説明

可搬型データ取得装置、および、実装精度評価システム

【課題】部品実装機を評価するためのデータを軽量な装置で正確に取得する。
【解決手段】部品実装機により部品が実装された評価用基板200を用い、前記部品実装機の実装精度を評価するためのデータを取得する可搬型データ取得装置100であって、デジタルカメラ101と、評価用基板200を保持し、光を拡散状に透過させる保持板102と、デジタルカメラ101と保持板102とを一定の距離を維持して保持する剛性を備えた基体103と、基体103に保持板102が取り付けられた状態において、保持板102に対しデジタルカメラ101と反対側に取り付けられる、複数の発光源を有する照明手段104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
部品実装機により部品が実装された評価用基板を用い、前記部品実装機の実装精度を評価する実装精度評価システム、および、当該実装精度評価システムに用いられるデータを取得する可搬型データ取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板に部品を実装して実装基板を製造する装置として、部品実装機が用いられている。この部品実装機としては、部品を吸着状態で保持することができるノズルを多数備え、部品が供給される部品供給部から各前記ノズルによって複数の電子部品を吸着保持し、前記部品供給部から基板上に電子部品を搬送し、基板に部品を装着することのできる、いわゆるモジュラー型の部品実装機を例示することができる。
【0003】
昨今では、電子機器の小型化や高性能化に伴い、一辺が1mm以下の電子部品を高密度、かつ、高速で実装することができる部品実装機が登場している。このような部品実装機では、電子部品を実装する際の位置精度の高さが要求されており、部品実装機の各部分を調整して位置精度の維持を図っている。従って部品実装機の高い位置精度を維持するためには、部品実装機の位置精度の現状をノズル毎に正確に把握する必要がある。
【0004】
そこで、部品実装機により電子部品が実装された評価用基板をXYステージに載せ、XYステージにより評価用基板を移動させて、評価用基板の表面の多数の箇所に実装された電子部品を一つずつカメラで撮像することができる評価装置を用い、XYステージから得られた正確な位置情報と、撮像された画像を解析することにより得られる電子部品の位置情報とを比較して、部品実装機の実装精度を評価する方法が実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−103660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述のモジュラー型の部品実装機は、多数のノズルを備えているため、各ノズルを調整するためにはノズル毎の実装精度を把握する必要がある。さらに、実装精度の評価のための有意なデータとするためには、一つのノズルにより多くの箇所に実装された電子部品の正確な位置情報を取得して、統計的に処理する必要がある。従って、実装された電子部品の位置情報をXYステージを断続的に移動させ一つずつ取得する前記評価装置では、1台の部品実装機の実装精度を取得するために長時間を費やすこととなっている。
【0007】
さらに、前記評価装置は、XYステージを精度良く動かして部品を一つずつ撮像する必要があるため、部品実装機が設置されているような大きな振動が発生するような場所や温度変化の激しい場所とは隔離された場所に設置される必要がある。従って、隔離された部屋の評価装置で取得されたデータに基づき実装精度が悪いと判断去れば場合、部品実装機にまで出向いて調整を行う必要があり、実装精度の評価が出てから部品実装機の調整までに相当な時間を要する場合がある。
【0008】
本願発明は上記課題に鑑みなされたものであり、評価対象の部品実装機の近傍などに手軽に持ち運ぶことができ、実装精度の評価に用いられるデータを高速に取得することができる可搬型データ取得装置、および、当該可搬型データ取得装置から得られたデータを用いて実装精度の評価をすることができる実装精度評価システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる可搬型データ取得装置は、部品実装機により部品が実装された評価用基板を用い、前記部品実装機の実装精度を評価するためのデータを取得する可搬型データ取得装置であって、デジタルカメラと、前記評価用基板を保持し、光を拡散状に透過させる保持板と、前記デジタルカメラと前記保持板とを一定の距離を維持して保持する剛性を備えた基体と、前記基体に前記保持板が取り付けられた状態において、前記保持板に対し前記デジタルカメラと反対側に取り付けられる、複数の発光源を有する照明手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
