説明

可搬装置、移動体通信端末、盗難防止システム、盗難防止方法およびプログラム

【課題】 可搬装置の位置情報に基づいて盗難を判定すること。
【解決手段】 電源投入時、親機GPS通信部12で自機の位置情報をGPS衛星3より受信し、子機2の位置情報を問い合わせ、それぞれの位置情報を比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬装置と所有者が携帯する移動体通信端末のGPS情報を比較することにより、可搬装置の盗難を判断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
盗難防止システムはGPS衛星から装置の位置情報の移動事象を検知し、システム起動を中止することにより、内部情報の漏洩を防止するために用いられている。
【0003】
従来の盗難防止システムの一例が、例えば、特許文献1に記載されている。この盗難防止システムは、装置の位置情報を取得する位置取得部と、該位置取得部による装置の位置の状態変化を監視する部と、位置変化を検出したとき、システムへ供給する電源の一部または全部を遮断する部を有し、装置内にあらかじめ記録している固定の設置位置情報と、現在の位置情報を比較して盗難を判断するシステムである。
【特許文献1】特開2001−290553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来例においては次のような問題点があった。
【0005】
装置自体が移動しないデスクトップ型PCには適用可能であるが、装置自体が移動することを前提とするノート型PCやモバイル型PCのような可搬PCなどには適用できない。その理由は、装置内にあらかじめPCの設置位置を固定の位置情報としてGPSから取得・登録しておき、特定のタイミングでGPS衛星などから取得した現在の位置情報を比較して盗難を判断するためである。
【0006】
本発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可搬装置の位置情報に基づいて盗難を判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して格納する位置記憶部と、
前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせる対移動体通信端末通信手段と、
前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末から受信した前記移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止するシステム起動手段とを備える可搬装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、可搬装置に、位置記憶部に格納されている、電源投入時、GPS通信手段でGPS衛星より受信した自機の位置情報と、移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止させるべく、
前記可搬装置からの問い合わせに対し、GPS衛星から得た自機の位置情報を前記可搬装置に送信する移動体通信端末を提供する。
【0009】
また、本発明は、GPS機能を備える移動体通信端末と、GPS機能を備える可搬装置とを含む盗難防止システムであって、
前記可搬装置は、電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して格納する位置記憶部と、
前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせる対移動体通信端末通信手段と、
前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止するシステム起動手段とを備え、
前記移動体通信端末は上記問い合わせに対し、GPS衛星から得た自機の位置情報を前記可搬装置に送信する盗難防止システムを提供する。
【0010】
また、本発明は、GPS機能を備える移動体通信端末と、GPS機能を備える可搬装置とを利用した盗難防止方法であって、
前記可搬装置が、電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して位置記憶部に格納するステップと、
対移動体通信端末通信手段で前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせるステップとを有し、
前記移動体通信端末が、上記問い合わせに対し、GPS衛星から得た自機の位置情報を前記可搬装置に送信するステップを有し、
前記可搬装置が、前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末の位置情報とを比較するステップと、
あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システム起動手段でシステムの起動を中止するステップとをさらに有する盗難防止方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、コンピュータに、
電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して位置記憶部に格納する機能と、
前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせる機能と、
前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末から受信した前記移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止する機能とを実現させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可搬装置の位置情報に基づいて盗難を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本実施の形態における盗難防止システムは、可搬PC1と、所有者が常に携帯する子機2と、それぞれが自らの位置情報を得るためのGPS衛星3とから構成されている。
【0014】
可搬PC1は、システム起動部11と、親機GPS通信部12と、可搬PC位置記憶部13と、対子機通信部14と、所有者位置記憶部15と、しきい値記憶部16とを備えている。
【0015】
