜450nmの範囲の波長を有することができる。長波UV(「近UV」)波長により、過度の表面硬化あるいは表面剥離(これらは最終下地面に対する不適切なインクの付着をもたらすことがある)を引き起こさずに、部分的硬化をインク層の厚さに貫通させることができる。インク配合に対し適当な調合比での異なる光重合開始剤の導入は、表面剥離を低減し、硬化の深さを増大させることができる。加えて、光重合開始剤は、例えば470nmのようなより高い波長で硬化を開始するよう設計することができる。硬化をさらに改善するため、散光源を用いることなく、UV誘導アレイ52を下地上に集束させることができる。これが、浅角表面吸収と光エネルギの反射を低減し、加えて光重合開始剤の効果を場合によって低減する酸素抑制問題を克服するのに有用な光ピーク強度を増大させる。これは、SolidUV Inc.(www.soliduv.com)から市販されているようなUV誘導硬化サブシステムの一部として高開口数(NA)の小型マイクロレンズ等の光学系54を用いるか、あるいは単一の高NA集光レンズを用いることで、達成することができる。CO2、アルゴン、窒素等の不活性ガス(図示せず)を流すことで、より高速塗布に対する酸素抑制を低減することもできる。
【0037】
別の実施形態では、加熱はインクを部分的に硬化させることができる。インクは、紫外線(UV)波長あるいは非UV波長に露光させる等することで、光硬化可能としたり、そうしなかったりできる。熱硬化する非UVオフセットインクでは、任意選択として前述したものに類似のインクに導入される波長適合光重合開始剤と共に、インク凝集性を増大させるのに集束赤外線(IR)ランプを用いることができる。他の硬化方法には、紫外線およびIR放射以外のエネルギや多成分化学硬化等の適用を通じて開始される乾燥や化学的硬化が含まれる。
【0038】
さらに別の実施形態によれば、インクの凝集性と粘性を増大させるシステムや方法は、再作像可能表層20の表面に対し、その上へのインクの塗布に続いて、その場でのインク冷却を採用する。温暖状態では、高分子量の樹脂はよりずっと簡単に互いに流動通過する傾向がある。このことは、温度の増大とともにオフセットインクの粘度の減少をもたらす。比較的暖かくして塗布することで、所望に応じてインクを流動あるいは分離させ、再作像可能面の作像領域を被覆することができる。しかしながら、再作像可能表層20上でインクを冷却すると、その粘度を上昇させることができる。図15は、3つの異なるインク配合について、100Hz発振周波数での複素粘度対温度のプロットである。いずれの場合も、冷却が粘性と凝集性を増大させ、下地14への転写に役立つことに留意されたい。例えば、インクを30℃から20℃へ冷却することでインクの粘性を効果的に倍増し、下地14に対するその粘着性を大幅に増大させる。インクの内部凝集性の上昇が、再作像可能表層20からの効率的な転写を促す。一実施形態によれば、この凝集性変更方法は、59等のダクトを介する中心ドラムの内面の水冷の如く前記作像面に対向する前記作像部材の表面に対し冷却剤を導入し、あるいはインクを塗布した後、ただしインクが最終的な下地へ転写される前にジェット58から再作像可能面上に冷気を吹き付けることにより、実行することができる。他の冷却代替例には、前記作像面に対し離間対向させた冷却ガス源や、前記作像部材内に配置した冷却ガス源や、前記作像面に対し離間対向させた電気冷却源や、作像部材内に配置した電気冷却源や、前記作像部材内に配置した冷却流体源や、前記作像部材内に配置した化学的冷却源や、再作像可能表層20周囲の空気をより低温に維持することが含まれる。本願明細書に引用する電気冷却源は、例えば電流印加時に除熱装置として機能するペルチエ冷却素子形態とすることができる。インク塗布サブシステム46に最も近い作像部材12の一部を加熱素子59によって第1の温度に保ち、ニップ16により近い作像部材12の一部を冷却素子57によってより低温の第2の温度に保ち、湿潤溶液内に形成された潜像上のインクの均一な分布と同時にニップ16における下地14へのインクの効果的な転写を容易にすることもまた熟慮してある。
【0039】
同様に、特定の実施形態では、再作像可能表層20上にインクを塗布する前に形成ローラ上のインクを加熱することが好都合となろう。この手法を、図12に関して下記にさらに詳しく説明する。
【0040】
インクの凝集性を増大させる第3の方法は、インク組成物中に低分子量の添加剤(溶剤等)を導入し、再作像可能表層20上に置いたままインクから逸出させるものである。これは、インク温度を急速に上昇させ、添加剤の気化を誘発させるインクの部分的フラッシュ硬化により実現することができる。図7に示すフラッシュヒートランプサブシステム60は、インクをフラッシュ硬化させるのに用いることができる。インク層からの添加剤の脱離もまた、再作像可能表層20の上またはその中に優先して吸収される添加剤を用いることで達成することができる。例えば、特定のシリコーンをベースとする低分子量化合物(通常は室温で液体)は、シリコーン層内に容易に吸収され、高粘度状態のインク配合を残す筈である。この第2の手法は、添加剤が、インクとシリコーンの界面で脆弱な流体境界「解放」層、すなわち、表面からのインクの遊離を促すよう機能する分離層を作り出すよう機能するという追加的な利点を有することができる。
【0041】
再作像可能表層20上に存在する間にインクを部分硬化させるさらなる実施形態は、例えば熱や他の波長の放射線等を含むUV放射線以外のエネルギ印加を通じて開始(誘発)させることのできる化学的硬化を含み、単一成分あるいは多成分の化学的硬化を熟慮してある。多成分化学硬化の場合、第1の1以上の成分がインクに既に混合され、あるいはインクの下側または上側に適用された状態で硬化を開始させる必要があるときに、1以上の追加成分を付加することができる。
【0042】
インクは次に、転写サブシステム70において下地14に転写される。図1に示す実施形態では、これは作像部材12と加圧ローラ18との間のニップ16に下地14を挿通させることで達成される。適切な圧力を作像部材12と加圧ローラ18との間に作用させ、空隙40(図6)内のインクを下地14との物理的な当接状態にする。下地14に対するインクの付着と強固な内部凝集とが、インクを再作像可能表層20から分離させ、下地14に付着させる。加圧ローラあるいはニップ16の他の要素は、インク塗布された潜像の下地14への転写をさらに向上させるべく冷却することができる。事実、下地14自体を作像部材12上のインクよりも比較的低い温度に保つか、あるいは局部的に冷却し、インク転写工程を支援することができる。このインクは、質量で測って95%を上回る効率で再作像可能表層20から転写離脱させることができ、システム最適化を用い効率99%を上回ることができる。
【0043】
一部の湿潤溶液で下地14を湿潤し、再作像可能表層20から分離させることもできるが、この湿潤溶液の量を最小とし、高速で蒸発させるか、あるいは下地内に吸収させることにする。
【0044】
別の選択肢として、オフセットローラ(図示せず)がインク画像パターンをまず受け取り、その後にこのインク画像パターンを下地へ転写してもよいことは、オフセット印刷に類似の印刷から良く理解されるように、本開示の範囲内である。作像部材12から下地14へのインクパターンの間接的な転写からなる他モードもまた、本開示では熟慮してある。
【0045】
下地14への大半のインクの転写に続き、残留インクや残留湿潤溶液はいずれも、好ましくはその表面の掻き取りや摩耗を伴うことなく再作像可能表層20から除去しなければならない。湿潤溶液の大半は、十分な空気流を用いた空気ナイフ77を用いることで素早く簡単に除去することができる。しかしながら、ある程度の量のインク残渣が依然として残留することがある。本願明細書に開示する一実施形態によれば、この残留インクの除去は、図1とより詳しくは図8に示す清掃サブシステム72により、再作像可能表層20に物理的に当接するねばねばした粘着性部材74等の第1の清掃部材を用いて達成される。ローラとして図示し説明してきたが、粘着性部材74はプレートやベルト等とすることができる。粘着性部材74は、高表面付着力を有し、湿潤溶液からの残留インク76とあらゆる残留する(少量の)界面活性剤を再作像可能表層20から引き付ける。
【0046】
一実施形態では、粘着性ローラは、粘着性ポリウレタン材料、高粘度パインロジンもしくは同様の粘着性ロジンエステル(一般にはパインタールと呼ばれる)、あるいは高い付着力と低い表面粗さとを有するロジン様材料で被覆される。パインタールは、無酸素状態(乾留または分解蒸留)での松の木の高温炭化により生成される粘着性材料であり、主に芳香族炭化水素やタール酸やタール塩基で構成される。前述の目的に合わせ、他種の木タールも効果的に使用することができる。一般には、木タールは、揮発性のテルペン油、高沸点で高溶解作用の中性オイル、樹脂、および脂肪酸を主成分とする粘性液体である。平版印刷に一般に用いられる高粘度インクはそれ自体べとべとして粘着性があり、何故ならインク残渣が粘着性部材74の表面に堆積し、インク層自体が粘着性部材74の表面の自らに対するインク残渣の静摩擦を増進させるからである。この蓄積は、残留インクの層が極度に厚くなり、インク膜の分離が始まるまで継続することになる。
【0047】
この時点で残留インクを適切に処理するのに、単純に粘着性部材74を取り外して交換することができる。別の選択肢として、粘着性部材74は、セラミック、硬鋼、クロム等の比較的硬質の平滑面と高表面エネルギとを有する第2の清掃部材78、ローラ、プレート、ベルト等との当接状態にすることができ、それらが堆積したインク残渣層の一部を連続的に分離する。インク初期層(粘着性部材74との接触の結果蒔き付けされた、あるいは蓄積することのある)が一旦第2の清掃部材78上に堆積すると、インク自体の粘着性が粘着性部材74からインクを第2の清掃部材78上に堆積させ、それによって粘着性部材74から取り除かせる。第2の清掃部材78は、取り外して交換するか、あるいはグラビア印刷等に伝統的に用いられる高強度鋼から出来た取り外し可能かつ交換可能なものの如きそこに接触するドクターブレード80を用いて清掃することができる。第2の清掃部材78の表面が粘着性部材74の表面よりも比較的ずっと硬質でかつより平滑であるとすると、第2の清掃部材78の清掃期間中の第2の清掃部材78の表面とドクターブレード80との間の接触は、粘着性部材74の表面の直接的なドクターブレードによる清掃に比べてより少ない摩耗と浸食作用とをもたらす。
【0048】
除去インクの蓄積と摩耗した構成要素は、特定要素の交換により対処することができる。例えば、このシステムは、清掃消耗品を容易に交換可能なローラあるいは低コストのドクターブレード80とすることができるよう構成することができる。
【0049】
