説明

可変動弁装置の制御装置

【課題】可変動弁装置の動作状態を正確に判定することが可能な可変動弁装置の制御装置を提供する。
【解決手段】可変動弁装置20は、バルブタイミングを中間角位相に固定する位相固定機構40を備える。電子制御装置91は、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態であることが確定しているときの位相変動幅を測定したものを固定判定値とする。そして、測定した位相変動幅と固定判定値との比較により可変動弁装置20の動作状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定角位相に固定する位相固定機構とを備える内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、位相変更機構および位相固定機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の制御装置は、バルブタイミングの変動幅と判定値との比較に基づいて、可変動弁装置の動作状態が位相固定状態、位相解除状態、および異常状態のいずれかの状態にあるかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−255496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可変動弁装置を備える複数の内燃機関において、バルブタイミングが位相固定機構により特定角位相に固定されているときのバルブタイミングの変動幅、およびバルブタイミングが位相変更機構の油圧により保持されているときのバルブタイミングの変動幅を同一の運転条件のもとで比較したとき、互いに異なる大きさを示すことがある。
【0005】
バルブタイミングが位相固定機構により固定されているときの変動幅が異なる理由としては、タイミングチェーンのあそび、および位相固定機構を構成する部品のクリアランスの違いが挙げられる。また、バルブタイミングが油圧により保持されているときの変動幅が異なる理由としては、タイミングチェーンのあそび、位相変更機構を構成する部品の寸法の違い、および位相変更機構を構成する部品を組み付けるときの組み付け誤差などが挙げられる。
【0006】
一方、特許文献1の可変動弁装置において、可変動弁装置の動作状態を判定するために用いられる判定値は、上述した部品の個体差および組み付け誤差が反映されていないため、可変動弁装置の動作状態を正確に判定することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、可変動弁装置の動作状態を正確に判定することが可能な可変動弁装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、前記バルブタイミングを特定角位相に固定する位相固定機構とを備える内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構および前記位相固定機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、前記バルブタイミングが前記位相固定機構により前記特定角位相に固定されている前記可変動弁装置の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングが前記位相固定機構により固定されていない前記可変動弁装置の動作状態を位相解除状態とし、前記バルブタイミングが前記位相変更機構の油圧により保持されている前記可変動弁装置の動作状態を位相保持状態とし、前記バルブタイミングの変動幅を位相変動幅とし、前記位相固定状態においての前記位相変動幅を固定変動幅とし、前記位相保持状態においての前記位相変動幅を保持変動幅とし、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であることが確定しているときの前記固定変動幅を基準変動幅として、前記位相変動幅と前記基準変動幅および前記保持変動幅の少なくとも一方との比較により前記可変動弁装置の動作状態を判定することを要旨とする。
【0009】
基準変動幅は、可変動弁装置の動作状態が位相固定状態であることが確定しているときの位相変動幅を示すため、内燃機関の運転中において確認される位相変動幅が基準変動幅以下のとき、可変動弁装置の動作状態が位相固定状態にあると予測することができる。また基準変動幅は、組み上げられた内燃機関の可変動弁装置の動作にともない取得されるため、可変動弁装置の個体差が反映された値となる。
【0010】
他方、保持変動幅は、可変動弁装置の動作状態が位相保持状態のときの変動幅を示すため、内燃機関の運転中において確認される位相変動幅が保持変動幅よりも大きいとき、可変動弁装置の動作状態が位相解除状態にあると予測することができる。また保持変動幅は、組み上げられた内燃機関の可変動弁装置の動作にともない取得されるため、可変動弁装置の個体差が反映された値となる。
【0011】
そして本発明においては、このように製品毎の個体差が反映された判定値(基準変動幅または保持変動幅)を用いて可変動弁装置の動作状態を判定するため、一律に設定された判定値を用いて可変動弁装置の動作状態を判定する構成と比較して、可変動弁装置の動作状態を正確に判定することができる。
【0012】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、請求項1に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記可変動弁装置の動作状態を前記位相固定状態から前記位相解除状態に変更するための前記位相固定機構の動作を解除動作として、以下の(条件A1)および(条件A2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相解除状態であると判定することを要旨とする。
(条件A1)「前記解除動作が開始されてからの経過時間である解除開始後時間が所定時間TA以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅よりも大きい」
(条件A2)「前記解除開始後時間が前記所定時間TA以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅以上」
可変動弁装置において、その構成要素に異常が生じていないことを前提とした場合、解除動作が開始されてから所定時間TAが経過したとき、動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変化する。また、位相解除状態のときには、バルブタイミングが位相固定機構により固定されていないため、位相変動幅が基準変動幅(固定変動幅)よりも大きくなる。また、保持変動幅は基準変動幅よりも大きいため、位相変動幅が保持変動幅以上の大きさのとき、この位相変動幅および保持変動幅の関係は、可変動弁装置の動作状態が位相解除状態にあることを示唆している。
【0013】
以上のことから、可変動弁装置の動作状態が位相解除状態にあるか否かについては、解除開始後時間と所定時間TAとの関係、位相変動幅と基準変動幅との関係、および位相変動幅と保持変動幅との関係の少なくとも1つに基づいて判定することができる。
【0014】
そして上記発明では、解除開始後時間と所定時間TAとの関係および位相変動幅と基準変動幅との関係を含む(条件A1)、または解除開始後時間と所定時間TAとの関係および位相変動幅と保持変動幅との関係を含む(条件A2)の一方が成立するときに可変動弁装置の動作状態が位相解除状態である旨判定するため、可変動弁装置が位相解除状態にあることをより正確に判定することができる。
【0015】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、請求項1または2に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記可変動弁装置の動作状態を前記位相固定状態から前記位相解除状態に変更するための前記位相固定機構の動作を解除動作とし、前記位相固定機構が固着している前記可変動弁装置の動作状態を異常状態として、以下の(条件B1)および(条件B2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記異常状態であると判定することを要旨とする。
(条件B1)「前記解除動作が開始されてからの経過時間である解除開始後時間が所定時間TB以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅以下」
(条件B2)「前記解除開始後時間が前記所定時間TB以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅よりも小さい」
可変動弁装置の動作状態が異常状態の場合、解除動作が開始されてから所定時間TBが経過しても動作状態が位相解除状態に変化しない。また、位相固定状態のときには、バルブタイミングが位相固定機構により固定されているため、位相変動幅が基準変動幅(固定変動幅)以下の大きさとなる。また可変動弁装置において、位相変動幅が保持変動幅よりも小さくなる状況は、基本的にはバルブタイミングが位相固定機構により固定されている位相固定状態のときに限られる。すなわち、位相変動幅が保持変動幅よりも小さいとき、この位相変動幅および保持変動幅の関係は、可変動弁装置の動作状態が位相固定状態にあることを示唆している。
【0016】
以上のことから、可変動弁装置の動作状態が異常状態にあるか否かについては、解除開始後時間と所定時間TBとの関係、および位相変動幅と基準変動幅との関係または位相変動幅と保持変動幅との関係に基づいて判定することができる。
【0017】
そして上記発明では、解除開始後時間と所定時間TBとの関係および位相変動幅と基準変動幅との関係を含む(条件B1)、または解除開始後時間と所定時間TBとの関係および位相変動幅と保持変動幅との関係を含む(条件B2)の一方が成立するときに可変動弁装置の動作状態が位相解除状態である旨判定するため、可変動弁装置が異常状態にあることを正確に判定することができる。
【0018】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、請求項1〜3のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記可変動弁装置の動作状態を前記位相解除状態から前記位相固定状態に変更するための前記位相固定機構の動作を固定動作として、以下の(条件C1)および(条件C2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であると判定することを要旨とする。
(条件C1)「前記固定動作が開始されてからの経過時間である固定開始後時間が所定時間TC以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅以下」
(条件C2)「前記固定開始後時間が前記所定時間TC以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅よりも小さい」
可変動弁装置において、その構成要素に異常が生じていないことを前提とした場合、固定動作が開始されてから所定時間TCが経過したとき、動作状態が位相解除状態から位相固定状態に変化する。また、位相固定状態のときには、バルブタイミングが位相固定機構により固定されているため、位相変動幅が基準変動幅(固定変動幅)以下の大きさとなる。また可変動弁装置において、位相変動幅が保持変動幅よりも小さくなる状況は、基本的にはバルブタイミングが位相固定機構により固定されている位相固定状態のときに限られる。すなわち、位相変動幅が保持変動幅よりも小さいとき、この位相変動幅および保持変動幅の関係は、可変動弁装置の動作状態が位相固定状態にあることを示唆している。
【0019】
以上のことから、可変動弁装置の動作状態が位相固定状態にあるか否かについては、固定開始後時間と所定時間TCとの関係、位相変動幅と基準変動幅との関係、および位相変動幅と保持変動幅との関係の少なくとも1つに基づいて判定することができる。
【0020】
そして上記発明では、固定開始後時間と所定時間TCとの関係および位相変動幅と基準変動幅との関係を含む(条件C1)、または固定開始後時間と所定時間TCとの関係および位相変動幅と保持変動幅との関係を含む(条件C2)の一方が成立するときに可変動弁装置の動作状態が位相固定状態である旨判定するため、可変動弁装置が位相固定状態にあることをより正確に判定することができる。
【0021】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、請求項1〜4のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記可変動弁装置の動作状態を前記位相解除状態から前記位相固定状態に変更するための前記位相固定機構の動作を固定動作とし、前記位相固定機構が固着している前記可変動弁装置の動作状態を異常状態として、以下の(条件D1)および(条件D2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であると判定することを要旨とする。
(条件D1)「前記固定動作が開始されてからの経過時間である固定開始後時間が所定時間TD以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅よりも大きい」
(条件D2)「前記固定開始後時間が前記所定時間TD以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅以上」
可変動弁装置の動作状態が異常状態の場合、固定動作が開始されてから所定時間TDが経過しても動作状態が位相固定状態に変化しない。また、位相解除状態のときには、バルブタイミングが位相固定機構により固定されていないため、位相変動幅が基準変動幅(固定変動幅)よりも大きくなる。また、保持変動幅は基準変動幅よりも大きいため、位相変動幅が保持変動幅以上の大きさのとき、この位相変動幅および保持変動幅の関係は、可変動弁装置の動作状態が位相解除状態にあることを示唆している。
【0022】
以上のことから、可変動弁装置の動作状態が異常状態にあるか否かについては、固定開始後時間と所定時間TDとの関係、および位相変動幅と基準変動幅との関係または位相変動幅と保持変動幅との関係に基づいて判定することができる。
【0023】
そして上記発明では、固定開始後時間と所定時間TDとの関係および位相変動幅と基準変動幅との関係を含む(条件D1)、または固定開始後時間と所定時間TDとの関係および位相変動幅と保持変動幅との関係を含む(条件D2)の一方が成立するときに可変動弁装置の動作状態が異常状態である旨判定するため、可変動弁装置が異常状態にあることを正確に判定することができる。
【0024】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、請求項1〜5のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相解除状態のとき、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅以下のとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相保持状態であると判定することを要旨とする。
【0025】
可変動弁装置の動作状態が位相固定状態の場合、バルブタイミングが特定角位相に固定されるため、位相変動幅が保持変動幅よりも小さい。このため、可変動弁装置の動作状態が位相固定状態のとき、保持変動幅に基づいてバルブタイミングが固定されている状態およびバルブタイミングが保持されている状態のいずれの状態にあるかを判定できない。
【0026】
一方、可変動弁装置の動作状態が位相解除状態の場合、バルブタイミングが保持されていないときの位相変動幅が保持変動幅よりも大きい。このため、位相変動幅と保持変動幅との比較に基づいてバルブタイミングが保持されているか否かを判定することが可能である。
【0027】
そして上記発明では、可変動弁装置の動作状態が位相解除状態であること、および位相変動幅が保持変動幅以下であることが成立するときに可変動弁装置の動作状態が位相保持状態である旨判定するため、可変動弁装置の動作状態が位相保持状態であることを正確に判定することができる。
【0028】
(7)第7の手段は、請求項7に記載の発明すなわち、請求項1〜6のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であることが確定している状態は、前記位相固定状態に設定された前記可変動弁装置を有する前記内燃機関の製造後において、前記内燃機関が最初に運転されるときの機関始動時であることを要旨とする。
【0029】
内燃機関の製造にあたり、可変動弁装置の動作状態を位相固定状態に設定して可変動弁装置を組み上げる工程が含まれる場合、内燃機関の製造における最初の機関始動時には可変動弁装置の動作状態が位相固定状態にある。上記発明によれば、そのときに得られる位相変動幅が基準変動幅として設定されるため、可変動弁装置の動作状態を正確に判定することができる。
【0030】
なお、所定時間TAおよび所定時間TBの関係、所定時間TAおよび所定時間TCの関係、所定時間TAおよび所定時間TDの関係、所定時間TBおよび所定時間TCの関係、ならびに所定時間TCおよび所定時間TDの関係としては、2つの所定時間が互いに同じ時間となる関係、および2つの所定時間が互いに異なる時間となる関係を採用することができる。
【0031】
また、所定時間TA、所定時間TB、および所定時間TCの関係、所定時間TA、所定時間TC、および所定時間TDの関係、ならびに所定時間TB、所定時間TC、および所定時間TDの関係としては、3つの所定時間が互いに同じ時間となる関係、2つの所定時間が互いに同じ時間となり、かつ残りの1つの時間が2つの所定時間とは異なる時間となる関係、および3つの所定時間が互いに異なる時間となる関係を採用することができる。
【0032】
また、所定時間TA、所定時間TB、所定時間TC、および所定時間TDの関係としては、4つの所定時間が互いに同じ時間となる関係、3つの所定時間が互いに同じ時間となり、かつ残りの1つの時間が3つの所定時間とは異なる時間となる関係、2つの所定時間が互いに同じ時間となり、かつ残りの2つの時間が同所定時間とは異なる時間となる関係、および4つの所定時間が互いに異なる時間となる関係を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態の可変動弁装置の制御装置について、これを含む内燃機関の構造を模式的に示す構成図。
【図2】同実施形態の可変動弁装置について、その断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態の可変動弁装置について、図2のA−A線の断面構造を平面上に展開したものを示す断面図。
【図4】同実施形態の可変動弁装置について、図2のA−A線の断面構造を平面上に展開したものを示す断面図。
【図5】同実施形態の可変動弁装置について、図3の第1固定機構およびその周辺の断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態の可変動弁装置について、(a)は位相固定機構の動作状態が位相解除状態のときのバルブタイミングの変動態様を示すグラフ、(b)は位相固定機構の動作状態が位相固定状態のときのバルブタイミングの変動態様を示すグラフ。
【図7】同実施形態の可変動弁装置について、機関回転速度および冷却水温度と保持判定値との関係を示すマップ。
【図8】同実施形態の可変動弁装置について、その制御装置により行われる「保持状態判定処理」の手順を示すフローチャート。
【図9】同実施形態の可変動弁装置について、その制御装置により行われる「固定状態判定処理」の手順を示すフローチャート。
【図10】同実施形態の可変動弁装置について、その制御装置により行われる「解除状態判定処理」の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照して、内燃機関1の構成について説明する。
内燃機関1は、混合気の燃焼によりクランクシャフト15を回転させる機関本体10と、動弁系の各要素を備える可変動弁装置20と、機関本体10等に作動油を供給する油圧機構80と、これら装置をはじめとする各種装置を統括的に制御する制御装置90とを有する。
【0035】
機関本体10は、混合気の燃焼が行われるシリンダブロック11と、可変動弁装置20が組み付けられるシリンダヘッド12と、機関本体10の各部位に供給する作動油を貯留するオイルパン13とを有する。
【0036】
可変動弁装置20は、燃焼室14の吸気ポートを開放および閉鎖する吸気バルブ21と、燃焼室14の排気ポートを開放および閉鎖する排気バルブ23と、吸気バルブ21を押し下げる吸気カムシャフト22と、排気バルブ23を押し下げる排気カムシャフト24とを有する。またこの他に、クランクシャフト15の回転位相に対する吸気カムシャフト22の回転位相(以下、「バルブタイミングVT」)を変更する油圧式の位相変更機構30と、バルブタイミングVTを固定する位相固定機構40とを有する。
【0037】
位相変更機構30は、バルブタイミングVTを最も進角側のバルブタイミング(以下、「最進角位相VTmax」)から最も遅角側のバルブタイミング(以下、「最遅角位相VTmin」)までの間で変更する。
【0038】
位相固定機構40は、バルブタイミングVTを最進角位相VTmaxと最遅角位相VTminとの間の特定のバルブタイミング(以下、「中間角位相VTmdl」)に固定する。なお、中間角位相VTmdlは「特定角位相」に相当する。
【0039】
中間角位相VTmdlとしては寒冷地において内燃機関1を始動することが可能なバルブタイミングVTが設定されている。内燃機関1を始動するときにバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに維持されている場合と、これよりも遅角側のバルブタイミングVTに維持されている場合とを比較したとき、後者よりも前者の方が始動性が高い。
【0040】
油圧機構80は、オイルパン13の作動油を吐出するオイルポンプ81と、位相変更機構30についての作動油の供給態様および排出態様を制御するオイルコントロールバルブ82と、位相固定機構40についての作動油の供給態様および排出態様を制御するオイルスイッチングバルブ83とを有する。また、オイルポンプ81から吐出された作動油を内燃機関1の各部位に供給する作動油路84を有する。
