説明

可溶化剤放出が同調する薬学的組成物

可溶化剤が同調放出する薬学的組成物および薬学的組成物に関連する種々の方法を開示および記載する。より詳細には、薬物の水溶解度を、可溶化剤の同調放出によって増大させる。本出願は、薬学的組成物を提供し、この薬学的組成物は、治療有効量の薬物と、可溶化剤と、放出調整物と、を含み、その薬物およびその可溶化剤の放出が同調している。本出願はまた、治療有効量の薬物と、可溶化剤と、放出調整物と、を含む、経口投薬形態も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載の発明は、一般に、水溶解度が増大し、可溶化剤の同調放出が増大した薬学的組成物に関する。より詳細には、例えば、可溶化剤の同調放出によって薬物の水溶解度が増大したシロスタゾールおよびカルベジロールなどの薬物の薬学的組成物を本明細書中に開示する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
多数の治療薬の溶解度は、これらの薬物の患者への有効な投与における重要な問題である。例えば、種々の心血管疾患の治療および予防に使用する薬剤、シロスタゾールは、即時放出錠剤投薬形態として処方した場合、経口投与後に吸収されるが、絶対的バイオアベイラビリティは最小である。さらに、シロスタゾールの即時放出錠剤投薬形態の吸収は、用量に比例せず、吸収を限定する溶解度(solubility limited absortion)を意味する。シロスタゾールの即時放出錠剤投薬系形態の吸収も、吸収を限定する溶解度の別の指標である食品消費に重大な影響を受ける。高脂肪食は、シロスタゾールの即時放出錠剤投薬形態の吸収を、Cmaxで90%およびAUCで約25%増加させる。食品消費に起因するシロスタゾール吸収の有意な増加により、シロスタゾールの即時放出錠剤投薬形態を食品消費後に投与した場合、頭痛および動悸などの有害な副作用を起こす。したがって、シロスタゾールの即時放出錠剤投薬形態を、1日2回、朝食の少なくとも30分前または少なくとも2時間後に摂取しなければならない。
【0003】
吸収を限定する溶解度を有する従来の薬物の制御放出投薬形態は無効である。薬物溶解度が有意且つ継続して改善されなければ、溶解性の低い薬物の従来の制御放出では吸収が改善されないため、所望の期間にわたり全身薬物濃度が不適切になる。
【0004】
したがって、薬物、特に、シロスタゾールなどの吸収を限定する溶解度を有する薬剤の溶解度を増加させるための薬学的組成物および経口投薬形態が必要である。好ましくは、薬学的組成物および経口投薬形態を、改変された放出投薬形態で投与することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明は、水溶解度が増大し、可溶化剤の同調放出が増大した薬学的組成物の提供によってこれらおよび他の要求を満たす。より詳細には、可溶化剤の同調放出によって薬物の水溶解度が増大した薬学的組成物を提供する。
【0006】
1つの局面では、薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、薬物および可溶化剤の放出が同調している、治療有効量の薬物、可溶化剤、および放出調整物を含む。可溶化剤は、同調して放出される場合に薬物の水溶解度を有意に増加させる。薬物および可溶化剤の放出の同調により、放出を改変することができ、且つバイオアベイラビリティを妥協することなく放出特性を改変することができる。さらに、薬物および可溶化剤の同調により、治療効果または投与頻度の減少に必要な用量を減少させることができる。薬物および可溶化剤放出の同調により、副作用も軽減させることができる。薬物および可溶化剤の同調により、許容可能な薬物動態学プロフィールおよび治療プロフィールを維持しながら食品と共にまたは食品を伴わずに投与することができる。さらに、薬物の投与頻度および副作用の減少により、患者の服薬遵守が改善される。
【0007】
別の局面では、経口投薬形態を提供する。経口投薬形態は、薬物および可溶化剤の放出が同調している、治療有効量の薬物、可溶化剤、および放出調整物を含む。錠剤、カプセル、粉末などの多くの経口投薬形態が特に意図される。当業者に容易に認識されるように、多数の他の投薬形態を、本発明の実施で使用することもできる。
【0008】
さらに別の局面では、固体経口投薬形態が提供される。経口投薬形態は、薬物および可溶化剤の放出が同調している、治療有効量の薬物、可溶化剤、および放出調整物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(詳細な説明)
(定義)
単数形「a」、「an」、および「the」には、他で明確に記載されない限り、複数形が含まれる。したがって、例えば、用語「可溶化剤(the solubilizer)」および「放出調整剤(the release modulator)」には、1つまたは複数の特定の可溶化剤および放出調整剤が含まれ、「添加剤(an additive)」には、1つまたは複数のこのような添加剤が含まれ、「可塑剤(the plasticizing agent)」には、1つまたは複数のこのような薬剤が含まれる。
【0010】
「AUC」は、0から無限大まで予想された血漿薬物濃度対時間曲線下の領域である。
【0011】
「Cmax」は、血管外用量の薬物の投与後の血漿中に認められる最も高い薬物濃度である。
【0012】
「長期間」は、即時放出に必要な時間を超える時間をいう。放出を、延長するか、遅延するか、または脈動させる(pulsatile)ことができる。
【0013】
「薬物」、「薬学的に活性な薬剤」、「生物活性剤」、「治療薬」、および「活性成分」を交換可能に使用することができ、これらは、身体に測定可能で有利な生理学的効果(有効量を投与した場合の疾病または疾患の治療における治療的効果など)を有する物質、化合物、または複合体をいう。さらに、これらの用語を使用する場合または特定の活性成分を名称またはカテゴリーによって特に識別する場合、活性成分自体ならびにその薬学的に許容可能な誘導体、薬理学的に活性な誘導体、またはこれらに有意に関連する化合物(塩、薬学的に許容可能な塩、N−オキシド、プロドラッグ、活性代謝産物、異性体、フラグメント、アナログ、溶媒和物、水和物、放射性同位体などが含まれるが、これらに限定されない)が含まれると理解すべきである。
【0014】
「有効量」および「十分な量」を交換可能に使用することができ、これらは、意図する意向または目的を達成するのに十分な物質の量をいう。
【0015】
「即時放出」は、薬物処方物によって有意に改変されない速度での薬物の放出をいう。用語「即時放出」または「瞬間放出(instant release)」は当業者に周知である。
【0016】
「患者」には、ヒトが含まれる。用語「ヒト」および「患者」を本明細書中で交換可能に使用する。
【0017】
「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物の所望の薬理学的活性を有する化合物の塩をいう。このような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を使用して形成されたか、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、およびムコン酸などの有機酸を使用して形成された酸付加塩、または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン(アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオンなど)に置換される場合に形成される塩もしくはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびN−メチルグルタミンなどの有機塩基との錯体(coordinates)が含まれる。
【0018】
「予防すること(preventing)」または「予防(prevention)」は、疾病または疾患の獲得リスクの軽減(すなわち、疾患に曝されているか素因があるが、依然として疾患を経験していないか症状を示していない患者に疾患の少なくとも1つの臨床症状を起こさせないこと)をいう。
【0019】
「プロドラッグ」は、活性な薬物を放出するために体内で変換される必要がある薬物分子の誘導体をいう。プロドラッグは、頻繁に、親薬物に変換されるまで薬理学的に不活性であるが、必ずしもそうではない。ヒドロキシル含有薬を、例えば、in vivoで水和してヒドロキシル化合物を得ることができるスルホン酸プロドラッグ、エステルプロドラッグ、またはカルボン酸プロドラッグに変換することができる。アミノ含有薬を、例えば、アミノ化合物を、in vivoで水和してアミノ化合物を得ることができる炭酸プロドラッグ、アミドプロドラッグ、エナミンプロドラッグ、イミンプロドラッグ、N−ホスホニルプロドラッグ、N−ホスホリルプロドラッグ、またはN−スルフェニルプロドラッグに変換することができる。カルボン酸薬を、in vivoで水和してカルボン酸化合物を得ることができるエステル(シリルエステルおよびチオエステルが含まれる)プロドラッグ、アミドプロドラッグ、またはヒドラジンプロドラッグに変換することができる。上記列挙の官能基と異なる官能基を有する薬物のプロドラッグは、当業者に周知である。
【0020】
「可溶化剤(solubilizer)」は、薬物の水溶解度を増大させる任意の物質をいう。
【0021】
「同調放出(synchronized release)」は、薬物および可溶化剤の同時放出をいう。放出を、延長するか、遅延するか、または脈動させることができる。
【0022】
任意の疾病または疾患の「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、1つの実施形態では、疾病または疾患の改善(すなわち、疾患発症または少なくとも1つのその臨床症状の停止または軽減)をいう。別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、患者が認識することができない少なくとも1つの物理的パラメータの改善をいう。さらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、疾病または疾患の物理的阻害(例えば、目に見える症状の安定化)、生理学的阻害(例えば、物理的パラメータの安定化)、またはその両方をいう。さらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、疾病または疾患の発症の遅延をいう。
【0023】
「治療有効量」は、疾患治療のために患者に投与する場合、このような疾患を治療するのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患、およびその重症度、ならびに治療を受ける患者の年齢、体重などに依存して変化する。
【0024】
ここで本発明の好ましい実施形態を詳述する。本発明は好ましい実施形態と併せて記載されているが、これらの好ましい実施形態に本発明を限定することを意図しないと理解すべきである。それとは逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれ得る場合、変更形態、修正形態、および等価物を対象とすることを意図する。
【0025】
(薬学的組成物)
本発明は、薬物および可溶化剤の同調放出による薬物の溶解度を増加させるための薬学的組成物および経口投薬形態を提供する。当業者は、他の物理化学または薬物動態学/薬力学上の問題を薬物および可溶化剤の同調放出によって緩和することもできることを認識する。この文脈では、可溶化剤および薬物の同調放出を、多数の特定の放出プロフィールおよび効果(放出の遅延、放出の延長、およびパルス放出(pulsatile release)が含まれるが、これらに限定されない)と共に使用することができる。さらに、当業者によって認識されるように、経口投薬形態を使用する場合、このような放出プロフィールにより、対応する吸収プロフィールを生じ得る。
【0026】
1つの実施形態では、本発明は、薬物および可溶化剤の放出が同調している、治療有効量の薬物、可溶化剤、および放出調整物を含む薬学的組成物を提供する。
【0027】
1つの実施形態では、薬物の水溶解度は、約100μg/mL未満である。別の実施形態では、薬物の水溶解度は、約50μg/mL未満である。さらに別の実施形態では、薬物の水溶解度は、約25μg/mL未満である。好ましくは、可溶化剤が薬物の本来の水溶解度と比較して薬物の水溶解度を少なくとも約25%増加させる。
【0028】
1つの実施形態では、放出は長期間にわたる。1つの実施形態では、長期間は約1時間を超える。別の実施形態では、長期間は約2時間を超える。さらに別の実施形態では、長期間は約2時間と約24時間との間である。
【0029】
いくつかの場合、同調放出を、薬物および可溶化剤の溶解または放出のアッセイおよび決定によって評価することができる。薬物および可溶化剤が同時に放出された場合(すなわち、薬物および可溶化剤の放出量が時間関数として相関する)、同調放出を示す。好ましくは、薬物および可溶化剤の相関係数は、約0.80を超え、より好ましくは約0.90を超え、最も好ましくは約0.95を超える。
【0030】
1つの実施形態では、同調放出を、投薬形態を非可溶化媒体(non−solubilizing dissolution media)(例えば、人工胃液、人工腸液、または水)に曝露する溶解試験における薬物放出の測定によって評価することができる。長期間にわたり放出され、且つ溶解媒体中の薬物の認められた水溶解度が薬物の本来の溶解度と比較して25%を超えて長期間増大または上昇する場合、薬物および可溶化剤の放出は同調している。別の実施形態では、同調放出を、in vivo血中レベルプロフィールによって評価することができる。同調可溶化剤放出投薬形態の用量正規化Cmaxを、同様またはより高い用量正規化AUCを得ながら、非同調可溶化剤放出コントロールと比較して減少させることができる。
【0031】
薬物および可溶化剤の同調放出の恩恵を受ける薬物の例には、アセブトロール、アルファキサロン、アムロジピン、アミオダロン、アンプレナビル、アナストラゾール、アテノロール、アトバクオン、アトルバスタチン、アバシミブ(avasimibe)、アザチオプリン、ベクロメタゾン、ベタキソロール、ビカルタミド、ビソプロロール、ボセンタン、ブシンドロール、ブデソニド、ブプロプリオン(buproprion)、カルベジロール、カンデサルタン、カルバメゼピン(carbamezepine)、カルバドパ(carbadopa)、セレコキシブ、セチリジン、ケノデオキシコール酸、シクレソニド、シロスタゾール、シポフロキサシン(cipofloxacin)、シタロプラム、クロベタゾール、クロピドグレル、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、デラビリジン(delaviridine)、デソゲストレル、ジヒドロエルゴタミン、ジアナボル(dianabol)、ジレバロール、ジピリダモール、ドセタキセル、ドネゼピル(donezepil)、デスロラタジン、デュタステライド、エフィバレンツ(efivarenz)、エンロピタント(enlopitant)、エンタカポン、エプレレノン、エプロサルタン、エルゴタミン、エスモロール、エトプロロール(etoprolol)、エトリコキシブ、エベロリムス(everolimus)、フェノフィベート(fenofibate)、フェノキソフェナジン、フルフェナジン、フロバトリプタン、グラニセトロン、ヒドロコドン、イスラジピン、イタセトロン、ラベタロール、ラモトリジン、ランソプラゾール、レルカニジピン、レトロゾール、レバドパ(levadopa)、レボフロキサシン、ロラタジン、ロバスタチン、メフロキン(mefloquin)、メタキソロン(metaxolone)、メトラゾン、ミフェプリストーン、ミルトラザピン、モダフィニル、モルヒネ、モメタゾン、ナダロール(nadalol)、ネファゾドン、ネビブロール(nevibulol)、ニフェジピン、ネフィナビル(nefinavir)、ニモジピン、ニソルジピン、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルテストステロン、オランザピン、オンダセトロン(ondasetron)、オキサカルベジン(oxacarbezine)、オキサプロジン、オクスプレノロール、パロキセチン、ペルゴリド、フェナゾピリジン、ピオグリタゾン、ピメクロリムス、ピタバスタチン、プレグナンジオール、プレグナノロン、プレグネノロン、アロプレグナノロン、エピアロプレグナノロン、プロゲステロン、プロパフェノン、プロパノロール(propanolol)、ラミプリル、ラノラジン、リスペリドン、リタノビル(ritanovir)、リバスチグミン、ロフェコンキシブ(rofeconxib)、ロピノロール(ropinorole)、ロシグリタゾン、ロスバスタチン、サルメテロール、サキナビル、セルトラリン、シルデナフィル、ソタロール、シンバスタチン、スパルフロキサシン、スピロノラクトン、スタブジン、スマトリプタン、タダラフィル、テガセロド(tegaserod)、タムスロシン、テルビナフィン、テストステロンおよびテストステロンエステル、メチルテストステロン、サリドアミド(thalidoamide)、チアギャビン、チボロン、チザニジン、トルカポン、トピラメート、トランドラプリル、トラマドール、バルデコキシブ、バルデナフィル、バルサルタン、バルルビシン、ウルソデオキシコール酸、ボリコナゾール、ザフィルルーカスト、ザレペロン(zalepelon)、ジロートン、ジプラシドン、ならびにゾルピデムが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい薬物は、シロスタゾール、カルベジロール、ザフィルルーカスト、アミオダロン、フェノフィブラート、ドロネデロン(dronederone)、リスペルドン(risperdone)、ジプラシドン、シミバスタチン、ピオグリタゾン、またはアトバスチン(atorvastin)である。
