可変動弁装置の制御装置
【課題】第1吸気バルブを駆動する第1カム及び第2吸気バルブを駆動する第2カムの回転位相を可変とするメイン位相可変機構と、第1カムに対する第2カムの回転位相を可変とするサブ位相可変機構と、第1カムの回転信号を出力するメインセンサと、第2カムの回転信号を出力するサブセンサと、を備えた可変動弁装置において、メインセンサが故障した場合のエンジン運転性能の低下を抑制する。
【解決手段】メインセンサが故障した場合に、エンジンの低負荷域では、メイン位相可変機構の制御を停止することで、メイン位相可変機構による位相を最遅角位置に戻し、サブ位相可変機構をサブセンサの出力に基づき制御することで、第1,第2吸気バルブのトータル開弁期間を増大制御する。一方、エンジンの高負荷域では、サブ位相可変機構の制御を停止することで、サブ位相可変機構による位相を最進角位置に戻し、メイン位相可変機構をサブセンサの出力に基づき制御することで、トータル開弁期間の中心位相を進角制御する。
【解決手段】メインセンサが故障した場合に、エンジンの低負荷域では、メイン位相可変機構の制御を停止することで、メイン位相可変機構による位相を最遅角位置に戻し、サブ位相可変機構をサブセンサの出力に基づき制御することで、第1,第2吸気バルブのトータル開弁期間を増大制御する。一方、エンジンの高負荷域では、サブ位相可変機構の制御を停止することで、サブ位相可変機構による位相を最進角位置に戻し、メイン位相可変機構をサブセンサの出力に基づき制御することで、トータル開弁期間の中心位相を進角制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトに対するカムの回転位相を可変とする可変動弁装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1カムを備える内軸と、第2カムを備える外軸とが、同心的に入れ子に配置され、内軸と外軸とが相対的に回動させられることで、位相調整がなされるカムシャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−519215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記カムシャフトを備えたエンジンでは、クランクシャフトに対する外軸の回転位相を可変とするメイン位相可変機構を設けることで、クランクシャフトに対する第1カム及び第2カムの位相を可変とすることができ、更に、外軸に対する内軸の回転位相を可変とするサブ位相可変機構を設けることで、第1カムに対する第2カムの回転位相を可変とすることが可能である。
【0005】
ここで、第1カム(外軸)の回転信号を出力するメインセンサと、第2カム(内軸)の回転信号を出力するサブセンサとを設けることで、これらセンサからの回転信号と、クランクシャフトの回転信号とから、各位相可変機構による変換角度を検出することが可能である。
しかし、メインセンサが故障した場合に、メイン位相可変機構の制御を停止させてしまうと、エンジンの運転性能が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、メインセンサが故障した場合のエンジン運転性能の低下を抑制できる、可変動弁装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本願発明は、メインセンサの故障時に、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれか一方の制御を停止させ、他方を、サブ位相可変機構で可変とされる回転位相を検出するためのサブセンサの検出結果に基づき制御するようにした。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によると、メインセンサが故障しても、サブ位相可変機構の制御を停止させることで、サブセンサの検出結果に基づきメイン位相可変機構を制御でき、エンジンの運転性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態におけるエンジンのシステム図である。
【図2】実施形態のエンジンにおける吸気バルブ及び排気バルブの配置を示す図である。
【図3】実施形態におけるメインセンサ、サブセンサ及び可変動弁装置の構造を示す図である。
【図4】実施形態における可変動弁装置による位相変化の様子を示す線図である。
【図5】実施形態におけるクランク角センサの構造を示す図である。
【図6】実施形態における可変動弁装置の制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】実施形態におけるメインセンサの診断処理を示すフローチャートである。
【図8】実施形態における位相可変機構の目標値の設定処理を示すフローチャートである。
【図9】実施形態におけるメインセンサ故障時での目標値の設定処理を示すフローチャートである。
【図10】実施形態におけるメイン位相可変機構の制御を示すフローチャートである。
【図11】実施形態におけるサブ位相可変機構の制御を示すフローチャートである。
【図12】実施形態におけるメイン位相可変機構の目標値の特性を示す線図である。
【図13】実施形態におけるサブ位相可変機構の目標値の特性を示す線図である。
【図14】実施形態における吸気バルブのバルブタイミングのエンジン負荷に応じた変化を示す図である。
【図15】実施形態におけるメイン位相可変機構及びサブ位相可変機構の目標値のエンジン負荷に応じた変化を示す図である。
【図16】実施形態におけるメイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれを制御対象とするかの切り替えタイミングを示す図である。
【図17】実施形態におけるメイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれを制御対象とするかの切り替えタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用のエンジン(内燃機関)のシステム構成を示す図である。尚、図1に示すエンジン101は、直列エンジンであるが、V型エンジンや水平対向エンジンなどであってもよい。
【0011】
エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103を設けてある。
また、図2に示すように、エンジン101は、気筒毎に2つの吸気バルブ105a,105bを備え、これらの吸気バルブ105a,105bは、各気筒の燃焼室104の2つの吸気口をそれぞれ開閉する。
【0012】
吸気バルブ105a,105bの上流側の吸気管102には、各吸気バルブ105a,105bを指向して2方向に燃料を噴射する燃料噴射弁106を、気筒毎に配置してある。尚、エンジン101は、燃料噴射弁106が燃焼室104内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式エンジンであってもよい。
燃料噴射弁106が噴射した燃料は、吸気バルブ105a,105bを介して燃焼室104内に空気と共に吸引され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、クランクシャフト109を回転駆動する。
【0013】
また、エンジン101は、図2に示すように、気筒毎に2つの排気バルブ110a,110bを備え、これらの排気バルブ110a,110bは、各気筒の燃焼室104の2つの排気口をそれぞれ開閉する。
排気管111には、三元触媒等を備えた触媒コンバータ112を備えている。
吸気バルブ105a,105b及び排気バルブ110a,110bは、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト115及び排気カムシャフト211の回転に伴って開動作する。
【0014】
排気バルブ110a,110bは、一定のバルブタイミングで開動作するが、吸気バルブ105a,105bのバルブタイミングは、可変動弁装置114によって可変とされる。尚、クランクシャフト109に対する排気カムシャフト211の回転位相を可変とすることで、排気バルブ110a,110bのバルブタイミングを可変とする可変バルブタイミング機構を備えることができる。
【0015】
図3に示すように、吸気カムシャフト115は、第1カム117aを備えた外側カムシャフト(外軸)115aと、この外側カムシャフト115aの軸心に設けた円柱状の中空部に嵌挿され、外側カムシャフト115aに対して相対的に回転可能な、第2カム117bを備えた内側カムシャフト(内軸)115bとからなる。
そして、第1カム117aは、吸気バルブ105a,105bのうちの第1吸気バルブ105aを開駆動し、第2カム117bは、吸気バルブ105a,105bのうちの第2吸気バルブ105bを開駆動する。
【0016】
可変動弁装置114は、クランクシャフト109(カムスプロケット115c)に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相を可変とするメイン位相可変機構114aと、外側カムシャフト115a(第1カム117a)に対する内側カムシャフト115b(第2カム117b)の回転位相を可変とするサブ位相可変機構114bとからなる。
ここで、サブ位相可変機構114bによる変換角度が一定の状態で、メイン位相可変機構114aによる変換角度を変更すると、吸気バルブ105a,105bのバルブタイミングが一体的に変化する。
【0017】
一方、メイン位相可変機構114aによる変換角度が一定の状態で、サブ位相可変機構114bによる変換角度を変更すると、第1吸気バルブ105のバルブタイミングは変わらずに、第2吸気バルブ105のバルブタイミングが変化する。
このため、メイン位相可変機構114aによる変換角度が一定の状態で、サブ位相可変機構114bによる変換角度を変更すると、第1吸気バルブ105aの開期間(開時期IVO1から閉時期IVC1までの角度)と第2吸気バルブ105bの開期間との位相(重なり)が変化する。
【0018】
これにより、図4に示すように、第1吸気バルブ105aの開弁時期IVO1と第2吸気バルブ105bの開弁時期IVO2との早い方から、第1吸気バルブ105aの閉弁時期IVC1と第2吸気バルブ105bの閉弁時期IVC2との遅い方までのクランク角であるトータル開弁期間が変化する。
尚、本実施形態では、メイン位相可変機構114aにおいて、制御停止によって戻る回転位相(デフォルト位置、初期位置)が可変範囲の最遅角側であり、サブ位相可変機構114bにおいて、制御停止によって戻る回転位相(デフォルト位置、初期位置)が可変範囲の最進角側である。
【0019】
そして、サブ位相可変機構114bによって第2吸気バルブ105bのバルブタイミングを遅角させると、第2吸気バルブ105bの閉時期IVC2が、第1吸気バルブ105aの閉時期IVC1よりも遅角することで、トータル開弁期間が増大し、逆にサブ位相可変機構114bによって第2吸気バルブ105bのバルブタイミングを進角させると、第2吸気バルブ105bの閉時期IVC2が、第1吸気バルブ105aの閉時期IVC1に近づくことで、トータル開弁期間が減少する。
一方、サブ位相可変機構114bによる変換角度が一定の状態で、メイン位相可変機構114aによる変換角度を変更すると、トータル開弁期間の角度を変化させずに、トータル開弁期間の位相を変化させることができるようになっている。
【0020】
このように、サブ位相可変機構114bは、トータル開弁期間(トータルの作動角)を可変とする機構であり、メイン位相可変機構114aは、トータル開弁期間の位相を可変とする機構である。
メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bとしては、位相変換(組み付け角度の変換)を行う公知の機構を適宜採用することができ、例えば、ヘリカルスプラインを用いて角度変換を行う機構や、油圧によってベーンとハウジングとの相対角度を変化させる機構や、電磁力で角度変換を行う機構などを用いることができる。
【0021】
また、サブ位相可変機構114bによる回転位相の遅角量を0degとした状態(最進角位置)で、第1吸気バルブ105aの作動角の中心位相と、第2吸気バルブ105bの作動角の中心位相とが一致又はずれている設定とすることができ、また、第1カム117aによるバルブ作動角と第2カム117bによるバルブ作動角とが同等又は異なる設定とすることができる。
一方、気筒毎に設けた点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。点火モジュール116は、点火コイル及び点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを備えている。
【0022】