これによれば、複数の点光源から放射された光が保持板で散乱し、あたかも保持板全体が均等に発光している状態となる。従って保持板近傍に配置される評価用基板には平行光と考えられるような光が透過するため、評価用基板上に広く分布して実装された部品の形状の一つ一つが正確に影(シルエット)としてデジタルカメラで撮像される。つまり、部品が配置されている部分とそれ以外の部分とが明確に区別できるような状態で撮像することが可能となる。従って、デジタルカメラと評価用基板との位置を相対的に移動させることなく、評価用基板に広く分布した部品のそれぞれの位置を精度良く、かつ、一度の操作で取得することが可能となる。つまり、デジタルカメラと評価用基板との相対的な位置を移動させることなく、正確、かつ、高速に実装精度評価用のデータを取得することが可能となる。
【0011】
また、評価用基板などとデジタルカメラとの相対的な位置を変化させるための駆動源や駆動機構が不要となるため、人が単独で持ち運ぶことができる程度にデータ取得装置全体を軽量化できる。また、機械的に駆動する部分が無いため、ほとんどメンテナンスを行う必要が無い。また、駆動部分の位置精度などを考慮する必要が無いため、設置環境を選ぶことが無く、部品実装機が設置されているような振動の強い場所や、環境温度の変化が激しい場所などでも、部品実装機の実装精度を評価するためのデータを簡便に取得することが可能となる。
【0012】
さらに、前記基体に設けられ、前記保持板を着脱可能に保持する保持手段を備えてもかまわない。
【0013】
これによれば、可搬型データ取得装置の外部で評価用基板が取り付けられた保持板を基体に取り付けることができるため、保持板とデジタルカメラとの距離を狭くしても、評価用基板の取り付け作業が困難になることはない。従って、可搬型データ取得装置をコンパクトな装置とすることができ、可搬性を向上させることが可能となる。
【0014】
また、評価用基板の大きさなどに応じて保持板102を取り替えることも可能であり、可搬型データ取得装置の汎用性を向上させることも可能となる。
【0015】
さらに、前記デジタルカメラと前記保持板と前記照明手段とを内方空間に収容し、内方空間への光の進入を遮断する遮光筐体を備えるものでもよい。
【0016】
これによれば、部品実装機が設置されている工場建屋内など明るさが制御できない場所であっても、外からの光の影響を受けることなく評価用基板を撮像することができ、場所を選ぶことなく、実装精度評価用のデータを正確に取得することが可能となる。
【0017】
さらに、前記基体に設けられ、前記保持板を着脱可能に保持する保持手段を備え、前記遮光筐体は、前記保持手段に対し前記保持板を着脱する方向に当該遮光筐体を開放する扉を備え、前記扉は、開いた状態において水平状態で前記遮光筐体に保持されることが好ましい。
【0018】
これによれば、扉を開放状態とすることで、保持板ごと評価用基板を基体に対し容易に着脱することが可能となる。従って、遮光筐体の内方空間が狭い場合でも効率よく評価用基板を着脱することが可能となる。
【0019】
また、遮光筐体を開放した状態の扉は水平状態で維持されるため、扉を作業台代わりとして用いることができる。例えば、保持板に評価用基板を取り付ける作業などを開放状態の扉の上で行うことができる。従って、当該可搬型データ取得装置を載置した場所が油で汚れているなどの環境が悪い場合でも、清浄な扉の上で前記作業を行うことができるため、評価用基板に汚れが付着して誤ったデータを取得するなどの不具合が発生する可能性を低減することができる。
【0020】
前記発光源は、前記評価用基板の面積よりも広い領域に分散状態で配置されることが好ましい。
【0021】