【0032】
薬物および可溶化剤の同調放出の恩恵を受ける1つの治療薬型には、安全、便利さ、部位特異的吸収、または安定性に必要な改変された放出プロフィールを必要とする難水溶性またはpH依存水溶性の薬物が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
例えば、胃のpHで溶解度が高く、且つ腸のpHで溶解度が低い弱塩基性薬物(約9.0未満のpK)は、pHが低く、且つ薬物が主に水溶性イオン化形態である場合、近位胃腸管で急速に吸収され得るが、pHが高く、且つ薬物が溶解性の低い遊離塩基として存在する場合、遠位胃腸管であまりまたは全く吸収されない。このような溶解性プロフィールは、急速な初期吸収に起因する望ましくない副作用を示す治療活性化合物に特に望ましいかもしれない。
【0034】
血圧降下薬(例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ブシンドロール、カルベジロール、ジレバロール、ラベタロール、エスモロール、エトプロロール、ナダロール、ネビブロール、オクスプレノロール、プロパノロール、ソタロール)は、急速な初期吸収に起因する急性低血圧副作用(めまい、立ちくらみ、および失神)に関連し得る。したがって、難水溶性または塩基性血圧降下薬は、薬物および可溶化剤の同調放出の恩恵を得ることができる上記列挙の薬物などの薬物である。
【0035】
カルベジロール((1−(9H−カルバゾール−4−イルオキシ)−3−[[2−(2−メトキシフェノキシ)エチル]アミノ]−2−プロパノール)は、この製剤クラスの別の例である。カルベジロールは、α遮断活性を有する非選択的βアドレナリン作動性遮断薬であり、種々の病態(高血圧および鬱血性心不全などの心血管病態が含まれる)の治療に適応される。カルベジロールは、pKが約7.6の弱塩基性であり、水溶性が極端に低い(すなわち、約0.001mg/mL)。カルベジロールは、水溶性イオン化形態の形成に起因して低pHで水溶解度が非常に高いが、比較的不溶性の塩酸付加塩の形成に起因して溶解度は約1mg/mL未満に制限される。
【0036】
溶解度がpHに依存する性質のために、経口投与したカルベジロールの薬学的組成物は、低pHに起因して胃内で有意にカルベジロールが溶解および放出し、それにより、血漿濃度および低血圧性の副作用が上昇するか急激に増加し得る。処方物が胃腸管を通して移動してpHが上昇するにつれて、カルベジロールの溶解度および放出はごくわずかになる。結果として、胃内での初期放出を遅延させて、低血圧性の副作用を軽減するためにカルベジロールを食品と共に投与する必要がある。これらの特徴により、カルベジロールが同調可溶化剤放出組成物における処方に特に十分に適切になる。
【0037】
薬物および可溶化剤の同調放出の恩恵を受け得る別の型の治療薬は、長期の血中レベル上昇に必要な血漿半減期が短い難水溶性で吸収されにくい化合物である。この薬剤型の例は、テストステロンである。
【0038】
同調可溶化剤放出の恩恵を受け得るさらに他の型の治療薬には、抗不整脈薬(アミオダロン、ドロネデロン、プロパフェノン)、抗精神病薬(ジプラシドン、リスペリドンなど)、および抗パーキンソン病薬(カビドパ(cabidopa)、レボドパ、またはペルゴリドのようなドーパミンアゴニストなど)が含まれる。
【0039】
シロスタゾール(周知のPDE IIIインヒビター)はまた、薬物および可溶化剤の同調放出の恩恵を受け得る。シロスタゾールを使用して、心血管病態(脳虚血、再狭窄、徐脈、末梢動脈疾患、重症虚血肢、間欠性跛行症が含まれる)が治療または予防されている。シロスタゾールは、異常脂質血症患者、特に糖尿病患者の脂質プロフィールを好ましく変化させる。シロスタゾールおよび可溶化剤の同調放出は、薬物の投与頻度を1日2回から1日1回に減少させることができ、それにより、患者の服薬遵守が高まり、頭痛および動悸などの副作用も減少し得る。さらに、シロスタゾールおよび可溶化剤の同調放出により、食品消費の有無にかかわらず受け入れられない副作用を伴わずにシロスタゾールを投与することが可能である。
【0040】
上記治療薬は市販されているか、当業者に公知の手順を使用して合成することができる。
【0041】
本発明の薬学的組成物は、可溶化剤を含む。好ましくは、投薬形態を生理学的に現実的な体積の水溶液(約20mLと約500mLとの間)に溶解した場合、可溶化剤は、薬物の水溶解度を、薬物の本来の(可溶化剤無し)水溶解度より少なくとも25%増加させる。1つの実施形態では、可溶化剤は、薬物の水溶解度を50%またはそれ以上増加させる。別の実施形態では、可溶化剤は、水溶解度を100%またはそれ以上増加させる。以下の可溶化剤の混合物が本発明の範囲内であると理解すべきである。
【0042】
薬物の水溶解度が増加する限り、種々の適切な可溶化剤を使用することができる。好ましくは、可溶化剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー、シクロデキストリン(例えば、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン)、シクロデキストリン誘導体(例えば、スルホブチルエーテルまたはヒドロキシプロピルエーテル)、胆汁酸、胆汁酸誘導体、ステロール誘導体、アルコール(特に、脂肪アルコールおよび脂肪アルコール誘導体)、酸(特に、脂肪酸および脂肪酸誘導体)、およびトコール誘導体である。より好ましくは、可溶化剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、脂肪酸誘導体、およびトコール誘導体である。
【0043】
好ましい脂肪酸およびアルコールは、ステアリルアルコール、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸などのC〜C22脂肪酸およびアルコールならびにこれらの対応する薬学的に許容可能な塩である。好ましい脂肪酸および脂肪アルコール誘導体には、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アミドエステル(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、およびミリストイルカルニチン)、ヒドロキシ酸とのエステル(例えば、ステアロイル乳酸ナトリウム);糖エステル(例えば、乳酸ラウリル、モノカプリル酸グルコース、モノカプリル酸ジグルコース、ラウリン酸スクロース、モノラウリン酸ソルビタン(Arlacel(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビタン(Span−40)、モノオレイン酸ソルビタン(Span−80)、モノステアリン酸ソルビタン、およびトリステアリン酸ソルビタン)、低級アルコール脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル(Crodamol EO)、ミリスチン酸イソプロピル(Crodamol IPM)、およびパルミチン酸イソプロピル(Crodamol IPP))、プロピレングリコールとのエステル(例えば、モノラウリン酸プロピレングリコール(Lauroglycol FCC)、リシノール酸プロピレングリコール(Propymuls)、モノオレイン酸プロピレングリコール(Myverol〜P−06)、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capryol(登録商標)90)、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(Captex(登録商標)200)、およびジオクタン酸プロピレングリコール(Captex 800))、グリセロールとのエステル(例えば、モノオレイン酸グリセロール(Peceol)、リシノール酸グリセロール、ラウリン酸グリセロール、ジラウリン酸グリセロール(Capmul(登録商標)GDL)、ジオレイン酸グリセロール(Capmul GDO)、モノリノレン酸グリセロール(Maisine(登録商標))、モノ/ジオレイン酸グリセロール(Capmul GMO−K)、カプリル酸/カプリン酸グリセロール(Capmul MCM)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(Imwitor(登録商標)988)、モノおよびジアセチル化モノグリセリド(Myvacet(登録商標)9−45))、トリグリセリド(例えば、トウモロコシ油、アーモンド油、ダイズ油、ココナッツ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、硬化ココナッツ油、Pureco 100、Hydrokote AP5、Captex 300、350、Miglyol 812、Miglyol 818、およびGelucire 33/01))、プロピレングリコールエステルとグリセロールエステルとの混合物(例えば、プロピレングリコールおよぎグリセロールのオレイン酸エステルの混合物(Arlacel 186)、ポリグリセリド化脂肪酸(オレイン酸ポリグリセリル(Plurol(登録商標)Oleique)、ジオレイン酸ポリグリセリル−2(Nikkol DGDO)、トリオレイン酸ポリグリセリル−10、ラウリン酸ポリグリセリル−10(Nikkol Decaglyn 1−L)、オレイン酸ポリグリセリル−10(Nikkol Decaglyn 1−O)、およびモノ、ジオレイン酸ポリグリセリル−10(Caprol(登録商標)PEG 860)など)が含まれる。
【0044】
他の有用な脂肪酸誘導体には、ポリエトキシル化脂肪酸(例えば、ラウリン酸PEG−8、オレイン酸PEG−8、ステアリン酸PEG−8、オレイン酸PEG−9、ラウリン酸PEG−10、オレイン酸PEG−10、ラウリン酸PEG−12、オレイン酸PEG−12、オレイン酸PEG−15、ラウリン酸PEG−20、およびオレイン酸PEG−20)、PEG−脂肪酸ジエステル(例えば、ジラウリン酸PEG−20、ジオレイン酸PEG−20、ジステアリン酸PEG−20、ジラウリン酸PEG−32、およびジオレイン酸PEG−32)、PEG−脂肪酸モノおよびオールエステル混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル(例えば、アシルオキシステアリン酸PEG化グリセロール12、ラウリル酸PEG−20グリセリル、ラウリル酸PEG−30グリセリル、ラウリル酸PEG−40グリセリル、オレイン酸PEG−20グリセリル、およびオレイン酸PEG−30グリセリル)、ならびにアルコール−オイルエステル交換生成物(例えば、ポリオキシ40ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH40)、ポリオキシ35ヒマシ油(Cremophor ELまたはIncrocas 35)、トリオレイン酸PEG−25(TAGAT(登録商標)TO)、PEG−60トウモロコシグリセリド(Crovol M70)、PEG−60アーモンド油(Crovol A70)、PEG−40パーム核油(Crovol PK70)、PEG−50ヒマシ油(Emalex C−50)、PEG−50硬化ヒマシ油(Emalex HC−50)、PEG−60硬化ヒマシ油(Cremophor RH60)、PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Labrasol(登録商標))、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)、リノレオイルマクロゴグリセリド(Labrafil(登録商標))、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド(Gelucire 50/13)、およびPEG−6カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Softigen(登録商標)767))が含まれる。
【0045】
特に好ましい脂肪酸誘導体は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、グルコースポリエチレングリコール、またはα−ヒドロキシ酸とのエステルである。
【0046】
胆汁酸およびステロール誘導体には、コール酸、ウルソデオキシコレート、ケノデオキシコレート、タウロケノデオキシコレート、タウロウルソデオキシコレート、グリコケノデオキシコレート、グリコウルソデオキシコレート、ステロールおよびステロールエステルもしくはエーテル(PEG−24コレステロールエステル(Solulan(登録商標)C−24)など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
トコール誘導体には、トコール構造(2−メチル2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール)またはトコトリエノール構造(2−メチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエニル)クロマン−6−オール)を有する物質の誘導体が含まれる。特に、一般にトコフェロールおよびその有機酸エステル(酢酸、ニコチン酸、コハク酸、およびポリエチレングリコールコハク酸エステルなど)として公知のモノ、ジ、トリメチル−トコールが含まれる。例えば、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(分子量200〜8000)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸dl−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、およびコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000(Vitamin E−TPGS,Eastman Chemical Co.)が含まれる。本発明の実施のために、混合ラセミ体(例えば、全ラセミ体またはdl−)および純粋な鏡像異性体(例えば、d−、l−、またはRRR−)が適切である。好ましいトコール誘導体には、α−トコフェロールエステルおよびポリエトキシル化α−トコフェロールエステルが含まれる。より特に好ましいトコール誘導体には、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(分子量200〜8000)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、コハク酸dl−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、またはコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000が含まれる。
【0048】
好ましい可溶化剤には、ポリオキシル40ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Labrasol(登録商標))、モノオレイン酸ソルビタン(Span−80)、モノラウリン酸ソルビタン(Span 20)、モノパルミチン酸PEG−20ソルビタン(Tween 40)、モノステアリン酸PEG−20ソルビタン(Tween 60)、モノオレイン酸PEG−20ソルビタン(polysorbate 80またはTween 80)、モノ/ジオレイン酸グリセリル(Capmul GMO−K)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(Capmul MCM)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(Imwitor(登録商標)988)、モノおよびジアセチル化モノグリセリド(Myvacet(登録商標)9−45)、リノレオイルモノグリセリド(Labrafil 2125CS)、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(分子量200〜8000)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸d−α−アトコフェロールポリエチレングリコール1000、およびコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000が含まれる。
【0049】
特に好ましい可溶化剤には、ポリオキシル40ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸PEG−20ソルビタン(polysorbate 80またはTween 80)、リノレオイルモノグリセリド(Labrafil 2125CS)、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)、およびコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000が含まれる。
【0050】
上記可溶化剤は市販されているか、当業者に公知の手順を使用して合成することができる。
【0051】
本発明の薬学的組成物は、長期間にわたって薬物および可溶化剤の放出を同調させる放出調整物も含む。放出調整物の混合物が本発明の範囲内であると理解すべきである。
【0052】