【0041】
作動油路84は、位相変更機構30の進角室37とオイルコントロールバルブ82とを互いに接続する進角油路85と、位相変更機構30の遅角室38とオイルコントロールバルブ82とを互いに接続する遅角油路86と、位相固定機構40の第1解除室54および第2解除室64とオイルスイッチングバルブ83とを互いに接続する位相固定油路87とを有する。
【0042】
制御装置90は、内燃機関1を制御するための各種の演算処理等を行う電子制御装置91と、クランクポジションセンサ92、カムポジションセンサ93、冷却水温度センサ94、およびアクセルポジションセンサ95をはじめとする各種センサとを有する。
【0043】
クランクポジションセンサ92は、クランクシャフト15の回転角度(以下、「クランク角度CA」)に応じた信号を電子制御装置91に出力する。カムポジションセンサ93は、吸気カムシャフト22の回転角度(以下、「カム角度DA」)に応じた信号を電子制御装置91に出力する。冷却水温度センサ94は、シリンダヘッド12の冷却水出口付近においての冷却水の温度(以下、「冷却水温度TW」)に応じた信号を電子制御装置91に出力する。アクセルポジションセンサ95は、アクセルペダル2の踏込量(以下、「アクセル踏込量AP」)、すなわちアクセル操作量に応じた信号を電子制御装置91に出力する。
【0044】
電子制御装置91により行われる制御について説明する。なお、以下では、内燃機関1の始動要求が設定されてから内燃機関1の始動動作が完了するまでの期間を「機関始動時」とする。また、内燃機関1の停止要求が設定されてからクランクシャフト15の回転が停止するまでの期間を「機関停止移行時」とする。また、内燃機関1の回転が停止している期間を「機関停止時」とする。また、機関始動時、機関停止移行時、機関停止時およびアイドル運転時を除いた機関運転状態を「通常機関運転時」とする。
【0045】
電子制御装置91は、各センサの出力に基づいて以下の各パラメータを算出する。
(A)クランクポジションセンサ92の出力に基づいて、クランク角度CAに相当する演算値を算出する。
(B)クランク角度CAの演算値に基づいて、クランクシャフト15の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)に相当する演算値を算出する。
(C)カムポジションセンサ93の出力に基づいて、カム角度DAに相当する演算値を算出する。
(D)クランク角度CAおよびカム角度DAに基づいて、バルブタイミングVTに相当する演算値を算出する。
(E)冷却水温度センサ94の出力に基づいて、冷却水温度TWに相当する演算値を算出する。
(F)アクセルポジションセンサ95の出力に基づいて、アクセル踏込量APに相当する演算値を算出する。
【0046】
電子制御装置91は、機関運転状態に基づいて位相変更機構30および位相固定機構40の動作を制御するバルブタイミング制御と、可変動弁装置20の状態を判定する状態判定処理とを行う。なお、機関運転状態を規定するパラメータとしては、機関回転速度NEおよび機関負荷等が挙げられる。
【0047】
バルブタイミング制御は、通常機関運転時にバルブタイミングVTを進角するための位相進角制御、通常機関運転時にバルブタイミングVTを遅角するための位相遅角制御、および通常機関運転時にバルブタイミングVTを油圧により保持するための位相保持制御を含む。また、位相固定機構40によりバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに固定するための位相固定制御、および位相固定機構40によるバルブタイミングVTの中間角位相VTmdlへの固定を解除するための位相解除制御を含む。
【0048】
位相進角制御および位相遅角制御は、別途実行される制御によりバルブタイミングVTを進角する要求(以下、「位相進角要求」)またはバルブタイミングVTを遅角する要求(以下、「位相遅角要求」)が設定されたとき、機関運転状態に基づいて目標のバルブタイミングVT(以下、「目標角位相VTtrg」)を設定する。
【0049】
そして、目標角位相VTtrgおよびバルブタイミングVTの演算値に基づいて、位相変更機構30を進角動作または遅角動作させるためのオイルコントロールバルブ82の制御を行う。
【0050】
位相保持制御は、別途実行される制御によりバルブタイミングVTを油圧により所定の位相に保持する要求(以下、「位相保持要求」)が設定されたとき、位相変更機構30に保持動作させるためのオイルコントロールバルブ82の制御を行う。位相保持要求は、例えばアイドル運転条件が成立していることに基づいて設定される。なお、保持動作は、バルブタイミングVTを最遅角位相から最進角位相までの範囲のうちの所定の位相に保持するための位相変更機構30の動作を示す。
【0051】
位相固定制御は、別途実行される制御によりバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに固定する要求(以下、「位相固定要求」)が設定されたとき、位相固定機構40に固定動作させるためのオイルスイッチングバルブ83の制御を行う。位相固定要求は、機関停止条件が成立していること、またはアイドル運転条件が成立していることに基づいて設定される。なお、固定動作は、バルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに固定するための位相固定機構40の動作を示す。
【0052】
位相解除制御は、別途実行される制御によりバルブタイミングVTの中間角位相VTmdlへの固定を解除する要求(以下、「位相解除要求」)が設定されたとき、位相固定機構40に固定解除動作させるためのオイルスイッチングバルブ83の制御を行う。位相解除要求は、アイドル運転状態から通常機関運転状態に変更すること、すなわちアイドル運転状態においてアクセル踏込量APが増加することに基づいて設定される。なお、固定解除動作は、バルブタイミングVTの中間角位相VTmdlへの固定を解除するための位相固定機構40の動作を示す。
【0053】
図2を参照して、位相変更機構30の構造について説明する。
位相変更機構30は、図1のクランクシャフト15に同期して回転するハウジングロータ31と、吸気カムシャフト22に同期して回転するベーンロータ35とを有する。
【0054】
バルブタイミングVTは、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相に応じて変更される。なお、図中の矢印DRは、スプロケット33(クランクシャフト15)および吸気カムシャフト22の回転方向を示している。
【0055】
ハウジングロータ31は、その本体となるハウジング本体32と、ハウジング本体32の軸方向の一方の端部に取り付けられたスプロケット33と、ハウジング本体32の軸方向の他方の端部に取り付けられたカバー34(図3参照)とを有する。
【0056】
ハウジング本体32は、ハウジングロータ31の回転軸の径方向に突出する3つの区画壁32Aを有する。ハウジング本体32、スプロケット33、およびカバー34は、これらの軸方向に挿入された3本のボルトにより互いに固定されている。
【0057】
ベーンロータ35は、ハウジング本体32内の空間に配置されている。また、吸気カムシャフト22の端部に固定されている。ベーンロータ35は、ハウジング本体32に向けて突出した3つのベーン35Aを有する。
【0058】
位相変更機構30は、3つの収容室36を有する。各収容室36は、ハウジング本体32の外周の壁部、隣り合う区画壁32A、ベーンロータ35のうちの回転軸の周囲の壁部、スプロケット33、およびカバー34に囲まれて形成されている。1つの収容室36には、1つのベーン35Aが配置されている。各収容室36は、対応するベーン35Aにより進角室37および遅角室38に区画されている。
【0059】
進角室37は、収容室36内においてベーン35Aよりも回転方向DRの後方側に形成されている。遅角室38は、収容室36内においてベーン35Aよりも回転方向DRの前方側に形成されている。進角室37および遅角室38の容積は、位相変更機構30に対する作動油の給排態様に応じて変化する。
【0060】
位相変更機構30の動作について説明する。
進角室37への作動油の供給および遅角室38からの作動油の排出により、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して進角側すなわち回転方向DRに向けて回転するとき、バルブタイミングVTが進角する。ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して最も進角側に回転したとき、すなわちハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が回転方向DRの最も前方側の回転位相のとき、バルブタイミングVTが最進角位相VTmaxに設定される。
【0061】
進角室37からの作動油の排出および遅角室38への作動油の供給により、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して遅角側すなわち回転方向DRの反対方向に向けて回転するとき、バルブタイミングVTが遅角する。ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して最も遅角側に回転したとき、すなわちハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が回転方向DRの最も後方側の回転位相のとき、バルブタイミングVTが最遅角位相VTminに設定される。
【0062】
図2を参照して、位相固定機構40の構成について説明する。
位相固定機構40は、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転範囲を規制する第1固定機構50と、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転範囲を第1固定機構50とは異なる範囲に規制する第2固定機構60とを有する。またこの他に、進角室37および遅角室38からの作動油の排出を促進するための開放機構70(図3参照)を有する。
【0063】
第1固定機構50および第2固定機構60は、互いに異なるベーン35Aに位置する。そしてハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が中間角位相VTmdlに対応する回転位相(以下、「中間回転位相」)のとき、第1固定機構50および第2固定機構60の協働によりバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに固定される。
【0064】
図3および図4を参照して、第1固定機構50および第2固定機構60の構成について説明する。なお、図3および図4においては、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が中間回転位相にある状態を示している。また以下では、第1固定機構50の第1固定ピン51および第2固定機構60の第2固定ピン61がベーン35Aから突出する方向を「突出方向ZA」とし、第1固定ピン51および第2固定ピン61がベーン35A内に移動する方向を「収容方向ZB」とする。