これによれば、評価用基板の周縁部に実装されている部品の影が評価用基板の表面に落ちることにより誤ったデータが取得することを可及的に回避することができる。つまり、評価用基板の周縁に実装された部品の周囲全体にわたって照明手段から照射され保持板で拡散された光を十分に透過させることができ、評価用基板全体にわたって実装された部品の影(シルエット)と保持板の明るい部分との境界が明確に判別できる画像を取得することが可能となる。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本願発明にかかる実装精度評価システムは、部品実装機により部品が実装された評価用基板を用い、前記部品実装機の実装精度を評価する実装精度評価システムであって、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の可搬型データ取得装置と、前記可搬型データ取得装置を制御し、得られたデータを用いて実装精度を評価する評価装置とを備え、前記評価装置は、評価の基準となるマスターデータを取得するマスターデータ取得部と、前記可搬型データ取得装置から得られたデータに基づき画像解析を行い、前記評価用基板に実装された部品の位置を示す位置情報を生成する位置情報生成部と、前記マスターデータに対する前記位置情報のずれ値を算出し、当該ずれ値に基づき前記部品実装機の実装精度を評価する評価部とを備えることを特徴としている。
【0023】
これによれば、複数の点光源から放射された光が保持板で散乱し、あたかも保持板全体が均等に発光している状態となる。従って保持板近傍に配置される評価用基板には平行光と考えられるような光が透過するため、評価用基板上に広く分布して実装された部品の形状の一つ一つが正確に影(シルエット)としてデジタルカメラに取得される。つまり、部品が配置されている部分とそれ以外の部分とが明確に区別できるような状態で撮像することが可能となる。従って、デジタルカメラと評価用基板との位置を相対的に移動させることなく、評価用基板に広く分布した部品の位置を精度良く一度に取得することが可能となる。また、多くの部品の位置情報を一度の撮像で得ることができ、当該データを画像処理することによって部品一つ一つの位置情報や傾き等を含む実装精度評価用のデータを高速に取得することが可能となる。
【0024】
また、評価用基板などとデジタルカメラとの相対的な位置を変化させるための駆動源や駆動機構が不要となるため、人が単独で持ち運ぶことができる程度にデータ取得装置全体を軽量化でき、また、評価装置も軽量なコンピュータ、いわゆるノートパソコンで実現することができる。
【0025】
また、機械的に駆動する部分が無いため、ほとんどメンテナンスを行う必要が無い。また、駆動部分の位置精度などを考慮する必要が無いため、設置環境を選ぶことが無く、部品実装機が設置されているような振動の強い場所や、環境温度の変化が激しい場所などでも、部品実装機の実装精度を評価するためのデータを簡便に取得し、即座に実装精度を評価することが可能となる。
【0026】
さらに、評価用基板に部品を実装した部品実装機の近傍で当該部品実装機の実装精度を評価することができるため、容易、かつ、リアルタイムで部品実装機の調整を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本願発明によれば、可搬型データ取得装置を部品実装機の近傍などに容易に持ち運ぶことが可能となる。しかも、データを高速で取得することができるため、部品実装機の実装精度を高速に取得して部品実装機の調整にフィードバックできるため、部品実装機の調整作業の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、部品が実装された評価用基板を示す平面図である。
【図2】図2は、遮光筐体の一部を省略して可搬型データ取得装置の内部を示す斜示図である。
【図3】図3は、遮光筐体の一部を省略して可搬型データ取得装置の内部を正面から示す平面図である。
【図4】図4は、可搬型データ取得装置の外観(遮光筐体)を示す斜示図である。
【図5】図5は、扉を開けた状態の可搬型データ取得装置の外観(遮光筐体)を示す斜示図である。
【図6】保持板を保持手段に取り付ける状態を示す斜示図である。
【図7】図7は、評価用基板と照明手段との関係を模式的に上方から示した平面図である。
【図8】図8は、実装精度評価システムを模式的に示す図である。