種々の放出調整物が当業者に公知である。適切な放出調整物の例には、浸透圧ポンプなどのデバイス(例えば、Langer,supra;Sefton,1987,CRC Crit.Ref:Biomed.Eng.14:201;Saudek et al.,N.Engl.J.Med.1989,321,574を参照のこと)、ゆっくり溶解する塩または複合体(例えば、タンニン酸)または加水分解エステル、侵食性マトリックス(erodible matrix)(例えば、アルブミン、コラーゲン、ポリ(L−グルタミン酸−コ−γ−エチル−L−グルタミン酸)などのポリアミド、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびそのコポリマー、ポリ(オルトエステル)のようなポリエステル、およびポリアンヒドライド)、イオン交換樹脂(ジビニルベンゼン−ポリスチレンスルホン酸コポリマーなど)、ワックス(微晶質ワックスなど)、不溶性キャリア(硫酸カルシウムなど)、高分子マトリックス、高分子コーティング、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール誘導体(乳化ワックスのような脂肪アルコール誘導ワックスまたはセチルエステルワックス、カルナウバ蝋、黄蝋、および白蝋のような混合脂肪酸および脂肪アルコール誘導体など)、ならびにトコール誘導体が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、放出調整物は、高分子マトリックス、高分子コーティング、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪アルコール誘導体、脂肪酸誘導体、またはトコール誘導体である。
【0053】
高分子材料の具体例には、高分子量ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCS)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、酢酸/酪酸セルロース、酢酸/トリメリト酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸/フタル酸セルロース)、シェラック、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアセテートフタレート(PVAP)、アクリルポリマー(例えば、ポリアクリル酸(Carbomer))、メタクリレートの中性ポリマー(例えば、Eudragit NE)、官能基としてトリメチルアミノエチルメタクリレートを有するメタクリレートコポリマー(例えば、Eudragit RS、RS 100、RL、RL 100)、メタクリル酸とメタクリレートとのアニオン性ポリマー(例えば、Eudragit L 100、L 100−55、S 100)、ポリビニルピロリドンコポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンビニルアセテートコポリマー(Kollidon VA 64、Kollidon SR))、ガラクトース(gelactose)マンネート、高分子量多糖類ゴムおよび樹脂(例えば、アカシア、キサンタンガム、トラガカント、シェラックなど)、グリクロナンポリマー(例えば、アルギン酸および薬学的に利用可能な塩)が含まれるが、これらに限定されない。好ましいポリマー放出調整物は、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンコポリマー、アルリル酸ポリマー、シェラック、ポリビニルアセテートフタレート、および高分子量多糖類ゴムである。
【0054】
放出調整物として有用な脂肪酸または脂肪アルコールおよび誘導体の具体例には、ステアリルアルコール、ステアリン酸、硬化植物油、ジベヘン酸グリセロール(Compritol(登録商標)888)、ジステアリン酸グリセロール(Precirol(登録商標))、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド(Gelucire 50/13)、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアリン酸、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ジパルミチン酸スクロースおよびワックス(例えば、セチルエステルワックス、非イオン性乳化ワックス、黄蝋、白蝋、およびカルナウバ蝋のような混合脂肪アルコールおよび脂肪酸誘導体ワックス)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい脂肪酸、脂肪アルコール、または誘導体には、硬化植物油、ジベヘン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアリン酸、ステアロイルアルコール、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ジパルミチン酸スクロース、カルナウバ蝋、黄蝋、白蝋、セチルエステルワックスが含まれる。
【0055】
放出調整物として有用なトコール誘導体の具体例には、一般にトコフェロールとして公知のモノ、ジ、トリメチルトコール、およびその有機酸エステル(例えば、酢酸、ニシタノエート(nicitanoate)、コハク酸、コハク酸ポリエチレングリコールエステルなど)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(分子量200〜8000)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400は、放出調整物として有用な具体的な化合物である。トコール誘導体の混合ラセミ体(例えば、全ラセミ体またはdl−)および純粋な鏡像異性体(例えば、d−、l−、またはRRR−)は全て、本発明の実施において有用である。
【0056】
多数の放出調整物は、薬学的組成物または水分散液のいずれかにおける薬物の可溶化剤(前の節で定義した可溶化剤としても作用する)としてさらに役立ち得る。同様に、多数の可溶化剤は、薬学的組成物または水分散液のいずれかにおける薬物の放出調整物としてさらに役立ち得る。
【0057】
上記放出調整物は市販されているか、当業者に公知の手順を使用して合成することができる。
【0058】
上記で引用した可溶化剤および離型剤に加えて、薬学的組成物は、任意選択的に1つまたは複数の添加剤を含み得る。添加剤の非限定的な具体例を以下に記載する。
【0059】
適切な添加剤には、凝集、エアサスペンションの冷却、エアサスペンションの乾燥、ボーリング、コアセルベーション、粉砕、圧縮、ペレット化、低温ペレット化(cryopelletization)、押し出し、造粒、均質化、包接錯体形成、凍結乾燥(Iyophilization)、ナノカプセル化、融解、混合、成形、パンコーティング、溶媒の脱水、超音波処理、球状化(spheronization)、噴霧冷却、噴霧凍結、噴霧乾燥、または当該分野で公知の他のプロセスなどの処理工程を容易にするために使用される添加剤が含まれる。添加剤を、予めコーティングするかカプセル化することもできる。適切なコーティングは当該分野で周知である。
【0060】
本発明の薬学的組成物は、薬物の水溶解度を増加させる可溶化剤は除外して、任意選択的に、キャリア中の有効成分または他の組成物の成分の溶解度を増加させるための1つまたは複数の溶媒(すなわち、添加剤)を含み得る。本発明の組成物での使用に適切な溶媒には、酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸など)、アルコールおよびポリオール(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体など)、平均分子量が200〜約6000のポリエチレングリコールのエーテル(例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール、商品名テトラグリコールでBASFから市販されている)またはメトキシPEG(UnionCarbide))、アミド(例えば、2−ピロリドン、2−ピペリドン、カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、ポリビニルピロリドン)、エステル(例えば、プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、モノ酢酸プロピレングリコール、ジ酢酸プロピレングリコール、カプロラクトンおよびその異性体、バレロラクトンおよびその異性体、ブチロラクトンおよびその異性体など)、ならびに当該分野で公知の他の溶媒(ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI(ICI))、N−メチルピロリドン(Pharmasolve(ISP))、モノオクタノイン、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名TranscutolでGattefosseから市販されている)など)が含まれるが、これらに限定されない。溶媒の混合物は、本発明の範囲内である。これらの化合物を標準的な業者から容易に利用することができるか、当業者に公知の手順を使用して合成することができる。
【0061】
好ましい溶媒には、酢酸、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールが含まれる。特に好ましい溶媒には、酢酸、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、エタノール、イソプロパノール、トリアセチン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが含まれる。
【0062】
本発明の組成物中に含めることができる溶媒の量は特に制限されない。勿論、このような組成物を最終的に患者に投与する場合、所与の溶媒の量は、生体許容可能量に制限され、この量は当業者によって容易に決定される。いくつかの環境では、例えば、蒸留または蒸発などの従来の技術を使用して組成物を患者に投与する前に除去される過剰な溶媒と共に有効成分の濃度を最大にするための生体許容量よりもはるかに大量の可溶化剤を含むことが有利であり得る。
【0063】
薬学的組成物中で従来より使用されている他の添加剤を含めることができ、これらの添加剤は当該分野で周知である。このような添加剤には、抗被着剤(抗固着剤、流動促進剤、流動刺激剤(flowpromoter)、潤滑剤)(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒュームド・シリカ(fumed silica)(Carbosil,Aerosil)、微粉末化シリカ(Syloid No.FP244,Grace U.S.A.)、ポリエチレングリコール、界面活性剤、ワックス、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸誘導体、デンプン、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ロイシン、PEG−4000、およびラウリル硫酸マグネシウム)、抗凝固剤(例えば、アセチル化モノグリセリド)、消泡剤(例えば、長鎖アルコールおよびシリコン誘導体)、抗酸化剤(例えば、BHT、BHA、ガーリック酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、トコフェロールなど)、結合剤(接着剤)(すなわち、粒子間結合によって粉末材料に凝集性を付与する薬剤)(例えば、マトリックス結合剤(乾燥デンプン、乾燥糖類)、フィルム結合剤(PVP、デンプンペースト、セルロース、ベントナイト、スクロース))、化学結合剤(例えば、高分子セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、HPC、HPMCなど)、糖蜜、コーンシロップ、水溶性多糖類(例えば、アカシア、トラガカント、グアー、アルギン酸など)、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、寒天、スクロース、デキストロース、非セルロース結合剤(例えば、PVP、PEG、ビニルピロリドンコポリマー、α化デンプン、ソルビトール、グルコースなど))、酸が薬学的に許容可能な酸である緩衝剤(bufferant)(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ハイドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸など)、塩基が薬学的に許容可能な塩基である緩衝剤(例えば、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミンなど)、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ハイドロキノンスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸の薬学的に許容可能な塩、キレート剤(例えば、EDTAおよびEDTA塩)、凝固剤(例えば、アルギン酸)、着色剤または不透明体(opaquant)(例えば、二酸化チタン、食用色素、レーキ、天然植物性着色剤、酸化鉄、ケイ酸塩、硫酸塩、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム)、冷却剤(例えば、ハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、フルオロトリクロロメタン)、ジエチルエーテル、および液体窒素)、不凍剤(例えば、トレハロース(trehelose)、リン酸塩、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、デキストラン、マンニトールなど)、希釈剤または充填剤(例えば、ラクトース、マンニトール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸、噴霧乾燥ラクトース、加水分解デンプン、直接圧縮可能なデンプン、微結晶性セルロース、セルロース誘導体、ソルビトール、スクロース、スクロースベースの材料、硫酸カルシウム、第二リン酸カルシウム)、デキストロース崩壊剤またはスーパー崩壊剤(superdisintegrant)(例えば、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、デンプン誘導体、粘土、ガム、セルロース、セルロース誘導体、アルギン酸塩、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、および微結晶性セルロース)、水素結合剤(例えば、酸化マグネシウム)、香味物質または減感剤(例えば、噴霧乾燥香味物質、エッセンシャルオイル、およびエチルバニリン)、イオン交換樹脂(例えば、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、および第四級アンモニウム化合物)、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル)、アセチル化モノグリセリド、グリセリン、トリアセチン、プロピレングリコール、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、ヒマシ油、ソルビトール、およびジブチルセッケート(dibutyl seccate))、防腐剤(例えば、アスコルビン酸、ホウ酸、ソルビン酸、安息香酸、およびこれらの塩、パラベン、フェノール、ベンジルアルコール、および第四級アンモニウム化合物)、溶媒(例えば、アルコール、ケトン、エステル、塩素化炭化水素、および水)、甘味料(天然甘味料(例えば、マルトース、スクロース、グルコース、ソルビトール、グリセリン、およびデキストリン)および人工甘味料(例えば、アスパルテーム、サッカリン、およびサッカリン塩)が含まれる)、増粘剤(粘度調整剤、増粘剤)(例えば、糖類、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリマー、およびアルギン酸)が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
添加剤は、タンパク質(例えば、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、イガイタンパク質、リポタンパク質)、炭水化物(例えば、アルギン酸塩、カラギーナン、セルロース誘導体、ペクチン、デンプン、キトサン)、ガム(例えば、キサンタンガム、アラビアガム)、鯨蝋、天然または合成ワックス、カルナウバ蝋、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸)、脂肪アルコール、糖類、シェラック(糖類(例えば、ラクトース、スクロース、デキストロース)またはデンプンベースのものなど)、多糖ベースのポリマー(例えば、マルトデキストリンおよびマルトデキストリン誘導体、デキストレート、シクロデキストリン、およびシクロデキストリン誘導体)、セルロースベースのポリマー(例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、酢酸/酪酸セルロース、酢酸セルロース、トリメリト酸塩、カルボキシメチルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、無機物(例えば、第二リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、タルク、およびチタニア)、ポリオール(例えば、マンニトール、キシリトール、およびソルビトールポリエチレングリコールエステル)、およびポリマー(例えば、アルギン酸塩、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ゼラチン、架橋ゼラチン、および寒天−寒天)などの材料であり得る。