例示実施形態では、表層20のRaはその上に形成されるインク層の厚さのほぼ半分以下とする。(粘着性部材74が表面粗さRa1を有し、表層20が第2の表面粗さRa2を有し、Ra1≦Ra2とすることができる。)したがって、インク残渣が下地14への転写後に残留する場合、それは表層20から突出する筈である。シリコーンのデュロメータ(一般に使用される硬度と剛性と非変形性の技術的な測度)を十分に低くし、表層20上の谷部に捕捉されるあらゆるインク残渣を、部材74の表面の変形が故に粘着性部材74に少なくとも一部当接させ、それによって部材74がその残渣を除去できるようにする。この例示実施形態では、粘着性部材74は、表層20と第2の部材78の間の中間デュロメータを有し、したがって表層20は、粘着性部材74よりも多く変形することになる。加えて、インク脱落の機会を回避すべく、本実施形態における粘着性部材74のRaは、表層20のRaより高くないように選択することができる。
【0050】
別の選択肢として、インクが粘着性部材74上に堆積するため、インク層自体は再作像可能表層20から除去される数層のインクを支持できるほど十分粘着性である。したがって、清掃工程から1個のローラと全ての掻き落とし分を取り除き、それによって清掃サブシステム72を単純化するために、単純に粘着性部材74に依存し、再作像可能層20から全ての残留インクを取り除くことが可能である。この種のシステムでは、この種の粘着性部材74の定期的な交換が、再作像可能表層20からの印刷性能の維持に必要とされる全てとなる。
【0051】
特定の実施形態では、単段清掃サブシステムは、残留インクをほぼ100%除去するのに十分であり、再作像可能表層20を清浄とし、湿潤溶液32の新規の塗布、パターン形成、インク塗布、および転写の準備が整う。しかしながら、他の実施形態では、第1の対をなす粘着性部材74aと硬質副次部材78aと、第2の対をなす粘着性部材74bと硬質副次部材78bとを含む図9に示す如き2段清掃サブシステム82を配設することが望ましく、あるいはその必要があろう。各段の動作は実質前述の通りであり、第2段は第1段で事実上除去されなかった材料をさらに除去する。一実施形態では、相対的な表面粗さを制御し、粘着性部材74aが表面粗さRa1を有し、粘着性部材74bが表面粗さRa2を有し、作像面が表面粗さRa3を有すると、Ra2≦Ra1≦Ra3となるようにする。硬質副次部材78a,78bは、粘着性部材74a,74bよりも低い表面粗さを有することができる。追加の清掃段を用いうることを、認識されたい。本願明細書に記載した様々な清掃システムおよび手法にかかわらず、本願明細書に開示する主題は、依然として本質的に、再作像可能部材表面とその使用するマーキング材料との相互作用という固有の性質に起因する著しく低い清掃要件を提供するものであり、それが本開示において説明したように、画像転写工程において下地へのマーキング材料層の実質的なすなわちほぼ完璧な転写をもたらすことに、さらに留意されたい。
【0052】
本開示の別の実施形態によれば、1(または複数)の清掃ローラに到達する前にこの時点でインクを改変し、残渣インク(と湿潤溶液残渣)の除去を支援することができる。ここで、異なる手法を用いることができる。例えば、残渣インクをさらに硬化させ、それを脆くし、より凝集性とし、あるいは「乾燥させ」、より簡単に除去できるようにする。硬化は、図10に示す印刷後硬化サブシステム94によりもたらすことができる。UV硬化インクを用いる場合、印刷後硬化サブシステム94は、UV光源を備えることができる。別の手法によれば、印刷後硬化サブシステム94は、高温空気ナイフ、ランプ、あるいはその温度を上昇させることで残留インクを軟化させる他の熱源を備えることができる。加熱は、あらゆる残留湿潤溶液を蒸発させる追加の利点をもたらすことができる。しかしながら、一般に、印刷後硬化サブシステム94の機能は、再作像可能表層20へのインクの付着を低減し、さもなくば清掃サブシステムによる除去に対する残渣インクの抵抗を低減することにある。72あるいは82等の清掃サブシステムに対し、向上させた清掃能力を提供することができる。任意選択ではあるが、清掃サブシステム82がマルチステーション型清掃システム(前記の図9の説明を参照)である場合、印刷後硬化システム94に加えてあるいはこれに代えて印刷後硬化システム96を様々なステージ間に配設することが可能である。印刷後硬化システム94,96は、共にUV光源や高温空気ナイフ等とする同一原理に基づくか、あるいはそれぞれが異なる原理で作動させることができ、例えば印刷後硬化システム94をUV光源とし、印刷後硬化システム96を高温空気ナイフとするか、あるいはその逆とすることもできる。本実施形態は、例えば多段清掃サブシステム82の様々なステージ(たとえばローラ)がそれぞれ異なる構成あるいは特性を有するときに有用とすることができる。こうして、第1の清掃ステージに続いて残留するあらゆるインクの付着を低減し、そのインクを第2の清掃ステージによって容易に取り除くことができる。
【0053】
代替清掃システムは、洗浄流体が使用される箇所に洗浄ステーションを備えてもよく、必ずしもそうとはかぎらないが、好ましくはブラシ(静止型や回動型あるいは回動対向型)や噴射ジェットあるいは他の手段等からの剪断力と組み合わせて使用し、作像部材からインクおよび/または湿潤溶液残渣を清掃することができる。洗浄流体は水性あるいは非水性溶剤か、あるいは当分野で公知の他の洗浄流体とすることができる。1以上の洗浄ステーション清掃器と1以上の粘着性ローラ清掃器との空間的配置を備える混成清掃器もまた、本開示の範囲内にある。さらに、インク流動性を操作し、特に清掃工程を向上させたいとの所望に応じ、溶剤導入サブシステム(図示せず)によって清掃サブシステムに先行してアルコール、トルエン、アイソパー溶剤、あるいは他の粘性低減液体などの溶剤をインクに添加(あるいはその上に塗布)することができる。
【0054】
再度図1を参照するに、特定の実施形態では、再作像可能表層20にインクを塗布する前に貯槽内あるいは形成ローラ上等でそのインクを予熱することが好都合であろうと上記に述べた。表層20上のインクの部分的硬化は、転写サブシステム70に先立って得ることができる。特定の実施形態では、例えば放射加熱、電気抵抗加熱、化学反応誘導加熱等によって貯槽(図示せず)内のインクを加熱することが許容されるであろう。
【0055】
しかしながら、特定の実施形態では、インク塗布サブシステム貯槽でインクを加熱する欠点は、インクの粘弾性特性の不可逆的な活性化変化が時間と共に蓄積される点にある。これを克服するため、本開示は、インクが上昇温度にある正味の時間が最小化されるよう、表層20への転写直前に最小の時間量にわたってインクを加熱する実施形態を提供する。これは、例えば給体ロールから再作像可能面へのマーキング材料の転写時点の直前もしくはまさにその時点でパルス駆動熱源を用いることで、達成することができる。このパルス駆動熱源は、例えばインク給体ロールの表面および/または再作像可能表層内に埋設された電気抵抗加熱ラインとしうる。十分な大きさながら十分短い期間の電流の通電により、再作像可能面へのその転写直前あるいはまさにその時点でのインク温度のほぼ瞬間的な上昇を達成することができる。別の選択肢として、転写時点の直前あるいはまさにその時点でのマーキング材料の短時間の高速加熱は、集束放射源(例えば、レーザや集束赤外線放射器あるいはフラッシュランプ)の使用を通じ、あるいは空気もしくは他の不活性ガス等の高温流体の集束誘導噴流を介しても達成しうる。こうしたマーキング材料の高速の短時間のパルス加熱は、マーキング材料に供給される熱が、粘弾性が維持される点までその温度を上昇させるのにまさに十分であり、インク塗布システムの残りのローラや貯槽等に対して放熱され、乾燥、硬化、またはインク貯槽もしくはインク源内のインクの流動性もしくは組成等のインク特性の他の望ましくない変化を引き起こすことになる過剰な熱エネルギを追加せずに、所望の分離と再作像可能面への転写を可能にすることを確実にする。
【0056】
最少時間で加熱を達成する一つの例示装置100が、図12に図示される。まず、インク100は、ローラ102により室温貯槽(図示せず)から中間(すなわちインク塗布)ローラ104へ搬送され、このローラは、中間ローラ104の内部あるいは外部のいずれか(もしくはその両方)の低温流体源や低温ガス(例えば、空気、窒素、アルゴン等)源やローラ102に物理的に当接する低温ローラ等(図示せず)を用い、熱伝導冷却あるいは対流冷却等の適当な機構によって能動的に冷却することができる。そこでインク100は被加熱ニップローラ108へ転写され、このローラは、高温空気(あるいは他の被加熱流体)加熱、放射加熱、電気抵抗加熱、光準拠加熱、または化学反応誘導加熱等の熱源110によって内部から加熱される。
【0057】
被加熱ニップローラ108の材料、寸法、および他の属性は、熱源110からそこに分与されるあらゆる熱エネルギが最小化されるよう選択される。例えば、透明か少なくとも半透明の材料で形成された被加熱ニップローラ108を用いることで、インク100によって直接的に放射線を吸収することができる。この場合、放射線スペクトルあるいは波長は、インク100の吸収スペクトルに整合するよう選択する。別の選択肢として、放射線を、被加熱ニップローラ108を含む材料で吸収し、その後にインク100に転写することができる。この場合、被加熱ニップローラ108は、銅やアルミニウム等の熱伝導性金属を含むことができる。赤外線放射線(IR)を用いた場合、熱伝導性金属をプラスチックやガラス等のIR放射線を透過させるローラ本体上に配置し、高い放熱性と低い熱容量とを提供することができる。
【0058】
さらに別の手法では、ヒートパイプシステムを被加熱ニップローラ108内に組み込むことができる。被加熱ニップローラ108は、それ自体が加熱機構と筒状筺体(ヒートパイプ構造を形成する封止環状空腔を有する二重筒状壁)内の少なくとも一つの封止された流体充填空腔とを備えることができる。空腔は、効果的な伝熱が所望される温度近傍の封入流体の蒸気圧力に対応する制御された内部圧力に維持される。空腔の「高温」(すなわち、熱源)部分における一定の相変化(気化)と、続いて気化流体の空腔の「低温」(すなわち、ヒートシンク)部分への移送と、その後に続くヒートシンク部分近くの凝縮とを介し、急速相変化伝熱効果によって大量の熱を高速で伝えることができる。例えば、インク100内の急速かつパワー効率のよい温度上昇を可能にすべく、低い熱量が要求される。
【0059】
表層20への塗布直前に行われる被加熱ニップローラ108でのインク100の加熱によって、加熱時間が最小化される。さらに、被加熱ニップローラ108と表層20との間に他のインク転写機構が無いことで、補助的構造における損失を補償するために所望の塗布温度を上回ってインク100を加熱することが回避される。
【0060】
