説明

可変容量型ターボチャージャ

【課題】可変容量型ターボチャージャ5において、可及的に少ない部品で、ベアリングハウジング54およびそのフランジ54aにおいて環状空間57に露呈する面を、排気ガスに触れないように保護する。
【解決手段】タービンハウジング55のスクロール通路55aと環状空間57とを連通する連通部には、当該連通部を塞ぐように可変ノズル機構9の一方のノズルプレート91が配置されて、環状空間57に操作機構の一部(94)が配置される。ベアリングハウジング54およびそのフランジ54aにおいて環状空間57に露呈する面がカバー10で覆われている。カバー10の環状板部11はフランジ54aとタービンハウジング55との結合部分に挟持されてフランジ54aを覆う。カバー10の筒状部12の先端側に一方のノズルプレート91が外嵌された状態で支持されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型ターボチャージャにおいて、可変ノズル機構の支持構造ならびに密封構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等に装備されるターボチャージャとして、タービン側を可変容量化した可変容量型ターボチャージャが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種のターボチャージャは、タービンハウジングのスクロール通路と排気管への排出口とを連通する連通路に、その流路面積またはスロート面積を可変とする可変ノズル機構が配設されている。
【0004】
この可変ノズル機構は、エンジンの低回転域において、複数のノズルベーン(可動ベーンとも呼ばれる)の姿勢を変更させて円周方向で隣り合うノズルベーン同士の対向間隔(流路面積またはスロート面積)を減少させることにより、排気ガスの流速を上昇させ、これにより、エンジンの低回転域から高い過給圧を得るようになっている。
【0005】
この特許文献1に係る従来例では、可変ノズル機構を、ベアリングハウジングとタービンハウジングとの結合面に固定された支持部材を介して保持するようにしている。
【0006】
ところで、タービンハウジング内を通る排気ガスは、蒸気や酸化イオウなどを含んでいるために、この排気ガスが、可変ノズル機構を操作するための操作機構の一部が配置されるリンク室に侵入すると、当該リンク室に露呈している鋳鉄製のベアリングハウジングや操作機構のリンクシャフトを腐食したり、あるいはそれらに酸化物が付着したりする可能性がある。
【0007】
そこで、前記リンク室にタービンハウジング内を通る排気ガスを漏洩させないようにするために、ベアリングハウジングと可変ノズル機構のノズルプレートとの間に、ガスケットを挟むようにしている。
【0008】
このガスケットは、その設置場所を考慮すると、耐荷重性、耐蝕性、耐熱性が優れることが要求されるために、その素材としては、例えば商品名インコネルなどのような高価でかつ加工しにくい材料を用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−125588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に係る従来例では、ガスケットを挟む力を強く設定して密封性を高めるようにすると、その反力が可変ノズル機構の支持部材に伝達されるようになって、この支持部材が変形する可能性が高くなる。そのため、ガスケットを挟む力を強くすることができないので、このガスケットによる密封性が低下することがある。その結果、ベアリングハウジングや可変ノズル機構のリンクシャフトを腐食したり、あるいはそれらに酸化物が付着したりすることがある。
【0011】
これに対し、本願出願人は、例えば特開2010−138885号公報に示すように、ベアリングハウジングにおいて可変ノズル機構の操作機構の一部が配置されるリンク室に露呈している面を、遮熱板で覆うことにより、ベアリングハウジングに排気ガスを触れさせないようにすることを提案している。
【0012】
この先行技術では、遮熱板の円筒形状部とベアリングハウジングの外周面におけるタービン寄り肩部との間に設けられている隙間に、排気ガスが侵入することを防止するために、前記円筒形状部の先端側に設けられる環状凸部をベアリングハウジングの外周面に密着させるようにしている。しかしながら、前記密着箇所が1箇所であるために、密封性が不十分であると考えられる。ここに改良の余地がある。
【0013】