【図9】図9は、評価装置の機能部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本願発明に係る可搬型データ取得装置、および、実装精度評価システムの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本願発明に係る可搬型データ取得装置、および、実装精度評価システムの一例を示したものに過ぎない。従って本願発明は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。
【0030】
図1は、部品実装機により部品が実装された評価用基板を示す平面図である。
【0031】
評価用基板200は、部品実装機の実装精度を評価するために基板である。具体的には、評価用基板200は、部品実装機により部品201が表面に実装される光の透過性能を備えた板状の部材である。本実施の形態の場合、評価用基板200は、光が透過する透明の板状の部材である。評価用基板200の材質としては特に限定されるものでは無いが、ガラスなどを例示することができる。
【0032】
また、本実施の形態の場合、評価用基板200の表面には、小型の電子部品であるいわゆるチップ部品と称される部品201がマトリクス状に実装されている。部品201は、光が透過しないものであるため、評価用基板200の表面に実装された部品201の周囲(間)のみ光が透過することとなる。
【0033】
なお、部品201としては、実際の電子機器に用いられる電子部品ばかりでなく、実装精度測定用に特別に製作されたチップなどでもかまわない。
【0034】
また、評価用基板200の表面の4隅にはアライメントマーク202が設けられている。
【0035】
なお、評価用基板200は、透明な部材ばかりでなく、半透明であってもかまわない。
【0036】
図2は、遮光筐体の一部を省略して可搬型データ取得装置の内部を示す斜示図である。
【0037】
図3は、遮光筐体の一部を省略して可搬型データ取得装置の内部を正面から示す平面図である。
【0038】
これらの図に示すように、可搬型データ取得装置100は、部品実装機により部品201が実装された評価用基板200を用い、部品201実装機の実装精度を評価するためのデータを取得する置であって、デジタルカメラ101と、保持板102と、基体103と、照明手段104とを備えている。本実施の形態の場合、可搬型データ取得装置100はさらに、保持手段105と、遮光筐体106とを備えている。なお本実施の形態の場合、基体103は、遮光筐体106としても機能している。
【0039】
デジタルカメラ101は、評価用基板200の表面、および、その近傍を撮像するためのカメラであって、評価用基板200の像をピクセル単位のデジタルデータに変換することのできるカメラである。デジタルカメラ101は、所定の焦点距離を備え撮像領域などを決定するレンズ(図示せず)と、レンズによって結ばれた像をピクセルごとのデジタルデータに変換する撮像素子(図示せず)と、前記撮像素子の撮像動作(シャッターなど)を制御し、また、評価装置(後述)との間で得られたデジタルデータを通信するインターフェース(図示せず)などを備えている。
【0040】
本実施の形態の場合、可搬型データ取得装置100は、デジタルカメラ101を2台備えている。このようにデジタルカメラ101を2台備えることにより、広い撮像領域を確保しつつ評価用基板200とデジタルカメラ101との距離を狭くすることが可能となる。従って、可搬型データ取得装置100を小型化することができ可搬性能を向上させることが可能となる。
【0041】
なお、実装精度の評価に供するための十分なデータを得るためには、可搬型データ取得装置100の分解能は、0.1μm以下が好ましい。本実施の形態の構成において、例えば、デジタルカメラ101として一般的なデジタルカメラを採用し、評価用基板200の大きさを100mm×200mmとした場合、デジタルカメラ101と評価用基板200との距離は、120mm以上、200mm以下(特に、150mm以上、180mm以下)となる。
【0042】