一例では、インク100は、室温からほぼ60℃まで急速に加熱される。この温度では、インク100は、凝集性の低減を呈し、先に説明した如く、湿潤溶液を取り除いた箇所の表層20の領域に分散付着する。表層20上に残留するインク100は、転写サブシステム70へのその到着(図1)前に受動的あるいは能動的のいずれかで冷却される。
【0061】
装置100の要素は、筺体114(図12)内に収容することができ、このことはインク中のどんな少量の揮発分の捕捉も含め、環境パラメータを制御する多数の目的に役立てることができる。本願明細書では、加熱ローラ上に所与の量のインクを初めに計量供給するキーレスインク塗布システムに基づくアニロックスの使用等の加熱インク塗布システムの他の実施形態を熟慮してある。加熱ローラは、整流起動される電気抵抗加熱片等の他の何らかの機構により加熱することができる。この実施形態は、作像部材12に対するインク転写効率のさらなる増大をもたらす。一実施形態では、図13に示す如く、加熱ローラ116を加熱ローラの長手方向軸に平行な方向に個別対処可能な領域118に分割する。そして、ローラの(例えば、具体的にはインク転写領域での)局部温度に対する制御を提供することができる。各個別対処可能領域の温度は、例えば可変データ平版印刷システムが形成する画像の関数として、加えてインクの複素粘弾性率の所望の修正値が得られる温度の関数としても制御することができる。
【0062】
図14に示す如く、システムの様々な構成要素の相対的な寸法が作像部材に対するインク転写効率をさらに増大させることができる。図14の実施形態では、インク塗布ローラ124の直径は、転写ニップローラ126の直径をかなり大きく上回るものである。比較的大径のインク塗布ローラ124は、インク塗布ローラ124から再作像可能表層122への比較的緩速の分離を提示し、再作像可能表層122へのインク転写を促す。比較的小径の転写ニップローラは、再作像可能表層から下地への比較的高速の分離を提示し、再作像可能表層122からの効率的なインク転写を促す。
【0063】
オフセット胴やブランケット胴を用いない単一の作像シリンダを有するシステムを、図示し本願明細書で説明する。再作像可能表層は、高圧圧胴を介して印刷媒体の粗さに形状適合する材料で出来ており、一方で大量の印刷に必要な良好な引っ張り強度を維持している。伝統的に、これはオフセット印刷システムにおけるオフセット胴あるいはブランケット胴の役割である。しかしながら、オフセットローラの必要性は、より多くの構成要素の保守と修理/交換問題と、増大する製造コストと、ドラム(あるいは代替的にはベルトやプレート等)の回転運動を維持するための追加のエネルギ消費とを有するより大型のシステムを意味する。したがって、本開示では完全な印刷システムにオフセット胴を採用できることを熟慮したが、この種のことが必ずしも妥当であるとは限らない。むしろ、再作像可能表層をその代わりに下地に直接当接させ、再作像可能表層から下地へのインク画像の転写に影響を及ぼすことができる。これにより、部品コスト、修繕/置換コスト、および作動エネルギ要件が全て低減される。
【0064】
本願明細書に記載する発明は、ここに説明した方法に従って作動させると、例えば作像胴から下地へのインク転写効率が95%を上回り、場合によっては99%を上回る高いインク転写効率基準に合致する。加えて、本開示は、版胴の機能とオフセット胴の機能の組み合わせを教示し、ここで再書き込み可能な作像面は大量の印刷に必要な良好な引っ張り強度を維持しつつ、高圧圧胴を介して印刷媒体の粗さに形状適合させることのできる材料で作成される。したがって、我々は、一般的なオフセット印刷システムとは対照的に、高慣性ドラム構成要素の数を減らす追加の利点を有するシステムおよび方法を開示する。開示システムおよび方法は、任意の数のオフセットインクタイプと共に機能させることができるが、UV平版印刷インクとの格別な有用性を有する。
【背景技術】
【0001】
現在、オフセット平版印刷は、印刷の一般的な方法である。(本願明細書において、用語「印刷」と「マーキング」は互換可能とする)。一般の平版プロセスでは、平板や胴面やベルト等であってもよい版板が、疎水性および親油性材料で出来た「画像領域」と親水性材料で出来た「非画像領域」とを有するように形成される。画像領域は、インク等の印刷材料あるいはマーキング材料で占有される最終印刷物(すなわち、目標とする下地)の領域に対応する領域であるが、非画像領域は前記マーキング材料で占有されない最終印刷物上の領域に対応する。親水性領域は、一般に湿し水(通常、水と少量のアルコールに加え表面張力を低減する他の添加剤および/または界面活性剤もまた含む)と呼ばれる水をベースとした流体を受容して容易に湿潤させる。疎水性領域は、湿し水をはじいてインクを受容するが、親水性領域上に形成される湿し水は、インクをはじく流体「解放層」を形成する。それ故、版板上の親水性領域は、非印刷領域、すなわち最終印刷物の「非画像領域」に対応する。
【0002】
インクは、用紙等の下地に対し直接転写することができ、あるいはオフセット印刷システム内のオフセット(ブランケット)胴等の中間面に塗布することができる。オフセット胴は、下地のきめに形状適合させることのできる面を有する形状適合可能な被覆すなわちスリーブで覆われており、下地は、作像版の表面頂部−谷部間の深さを若干上回る表面頂部−谷部間の深さを有することができる。また、オフセットブランケット胴の表面粗さは、斑点模様等の欠陥の無い下地に印刷材料のより均一な層を供給するのに役立つ。オフセット胴から下地への画像転写には、十分な圧力が用いられる。オフセット胴と圧胴との間での下地の締め付けがこの圧力をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、可変データ平版印刷とオフセット平版印刷を提供するシステムおよび方法に関し、上記に示した欠点に加えて本開示から明らかになる他の欠点にも対処する。本開示は、湿潤溶液の可変パターン形成と前述の方法とに基づく各種態様の可変作像平版マーキングシステムの改良に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、印刷インクの流動性を改変する方法とシステムとが提供される。インク流動性は、前述の再作像可能表層にインクを塗布した後、改変することができる。この改変は流れの初動のし易さをもたらすのに役立ち、インクが親水性領域を覆う非マーキング領域から露出疎水性領域を覆うマーキング領域空隙内に簡単に分離され、続いてより粘性のある粘着状態になり、再作像可能表層から下地あるいはオフセット・ブランケットドラムへの完全な転写を促進するのに役立つ。
【0005】
インク給体ロールから再作像可能面へのインク転写中、インクの粘弾性係数を十分低くし、インク層がインク給体ロールの表面から容易に分離して再作像可能面へ転写され、再作像可能面上に欠陥の無い被覆(インク層)が形成されるようにしなければならない。さらに、再作像可能面から下地へのインクの転写時点で、インクの粘弾性係数を十分高くし、インク層が分離に抵抗し、実質全てのインクが再作像可能面から下地へ転写され、それによって過剰な清掃の必要性を伴わずに、次の画像形成準備の整った実質的に清浄な再作像可能面を残す必要がある。
【0006】
したがって、再作像可能面との間の転写を向上させるようにインクの流動性(粘弾性係数)を操作することが望ましいこともあることが理解される。これは、様々なサブシステムにより様々な方法で達成することができる。
【0007】
少量の低分子量モノマーを添加するか、あるいはインク配合内により低粘度のオリゴマーを用いることで、例えば改善された初期インク流を得ることができる。再作像可能表層上へのインク塗布に続く部分的な架橋UV硬化を遂行するUVインクの硬化は、その後にインクを再作像可能表層上に存在させたままインクの凝集性と粘性を増大させる。別の選択肢として、インクは第1の暖温(インク/マーキング材の粘弾性係数が十分に低く、再作像可能面への欠陥を伴わない転写を保証する温度)にて再作像可能面上に塗布し、続いて加熱時点と下地への転写時点との間、再作像可能面上で冷却し、分離に抵抗する十分に高い粘弾性係数を保証するような低い温度を達成することができる。
【0008】
インクの凝集性を増大させる別の選択肢は、インク組成物中に低分子量の添加剤(溶剤等)を含有させ、再作像可能表層上に置かれている間にそこから逸出させるものである。本実施形態では、インクの流動性はインクに含まれる溶剤(例えば、有機溶剤やアイソパー溶剤や他の任意の「粘性低減」液)の量を、例えばインク給体ロールから再作像可能面へのインク転写に先立つ適当な溶剤の添加と、続く再作像可能面から下地へのインクの転写に先立つ再作像可能面上のインク層からの所望量の溶剤の除去(例えば、空気等の搬送気体への蒸発および/または吸収を介し)を調整することで、能動的に操作することができる。再作像可能面への転写前のインク内の高い溶剤含有量は、再作像可能面の作像領域上に所望の厚さの欠陥の無い層を形成するのに必要な範囲へ粘弾性係数を低減する筈であることを理解されたい。同様に、下地への転写直前のインク内の低い溶剤含有量は、再作像可能面から下地への転写中の分離にインク層が抵抗できるようにするのに必要な範囲へインク粘弾性係数を増大させ、それによって前記した如く転写後清掃を最小限にしか必要としない清浄な再作像可能面を残す筈であることを理解されたい。
【0009】
本発明において、用語「光学波長」や「放射線」あるいは「光」は、湿潤溶液のパターン形成を達成するのにシステム内で使用するのに適した電磁放射線の波長を指し、これらの電磁波長が人の裸眼に通常可視であるか否かとは無関係であり、可視光波長、紫外線(UV)波長、赤外線(IR)波長、マイクロ波放射線等を含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の一実施形態による、可変平版印刷用システムの側面図である。
【図2A】図2Aは吸収性粒子を再作像可能表層内に分散させた本発明の一実施形態による、中間層を用いない場合と用いる場合それぞれの作像ドラム、プレート、またはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図2B】図2Bは吸収性粒子を再作像可能表層内に分散させた本発明の一実施形態による、中間層を用いない場合と用いる場合それぞれの作像ドラム、プレート、またはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図3】再作像可能表層を光吸収用に着色した本開示の別の実施形態による、作像ドラムまたはプレートあるいはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図4】再作像可能表層が光学的に透明もしくは半透明であって光学的吸収層上に配置された本開示の別の実施形態による、作像ドラム、プレート、またはベルトの再作像部分の切欠き側面図である。
【図5】本開示の一実施形態による、その上に塗布されビームBによりパターン形成された湿潤溶液を有する図2に示す再作像部分の拡大切欠き側面図である。