【0065】
第1固定機構50は、ベーン35Aに対してベーンロータ35の軸方向に移動する第1固定ピン51と、第1固定ピン51を突出方向ZAに押すための第1固定ばね52と、第1固定ピン51および第1固定ばね52を収容する第1固定室53と、第1固定ピン51の周方向の軌跡に対応して形成された第1係合溝56とを有する。
【0066】
第1固定ピン51は、ベーン35Aに対して突出方向ZAおよび収容方向ZBに移動するとともにベーン35Aの外部に突出する内側ピン51Aと、ベーン35A内においてベーン35Aに対して突出方向ZAおよび収容方向ZBに移動する外側ピン51Bとを有する。
【0067】
第1固定ばね52は、内側ピン51Aを突出方向ZAに押すための内側ばね52Aと、外側ピン51Bを突出方向ZAに押すための外側ばね52Bとを有する。
第1固定室53は、ベーン35A内に形成されている。また、第1固定ピン51により第1解除室54および第1ばね室55に区画されている。なお、第1固定機構50を構成する各部品のクリアランスを介して作動油の流れが生じないと仮定したとき、第1解除室54と第1ばね室55との間では作動油の流れが形成されない。
【0068】
第1係合溝56は、互いに深さの異なる2つの溝、すなわち相対的に深さの大きい第1下段溝57、および相対的に深さの小さい第1上段溝58を有する。第1上段溝58は、ハウジングロータ31の周方向において第1下段溝57よりも遅角側に形成されている。
【0069】
第1下段溝57の進角側の端部である第1進角端部56Aは、中間回転位相にあるベーンロータ35の第1固定ピン51の内側ピン51Aについて、その進角側の端面と対応する位置に形成されている。第1上段溝58の遅角側の端部である第1遅角端部56Bは、ハウジングロータ31の周方向において第1進角端部56Aよりも遅角側に形成されている。第1下段溝57の遅角側の端部である第2遅角端部56Cは、ハウジングロータ31の周方向において第1進角端部56Aと第1遅角端部56Bとの間に形成されている。
【0070】
第2固定機構60は、ベーン35Aに対してベーンロータ35の軸方向に移動する第2固定ピン61と、第2固定ピン61を突出方向ZAに押すための第2固定ばね62と、第2固定ピン61および第2固定ばね62を収容する第2固定室63と、第2固定ピン61の周方向の軌跡に対応して形成された第2係合溝66とを有する。
【0071】
第2固定ピン61は、ベーン35Aに対して突出方向ZAおよび収容方向ZBに移動するとともにベーン35Aの外部に突出する内側ピン61Aと、ベーン35A内においてベーン35Aに対して突出方向ZAおよび収容方向ZBに移動する外側ピン61Bとを有する。
【0072】
第2固定ばね62は、内側ピン61Aを突出方向ZAに押すための内側ばね62Aと、外側ピン61Bを突出方向ZAに押すための外側ばね62Bとを有する。
第2固定室63は、ベーン35A内に形成されている。また、第2固定ピン61により第2解除室64および第2ばね室65に区画されている。なお、第2固定機構60を構成する各部品のクリアランスを介しての作動油の流れが生じないと仮定したとき、第2解除室64と第2ばね室65との間では作動油の流れが形成されない。
【0073】
第2係合溝66は、互いに深さの異なる2つの溝、すなわち相対的に深さの大きい第2下段溝67、および相対的に深さの小さい第2上段溝68を有する。第2上段溝68は、ハウジングロータ31の周方向において第2下段溝67よりも遅角側に形成されている。
【0074】
第2下段溝67の遅角側の端部である第4遅角端部66Cは、中間回転位相にあるベーンロータ35の第2固定ピン61の内側ピン61Aについて、その遅角側の端面と対応する位置に形成されている。第2上段溝68の遅角側の端部である第3遅角端部66Bは、ハウジングロータ31の周方向において第4遅角端部66Cよりも遅角側に形成されている。第2下段溝67の進角側の端部である第2進角端部66Aは、ハウジングロータ31の周方向において第4遅角端部66Cよりも進角側に形成されている。
【0075】
図3および図4を参照して、位相固定機構40の動作について説明する。
第1固定ピン51の内側ピン51Aは、先端が第1係合溝56の第1下段溝57の底面に接触する位置(以下、「第1固定ピン51の突出位置」)から先端がベーン35A内に収容されている位置(以下、「第1固定ピン51の収容位置」)までの範囲においてベーン35Aに対して軸方向に移動する。また、ベーン35Aに対する内側ピン51Aの位置は、第1解除室54の油圧に基づいて作用する力と第1固定ばね52の弾性力との関係に応じて変化する。
【0076】
第1固定ピン51の外側ピン51Bは、ハウジングロータ31の周方向において第1固定ピン51が第1下段溝57と対応する位置にあるとき、内側ピン51Aと連動して軸方向に移動する。一方、ハウジングロータ31の周方向において第1固定ピン51が第1下段溝57と対応しない位置にあるとき、第1解除室54の油圧に基づいて作用する力と第1固定ばね52の弾性力との関係に応じて内側ピン51Aから独立して軸方向に移動することが許容される。
【0077】
以下では、外側ピン51Bがベーン35A内において最大限に突出方向ZAに移動した位置を「外側ピン51Bの開放位置」とする。また、外側ピン51Bがベーン35A内において最大限に収容方向ZBに移動した位置を「外側ピン51Bの閉鎖位置」とする。
【0078】
第2固定ピン61の内側ピン61Aは、先端が第2係合溝66の第2下段溝67の底面に接触する位置(以下、「第2固定ピン61の突出位置」)から先端がベーン35A内に収容されている位置(以下、「第2固定ピン61の収容位置」)までの範囲においてベーン35Aに対して軸方向に移動する。また、ベーン35Aに対する内側ピン61Aの位置は、第2解除室64の油圧に基づいて作用する力と第2固定ばね62の弾性力との関係に応じて変化する。
【0079】
第2固定ピン61の外側ピン61Bは、ハウジングロータ31の周方向において第2固定ピン61が第2下段溝67と対応する位置にあるとき、内側ピン61Aと連動して軸方向に移動する。一方、ハウジングロータ31の周方向において第2固定ピン61が第2下段溝67と対応しない位置にあるとき、第2解除室64の油圧に基づいて作用する力と第2固定ばね62の弾性力との関係に応じて内側ピン61Aから独立して軸方向に移動することが許容される。
【0080】
以下では、外側ピン61Bがベーン35A内において最大限に突出方向ZAに移動した位置を「外側ピン61Bの開放位置」とする。また、外側ピン61Bがベーン35A内において最大限に収容方向ZBに移動した位置を「外側ピン61Bの閉鎖位置」とする。
【0081】
ここで、位相固定機構40の動作状態について定義する。
第1固定ピン51および第2固定ピン61が収容位置に位置するときの位相固定機構40の動作状態を「位相固定機構40の位相解除状態」とする。また、第1固定ピン51および第2固定ピン61が突出位置に位置するときの位相固定機構40の動作状態を「位相固定機構40の位相固定状態」とする。なお、図3は位相固定機構40の位相解除状態の一例を示している。また、図4は位相固定機構40の位相固定状態を示している。
【0082】
第1固定ピン51の動作について説明する。なお、第2固定ピン61は第1固定ピン51の下記動作に準じて動作するため、ここでは第2固定ピン61の動作についての説明を省略する。
【0083】
第1解除室54の油圧に基づいて第1固定ピン51に作用する力が第1固定ばね52の弾性力よりも小さいとき、第1固定ピン51を突出方向ZAに移動させる力が第1固定ピン51に付与される。そして、ハウジングロータ31の周方向において第1固定ピン51が第1下段溝57と対応する箇所に位置し、かつハウジングロータ31の軸方向において第1固定ピン51が収容位置に位置し、かつ第1固定ピン51を突出方向ZAに移動させる力が第1固定ピン51に作用しているとき、内側ピン51Aが図3に示される収容位置から図4に示される突出位置に移動する。また、内側ピン51Aの移動に連動して外側ピン51Bが閉鎖位置から開放位置に移動する。
【0084】
第1解除室54の油圧に基づいて第1固定ピン51に作用する力が第1固定ばね52の弾性力よりも大きいとき、第1固定ピン51を収容方向ZBに移動させる力が第1固定ピン51に付与される。そして、ハウジングロータ31の軸方向において第1固定ピン51が突出位置に位置し、かつ第1固定ピン51を収容方向ZBに移動させる力が第1固定ピン51に作用しているとき、内側ピン51Aが図4に示される突出位置から図3に示される収容位置に移動する。また、内側ピン51Aの移動に連動して外側ピン51Bが開放位置から閉鎖位置に移動する。
【0085】
第1固定ピン51が突出位置に位置しているとき、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して中間回転位相よりも進角方向に向けて回転することが規制される。また、第2固定ピン61が突出位置に位置しているとき、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して中間回転位相よりも遅角方向に向けて回転することが規制される。
【0086】
このため、第1固定ピン51および第2固定ピン61が突出位置に位置しているとき、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して中間回転位相から進角方向および遅角方向に回転することができない。すなわち、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに固定される。
【0087】
図3を参照して、開放機構70の構成について説明する。
開放機構70は、第1固定機構50が設けられたベーン35Aの第1ばね室55を介して進角室37と遅角室38とを互いに連通する第1開放機構71と、第2固定機構60が設けられたベーン35Aの第2ばね室65を介して進角室37と遅角室38とを互いに連通する第2開放機構72とを有する。
【0088】
第1開放機構71は、第1ばね室55と進角室37とを互いに連通する進角室開放通路71Aと、第1ばね室55と遅角室38とを互いに連通する遅角室開放通路71Bと、第1固定機構50の外側ピン51Bとを有する。
【0089】
第2開放機構72は、第2ばね室65と進角室37とを互いに連通する進角室開放通路72Aと、第2ばね室65と遅角室38とを互いに連通する遅角室開放通路72Bと、第2固定機構60の外側ピン61Bとを有する。
【0090】
図5を参照して、第1開放機構71の動作について説明する。なお、第2開放機構72は第1開放機構71の下記動作に準じて動作するため、ここでは第2開放機構72の動作についての説明を省略する。
【0091】
図5(a)に示されるように、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態のとき、かつハウジングロータ31の周方向において第1固定ピン51が第1下段溝57と対応する箇所に位置し、かつ第1固定ピン51を収容方向ZBに移動させる力が第1固定ピン51に作用しているとき、外側ピン51Bが閉鎖位置に位置する。このため、進角室開放通路71Aおよび遅角室開放通路71Bが外側ピン51Bにより閉塞される。すなわち、第1ばね室55と進角室37および遅角室38とが互いに遮断される。