【0065】
一般的用途において上記列挙の添加剤には重複が多いが、これは、所用の添加剤がしばしば当業者によって分類が異なるか、一般に任意のいくつかの機能について使用されるか、組成物中でのレベルによって機能が異なり得るためであると認識すべきである。したがって、上記列挙の添加剤は、本発明の組成物中に含めることができる添加剤型の例示として捉えるべきであり、これらに制限されない。当業者は、このような添加剤の量を、記載の特定の性質によって容易に決定することができる。
【0066】
本発明は、このような薬学的組成物および投薬形態の種々の作製方法を含む。本発明は、可溶化剤の同調放出によって溶解度が増大された薬物を提供する方法を提供する。薬学的組成物を、従来の手段(混合、溶解、顆粒化、ドラジェ作製、磨り潰し、乳化、カプセル化、エントラッピング(entrapping)、凍結乾燥プロセス、または当業者に公知の他の方法)によって製造することができる。薬学的組成物を、薬学的に使用することができる調製物中への本明細書中に開示の薬物の処理を容易にする1つまたは複数の薬物、可溶化剤、放出調整物、および/または添加剤を使用した従来の様式で処方することができる。適切な処方物は、選択した投与経路に依存する。
【0067】
本発明の薬学的組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、液体含有カプセル、粉末、徐放性処方物、座剤、乳濁液、エアゾール、スプレー、懸濁液の形態、または使用に適切な任意の形態を取ることができる。1つの実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、カプセルである(Grosswald et al.の米国特許第5,698,155号を参照のこと)。適切な薬学的賦形剤の他の例は、当該分野で記載されている(Remington’s Pharmaceutical Sciences,PHiladelphia College of PHarmacy and Science,19th Edition,1995を参照のこと)。経口送達、特に経口改変放出投与のための好ましい薬学的組成物を処方する。
【0068】
経口送達用薬学的組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、顆粒、粉末、乳濁液、カプセル、シロップ、またはエリキシルの形態を取ることができる。さらに、錠剤形態または丸薬形態の場合、消化管での崩壊および吸収を遅延させ、それにより、長期間にわたって作用が遅延、徐放、または脈動するように組成物をコーティングすることができる。浸透活性駆動化合物(osmoticallyactive driving compound)の周囲の選択的透過膜藻、経口投与される薬学的組成物に適切である。これらの後者のプラットフォームでは、カプセル周囲の環境由来の流動物が化合物の駆動によって吸収され、これが膨張して開孔を通して薬剤または薬剤組成物と交換される。これらの送達プラットフォームにより、即時放出処方物の固定プロフィールと対照的に本質的にゼロ次の送達プロフィールを得ることができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延材料を使用することもできる。
【0069】
局所投与のために、薬物を、当該分野で周知の溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして処方することができる。
【0070】
全身処方物には、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、鞘内、または腹腔内への注射)による投与のためのデザインされた全身処方物および経皮、系粘膜、経口、または肺への投与のためにデザインされた全身処方物が含まれる。全身処方物を、気道粘膜の粘膜毛様体クリアランスを改善するか粘膜粘度を減少させるさらなる活性成分と組み合わせて作製することができる。これらの活性成分には、ナトリウムチャネル遮断薬、抗生物質、N−アセチルシステイン、ホモシステイン、およびリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
1つの実施形態では、薬物を、日常的な手順にしたがって、ヒトへの静脈内投与に適合した薬学的組成物として処方することができる。典型的には、静脈内投与のための薬物は、滅菌等張水性緩衝液を含む水溶液であえる。注射のために、薬物を、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、または生理学的食塩水などの生理学的に適合する緩衝液中に処方することができる。溶液は、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの処方剤(formulatoryagent)を含み得る。静脈内投与のための薬学的組成物には、任意選択的に、注射部位の痛みを緩和するためのリグノカインなどの局所麻酔が含まれ得る。一般に、成分は、例えば、活性成分の量を示したアンプルまたはサシェなどの密封コンテナ中に凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として単位投薬形態で個別または共に提供される。薬物を注入によって投与する場合、例えば、滅菌医薬品グレードの水または生理食塩水を含む輸液ボトルを使用して投薬することができる。薬物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合することができる注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0072】
経粘膜投与のために、浸透すべき障壁に適切な浸透剤を処方で使用する。このような浸透剤は、当該分野で一般に公知である。
【0073】
口腔内投与のために、薬学的組成物は、例えば、従来の様式で処方された錠剤、ロゼンジなどの形態を取ることができる。
【0074】
薬物を、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の座剤の基剤を含む座剤または浣腸剤などの直腸または膣用薬学的組成物に処方することもできる。
【0075】
前記処方物に加えて、薬物を、デポー調製物として処方することもできる。このような長期作用処方物を、移植(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、薬物を、適切な高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容可能な油性乳濁液など)またはイオン交換樹脂を使用するか、やや溶けにくい誘導体として(例えば、やや溶けにくい塩として)処方することができる。
【0076】
(治療のための使用方法)
本明細書中に記載の薬学的組成物を、治療薬を使用して治療することができる疾患を罹患した患者に投与することができる。薬学的組成物を、治療薬によって予防することができる疾患に対する予防手段として患者に投与することもできる。特定の薬学的組成物で使用される治療薬により、薬学的組成物の投与によって治療または予防される疾患が決定される。
【0077】
1つの実施形態では、アミオダロン、ドロネデロン、またはプロパフェノンを含む薬学的組成物を使用して、抗不整脈(antiarrythmia)を治療または予防することができる。別の実施形態では、ジプラシドンまたはリスペリドンを含む薬学的組成物を使用して、精神病を治療または予防することができる。さらに別の実施形態では、ドーパミンアゴニスト(カルビドパ、レビドパなど)を含む薬学的組成物を使用して、パーキンソン病を治療または予防することができる。さらに別の実施形態では、血圧降下薬(例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ブシンドロール、カルベジロール、ジレバロール、ラベタロール、エスモロール、エトプロロール、ナダロール、ネビブロール、オクスプレノロール、プロパノロール、ソタロール)を含む薬学的組成物を使用して、種々の心血管疾患を治療または予防することができる。
【0078】
さらに別の実施形態では、シロスタゾールを含む薬学的組成物を使用して、心血管疾患(脳虚血、再狭窄、徐脈、末梢動脈疾患、間欠性跛行症、重症虚血肢、および異常脂質血症が含まれる)を治療または予防することができる。
【0079】
さらに別の実施形態では、シロスタゾールを含む薬学的組成物を使用して、シロスタゾール組成物の即時放出に関連する頭痛および動悸を引き起こすことなく心血管疾患(脳虚血、再狭窄、徐脈、末梢動脈疾患、間欠性跛行症、重症虚血肢、および異常脂質血症が含まれる)を治療または予防することができる。
【0080】
(投与方法および用量)
本明細書中に記載の薬学的組成物を、ヒト用薬物で有利に使用することができる。上記の5.3節に記載のように、記載の薬学的組成物は、種々の疾病の治療または予防に有用である。
【0081】
上記疾病または疾患を治療または予防するために使用した場合、薬学的組成物を、単独または他の薬剤と組み合わせて投与することができる。薬学的組成物を、単独または他の薬学的に活性な薬剤と組み合わせて投与または適用することもできる。
【0082】
本発明は、治療有効量の本発明の薬学的組成物のこのような治療を必要とする患者への投与による治療方法および予防方法を提供する。患者は、動物であり得るが、より好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0083】
1つまたは複数の薬物を含む本発明の薬学的組成物を、経口投与することが好ましい。本発明の薬学的組成物を、任意の他の都合の良い経路(例えば、注入またはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜など)を介した吸収)によって投与することもできる。投与は、全身投与または局所投与であり得る。本発明の薬学的組成物を投与するために使用することができる種々の送達系が公知である(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなどへのカプセル化)。投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、上皮、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入、局所(特に、耳、鼻、目、または皮膚)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい投与様式は実施者の判断に任せられ、病状に一部依存する。ほとんどの場合、投与によって本発明の薬学的組成物が血流に放出される。
【0084】
特定の実施形態では、1つまたは複数の本発明の薬学的組成物を治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましいかもしれない。例えば、手術中の局所注入、局部適用(例えば、手術後の創傷包帯と組み合わせた)、注射、カテーテル、座剤、インプラント(インプラントは多孔質、非多孔質、またはゼラチン質の材料であり、シラスティック(sialastic)膜などの膜またはファイバーが含まれる)によってこれを行うことができるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、投与は治療部位(または前の部位)への直接注射であり得る。
【0085】
ある実施形態では、1つまたは複数の本発明の薬学的組成物を任意の適切な経路(脳室内、鞘内、および硬膜外への注射が含まれる)によって中枢神経系に導入することが望ましいかも知れない。脳室内注射を、例えば、Ommayaリザーバなどのリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易にすることができる。
【0086】
別の実施形態では、本発明の薬学的組成物を、小胞(特に、リポソーム)中で送達させることができる(Langer,1990,Science,249:1527−1533;Treat et al.,in "Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer," Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989)を参照のこと;一般に、"Liposomes in the therapy of Infectious Disease and Cancer," Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989)を参照のこと)。
【0087】
患者の疾患の治療または予防に有効な薬物の量は、病態の特定の性質に依存し、当該分野で公知の標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、in vitroまたはin vivoアッセイを任意選択的に使用して、至適投薬量範囲の同定を補助することができる。薬物の投与量は、勿論、他にも要因は存在するが、治療を受ける被験体、被験体の体重、苦痛の重症度、投与様式、および主治医の判断に依存する。
【0088】
特定の薬学的組成物中に含まれる薬物、可溶化剤、および放出調整物の量および型は、薬学的組成物の特定の他の成分および特定の望ましい治療効果を考慮して当業者の知識によって変化し得る。
【0089】
しかし、1つの実施形態では、薬物の量は、薬学的組成物の約0.25%w/w〜約80%w/wであり得る。別の実施形態では、薬物の量は、薬学的組成物の約0.5%w/w〜約50%w/wであり得る。さらに別の実施形態では、薬物の量は、薬学的組成物の約0.75%w/w〜約24%w/wであり得る。
【0090】
1つの実施形態では、可溶化剤の使用量は、薬学的組成物の約5%w/w〜約99%w/wであり得る。別の実施形態では、量は、薬学的組成物の約15%w/w〜約95%w/wであり得る。さらに別の実施形態では、量は、薬学的組成物の約30%w/w〜約95%w/wであり得る。さらに別の実施形態では、組成物中の薬物に対する可溶化剤の相対量は、約1:1〜約1:10であり得る。
【0091】
1つの実施形態では、放出調整物の使用量は、薬学的組成物の約1%w/w〜約50%w/wであり得る。別の実施形態では、量は、薬学的組成物の約5%w/w〜約30%w/wであり得る。さらに別の実施形態では、量は、薬学的組成物の約10%w/w〜約20%w/wであり得る。
【0092】
好ましくは、投薬形態を、1日2回、より好ましくは1日1回のみ患者に投与するように適合される。単独または他の薬物と組み合わせて投与することができ、疾患の有効な治療または予防に必要である限り、継続することができる。
【0093】
(併用療法)
ある実施形態では、本発明の薬学的組成物を、少なくとも1つの他の治療薬を使用した併用療法で使用することができる。本発明の薬学的組成物および治療薬は、付加的、より好ましくは相乗的に作用することができる。1つの実施形態では、本発明の薬学的組成物を、別の治療薬と同時に投与する。別の実施形態では、本発明の薬学的組成物を、別の治療薬の投与の前後に投与する。
【実施例】
【0094】
本発明を、本発明の種々の薬学的組成物を詳述した以下の実施例を参照してさらに定義する。材料および方法の両方に対する多数の修正形態を本発明の範囲を逸脱することなく実施することができることが当業者に明らかである。
【0095】
(実施例1)
実施例1は、以下の2つの代表的な可溶化剤を使用したシロスタゾールの水溶解度の増加を例示する:トコール誘導体(コハク酸ビタミンEポリエチレングリコール、NF、またはコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000;ビタミンE TPGS、Eastman Chemical Co.)(実施例1−1)およびポリエトキシル化脂肪酸誘導体(ポリオキシル40硬化ヒマシ油、NF、Cremophor RH40;BASF)(実施例1−2)。可溶化剤の濃度範囲にわたり酵素を含まない人工腸液(USP26、pH6.8)を調製した。過剰なシロスタゾールを添加し、制御された温度(37±0.5℃)での穏やかな混合によって平衡化した。
【0096】
過剰な薬物を含む水溶液を濾過し(孔の公称寸法は0.2μ)、透明な濾過物を希釈し、シロスタゾール濃度についてHPLCによってアッセイした。結果を図1に示す。
【0097】
これらの条件下でのシロスタゾールの固有溶解度は6.5μg/mLであり、試験範囲にわたる可溶化剤の濃度の増加と共に溶解度は直線的に増加した。コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000は可溶化剤であり、その本来の水溶解度を超えるシロスタゾールの溶解度の増加は、0.05%w/vの水性可溶化剤濃度での60%増加から1%w/vの水性可溶化剤濃度での約10倍増加の範囲であった。Cremophor RH40が可溶化剤である場合、シロスタゾールの溶解度の増加は、0.05%w/vの可溶化剤濃度での30%増加から1%w/vの水性可溶化剤濃度での約5倍増加の範囲であった。
【0098】
いくつかのさらなる可溶化剤および可溶化剤の混合物についての溶解度の増大を以下の表に示す。
【0099】
【表1】