【図6】本開示の一実施形態による、湿潤溶液のパターン形成により露出した湿潤溶液のパターン形成層と再作像可能表層の一部を覆う均一なインク層を塗布するのに用いるインク塗布サブシステムの側面図である。
【図7】図1に示した硬化サブシステムに代わるフラッシュヒートランプサブシステムを示す本開示の別の実施形態による可変平版印刷用のシステムの側面図である。
【図8】本開示の一実施形態による、ねばねばした粘着性のあるローラと硬質の副次ローラとドクターブレードとを含む清掃サブシステムの側面図である。
【図9】本開示の一実施形態による、2段清掃サブシステムの側面図である。
【図10】残留湿潤溶液を除去する転写後空気ナイフを有する別の清掃システムとインク残渣の粘性と粘着性をさらに増大させる任意選択のUV露光システムの側面図である。
【図11A】図11AはそれぞれRSmとRaを規定するために作像面のきめの特徴空間と特徴振幅とを説明する図である。
【図11B】図11BはそれぞれRSmとRaを規定するために作像面のきめの特徴空間と特徴振幅とを説明する図である。
【図12】本開示の一実施形態による、湿潤溶液のパターン形成層と湿潤溶液のパターン形成により露出した再作像可能表層の一部に対するインクの予加熱を介して制御された流動性を持たせたインクの均一層の塗布に用いるインク塗布サブシステムの側面図である。
【図13】本開示の一実施形態による、ローラの長手方向軸に平行な方向の個別に対処可能な領域へ分割したインクローラの斜視図である。
【図14】本開示の一実施形態による、転写ニップローラと比較して相対的にずっと大きな直径のインク塗布ローラを示すインク塗布ローラと転写ニップローラの側面図である。
【図15】3つの異なるインク配合について、100Hz発振周波数での複素粘度対温度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照するに、本開示の一実施形態による可変平版印刷用のシステム10が図示されている。システム10は、作像部材12、本実施形態ではドラムを備えるが、等価的に、下記に詳述する幾つかのサブシステムによって囲まれたプレートやベルトとすることができる。作像部材12はニップ16において下地14にインク画像を塗布し、ニップ16では作像部材12と加圧ローラ18との間で下地14が締め付けられる。紙、プラスチック、複合シートフィルム、セラミック、ガラス等の多種多様な下地を用いることができる。本説明の明瞭さと簡潔さに配慮し、我々は、下地として用紙を想定するが、本開示がこの形態の下地に限定されないことを理解されたい。例えば、厚紙、波形包装材、木材、セラミックタイル、織物(例えば、衣服、生地、衣類等)、透明フィルムもしくはプラスチックフィルム、金属箔等の他の下地を含めることができる。これらに限定はされないが、包装に有用な金属インクや白色インクを含む10重量%を上回る顔料密度を有するものを含む様々な露光寛容度のマーキング材料を用いることができる。本開示のこの部分の明瞭さと簡潔さとに配慮し、我々は、インクという用語を概ね用いるが、この用語は、本願明細書に開示するシステムと方法とに適用することのできるインク、顔料、他の材料等の一定範囲のマーキング材料を含むと理解される。
【0012】
作像部材12からのインク塗布画像は、本開示を逸脱することなく、小から大まで多種多様な下地規格に適用することができる。一実施形態では、作像部材12は、少なくとも29インチ幅とし、標準的な四葉折り丁頁あるいはより大きな媒体規格に対応できるようにしてある。作像部材12の直径は、その周面周りの様々なサブシステムに対応するよう十分大きくしなければならない。一実施形態では、作像部材12は、10インチの直径を有するが、本開示の用途に応じてより大きな直径あるいはより小さな直径も妥当であろう。
【0013】
図2を参照するに、作像部材12の一部が断面で示される。一実施形態では、作像部材12は、構造的装着層22(例えば、金属、セラミック、プラスチック等)上に形成した薄い再作像可能層20を備え、これらが合わさって再書き込み可能な印刷ブランケットを形成する再作像可能部分24を形成する。再作像可能部分24にはさらに、再作像可能表層20の下側で構造的装着層22の上側もしくは下側のいずれかに図2Bに示した中間層21等の追加の構造層を設けることができる。中間層21は、電気的絶縁性(あるいは導電性)でかつ遮熱性(あるいは伝熱性)とし、多様な圧縮性とデュロメータ等を有することができる。一実施形態では、中間層21は、極めて薄い接着剤層を合わせて積層した閉塞セルポリマー発泡シートと編組みメッシュ層(例えば、木綿)とで構成される。通常、ブランケットは、最適化された粗さと表層エネルギ特性とを有するよう設計された薄い上面表層20を有する1〜3mmの間の厚さである3〜4枚の層を用い、圧縮性とデュロメータの点で最適化される。再作像可能部分24は、独立ドラムやウェブあるいは胴コア26周りに巻き付けられた平坦なブランケットの形であってもよい。別の実施形態では、再作像可能部分24は、胴コア26上に配置した連続的な弾性スリーブである。平板、ベルト、およびウェブ構成(下敷きとなるドラム構成により支持されてもされなくてもよい)もまた、本開示の範囲内である。下記説明する際、再作像可能部分24は胴コア26により担持されていることを前提としているが、本開示では前述した多くの異なる構成を熟慮してあることを理解されたい。
【0014】
再作像可能表層20は、例えばシリコーンを強化し、そのデュロメータを最適化するのに役立つシリカ等の耐摩耗性充填材を有するポリジメチルシロキサン(PDMS、より一般的にはシリコーンと呼ばれる)等のポリマーからなり、シリコーン材料を硬化させて架橋させるのに役立つ触媒粒子を含むことができる。別の選択肢として、触媒硬化(別名白金硬化)シリコーンとは対照的なシリコーン加湿硬化(別名スズ硬化)シリコーンを用いることができる。図2Aに戻るに、再作像可能表層20には、任意選択としてレーザエネルギを極めて効率よく吸収することのできる少量の放射線感応微粒材料27をその中に分散含有させることができる。一実施形態では、放射線感度は、少量のカーボンブラックを例えばマイクロスケール粒子(例えば、平均粒径10μm未満)もしくはナノスケール粒子(例えば、平均粒径1000nm未満)あるいはナノチューブの形状でポリマーに混合することで得ることができる。シリコーン中に配置することのできる他の放射線感応材料には、グラフェン、酸化鉄ナノ粒子、ニッケルメッキしたナノ粒子等が含まれる。
【0015】
別の選択肢として、再作像可能表層20は、着色するか、そうでなければ図3に示す如く、均一に放射線感応性となるよう処置することができる。さらにまた、再作像可能表層20は、下記にさらに説明する光源からの光学エネルギを実質透過させるものとすることができ、構造的装着層あるいは層群22は、図4に示す如くそうした光学エネルギを吸収することができる(例えば、層22は少なくとも部分的に吸収性である成分を含む)。
【0016】
再作像可能表層20は、界面においてインクに対して弱い付着力を有するが、インクに対しては良好な親油性湿潤特性を持ち、再作像可能面の均一な(ピンホール、ビード、またはその他の欠陥が無い)インク塗布を促し、かつ下地へのインクの後続の前方転写離脱を促す必要がある。シリコーンは、この特性を有する一つの材料である。ポリウレタンやフルオロカーボン等の特定の混合物等、この特性を備える他の材料を代替的に採用することもできる。湿潤溶液(水をベースとする湿し水)の適切な湿潤を提供する点で、シリコーン面は必ずしも親水性とは限らず、実際には疎水性とすることができ、何故ならシリコーングリコールコポリマー等の湿潤界面活性剤を湿潤溶液に添加することにより、湿潤溶液がシリコーン面を湿潤できるからである。
【0017】
したがって、水をベースとした溶液は本開示の実施形態に用いることのできる湿潤溶液の一実施形態であるが、疎油性で気化可能で分解可能、そうでなければ選択的に除去可能な低表面張力を有する他の非水性湿潤溶液を用いることもできることは、理解されるであろう。この分類の液体は、ミネソタ州セントポール市の3M社が製造するNovec brand Engineered Fluids等のハイドロフルオロエーテル(HFE)類である。これらの液体は、本開示に照らし下記の有益な特性を有する。(1)気化熱が水よりもずっと低く、それは湿潤溶液を選択的に蒸発させて潜像を形成するのに光学レーザを用いるときに、所与の印刷速度に要求されるより低いレーザ出力や、所与のレーザ出力に対するより高い印刷速度に転換される。(2)より低い熱容量で、同じ利点に転換される。(3)それらは、蒸発後に固形残渣を実質的に一切残さず、そのことで清掃要件が緩和され、かつ/または長期安定性が改善されることに転換することができる。(4)蒸気圧力と沸点は巧みに処理することができ、それらは空間的に選択的に強制された蒸発プロセスの改善された耐性に転換することができる。(5)それらは、作像部材の適切な湿潤に必要な低い表面張力を有する。(6)それらは、環境と毒性の点で良性である。湿潤溶剤の導電性を制御するのに、追加の添加剤を用いることができる。他の適当な代替例には、上記特性の全てあるいは大半を有するフロリナートや当分野で公知の他の液体が含まれる。これらの種の流体は、その非希釈形態で使用されるだけでなく、水溶性や非水溶性の溶液中の成分あるいはエマルジョンにも使用できることもまた、理解されたい。
【0018】
加えて、シリコーン中の充填材ナノ粒子の厳密な量と、加えて異なる分布のポリマー鎖長や末端基キャッピング化学物質で構成することのできるシリコーン材料の厳密な化学的性質もまた制御し特定することで、良好な湿潤特性を提供するようにシリコーンの表面エネルギを最適化することができる。例えば、低濃度のシリカ充填材を用いたスズ触媒作用による単一成分硬化シリコーンが24〜26ダイン/cmの間の分散表面エネルギを有することが分かっている。マーキング材料の表面張力を劇的に低減し、シリコーンに対するその表面湿潤特性を改善すべく、マーキング材料に対して特定の添加剤を添加することもできる。これらの添加剤には、例えば簡単な分散と硬化用に他のポリマー群もまた取り入れた公知のコポリマーフルオロもしくはシリコーン化合物をベースとするレベリング剤を含めうる。例えば、インク表面張力を21ダイン/cmに低減することのできるレベリング剤である。
【0019】
再作像可能表層20としてシリコーンを用いる場合、シリコーンの硬化と架橋の触媒作用に役立つよう他の粒子27を層20内に埋め込むこともできる。
【0020】
一実施形態によれば、再作像可能表層20は、湿潤溶液をより良く捕捉しかつ所望の非作像領域境界を越えた拡散を阻止すべく、所望の湿潤溶液層の厚さの程度の粗さを有する。例えば、再作像可能表層20は、下記の如く定義される被計測表面粗さ特性RSm,Raを有することができる。
【数1】
および
【数2】