なお、本願発明において、可搬型データ取得装置100が備えるデジタルカメラ101の数は特に限定されるものではなく、デジタルカメラ101の数は、1台でも、また、3台以上でもかまわない。デジタルカメラ101を1台とした場合、実用的な領域を撮像するためにはデジタルカメラ101と評価用基板200との距離を250mm以上とする必要がある。従って、可搬型データ取得装置100が大型化する傾向となる。また、デジタルカメラ101を3台以上とした場合でも、デジタルカメラ101と評価用基板200との距離を120mm以下とすることは実用的に困難である。例えば、保持板102に評価用基板200を取り付けにくいなどである。さらに、二つのデジタルカメラ101に挟まれた中間の位置に配置されるデジタルカメラ101が撮像する領域は評価用基板200の中間部分の撮像を担当することとなるため、評価用基板200と実装された部品201との相対的な位置関係を定めるためのアライメントマークを別途評価用基板200の中間部に設ける必要がある。
【0043】
以上から、可搬型データ取得装置100は、デジタルカメラ101を2台備えることが好適であると考えられる。また、デジタルカメラ101が2台の場合、評価用基板200の隅部にアライメントマークを設けるだけでよく、また、評価用基板200の角部をアライメントマークとして用いることも可能となる。
【0044】
保持板102は、評価用基板200を保持し、光を拡散状に透過させる板状の部材である。保持板102を構成する材料としては、磨りガラスや乳白色の樹脂板などを例示できる。また、保持板102は、機械的な強度(剛性)を保つ透明な基礎板と、光を拡散させる機能を備えた拡散層とで構成されるものでもよい。
【0045】
本実施の形態の場合、評価用基板200の角部に作用して評価用基板200の位置を決定することができる決定手段121が保持板102の表面に設けられている。本実施の形態の場合、決定手段121は、評価用基板200の周縁の角部と当接する評価用基板200表面から突出したL字状の突起である。決定手段121に評価用基板200の角部を当接させた状態で評価用基板200を保持板102に載置することで、保持板102、および、基体103を介して評価用基板200とデジタルカメラ101との位置関係を一定に決定することができる。
【0046】
このように、評価用基板200の位置を正確に決定することで、マスターデータを作成したときの撮像条件と評価用基板200を撮像する際の撮像条件を同じにすることができ、可搬型データ取得装置100が有している特性を正確に排除することが可能となる。
【0047】
また、保持板102は、保持板102の背部(図中下方)にある照明手段104の複数箇所から放射される光を散乱状態で透過することができるものとなっている。これにより、デジタルカメラ101側から保持板102を見た場合、あたかも保持板102全体が均等に発光し、少なくとも評価用基板200の近傍では保持板102から平行光が放射さているように見えるようになる。従って、評価用基板200の表面に実装されている部品201の形状そのままの影(シルエット)とその周りを透過する光とを高いコントラストで撮像することが可能となる。つまり、境界を判別して囲まれた領域(部品のシルエット)の位置や傾きを画像解析によって導出するためのデータとして好適となる。特に、保持板102が評価用基板200の近傍(本実施の形態の場合は、評価用基板200の裏面に接触状態)に配置されている場合、保持板102からの光の平行度合いが高いため、前記特徴を好適に享受することが可能となる。
【0048】
基体103は、デジタルカメラ101と保持板102とを一定の距離を維持して保持する剛性を備えた部材である。
【0049】
本実施の形態の場合、基体103は、遮光筐体106と一体となっており、遮光筐体106と、遮光筐体106の内部空間に架橋状態で固定された剛性のある基板131と、遮光筐体106の内壁に固定された保持手段105とにより形成されている。従って、前記基板131にデジタルカメラ101が取り付けられ、前記保持手段105に保持板102が取り付けられることで、デジタルカメラ101と保持板102との距離、すなわち、デジタルカメラ101と評価用基板200との距離が一定に決定される。
【0050】
図4は、可搬型データ取得装置の外観(遮光筐体)を示す斜示図である。
【0051】
図5は、扉を開けた状態の可搬型データ取得装置の外観(遮光筐体)を示す斜示図である。
【0052】
遮光筐体106は、デジタルカメラ101と保持板102と照明手段104とを内方空間に収容し、内方空間への光の進入を遮断する箱状の部材である。本実施の形態の場合、金属板を折り曲げ加工することにより遮光筐体106を形成している。また、遮光筐体106は、基体103となりうる剛性を備えている。
【0053】