また、エンジン制御装置201は、コンピュータを備え、各種のセンサやスイッチからの信号などを入力し、予め内蔵するメモリに記憶されているプログラムに従って演算処理を行うことで、燃料噴射弁106、可変動弁装置114(メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114b)、点火モジュール116などの各種デバイスの操作量を演算して出力する。
【0023】
エンジン制御装置201は、吸入空気量センサ103の出力信号を入力する他、クランクシャフト109の回転角信号POSを出力するクランク角センサ203、アクセルペダル207の踏込み量(アクセル開度ACC)を検出するアクセル開度センサ206、外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転角信号CAMaを出力するメインセンサ(メインカム角センサ)202、内側カムシャフト115b(第2カム117b)の回転角信号CAMbを出力するサブセンサ(サブカム角センサ)204、エンジン101の冷却水の温度TWを検出する水温センサ208、触媒コンバータ112上流側の排気管111に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比AFを検出する空燃比センサ209などからの出力信号を入力し、更に、エンジン101の運転及び停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号を入力する。
【0024】
クランク角センサ203は、図5に示すように、クランクシャフト109に軸支され、周囲に突起(被検出部)203cを備えたシグナルプレート203aと、シグナルプレート203aの突起203cを検知してパルス状の回転角信号POSを出力するピックアップ203bとを備える。
シグナルプレート203aの突起203は、一定のクランク角度毎(例えばクランク角10deg)に設けてあるが、中心軸を挟んで対向する位置それぞれで突起部203を欠落させてあり、欠落箇所で回転角信号POSの発生周期が変化することに基づき、欠落箇所を検出することができ、欠落箇所を基準に回転角信号POSを計数することで、クランク角位置、即ち、各気筒の上死点を基準とする角度位置を検出できるようになっている。
即ち、本実施形態の4気筒エンジン101では、気筒間の行程位相差(点火間隔)がクランク角で180degであり、180deg間隔で各気筒が上死点になる。そこで、クランク角180deg間隔で回転角信号POSの欠落箇所を設けることで、180deg毎に基準角度位置が検出されるようにしてある。
【0025】
また、メインセンサ202は、図3に示したように、外側カムシャフト115aに軸支され、周囲に突起(被検出部)202cを備えたシグナルプレート202aと、シグナルプレート202aの突起202cを検知してパルス状の回転角信号CAMaを出力するピックアップ202bとを備える。
同様に、サブセンサ204は、内側カムシャフト115bに軸支され、周囲に突起(被検出部)204cを備えたシグナルプレート204aと、シグナルプレート204aの突起204cを検知してパルス状の回転角信号CAMbを出力するピックアップ204bとを備える。
【0026】
シグナルプレート202a,204aの突起部202c,204cは、90deg毎に1個、3個、4個、2個だけ設けられており、4気筒エンジン101の場合、吸気カムシャフト115の90degは、クランクシャフト109の180degに相当し、クランクシャフト109の180degは、前述のように、気筒間における行程位相差(点火間隔)に相当する。
そして、クランクシャフト109の180deg毎に出力される回転角信号CAMa,CAMbのパルス数は、特定のピストン位置になっている気筒を示すようになっており、本実施形態では、点火順が第1気筒→第3気筒→第4気筒→第2気筒の順であることから、気筒番号に対応する数の回転角信号CAMa,CAMb、即ち、1個、3個、4個、2個のパルス信号が順次出力され、エンジン制御装置201は、回転角信号CAMa,CAMbのパルス数から、特定のピストン位置になっている気筒を判別する。
【0027】
また、エンジン制御装置201は、クランク角センサ203が出力する回転角信号POSと、メインセンサ202が出力する回転角信号CAMaとから、メイン位相可変機構114aによる変換角度(位相の進角量)であるメイン回転位相PH1を検出し、更に、クランク角センサ203が出力する回転角信号POSと、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMbとから、サブ位相可変機構114bによる変換角度(位相の遅角量)であるサブ回転位相PH2を検出する。
【0028】
詳細には、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMa又は回転角信号CAMbが出力されるまでの角度と、既知の初期位置とから、回転位相PH1,PH2が検出される。
即ち、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMaが出力されるまでの角度と、当該角度の初期位置に対応する基準角度との差から、メイン位相可変機構114aによる進角角度を検出でき、また、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMaが出力されるまでの角度と、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMbが出力されるまでの角度との差から、サブ位相可変機構114bによる遅角角度を検出できる。
【0029】
エンジン制御装置201は、エンジン101の運転条件(エンジン負荷、エンジン回転速度、エンジン温度など)に基づき、回転位相PH1,PH2の目標値TGPH1,TGPH2を設定し、実際の回転位相PH1,PH2が目標値TGPH1,TGPH2に近づくように、メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bのアクチュエータの操作量をそれぞれに演算して出力する。
尚、エンジン負荷は、吸入空気流量QAとエンジン回転速度から演算されるシリンダ吸入空気量や、当該シリンダ吸入空気量に対応する基本噴射量や、吸気管負圧などで代表させることができる。
【0030】
以下では、エンジン制御装置201による可変動弁装置114(メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114b)の制御を、図6〜図11のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
図6のフローチャートは、可変動弁装置114の制御のメインルーチンを示す。このメインルーチンは、所定時間毎に割り込み実行されるようになっている。
【0031】
まず、ステップS100では、メイン回転位相PH1の検出を行い、ステップS200では、サブ回転位相PH2の検出を行う。
ステップS300では、メイン回転位相PH1の検出に用いるメインセンサ202の故障診断を行う。
ステップS400では、回転位相PH1,PH2の目標値TGPH1,TGPH2を演算する。
【0032】
ステップS500では、メイン回転位相PH1の検出値及びメイン目標値TGPH1に基づき、メイン位相可変機構114aのアクチュエータの操作量を演算して出力する、メイン位相可変機構114aの制御を実行する。
次のステップS600では、サブ回転位相PH2の検出値及びサブ目標値TGPH2に基づき、サブ位相可変機構114bのアクチュエータの操作量を演算して出力する、サブ位相可変機構114bの制御を実行する。
【0033】
図7のフローチャートは、上記ステップS300におけるメインセンサ202の故障診断の内容を詳細に示すものである。
まず、ステップS301では、エンジン101が回転中(運転中)であるか否かを、例えば、クランク角センサ203が回転角信号POSを出力しているか否かに基づいて判断する。ここで、回転角信号POSが判定時間TH1以上継続して出力されていない場合には、エンジン101が停止状態であると判断し、判定時間TH1未満の間隔で継続して回転角信号POSが出力されていれば、エンジン101が回転中であると判断する。
【0034】
エンジン101が回転中であれば、ステップS302へ進み、メインセンサ202の回転角信号CAMaの入力が無い状態が、判定時間TH2以上継続しているか否かを判断する。
そして、回転角信号CAMaの入力が無い状態が判定時間TH2以上継続していれば、ステップS303へ進み、メインセンサ202の故障を判定し、異常/正常の診断結果を示すフラグfCAM1NGに、故障状態であることを示す「1」を設定する。
【0035】
一方、回転角信号CAMaが判定時間TH2未満の周期で順次入力されている場合には、ステップS304へ進み、メインセンサ202の正常を判定し、故障/正常の診断結果を示すフラグfCAM1NGに、正常状態であることを示す「0」を設定する。
尚、メインセンサ202の故障診断の方法を、上記の方法に限定するものではなく、公知の種々の診断方法を適宜採用できる。
また、判定時間TH1、TH2は、回転角信号POSや回転角信号CAMaの発生周期が長くなる、エンジン101のアイドル運転状態であっても、センサの正常/故障を診断できるように予め適合されている。
【0036】
図8のフローチャートは、上記ステップS400における目標値TGPH1,TGPH2の演算処理の内容を詳細に示すものである。
ステップS401では、メインセンサ202が正常である場合の目標値TGPH1,TGPH2をそれぞれ演算する。
前述のように、メイン位相可変機構114aは、回転位相の可変範囲の最遅角側を初期位置とし、メイン目標値TGPH1は、前記初期位置(最遅角位置)からの進角角度として設定される。
【0037】
そして、ステップS401では、図12に示すように、エンジン101の低中負荷域では、メイン目標値TGPH1を0deg(初期位置)に設定し、クランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相、即ち、メイン回転位相PH1を最遅角位置に保持する。
一方、エンジン101の高負荷域では、エンジン負荷が高くなるほど、メイン目標値TGPH1をより大きな角度として、クランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相を進角させる。
【0038】
ここで、エンジン回転速度に対しては、低回転域ほど、クランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相がより進角するように、目標値TGPH1をエンジン回転速度が低くなるほどより大きな角度に設定する。
一方、サブ位相可変機構114bは、前述のように、回転位相の可変範囲の最進角側を初期位置とし、サブ目標値TGPH2は、前記初期位置(最進角位置)からの遅角角度として設定される。
【0039】
そして、ステップS401では、図13に示すように、中負荷中回転域でサブ目標値TGPH2を最も大きな角度に設定し、クランクシャフト109に対する内側カムシャフト115b(第2カム117b)の回転位相が遅角されることで、トータル開弁期間の開弁時期IVCをそのままに閉弁時期IVCを遅らせてトータル開弁期間を増大させる。一方、中負荷中回転域から低回転高負荷側及び低回転低負荷側に移行すると、サブ目標値TGPH2をより小さく変更することで、トータル開弁期間を減少変化させる。
【0040】
図14は、目標値TGPH1,TGPH2の設定によるトータル開弁期間の変化の一例を示すものである。
エンジン101のアイドル運転域を含む低負荷域では、メイン目標値TGPH1=0deg、及び、サブ目標値TGPH2=0degのデフォルトに設定することで、例えば、トータル開弁期間の開弁時期IVOは上死点後7deg、トータル開弁期間の閉弁時期IVCは下死点後43degに設定され、トータル開弁期間は216deg、トータル開弁期間の中心位相は、上死点後115degに設定される。
【0041】
そして、低負荷域から中負荷域に移行すると、メイン目標値TGPH1=0degのまま、サブ目標値TGPH2が0degから例えば50degに変更される結果、第1吸気バルブ105aは低負荷域と同じバルブタイミングを維持するのに対して、第2吸気バルブ105bは、バルブタイミングが50degだけ遅角される結果、トータル開弁期間の閉時期IVCが50degだけ遅角し、トータル開弁期間は216degから266degに拡大し、トータル開弁期間の中心位相は、上死点後115degから上死点後140degにまで遅角される。
【0042】