さらに、図11Aと図11Bを参照するに、ここではRSmは試料長L内で輪郭要素の幅X(s)の平均値として定義され、Raは試料長Lに対する平均基準線計測値に対する平均化ピークに関連付けられる。このようにして、RSmはピーク間隔の特性を示し、Raはピーク高さの特性を示す。この種の定義は、寸法A〜L2を有する特性サンプリング領域Aを用いて二次元に拡張することができる。
【0021】
頂部(ピーク)と谷部(バレー)を若干無作為的に分散させ、直線スクリーンパターンとのモアレ干渉の可能性を低減することが望ましい。加えて、頂部間の空間距離は最小の直線スクリーンドット寸法よりも若干小さく、例えば10μm未満とすることが望ましい。この粗さは表面が湿潤溶液を簡単に保持するのに役立ち、一方でモアレ効果を取り除き、さらに下記に説明するように、インク塗布の均一性と転写とを改善するよう機能する。一実施形態では、RSmを約20μm未満、Raを約4.0μm未満とし、より具体的な実施形態では、RSmを10μm未満、Raを0.1μmと4.0μmの間とする。
【0022】
加えて、再作像可能表層20は、その表面のインクを多孔質あるいは粗い紙媒体へ均一に転写し切るべく、耐摩耗性とし、(たとえ張力を受けても)若干の撓曲性を可能としなければならない。再作像可能表層20は、適当な弾性とデュロメータおよび異なるレベルの粗さを有する異なる媒体タイプに対してインクを被覆するのに必要な十分な撓曲性とを獲得できるよう十分な厚さとすることができる。勿論、システムは特定の媒体タイプに対する印刷用に設計し、様々な媒体タイプに対応する必要性を取り除くことができる。一実施形態では、再作像可能表層20を形成するシリコーン層の厚さは0.5μm〜4mmの範囲とする。
【0023】
最後に、再作像可能表層20は、均一性を有し、かつビード形成や乾燥を伴うことなく、その表面へのインク流を促進しなければならない。シリコーン等の様々な材料を製造あるいは作成し、一定範囲の表面エネルギを持たせることができ、この種のエネルギは添加剤を用いて調整することができる。再作像可能表層20は、名目上は低い値の動的化学的付着力を有するが、インクの乾燥やビード形成を伴うことなくインクの効果的な湿潤/親和性を増進させるべく、十分な表面エネルギを持たせることができる。
【0024】
図1に戻るに、作像部材12周りの第1の位置に配置したのが湿潤溶液サブシステム30である。湿潤溶液サブシステム30は、再作像可能表層20の表面を均一に湿潤する一連のローラ(湿潤ユニットと呼ぶ)を概ね備える。多くの異なるタイプおよび構成の湿潤ユニットが存在することが、熟知されている。湿潤ユニットの目的は、均一で制御可能な厚さを有する湿潤溶液32の層をもたらすことにある。一実施形態では、この層は0.2μm〜1.0μmの範囲で、ピンホールを持たず極めて均一である。湿潤溶液32は、主に水と、任意選択として、その固有表面張力を低減し、加えて後のレーザによるパターン形成に必要な気化エネルギを下げるべく添加される少量のイソプロピルアルコールあるいはエタノールとで構成することができる。加えて、適当な界面活性剤を理想的には少量の重量%だけ添加し、再作像可能表層20に対する大量の湿潤を増進させる。一実施形態では、この界面活性剤は、少量の重量%の添加で22ダイン/cm未満の均一な拡散と表面張力とを増進するトリシロキサンコポリオール化合物やジメチコーンコポリオール化合物等のシリコーングリコールコポリマー系列からなる。他のフルオロ界面活性剤もまた、考えられる表面張力低減剤である。任意選択として、湿潤溶液32に、下記にさらに説明するパターン形成工程においてレーザエネルギを一部吸収する放射線感応染料を含有させることができる。
【0025】
化学的方法に加え、あるいは置き換えて、物理的/電気的方法を用い、再作像可能表層20上への湿潤溶液32の湿潤を促進することができる。一例では、静電補助剤を湿潤ローラと再作像可能表層20との間の高電界の印加により作動させ、再作像可能表層20上に湿潤溶液32の均一膜を吸着する。この電界は、湿潤ローラと再作像可能表層20との間に電圧を印加するか、あるいは再作像可能表層20自体に一過性ながら十分持続する電荷を帯電させることで、生成することができる。湿潤溶液32は、導電性とすることができる。それ故、本実施形態では湿潤ローラおよび/または下側再作像可能表層20に対し絶縁層(図示せず)を付加することができる。静電補助剤を用いることで、湿潤溶液からの界面活性剤の低減や除去が可能となる。
【0026】
湿潤溶液サブシステム30による再作像可能表層20上への湿潤溶液32の計量供給に続き、計量供給された湿潤溶液の厚さを、Wenglor Sensors社(オハイオ州ビーバークリーク市)が販売しているような現場用の非接触レーザ光沢センサあるいはレーザコントラストセンサ等のセンサ34を用いて計測する。この種のセンサは、湿潤溶液サブシステム30の制御を自動化するのに用いることができる。
【0027】
厳密で均一な量の湿潤溶液を塗布した後、一実施形態では、光学的なパターン形成サブシステム36を用い、例えばレーザエネルギを用いて湿潤溶液層を像様に蒸発させることで湿潤溶液内に選択的に潜像を形成する。再作像可能表層20が理想的には出来る限り上面28(図2)に近いエネルギの大半を吸収し、湿潤溶液の加熱に浪費されるあらゆるエネルギを最小化するとともに熱の側方拡散を最小化し、高い空間解像能力を維持すべきであることに、留意されたい。別の選択肢として、例えば入射放射線の波長において少なくとも一部吸収性である湿潤溶液内に適当な放射線感応成分を含めることで、あるいは湿潤溶液(例えば、水は2.94μmの波長近傍にピーク吸収帯域を有する)により容易に吸収される適当な波長の放射線源を選択することで、湿潤溶液層自体の中で入射放射(例えば、レーザ)エネルギの大半を吸収することもまた望ましいであろう。
【0028】
再作像可能面上へ湿潤溶液をパターン形成するエネルギを給送する様々な異なるシステムと方法を、本願明細書に開示し特許請求の範囲に記載した様々なシステム構成要素と共に用いることができる点は、理解されるであろう。しかしながら、特定のパターン形成システムや方法が本開示を限定することはない。
【0029】
図5を参照するに、この図は再作像可能表層20上に塗布された湿潤溶液層32を有する再作像可能部分24の領域の拡大図であり、光学的なパターン形成サブシステム36からの光学的なパターン形成エネルギの印加(例えば、ビームB)は、湿潤溶液32の層の一部の選択的蒸発をもたらす。蒸発した湿潤溶液は、システム10を囲む周囲雰囲気の一部となる。これが、再作像可能表層20上に湿潤溶液領域38とインク受容空隙40のパターンを生み出す。作像部材12と光学的なパターン形成サブシステム36との間の例えば矢印Aの方向の相対的な動きが、湿潤溶液32の層の処理方向パターン形成を可能にする。
【0030】
図1に戻るに、湿潤溶液層32のパターン形成に続き、インク塗布サブシステム46を用い、湿潤溶液32の層と再作像可能表層20の上に図6に示すインクの均一層48を塗布する。加えて、空気ナイフ44を任意選択として再作像可能表層20に向け案内し、清浄な乾燥空気供給と制御された空気温度の維持と塵埃汚染の低減とを目的とするインク塗布サブシステム46の前の表層上で空気流を制御することができる。インク塗布サブシステム46は、1以上の形成ローラ46a,46bにオフセットインクを計量供給するアニロックスローラを用いて「キーレス」システムで構成することができる。別の選択肢として、インク塗布サブシステム46は、精密なインク給送速度を特定する電機キーを用いる一連の計量供給ローラを有する、より伝統的な要素で構成することができる。インク塗布サブシステム46の一般的な態様は、本開示の用途に依存し、当業者にはよく理解されるであろう。
【0031】
インク塗布サブシステム46からのインクが再作像可能表層20上を最初に湿潤するようにすべく、インクは、再作像可能表層20(インク受容湿潤溶液空隙40)の露出部分上で分離させるのに十分低い凝集エネルギを有さなければならず、湿潤溶液領域38においてはじかれるのに十分な疎水性も有さなければならない。湿潤溶液は低粘度で疎油性であるため、湿潤溶液で覆われた領域は、当然のことながら全てのインクをはじき、何故なら分離は当然のことながら極めて低い動的凝集エネルギを有する湿潤溶液層内で生ずるからである。湿潤溶液を伴わない領域において、インク間の凝集力がインクと再作像可能表層20との間の付着力を十分に下回る場合、形成ローラニップの出口におけるこれらの領域の間でインクが分離することになる。したがって、用いるインクは、空隙40のより優れた充填と再作像可能表層20へのより優れた付着とを増進させるべく、比較的低い粘度を有するべきである。例えば、それ以外の公知のUVインクを用い、再作像可能表層20がシリコーンで構成される場合、インクの粘度と粘弾性を若干改変してその凝集性を低下させ、それによってシリコーンを湿潤できるようにする必要がありそうである。インク組成物内に少量の低分子量モノマーを添加しあるいはより低い粘性のオリゴマーを用いることで、この流動性の改変を達成することができる。加えて、シリコーン面を良好に湿潤すべくその表面張力をさらに低下させるよう、インクに対し湿潤レべリング剤を添加することができる。
【0032】
この流動力学的な考察に加え、インク組成物が疎水特性を維持し、それが湿潤溶液領域38によってはじかれるようにすることもまた重要である。これは、疎水性で無極性化学基(分子)であるオフセットインク樹脂と溶剤とを選択することで、維持することができる。湿潤溶液が層20を被覆すると、インクは湿潤溶液に素早く分散しあるいは乳化することはできず、湿潤溶液がインクよりもずっと低粘度であるため、膜分離が湿潤溶液層内の全体で発生し、それによって適切な量の湿潤溶液で被覆された層20上の領域へのインクの付着は一切拒まれる。一般に、この湿潤溶液の厚みの被覆層20は、表面のきめの厳密な特性に応じて0.1μm〜4.0μmの間、一実施形態では0.2μm〜2.0μmの間とすることができる。
【0033】
ローラ46aと任意選択のローラ46b上に被覆されるインクの厚さは、分配ローラを用いたローラシステムを介してインクの給送速度を調整し、給送ローラと最終形成ローラ46a,46b(任意選択)との間の圧力を調整し、インクトレイ(46の一部として図示)からの流離を調整するインクキーを用いることで、制御することができる。理想的には、形成ローラ46a,46bに提示されるインクの厚さは、膜分離が発生する際に再作像可能層20への転写が望まれる最終的な厚さの少なくとも2倍とすべきである。均一に形成されたインク担持ピットを有するアニロックスローラを用い、所望のインク粘度を獲得する温度に維持することで、全体のインクの膜厚を制御することのできるキーレスシステムを用いることも可能である。通常、最終的な膜厚は約1〜2μmとすることができる。
【0034】