このような事情に鑑み、本発明は、可変容量型ターボチャージャにおいて、可及的に少ない部品で、ベアリングハウジングにおいて環状空間に露呈する面を、排気ガスに触れないように保護することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る可変容量型ターボチャージャは、タービンホイールとコンプレッサインペラとを回転一体とする共通の回転軸が回転自在に挿通される中心孔を有するベアリングハウジングと、ベアリングハウジングの外周の軸方向中間領域においてタービン寄りに設けられる径方向外向きのフランジに結合されかつスクロール通路を有するタービンハウジングと、前記スクロール通路からタービンホイールを経て排気管へ排気ガスを排出する容量を変更するための可変ノズル機構とを備えている。前記可変ノズル機構は、対向配置される一対のノズルプレートと、この一対のノズルプレート間の円周数ヶ所に設けられるベーンノズルと、一方のノズルプレートの外側に配置されかつ前記各ベーンノズルの姿勢を変更させるための操作機構とを有している。前記ベアリングハウジングのフランジと前記タービンハウジングとの結合部分には、前記スクロール通路に連通する環状空間が設けられ、この環状空間と前記スクロール通路とを連通する連通部には、当該連通部を塞ぐように前記一方のノズルプレートが配置されることで、前記環状空間に前記操作機構の一部が配置される状態とされている。前記ベアリングハウジングおよびそのフランジにおいて前記環状空間に露呈する面が、カバーで覆われている。このカバーは、前記フランジを覆う環状板部と、この環状板部の内径側から軸方向に延出する筒状部とを有し、かつ前記環状板部の外径側が前記フランジとタービンハウジングとの結合部分に挟持され、前記筒状部の先端側に前記一方のノズルプレートが外嵌された状態で支持されている。
【0015】
この構成では、一方のノズルプレートを支持するためのカバーでもって、ベアリングハウジングにおいて環状空間に露呈する面を覆い隠すようにしているから、タービンハウジングのスクロール通路から環状空間に排気ガスが侵入したとしても、この排気ガスがベアリングハウジングおよびそれのフランジの前記露呈面に触れることを防止できるようになる。このようにカバーが支持部材およびシール部材の両方の役割を備えている。
【0016】
このカバーによりベアリングハウジングおよびそれのフランジや操作機構の一部が経時的に腐食したり、あるいはそれらに酸化物が付着したりすることを防止できるようになるので、寿命の向上に貢献できるようになるとともに、操作機構の一部の動作が長期にわたって円滑に保たれるようになるなど、操作機構の操作性の長期安定化に貢献できるようになる。
【0017】
好ましくは、カバーは、耐蝕性を有する材料で形成される。また、好ましくは、前記カバーの筒状部の付け根寄りには、環状小径部が設けられ、この環状小径部が、前記ベアリングハウジングの外周面においてタービン寄り肩部の段差の段壁面に引っ掛けられることによって軸方向に弾性圧縮されており、この弾性復元力によって前記カバーの環状板部の内径側が前記フランジに圧接されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、可変容量型ターボチャージャにおいて、可及的に少ない部品で、ベアリングハウジングにおいて環状空間に露呈する面を、排気ガスに触れないように保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の適用対象となる内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る可変容量型ターボチャージャの一実施形態で、その概略構成を示す断面図である。
【図3】図2の可変ノズル機構のユニゾンリングの内側面を示す図で、ノズルベーン開度を大きくした状態を示している。
【図4】図2の可変ノズル機構のノズルプレートの内側面を示す図で、ノズルベーン開度を大きくした状態を示している。
【図5】図2の可変ノズル機構のユニゾンリングの内側面を示す図で、ノズルベーン開度を小さくした状態を示している。
【図6】図2の可変ノズル機構のノズルプレートの内側面を示す図で、ノズルベーン開度を小さくした状態を示している。
【図7】図2の可変ノズル機構の上半分を拡大して示す断面図である。
【図8】図2の(8)−(8)線断面の矢視図である。
【図9】図7のカバー単体の斜視図である。
【図10】図7に対応する断面図であり、カバーの他実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1から図9に、本発明の一実施形態を示している。この実施形態では、内燃機関1としてコモンレール式筒内直噴4気筒ディーゼルエンジンを例に挙げている。
−内燃機関−
この実施形態での内燃機関1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7などを備えている。
【0022】