高負荷域になると、サブ目標値TGPH2が0degに戻される結果、トータル開弁期間は216degに縮小されるが、メイン目標値TGPH1が例えば30degに設定されることで、第1吸気バルブ105a及び第2吸気バルブ105bのバルブタイミングが共に進角され、トータル開弁期間の開弁時期IVOは、低負荷域での上死点後7degから30degだけ進角して上死点前23degになり、トータル開弁期間の閉弁時期IVCは、低負荷域での下死点後43degから下死点後13degに進角される。
【0043】
図15は、エンジン負荷に対するメイン目標値TGPH1及びサブ目標値TGPH2の変化を示す。この図15に示すように、メイン目標値TGPH1(進角目標)は、エンジン負荷が閾値TP1以下の領域では、0deg(最遅角位置)に保持されるのに対し、エンジン負荷が閾値TP1を超えると、エンジン負荷の増大に応じてメイン目標値TGPH1(進角量)は増大される。
一方、閾値TP1以下のエンジン負荷領域の中間付近で、サブ目標値TGPH2(遅角目標)は、最も大きくなり、この最大遅角量となるエンジン負荷よりも大きくなるほど、又、小さいなるほど、サブ目標値TGPH2はより小さい変更され、エンジン負荷が閾値TP2(TP2>TP1)を超える領域では、0deg(最進角位置)に保持される。
【0044】
そして、閾値TP1と閾値TP2との間で、メイン目標値TGPH1=サブ目標値TGPH2となる。
尚、上記では、エンジン101の運転条件としてのエンジン負荷及びエンジン回転速度に応じて、目標値TGPH1,TGPH2を可変に設定したが、エンジン負荷、エンジン回転速度の他、エンジン温度(冷却水温度)などに応じて目標値TGPH1,TGPH2を可変とすることができる。
【0045】
ステップS401で、メインセンサ202が正常である場合の目標値TGPH1,TGPH2をそれぞれ演算すると、次のステップS402では、フラグfCAM1NGに「1」が設定されているか否かを判別することで、メインセンサ202の正常/故障を判別する。
ここで、フラグfCAM1NGに「0」が設定されていて、メインセンサ202が正常であると診断されている状態であれば、ステップS401で設定した目標値TGPH1,TGPH2に従って、メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bの制御(操作量の演算及び出力)を行わせるべく、そのまま本ルーチンを終了させる。
【0046】
メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bの操作量の演算においては、例えば、目標値TGPH1,TGPH2と、メインセンサ202、サブセンサ204及びクランク角センサ203の出力から検出した実際値PH1,PH2との偏差に基づく、比例積分微分制御(PID制御)によって操作量を決定することで、実際値PH1,PH2が目標値TGPH1,TGPH2に近づくように操作量を演算する、フィードバック制御が行われる。
一方、フラグfCAM1NGに「1」が設定されていて、メインセンサ202が故障していると診断されている状態であれば、ステップS403へ進む。
ステップS403では、メインセンサ202が故障している場合に対応して、目標値TGPH1,TGPH2を変更する。
【0047】
ステップS403における詳細な処理内容は、図9のフローチャートに示してある。
図9のフローチャートにおいて、ステップS421では、エンジン回転速度とエンジン負荷とに基づき、メイン位相可変機構114aとサブ位相可変機構114bとのどちらを制御し、どちらの制御停止とするかを決定する。
即ち、メインセンサ202の故障時であって、メイン回転位相PH1を検出できなくなった場合には、メイン位相可変機構114aを制御し、サブ位相可変機構114bを制御停止とする状態と、メイン位相可変機構114aを制御停止とし、サブ位相可変機構114bを制御する状態とのいずれかを、エンジン運転状態に応じて選択する。
【0048】
具体的には、予めエンジン回転速度とエンジン負荷とに基づき、エンジン101の運転領域を、メイン位相可変機構114aを制御し、サブ位相可変機構114bを制御停止とする高負荷側の第1領域と、メイン位相可変機構114aを制御停止とし、サブ位相可変機構114bを制御させる低負荷側の第2領域とに2分してある。
尚、第1領域と第2領域との境界は、メイン位相可変機構114aの目標値TGPH1が0deg(初期位置)に設定される最大エンジン負荷付近に設定してある。
【0049】
そして、現在のエンジン回転速度及びエンジン負荷が、第1領域に該当している場合には、フラグfFLGMに「1」を設定し、第2領域に該当している場合には、フラグfFLGMに「0」を設定する。
ステップS422では、ステップS421におけるフラグfFLGMの設定処理の結果、フラグfFLGMに、「1」と「0」とのいずれが設定されたかを判別する。
【0050】
ステップS422でフラグfFLGM=1であると判断した場合、即ち、メイン位相可変機構114aを制御し、サブ位相可変機構114bを制御停止とする高負荷側の第1領域に、そのときのエンジン運転条件が該当している場合には、ステップS423へ進む。
ステップS423では、サブ位相可変機構114bの制御動作を停止させるべく、サブ目標値TGPH2を0degにリセットし、サブ位相可変機構114bの制御を停止し、サブ位相可変機構114bによる変換角度がデフォルトの最進角位置に保持されるようにする。
【0051】
即ち、サブ目標値TGPH2=0degは、サブ位相可変機構114bのアクチュエータに対する駆動出力(通電)を停止させることで実現できる目標であって、実際値PH2が不明であっても、駆動出力(通電)を停止させることで到達しているものと推定できる目標である。
但し、制御停止は、通電の停止でなくてもよく、例えば、サブ位相可変機構114bにおいて、回転位相を進角方向(初期位置)に向けて付勢する弾性部材を備え、アクチュエータが逆の遅角方向の駆動力を発生する場合、弾性付勢力が優勢となって初期位置に戻る程度の電力を与え続ける状態も、制御停止に含まれるものとする。
【0052】
一方、ステップS422でフラグfFLGM=0であると判断した場合、即ち、サブ位相可変機構114bを制御し、メイン位相可変機構114aを制御停止とする低負荷側の第2領域に、そのときのエンジン運転条件が該当している場合には、ステップS424へ進む。
ステップS424では、メイン位相可変機構114aの制御動作を停止させるべく、メイン位相可変機構114aのメイン目標値TGPH1を0degにリセットし、メイン位相可変機構114aの制御を停止し、メイン位相可変機構114aによる変換角度がデフォルトの最遅角位置に保持されるようにする。
【0053】
即ち、メイン目標値TGPH1=0degは、メイン位相可変機構114aのアクチュエータに対する駆動出力(通電)を停止させることで実現できる目標であって、実際値PH1が不明であっても、駆動出力(通電)を停止させることで到達しているものと推定できる目標である。
ここでも、初期位置に戻る程度の電力を与え続ける状態も、メイン位相可変機構114aの制御停止に含まれるものとする。
【0054】
図10のフローチャートは、上記ステップS500でのメイン位相可変機構114aの制御を詳細に示す。
まず、ステップS501では、メインセンサ202の故障/正常を示すフラグfCAM1NGを判別する。
ステップS501で、フラグfCAM1NG=0であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が正常である場合は、ステップS505へ進む。
【0055】
ステップS505では、メイン位相可変機構114aの制御を実施する。具体的には、メインセンサ202が出力する回転角信号CAMaと、回転角信号POSとから、メイン回転位相PH1を検出し、このメイン回転位相PH1が目標値TGPH1に近づくように、メイン位相可変機構114aのアクチュエータの操作量を演算して出力する。
上記ステップS505での制御が、メインセンサ202が正常である場合のメイン位相可変機構114aの制御となる。
【0056】
メイン位相可変機構114aの操作量は、例えばモータや電磁弁などの電動アクチュエータへの通電をデューティ制御する場合のデューティ信号であり、デューティ信号のデューティ比を変化させることでアクチュエータの通電量を変化させ、回転位相PH1を変化させる。
一方、ステップS501で、フラグfCAM1NG=1であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が故障時である場合は、ステップS502へ進む。
【0057】
ステップS502では、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、サブセンサ204から回転角信号CAMbが出力されるまでの角度と、当該角度の初期位置に対応する基準角度との差が、メイン位相可変機構114aによる進角角度を示すものとする検出処理を設定する。
サブ位相可変機構114bの制御が行われ、第2カム117bの位相が遅角される場合には、基準クランク角位置から、サブセンサ204から回転角信号CAMbが出力されるまでの角度は、メイン位相可変機構114aによって進角された位相位置からサブ位相可変機構114bによって遅角された分を含む角度になる。
【0058】
しかし、サブ位相可変機構114bの制御を停止させれば、サブ位相可変機構114bによる遅角分が0になることで、基準クランク角位置から、サブセンサ204から回転角信号CAMbが出力されるまでの角度は、メイン位相可変機構114aによって進角された位相位置を示すことになる。即ち、サブ位相可変機構114bの制御を停止させれば、サブセンサ204の出力から回転位相PH1を検出することが可能である。
そこで、ステップS502では、サブ位相可変機構114bの制御が停止されることを前提として、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMaに基づき、メイン位相可変機構114aによる回転位相PH1を検出させる設定を行い、故障しているメインセンサ202は、メイン位相可変機構114aの制御に用いないようにする。
【0059】
ステップS503では、フラグfFLGMの判別を行うことで、メイン位相可変機構114aとサブ位相可変機構114bとのどちらを制御し、どちらの制御を停止させるべき、エンジン運転条件であるかを判断する。
そして、フラグfFLGM=1であって、メイン位相可変機構114aを制御する条件である場合は、後で詳細に説明するステップS600での処理で、サブ位相可変機構114bの制御を停止させる処理が行われるので、ステップS505へ進んで、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMaに基づき検出したメイン回転位相PH1と目標回転位相TGPH1に基づき、メイン位相可変機構114aのアクチュエータの操作量を演算して出力する。
【0060】
従って、メインセンサ202が故障しても、メイン位相可変機構114aを高負荷側の第1領域で制御することができ、エンジン101の高負荷側においてトータル開弁期間の閉弁時期IVCをメイン位相可変機構114aによって進角させることで、バルブオーバーラップの拡大により充填効率を増加させ、出力向上を図ることができる。
一方、フラグfFLGM=0であって、メイン位相可変機構114aの制御を停止させる条件である場合は、ステップS504へ進んで、メイン位相可変機構114aの操作量としてのデューティ比を0%として、メイン位相可変機構114aのアクチュエータへの通電を遮断し、メイン位相可変機構114aによる変換角度をデフォルトの最遅角位置に保持させる。
【0061】
このとき、ステップS600では、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMaに基づき検出したサブ回転位相PH2と、目標回転位相TGPH2とに基づき、サブ位相可変機構114bのアクチュエータの操作量が演算され出力される。
即ち、メイン位相可変機構114aの制御を停止していれば、サブ位相可変機構114bは、メイン位相可変機構114aの初期位置を基準に、第2カム117bの回転位相を遅角することになるから、メインセンサ202が故障していても、サブ位相可変機構114bによる回転位相PH2(遅角量)を検出することができる。
【0062】
図11のフローチャートは、上記ステップS600でのサブ位相可変機構114bの制御を詳細に示す。
まず、ステップS601では、メインセンサ202の故障/正常を示すフラグfCAM1NGを判別する。
ステップS601で、フラグfCAM1NG=0であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が正常である場合は、ステップS604へ進む。
【0063】
ステップS604では、サブ位相可変機構114bの制御を実施する。具体的には、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMbに基づき、回転位相PH2を検出し、この回転位相PH2が目標値TGPH2に近づくように、サブ位相可変機構114bの操作量を演算して出力する。