*乾燥粉末中に8%w/wでシロスタゾールを含むイソプロパノール溶液由来の噴霧乾燥固体分散物。
【0100】
(実施例2)
実施例2は、本発明にしたがって調製した投薬形態からの可溶化剤およびシロスタゾールの同調放出を例示する。投薬形態を、可溶化剤(すなわち、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000(ビタミンE TPGS、Eastman Chemical Company))、放出調整物(すなわち、コハク酸d−アトコフェロール(Speckum Chemical Co.))、および添加剤(すなわち、ポリエチレングリコール8000(Speckum Chemical Co.))を使用して調製した。調製した投薬形態の組成を、以下にまとめる。
【0101】
【表2】

薬物を除く全ての成分を融解し、その後薬物を添加し、混合物を、高剪断ローター固定子ホモジナイザーを使用して短時間ホモジナイズした。融解混合物を、硬ゼラチンカプセルに充填し、非制御の室温(約25℃)で凝固させた。得られたカプセルを、0.275%w/wドデシル硫酸ナトリウムを含み、且つ酵素を含まない1,000mLの人工胃液(USP26)からなる溶解溶媒(dissolution medium)を使用した100rpmのUSP装置Iで試験した。薬物、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、およびコハク酸d−α−トコフェロールの溶解を、HPLCによってモニタリングした。薬物および可溶化剤の両方についての時間の関数としての溶解プロフィールを、図2に示す。薬物および可溶化剤の両方の放出が同調し、8時間の放出時間にわたる相関係数は0.99以上である。
【0102】
(実施例3)
実施例3は、本発明にしたがって調製した2つのさらなる投薬形態からのシロスタゾールおよび可溶化剤の同調放出を例示する。投薬形態を、可溶化剤(すなわち、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000)、放出調整物(すなわち、dl−α−トコフェロール(Spectrum Chemical Co.))、および溶媒(すなわち、酢酸(Speckum Chemical Co.))を使用して調製した。調製した投薬形態の組成を、以下にまとめる。
【0103】
【表3】

