説明

可変プーリのバックラッシュ測定装置

【課題】 簡易な構成で正確に可変プーリのバックラッシュを測定することができる可変プーリのバックラッシュ測定装置を提供する。
【解決手段】 可変プーリのバックラッシュを測定する装置であって、プーリシャフト3を回転自在の状態で垂直に支持する受け治具11と、この受け治具11に支持されたプーリシャフト3に嵌合する可動プーリ5を固定保持する保持手段12と、垂直に支持されたプーリシャフト3の上端部3aに固設され、上部13aに四角形の嵌合穴25を有するアダプタ13と、このアダプタ13の上部13aを中空軸14bに嵌合し、アダプタ13を介してプーリシャフト3の回動量を検出するエンコーダ14と、このエンコーダ14のケース体14aを回転不能に押圧固定する押圧手段15と、アダプタ13の嵌合穴25に嵌合してプーリシャフト3に正逆方向のトルクを付加するトルクレンチ16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定プーリと可動プーリからなる可変プーリのバックラッシュを測定する可変プーリのバックラッシュ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可変プーリのバックラッシュ測定装置としては、特許文献1に記載のように、固定シーブの軸部に周囲複数箇所のボールスプラインを介して可動シーブを摺動自在に外挿して成る可変プーリのバックラッシュを計測する装置であって、固定シーブと可動シーブとの一方を拘束する拘束手段と、他方のシーブを相対回転不能に支持する、可変プーリの軸線に直交する面上で任意の方向に遊動自在な支持部材と、支持部材をその遊動を許容しつつ所定トルクで正逆転する回動手段と、支持部材の回転角を検出する検出手段と、を備えるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2929421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、可動プーリと固定プーリを軸方向にスライド可能に結合するためのボール挿入作業とバックラッシュ測定作業の2つの作業を1つの装置で行うため、例えばボール挿入機構に不具合が発生するとバックラッシュの測定も行えなくなってしまう。また、2つの作業内容を一体で行っているため、装置が大型化し、大きな作業スペースを必要とする。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で正確に可変プーリのバックラッシュを測定することができる可変プーリのバックラッシュ測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、固定プーリと、この固定プーリのプーリシャフトにピンやボールなどの回り止め機構を介して摺動自在で、且つ回転動作が規制されて嵌合する可動プーリとからなる可変プーリのバックラッシュを測定する装置であって、前記プーリシャフトを回転自在の状態で垂直に支持する受け治具と、この受け治具に支持されたプーリシャフトに嵌合する可動プーリを固定保持する保持手段と、垂直に支持された前記プーリシャフトの上端部に固設され、上部に嵌合穴を有するアダプタと、このアダプタの回動量を検出するエンコーダと、このエンコーダのケース体を回転不能に押圧固定する押圧手段と、前記アダプタの嵌合穴に嵌合して前記プーリシャフトに正逆方向のトルクを付加するトルクレンチを備えるものである。
【0007】
前記押圧手段には、前記エンコーダのケース体への押圧力を測定するロードセルを設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、プーリシャフトを回動させるためのアダプタと、このアダプタを介してプーリシャフトの回動量を検出するエンコーダを備えるだけの簡易な構成で、プーリシャフトと可動プーリとのバックラッシュ量を測定することができる。
【0009】
また、押圧手段にエンコーダのケース体への押圧力を測定するロードセルを設ければ、プーリシャフトへの荷重をロードセルで測定して実機に近い値で付加し、且つプーリシャフトを回動させるためのトルクを、トルクレンチを用いて付加するので、バックラッシュ量を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】可変プーリの正面図
【図2】本発明に係る可変プーリのバックラッシュ測定装置の正面図
【図3】作用及び測定手順の説明図
【図4】作用及び測定手順の説明図
【図5】作用及び測定手順の説明図
【図6】作用及び測定手順の説明図
【図7】作用及び測定手順の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る可変プーリのバックラッシュ測定装置の測定対象となる可変プーリ1は、図1に示すように、固定プーリ2と、この固定プーリ2のプーリシャフト3にピン4を介して摺動自在で、且つ回転動作が規制されて嵌合する可動プーリ5とからなる。
【0012】
本発明に係る可変プーリのバックラッシュ測定装置10は、図2に示すように、プーリシャフト3を垂直に支持する受け治具11と、プーリシャフト3に嵌合する可動プーリ5を固定保持する保持手段12と、垂直に支持されたプーリシャフト3の上端部3aに固着されたアダプタ13と、アダプタ13を介してプーリシャフト3の回動量を検出するエンコーダ14と、エンコーダ14のケース体14aを回転不能に押圧固定する押圧手段15と、プーリシャフト3に正逆方向のトルクを付加するトルクレンチ16を備える。
【0013】
受け治具11は、基台17に設置された受け台18と、受け台18に立設する円筒支持部材19と、この円筒支持部材19の上端に配設されたスラストニードルベアリング20及びスラストワッシャ21からなる。プーリシャフト3は、スラストワッシャ21に垂直状態で載置され、回転自在に支持される。