サブ位相可変機構114bの操作量は、例えばモータや電磁弁などの電動アクチュエータへの通電をデューティ制御する場合のデューティ信号であり、デューティ信号のデューティ比を変化させることでアクチュエータの通電量を変化させ、回転位相PH2を変化させる。
【0064】
一方、ステップS601で、フラグfCAM1NG=1であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が異常である場合は、ステップS602へ進む。
ステップS602では、フラグfFLGMの判別を行うことで、メイン位相可変機構114aとサブ位相可変機構114bとのいずれを制御させるべき、エンジン運転条件であるかを判断する。
【0065】
そして、フラグfFLGM=1であって、メイン位相可変機構114aを制御させ、サブ位相可変機構114bの制御を停止させる条件である場合は、ステップS603へ進んで、サブ位相可変機構114bを停止させるべく、操作量としてのデューティ比を0%として、サブ位相可変機構114bによる変換角度を変更する電動アクチュエータへの通電を遮断し、サブ位相可変機構114bによる変換角度をデフォルトの最進角位置に保持させる。
これにより、サブセンサ204を用いて回転位相PH1を検出して、メイン位相可変機構114aを制御できるようになる。
【0066】
フラグfFLGM=1である場合、前述のステップS500での処理で、メイン位相可変機構114aを制御させることで、高負荷側の第1領域においてトータル開弁期間の閉弁時期IVCを進角させることで、出力の向上が図られる。
また、フラグfFLGM=0であって、メイン位相可変機構114aの制御を停止させる条件である場合は、ステップS604へ進んで、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMbに基づき回転位相PH2を検出し、この回転位相PH2が目標値TGPH2に近づくように、サブ位相可変機構114bの操作量を演算する。
【0067】
即ち、フラグfFLGM=0である場合、メイン位相可変機構114aの制御が停止され、第1カム117aの回転位相PH1が最遅角位置(デフォルト位置)に保持され、係る最遅角位置を基準にサブ位相可変機構114bを動作させることで、トータル開弁期間の閉時期IVCを遅角変化させることができる。
従って、メインセンサ202が異常になっても、サブ位相可変機構114bを低負荷側の第2領域で動作させることができ、かつ、低負荷側の第2領域においてトータル開弁期間の閉弁時期IVCをサブ位相可変機構114bによって遅角させることで、圧縮開始時期を遅らせ、ポンピングロスの低減によって燃費性能を向上させることができる。
【0068】
このように、メインセンサ202に異常が発生しても、サブセンサ204を用いてクランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相PH1を検出して、メイン位相可変機構114aの制御を行える。
また、メイン位相可変機構114aを制御する場合、サブ位相可変機構114bの制御を停止させることになるが、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止する状態と、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する状態とを、エンジン101の運転条件に応じて切り替えるので、メイン位相可変機構114aによってトータル開弁期間の中心位相を進角させること(開弁時期IVO及び閉弁時期IVCの進角)が要求される運転領域と、サブ位相可変機構114bによってトータル開弁期間の増大(閉弁時期IVCの遅角)が要求される運転領域とのそれぞれで、要求に近いバルブタイミングに制御して、エンジン101の運転性能の低下を抑制できる。
【0069】
尚、メインセンサ202の故障時に、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する領域と、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止する領域との境界は、例えば、メインセンサ202の正常時におけるエンジン負荷に対する各位相可変機構114a,114bの目標値TGPH1,TGPH2が図15に示すように設定される場合、図16に示すように、目標値TGPH1,TGPH2のうちの大きい方、換言すれば、進遅角要求角度の絶対値の大きい方が、制御対象の位相可変機構として選択されるように設定することができる。
【0070】
進遅角要求の大きい方を選択させる場合、メイン位相可変機構114aによる進角目標角度TGPH1と、サブ位相可変機構114bによる遅角目標角度TGPH2とが略一致するエンジン負荷よりも、エンジン負荷が高い領域では、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止させ、前記一致点よりもエンジン負荷が低い領域では、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する。
係る構成であれば、メインセンサ202が故障しても、トータル開弁期間の中心位相の進角要求と、トータル開弁期間の増大要求とを、略満足させることができ、エンジン101の運転性の低下を抑制できる。
【0071】
また、トータル開弁期間の開弁時期IVOによって、内部EGR(残留排ガス)の量が変化するので、内部EGRの量の制御を優先させるべく、図17に示すように、メイン位相可変機構114aによる進角要求が発生し始めるエンジン負荷付近を、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する領域と、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止させる領域との境界に設定することができる。
係る構成であれば、トータル開弁期間の開弁時期IVOの進角制御を、メインセンサ202の正常時に近似する形で実施でき、内部EGR(残留排ガス)の制御精度の低下を抑制できる。
【0072】
以上、好ましい実施形態を具体的に説明したが、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、排気カムシャフト211を外側カムシャフト(外軸)と内側カムシャフト(内軸)とからなる2重構造として、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とを備え、上記実施形態と同様に、メイン位相可変機構による回転位相を検出するためのメインセンサの故障時に、サブ位相可変機構による回転位相を検出するためのサブセンサを用いて、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれか一方を制御することができる。
【0073】
また、排気バルブ110a,110bのバルブタイミングを変更する場合、メイン位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最進角位置とし、サブ位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最遅角位置とすることができる。従って、前述の実施形態のように、メイン位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最遅角位置とし、サブ位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最進角位置とする構成に限定されるものではない。
また、吸気バルブ105a,105bと排気バルブ110a,110bとの双方が、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とからなる可変動弁装置によってバルブタイミングが可変とされるエンジン101とすることができる。
【0074】
また、メインセンサ202の異常を診断したことを、車両の運転者に警告する警告装置を備えることができる。
また、サブセンサ204に異常が発生した場合には、メインセンサ202の出力に基づきメイン位相可変機構114aの制御を継続させる一方で、サブ位相可変機構114bの制御を停止させて、サブ位相可変機構114bによる回転位相を初期位置(デフォルト位置)に保持させるようにできる。また、サブセンサ204に異常が発生した場合に、メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bを共に停止させて、双方を初期位置(デフォルト位置)に保持させることができる。
【0075】
また、メイン位相可変機構及び/又はサブ位相可変機構の制御の停止によって復帰させる基準位相は、回転位相の可変範囲の一方端に限定されず、例えば回転位相を中間位置にロックするロック機構を備える場合には、当該ロック機構によるロックが行われる位置に復帰させることができ、また、予め設定された操作量を固定することで、係る操作量に対応する中間の又は可変範囲の一方端の回転位相に復帰させることができる。
また、気筒毎に吸気バルブ又は排気バルブを3つ備えたエンジン101において、3つのバルブのうちの1つ又は2つを第1カム(外側カムシャフト)で駆動し、残る2つ又は1つを第2カム(内側カムシャフト)で駆動することができる。
【0076】
また、サブ位相可変機構114bの回転位相を、メインセンサ202とサブセンサ204とに基づき、外側カムシャフトに対する内側カムシャフトの相対位相として検出させることができる。
【0077】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2記載の可変動弁装置の制御装置において、
エンジンの運転条件に応じた前記メイン位相可変機構の目標回転位相と、エンジンの運転条件に応じた前記サブ位相可変機構の目標回転位相とのうち、制御の停止による初期位相からの変換角度が小さい方を、前記メインセンサの故障時に、制御を停止させる位相可変機構として選択する、可変動弁装置の制御装置。
上記発明によると、基準位相からの変換角度の要求が大きい方の位相可変機構を制御することで、一方の位相可変機構の制御停止によるエンジン運転性能の低下を抑制できる。
【0078】
(ロ)請求項2記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置が、複数の吸気バルブを駆動する装置であり、前記メイン位相可変機構が、最遅角位置を制御の停止による基準位相とし、前記サブ位相可変機構が、最進角位置を制御の停止による基準位相とし、
前記メイン位相可変機構のエンジン運転条件に応じた目標回転位相が前記基準位相に設定される領域で、前記メイン位相可変機構の制御を停止させ、前記メイン位相可変機構の目標回転位相が前記基準位相よりも進角される領域で、前記サブ位相可変機構の制御を停止させる、可変動弁装置の制御装置。
上記発明によると、メイン位相可変機構による回転位相の進角制御が優先されることになり、吸気バルブのトータル開弁期間における開時期の進角によって内部EGR量を確保し、燃費性能を維持できる。
【符号の説明】
【0079】
101…エンジン(内燃機関)、105a,105b…吸気バルブ、106…燃料噴射弁、107…点火プラグ、109…クランクシャフト、110a,110b…排気バルブ、114…可変動弁装置、114a…メイン位相可変機構、114b…サブ位相可変機構、115…吸気カムシャフト、115a…外側カムシャフト(外軸)、115b…内側カムシャフト(内軸)、117a…第1カム、117b…第2カム、201…エンジン制御装置、202…メインセンサ、203…クランク角センサ、204…サブセンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトに対するカムの回転位相を可変とする可変動弁装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1カムを備える内軸と、第2カムを備える外軸とが、同心的に入れ子に配置され、内軸と外軸とが相対的に回動させられることで、位相調整がなされるカムシャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−519215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記カムシャフトを備えたエンジンでは、クランクシャフトに対する外軸の回転位相を可変とするメイン位相可変機構を設けることで、クランクシャフトに対する第1カム及び第2カムの位相を可変とすることができ、更に、外軸に対する内軸の回転位相を可変とするサブ位相可変機構を設けることで、第1カムに対する第2カムの回転位相を可変とすることが可能である。