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁25、燃圧制御弁26、燃料調量弁27、機関燃料通路28、及び、添加燃料通路29などを備えている。
【0023】
サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路28を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室3内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。
【0024】
また、サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路29を介して燃料添加弁25に供給する。燃料添加弁25は、所定電圧が印加されたときに開弁して、排気系7の排気ポート71から後述する排気マニホールド72内に燃料を添加する電磁駆動式の開閉弁である。遮断弁24は、緊急時に添加燃料通路29を遮断して燃料供給を停止する。
【0025】
吸気系6は、シリンダヘッドに形成された吸気ポートに接続される吸気マニホールド62を備え、この吸気マニホールド62に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、吸気系6には、上流側から順にエアクリーナ65、後述するインタークーラ61、スロットルバルブ63が配設されている。
【0026】
吸気系6の吸気管64には、下記ターボチャージャ5の過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。このインタークーラ61の下流側には電子制御式のスロットルバルブ63が設けられている。このスロットルバルブ63は、その開度を無段階に調整することが可能な流量制御弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
【0027】
排気系7は、シリンダヘッドに形成された排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72に、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には触媒装置4が配設されている。
【0028】
触媒装置4は、例えばNSR(Nox Storage Reduction)触媒41とDPNR(Diesel Particulate‐Nox Reduction system)触媒42とを備えている。
【0029】
また、内燃機関1にはEGR装置8が設けられている。このEGR装置8は、排気の一部を吸気系(吸気通路)6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させる装置である。
【0030】
EGR装置8は、吸気系6の吸気マニホールド62と排気系7の排気マニホールド72とに接続されるEGR通路81を備えている。このEGR通路81において吸気マニホールド62との接続部には、排気系7から吸気系6に導入されるEGRガス量(排気還流量)を調整するためのEGRバルブ82が設けられている。
【0031】
また、EGR通路81には、当該EGR通路81を通過(還流)するEGRガスを冷却するためのEGRクーラ83が設けられている。このEGR通路81には、EGRクーラ83をバイパスするためのバイパス通路84が設けられている。EGR通路81とバイパス通路84との合流部には、EGRクーラ83のEGRガス通過流量とバイパス通路84のEGRガス通過流量との流量比を調整するための制御弁85が設けられている。
【0032】
―可変容量型ターボチャージャ―
内燃機関1には、可変容量型ターボチャージャ5が設けられている。可変容量型ターボチャージャ5は、図2から図7に示すように、タービンホイール51、コンプレッサインペラ52、ベアリングハウジング54、タービンハウジング55、コンプレッサハウジング56、可変ノズル機構9などを備えている。
【0033】
タービンホイール51は、タービンシャフト53の軸方向一端に一体に形成されており、コンプレッサインペラ52は、タービンシャフト53の軸方向他端に一体に取り付けられている。このタービンシャフト53は、ベアリングハウジング54の中心孔内に2つのラジアルベアリング57A,57Bを介して回転自在となるように挿通されている。なお、2つのラジアルベアリング57A,57Bは、メタルやブッシュと呼ばれるほぼ円筒形状のすべり軸受とされており、軸方向への変位が規制された状態で、フローティング状態とされている。
【0034】
ベアリングハウジング54の軸方向一端にはタービンハウジング55が取り付けられ、また、ベアリングハウジング54の軸方向他端にはコンプレッサハウジング56が取り付けられている。タービンホイール51は、タービンハウジング55内に収納され、コンプレッサインペラ52はコンプレッサハウジング56内に収納されている。