さらに、遮光筐体106は、扉161を備えている。扉161は、遮光筐体106を開放する部材であり、開いた状態において水平状態で遮光筐体106に保持される。また、扉161は、閉じれば遮光筐体106の一部になり、遮光筐体106の内部空間に光りが侵入することを阻止することができるものである。
【0054】
なお、本実施の形態では、基体103と遮光筐体106とを一体としたが、本願発明はこれに限定されるわけではない。例えば基体103を棒状の部材を組み合わせたいわゆるフレーム構造としてもかまわない。この場合、遮光筐体106は剛性を備える必要が無いため、フレーム構造の基体103に張り巡らされた布や樹脂板などで遮光筐体106を形成してもかまわない。また、基体103を折りたたみ構造や、組み立て構造としてもよい。
【0055】
保持手段105は、基体103に設けられ、保持板102を着脱可能に保持する部材である。
【0056】
本実施の形態の場合、保持手段105は、基体103として機能する遮光筐体106の側壁の内側にそれぞれ固定されており、相互に対向し奥行き方向に延びる溝がそれぞれ設けられている。以上の構成により、保持板102は、図6に記載するように、保持手段105の溝に端縁部を挿入し奥行き方向(図中矢印方向)にスライドさせることで保持手段105を介して基体103に取り付けることができるようになっている。
【0057】
また、遮光筐体106に設けられる扉161は、保持手段105に対し保持板102を着脱する方向(奥行き方向)に遮光筐体106を開放するように取り付けられている。
【0058】
保持板102が着脱可能な保持手段105を基体に取り付けることにより、例えば、評価用基板200の大きさにバリエーションがある場合、これに対応した保持板102を容易に取り替えることが可能となる。また、遮光筐体106の外部で、保持板102に評価用基板200を載置することができ、評価用基板200の撮像作業を容易とすることが可能となる。
【0059】
なお、保持板102が直接基体103に取り付けられるものでもよく、この場合、保持手段105は不要となる。また、保持手段105は、評価用基板200の端縁を挟み込む構造ばかりでなく、単に保持手段105の両端縁が載置される構造でもかまわない。
【0060】
照明手段104は、基体103に保持板102が取り付けられた状態において、保持板102に対しデジタルカメラ101と反対側に取り付けられる装置であり、複数の発光源を有している。
【0061】
本実施の形態の場合、照明手段104は複数の発光ユニット141で構成されており、各発光ユニット141の内部には複数の発光源(図示せず)が取り付けられている。発光源としては例えば発光ダイオードや有機EL素子を例示することができる。
【0062】
なお、保持板102と同程度の領域で面状に発光する有機EL素子などの場合でも、複数の点光源が集まったものとして考えることとする。
【0063】
図7は、評価用基板と照明手段との関係を模式的に上方から示した平面図である。
【0064】
同図に示すように、照明手段104が備える発光源142は、評価用基板200の面積よりも広い領域に分散状態で配置されている。これにより、保持板102(図7中図示せず)全体で均等に光りを拡散状態で透過し、評価用基板200の周縁部に実装された部品201の周囲も均等かつ十分に光が透過することとなる。従って、評価用基板200の周縁部に至るまで部品201の形状とそれ以外との部分の境界が明確に判別できるように撮像することが可能となる。
【0065】
図8は、実装精度評価システムを模式的に示す図である。
【0066】
同図に示すように、実装精度評価システム300は、部品実装機により部品が実装された評価用基板200を用い、前記部品実装機の実装精度を評価するシステムであって、可搬型データ取得装置100と、可搬型データ取得装置100を制御し、得られたデータを用いて実装精度を評価する評価装置110とを備えている。
【0067】
本実施の形態の場合可搬型データ取得装置100と評価装置110との間は、1本のシリアルケーブル(例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ケーブル)で接続されている。この場合、可搬型データ取得装置100がシリアルケーブルを備えていてもかまわなく、また、可搬型データ取得装置100が、シリアルケーブルと接続するためのコネクタを備えていてもかまわない。
【0068】