【0005】
ここで、第1カム(外軸)の回転信号を出力するメインセンサと、第2カム(内軸)の回転信号を出力するサブセンサとを設けることで、これらセンサからの回転信号と、クランクシャフトの回転信号とから、各位相可変機構による変換角度を検出することが可能である。
しかし、メインセンサが故障した場合に、メイン位相可変機構の制御を停止させてしまうと、エンジンの運転性能が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、メインセンサが故障した場合のエンジン運転性能の低下を抑制できる、可変動弁装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本願発明は、メインセンサの故障時に、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれか一方の制御を停止させ、他方を、サブ位相可変機構で可変とされる回転位相を検出するためのサブセンサの検出結果に基づき制御するようにした。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によると、メインセンサが故障しても、サブ位相可変機構の制御を停止させることで、サブセンサの検出結果に基づきメイン位相可変機構を制御でき、エンジンの運転性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態におけるエンジンのシステム図である。
【図2】実施形態のエンジンにおける吸気バルブ及び排気バルブの配置を示す図である。
【図3】実施形態におけるメインセンサ、サブセンサ及び可変動弁装置の構造を示す図である。
【図4】実施形態における可変動弁装置による位相変化の様子を示す線図である。
【図5】実施形態におけるクランク角センサの構造を示す図である。
【図6】実施形態における可変動弁装置の制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】実施形態におけるメインセンサの診断処理を示すフローチャートである。
【図8】実施形態における位相可変機構の目標値の設定処理を示すフローチャートである。
【図9】実施形態におけるメインセンサ故障時での目標値の設定処理を示すフローチャートである。
【図10】実施形態におけるメイン位相可変機構の制御を示すフローチャートである。
【図11】実施形態におけるサブ位相可変機構の制御を示すフローチャートである。
【図12】実施形態におけるメイン位相可変機構の目標値の特性を示す線図である。
【図13】実施形態におけるサブ位相可変機構の目標値の特性を示す線図である。
【図14】実施形態における吸気バルブのバルブタイミングのエンジン負荷に応じた変化を示す図である。
【図15】実施形態におけるメイン位相可変機構及びサブ位相可変機構の目標値のエンジン負荷に応じた変化を示す図である。
【図16】実施形態におけるメイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれを制御対象とするかの切り替えタイミングを示す図である。
【図17】実施形態におけるメイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれを制御対象とするかの切り替えタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用のエンジン(内燃機関)のシステム構成を示す図である。尚、図1に示すエンジン101は、直列エンジンであるが、V型エンジンや水平対向エンジンなどであってもよい。
【0011】
エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103を設けてある。
また、図2に示すように、エンジン101は、気筒毎に2つの吸気バルブ105a,105bを備え、これらの吸気バルブ105a,105bは、各気筒の燃焼室104の2つの吸気口をそれぞれ開閉する。
【0012】
吸気バルブ105a,105bの上流側の吸気管102には、各吸気バルブ105a,105bを指向して2方向に燃料を噴射する燃料噴射弁106を、気筒毎に配置してある。尚、エンジン101は、燃料噴射弁106が燃焼室104内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式エンジンであってもよい。
燃料噴射弁106が噴射した燃料は、吸気バルブ105a,105bを介して燃焼室104内に空気と共に吸引され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、クランクシャフト109を回転駆動する。
【0013】
また、エンジン101は、図2に示すように、気筒毎に2つの排気バルブ110a,110bを備え、これらの排気バルブ110a,110bは、各気筒の燃焼室104の2つの排気口をそれぞれ開閉する。
排気管111には、三元触媒等を備えた触媒コンバータ112を備えている。
吸気バルブ105a,105b及び排気バルブ110a,110bは、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト115及び排気カムシャフト211の回転に伴って開動作する。
【0014】
排気バルブ110a,110bは、一定のバルブタイミングで開動作するが、吸気バルブ105a,105bのバルブタイミングは、可変動弁装置114によって可変とされる。尚、クランクシャフト109に対する排気カムシャフト211の回転位相を可変とすることで、排気バルブ110a,110bのバルブタイミングを可変とする可変バルブタイミング機構を備えることができる。
【0015】
図3に示すように、吸気カムシャフト115は、第1カム117aを備えた外側カムシャフト(外軸)115aと、この外側カムシャフト115aの軸心に設けた円柱状の中空部に嵌挿され、外側カムシャフト115aに対して相対的に回転可能な、第2カム117bを備えた内側カムシャフト(内軸)115bとからなる。
そして、第1カム117aは、吸気バルブ105a,105bのうちの第1吸気バルブ105aを開駆動し、第2カム117bは、吸気バルブ105a,105bのうちの第2吸気バルブ105bを開駆動する。
【0016】
可変動弁装置114は、クランクシャフト109(カムスプロケット115c)に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相を可変とするメイン位相可変機構114aと、外側カムシャフト115a(第1カム117a)に対する内側カムシャフト115b(第2カム117b)の回転位相を可変とするサブ位相可変機構114bとからなる。
ここで、サブ位相可変機構114bによる変換角度が一定の状態で、メイン位相可変機構114aによる変換角度を変更すると、吸気バルブ105a,105bのバルブタイミングが一体的に変化する。
【0017】
一方、メイン位相可変機構114aによる変換角度が一定の状態で、サブ位相可変機構114bによる変換角度を変更すると、第1吸気バルブ105のバルブタイミングは変わらずに、第2吸気バルブ105のバルブタイミングが変化する。
このため、メイン位相可変機構114aによる変換角度が一定の状態で、サブ位相可変機構114bによる変換角度を変更すると、第1吸気バルブ105aの開期間(開時期IVO1から閉時期IVC1までの角度)と第2吸気バルブ105bの開期間との位相(重なり)が変化する。
【0018】
これにより、図4に示すように、第1吸気バルブ105aの開弁時期IVO1と第2吸気バルブ105bの開弁時期IVO2との早い方から、第1吸気バルブ105aの閉弁時期IVC1と第2吸気バルブ105bの閉弁時期IVC2との遅い方までのクランク角であるトータル開弁期間が変化する。
尚、本実施形態では、メイン位相可変機構114aにおいて、制御停止によって戻る回転位相(デフォルト位置、初期位置)が可変範囲の最遅角側であり、サブ位相可変機構114bにおいて、制御停止によって戻る回転位相(デフォルト位置、初期位置)が可変範囲の最進角側である。
【0019】
そして、サブ位相可変機構114bによって第2吸気バルブ105bのバルブタイミングを遅角させると、第2吸気バルブ105bの閉時期IVC2が、第1吸気バルブ105aの閉時期IVC1よりも遅角することで、トータル開弁期間が増大し、逆にサブ位相可変機構114bによって第2吸気バルブ105bのバルブタイミングを進角させると、第2吸気バルブ105bの閉時期IVC2が、第1吸気バルブ105aの閉時期IVC1に近づくことで、トータル開弁期間が減少する。
一方、サブ位相可変機構114bによる変換角度が一定の状態で、メイン位相可変機構114aによる変換角度を変更すると、トータル開弁期間の角度を変化させずに、トータル開弁期間の位相を変化させることができるようになっている。
【0020】
このように、サブ位相可変機構114bは、トータル開弁期間(トータルの作動角)を可変とする機構であり、メイン位相可変機構114aは、トータル開弁期間の位相を可変とする機構である。
メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bとしては、位相変換(組み付け角度の変換)を行う公知の機構を適宜採用することができ、例えば、ヘリカルスプラインを用いて角度変換を行う機構や、油圧によってベーンとハウジングとの相対角度を変化させる機構や、電磁力で角度変換を行う機構などを用いることができる。
【0021】
また、サブ位相可変機構114bによる回転位相の遅角量を0degとした状態(最進角位置)で、第1吸気バルブ105aの作動角の中心位相と、第2吸気バルブ105bの作動角の中心位相とが一致又はずれている設定とすることができ、また、第1カム117aによるバルブ作動角と第2カム117bによるバルブ作動角とが同等又は異なる設定とすることができる。
一方、気筒毎に設けた点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。点火モジュール116は、点火コイル及び点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを備えている。
【0022】
また、エンジン制御装置201は、コンピュータを備え、各種のセンサやスイッチからの信号などを入力し、予め内蔵するメモリに記憶されているプログラムに従って演算処理を行うことで、燃料噴射弁106、可変動弁装置114(メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114b)、点火モジュール116などの各種デバイスの操作量を演算して出力する。
【0023】
エンジン制御装置201は、吸入空気量センサ103の出力信号を入力する他、クランクシャフト109の回転角信号POSを出力するクランク角センサ203、アクセルペダル207の踏込み量(アクセル開度ACC)を検出するアクセル開度センサ206、外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転角信号CAMaを出力するメインセンサ(メインカム角センサ)202、内側カムシャフト115b(第2カム117b)の回転角信号CAMbを出力するサブセンサ(サブカム角センサ)204、エンジン101の冷却水の温度TWを検出する水温センサ208、触媒コンバータ112上流側の排気管111に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比AFを検出する空燃比センサ209などからの出力信号を入力し、更に、エンジン101の運転及び停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号を入力する。
【0024】
クランク角センサ203は、図5に示すように、クランクシャフト109に軸支され、周囲に突起(被検出部)203cを備えたシグナルプレート203aと、シグナルプレート203aの突起203cを検知してパルス状の回転角信号POSを出力するピックアップ203bとを備える。
シグナルプレート203aの突起203は、一定のクランク角度毎(例えばクランク角10deg)に設けてあるが、中心軸を挟んで対向する位置それぞれで突起部203を欠落させてあり、欠落箇所で回転角信号POSの発生周期が変化することに基づき、欠落箇所を検出することができ、欠落箇所を基準に回転角信号POSを計数することで、クランク角位置、即ち、各気筒の上死点を基準とする角度位置を検出できるようになっている。
即ち、本実施形態の4気筒エンジン101では、気筒間の行程位相差(点火間隔)がクランク角で180degであり、180deg間隔で各気筒が上死点になる。そこで、クランク角180deg間隔で回転角信号POSの欠落箇所を設けることで、180deg毎に基準角度位置が検出されるようにしてある。