理想的には、最適化されたインクシステム46は約50対50の比率で再作像可能面上に分離(すなわち、各パスごとに、50%がインク形成ローラ上に残留し、50%が再作像可能面上に転写)される。しかしながら、分離比が良好に制御されている限り、他の分離比も容認可能とすることができる。例えば、70対30の分離では、再作像可能表層20上のインク層は、これが形成ローラの外面上に存するときのその公称厚さの30%となる。インク層の厚さを低減することでさらに分離するその能力を低減することは、良く知られている。この厚さの低減は、残留背景インクを残した状態で再作像可能面から極めて清浄にインクを離脱させるのに役立つ。しかしながら、インクの凝集力すなわち内部粘着性もまた重要な役割を有する。
【0035】
この時点で、所望の2つの競合結果が存在する。まず、インクは、簡単に空隙40内に流入し、続く画像形成向けに適切に配置されるようにしなければならない。さらに、インクを湿潤溶液領域38上で簡単に流し流離させなければならない。しかしながら、湿潤溶液領域38からの分離工程においてインクが互いに固着することは望ましいことであり、究極的には空隙40から下地へ転写される際にインクが下地とそれ自体に付着し、インクの完全転写(空隙40を完全に空にすること)と下地におけるインクの吹き出しの制限の両方を行なうこともまた望ましい。これらの競合結果は、インクが再作像可能表層20上に存在する間に、インクの複素粘弾性率の凝集性成分と粘性成分とを修正することで得ることができる。
【0036】
インクが再作像可能表層20上に存在する間に、インクの凝集性と粘性を増大させる幾つかの方法が、存在する。まずは、一例として200〜450ナノメートル(nm)の範囲の波長で硬化する光学的に硬化可能(光硬化可能)なインクと、再作像可能表層20に対するインク塗布に続き部分的架橋を遂行する流動性(複素粘弾性率)制御サブシステム50とを用いるものである。部分硬化は、再作像可能表層20に対するその付着力に対しインクの凝縮力を増大させる。紫外線(UV)オフセットインクを用いる一実施形態では、この部分硬化はUV誘導アレイ52の出力端に対するインクの露光を含む。UV誘導アレイ52は通常、360〜450nmの範囲の波長を有することができる。長波UV(「近UV」)波長により、過度の表面硬化あるいは表面剥離(これらは最終下地面に対する不適切なインクの付着をもたらすことがある)を引き起こさずに、部分的硬化をインク層の厚さに貫通させることができる。インク配合に対し適当な調合比での異なる光重合開始剤の導入は、表面剥離を低減し、硬化の深さを増大させることができる。加えて、光重合開始剤は、例えば470nmのようなより高い波長で硬化を開始するよう設計することができる。硬化をさらに改善するため、散光源を用いることなく、UV誘導アレイ52を下地上に集束させることができる。これが、浅角表面吸収と光エネルギの反射を低減し、加えて光重合開始剤の効果を場合によって低減する酸素抑制問題を克服するのに有用な光ピーク強度を増大させる。これは、SolidUV Inc.(www.soliduv.com)から市販されているようなUV誘導硬化サブシステムの一部として高開口数(NA)の小型マイクロレンズ等の光学系54を用いるか、あるいは単一の高NA集光レンズを用いることで、達成することができる。CO2、アルゴン、窒素等の不活性ガス(図示せず)を流すことで、より高速塗布に対する酸素抑制を低減することもできる。
【0037】
別の実施形態では、加熱はインクを部分的に硬化させることができる。インクは、紫外線(UV)波長あるいは非UV波長に露光させる等することで、光硬化可能としたり、そうしなかったりできる。熱硬化する非UVオフセットインクでは、任意選択として前述したものに類似のインクに導入される波長適合光重合開始剤と共に、インク凝集性を増大させるのに集束赤外線(IR)ランプを用いることができる。他の硬化方法には、紫外線およびIR放射以外のエネルギや多成分化学硬化等の適用を通じて開始される乾燥や化学的硬化が含まれる。
【0038】
さらに別の実施形態によれば、インクの凝集性と粘性を増大させるシステムや方法は、再作像可能表層20の表面に対し、その上へのインクの塗布に続いて、その場でのインク冷却を採用する。温暖状態では、高分子量の樹脂はよりずっと簡単に互いに流動通過する傾向がある。このことは、温度の増大とともにオフセットインクの粘度の減少をもたらす。比較的暖かくして塗布することで、所望に応じてインクを流動あるいは分離させ、再作像可能面の作像領域を被覆することができる。しかしながら、再作像可能表層20上でインクを冷却すると、その粘度を上昇させることができる。図15は、3つの異なるインク配合について、100Hz発振周波数での複素粘度対温度のプロットである。いずれの場合も、冷却が粘性と凝集性を増大させ、下地14への転写に役立つことに留意されたい。例えば、インクを30℃から20℃へ冷却することでインクの粘性を効果的に倍増し、下地14に対するその粘着性を大幅に増大させる。インクの内部凝集性の上昇が、再作像可能表層20からの効率的な転写を促す。一実施形態によれば、この凝集性変更方法は、59等のダクトを介する中心ドラムの内面の水冷の如く前記作像面に対向する前記作像部材の表面に対し冷却剤を導入し、あるいはインクを塗布した後、ただしインクが最終的な下地へ転写される前にジェット58から再作像可能面上に冷気を吹き付けることにより、実行することができる。他の冷却代替例には、前記作像面に対し離間対向させた冷却ガス源や、前記作像部材内に配置した冷却ガス源や、前記作像面に対し離間対向させた電気冷却源や、作像部材内に配置した電気冷却源や、前記作像部材内に配置した冷却流体源や、前記作像部材内に配置した化学的冷却源や、再作像可能表層20周囲の空気をより低温に維持することが含まれる。本願明細書に引用する電気冷却源は、例えば電流印加時に除熱装置として機能するペルチエ冷却素子形態とすることができる。インク塗布サブシステム46に最も近い作像部材12の一部を加熱素子59によって第1の温度に保ち、ニップ16により近い作像部材12の一部を冷却素子57によってより低温の第2の温度に保ち、湿潤溶液内に形成された潜像上のインクの均一な分布と同時にニップ16における下地14へのインクの効果的な転写を容易にすることもまた熟慮してある。
【0039】
同様に、特定の実施形態では、再作像可能表層20上にインクを塗布する前に形成ローラ上のインクを加熱することが好都合となろう。この手法を、図12に関して下記にさらに詳しく説明する。
【0040】
インクの凝集性を増大させる第3の方法は、インク組成物中に低分子量の添加剤(溶剤等)を導入し、再作像可能表層20上に置いたままインクから逸出させるものである。これは、インク温度を急速に上昇させ、添加剤の気化を誘発させるインクの部分的フラッシュ硬化により実現することができる。図7に示すフラッシュヒートランプサブシステム60は、インクをフラッシュ硬化させるのに用いることができる。インク層からの添加剤の脱離もまた、再作像可能表層20の上またはその中に優先して吸収される添加剤を用いることで達成することができる。例えば、特定のシリコーンをベースとする低分子量化合物(通常は室温で液体)は、シリコーン層内に容易に吸収され、高粘度状態のインク配合を残す筈である。この第2の手法は、添加剤が、インクとシリコーンの界面で脆弱な流体境界「解放」層、すなわち、表面からのインクの遊離を促すよう機能する分離層を作り出すよう機能するという追加的な利点を有することができる。
【0041】
再作像可能表層20上に存在する間にインクを部分硬化させるさらなる実施形態は、例えば熱や他の波長の放射線等を含むUV放射線以外のエネルギ印加を通じて開始(誘発)させることのできる化学的硬化を含み、単一成分あるいは多成分の化学的硬化を熟慮してある。多成分化学硬化の場合、第1の1以上の成分がインクに既に混合され、あるいはインクの下側または上側に適用された状態で硬化を開始させる必要があるときに、1以上の追加成分を付加することができる。
【0042】
インクは次に、転写サブシステム70において下地14に転写される。図1に示す実施形態では、これは作像部材12と加圧ローラ18との間のニップ16に下地14を挿通させることで達成される。適切な圧力を作像部材12と加圧ローラ18との間に作用させ、空隙40(図6)内のインクを下地14との物理的な当接状態にする。下地14に対するインクの付着と強固な内部凝集とが、インクを再作像可能表層20から分離させ、下地14に付着させる。加圧ローラあるいはニップ16の他の要素は、インク塗布された潜像の下地14への転写をさらに向上させるべく冷却することができる。事実、下地14自体を作像部材12上のインクよりも比較的低い温度に保つか、あるいは局部的に冷却し、インク転写工程を支援することができる。このインクは、質量で測って95%を上回る効率で再作像可能表層20から転写離脱させることができ、システム最適化を用い効率99%を上回ることができる。
【0043】
一部の湿潤溶液で下地14を湿潤し、再作像可能表層20から分離させることもできるが、この湿潤溶液の量を最小とし、高速で蒸発させるか、あるいは下地内に吸収させることにする。
【0044】
別の選択肢として、オフセットローラ(図示せず)がインク画像パターンをまず受け取り、その後にこのインク画像パターンを下地へ転写してもよいことは、オフセット印刷に類似の印刷から良く理解されるように、本開示の範囲内である。作像部材12から下地14へのインクパターンの間接的な転写からなる他モードもまた、本開示では熟慮してある。
【0045】
下地14への大半のインクの転写に続き、残留インクや残留湿潤溶液はいずれも、好ましくはその表面の掻き取りや摩耗を伴うことなく再作像可能表層20から除去しなければならない。湿潤溶液の大半は、十分な空気流を用いた空気ナイフ77を用いることで素早く簡単に除去することができる。しかしながら、ある程度の量のインク残渣が依然として残留することがある。本願明細書に開示する一実施形態によれば、この残留インクの除去は、図1とより詳しくは図8に示す清掃サブシステム72により、再作像可能表層20に物理的に当接するねばねばした粘着性部材74等の第1の清掃部材を用いて達成される。ローラとして図示し説明してきたが、粘着性部材74はプレートやベルト等とすることができる。粘着性部材74は、高表面付着力を有し、湿潤溶液からの残留インク76とあらゆる残留する(少量の)界面活性剤を再作像可能表層20から引き付ける。
【0046】
一実施形態では、粘着性ローラは、粘着性ポリウレタン材料、高粘度パインロジンもしくは同様の粘着性ロジンエステル(一般にはパインタールと呼ばれる)、あるいは高い付着力と低い表面粗さとを有するロジン様材料で被覆される。パインタールは、無酸素状態(乾留または分解蒸留)での松の木の高温炭化により生成される粘着性材料であり、主に芳香族炭化水素やタール酸やタール塩基で構成される。前述の目的に合わせ、他種の木タールも効果的に使用することができる。一般には、木タールは、揮発性のテルペン油、高沸点で高溶解作用の中性オイル、樹脂、および脂肪酸を主成分とする粘性液体である。平版印刷に一般に用いられる高粘度インクはそれ自体べとべとして粘着性があり、何故ならインク残渣が粘着性部材74の表面に堆積し、インク層自体が粘着性部材74の表面の自らに対するインク残渣の静摩擦を増進させるからである。この蓄積は、残留インクの層が極度に厚くなり、インク膜の分離が始まるまで継続することになる。