また、可搬型データ取得装置100と評価装置110との間の通信は、シリアル方式ばかりでなく、パラレル方式を採用してもよく、また、有線ばかりでなく無線通信であってもかまわない。
【0069】
図9は、評価装置の機能部を示すブロック図である。
【0070】
評価装置110は、汎用のコンピュータであって、プログラムとして実現されるマスターデータ取得部301と、位置情報生成部302と、評価部303とを備えている。さらに、評価装置110は、表示部304と、記憶部305と、インターフェース306とを備えている。
【0071】
マスターデータ取得部301は、評価の基準となるマスターデータを取得する処理部である。具体的には、部品201が実装されるべき位置に黒いパターンが印刷されたマスター基板(図示せず)を可搬型データ取得装置100で撮像し、得られた画像情報を画像解析することにより、黒いパターンの位置情報と傾き情報とをマスターデータとして取得し、記憶部305に記憶させる処理部である。
【0072】
なお、当該マスターデータには、可搬型データ取得装置100の特性、例えば、デジタルカメラ101が取得する画像の歪みや、照明手段104の発光むらなどの影響による測定誤差が含まる。また、マスターデータは、撮像されたアライメントマーク202を基準とした情報となっている。
【0073】
なお、マスター基板は評価用基板200と同じ形状、同じ大きさ、材質のものが好ましい。これにより可搬型データ取得装置100の特性を除外することができるためである。
【0074】
位置情報生成部302は、部品201が表面に実装された評価用基板200を可搬型データ取得装置100で撮像することにより得られた画像データを画像解析し、評価用基板200に実装された部品201の位置を示す位置情報を生成する処理部である。
【0075】
なお、位置情報を生成するための画像処理と、マスターデータを生成するための画像処理とは同様の処理であり、同じ処理部に基づき実施されるものでもよい。また、位置情報は、可搬型データ取得装置100で得られた画像データを用いて生成されているため、マスターデータと同様にデジタルカメラ101が取得する画像の歪みなどの影響による測定誤差を含んだ状態となっている。また、位置情報は、撮像されたアライメントマーク202を基準とした情報となっている。
【0076】
評価部303は、前記マスターデータに対する前記位置情報のずれ値を算出し、当該ずれ値に基づき部品実装機の実装精度を評価する処理部である。具体的には、評価部303は、記憶部305に記憶されているマスターデータを取得し、位置情報生成部302で生成された位置情報を取得し、評価用基板200に実装された部品201毎に印刷されたパターンの位置から部品201の位置のずれを評価する。評価方法としては、実装されている各部品201と対応する位置毎に、マスターデータを基準にずれ値を算出する。ここで、ずれ値とは、例えば、二次元平面におけるマスターデータとの位置ずれ値を示すΔX、ΔY、マスターデータに対する部品201の傾きを示すΔΘである。そして、事前に許容されるずれの値(例えば±0.05mm)を受け付けておき、ΔX、および、ΔYの少なくともいずれか一方が、この値の範囲内にあればOKと評価し、範囲外であればNGと評価する。また、事前に許容されるずれ値である傾きの値(例えば±4度)を受け付けておき、ΔΘが、この値の範囲内にあればOKと評価し、範囲外であればNGと評価する。
【0077】
また、以上の評価結果は表示部304に表示してもよく、また、テキスト形式などのデータとして出力してもかまわない。
【0078】
以上のような、可搬型データ取得装置100は、部品実装機の実装精度を評価するデータとして十分な精度のデータを取得することができる装置であり、かつ、可動部分が無く構造が簡単であるため、人が単独で簡単に持ち運べる程度に軽量化することが可能である。従って、可搬型データ取得装置100を備えた実装精度評価システム300を用いれば、実装精度評価システム300全体も簡単に持ち運べるため、実装精度評価システム300を部品実装機の近傍に搬送し、部品実装機が実装した評価用基板200に基づいて即座に部品実装機の実装精度を評価することが可能となる。
【0079】
また、評価用基板200に基づく位置情報を取得した環境と非常に近い環境でマスターデータも取得することができ、可搬型データ取得装置100の特性を正しく相殺することが可能となる。従って、デジタルカメラ101で多くの部品の画像を一度に撮像しているにもかかわらず、実装精度を正確に評価することが可能となる。