【0025】
また、メインセンサ202は、図3に示したように、外側カムシャフト115aに軸支され、周囲に突起(被検出部)202cを備えたシグナルプレート202aと、シグナルプレート202aの突起202cを検知してパルス状の回転角信号CAMaを出力するピックアップ202bとを備える。
同様に、サブセンサ204は、内側カムシャフト115bに軸支され、周囲に突起(被検出部)204cを備えたシグナルプレート204aと、シグナルプレート204aの突起204cを検知してパルス状の回転角信号CAMbを出力するピックアップ204bとを備える。
【0026】
シグナルプレート202a,204aの突起部202c,204cは、90deg毎に1個、3個、4個、2個だけ設けられており、4気筒エンジン101の場合、吸気カムシャフト115の90degは、クランクシャフト109の180degに相当し、クランクシャフト109の180degは、前述のように、気筒間における行程位相差(点火間隔)に相当する。
そして、クランクシャフト109の180deg毎に出力される回転角信号CAMa,CAMbのパルス数は、特定のピストン位置になっている気筒を示すようになっており、本実施形態では、点火順が第1気筒→第3気筒→第4気筒→第2気筒の順であることから、気筒番号に対応する数の回転角信号CAMa,CAMb、即ち、1個、3個、4個、2個のパルス信号が順次出力され、エンジン制御装置201は、回転角信号CAMa,CAMbのパルス数から、特定のピストン位置になっている気筒を判別する。
【0027】
また、エンジン制御装置201は、クランク角センサ203が出力する回転角信号POSと、メインセンサ202が出力する回転角信号CAMaとから、メイン位相可変機構114aによる変換角度(位相の進角量)であるメイン回転位相PH1を検出し、更に、クランク角センサ203が出力する回転角信号POSと、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMbとから、サブ位相可変機構114bによる変換角度(位相の遅角量)であるサブ回転位相PH2を検出する。
【0028】
詳細には、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMa又は回転角信号CAMbが出力されるまでの角度と、既知の初期位置とから、回転位相PH1,PH2が検出される。
即ち、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMaが出力されるまでの角度と、当該角度の初期位置に対応する基準角度との差から、メイン位相可変機構114aによる進角角度を検出でき、また、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMaが出力されるまでの角度と、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、回転角信号CAMbが出力されるまでの角度との差から、サブ位相可変機構114bによる遅角角度を検出できる。
【0029】
エンジン制御装置201は、エンジン101の運転条件(エンジン負荷、エンジン回転速度、エンジン温度など)に基づき、回転位相PH1,PH2の目標値TGPH1,TGPH2を設定し、実際の回転位相PH1,PH2が目標値TGPH1,TGPH2に近づくように、メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bのアクチュエータの操作量をそれぞれに演算して出力する。
尚、エンジン負荷は、吸入空気流量QAとエンジン回転速度から演算されるシリンダ吸入空気量や、当該シリンダ吸入空気量に対応する基本噴射量や、吸気管負圧などで代表させることができる。
【0030】
以下では、エンジン制御装置201による可変動弁装置114(メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114b)の制御を、図6〜図11のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
図6のフローチャートは、可変動弁装置114の制御のメインルーチンを示す。このメインルーチンは、所定時間毎に割り込み実行されるようになっている。
【0031】
まず、ステップS100では、メイン回転位相PH1の検出を行い、ステップS200では、サブ回転位相PH2の検出を行う。
ステップS300では、メイン回転位相PH1の検出に用いるメインセンサ202の故障診断を行う。
ステップS400では、回転位相PH1,PH2の目標値TGPH1,TGPH2を演算する。
【0032】
ステップS500では、メイン回転位相PH1の検出値及びメイン目標値TGPH1に基づき、メイン位相可変機構114aのアクチュエータの操作量を演算して出力する、メイン位相可変機構114aの制御を実行する。
次のステップS600では、サブ回転位相PH2の検出値及びサブ目標値TGPH2に基づき、サブ位相可変機構114bのアクチュエータの操作量を演算して出力する、サブ位相可変機構114bの制御を実行する。
【0033】
図7のフローチャートは、上記ステップS300におけるメインセンサ202の故障診断の内容を詳細に示すものである。
まず、ステップS301では、エンジン101が回転中(運転中)であるか否かを、例えば、クランク角センサ203が回転角信号POSを出力しているか否かに基づいて判断する。ここで、回転角信号POSが判定時間TH1以上継続して出力されていない場合には、エンジン101が停止状態であると判断し、判定時間TH1未満の間隔で継続して回転角信号POSが出力されていれば、エンジン101が回転中であると判断する。
【0034】
エンジン101が回転中であれば、ステップS302へ進み、メインセンサ202の回転角信号CAMaの入力が無い状態が、判定時間TH2以上継続しているか否かを判断する。
そして、回転角信号CAMaの入力が無い状態が判定時間TH2以上継続していれば、ステップS303へ進み、メインセンサ202の故障を判定し、異常/正常の診断結果を示すフラグfCAM1NGに、故障状態であることを示す「1」を設定する。
【0035】
一方、回転角信号CAMaが判定時間TH2未満の周期で順次入力されている場合には、ステップS304へ進み、メインセンサ202の正常を判定し、故障/正常の診断結果を示すフラグfCAM1NGに、正常状態であることを示す「0」を設定する。
尚、メインセンサ202の故障診断の方法を、上記の方法に限定するものではなく、公知の種々の診断方法を適宜採用できる。
また、判定時間TH1、TH2は、回転角信号POSや回転角信号CAMaの発生周期が長くなる、エンジン101のアイドル運転状態であっても、センサの正常/故障を診断できるように予め適合されている。
【0036】
図8のフローチャートは、上記ステップS400における目標値TGPH1,TGPH2の演算処理の内容を詳細に示すものである。
ステップS401では、メインセンサ202が正常である場合の目標値TGPH1,TGPH2をそれぞれ演算する。
前述のように、メイン位相可変機構114aは、回転位相の可変範囲の最遅角側を初期位置とし、メイン目標値TGPH1は、前記初期位置(最遅角位置)からの進角角度として設定される。
【0037】
そして、ステップS401では、図12に示すように、エンジン101の低中負荷域では、メイン目標値TGPH1を0deg(初期位置)に設定し、クランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相、即ち、メイン回転位相PH1を最遅角位置に保持する。
一方、エンジン101の高負荷域では、エンジン負荷が高くなるほど、メイン目標値TGPH1をより大きな角度として、クランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相を進角させる。
【0038】
ここで、エンジン回転速度に対しては、低回転域ほど、クランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相がより進角するように、目標値TGPH1をエンジン回転速度が低くなるほどより大きな角度に設定する。
一方、サブ位相可変機構114bは、前述のように、回転位相の可変範囲の最進角側を初期位置とし、サブ目標値TGPH2は、前記初期位置(最進角位置)からの遅角角度として設定される。
【0039】
そして、ステップS401では、図13に示すように、中負荷中回転域でサブ目標値TGPH2を最も大きな角度に設定し、クランクシャフト109に対する内側カムシャフト115b(第2カム117b)の回転位相が遅角されることで、トータル開弁期間の開弁時期IVCをそのままに閉弁時期IVCを遅らせてトータル開弁期間を増大させる。一方、中負荷中回転域から低回転高負荷側及び低回転低負荷側に移行すると、サブ目標値TGPH2をより小さく変更することで、トータル開弁期間を減少変化させる。
【0040】
図14は、目標値TGPH1,TGPH2の設定によるトータル開弁期間の変化の一例を示すものである。
エンジン101のアイドル運転域を含む低負荷域では、メイン目標値TGPH1=0deg、及び、サブ目標値TGPH2=0degのデフォルトに設定することで、例えば、トータル開弁期間の開弁時期IVOは上死点後7deg、トータル開弁期間の閉弁時期IVCは下死点後43degに設定され、トータル開弁期間は216deg、トータル開弁期間の中心位相は、上死点後115degに設定される。
【0041】
そして、低負荷域から中負荷域に移行すると、メイン目標値TGPH1=0degのまま、サブ目標値TGPH2が0degから例えば50degに変更される結果、第1吸気バルブ105aは低負荷域と同じバルブタイミングを維持するのに対して、第2吸気バルブ105bは、バルブタイミングが50degだけ遅角される結果、トータル開弁期間の閉時期IVCが50degだけ遅角し、トータル開弁期間は216degから266degに拡大し、トータル開弁期間の中心位相は、上死点後115degから上死点後140degにまで遅角される。
【0042】
高負荷域になると、サブ目標値TGPH2が0degに戻される結果、トータル開弁期間は216degに縮小されるが、メイン目標値TGPH1が例えば30degに設定されることで、第1吸気バルブ105a及び第2吸気バルブ105bのバルブタイミングが共に進角され、トータル開弁期間の開弁時期IVOは、低負荷域での上死点後7degから30degだけ進角して上死点前23degになり、トータル開弁期間の閉弁時期IVCは、低負荷域での下死点後43degから下死点後13degに進角される。
【0043】
図15は、エンジン負荷に対するメイン目標値TGPH1及びサブ目標値TGPH2の変化を示す。この図15に示すように、メイン目標値TGPH1(進角目標)は、エンジン負荷が閾値TP1以下の領域では、0deg(最遅角位置)に保持されるのに対し、エンジン負荷が閾値TP1を超えると、エンジン負荷の増大に応じてメイン目標値TGPH1(進角量)は増大される。
一方、閾値TP1以下のエンジン負荷領域の中間付近で、サブ目標値TGPH2(遅角目標)は、最も大きくなり、この最大遅角量となるエンジン負荷よりも大きくなるほど、又、小さいなるほど、サブ目標値TGPH2はより小さい変更され、エンジン負荷が閾値TP2(TP2>TP1)を超える領域では、0deg(最進角位置)に保持される。
【0044】
そして、閾値TP1と閾値TP2との間で、メイン目標値TGPH1=サブ目標値TGPH2となる。
尚、上記では、エンジン101の運転条件としてのエンジン負荷及びエンジン回転速度に応じて、目標値TGPH1,TGPH2を可変に設定したが、エンジン負荷、エンジン回転速度の他、エンジン温度(冷却水温度)などに応じて目標値TGPH1,TGPH2を可変とすることができる。
【0045】
ステップS401で、メインセンサ202が正常である場合の目標値TGPH1,TGPH2をそれぞれ演算すると、次のステップS402では、フラグfCAM1NGに「1」が設定されているか否かを判別することで、メインセンサ202の正常/故障を判別する。
ここで、フラグfCAM1NGに「0」が設定されていて、メインセンサ202が正常であると診断されている状態であれば、ステップS401で設定した目標値TGPH1,TGPH2に従って、メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bの制御(操作量の演算及び出力)を行わせるべく、そのまま本ルーチンを終了させる。
【0046】
メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bの操作量の演算においては、例えば、目標値TGPH1,TGPH2と、メインセンサ202、サブセンサ204及びクランク角センサ203の出力から検出した実際値PH1,PH2との偏差に基づく、比例積分微分制御(PID制御)によって操作量を決定することで、実際値PH1,PH2が目標値TGPH1,TGPH2に近づくように操作量を演算する、フィードバック制御が行われる。