【0035】
タービンハウジング55には、排気ガスを旋回させるスクロール通路55aと、スクロール通路55a内の排気ガスをタービンホイール51を介して排気管73に排出させる排出口55bとが設けられている。
【0036】
コンプレッサハウジング56には、図1に示すエアクリーナ65からの吸入空気をコンプレッサインペラ52に向けて導入させる導入口56aと、コンプレッサインペラ52の回転により圧力が高められた吸入空気を吸気管64に送出する送出通路56bとが設けられている。
【0037】
内燃機関1から排気マニホールド72に排出される排気ガスのエネルギーを利用してタービンホイール51を回転させ、このタービンホイール51と一体回転するコンプレッサインペラ52によって大気圧よりも高い圧力の新気を吸気マニホールド62から燃焼室3内に供給する。
【0038】
可変ノズル機構9は、タービンハウジング55のスクロール通路55aからタービンホイール51を経て排出口55bに排気ガスを排出する容量を変更するものであって、図2および図7に示すように、一対の第1、第2ノズルプレート91,92、複数のベーンノズル93、ユニゾンリング94、アクチュエータ95、リンクロッド96、リンクアーム97などを備えている。
【0039】
第1、第2ノズルプレート91,92は、複数のスペーサ98を介して平行に対向配置された状態で結合される環状板で形成されている。複数のベーンノズル93は、それぞれ、第1、第2ノズルプレート91,92の対向間の円周数ヶ所にベーンシャフト99を介して姿勢変更可能に取り付けられている。
【0040】
このベーンシャフト99は、図4および図6に示すように、複数(例えば12枚)のベーンノズル93それぞれに一体に貫通した状態で取り付けられていて、このベーンシャフト99の軸方向一端が第1ノズルプレート91に、また、ベーンシャフト99の軸方向他端が第2ノズルプレート92にそれぞれ回動可能に支持されている。
【0041】
各ベーンノズル93は、タービンハウジング55のスクロール通路55aと排出口55bとを連通する領域に配置され、円周方向で隣り合うベーンノズル93それぞれの姿勢を変更することにより当該各ベーンノズル93それぞれの対向間隔が調節されるようになっている。例えば、内燃機関1の低回転域において隣り合うノズルベーン93の対向間隔(流路面積またはスロート面積)を減少させるようにノズルベーン93の姿勢を調整すれば、排気ガスの流速が増加して、低回転域から高い過給圧を得ることが可能になる。
【0042】
ユニゾンリング94、アクチュエータ95、リンクロッド96、リンクアーム97は、各ベーンノズル93の姿勢を変更するための操作機構を構成している。
【0043】
ユニゾンリング94は、図3および図5に示すように、各ベーンシャフト99を所定角度、所定方向に回転させることによって各ベーンノズル93の姿勢を変更させるものであり、その内周の円周数ヶ所には、各ベーンシャフト99の一端が個別に固定される傾動カム101が配置されている。
【0044】
この各傾動カム101の一部は、ユニゾンリング94の内周の円周数ヶ所に設けられている溝94aに係合されている。また、ユニゾンリング94には、各傾動カム101と同様に、各傾動カム101を連係して円周方向に傾動させるための単一のメイン傾動カム102が設けられている。このメイン傾動カム102には、下記するリンクアーム97の軸部97bの自由端が固定されている。
【0045】
アクチュエータ95は、詳細に図示していないが、駆動源としての直流モータ(DCモータ)、直流モータの回転動力をリンクロッド96を押し引きするための直線運動に変換するための歯車機構およびウォーム機構などを備えている。
【0046】
リンクアーム97は、リンクロッド96に連結されるジョイントピン97aと、ユニゾンリング94のメイン傾動カム102に固定される軸部97bとが設けられている。
【0047】
なお、図3および図5に示すように、第1ノズルプレート91には複数のローラ91aがそれぞれピン91bを介して回転自在に取り付けられており、この各ローラ91aはユニゾンリング94の内周面に内接するようになっていて、このユニゾンリング94の回転動作をガイドするようになっている。
【0048】
このような構成の可変ノズル機構9の動作を説明する。アクチュエータ95によりリンクロッド96を図5矢印Y1に示すように押すか、あるいは図3矢印X1に示すように引くことにより、リンクアーム97を一方向に所定角度回転させると、このリンクアーム97に一体に固定されている軸部97bによってメイン傾動カム102が傾動される。それによって各傾動カム101が傾動されて、ユニゾンリング94が図5矢印Y2に示すように反時計回り方向、あるいは図3矢印X2に示すように時計回り方向に所定角度回転させられることになる。