【0014】
保持手段12は、基台17に立設する一対の支柱23,23と、これらの支柱23,23に昇降自在で、且つ水平方向に進退自在な保持部材24,24からなる。垂直に支持されたプーリシャフト3に嵌合する可動プーリ5は、水平方向に進退自在な保持部材24,24により、挟持されて保持される。
【0015】
アダプタ13は、垂直に支持されたプーリシャフト3の上端部3aにセレーション嵌合により固着される。また、アダプタ13の上部13aには、四角形状の嵌合穴25が設けられている。この嵌合穴25は、プーリシャフト3に正逆方向のトルクを付加する際に、トルクレンチ16が嵌合する穴である。
【0016】
エンコーダ14は、中空軸14bを有する中空エンコーダで、中空軸14bにアダプタ13の上部13aを嵌合している。中空軸14bの回転量をパルスカウンタ(不図示)で読み取ることにより、プーリシャフト3と可動プーリ5とのバックラッシュ量を把握することができる。
【0017】
押圧手段15は、エンコーダ14のケース体14aを上方から押圧してケース体14aの回転を不能にする押圧部材26と、押圧部材26に押圧力を付加する圧力源(不図示)と、付加する押圧力を測定するために押圧部材26に設置したロードセル27からなる。
【0018】
以上のように構成された本発明に係る可変プーリのバックラッシュ測定装置10の作用及び測定手順について説明する。先ず、図3に示すように、可変プーリ1を垂直にして受け治具11に支持させる。この時、円筒部材19の内壁面19aとプーリシャフト3の間には、若干のクリアランスが存在する。また、この状態では、プーリシャフト3はスラストニードルベアリング20により、回転自在である。
【0019】
次いで、図4に示すように、可動プーリ5の外周面5aに対向して設置された一対の保持部材24,24を夫々水平方向に前進させ、可動プーリ5の外周面5aに当接させる。すると、可動プーリ5は挟持され固定される。この状態では、プーリシャフト3もピン4を介して可動プーリ5と嵌合しているため、自由に回動することはできない。
【0020】
次いで、図5に示すように、エンコーダ14の中空軸14bに上部13aを挿嵌したアダプタ13を、プーリシャフト3の上端部3aにセレーション嵌合により固着させる。
【0021】
次いで、図6に示すように、エンコーダ14のケース体14aを上方から押圧手段15により所定の圧力で押圧する。この時の圧力は、押圧部材26に設置したロードセル27の測定値によって決定される。また、エンコーダ14のケース体14aを上方から押圧することにより、ケース体14aは回転しないように固定され、中空軸14bは回転可能であるので、エンコーダ14はアダプタ13を介してプーリシャフト3の回動量を検出することができる。
【0022】
次いで、図7に示すように、作業者がトルクレンチ16をアダプタ13の上部13aに設けた嵌合穴25に嵌めて、所定のトルク(例えば、0.5kgf)でアダプタ13を介してプーリシャフト3を正逆回転させる。すると、アダプタ13とエンコーダ14の中空軸14bとプーリシャフト3が回動し、その時の中空軸14bの回動量をパルスカウンタで読み取ることにより、プーリシャフト3と可動プーリ5とのバックラッシュ量を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、プーリシャフトを回動させるためのアダプタと、このアダプタを介してプーリシャフトの回動量を検出するエンコーダを備えるだけの簡易な構成で、プーリシャフトと可動プーリとのバックラッシュ量を測定することができる可変プーリのバックラッシュ測定装置を提供する。
【符号の説明】
【0024】
1…可変プーリ、2…固定プーリ、3…プーリシャフト、3a…上端部、4…ピン、5…可動プーリ、10…可変プーリのバックラッシュ測定装置、11…受け治具、12…保持手段、13…アダプタ、13a…上部、14…エンコーダ、14a…ケース体、14b…中空軸、15…押圧手段、16…トルクレンチ、25…嵌合穴、27…ロードセル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プーリと、この固定プーリのプーリシャフトにピンやボールなどの回り止め機構を介して摺動自在で、且つ回転動作が規制されて嵌合する可動プーリとからなる可変プーリのバックラッシュを測定する装置であって、前記プーリシャフトを回転自在の状態で垂直に支持する受け治具と、この受け治具に支持されたプーリシャフトに嵌合する可動プーリを固定保持する保持手段と、垂直に支持された前記プーリシャフトの上端部に固設され、上部に嵌合穴を有するアダプタと、このアダプタの回動量を検出するエンコーダと、このエンコーダのケース体を回転不能に押圧固定する押圧手段と、前記アダプタの嵌合穴に嵌合して前記プーリシャフトに正逆方向のトルクを付加するトルクレンチを備えることを特徴とする可変プーリのバックラッシュ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可変プーリのバックラッシュ測定装置において、前記押圧手段には、前記エンコーダのケース体への押圧力を測定するロードセルが設けられていることを特徴とする可変プーリのバックラッシュ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−83256(P2012−83256A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230562(P2010−230562)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】