【0092】
図5(b)に示されるように、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態のとき、かつハウジングロータ31の周方向において第1固定ピン51が第1下段溝57と対応しない箇所に位置し、かつ第1固定ピン51を突出方向ZAに移動させる力が第1固定ピン51に作用しているとき、外側ピン51Bが開放位置に位置する。このため、進角室開放通路71Aおよび遅角室開放通路71Bが外側ピン51Bから開放される。すなわち、第1ばね室55と進角室37および遅角室38とが互いに連通する。なお、位相固定機構40および開放機構70の動作状態が図5(b)に示される状態となる機関運転状態の一例としては、機関始動時において位相固定機構40の動作状態が位相解除状態となる場合が挙げられる。
【0093】
図5(c)に示されるように、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態のとき、かつ第1固定ピン51を突出方向ZAに移動させる力が第1固定ピン51に作用しているとき、外側ピン51Bが開放位置に位置する。このため、進角室開放通路71Aおよび遅角室開放通路71Bが外側ピン51Bから開放される。すなわち、第1ばね室55と進角室37および遅角室38とが互いに連通する。
【0094】
第1ばね室55と進角室37および遅角室38とが互いに連通しているとき、かつオイルコントロールバルブ82を介して進角室37および遅角室38の一方に作動油が供給されているとき、この作動油が第1ばね室55を介して進角室37および遅角室38の他方にも供給される。このため、進角室37および遅角室38が互いに連通していないときと比較して、進角室37および遅角室38の他方に対する作動油の供給量が多くなる。
【0095】
図2を参照して、オイルコントロールバルブ82の制御について説明する。
電子制御装置91は、オイルコントロールバルブ82のアクチュエータに対する指令信号を変更することにより、オイルコントロールバルブ82の動作状態(以下、「OCV動作モード」)を変更する。電子制御装置91により選択されるOCV動作モードとしては、進角モード、遅角モード、および保持モードが予め用意されている。
【0096】
各OCV動作モードと位相変更機構30の動作との関係を以下に示す。
(A)OCV動作モードとして進角モードが選択されているとき、進角室37に作動油が供給され、かつ遅角室38から作動油が排出される。このため、ベーンロータ35をハウジングロータ31に対して進角方向に回転させる力がベーンロータ35に付与される。
【0097】
(B)OCV動作モードとして遅角モードが選択されているとき、進角室37から作動油が排出され、かつ遅角室38に作動油が供給される。このため、ベーンロータ35をハウジングロータ31に対して遅角方向に回転させる力がベーンロータ35に付与される。
【0098】
(C)OCV動作モードとして保持モードが選択されているとき、進角室37および遅角室38がオイルコントロールバルブ82に対して閉鎖される。このため、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が進角室37および遅角室38の油圧により保持される。
【0099】
図3および図4を参照して、オイルスイッチングバルブ83の制御について説明する。
図1の電子制御装置91は、オイルスイッチングバルブ83のアクチュエータに対する指令信号を変更することにより、オイルスイッチングバルブ83の動作状態(以下、「OSV動作モード」)を変更する。
【0100】
各OSV動作モードと位相固定機構40の動作との関係を以下に示す。
(A)OSV動作モードが位相固定モードに設定されているとき、第1解除室54および第2解除室64から動作油が排出される。このため、第1固定ピン51および第2固定ピン61に対して各固定ピン51,61を突出位置に移動させる力が作用する。
【0101】
(B)OSV動作モードが位相解除モードに設定されているとき、第1解除室54および第2解除室64に作動油が供給される。このため、第1固定ピン51および第2固定ピン61に対して各固定ピン51,61を収容位置に移動させる力が作用する。
【0102】
バルブタイミング制御の詳細について説明する。
図1の電子制御装置91は、バルブタイミング制御において、以下の(A)〜(F)のように機関運転状態に応じてオイルコントロールバルブ82およびオイルスイッチングバルブ83を制御する。
【0103】
(A)通常機関運転時において、機関運転状態に応じて位相進角制御を行うとき、OCV動作モードとして進角モードを選択する。また、OSV動作モードを位相解除モードに設定する。
【0104】
(B)通常機関運転時において、機関運転状態に応じて位相遅角制御を行うとき、OCV動作モードとして遅角モードを選択する。また、OSV動作モードを位相解除モードに設定する。
【0105】
(C)通常機関運転時において、機関運転状態に応じて位相保持制御を行うとき、OCV動作モードとして保持モードを選択する。また、OSV動作モードを位相解除モードに設定する。なお、バルブタイミングVTの変動にともないバルブタイミングVTの平均値と目標角位相VTtrgとの差の絶対値が所定値以上となるとき、同平均値を目標角位相VTtrgに近づけるためのフィードバック制御が行われる。
【0106】
(D)通常機関運転時において、位相固定要求に応じて位相固定制御を行うとき、OSV動作モードを位相解除モードから位相固定モードに変更する。また、バルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに変更するためのOCV動作モードを選択する。
【0107】
(E)機関始動時またはアイドル運転時において、位相解除要求に応じて位相解除制御を行うとき、OSV動作モードを位相固定モードから位相解除モードに変更する。また、位相進角要求、位相遅角要求、および位相保持要求のいずれかに応じて、OCV動作モードとして進角モード、遅角モード、および保持モードのいずれかを選択する。
【0108】
(F)機関始動時において、位相変更機構30の動作状態が位相固定状態にあり、かつ始動時解除条件が成立していないとき、位相進角要求、位相遅角要求、または位相保持要求に基づく位相変更機構30の動作状態の変更を禁止する。この制御は、上記(D)の制御に優先して行われる。
【0109】
始動時解除条件は、機関始動時に位相変更機構30の動作状態を位相解除状態に変更してもバルブタイミングVTが不安定な状態となるおそれが小さいことを確認するための条件として設定されている。なお、バルブタイミングVTが不安定な状態とは、進角室37および遅角室38が作動油で満たされていないことによりバルブタイミングVTの変動が大きい状態を示す。
【0110】
図6を参照して、状態判定処理の内容について説明する。
図1の電子制御装置91は、状態判定制御として、以下の保持状態判定処理、固定状態判定処理、および解除状態判定処理を行う。なお、以下では、バルブタイミングVTの変動幅を「位相変動幅FW」として示す。位相変動幅FWは、クランク角度CAが所定量にわたり変化する期間においてのバルブタイミングVTの極大値と極小値との差の最大値に相当する。
【0111】
各状態判定処理の概要を以下に示す。
(A)保持状態判定処理は、位相変動幅FWに基づいて、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態と位相保持状態以外の状態とのいずれにあるかを判定する。
(B)固定状態判定処理は、位相変動幅FWに基づいて、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態と位相解除状態とのいずれにあるかを判定する。
(C)解除状態判定処理は、位相変動幅FWに基づいて、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態と位相固定状態とのいずれにあるかを判定する。
【0112】
保持状態判定処理の詳細について説明する。
図6(a)に示されるように、位相保持制御が行われているとき、バルブタイミングVTの平均値が目標角位相VTtrgに保持される。すなわち、位相保持制御が行われているとき、位相変動幅FWが一定範囲(以下、「保持範囲」)内に保持される。
【0113】
なお、バルブタイミングVTの平均値が目標角位相VTtrgに保持される状態には、平均値が目標角位相VTtrgに一致する状態、および平均値と目標角位相VTtrgとの差の絶対値が許容値以下の状態の双方が含まれる。また、保持範囲の中心値となるバルブタイミングVTは、目標角位相VTtrgに応じて異なる。
【0114】
このため、保持範囲に相当する保持判定値XKと測定された位相変動幅FWとを比較し、位相変動幅FWが保持判定値XK以下のとき、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態にあると判定することができる。なお保持判定値XKは「保持変動幅」に相当する。
【0115】
一方、可変動弁装置20の各構成部品の寸法、可変動弁装置20の組立状態、およびタイミングチェーンのあそび等が可変動弁装置20毎に異なるため、同一の運転条件のもとにおいても、図1の吸気カムシャフト22のトルク変動(以下、「吸気カムトルク変動」)の大きさおよび位相変動幅FWが可変動弁装置20毎に異なる。なお以下では、吸気カムトルク変動の大きさに影響を及ぼす因子を総括して「変動幅影響因子」とする。
【0116】
例えば、図6(a)に示されるように、変動幅影響因子が相対的に小さい可変動弁装置20の位相変動幅F11と、変動幅影響因子が相対的に大きい可変動弁装置20の位相変動幅F12とを比較したとき、位相変動幅F12が位相変動幅F11よりも大きくなる。
【0117】
このため、保持判定値XKおよび位相変動幅FWの比較により位相保持状態を判定することができるとはいえ、変動幅影響因子を考慮することなく複数の可変動弁装置20に対して一律に保持判定値XKを設定した場合には、位相保持状態を正確に判定することが困難となる。
【0118】
例えば、変動幅影響因子が相対的に小さい可変動弁装置20の保持範囲に基づいて保持判定値XKを設定し、この保持判定値XKをその他の可変動弁装置20の位相保持状態の判定に用いる場合を想定する。
【0119】
この場合、変動幅影響因子が相対的に大きい可変動弁装置においては、位相保持制御が行われているときの位相変動幅FWが上記保持判定値XKよりも大きくなることがある。このため、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態以外の状態にある旨判定される。すなわち、位相変更機構30の動作状態が正確に判定されない。
【0120】
そこで、保持状態判定処理においては、可変動弁装置20毎の位相保持制御時の位相変動幅FWを予め測定したものを保持判定値XKとして記憶している。そして、通常機関運転時の位相保持制御を実行中の位相変動幅FWと保持判定値XKとの比較に基づいて位相変更機構30の動作状態を判定する。
【0121】