【0049】
これにより、各傾動カム101とベーンシャフト99を介して一体とされているベーンノズル93が傾動されるようになって、各ベーンノズル93それぞれの対向間隔が調節されることになる。なお、リンクロッド96を、図5矢印Y1に示すように押すと、各ベーンノズル93それぞれの対向間隔が図6に示すように小さくなる一方で、図3矢印X1に示すように引くと、各ベーンノズル93それぞれの対向間隔が図4に示すように大きくなる。
【0050】
このような可変ノズル機構9は、ベアリングハウジング54とタービンハウジング55との間に設けられる環状空間57に配設されている。
【0051】
具体的に、ベアリングハウジング54の外周面の軸方向中間領域でタービン寄りの位置には、径方向外向きのフランジ54aが設けられている。このフランジ54aには、タービンハウジング55の外筒部55cが結合されており、このフランジ54aとタービンハウジング55との結合部分に、前記した環状空間57が作られるようになっている。
【0052】
ところで、タービンハウジング55においてベアリングハウジング54寄りの側壁における内径側領域が、開放されることによってスクロール通路55aと環状空間57とが連通されるようになっている。但し、この開放部には、当該開放部を塞ぐように第1ノズルプレート91が配置されているとともに、第1、第2ノズルプレート91,92の対向間がスクロール通路55aと排出口55bとを連通する連通路にされており、この連通路内にノズルベーン93が配置された状態になっている。
【0053】
なお、第2ノズルプレート92の内周面とタービンハウジング54において第2ノズルプレート92の対向面との対向隙間は、シールリング110で密封されている。このシールリング110は、第2ノズルプレート92の内周面に設けられている周溝に組み込まれており、タービンハウジング54側に圧接されている。
【0054】
そして、第1ノズルプレート91の側方に配置される操作機構のユニゾンリング94が環状空間57に配置されるようになっている。さらに、前記操作機構のアクチュエータ95、リンクロッド96、リンクアーム97は、ベアリングハウジング54のフランジ54aの外側に配置されるようになっている。リンクアーム97の軸部97bは、ベアリングハウジング54のフランジ54aに貫通されている。フランジ54aの貫通孔には、円筒形のすべり軸受としてのブッシュ103が装着されており、このブッシュ103内に軸部97bが回転自在となるように挿通されている。
【0055】
このような可変ノズル機構9の設置形態により、タービンハウジング55のスクロール通路55aを流れる排気ガスが、環状空間57内に漏洩することになる。そのために、この環状空間57を作るためのベアリングハウジング54の外周面の一部領域およびフランジ54aが、環状空間57内に漏洩する排気ガスに触れるようになっている。
【0056】
この実施形態では、例えば鋳鉄製のベアリングハウジング54において環状空間57に露呈する面を、カバー10で覆い隠すようにすることにより、当該露呈面に排気ガスを触れさせないようにしている。
【0057】
このカバー10は、図7から図9に示すように、環状板部11、筒状部12などを備えている。環状板部11は、ベアリングハウジング54のフランジ54aを覆い隠す形状であり、その径方向途中領域には軸方向一方に張り出す環状張り出し部13が設けられている。筒状部12は、環状板部11の内径側から軸方向一方に延出する形状になっている。この筒状部12において付け根寄りには、一旦先端側へ向けて漸次縮径してから急峻に立ち上がる環状小径部14が設けられている。
【0058】
このカバー10の使用形態について説明する。つまり、カバー10の環状板部11の外周がベアリングハウジング54のフランジ54aとタービンハウジング55との結合部分に挟持されており、このカバー10の筒状部12の先端側には、可変ノズル機構9の第1ノズルプレート91が外嵌された状態で支持されるようになっている。なお、第1ノズルプレート91の内周部には、周溝91aが設けられており、この周溝91aによって作られる径方向内向きの環状片91bに、筒状部12の先端側が加締められることによって係合されるようになっている。
【0059】
そして、環状板部12の環状張り出し部13における円周方向の所定位置には、軸方向または板厚方向に貫通する孔15が設けられており、この貫通孔15には、可変ノズル機構9のリンクアーム97の軸部97bが挿通されるようになっている。
【0060】
なお、リンクアーム97の軸部97bと貫通孔15との間には、軸部97bの回転を許容するために嵌め合い隙間が設けられているが、そのために、環状空間57内の排気ガスが、前記嵌め合い隙間を通って、軸部97bとブッシュ103との嵌め合い面に到達し、この嵌め合い面から外部へ漏洩するおそれがある。
