説明

可溶性シリコーンプレポリマー

ある局面では、本発明は、シリコーン系のプレポリマーに関する。開示されたプレポリマーは、水溶液又は親水性溶液への満足できる溶解度を示し、所望しない収縮、伸長、及び従来のシリコーンモノマーが有する問題並びに架橋性プレポリマーからヒドロゲルを生産する従来の重合技術に関連する問題を克服することができる。満足できる酸素透過性を達成する、開示されたプレポリマーから生産された重合体及び成形品も開示されている。開示されたプレポリマーを生産する方法も開示されている。本要約は、特定の技術分野での調査のための検索ツールとして意図されるものであり、本発明を制限することを意図するものではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2007年6月29日に出願した米国特許出願第11/771,999号に基づく優先権を主張するものであり、その全文は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1950年代以来、視力を良くするためにコンタクトレンズが商業的に用いられている。現在の多くのコンタクトレンズは、少量の架橋剤存在下、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ビニルピロリドン等の親水性モノマーを重合することにより形成されるヒドロゲルから作られる
【0003】
従来のシリコーンモノマーは、典型的には、疎水性であり、水溶液又は、例えばポリ(エチレングリコール)/ポリ(ビニルピロリドン)(PEG/PVP)等の親水性溶液への溶解を難しくしている。すなわち、通常のシリコーンプレポリマーは、充分な溶解性が欠如した従来のシリコーンモノマーから作られている。例えば、極性シリコーンモノマー残基が欠如したシリコーンポリマー(例えば、下記比較例3参照)、少なすぎる極性シリコーン単位を有するシリコーンプレポリマー(例えば、下記比較例1参照)、及び多すぎる極性シリコン単位を有するシリコーンプレポリマー(例えば、下記比較例2参照)が、典型的には、PVP/PEG溶液に不可溶性である。さらに、非常に低いシリコーンモノマー残基含量を有する従来のシリコーンモノマー(例えば、下記比較例4参照)は、シリコーンモノマーの全量が比較的小さいため、少なくとも部分的にPVP/PEGに可溶であるが、不十分な酸素透過性を被る。さらに、成形品を作るときに従来のモノマーの重合(例えば、コンタクトレンズ)は、典型的に20容量%ほども収縮する。
【0004】
したがって、これらの欠陥を克服し、成形品を作るときに最小の収縮を示す可溶性材料を効果的に提供し並びに十分な酸素透過性示す成形品も提供する方法及び組成物に対する需要が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書に具体化されて明白に記載されるように、本発明は、ある局面において、シリコーンベースのプレポリマーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある局面において、本発明は所望しない収縮、伸長及び従来のシリコーンモノマーが有し、従来の重合技術に関連した関連問題を、架橋性プレポリマーからヒドロゲルを生産することにより克服できるプレポリマーに関している。
【0007】
さらなる局面では、本発明は、1以上の極性部分をさらに含み、それ故に、水溶液又は親水性溶液へ十分な可溶性を達成するプレポリマーに関する。
【0008】
さらなる局面では、本発明は、プレポリマーの約10重量%〜約30重量%を含有するシリコーン及びプレポリマーの約30重量%〜約90重量%を含有する極性ケイ素含有残基を有し、それ故に十分な酸素透過性を達成するプレポリマーに関する。
【0009】
さらなる局面では、本発明は、開示されたプレポリマーから生産されるポリマー及び成形品に関する。
【0010】
さらなる局面では、本発明は、開示されたプレポリマーの製造方法に関する。
【0011】
さらなる局面では、本発明は、開示された方法の生産物に関する。
【0012】
本発明の更なる利点については、その一部は以下の明細書の記載に説明されており、また、その一部は明細書の内容から自明であるか又は本発明の実施により理解することができる。本発明の利点は、特に、添付する各請求項に指摘される要素及びその組み合わせにより実現及び達成される。先の一般的記載及び以下の詳細な説明は、単に例示と説明を提供するためのものであり、本発明を限定するものではなく、本発明は、請求項によって限定されることが理解されるべきである。
【0013】
本明細書に取り込まれ、その一部を構成する添付図面は、複数の態様を図示し、記載と共に開示される組成物及び方法を図示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、R(1/Q)対 厚さ(lm)のプロットを表す。
【図2】図2は、酸素透過性測定用の装置を示す。
【図3】図3は、酸素透過性の測定に用いられる電極ユニットの構造を示す。
【図4】図4は、酸素透過性測定用装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明とこれに含まれる実施例を参照することにより、更に容易に理解できる。
【0016】
本発明の化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を開示して説明する前に、これらは、他に特定されてない場合、特定の合成方法に限定されるものではなく、又は他に特定されてない場合、特定の試薬に限定されるものではなく、無論のこと、それ自体として変化してもよいことが理解されなければならない。また、本明細書で用いる用語は、単に特定の態様を説明することのみを目的としており、何らかの制限を意図するものではない。本明細書に説明する方法及び原料と類似するか又は同等のいかなる方法及び原料を本発明の実施又は試験に用いることも可能であるが、これより例示的な方法と原料を説明する。