システム起動部11は、親機GPS通信部12により記録された可搬PC位置記憶部13と、対子機通信部14により記録された所有者位置記憶部15とを比較し、その差分があらかじめしきい値記憶部16に設定された値を超えた場合にシステム起動を中止し、超えない場合に、システム起動を続行する機能を有している。
【0016】
親機GPS通信部12は、システム起動部11の指示により、GPS衛星3から可搬PC1のシステム起動時点の位置情報を取得し、可搬PC位置記憶部13に記録する機能を有している。
【0017】
対子機通信部14は、システム起動部11の指示により、子機2側の対親機通信部23より、子機1すなわち所有者のシステム起動時点の位置情報を取得し、所有者位置記憶部15に記録する機能を有している。
【0018】
子機2は、子機GPS通信部21と、所有者位置記憶部22と、対親機通信部23とを備えている。
【0019】
子機GPS通信部21は、GPS衛星3より位置情報を取得し、所有者位置記憶部22に記録する機能を有している。
【0020】
対親機通信部23は、所有者位置記憶部22を参照して、可搬PC1側の対子機通信部14に、子機2すなわち所有者の位置情報を通知する機能を有している。また、対親機通信部23は、可搬PC1側の対子機通信部14の指示により、子機GPS通信部21に対し、子機2のシステム起動時点の位置情報取得を指示する機能を有している。
【0021】
次に、図2を参照して本実施の形態における処理動作のフローについて詳細に説明する。ここで、可搬PC1の所有者は常に子機2を携帯するものとする。また、しきい値記憶部16には、可搬PC1の設定によりあらかじめ一定の正数が格納されているものとする。
【0022】
まず、可搬PC1に電源が投入されると、システム起動部11が起動される(S201)。
【0023】
システム起動部11は、親機GPS通信部12に対し、可搬PC1の位置情報を問い合わせる(S202)。
【0024】
親機GPS通信部12は、GPS衛星3に対し、可搬PC1の位置情報(緯度および経度)を問い合わせ、その結果を可搬PC位置記憶部13に記録し、その旨をシステム起動部11に通知する(S203)。
【0025】
次に、システム起動部11は、対子機通信部14に対し、子機2すなわち所有者の位置情報(緯度および経度)を問い合わせる(S204)。
【0026】
対子機通信部14は、子機2側の対親機通信部23に対し、無線通信により子機2の位置情報を問い合わせる(S205)。
【0027】
対親機通信部23は、子機GPS通信部21に対し、子機2の位置情報を問い合わせる(S206)。
【0028】
子機GPS通信部21は、GPS衛星3に対し、子機2の位置情報(緯度および経度)を問い合わせ、その結果を所有者位置記憶部22に記録し、その旨を対親機通信部23に通知する(S207)。
【0029】
対親機通信部23は、無線通信により子機2の位置情報を可搬PC1側の対子機通信部14に通知する(S208)。
【0030】
対子機通信部14は通知された子機2、すなわち所有者の位置情報を所有者位置記憶部15に記録し、その旨をシステム起動部11に通知する(S209)。
【0031】
次に、システム起動部11は、可搬PC位置記憶部13に記録された位置情報と、所有者位置記憶部15に記録された位置情報の差分を以下の計算式により求める(S210)。
13=可搬PC位置記憶部13に記録された経度、Y13=可搬PC位置記憶部13に記録された緯度、
15=所有者位置記憶部15に記録された経度、Y15=所有者位置記憶部15に記録された緯度として、
位置情報の差分=((X13−X152+(Y13−Y1521/2
【0032】
次に、システム起動部11は上記計算で求められた位置情報の差分と、しきい値記憶部16に記録された数値とを比較する(S211)。
【0033】
位置情報の差分>しきい値記憶部16の場合、システム起動部11は盗難と判断し、システム起動を中止する(S212)。
【0034】
位置情報の差分≦しきい値記憶部16の場合、システム起動部11は所有者による利用と判断し、システム起動を継続、完遂する(S213)。
【0035】
上記の実施の形態によれば、可搬PCが盗難にあった場合でも、可搬PCに記録された情報が外部に漏洩することを防止することができる。その理由は、可搬PCが盗難にあったと判断される場合に、システム起動自体が不可能となるためである。
【0036】
また、可搬PCと付属の子機2で、製品単体として盗難を防止できる。
【0037】
また、可搬PCの起動時に1回のみ子機2との通信を行うため、回線や各装置に対する負荷や通信回線料金が少なくてすむという効果が生じる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図3を参照すると、本実施の形態における盗難防止システムは、上記の図1に示された第1の実施の形態における子機2の構成に加え、可搬PC位置記憶部24と可搬PC位置表示部25を有する点で異なる。
【0040】
可搬PC位置記憶部24は、可搬PC1のシステム起動部11が盗難と判断した際に、対子機通信部14から対親機通信部23に通知される可搬PCの現在位置を記録する機能を有している。
【0041】
可搬PC位置表示部25は、この可搬PC位置記憶部24に記録された位置情報を参照して、子機2の画面上に、盗難された可搬PC1の現在位置を表示する機能を有している。
【0042】
次に、本実施の形態における処理動作のフローを詳細に説明する。
【0043】
ここで、システム起動部11が可搬PC1の現在位置を可搬PC位置記憶部13に取得し、また子機2の現在位置を所有者位置記憶部15に取得し、両者の差分をしきい値記憶部16と比較して盗難かどうかを判断する動作は、上記の第1の実施の形態におけるフローと同一のため、重複する説明は省略する。
【0044】
上記の第1の実施の形態では、盗難と判断した場合、可搬PC1のシステム起動を中止するのみにとどまるが、本実施の形態ではこのような場合、システム起動部11が可搬PC1のシステム起動を中止するとともに、対子機通信部14へ可搬PC1の位置情報を子機側に通知するように指示する。
【0045】
すなわち、対子機通信部14は、可搬PC位置記憶部13を参照し、その位置情報を対親機通信部23へ送信する。
【0046】
対親機通信部23は、受信した位置情報を可搬PC位置記憶部24に記録し、可搬PC位置表示部25に、盗難した可搬PC1の位置表示を指示する。
【0047】
可搬PC位置表示部25は、可搬PC位置記憶部24を参照して、子機2の画面に表示された地図上に盗難した可搬PC1の位置を表示する。
【0048】