また位相変動幅FWは、機関回転速度NEが高くなるにつれて大きくなる。また、冷却水温度TWが高くなるにつれて大きくなる。このため、保持判定値XKは、機関回転速度NEおよび冷却水温度TWに応じて異なる値として設定されている。
【0122】
そこで、内燃機関1の製造段階において、可変動弁装置20を機関本体10に組み付けた後の機関運転時に機関回転速度NEおよび冷却水温度TWに基づいて位相変動幅FWを測定することにより図7に示されるマップを取得している。
【0123】
図7に判定値マップの一例を示す。
(A)機関回転速度NEがマップ上の最小値かつ冷却水温度TWがマップ上の最小値のとき、保持判定値XKは、マップ上の最小値XAに設定される。
(B)機関回転速度NEがマップ上の最大値かつ冷却水温度TWがマップ上の最大値のとき、保持判定値XKは、マップ上の最大値XDに設定される。
(C)機関回転速度NEがマップ上の最大値かつ冷却水温度TWがマップ上の最小値のとき、保持判定値XKは、最小値XAと最大値XDとの間の値XBに設定される。
(D)機関回転速度NEがマップ上の最小値かつ冷却水温度TWがマップ上の最大値のとき、保持判定値XKは、最小値XAと最大値XDとの間の値XCに設定される。
【0124】
固定状態判定処理および解除状態判定処理の詳細について説明する。
位相固定機構40においては、第1固定ピン51を第1係合溝56に円滑に挿入すること、および第2固定ピン61を第2係合溝66に円滑に挿入することを目的として、第1固定ピン51および第1係合溝56の間、ならびに第2固定ピン61および第2係合溝66の間にクリアランスが形成されている。
【0125】
このため、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態のとき、位相変動幅FWは、第1固定ピン51および第1係合溝56の間のクリアランス、ならびに第2固定ピン61および第2係合溝66の間のクリアランスに対応した範囲(以下、「固定範囲」)で変動する。この固定範囲は、位相保持制御のときの位相変動幅FWよりも狭い範囲となる。一方、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態のとき、位相変動幅FWは、固定範囲よりも大きくなる。
【0126】
以上のことから、固定範囲に相当する固定判定値XFと測定された位相変動幅FWとを比較し、位相変動幅FWが固定判定値XF以下のとき、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態にあると判定することができる。また、固定判定値XFと測定された位相変動幅FWとを比較し、位相変動幅FWが固定判定値XFよりも大きいとき、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態にあると判定することができる。なお、固定判定値XFは「固定変動幅」および「基準変動幅」に相当する。
【0127】
一方、変動幅影響因子により吸気カムトルク変動が可変動弁装置20毎に異なる。また、可変動弁装置20を構成する各部品の寸法の違いによりクリアランスの大きさが異なる。このため、位相変動幅FWが可変動弁装置20毎に異なる。
【0128】
例えば、図6(b)に示されるように、変動幅影響因子が相対的に小さい可変動弁装置20の位相変動幅F21と、変動幅影響因子が相対的に大きい可変動弁装置20の位相変動幅F22とを比較したとき、位相変動幅F22が位相変動幅F21よりも大きくなる。
【0129】
このため、固定判定値XFおよび位相変動幅FWの比較により位相固定状態および位相解除状態を判定することができるとはいえ、変動幅影響因子を考慮することなく複数の可変動弁装置20に対して一律に固定判定値XFを設定した場合には、位相固定状態および位相解除状態を正確に判定することが困難となる。
【0130】
例えば、変動幅影響因子が相対的に小さい可変動弁装置20の固定範囲に基づいて固定判定値XFを設定し、この固定判定値XFをその他の可変動弁装置20の位相固定状態の判定に用いる場合を想定する。
【0131】
この場合、変動幅影響因子が相対的に大きい可変動弁装置20においては、位相固定制御が行われているときの位相変動幅FWが上記固定判定値XFよりも大きくなることがある。このため、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態以外の状態にある旨判定される。すなわち、位相固定機構40の動作状態が正確に判定されない。
【0132】
また例えば、変動幅影響因子が相対的に大きい可変動弁装置20の固定範囲に基づいて固定判定値XFを設定し、この固定判定値XFをその他の可変動弁装置20の位相解除状態の判定に用いる場合を想定する。
【0133】
この場合、変動幅影響因子が相対的に小さい可変動弁装置20においては、位相解除制御が行われているときの位相変動幅FWが上記固定判定値XF以下となることがある。このため、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態以外の状態(位相固定状態)にある旨判定される。すなわち、位相固定機構40の動作状態が正確に判定されない。
【0134】
そこで、固定状態判定処理(図9)および解除状態判定処理(図10)においては、可変動弁装置20毎の位相固定機構40の動作状態が位相固定状態のときの位相変動幅FWを予め測定したものを固定判定値XFとして記憶している。そして、位相変動幅FWと固定判定値XFとの比較に基づいて位相固定機構40の動作状態を判定する。すなわち、可変動弁装置20の個体差を反映した位相変動幅FWである固定判定値XFを基準として、位相固定機構40の動作状態を判定する。
【0135】
固定判定値XFは、内燃機関1の製造段階において、位相固定状態の位相固定機構40を有する可変動弁装置20を機関本体10に取り付け、その後の最初の機関始動時に測定される位相変動幅FWを示す。なお、可変動弁装置20の製造段階においては、位相変更機構30および位相固定機構40の内部に作動油が存在していないため、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相を中間回転位相に合わせておくことにより、位相固定状態の位相固定機構40を有する可変動弁装置20を組み上げることができる。
【0136】
このため、上記可変動弁装置20を機関本体10に取り付けた後の最初の機関始動時において、このときに測定される位相変動幅FWは、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態であることが確定しているときの位相変動幅FW(基準変動幅)となる。そして、この位相変動幅FWを固定判定値XFとして記憶し、その後に測定される位相変動幅FWと固定判定値XFとを比較することにより、可変動弁装置20の動作状態を正確に判定することができる。
【0137】
図8を参照して、保持状態判定処理の内容について説明する。なお、電子制御装置91は、内燃機関1の運転中において位相保持要求が設定されているとき、所定の制御周期毎に保持状態判定処理を繰り返し実行する。
【0138】
ステップS11では、位相保持制御の実行中か否かを判定する。すなわち、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態であることを示唆する条件が成立しているか否かを判定する。
【0139】
ステップS12では、位相保持制御の実行中において測定された位相変動幅FWが保持判定値XKよりも大きいか否かを判定する。なお、保持判定値XKは、同位相変動幅FWが測定されたときの機関回転速度NEおよび冷却水温度TWと図7の判定値マップとに基づいて算出される。
【0140】
上記各ステップの判定結果に応じて下記(A)〜(C)のいずれかの処理に移行する。
(A)ステップS11において否定判定したとき、すなわち位相保持状態にあることがバルブタイミング制御により示唆されていないとき、位相変更機構30の位相保持状態についての判定を保留する。
【0141】
(B)ステップS11において肯定判定し、かつステップS12において否定判定したとき、すなわちステップS11の判定結果において、位相保持状態にあることがバルブタイミング制御により示唆されている一方、ステップS12の判定結果において、位相保持状態にあることが位相変動幅FWにより肯定されているとき、ステップS13において、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態にある旨判定する。
【0142】
(C)ステップS11およびS12において肯定判定したとき、すなわちステップS11の判定結果において、位相保持状態にあることがバルブタイミング制御により示唆され、かつステップS12の判定結果において、位相保持状態にあることが位相変動幅FWにより否定されているとき、ステップS14において、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態以外の状態にある旨判定する。
【0143】
ステップS15では、図1の警告灯96を点灯する。ステップS16では、位相固定制御を実行する。これにより、バルブタイミングVTが位相固定機構40により中間角位相VTmdlに固定される。
【0144】
図9を参照して、固定状態判定処理の手順について説明する。なお、電子制御装置91は、内燃機関1の運転中において位相固定要求が設定されているとき、所定の制御周期毎に固定状態判定処理を繰り返し実行する。
【0145】
ステップS21では、位相固定要求が設定されてからの経過期間(以下、「固定動作期間TR」)が判定期間TX以上か否かを判定する。すなわち、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態であることを示唆する条件が成立しているか否かを判定する。なお、固定動作期間TRは「固定開始後期間」に相当する。
【0146】
判定期間TXは、位相固定要求の設定に応じて位相固定機構40の動作状態を位相固定状態に変更する動作が開始されてから位相固定機構40の動作状態が位相固定状態に変更されるまでに要する時間に相当し、実験等により予め設定される。なお、判定期間TXは「所定時間TC」に相当する。
【0147】
ステップS22では、位相固定制御の実行中において測定された位相変動幅FWが固定判定値XFよりも大きいか否かを判定する。なお、固定判定値XFとしては、内燃機関1が組み立てられた最初の始動時において測定された固定変動幅が用いられる。
【0148】
上記各ステップの判定結果に応じて下記(A)〜(C)のいずれかの処理に移行する。
(A)ステップS21において否定判定したとき、すなわち位相固定状態にあることが固定動作期間TRにより示唆されていないとき、位相固定機構40の位相固定状態についての判定を保留する。
【0149】
(B)ステップS21において肯定判定し、かつステップS22において否定判定したとき、すなわちステップS21の判定結果において、位相固定状態にあることが固定動作期間TRにより示唆され、かつステップS22の判定結果において、位相固定状態にあることが位相変動幅FWにより肯定されているとき、ステップS23において、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態にある旨判定する。