薬物および酢酸を除く全ての成分を融解し、ブレンドした。薬物を酢酸に溶解し、その後他の融解成分に添加した。ボルテックス混合後、融解溶液を、硬ゼラチンカプセルに充填し、室温(約25℃)で凝固させた。
【0104】
投薬形態を、投薬形態を選択された時間間隔後に非可溶化溶解媒体に繰り返し曝露する溶解実験で試験した。溶解実験は、37±0.1℃で10rpmの回転ボトル装置(長期放出テスター;VanKel)を使用し、100mLの酵素を含まない人工胃液(USP26)を最初の2時間含め、その後100mLの酵素を含まない人工腸液(USP26、pH6.8)で置換した。薬物、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、およびdl−αトコフェロールの溶解を、HPLCによってモニタリングした。図3は、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000およびdl−αトコフェロールの放出ならびにシロスタゾールの溶解度の増加を示す。示された可溶化剤、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、放出調整物、およびdl−αトコフェロールの放出は、薬物放出と同調した(約13時間の放出期間にわたる薬物と、可溶化剤と、放出調整物との間の相関係数は0.98以上)。シロスタゾールの溶解度は放出期間を通して増加し、全てが本来の溶解度と比較して約5倍増加した。
【0105】
(実施例4)
実施例4は、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000を使用して本発明にしたがって調製した組成物中の種々の濃度の放出調整物(すなわち、コハク酸dl−αトコフェロール)の効果を例示する。調製した投薬形態の組成を以下にまとめる。
【0106】
【表4】

薬物を除く全ての成分を融解し、その後薬物およびHPMCを添加し、混合物を、高剪断ローター固定子ホモジナイザーを使用して短時間ホモジナイズした。融解混合物を、硬ゼラチンカプセルに充填し、非制御の室温(約25℃)で凝固させた。
【0107】
投薬形態を、投薬形態を選択された時間間隔後に非可溶化溶解媒体に繰り返し曝露する溶解実験で試験した。この実験は、37±0.1℃で10rpmの回転ボトル装置(長期放出テスター;VanKel)を使用し、100mLの酵素を含まない人工胃液(USP26)を最初の2時間含め、その後100mLの酵素を含まない人工腸液(USP26、pH6.8)で置換した。薬物およびコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000の溶解を、HPLCによってモニタリングした。70%溶解時間を、以下の表にまとめる。
【0108】
【表5】

組成物4−2〜4−4の70%放出時間は、放出調整物濃度の増加とともに指数関数的に増加した。
【0109】
(実施例5)
実施例5は、可溶化剤、コハク酸d−αトコフェロールポリエチレングリコール1000およびリノレオイルマクロゴールグリセリド(Labrafil 2125CS)を使用して本発明にしたがって調製した投薬形態からの可溶化剤およびシロスタゾールの同調放出を例示する。放出調整物は、ベヘン酸グリセロール(Compritol 888 Ato,Gattefosse)および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel K1 OOM,Dow Chemical Company)であった。調製した投薬形態の組成を、以下にまとめる。
【0110】
【表6】

薬物およびHPMCを除く全ての成分を融解し、その後薬物およびHPMCを添加し、混合物を、高剪断ローター固定子ホモジナイザーを使用して短時間ホモジナイズした。融解混合物を、硬ゼラチンカプセルに充填し、非制御の室温(約25℃)で凝固させた。
【0111】
投薬形態を、投薬形態を選択された時間間隔後に非可溶化溶解媒体に繰り返し曝露する溶解実験で試験した。この実験は、37±0.1℃で10rpmの回転ボトル装置(VanKel長期放出テスター)を使用し、これは100mLの酵素を含まない人工胃液(USP26)を最初の2時間含み、その後100mLの酵素を含まない人工腸液(USP26、pH6.8)で置換した。薬物およびコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000の溶解を、HPLCによってモニタリングした。シロスタゾールの水溶解度は、長期放出期間を通して増大し、薬物および可溶化剤の同調放出を示した。表は、可溶化剤放出時間および本来の溶解度と比較したシロスタゾールの水溶解度の増加をまとめている。
【0112】
【表7】

(実施例6)
実施例6は、可溶化剤としてポリオキシル40硬化ヒマシ油NF(Cremophor RH40,BASF)および放出調整物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCK4M)を使用して本発明にしたがって調製した投薬形態の性能を示す。調製した投薬形態の組成を、以下にまとめる。
【0113】
【表8】

ポリビニルピロリドンK90、Cremophor RH40、脱水アルコールUSP、および脱イオン水を含む結合液を調製し、全ポリビニルピロリドンが溶解するまで震盪した。シロスタゾールを、タルク、コロイド状SiO、湿潤剤、およびドデシル硫酸ナトリウムとブレンドし(組成物3−2)、その後60メッシュのスクリーンに通した。次いで、微結晶性セルロースおよびHPMCK4Mを添加し、ポリバッグで約20分間ブレンドした。得られた粉末は結合液を必要とし、ドウを10mLシリンジのバレルによって押し出した。押し出した材料を、25℃/26〜30%の室温で約20時間乾燥させた。乾燥した押し出し物を、長さ約3〜5mmのペレットに切断し、硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0114】
カプセルを、1000mLの酵素を含まない人工胃液(USP26)からなる溶解媒体を使用した37.0±0.5℃で100rpmのUSP装置Iで試験した。時間関数としてのシロスタゾールの溶解を、図4に示す。組成物は約3時間でプラトーに達し、シロスタゾール溶解度は約30%増加した。
【0115】
(実施例7)
本発明の錠剤投薬形態を、可溶化剤としてのコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000および放出調整物としてのHPMCを使用して調製した。錠剤の組成を、以下に示す。
【0116】
【表9】