【0047】
この時点で残留インクを適切に処理するのに、単純に粘着性部材74を取り外して交換することができる。別の選択肢として、粘着性部材74は、セラミック、硬鋼、クロム等の比較的硬質の平滑面と高表面エネルギとを有する第2の清掃部材78、ローラ、プレート、ベルト等との当接状態にすることができ、それらが堆積したインク残渣層の一部を連続的に分離する。インク初期層(粘着性部材74との接触の結果蒔き付けされた、あるいは蓄積することのある)が一旦第2の清掃部材78上に堆積すると、インク自体の粘着性が粘着性部材74からインクを第2の清掃部材78上に堆積させ、それによって粘着性部材74から取り除かせる。第2の清掃部材78は、取り外して交換するか、あるいはグラビア印刷等に伝統的に用いられる高強度鋼から出来た取り外し可能かつ交換可能なものの如きそこに接触するドクターブレード80を用いて清掃することができる。第2の清掃部材78の表面が粘着性部材74の表面よりも比較的ずっと硬質でかつより平滑であるとすると、第2の清掃部材78の清掃期間中の第2の清掃部材78の表面とドクターブレード80との間の接触は、粘着性部材74の表面の直接的なドクターブレードによる清掃に比べてより少ない摩耗と浸食作用とをもたらす。
【0048】
除去インクの蓄積と摩耗した構成要素は、特定要素の交換により対処することができる。例えば、このシステムは、清掃消耗品を容易に交換可能なローラあるいは低コストのドクターブレード80とすることができるよう構成することができる。
【0049】
例示実施形態では、表層20のRaはその上に形成されるインク層の厚さのほぼ半分以下とする。(粘着性部材74が表面粗さRa1を有し、表層20が第2の表面粗さRa2を有し、Ra1≦Ra2とすることができる。)したがって、インク残渣が下地14への転写後に残留する場合、それは表層20から突出する筈である。シリコーンのデュロメータ(一般に使用される硬度と剛性と非変形性の技術的な測度)を十分に低くし、表層20上の谷部に捕捉されるあらゆるインク残渣を、部材74の表面の変形が故に粘着性部材74に少なくとも一部当接させ、それによって部材74がその残渣を除去できるようにする。この例示実施形態では、粘着性部材74は、表層20と第2の部材78の間の中間デュロメータを有し、したがって表層20は、粘着性部材74よりも多く変形することになる。加えて、インク脱落の機会を回避すべく、本実施形態における粘着性部材74のRaは、表層20のRaより高くないように選択することができる。
【0050】
別の選択肢として、インクが粘着性部材74上に堆積するため、インク層自体は再作像可能表層20から除去される数層のインクを支持できるほど十分粘着性である。したがって、清掃工程から1個のローラと全ての掻き落とし分を取り除き、それによって清掃サブシステム72を単純化するために、単純に粘着性部材74に依存し、再作像可能層20から全ての残留インクを取り除くことが可能である。この種のシステムでは、この種の粘着性部材74の定期的な交換が、再作像可能表層20からの印刷性能の維持に必要とされる全てとなる。
【0051】
特定の実施形態では、単段清掃サブシステムは、残留インクをほぼ100%除去するのに十分であり、再作像可能表層20を清浄とし、湿潤溶液32の新規の塗布、パターン形成、インク塗布、および転写の準備が整う。しかしながら、他の実施形態では、第1の対をなす粘着性部材74aと硬質副次部材78aと、第2の対をなす粘着性部材74bと硬質副次部材78bとを含む図9に示す如き2段清掃サブシステム82を配設することが望ましく、あるいはその必要があろう。各段の動作は実質前述の通りであり、第2段は第1段で事実上除去されなかった材料をさらに除去する。一実施形態では、相対的な表面粗さを制御し、粘着性部材74aが表面粗さRa1を有し、粘着性部材74bが表面粗さRa2を有し、作像面が表面粗さRa3を有すると、Ra2≦Ra1≦Ra3となるようにする。硬質副次部材78a,78bは、粘着性部材74a,74bよりも低い表面粗さを有することができる。追加の清掃段を用いうることを、認識されたい。本願明細書に記載した様々な清掃システムおよび手法にかかわらず、本願明細書に開示する主題は、依然として本質的に、再作像可能部材表面とその使用するマーキング材料との相互作用という固有の性質に起因する著しく低い清掃要件を提供するものであり、それが本開示において説明したように、画像転写工程において下地へのマーキング材料層の実質的なすなわちほぼ完璧な転写をもたらすことに、さらに留意されたい。
【0052】
本開示の別の実施形態によれば、1(または複数)の清掃ローラに到達する前にこの時点でインクを改変し、残渣インク(と湿潤溶液残渣)の除去を支援することができる。ここで、異なる手法を用いることができる。例えば、残渣インクをさらに硬化させ、それを脆くし、より凝集性とし、あるいは「乾燥させ」、より簡単に除去できるようにする。硬化は、図10に示す印刷後硬化サブシステム94によりもたらすことができる。UV硬化インクを用いる場合、印刷後硬化サブシステム94は、UV光源を備えることができる。別の手法によれば、印刷後硬化サブシステム94は、高温空気ナイフ、ランプ、あるいはその温度を上昇させることで残留インクを軟化させる他の熱源を備えることができる。加熱は、あらゆる残留湿潤溶液を蒸発させる追加の利点をもたらすことができる。しかしながら、一般に、印刷後硬化サブシステム94の機能は、再作像可能表層20へのインクの付着を低減し、さもなくば清掃サブシステムによる除去に対する残渣インクの抵抗を低減することにある。72あるいは82等の清掃サブシステムに対し、向上させた清掃能力を提供することができる。任意選択ではあるが、清掃サブシステム82がマルチステーション型清掃システム(前記の図9の説明を参照)である場合、印刷後硬化システム94に加えてあるいはこれに代えて印刷後硬化システム96を様々なステージ間に配設することが可能である。印刷後硬化システム94,96は、共にUV光源や高温空気ナイフ等とする同一原理に基づくか、あるいはそれぞれが異なる原理で作動させることができ、例えば印刷後硬化システム94をUV光源とし、印刷後硬化システム96を高温空気ナイフとするか、あるいはその逆とすることもできる。本実施形態は、例えば多段清掃サブシステム82の様々なステージ(たとえばローラ)がそれぞれ異なる構成あるいは特性を有するときに有用とすることができる。こうして、第1の清掃ステージに続いて残留するあらゆるインクの付着を低減し、そのインクを第2の清掃ステージによって容易に取り除くことができる。
【0053】
代替清掃システムは、洗浄流体が使用される箇所に洗浄ステーションを備えてもよく、必ずしもそうとはかぎらないが、好ましくはブラシ(静止型や回動型あるいは回動対向型)や噴射ジェットあるいは他の手段等からの剪断力と組み合わせて使用し、作像部材からインクおよび/または湿潤溶液残渣を清掃することができる。洗浄流体は水性あるいは非水性溶剤か、あるいは当分野で公知の他の洗浄流体とすることができる。1以上の洗浄ステーション清掃器と1以上の粘着性ローラ清掃器との空間的配置を備える混成清掃器もまた、本開示の範囲内にある。さらに、インク流動性を操作し、特に清掃工程を向上させたいとの所望に応じ、溶剤導入サブシステム(図示せず)によって清掃サブシステムに先行してアルコール、トルエン、アイソパー溶剤、あるいは他の粘性低減液体などの溶剤をインクに添加(あるいはその上に塗布)することができる。
【0054】
再度図1を参照するに、特定の実施形態では、再作像可能表層20にインクを塗布する前に貯槽内あるいは形成ローラ上等でそのインクを予熱することが好都合であろうと上記に述べた。表層20上のインクの部分的硬化は、転写サブシステム70に先立って得ることができる。特定の実施形態では、例えば放射加熱、電気抵抗加熱、化学反応誘導加熱等によって貯槽(図示せず)内のインクを加熱することが許容されるであろう。
【0055】
しかしながら、特定の実施形態では、インク塗布サブシステム貯槽でインクを加熱する欠点は、インクの粘弾性特性の不可逆的な活性化変化が時間と共に蓄積される点にある。これを克服するため、本開示は、インクが上昇温度にある正味の時間が最小化されるよう、表層20への転写直前に最小の時間量にわたってインクを加熱する実施形態を提供する。これは、例えば給体ロールから再作像可能面へのマーキング材料の転写時点の直前もしくはまさにその時点でパルス駆動熱源を用いることで、達成することができる。このパルス駆動熱源は、例えばインク給体ロールの表面および/または再作像可能表層内に埋設された電気抵抗加熱ラインとしうる。十分な大きさながら十分短い期間の電流の通電により、再作像可能面へのその転写直前あるいはまさにその時点でのインク温度のほぼ瞬間的な上昇を達成することができる。別の選択肢として、転写時点の直前あるいはまさにその時点でのマーキング材料の短時間の高速加熱は、集束放射源(例えば、レーザや集束赤外線放射器あるいはフラッシュランプ)の使用を通じ、あるいは空気もしくは他の不活性ガス等の高温流体の集束誘導噴流を介しても達成しうる。こうしたマーキング材料の高速の短時間のパルス加熱は、マーキング材料に供給される熱が、粘弾性が維持される点までその温度を上昇させるのにまさに十分であり、インク塗布システムの残りのローラや貯槽等に対して放熱され、乾燥、硬化、またはインク貯槽もしくはインク源内のインクの流動性もしくは組成等のインク特性の他の望ましくない変化を引き起こすことになる過剰な熱エネルギを追加せずに、所望の分離と再作像可能面への転写を可能にすることを確実にする。
【0056】
最少時間で加熱を達成する一つの例示装置100が、図12に図示される。まず、インク100は、ローラ102により室温貯槽(図示せず)から中間(すなわちインク塗布)ローラ104へ搬送され、このローラは、中間ローラ104の内部あるいは外部のいずれか(もしくはその両方)の低温流体源や低温ガス(例えば、空気、窒素、アルゴン等)源やローラ102に物理的に当接する低温ローラ等(図示せず)を用い、熱伝導冷却あるいは対流冷却等の適当な機構によって能動的に冷却することができる。そこでインク100は被加熱ニップローラ108へ転写され、このローラは、高温空気(あるいは他の被加熱流体)加熱、放射加熱、電気抵抗加熱、光準拠加熱、または化学反応誘導加熱等の熱源110によって内部から加熱される。
【0057】