【0080】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本願発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。
【0081】
例えば、遮光筐体106の内部に照明手段104に電力を供給するための電源装置143(図3参照)を備えてもかまわない。また、二つのデジタルカメラ101の情報を一本のケーブルにより評価装置110と通信するために、通信用のハブポートを可搬型データ取得装置100が備えていてもかまわない。また、可搬性能を向上させるために、可搬型データ取得装置100の外側に取っ手を設けてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本願発明は、プリント基板に電子部品を実装する部品実装機の実装精度の評価として利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
100 可搬型データ取得装置
101 デジタルカメラ
102 保持板
103 基体
104 照明手段
105 保持手段
106 遮光筐体
110 評価装置
121 決定手段
131 基板
141 発光ユニット
142 発光源
161 扉
200 評価用基板
201 部品
202 アライメントマーク
300 実装精度評価システム
301 マスターデータ取得部
302 位置情報生成部
303 評価部
304 表示部
305 記憶部
306 インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装機により部品が実装された評価用基板を用い、前記部品実装機の実装精度を評価するためのデータを取得する可搬型データ取得装置であって、
デジタルカメラと、
前記評価用基板を保持し、光を拡散状に透過させる保持板と、
前記デジタルカメラと前記保持板とを一定の距離を維持して保持する剛性を備えた基体と、
前記基体に前記保持板が取り付けられた状態において、前記保持板に対し前記デジタルカメラと反対側に取り付けられる、複数の発光源を有する照明手段と
を備える可搬型データ取得装置。
【請求項2】
さらに、
前記基体に設けられ、前記保持板を着脱可能に保持する保持手段を備える
請求項1に記載の可搬型データ取得装置。
【請求項3】
さらに、
前記デジタルカメラと前記保持板と前記照明手段とを内方空間に収容し、内方空間への光の進入を遮断する遮光筐体を備える
請求項1に記載の可搬型データ取得装置。
【請求項4】
さらに、
前記基体に設けられ、前記保持板を着脱可能に保持する保持手段を備え、
前記遮光筐体は、前記保持手段に対し前記保持板を着脱する方向に当該遮光筐体を開放する扉を備え、
前記扉は、開いた状態において水平状態で前記遮光筐体に保持される
請求項3に記載の可搬型データ取得装置。
【請求項5】
前記発光源は、前記評価用基板の面積よりも広い領域に分散状態で配置される
請求項1に記載の可搬型データ取得装置。
【請求項6】
部品実装機により部品が実装された評価用基板を用い、前記部品実装機の実装精度を評価する実装精度評価システムであって、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の可搬型データ取得装置と、前記可搬型データ取得装置を制御し、得られたデータを用いて実装精度を評価する評価装置とを備え、
前記評価装置は、
評価の基準となるマスターデータを取得するマスターデータ取得部と、
前記可搬型データ取得装置から得られたデータに基づき画像解析を行い、前記評価用基板に実装された部品の位置を示す位置情報を生成する位置情報生成部と、
前記マスターデータに対する前記位置情報のずれ値を算出し、当該ずれ値に基づき前記部品実装機の実装精度を評価する評価部とを備える
実装精度評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−119486(P2012−119486A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267803(P2010−267803)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】