一方、フラグfCAM1NGに「1」が設定されていて、メインセンサ202が故障していると診断されている状態であれば、ステップS403へ進む。
ステップS403では、メインセンサ202が故障している場合に対応して、目標値TGPH1,TGPH2を変更する。
【0047】
ステップS403における詳細な処理内容は、図9のフローチャートに示してある。
図9のフローチャートにおいて、ステップS421では、エンジン回転速度とエンジン負荷とに基づき、メイン位相可変機構114aとサブ位相可変機構114bとのどちらを制御し、どちらの制御停止とするかを決定する。
即ち、メインセンサ202の故障時であって、メイン回転位相PH1を検出できなくなった場合には、メイン位相可変機構114aを制御し、サブ位相可変機構114bを制御停止とする状態と、メイン位相可変機構114aを制御停止とし、サブ位相可変機構114bを制御する状態とのいずれかを、エンジン運転状態に応じて選択する。
【0048】
具体的には、予めエンジン回転速度とエンジン負荷とに基づき、エンジン101の運転領域を、メイン位相可変機構114aを制御し、サブ位相可変機構114bを制御停止とする高負荷側の第1領域と、メイン位相可変機構114aを制御停止とし、サブ位相可変機構114bを制御させる低負荷側の第2領域とに2分してある。
尚、第1領域と第2領域との境界は、メイン位相可変機構114aの目標値TGPH1が0deg(初期位置)に設定される最大エンジン負荷付近に設定してある。
【0049】
そして、現在のエンジン回転速度及びエンジン負荷が、第1領域に該当している場合には、フラグfFLGMに「1」を設定し、第2領域に該当している場合には、フラグfFLGMに「0」を設定する。
ステップS422では、ステップS421におけるフラグfFLGMの設定処理の結果、フラグfFLGMに、「1」と「0」とのいずれが設定されたかを判別する。
【0050】
ステップS422でフラグfFLGM=1であると判断した場合、即ち、メイン位相可変機構114aを制御し、サブ位相可変機構114bを制御停止とする高負荷側の第1領域に、そのときのエンジン運転条件が該当している場合には、ステップS423へ進む。
ステップS423では、サブ位相可変機構114bの制御動作を停止させるべく、サブ目標値TGPH2を0degにリセットし、サブ位相可変機構114bの制御を停止し、サブ位相可変機構114bによる変換角度がデフォルトの最進角位置に保持されるようにする。
【0051】
即ち、サブ目標値TGPH2=0degは、サブ位相可変機構114bのアクチュエータに対する駆動出力(通電)を停止させることで実現できる目標であって、実際値PH2が不明であっても、駆動出力(通電)を停止させることで到達しているものと推定できる目標である。
但し、制御停止は、通電の停止でなくてもよく、例えば、サブ位相可変機構114bにおいて、回転位相を進角方向(初期位置)に向けて付勢する弾性部材を備え、アクチュエータが逆の遅角方向の駆動力を発生する場合、弾性付勢力が優勢となって初期位置に戻る程度の電力を与え続ける状態も、制御停止に含まれるものとする。
【0052】
一方、ステップS422でフラグfFLGM=0であると判断した場合、即ち、サブ位相可変機構114bを制御し、メイン位相可変機構114aを制御停止とする低負荷側の第2領域に、そのときのエンジン運転条件が該当している場合には、ステップS424へ進む。
ステップS424では、メイン位相可変機構114aの制御動作を停止させるべく、メイン位相可変機構114aのメイン目標値TGPH1を0degにリセットし、メイン位相可変機構114aの制御を停止し、メイン位相可変機構114aによる変換角度がデフォルトの最遅角位置に保持されるようにする。
【0053】
即ち、メイン目標値TGPH1=0degは、メイン位相可変機構114aのアクチュエータに対する駆動出力(通電)を停止させることで実現できる目標であって、実際値PH1が不明であっても、駆動出力(通電)を停止させることで到達しているものと推定できる目標である。
ここでも、初期位置に戻る程度の電力を与え続ける状態も、メイン位相可変機構114aの制御停止に含まれるものとする。
【0054】
図10のフローチャートは、上記ステップS500でのメイン位相可変機構114aの制御を詳細に示す。
まず、ステップS501では、メインセンサ202の故障/正常を示すフラグfCAM1NGを判別する。
ステップS501で、フラグfCAM1NG=0であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が正常である場合は、ステップS505へ進む。
【0055】
ステップS505では、メイン位相可変機構114aの制御を実施する。具体的には、メインセンサ202が出力する回転角信号CAMaと、回転角信号POSとから、メイン回転位相PH1を検出し、このメイン回転位相PH1が目標値TGPH1に近づくように、メイン位相可変機構114aのアクチュエータの操作量を演算して出力する。
上記ステップS505での制御が、メインセンサ202が正常である場合のメイン位相可変機構114aの制御となる。
【0056】
メイン位相可変機構114aの操作量は、例えばモータや電磁弁などの電動アクチュエータへの通電をデューティ制御する場合のデューティ信号であり、デューティ信号のデューティ比を変化させることでアクチュエータの通電量を変化させ、回転位相PH1を変化させる。
一方、ステップS501で、フラグfCAM1NG=1であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が故障時である場合は、ステップS502へ進む。
【0057】
ステップS502では、回転角信号POSに基づき検出される基準クランク角位置から、サブセンサ204から回転角信号CAMbが出力されるまでの角度と、当該角度の初期位置に対応する基準角度との差が、メイン位相可変機構114aによる進角角度を示すものとする検出処理を設定する。
サブ位相可変機構114bの制御が行われ、第2カム117bの位相が遅角される場合には、基準クランク角位置から、サブセンサ204から回転角信号CAMbが出力されるまでの角度は、メイン位相可変機構114aによって進角された位相位置からサブ位相可変機構114bによって遅角された分を含む角度になる。
【0058】
しかし、サブ位相可変機構114bの制御を停止させれば、サブ位相可変機構114bによる遅角分が0になることで、基準クランク角位置から、サブセンサ204から回転角信号CAMbが出力されるまでの角度は、メイン位相可変機構114aによって進角された位相位置を示すことになる。即ち、サブ位相可変機構114bの制御を停止させれば、サブセンサ204の出力から回転位相PH1を検出することが可能である。
そこで、ステップS502では、サブ位相可変機構114bの制御が停止されることを前提として、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMaに基づき、メイン位相可変機構114aによる回転位相PH1を検出させる設定を行い、故障しているメインセンサ202は、メイン位相可変機構114aの制御に用いないようにする。
【0059】
ステップS503では、フラグfFLGMの判別を行うことで、メイン位相可変機構114aとサブ位相可変機構114bとのどちらを制御し、どちらの制御を停止させるべき、エンジン運転条件であるかを判断する。
そして、フラグfFLGM=1であって、メイン位相可変機構114aを制御する条件である場合は、後で詳細に説明するステップS600での処理で、サブ位相可変機構114bの制御を停止させる処理が行われるので、ステップS505へ進んで、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMaに基づき検出したメイン回転位相PH1と目標回転位相TGPH1に基づき、メイン位相可変機構114aのアクチュエータの操作量を演算して出力する。
【0060】
従って、メインセンサ202が故障しても、メイン位相可変機構114aを高負荷側の第1領域で制御することができ、エンジン101の高負荷側においてトータル開弁期間の閉弁時期IVCをメイン位相可変機構114aによって進角させることで、バルブオーバーラップの拡大により充填効率を増加させ、出力向上を図ることができる。
一方、フラグfFLGM=0であって、メイン位相可変機構114aの制御を停止させる条件である場合は、ステップS504へ進んで、メイン位相可変機構114aの操作量としてのデューティ比を0%として、メイン位相可変機構114aのアクチュエータへの通電を遮断し、メイン位相可変機構114aによる変換角度をデフォルトの最遅角位置に保持させる。
【0061】
このとき、ステップS600では、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMaに基づき検出したサブ回転位相PH2と、目標回転位相TGPH2とに基づき、サブ位相可変機構114bのアクチュエータの操作量が演算され出力される。
即ち、メイン位相可変機構114aの制御を停止していれば、サブ位相可変機構114bは、メイン位相可変機構114aの初期位置を基準に、第2カム117bの回転位相を遅角することになるから、メインセンサ202が故障していても、サブ位相可変機構114bによる回転位相PH2(遅角量)を検出することができる。
【0062】
図11のフローチャートは、上記ステップS600でのサブ位相可変機構114bの制御を詳細に示す。
まず、ステップS601では、メインセンサ202の故障/正常を示すフラグfCAM1NGを判別する。
ステップS601で、フラグfCAM1NG=0であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が正常である場合は、ステップS604へ進む。
【0063】
ステップS604では、サブ位相可変機構114bの制御を実施する。具体的には、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMbに基づき、回転位相PH2を検出し、この回転位相PH2が目標値TGPH2に近づくように、サブ位相可変機構114bの操作量を演算して出力する。
サブ位相可変機構114bの操作量は、例えばモータや電磁弁などの電動アクチュエータへの通電をデューティ制御する場合のデューティ信号であり、デューティ信号のデューティ比を変化させることでアクチュエータの通電量を変化させ、回転位相PH2を変化させる。
【0064】
一方、ステップS601で、フラグfCAM1NG=1であると判断した場合、即ち、メインセンサ202が異常である場合は、ステップS602へ進む。
ステップS602では、フラグfFLGMの判別を行うことで、メイン位相可変機構114aとサブ位相可変機構114bとのいずれを制御させるべき、エンジン運転条件であるかを判断する。
【0065】
そして、フラグfFLGM=1であって、メイン位相可変機構114aを制御させ、サブ位相可変機構114bの制御を停止させる条件である場合は、ステップS603へ進んで、サブ位相可変機構114bを停止させるべく、操作量としてのデューティ比を0%として、サブ位相可変機構114bによる変換角度を変更する電動アクチュエータへの通電を遮断し、サブ位相可変機構114bによる変換角度をデフォルトの最進角位置に保持させる。
これにより、サブセンサ204を用いて回転位相PH1を検出して、メイン位相可変機構114aを制御できるようになる。
【0066】
フラグfFLGM=1である場合、前述のステップS500での処理で、メイン位相可変機構114aを制御させることで、高負荷側の第1領域においてトータル開弁期間の閉弁時期IVCを進角させることで、出力の向上が図られる。
また、フラグfFLGM=0であって、メイン位相可変機構114aの制御を停止させる条件である場合は、ステップS604へ進んで、サブセンサ204が出力する回転角信号CAMbに基づき回転位相PH2を検出し、この回転位相PH2が目標値TGPH2に近づくように、サブ位相可変機構114bの操作量を演算する。
【0067】
即ち、フラグfFLGM=0である場合、メイン位相可変機構114aの制御が停止され、第1カム117aの回転位相PH1が最遅角位置(デフォルト位置)に保持され、係る最遅角位置を基準にサブ位相可変機構114bを動作させることで、トータル開弁期間の閉時期IVCを遅角変化させることができる。
従って、メインセンサ202が異常になっても、サブ位相可変機構114bを低負荷側の第2領域で動作させることができ、かつ、低負荷側の第2領域においてトータル開弁期間の閉弁時期IVCをサブ位相可変機構114bによって遅角させることで、圧縮開始時期を遅らせ、ポンピングロスの低減によって燃費性能を向上させることができる。