本実施の形態によれば、可搬PC1が盗難にあった場合、システム起動を中止することにより可搬PC内に記録された情報が外部に漏洩することを防止できる効果に加え、盗難にあった可搬PC1の現在位置を子機2に表示された地図上で確認し、所在位置を追跡できるという新たな効果をもたらすことができる。
【0049】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。例えば、上記の実施の形態における可搬PC1、子機2およびGPS衛星3の機能を実現するためのプログラムを各装置に読込ませて実行することにより各装置の機能を実現する処理を行ってもよい。さらに、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であるCD−ROMまたは光磁気ディスクなどを介して、または伝送媒体であるインターネット、電話回線などを介して伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0050】
上述する各実施の形態は、可搬PC1、子機2およびGPS衛星3が別個に接続されているシステム構成について説明したが、各機能が1つのコンピュータシステムとして実現されている構成や機能毎に複数の装置などが追加された構成にも適用可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態における盗難防止システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態における盗難防止システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 可搬PC
2 子機
3 GPS衛星
11 システム起動部
12 親機GPS通信部
13 可搬PC位置記憶部
14 対子機通信部
15 所有者位置記憶部
16 しきい値記憶部
21 子機GPS通信部
22 所有者位置記憶部
23 対親機通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して格納する位置記憶部と、
前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせる対移動体通信端末通信手段と、
前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末から受信した前記移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止するシステム起動手段とを備えることを特徴とする可搬装置。
【請求項2】
可搬装置に、位置記憶部に格納されている、電源投入時、GPS通信手段でGPS衛星より受信した自機の位置情報と、移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止させるべく、
前記可搬装置からの問い合わせに対し、GPS衛星から得た自機の位置情報を前記可搬装置に送信することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項3】
受信した前記可搬装置の位置情報を地図情報とともに表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項2記載の移動体通信端末。
【請求項4】
GPS機能を備える移動体通信端末と、GPS機能を備える可搬装置とを含む盗難防止システムであって、
前記可搬装置は、電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して格納する位置記憶部と、
前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせる対移動体通信端末通信手段と、
前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止するシステム起動手段とを備え、
前記移動体通信端末は上記問い合わせに対し、GPS衛星から得た自機の位置情報を前記可搬装置に送信することを特徴とする盗難防止システム。
【請求項5】
前記移動体通信端末は、受信した前記可搬装置の位置情報を地図情報とともに表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項4記載の盗難防止システム。
【請求項6】
GPS機能を備える移動体通信端末と、GPS機能を備える可搬装置とを利用した盗難防止方法であって、
前記可搬装置が、電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して位置記憶部に格納するステップと、
対移動体通信端末通信手段で前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせるステップとを有し、
前記移動体通信端末が、上記問い合わせに対し、GPS衛星から得た自機の位置情報を前記可搬装置に送信するステップを有し、
前記可搬装置が、前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末の位置情報とを比較するステップと、
あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システム起動手段でシステムの起動を中止するステップとをさらに有することを特徴とする盗難防止方法。
【請求項7】
前記移動体通信端末が、表示手段で受信した前記可搬装置の位置情報を地図情報とともに表示するステップをさらに有することを特徴とする請求項6記載の盗難防止方法。
【請求項8】
コンピュータに、
電源投入時、GPS通信手段で自機の位置情報をGPS衛星より受信して位置記憶部に格納する機能と、
前記移動体通信端末の位置情報を前記移動体通信端末に問い合わせる機能と、
前記位置記憶部に格納されている位置情報と、前記移動体通信端末から受信した前記移動体通信端末の位置情報とを比較し、あらかじめ設定したしきい値を超えた差分がある場合に盗難と判断し、システムの起動を中止する機能とを実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−102572(P2007−102572A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292769(P2005−292769)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000213301)中部日本電気ソフトウェア株式会社 (56)
【Fターム(参考)】