被加熱ニップローラ108の材料、寸法、および他の属性は、熱源110からそこに分与されるあらゆる熱エネルギが最小化されるよう選択される。例えば、透明か少なくとも半透明の材料で形成された被加熱ニップローラ108を用いることで、インク100によって直接的に放射線を吸収することができる。この場合、放射線スペクトルあるいは波長は、インク100の吸収スペクトルに整合するよう選択する。別の選択肢として、放射線を、被加熱ニップローラ108を含む材料で吸収し、その後にインク100に転写することができる。この場合、被加熱ニップローラ108は、銅やアルミニウム等の熱伝導性金属を含むことができる。赤外線放射線(IR)を用いた場合、熱伝導性金属をプラスチックやガラス等のIR放射線を透過させるローラ本体上に配置し、高い放熱性と低い熱容量とを提供することができる。
【0058】
さらに別の手法では、ヒートパイプシステムを被加熱ニップローラ108内に組み込むことができる。被加熱ニップローラ108は、それ自体が加熱機構と筒状筺体(ヒートパイプ構造を形成する封止環状空腔を有する二重筒状壁)内の少なくとも一つの封止された流体充填空腔とを備えることができる。空腔は、効果的な伝熱が所望される温度近傍の封入流体の蒸気圧力に対応する制御された内部圧力に維持される。空腔の「高温」(すなわち、熱源)部分における一定の相変化(気化)と、続いて気化流体の空腔の「低温」(すなわち、ヒートシンク)部分への移送と、その後に続くヒートシンク部分近くの凝縮とを介し、急速相変化伝熱効果によって大量の熱を高速で伝えることができる。例えば、インク100内の急速かつパワー効率のよい温度上昇を可能にすべく、低い熱量が要求される。
【0059】
表層20への塗布直前に行われる被加熱ニップローラ108でのインク100の加熱によって、加熱時間が最小化される。さらに、被加熱ニップローラ108と表層20との間に他のインク転写機構が無いことで、補助的構造における損失を補償するために所望の塗布温度を上回ってインク100を加熱することが回避される。
【0060】
一例では、インク100は、室温からほぼ60℃まで急速に加熱される。この温度では、インク100は、凝集性の低減を呈し、先に説明した如く、湿潤溶液を取り除いた箇所の表層20の領域に分散付着する。表層20上に残留するインク100は、転写サブシステム70へのその到着(図1)前に受動的あるいは能動的のいずれかで冷却される。
【0061】
装置100の要素は、筺体114(図12)内に収容することができ、このことはインク中のどんな少量の揮発分の捕捉も含め、環境パラメータを制御する多数の目的に役立てることができる。本願明細書では、加熱ローラ上に所与の量のインクを初めに計量供給するキーレスインク塗布システムに基づくアニロックスの使用等の加熱インク塗布システムの他の実施形態を熟慮してある。加熱ローラは、整流起動される電気抵抗加熱片等の他の何らかの機構により加熱することができる。この実施形態は、作像部材12に対するインク転写効率のさらなる増大をもたらす。一実施形態では、図13に示す如く、加熱ローラ116を加熱ローラの長手方向軸に平行な方向に個別対処可能な領域118に分割する。そして、ローラの(例えば、具体的にはインク転写領域での)局部温度に対する制御を提供することができる。各個別対処可能領域の温度は、例えば可変データ平版印刷システムが形成する画像の関数として、加えてインクの複素粘弾性率の所望の修正値が得られる温度の関数としても制御することができる。
【0062】
図14に示す如く、システムの様々な構成要素の相対的な寸法が作像部材に対するインク転写効率をさらに増大させることができる。図14の実施形態では、インク塗布ローラ124の直径は、転写ニップローラ126の直径をかなり大きく上回るものである。比較的大径のインク塗布ローラ124は、インク塗布ローラ124から再作像可能表層122への比較的緩速の分離を提示し、再作像可能表層122へのインク転写を促す。比較的小径の転写ニップローラは、再作像可能表層から下地への比較的高速の分離を提示し、再作像可能表層122からの効率的なインク転写を促す。
【0063】
オフセット胴やブランケット胴を用いない単一の作像シリンダを有するシステムを、図示し本願明細書で説明する。再作像可能表層は、高圧圧胴を介して印刷媒体の粗さに形状適合する材料で出来ており、一方で大量の印刷に必要な良好な引っ張り強度を維持している。伝統的に、これはオフセット印刷システムにおけるオフセット胴あるいはブランケット胴の役割である。しかしながら、オフセットローラの必要性は、より多くの構成要素の保守と修理/交換問題と、増大する製造コストと、ドラム(あるいは代替的にはベルトやプレート等)の回転運動を維持するための追加のエネルギ消費とを有するより大型のシステムを意味する。したがって、本開示では完全な印刷システムにオフセット胴を採用できることを熟慮したが、この種のことが必ずしも妥当であるとは限らない。むしろ、再作像可能表層をその代わりに下地に直接当接させ、再作像可能表層から下地へのインク画像の転写に影響を及ぼすことができる。これにより、部品コスト、修繕/置換コスト、および作動エネルギ要件が全て低減される。
【0064】
本願明細書に記載する発明は、ここに説明した方法に従って作動させると、例えば作像胴から下地へのインク転写効率が95%を上回り、場合によっては99%を上回る高いインク転写効率基準に合致する。加えて、本開示は、版胴の機能とオフセット胴の機能の組み合わせを教示し、ここで再書き込み可能な作像面は大量の印刷に必要な良好な引っ張り強度を維持しつつ、高圧圧胴を介して印刷媒体の粗さに形状適合させることのできる材料で作成される。したがって、我々は、一般的なオフセット印刷システムとは対照的に、高慣性ドラム構成要素の数を減らす追加の利点を有するシステムおよび方法を開示する。開示システムおよび方法は、任意の数のオフセットインクタイプと共に機能させることができるが、UV平版印刷インクとの格別な有用性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変データ平版印刷システムの作像面に塗布するインクの流動性を制御するインク流動性制御サブシステムであって、
インク貯槽と、
前記インク貯槽からのインクを第1のインク温度にて前記作像面に塗布するインク塗布サブシステムと、
前記インクの複素粘弾性係数を、該インクを前記作像面から下地へ転写する前に前記インク貯槽での第1の値から第2の値へ改変するインク複素粘弾性係数制御サブシステムとを備える、インク流動性制御サブシステム。
【請求項2】
前記インク複素粘弾性係数制御サブシステムは、前記インクを全部でなく一部硬化させる一部硬化サブシステムを備える、請求項1に記載のサブシステム。
【請求項3】
前記一部硬化サブシステムは、前記インクの一部硬化を達成すべく前記作像面上に放射線を導くよう配置した放射線源である、請求項2に記載のサブシステム。
【請求項4】
前記放射線源は360ナノメートル(nm)から450ナノメートル(nm)の範囲の波長の放射線を放射する、請求項3に記載のサブシステム。
【請求項5】
前記インクはさらに、前記放射線源からの放射線に応答する光重合開始剤を含む、請求項3に記載のサブシステム。
【請求項6】
前記インク複素粘弾性係数制御サブシステムは、前記作像面への前記インクの塗布前に前記インクを加熱するインク予熱サブシステムを備える、請求項1に記載のサブシステム。
【請求項7】
前記インク塗布サブシステムは、
複数のローラで、主要ローラが前記作像面のごく近傍にある前記複数のローラと、
前記作像面への前記インクの塗布前に、前記インク貯槽内の前記インクよりも昇温させた温度にて前記主要ローラの表面にインクを供給する加熱サブシステムとを備える、請求項1に記載のサブシステム。
【請求項8】
前記加熱サブシステムは、前記第1のローラが前記インクを担持している間に前記インクを加熱する、請求項7に記載のサブシステム。
【請求項9】
前記加熱サブシステムの一部は前記第1のローラ内に配置してある、請求項8に記載のサブシステム。
【請求項10】
前記加熱サブシステムは前記第1のローラの長手方向に平行な方向に個別アクセス可能な領域に分割してあり、前記加熱サブシステムはさらにキーレスインク塗布サブシステムを備える、請求項7に記載のサブシステム。
【請求項1】
可変データ平版印刷システムの作像面に塗布するインクの流動性を制御するインク流動性制御サブシステムであって、
インク貯槽と、
前記インク貯槽からのインクを第1のインク温度にて前記作像面に塗布するインク塗布サブシステムと、
前記インクの複素粘弾性係数を、該インクを前記作像面から下地へ転写する前に前記インク貯槽での第1の値から第2の値へ改変するインク複素粘弾性係数制御サブシステムとを備える、インク流動性制御サブシステム。
【請求項2】
前記インク複素粘弾性係数制御サブシステムは、前記インクを全部でなく一部硬化させる一部硬化サブシステムを備える、請求項1に記載のサブシステム。
【請求項3】
前記一部硬化サブシステムは、前記インクの一部硬化を達成すべく前記作像面上に放射線を導くよう配置した放射線源である、請求項2に記載のサブシステム。
【請求項4】
前記放射線源は360ナノメートル(nm)から450ナノメートル(nm)の範囲の波長の放射線を放射する、請求項3に記載のサブシステム。
【請求項5】
前記インクはさらに、前記放射線源からの放射線に応答する光重合開始剤を含む、請求項3に記載のサブシステム。
【請求項6】
前記インク複素粘弾性係数制御サブシステムは、前記作像面への前記インクの塗布前に前記インクを加熱するインク予熱サブシステムを備える、請求項1に記載のサブシステム。
【請求項7】
前記インク塗布サブシステムは、
複数のローラで、主要ローラが前記作像面のごく近傍にある前記複数のローラと、
前記作像面への前記インクの塗布前に、前記インク貯槽内の前記インクよりも昇温させた温度にて前記主要ローラの表面にインクを供給する加熱サブシステムとを備える、請求項1に記載のサブシステム。
【請求項8】
前記加熱サブシステムは、前記第1のローラが前記インクを担持している間に前記インクを加熱する、請求項7に記載のサブシステム。
【請求項9】
前記加熱サブシステムの一部は前記第1のローラ内に配置してある、請求項8に記載のサブシステム。
【請求項10】
前記加熱サブシステムは前記第1のローラの長手方向に平行な方向に個別アクセス可能な領域に分割してあり、前記加熱サブシステムはさらにキーレスインク塗布サブシステムを備える、請求項7に記載のサブシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−96535(P2012−96535A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231156(P2011−231156)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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