【0061】
この排気ガス漏洩を防止するために、軸部97bとブッシュ103との嵌め合い面にシールリング104を装着するようにしている。詳しくは、シールリング104は、例えばピストンリングなどとされ、ブッシュ103の内周に設けられる周溝に装着されて、軸部97bに当接されるようになっている。
【0062】
次に、このようなカバー10をベアリングハウジング54に取り付けるときの様子を説明する。
【0063】
まず、カバー10の筒状部12をベアリングハウジング54の外周面においてタービン寄り肩部を覆い隠すように外嵌装着して、カバー10の環状板部11をベアリングハウジング54のフランジ54aを覆い隠すようにあてがう。
【0064】
この後、カバー10の環状板部11の外周をフランジ54aとタービンハウジング54とで挟み、可変ノズル機構9の第1ノズルプレート91の内周溝にカバー10の筒状部12の先端を加締める。
【0065】
そして、カバー10の筒状部12の環状小径部14を、ベアリングハウジング54の外周面においてタービン寄り肩部の小径周溝54bの段壁面54cに軸方向から引っ掛ける。このとき、環状小径部14を軸方向に若干弾性圧縮させる状態にしておく。これにより、環状小径部14の弾性復元力によって、環状小径部14の最小径部がベアリングハウジング54の外周面においてタービン寄り肩部に圧接されることになるとともに、カバー10の環状板部11の内周寄り部分がフランジ54aの付け根寄りに圧接されることになる。
【0066】
ところで、カバー10の筒状部12をベアリングハウジング54の外周面においてタービン寄り肩部の端縁側から嵌め入れてから、筒状部12の環状小径部14を前記タービン寄り肩部の小径周溝54bに嵌め込むために、環状小径部14を径方向外向きに弾性膨張させる必要があるが、この弾性膨張を可能にするために、図8および図9に誇張して記載しているように、環状小径部14の径方向での断面形状を、六角形にしている。このため、環状小径部14の6つの直線辺の所定位置が、ベアリングハウジング54の外周面においてタービン寄り肩部に線あるいは面で接触するようになっている。
【0067】
上記したカバー10は、少なくとも耐蝕性に優れた性状を備えていればよいので、例えば適宜のステンレス鋼(例えばSUS304など)を素材とすることができる。
【0068】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態では、可変ノズル機構9を支持する耐蝕性材料製のカバー10でもって、鋳鉄製のベアリングハウジング54およびそれのフランジ54aにおいて環状空間57に露呈する面を覆い隠すようにしている。
【0069】
これにより、タービンハウジング55のスクロール通路55aから環状空間57に排気ガスが侵入したとしても、この排気ガスがベアリングハウジング54およびそれのフランジ54aの前記露呈面に触れることを防止できるようになる。そのため、鋳鉄製のベアリングハウジング54およびそれのフランジ54aや操作機構のリンクアーム97の軸部97bが経時的に腐食したり、あるいはそれらに酸化物が付着したりすることを防止できるようになるので、ターボチャージャ5の寿命の向上に貢献できるとともに、軸部97bの回転動作が長期にわたって円滑に保たれるようになるなど、可変ノズル機構9の操作性の長期安定化に貢献できるようになる。
【0070】
しかも、この実施形態では、カバー10において、環状板部11の外周の挟持部分と、環状板部11の内周寄り部分の圧接部分と、筒状部12の先端加締め部分との3箇所でもって、カバー10とベアリングハウジング54において環状空間57に露呈する面との対向部分を密封するようにしている。これにより、ベアリングハウジング54およびそれのフランジ54aにおいて環状空間57に露呈する面を、排気ガスから隔離して密封する効果を高めることが可能になる。
【0071】
このような素材からなるカバー10を用いる実施形態では、特許文献1に係る従来例とは異なり、支持プレートと高価なガスケット(商品名インコネル)との2つを用いる必要がないから、コスト面で有利になり、また、特許文献2に係る従来例に比べると、密封箇所が多いから、密封性で優位となる。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0073】
例えば図10に示すように、カバー10は、その環状板部11の板厚が筒状部12に比べて大きく設定されている。この環状板部11は、径方向に沿って真っ直ぐに形成されており、外側がベアリングハウジング54のフランジ54aに密接されるようになっている。また、環状板部11の貫通孔15には、ブッシュ103がすきま嵌めされている。
【0074】