【0068】
このように、メインセンサ202に異常が発生しても、サブセンサ204を用いてクランクシャフト109に対する外側カムシャフト115a(第1カム117a)の回転位相PH1を検出して、メイン位相可変機構114aの制御を行える。
また、メイン位相可変機構114aを制御する場合、サブ位相可変機構114bの制御を停止させることになるが、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止する状態と、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する状態とを、エンジン101の運転条件に応じて切り替えるので、メイン位相可変機構114aによってトータル開弁期間の中心位相を進角させること(開弁時期IVO及び閉弁時期IVCの進角)が要求される運転領域と、サブ位相可変機構114bによってトータル開弁期間の増大(閉弁時期IVCの遅角)が要求される運転領域とのそれぞれで、要求に近いバルブタイミングに制御して、エンジン101の運転性能の低下を抑制できる。
【0069】
尚、メインセンサ202の故障時に、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する領域と、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止する領域との境界は、例えば、メインセンサ202の正常時におけるエンジン負荷に対する各位相可変機構114a,114bの目標値TGPH1,TGPH2が図15に示すように設定される場合、図16に示すように、目標値TGPH1,TGPH2のうちの大きい方、換言すれば、進遅角要求角度の絶対値の大きい方が、制御対象の位相可変機構として選択されるように設定することができる。
【0070】
進遅角要求の大きい方を選択させる場合、メイン位相可変機構114aによる進角目標角度TGPH1と、サブ位相可変機構114bによる遅角目標角度TGPH2とが略一致するエンジン負荷よりも、エンジン負荷が高い領域では、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止させ、前記一致点よりもエンジン負荷が低い領域では、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する。
係る構成であれば、メインセンサ202が故障しても、トータル開弁期間の中心位相の進角要求と、トータル開弁期間の増大要求とを、略満足させることができ、エンジン101の運転性の低下を抑制できる。
【0071】
また、トータル開弁期間の開弁時期IVOによって、内部EGR(残留排ガス)の量が変化するので、内部EGRの量の制御を優先させるべく、図17に示すように、メイン位相可変機構114aによる進角要求が発生し始めるエンジン負荷付近を、メイン位相可変機構114aの制御を停止しサブ位相可変機構114bを制御する領域と、メイン位相可変機構114aを制御しサブ位相可変機構114bの制御を停止させる領域との境界に設定することができる。
係る構成であれば、トータル開弁期間の開弁時期IVOの進角制御を、メインセンサ202の正常時に近似する形で実施でき、内部EGR(残留排ガス)の制御精度の低下を抑制できる。
【0072】
以上、好ましい実施形態を具体的に説明したが、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、排気カムシャフト211を外側カムシャフト(外軸)と内側カムシャフト(内軸)とからなる2重構造として、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とを備え、上記実施形態と同様に、メイン位相可変機構による回転位相を検出するためのメインセンサの故障時に、サブ位相可変機構による回転位相を検出するためのサブセンサを用いて、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とのいずれか一方を制御することができる。
【0073】
また、排気バルブ110a,110bのバルブタイミングを変更する場合、メイン位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最進角位置とし、サブ位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最遅角位置とすることができる。従って、前述の実施形態のように、メイン位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最遅角位置とし、サブ位相可変機構の初期位置(デフォルト位置)を最進角位置とする構成に限定されるものではない。
また、吸気バルブ105a,105bと排気バルブ110a,110bとの双方が、メイン位相可変機構とサブ位相可変機構とからなる可変動弁装置によってバルブタイミングが可変とされるエンジン101とすることができる。
【0074】
また、メインセンサ202の異常を診断したことを、車両の運転者に警告する警告装置を備えることができる。
また、サブセンサ204に異常が発生した場合には、メインセンサ202の出力に基づきメイン位相可変機構114aの制御を継続させる一方で、サブ位相可変機構114bの制御を停止させて、サブ位相可変機構114bによる回転位相を初期位置(デフォルト位置)に保持させるようにできる。また、サブセンサ204に異常が発生した場合に、メイン位相可変機構114a及びサブ位相可変機構114bを共に停止させて、双方を初期位置(デフォルト位置)に保持させることができる。
【0075】
また、メイン位相可変機構及び/又はサブ位相可変機構の制御の停止によって復帰させる基準位相は、回転位相の可変範囲の一方端に限定されず、例えば回転位相を中間位置にロックするロック機構を備える場合には、当該ロック機構によるロックが行われる位置に復帰させることができ、また、予め設定された操作量を固定することで、係る操作量に対応する中間の又は可変範囲の一方端の回転位相に復帰させることができる。
また、気筒毎に吸気バルブ又は排気バルブを3つ備えたエンジン101において、3つのバルブのうちの1つ又は2つを第1カム(外側カムシャフト)で駆動し、残る2つ又は1つを第2カム(内側カムシャフト)で駆動することができる。
【0076】
また、サブ位相可変機構114bの回転位相を、メインセンサ202とサブセンサ204とに基づき、外側カムシャフトに対する内側カムシャフトの相対位相として検出させることができる。
【0077】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2記載の可変動弁装置の制御装置において、
エンジンの運転条件に応じた前記メイン位相可変機構の目標回転位相と、エンジンの運転条件に応じた前記サブ位相可変機構の目標回転位相とのうち、制御の停止による初期位相からの変換角度が小さい方を、前記メインセンサの故障時に、制御を停止させる位相可変機構として選択する、可変動弁装置の制御装置。
上記発明によると、基準位相からの変換角度の要求が大きい方の位相可変機構を制御することで、一方の位相可変機構の制御停止によるエンジン運転性能の低下を抑制できる。
【0078】
(ロ)請求項2記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置が、複数の吸気バルブを駆動する装置であり、前記メイン位相可変機構が、最遅角位置を制御の停止による基準位相とし、前記サブ位相可変機構が、最進角位置を制御の停止による基準位相とし、
前記メイン位相可変機構のエンジン運転条件に応じた目標回転位相が前記基準位相に設定される領域で、前記メイン位相可変機構の制御を停止させ、前記メイン位相可変機構の目標回転位相が前記基準位相よりも進角される領域で、前記サブ位相可変機構の制御を停止させる、可変動弁装置の制御装置。
上記発明によると、メイン位相可変機構による回転位相の進角制御が優先されることになり、吸気バルブのトータル開弁期間における開時期の進角によって内部EGR量を確保し、燃費性能を維持できる。
【符号の説明】
【0079】
101…エンジン(内燃機関)、105a,105b…吸気バルブ、106…燃料噴射弁、107…点火プラグ、109…クランクシャフト、110a,110b…排気バルブ、114…可変動弁装置、114a…メイン位相可変機構、114b…サブ位相可変機構、115…吸気カムシャフト、115a…外側カムシャフト(外軸)、115b…内側カムシャフト(内軸)、117a…第1カム、117b…第2カム、201…エンジン制御装置、202…メインセンサ、203…クランク角センサ、204…サブセンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの気筒毎に、吸気バルブ又は排気バルブを駆動する第1カムと第2カムとを設け、
クランクシャフトに対する前記第1カム及び前記第2カムの回転位相を可変とするメイン位相可変機構と、前記第1カムに対する前記第2カムの回転位相を可変とするサブ位相可変機構と、前記第1カムの回転信号を出力するメインセンサと、前記第2カムの回転信号を出力するサブセンサと、を備えた可変動弁装置において、
前記メインセンサの故障時に、前記メイン位相可変機構と前記サブ位相可変機構とのいずれか一方の制御を停止させ、他方を前記サブセンサの検出結果に基づき制御する、可変動弁装置の制御装置。
【請求項2】
前記メインセンサの故障時に、制御を停止させる位相可変機構を、前記エンジンの運転条件に応じて選択する、請求項1記載の可変動弁装置の制御装置。
【請求項3】
エンジンが気筒毎に2つの吸気バルブを備え、前記可変動弁装置が、前記第1カムで一方の吸気バルブを駆動し、前記第2カムで他方の吸気バルブを駆動し、前記メイン位相可変機構が、制御の停止によって最遅角位置に戻り、前記サブ位相可変機構が、制御の停止によって最進角位置に戻り、
前記メインセンサの故障時に、制御を停止させる位相可変機構を、エンジン負荷の増大に応じて前記メイン位相可変機構から前記サブ位相可変機構に切り替える、請求項2記載の可変動弁装置の制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの回転速度が低いほど、より低いエンジン負荷で、制御を停止させる位相可変機構の切り替えを行う、請求項3記載の可変動弁装置の制御装置。
【請求項1】
エンジンの気筒毎に、吸気バルブ又は排気バルブを駆動する第1カムと第2カムとを設け、
クランクシャフトに対する前記第1カム及び前記第2カムの回転位相を可変とするメイン位相可変機構と、前記第1カムに対する前記第2カムの回転位相を可変とするサブ位相可変機構と、前記第1カムの回転信号を出力するメインセンサと、前記第2カムの回転信号を出力するサブセンサと、を備えた可変動弁装置において、
前記メインセンサの故障時に、前記メイン位相可変機構と前記サブ位相可変機構とのいずれか一方の制御を停止させ、他方を前記サブセンサの検出結果に基づき制御する、可変動弁装置の制御装置。
【請求項2】
前記メインセンサの故障時に、制御を停止させる位相可変機構を、前記エンジンの運転条件に応じて選択する、請求項1記載の可変動弁装置の制御装置。
【請求項3】
エンジンが気筒毎に2つの吸気バルブを備え、前記可変動弁装置が、前記第1カムで一方の吸気バルブを駆動し、前記第2カムで他方の吸気バルブを駆動し、前記メイン位相可変機構が、制御の停止によって最遅角位置に戻り、前記サブ位相可変機構が、制御の停止によって最進角位置に戻り、
前記メインセンサの故障時に、制御を停止させる位相可変機構を、エンジン負荷の増大に応じて前記メイン位相可変機構から前記サブ位相可変機構に切り替える、請求項2記載の可変動弁装置の制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの回転速度が低いほど、より低いエンジン負荷で、制御を停止させる位相可変機構の切り替えを行う、請求項3記載の可変動弁装置の制御装置。
【図1】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図14】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図14】
【公開番号】特開2013−60865(P2013−60865A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199325(P2011−199325)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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