【0150】
(C)ステップS21およびS22において肯定判定したとき、すなわちステップS21の判定結果において、位相固定状態にあることが固定動作期間TRにより示唆されている一方、ステップS22の判定結果において、位相固定状態にあることが位相変動幅FWにより否定されているとき、ステップS24において、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態にある旨判定する。
【0151】
ステップS25では、図1の警告灯96を点灯する。
ステップS26では、アイドル運転条件が成立しているか否かを判定する。ステップS26において、アイドル運転条件が成立している旨判定したとき、ステップS27において、位相保持制御によりバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに保持する。
【0152】
図10を参照して、解除状態判定処理の手順について説明する。なお、電子制御装置91は、内燃機関1の運転中において位相解除要求が設定されているとき、所定の制御周期毎に解除状態判定処理を繰り返し実行する。
【0153】
ステップS31では、位相解除要求が設定されてからの経過期間(以下、「解除動作期間TL」)が判定期間TY以上か否かを判定する。すなわち、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態であることを示唆する条件が成立しているか否かを判定する。なお、解除動作期間TLは「解除開始後時間」に相当する。
【0154】
判定期間TYは、位相解除要求の設定に応じて位相固定機構40の動作状態を位相解除状態に変更する動作が開始されてから位相固定機構40の動作状態が位相解除状態に変更されるまでに要する時間に相当し、実験等により予め設定される。ここでは、判定期間TYとして判定期間TXよりも小さい値が設定されている。なお、判定期間TYは「所定時間TA」に相当する。
【0155】
ステップS32では、位相解除制御の実行中において測定された位相変動幅FWが固定判定値XF以下か否かを判定する。なお、固定判定値XFとしては、内燃機関1が組み立てられた最初の始動時において測定された固定変動幅が用いられる。
【0156】
上記各ステップの判定結果に応じて下記(A)〜(C)のいずれかの処理に移行する。
(A)ステップS31において否定判定したとき、すなわち位相解除状態にあることが解除動作期間TLにより示唆されていないとき、位相固定機構40の位相解除状態についての判定を保留する。
【0157】
(B)ステップS31において肯定判定し、かつステップS32において否定判定したとき、すなわちステップS31の判定において、位相解除状態にあることが解除動作期間TLにより示唆され、かつステップS32の判定結果において、位相解除状態にあることが位相変動幅FWにより肯定されているとき、ステップS33において、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態にある旨判定する。
【0158】
(C)ステップS31およびS32において肯定判定したとき、すなわちステップS31の判定結果において、すなわちステップS31の判定において、位相解除状態にあることが解除動作期間TLにより示唆されている一方、ステップS32の判定結果において、位相解除状態にあることが位相変動幅FWにより否定されているとき、ステップS34において、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態にある旨判定する。そして、ステップS35において図1の警告灯96を点灯する。
【0159】
(本実施形態の効果)
本実施形態の内燃機関1によれば以下の効果が得られる。
(1)電子制御装置91は、位相変動幅FWと固定判定値XFとを比較することにより可変動弁装置20の状態を判定する。このため、一律に設定された判定値を用いて可変動弁装置20の動作状態を判定する構成と比較して、可変動弁装置20の動作状態を精度よく判定することができる。
【0160】
(2)電子制御装置91は、固定動作期間TRが判定値TX以上、かつ位相変動幅FWが固定判定値XF以下のとき、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態であると判定する。このため、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態にあることを正確に判定することができる。
【0161】
(3)電子制御装置91は、固定動作期間TRが判定値TX以上、かつ位相変動幅FWが固定判定値XFよりも大きいとき、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態以外の状態、すなわち位相解除状態であると判定する。このため、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態にあることを正確に判定することができる。
【0162】
(4)電子制御装置91は、解除動作期間TLが判定値TY以上、かつ位相変動幅FWが固定判定値XFよりも大きいとき、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態であると判定する。このため、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態にあることを正確に判定することができる。
【0163】
(5)電子制御装置91は、解除動作期間TLが判定値TY以上、かつ位相変動幅FWが固定判定値XF以下のとき、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態以外の状態、すなわち位相固定状態であると判定する。このため、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態にあることを正確に判定することができる。
【0164】
(6)電子制御装置91は、位相変動幅FWと保持判定値XKとの比較に基づいて、位相変更機構30の状態を判定する。このため、一律に設定された判定値を用いて位相変更機構30の動作状態を判定する構成と比較して、位相変更機構30の動作状態を精度よく判定することができる。
【0165】
また、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態のとき、保持判定値XKよりも位相変動幅FWが小さい。このため、位相固定機構40の動作状態が位相固定状態のとき、保持判定値XKに基づいてバルブタイミングVTが固定されている状態およびバルブタイミングVTが保持されている状態のいずれの状態にあるかの判定が難しい。
【0166】
一方、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態のとき、バルブタイミングVTが保持されていないときの位相変動幅FWが保持判定値XKよりも大きい。このため、保持判定値XKに基づいてバルブタイミングVTが保持されているか否かを判定することが可能である。
【0167】
そして電子制御装置91は、位相固定機構40の動作状態が位相解除状態、かつ位相変動幅FWが保持判定値XK以下のとき、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態であると判定する。このため、位相変更機構30の動作状態が位相保持状態にあることを正確に判定することができる。
【0168】
(7)電子制御装置91は、可変動弁装置20を機関本体10に組み付けた後の最初の機関始動時において測定した位相変動幅FWを固定判定値XFとして記憶する。このため、固定判定値XFは確実に位相固定機構40の動作状態が位相固定状態のときの位相変動幅FWとなる。
【0169】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0170】
・上記実施形態(図6)において、保持判定値XKおよび固定判定値XFの少なくとも一方の算出方法を次のように変更することもできる。
(A)所定期間において、バルブタイミングVTの進角側の極大値のうちの最大の極大値、およびバルブタイミングVTの遅角側の極大値のうちの最大の極大値を取得する。そして、これら極大値の差としての位相変動幅FWを保持判定値XKまたは固定判定値XFとして算出する。
(B)所定期間において、バルブタイミングVTの進角側の極大値、およびバルブタイミングVTの遅角側の極大値をそれぞれ複数取得する。そして、進角側の極大値の平均値および遅角側の極大値の平均値を算出し、これら平均値の差としての位相変動幅FWを保持判定値XKまたは固定判定値XFとして算出する。
【0171】
・上記実施形態(図8〜図10)において、判定期間TYを判定期間TXと同じ値、または判定期間TXよりも大きい値に変更することもできる。
・上記実施形態(図9)の固定状態判定処理において、ステップS22の判定処理に代えて、位相変動幅FWが保持判定値XKよりも小さいか否かを判定することもできる。この場合、肯定判定したときにはステップS23に移行し、否定判定したときにはステップS24に移行する。
【0172】
・上記実施形態(図9)の固定状態判定処理において、固定動作期間TRが判定期間TA以上、かつ位相変動幅FWが固定判定値XFよりも大きいとき、位相固定機構40の各固定ピン51,61がベーン35Aに固着している動作状態(以下、「異常状態」)にある旨判定することもできる。判定期間TAとしては、判定期間TXと同じ期間、または判定期間TXよりも大きい期間、または判定期間TXよりも小さい期間のいずれかを適宜選択することができる。なお、判定期間TAは「所定時間TD」に相当する。
【0173】
・上記変形例において、位相変動幅FWと固定判定値XFとの比較に代えて、位相変動幅FWと保持判定値XKとの比較に基づいて、位相固定機構40の動作状態が異常状態か否かを判定することもできる。すなわち、固定動作期間TRが判定期間TA以上、かつ位相変動幅FWが保持判定値XK以上のとき、位相固定機構40の動作状態が異常状態にある旨判定する。
【0174】
・上記実施形態(図10)の解除状態判定処理において、ステップS22の判定処理に代えて、位相変動幅FWが保持判定値XK以上か否かを判定することもできる。この場合、肯定判定したときにはステップS33に移行し、否定判定したときにはステップS34に移行する。
【0175】
・上記実施形態(図10)の解除状態判定処理において、解除動作期間TLが判定期間TB以上、かつ位相変動幅FWが固定判定値XF以下のとき、位相固定機構40の動作状態が異常状態にある旨判定することもできる。判定期間TBとしては、判定期間TYと同じ期間、または判定期間TYよりも大きい期間、または判定期間TYよりも小さい期間のいずれかを適宜選択することができる。なお、判定期間TBは「所定時間TB」に相当する。
【0176】
・上記変形例において、位相変動幅FWと固定判定値XFとの比較に代えて、位相変動幅FWと保持判定値XKとの比較に基づいて、位相固定機構40の動作状態が異常状態か否かを判定することもできる。すなわち、解除動作期間TLが判定期間TB以上、かつ位相変動幅FWが保持判定値XKよりも小さいとき、位相固定機構40の動作状態が異常状態にある旨判定する。