さらに、筒状部12は、前記したような環状小径部14が排除されており、シンプルな短尺の円筒形に形成されている。そして、この筒状部12は、ベアリングハウジング54の外周面におけるタービン寄り肩部に非接触とされている。
【0075】
ところで、第1ノズルプレート91の内径側には軸方向一方へ突出する円筒部91cが設けられており、この第1ノズルプレート91がカバー10の先端側に外嵌された状態で支持されるようになっている。なお、第1ノズルプレート91の円筒部91cの内周には周溝91dが設けられている。この周溝91dによって作られる径方向内向きの環状片91eに、カバー10の筒状部12の先端側が加締められて係合されるようになっている。
【0076】
なお、第1ノズルプレート91の内周面とベアリングハウジング54の外周面におけるタービン寄り肩部との対向隙間は、シールリング111で密封されている。このシールリング111は、ベアリングハウジング54の外周面におけるタービン寄り肩部に設けられている周溝に組み込まれており、第1ノズルプレート91の円筒部91cの内周面に圧接されている。
【0077】
このようなカバー10であっても、鋳鉄製のベアリングハウジング54において環状空間57に露呈する面を覆い隠すことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 内燃機関
62 吸気マニホールド
72 排気マニホールド
5 ターボチャージャ
51 タービンホイール
52 コンプレッサインペラ
53 タービンシャフト
54 ベアリングハウジング
54a ベアリングハウジングのフランジ
55 タービンハウジング
55a タービンハウジングのスクロール通路
55b タービンハウジングの排出口
57 環状空間
9 可変ノズル機構
91 第1ノズルプレート
92 第2ノズルプレート
93 ベーンノズル
94 ユニゾンリング
95 アクチュエータ
96 リンクロッド
97 リンクアーム
97b リンクアームの軸部
10 カバー
11 環状板部
12 筒状部
13 環状張り出し部
14 筒状部の環状小径部
15 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンホイールとコンプレッサインペラとを回転一体とする共通の回転軸が回転自在に挿通される中心孔を有するベアリングハウジングと、
ベアリングハウジングの外周の軸方向中間領域においてタービン寄りに設けられる径方向外向きのフランジに結合されかつスクロール通路を有するタービンハウジングと、
前記スクロール通路からタービンホイールを経て排気管へ排気ガスを排出する容量を変更するための可変ノズル機構とを備え、
前記可変ノズル機構は、対向配置される一対のノズルプレートと、この一対のノズルプレート間の円周数ヶ所に設けられるベーンノズルと、一方のノズルプレートの外側に配置されかつ前記各ベーンノズルの姿勢を変更させるための操作機構とを有し、
前記ベアリングハウジングのフランジと前記タービンハウジングとの結合部分には、前記スクロール通路に連通する環状空間が設けられ、
この環状空間と前記スクロール通路とを連通する連通部には、当該連通部を塞ぐように前記一方のノズルプレートが配置されることで、前記環状空間に前記操作機構の一部が配置される状態とされ、
前記ベアリングハウジングおよびそのフランジにおいて前記環状空間に露呈する面が、カバーで覆われており、
このカバーは、前記フランジを覆う環状板部と、この環状板部の内径側から軸方向に延出する筒状部とを有し、かつ前記環状板部の外径側が前記フランジとタービンハウジングとの結合部分に挟持され、前記筒状部の先端側に前記一方のノズルプレートが外嵌された状態で支持されている、ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャ。
【請求項2】
請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャにおいて、
前記カバーの筒状部の付け根寄りには、環状小径部が設けられ、この環状小径部が、前記ベアリングハウジングの外周面においてタービン寄り肩部の段差の段壁面に引っ掛けられることによって軸方向に弾性圧縮されており、この弾性復元力によって前記カバーの環状板部の内径側が前記フランジに圧接されている、ことを特徴とする可変容量型ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−62808(P2012−62808A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206966(P2010−206966)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】