シロスタゾールを、半分のタルクおよびデンプン1500とブレンドし、その後、#100メッシュのスクリーンに通した。さらに、半分のHPMCおよび微結晶性セルロースならびに1/4のポリビニルピロリドンと混合し、同一の100メッシュのスクリーンに通した。次いで、2つの混合物を合わせ、十分に混合した。
【0117】
個別に、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000およびステアリン酸マグネシウムを、15〜20分間混合した。次いで、半分のタルクを添加し、5分間混合し続けた。最後に、半分のMCC、HPMC、デンプン1500、および3/4のPVPを添加し、10〜15分間混合した。薬物含有ブレンドおよびコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000含有ブレンドを、ポリバッグ中で約20分間混合した。
【0118】
最終ブレンドを、IRペレットディスク(直径12.5mm)を使用したCarverプレスを使用して、2,500lbの力で1〜2秒間打錠した。
【0119】
(実施例8)
実施例8は、本発明の種々の可溶化剤を使用した弱塩基性血液降下薬(カルベジロール)の溶解度の増大を示す。可溶化剤は、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体(ポリオキシ35ヒマシ油、NF;Cremophor(登録商標)EL、BASF)、トコール誘導体(コハク酸d−αトコフェロールポリエチレングリコール1000、ビタミンETPGS(登録商標)、Eastman Chemical Co.)、ポリエトキシル化脂肪酸誘導体(リノレイルマクロゴールグリセリド、EP、Labrafil 2125CS,Gattefosse)であった。組成物8−4はまた、脂肪酸誘導体(ジベヘン酸グリセロール;Compritol888 Ato,Gattefosse)を含む。可溶化剤を含まないカルベジロールのコントロールも調製した。
【0120】
【表10】

処方物8−1および8−2を、室温での液体賦形剤への60mg/gのカルベジロール塩基の溶解によって調製した。処方物8−3および8−4を、約80℃での融解賦形剤混合物への60mg/gのカルベジロール塩基の溶解および固体を得るための得られた透明の液体の周囲温度への冷却によって調製した。
【0121】
溶解度および放出特性を決定するために、全組成物を、酵素を含まない人工胃液(pH1.2±0.1、USP26);pH6.8の酵素を含まない人工腸液(USP26);またはpH8の酵素を含まない人工腸液に分散させた。処方物8−1〜8−4を、5倍希釈(最終カルベジロール濃度は12mg/mL)になるように分散させ、コントロールを、最終カルベジロール濃度が12mg/mLとなるように分散させた。得られた分散物を、回転機にて37±1℃で4時間混合した。水相中のカルベジロール濃度を、分散物の0.2μナイロンフィルターでの濾過、濾過物のアセトニトリルでの1:1希釈、および希釈濾過物の5μC8固定相を用いた4.6×150mmカラムを使用した逆相HPLCによるアッセイによって決定した。移動相は、1.2mL/分でのアセトニトリル/20mMリン酸(pH2.3)の勾配であった。測定したカルベジロール濃度を、以下の表に示す。
【0122】
(37℃で4時間後の水相中のカルベジロール濃度)
【0123】
【表11】

認められるように、4時間のカルベジロールの溶解/溶解度は、pHの減少につれて増加し、より多くの水溶性プロトン化カルベジロール種の形成と一致した。pH1.2のSGFでは、薬物が本質的に完全にイオン化されると予想される場合、それにもかかわらず、平衡溶解度がたった約1mg/mLである酸付加HCl塩の形成のために薬物の溶解濃度は非常に低い。
【0124】
本発明にしたがって調製した実施例8−1〜8−4について、カルベジロールの溶解度は劇的に増加し、異なるpHでの種々の媒体における薬物の溶解濃度にほとんど相違はない。実施例8−2について、pH8のSIF(8.8mg/mL)およびpH1.2のSGF(9.1mg/mL)で得られた溶解度の相違は4%未満である一方で、実施例8−1については、20%未満の相違である(pH8のSIFにおいて、8.9mg/mLに対してSGFの10.7mg/mL)。これらの結果は、本発明の溶解度の増大を使用して、シロスタゾールの溶解度は媒体のpHと実質的に無関係であり、且つ塩化物イオンの存在に影響も受けないことを示す。
【0125】
(実施例9)
可溶化剤としてのコハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000と共にカルベジロールを含む本発明の錠剤投薬形態を調製した。脂肪酸誘導体(ジベヘン酸グリセロール、Compritol 888 Ato,Gattefosse))、セルロース誘導体(HPMCK100LVおよびHPMC K4MP,Dow Chemical Co.)、およびポリアクリル酸(Carbopol940,BF Goodrich)を放出調整物として使用した。錠剤の組成を以下に示す。
【0126】
【表12】

CompritolおよびビタミンE TPGSを、Osterizerブレンダー中で乾燥ブレンドし、その後、ポリマーおよびシリカを添加し、4段階でブレンドした。得られた混合物を、篩にかけ、60メッシュ未満の画分を回収した。カルベジロールを添加し、リストアクションシェーカーにて8時間スパチュラで定期的に(約1時間毎)混合しながら粉末を混合した。
【0127】
最終ブレンドを、IRペレットディスク(直径12.5mm)を使用したCarverプレスを使用して、2,500lbの力で1〜2秒間打錠した。錠剤を、USP装置Iにて100rpm、37.0±0.5℃で試験した。溶解媒体は、最初の2時間は酵素を含まない1000mLの人工胃液(USP26)であり、その後、残りの24時間の実験のために酵素を含まない1000mLの人工腸液と交換した。カルベジロールおよび可溶化剤であるビタミンETPGSの溶解を、オンラインサンプル回収バルブを備えたAgilent UV/Vis分光光度計を使用して分析した。カルベジロールアッセイは、360nmの吸光度に基づき、ビタミンETPGSアッセイはこの波長でのカルベジロール吸光度を差し引いた後の285nmの吸光度に基づいていた。既知のカルベジロールおよびビタミンE TPGS濃度の外部標準の線形回帰によって定量した。
【0128】
薬物および可溶化剤の両方についての時間関数としての溶解プロフィールを図5に示す。実施例9−1は、完全な放出時間が約11時間である延長された放出プロフィールを示し、薬物および可溶化剤の放出は、0〜11時間を通して十分に同調した(r>0.99)。実施例9−2は、完全放出時間が24時間を超える延長された放出プロフィールを示した。薬物および可溶化剤の放出は、0〜24時間の実験期間を通して同調していた(r>0.97)。
【0129】
(実施例10)
本発明の可溶化剤同調放出組成物を、可溶化剤としてのトコール誘導体(ビタミンE−TPGS,EastmanChemical Company)、放出調整物としての脂肪酸誘導体(Compritol 888 Ato,Gattefosse)、およびカルベジロールを75.2/18.8/6.0%w/wの比率で使用して調製した。ビタミンE−TPGSおよびCompritol888を融解し、80℃で共にブレンドし、次いで、無カルベジロール塩基を混合物中に溶解した。溶解溶液をサイズ3の硬ゼラチンカプセルに0.21mg/カプセル(12.5mgカルベジロール/カプセル)の充填重量(fillweight)で充填し、周囲温度で凝固させた(実施例10−1)。これらのカプセルからのカルベジロールの溶解を、37±0.1℃で10rpmの回転ボトル装置(長期放出テスター;VanKel)にてそれぞれ2カプセル(全部で25mgカルベジロール)を使用して試験した。溶解媒体は、酵素を含まない100mLのSGF(pH1.2,USP26)または酵素を含まない100mLのSIF(pH6.8,USP26)であった。可溶化剤放出が同調していない比較処方物も同一条件下で試験した(比較物10−1;Coreg(登録商標)25mgカルベジロール錠;GlaxoSmithkline)。時間関数としてのカルベジロール放出を、実施例8に記載のようにモニタリングした。
【0130】
得られた溶解プロフィールを、図6に示す。認められるように、実施例9−1は、pH1.2のSGFおよびpH6.8のSIFの両方における薬物の溶解が0.5時間で40%未満および0.5時間までで80%超である溶解度の増加および放出の延長の両方を示す。比較物9−1は、pH1.2のSGFで0.5時間までに100%が放出されるが、このpHでの薬物の溶解度が限定されているために1.5時間までにSIF中でたった約20%しか放出されない。
【0131】
(実施例11)
無作為化単回投与交差研究で、実施例10の可溶化剤同調放出投薬形態(実施例10−1)を、比較物として市販の即時放出錠剤(比較物11−1;Coreg(登録商標)12.5mgカルベジロール錠;Glaxo Smithkline)と共に7人の健常被験者に投与した。両治療薬を、朝食直後に投与した。約7mLの血液サンプルをEDTAチューブに採取し、遠心分離し、血漿を、有効なLC/MS/MS法を使用してカルベジロールについてアッセイした。図7は、得られた血漿プロフィールを示し、以下の表は、標準的な非区画技術(non−compartmentaltechnique)を使用して計算した薬物動態パラメータのまとめを示す。最大血漿濃度および最大血漿濃度にかかる時間を、このデータから直接取り出した。初期吸収曲線からの直線の外挿によってTlagを計算した。O−oo由来の曲線下面積(AUC)値を、台形積分によって計算した。本実施例のカプセルは、平均遅延時間が1.2時間であり、Tmax範囲が1.5〜3時間の一貫した遅延放出プロフィールを示した。比較物の即時放出錠剤は、平均遅延時間が0.5時間であり、Tmax範囲が0.5〜3時間である価値の高い初期吸収を示した。以下の表に示すように、AUCO−oo比は、薬物の同調および可溶化の増大によって生物学的利用能が有意に増加したことを示す。
【0132】
【表13】

(実施例12)
ザフィルルーカストを含む本発明のさらなる組成物を以下に示す。高温での融解賦形剤または賦形剤混合物へのザフィルルーカストの溶解ならびにその後の冷却およびそれによる固体プラグの形成によってこれらを調製した。試験用の投薬形態を調製するために、200mgの融解組成物を、10mgザフィルルーカストの強度のためにサイズ3の2片硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0133】
【表14】

(実施例13)
下記の組成物を、高温での融解脂質賦形剤または脂質賦形剤混合物へのザフィルルーカストの溶解によって調製した。次いで、HPMCポリマーを、融解組成物中に懸濁し、例えば、高温での均質化または撹拌によって均一な分散物を形成した。分散物を、ゼラチンカプセルに充填して固形プラグを形成した。分散物を所望のサイズに押し出し成形し(球状化によって顆粒に成形)、カプセルに充填した。
【0134】
ザフィルルーカスト、脂質賦形剤、およびHPMCの顆粒を、個別または各成分の任意の組み合わせ(例えば、固溶液または固体分散体としてジベヘン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、またはコハク酸ビタミンEを含むか含まないザフィルルーカストおよびTPGS)で調製することもできる。顆粒を、適切な添加剤を使用して調製するか、カプセルに充填するかペレットまたは錠剤に圧縮するために適切な添加剤をブレンドすることができる。
【0135】
【表15】