【0177】
・上記実施形態(図1)において、進角室37、遅角室38、および各解除室54,64の作動油の給排態様を制御する単一のオイルコントロールバルブをオイルコントロールバルブ82およびオイルスイッチングバルブ83に代えて用いることもできる。
【0178】
・上記実施形態(図3)において、第1固定機構50の第1下段溝57に代えて、第1固定ピン51を嵌め込むための穴を中間回転位相と対応する位置に形成することもできる。この場合には、第1上段溝58の端が同穴まで延長される。また、第2固定機構60の第2下段溝67に代えて、第2固定ピン61を嵌め込むための穴を中間回転位相と対応する位置に形成することもできる。
【0179】
・上記実施形態(図3)において、第1固定機構50の第1上段溝58を省略することもできる。また、第2固定機構60の第2上段溝68を省略することもできる。
・上記実施形態(図3)において、第1係合溝56および第2係合溝66の少なくとも一方をベーンロータ35に形成し、第1固定ピン51および第2固定ピン61の少なくとも一方をハウジングロータ31に備えることもできる。
【0180】
・上記実施形態(図3)において、第1固定機構50から外側ピン51B、外側ばね52B、および第1開放機構71を省略することもできる。また、第2固定機構60から外側ピン61B、外側ばね62B、および第2開放機構72を省略することもできる。
【0181】
・上記実施形態(図3)において、第1固定ピン51および第2固定ピン61の少なくとも一方として、ベーン35Aに対して径方向に突出動作および収容動作するものを用いることもできる。この場合には、ベーン35Aに対する第1固定ピン51および第2固定ピン61の動作の変更に対応して、第1係合溝56に相当する係合溝および第2係合溝66に相当する係合溝の少なくとも一方がハウジングロータ31に形成される。
【0182】
・上記実施形態(図3)において、第1固定機構50および第2固定機構60の一方を省略することもできる。この場合、1つの固定機構によりバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに固定する必要があるため、可変動弁装置20が有する第1固定機構50または第2固定機構60は、第1係合溝56または第2係合溝66に代えて、第1固定ピン51または第2固定ピン61が嵌め込まれる穴を有する。
【0183】
・上記実施形態(図4)では、位相固定機構40により固定するバルブタイミングVTとして中間角位相VTmdlを採用しているが、これに代えて、他のバルブタイミングVTを採用することもできる。同他のバルブタイミングVTは、要求固定時間内にバルブタイミングVTを固定することが可能となる範囲内において、最遅角位相VTminと中間角位相VTmdlとの間のいずれかのバルブタイミングVT、または中間角位相VTmdlよりも進角側のいずれかのバルブタイミングVTから選択することができる。
【0184】
・本発明の適用対象となる可変動弁装置の構成は上記実施形態に例示の構成に限られるものではない。すなわち、位相変更機構および位相固定機構を備える可変動弁装置であれば、別の構成を有する可変動弁装置に対しても本発明を適用することができる。またこの場合にも上記実施形態の効果に準じた効果が得られる。
【符号の説明】
【0185】
1…内燃機関、10…機関本体、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…オイルパン、14…燃焼室、15…クランクシャフト、20…可変動弁装置、21…吸気バルブ、22…吸気カムシャフト、23…排気バルブ、24…排気カムシャフト、30…位相変更機構、31…ハウジングロータ、32…ハウジング本体、32A…区画壁、33…スプロケット、34…カバー、35…ベーンロータ、35A…ベーン、36…収容室、37…進角室、38…遅角室、40…位相固定機構、50…第1固定機構、51…第1固定ピン、51A…内側ピン、51B…外側ピン、52…第1固定ばね、52A…内側ばね、52B…外側ばね、53…第1固定室、54…第1解除室、55…第1ばね室、56…第1係合溝、56A…第1進角端部、56B…第1遅角端部、56C…第2遅角端部、57…第1下段溝、58…第1上段溝、60…第2固定機構、61…第2固定ピン、61A…内側ピン、61B…外側ピン、62…第2固定ばね、62A…内側ばね、62B…外側ばね、63…第2固定室、64…第2解除室、65…第2ばね室、66…第2係合溝、66A…第2進角端部、66B…第3遅角端部、66C…第4遅角端部、67…第2下段溝、68…第2上段溝、70…開放機構、71…第1開放機構、71A…進角室開放通路、71B…遅角室開放通路、72…第2開放機構、72A…進角室開放通路、72B…遅角室開放通路、80…油圧機構、81…オイルポンプ、82…オイルコントロールバルブ、83…オイルスイッチングバルブ、84…作動油路、85…進角油路、86…遅角油路、87…解除油路、90…制御装置、91…電子制御装置、92…クランクポジションセンサ、93…カムポジションセンサ、94…冷却水温度センサ、95…アクセルポジションセンサ、96…警告灯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、前記バルブタイミングを特定角位相に固定する位相固定機構とを備える内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構および前記位相固定機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、
前記バルブタイミングが前記位相固定機構により前記特定角位相に固定されている前記可変動弁装置の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングが前記位相固定機構により固定されていない前記可変動弁装置の動作状態を位相解除状態とし、前記バルブタイミングが前記位相変更機構の油圧により保持されている前記可変動弁装置の動作状態を位相保持状態とし、前記バルブタイミングの変動幅を位相変動幅とし、前記位相固定状態においての前記位相変動幅を固定変動幅とし、前記位相保持状態においての前記位相変動幅を保持変動幅とし、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であることが確定しているときの前記固定変動幅を基準変動幅として、
前記位相変動幅と前記基準変動幅および前記保持変動幅の少なくとも一方との比較により前記可変動弁装置の動作状態を判定する
ことを特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置の動作状態を前記位相固定状態から前記位相解除状態に変更するための前記位相固定機構の動作を解除動作として、以下の(条件A1)および(条件A2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相解除状態であると判定する

(条件A1)「前記解除動作が開始されてからの経過時間である解除開始後時間が所定時間TA以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅よりも大きい」
(条件A2)「前記解除開始後時間が前記所定時間TA以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅以上」

ことを特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置の動作状態を前記位相固定状態から前記位相解除状態に変更するための前記位相固定機構の動作を解除動作とし、前記位相固定機構が固着している前記可変動弁装置の動作状態を異常状態として、以下の(条件B1)および(条件B2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記異常状態であると判定する

(条件B1)「前記解除動作が開始されてからの経過時間である解除開始後時間が所定時間TB以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅以下」
(条件B2)「前記解除開始後時間が前記所定時間TB以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅よりも小さい」

ことを特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置の動作状態を前記位相解除状態から前記位相固定状態に変更するための前記位相固定機構の動作を固定動作として、以下の(条件C1)および(条件C2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であると判定する

(条件C1)「前記固定動作が開始されてからの経過時間である固定開始後時間が所定時間TC以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅以下」
(条件C2)「前記固定開始後時間が前記所定時間TC以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅よりも小さい」

ことを特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置の動作状態を前記位相解除状態から前記位相固定状態に変更するための前記位相固定機構の動作を固定動作とし、前記位相固定機構が固着している前記可変動弁装置の動作状態を異常状態として、以下の(条件D1)および(条件D2)の一方が成立するとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であると判定する

(条件D1)「前記固定動作が開始されてからの経過時間である固定開始後時間が所定時間TD以上、かつ前記位相変動幅が前記基準変動幅よりも大きい」
(条件D2)「前記固定開始後時間が前記所定時間TD以上、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅以上」

ことを特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置の動作状態が前記位相解除状態のとき、かつ前記位相変動幅が前記保持変動幅以下のとき、前記可変動弁装置の動作状態が前記位相保持状態であると判定する
ことを特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記可変動弁装置の動作状態が前記位相固定状態であることが確定している状態は、前記位相固定状態に設定された前記可変動弁装置を有する前記内燃機関の製造後において、前記内燃機関が最初に運転されるときの機関始動時である
ことを特徴とする可変動弁装置の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−72379(P2013−72379A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212658(P2011−212658)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】