【0136】
【表16】

(実施例14)
種々の期間にわたるザフィルルーカストの放出の延長および可溶化を証明するために、実施例12のカプセルからザフィルルーカストを溶解した。実施例12−1、12−2、12−3、12−4、および12−8の組成物中に10mgのザフィルルーカストを含む各カプセルを、250mLのpH1.2の酵素を含まない人工胃液と共にUSP I型溶解装置中に2時間(100rpm、37℃)入れた。2時間後、溶解媒体を、250mLのpH6.8の酵素を含まない人工腸液と置換し、さらに22時間溶解研究を継続した。所与の時点で、溶解媒体のアリコートをサンプリングし、ザフィルルーカスト放出(可溶化)濃度についてアッセイした。カプセルから放出されたザフィルルーカストの累積率を、図8および9にまとめ、これらの条件下における可溶化剤の非存在下でのザフィルルーカストの放出と比較して50倍を超える増加を示す。
【0137】
(実施例15)
下記の組成物を、以下のように調製した。塩酸ピオグリタゾン、脂質賦形剤、およびHPMCの顆粒を、個別に適切な添加剤(Cab−O−Sil TS−530無定形熔融シリカ、1%w/w)を使用して調製し、60未満のメッシュで篩にかけ、互いにブレンドし、打錠した。
【0138】
【表17】

(実施例16)
種々の期間にわたるピオグリタゾンの放出の延長および可溶化を証明するために、実施例15−1〜15−3由来の組成物を含む実施例15の塩酸ピオグリタゾン錠を溶解した。実施例15−1〜15−3の組成物中の50mg塩酸ピオグリタゾンを含む各錠剤を、250mLのpH6.8の酵素を含まない人工腸液と共にUSP II型溶解装置(100rpm)中に8時間(100rpm、37℃)入れた。所与の期間後、溶解媒体のアリコートをサンプリングし、ピオグリタゾン放出(可溶化)濃度についてアッセイした。表由来の時間関数としてのピオグリタゾン放出濃度を図10にまとめる。このpH範囲でのその本来の溶解度を超えるピオグリタゾン溶解度の累積(culmative)増加は、実施例15−1の36%増加から実施例15−3の約6倍増加までの範囲である。
【0139】
(実施例17)
難水溶性塩基性薬物であるカルベジロールおよび可溶化剤を投薬形態中で分離した組成物を本発明にしたがって調製した。
【0140】
(実施例17−1)
【0141】
【表18】

成分1〜6を含むカルベジロールペレット(直径約0.5〜1.0mm)を、実施例7に類似の様式で調製し、流動床コーラー(coaler)中にて成分7〜9でコーティングした。可溶化剤および放出調整物(コハク酸ビタミンE、コハク酸α−トコフェロール)を融解し、硬ゼラチンカプセル(サイズ00)に充填した。次いで、直ちに薬物+放出調整物のペレットを添加したが、充填物は依然として融解していた。次いで、カプセルを周囲温度に冷却して、可溶化剤+放出調整物のマトリックス中にバリアコーティングカルベジロールペレットを含む薬物および可溶化剤の同時放出を示すカプセルを生成した。
【0142】
(実施例17−2)
【0143】
【表19】


成分1〜8を含むカルベジロール顆粒を調製し、流動床コーター(coater)中にて成分9〜11でコーティングしてカルベジロールおよび放出調整物を含むバリアコーティング顆粒を形成した。可溶化剤+放出調整物粒子を個別に調製した。実施例17−2Aについて、カルベジロール+放出調整物顆粒を最初に圧縮し、その後可溶化剤顆粒と共に第2の圧縮を行って、可溶化剤および薬物が同調放出する二層錠剤を生成した。実施例17−2Bについて、薬物+放出調整物顆粒および可溶化剤+放出調整物顆粒をブレンドし、サイズ00の硬ゼラチンカプセルに充填して、薬物および可溶化剤が同調放出するカプセルを生成した。
【0144】
本開示の範囲を逸脱することなく材料および方法の両方に対する多数の修正形態を実施することができることが当業者に明らかである。したがって、本発明の実施形態は制限でなく例示と見なすべきであり、本発明は本明細書中に記載の詳細に制限されるべきではないが、添付の特許請求の範囲の範囲および等価物内で修正することができる。
【0145】
本明細書中に引用した全ての刊行物および特許は、その全体が参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、37℃でpH6.8の酵素を含まない人工腸液中の可溶化剤の濃度の関数としてのシロスタゾールの水溶解度を示す図である。
【図2】図2は、実施例6.2(USP装置I、100rpm、37℃、1000mLの酵素を含まない人工胃液+0.275%w/vドデシル硫酸ナトリウム)からのシロスタゾールおよび可溶化剤の放出を示す図である。
【図3】図3は、実施例6.3(持続放出テスター、10rpm、37℃;0〜2時間、100mL SGFw/o酵素、2+時間:100mL SIFs/o酵素(pH6.8))からの可溶化剤の放出およびシロスタゾール溶解度の増大を示す図である。
【図4】図4は、実施例6−1および6−2(USP装置I、100rpm、37℃、1000mLの酵素を含まない人工腸液(pH6.8))からのシロスタゾールの放出を示す図である。
【図5】図5は、実施例9−1および9−2(USP装置I、100rpm、37℃、0〜2時間;1000mLのSGF(pH1.2)、2+h:1000mL SIF(pH6.8))からのカルベジロールおよび可溶化剤の放出を示す図である。
【図6】図6は、実施例10−1および比較物(Comparator)10−1(持続放出テスター、10rpm、37℃、100mL SGF(pH1.2)または100mL SIF(pH206.8))からのカルベジロールの放出を示す図である。
【図7】図7は、健常な被験者の単回用量無作為化交差(crossover)における実施例10−1および比較物11−1についての時間関数としてのカルベジロール血漿濃度を示す図である。
【図8】図8は、実施例12−1、12−2、および12−3からのザフィルルーカストの放出を示す図である。
【図9】図9は、実施例12−4および12−8からのザフィルルーカストの放出を示す図である。
【図10】図10は、実施例15−1および15−3からのピオグリタゾンの放出を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の薬物と、
可溶化剤と、
放出調整物と、
を含む薬学的組成物であって、
該薬物および該可溶化剤の放出が同調している、薬学的組成物。
【請求項2】
前記薬物が、ピオグリタゾン、ザフィルルーカスト、シミバスタチン、アトルバスチン、またはフェノフィブラートである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬物が、シロスタゾールである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記可溶化剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、シクロデキストリンもしくはシクロデキストリン誘導体、脂肪酸誘導体、トコール誘導体、またはこれらの混合物である、請求項1または請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記トコール誘導体が、α−トコフェロールエスエル、ポリエトキシル化α−トコフェロールエステル、またはこれらの混合物である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記トコール誘導体が、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール(分子量200〜8000)、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、コハク酸dl−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000、またはこれらの混合物である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記脂肪酸誘導体が、グリセロールとの、プロピレングリコールとの、ソルビトールとの、スクロースとの、グルコースとの、ポリエチレングリコールとの、α−ヒドロキシ酸との、またはこれらの混合物との、エステルである、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記エステルが、ポリオキシルヒマシ油誘導体、PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、中鎖トリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、リノレオイルモノグリセリド、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド、またはこれらの混合物である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記放出調整物が、浸透圧ポンプ、ゆっくり溶解する複合体の塩、侵食性マトリックス、交換樹脂、ワックス、不溶性キャリア、高分子マトリックス、高分子コーティング、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸誘導体、脂肪アルコール誘導体、またはトコール誘導体である、請求項1または請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記放出調整物が、高分子マトリックス、高分子コーティング、ワックス、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪アルコール誘導体、脂肪酸誘導体、トコール誘導体、またはこれらの混合物である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記高分子マトリックスまたは高分子コーティングが、セルロース誘導体、アクリルポリマー、ポリビニルピロリドンコポリマー、シェラック、ポリビニルアセテートフタレート、高分子量多糖類ガム、またはこれらの組み合わせである、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記トコール誘導体が、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、ニコチン酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール、コハク酸α−トコフェロールポリエチレングリコール400、またはこれらの混合物である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記放出調整物が、微晶質ワックス、硬化植物油、ジベヘン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、ラウロイルマクロゴールグリセリド、ステアロイルマクロゴール−32グリセリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアリン酸、ステアロイルアルコール、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ジパルミチン酸スクロース、黄蝋、白蝋、カルナウバ蝋、非イオン性乳化ワックス、セチルエステルワックス、またはこれらの混合物である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記薬物の水溶解度が、約100μg/ml未満である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記薬物の水溶解度が、約50μg/ml未満である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記薬物の水溶解度が、約25μg/ml未満である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記放出が長期間にわたる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記期間が、約1時間よりも長い、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記期間が、約2時間よりも長い、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記期間が、約2時間と約24時間との間である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記可溶化剤が、前記薬物の溶解度を前記薬物の固有水溶解度と比較して少なくとも約25%増加させる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記薬物および可溶化剤の放出が、0.80よりも大きな相関関数で同調する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記薬物および可溶化剤の放出が、0.90よりも大きな相関関数で同調する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記薬物および可溶化剤の放出が、0.95よりも大きな相関関数で同調する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
1種以上の添加剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記可溶化剤が、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000またはポリオキシル40硬化ヒマシ油であり、前記放出調整物がコハク酸α−トコフェロール、ジベヘン酸グリセロール、またはヒドロキシプロピルメチルセルロールである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
1種以上の添加剤を含む、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記可溶化剤が、コハク酸d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000であり、前記放出調整物が、コハク酸α−トコフェロールであり、前記添加剤が、ポリエチレングリコールである、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記可溶化剤が、ポリオキシル硬化ヒマシ油であり、前記放出調整物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記薬物の水溶解性が、pHに依存する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記薬物のpKaが、約9.0以下であるpKaを有する、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記薬物が、カルベジロール、アミオダロン、ドロネデロン、リスペリドン、またはジプラシドンである、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
治療有効量の薬物と、
可溶化剤と、
放出調整物と、
を含む、経口投薬形態であって、
該薬物および該可溶化剤の放出が同調している、経口投薬形態。
【請求項34】
治療有効量の薬物と、
可溶化剤と、
放出調整物と、
を含む、固体経口投薬形態であって、
該薬物および該可溶化剤の放出が同調している、固体経口投薬形態。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−510658(P2007−510658A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538475(P2006−538475)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/036713
【国際公開番号】WO2005/041929
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506139875)リポシン, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】