【0017】
本明細書で言及する全ての文献は、これらの文献を引用して開示及び説明する方法及び/又は原料を参照することにより、本明細書に組み込まれるものとする。本明細書で議論する文献は、本発明の出願日よりも先の開示だけを提示するものとする。しかしながら、これら文献のいずれも、先行発明によって、本発明が、このような文献に先行していないことを容認するものとして解釈すべきではない。更に、本明細書に提示する文献の日付は、実際の発行日と異なっているかもしれないが、実際の発行日については個別に確認する必要があるかもしれない。
【0018】
A. 定義
本明細書及び添付する請求項において、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「該(the)」には、その文に明確な指摘のない限り、複数形の指示対象も含まれる。従って、例えば、「1つの成分(a component)」、「1つのポリマー(a polymer)」又は「1つの残基(a residue)」には、2つ以上のこれらの成分、ポリマー又は残基等の混合物が含まれる。
【0019】
範囲については、本明細書では、「約」1つの特定の値から、そして/又は「約」別の特定値と表す場合がある。このような範囲が表現された場合、別の態様には、1つの特定の値からそして/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、値が近似値で表される場合、「約」という先行詞を用いることで、この特定の値が、別の態様を形成することが理解されるであろう。また更に、これらの範囲の各終点は、もう一方の終点との関連においても有意であるし、そしてもう一方の終点とは無関係に有意でもあることが理解されるであろう。また、本明細書には数多くの数値が開示されており、各数値は、ここにおいて、その数値自体に加えて、その数値の「約」としても開示されていることが理解される。例えば、「10」という数値が開示されている場合、「約10」も開示されていることになる。また、2つの特定の構成単位間の各構成単位も開示されていることが理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13及び14も開示されていることになる。
【0020】
本明細書において、化学種の「残基」という用語は、特定の反応スキームにおける化学種の生成物、又はこれから得られる製剤(formulation)若しくは化学製品である成分を指し、このことは、この成分が実際に前記化学種から得られたかどうかに関係ない。従って、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、エチレングリコールを用いてポリエステルを調製したかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-OCH2CH2O-ユニットを指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、この残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸又はこのエステルを反応させることで得られるかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0021】
本明細書において、「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」という用語は、続いて記載される現象又は状況が、起こっても起こらなくてもよく、この記載に、前記現象若しくは状況が起こる場合と起こらない場合が含まれることを意味する。
【0022】
本明細書において、「共重合体」という用語は、2種類以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されるポリマーを指す。例としては、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0023】
本明細書において、「プレポリマー」という用語は、通常、モノマー及び最終ポリマーとの間の中間体及び樹脂である、比較的低分子量のポリマーを指す。プレポリマーは、複合添加剤と混合しても良く、そして、形成過程の間又は後のさらなる重合により硬化することできる。
【0024】
本明細書において、「親水基」という用語は、水または親水性溶液に対して親和性を有する成分を指す。好適な例として、親水性モノマー(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)の残基及び、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン又はN-ビニルイミダゾールの残基が挙げられる。
【0025】
本明細書において、「重合可能な残基」という用語は、重合反応を行なうことができる化学官能性若しくはより高分子量の化合物及び/又はより多くの架橋構造を形成する架橋結合反応を指す。好適な例として、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基、スチリル基、ビニル基、ビニルカーボネート基、ビニルカルバメート基、アリルカーボネート基又はアリルカルバメート基が挙げられる。
【0026】
本明細書において、「シロキサニル」という用語は、1つ以上ののSi-O−Si結合を有する構造体を指す。従って、例えば、シロキサニル基は、1つ以上のSi-O−Si部分を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、1つ以上のSi-O−Si基を有する化合物を意味する。
【0027】
本明細書において、「シロキサニルモノマー」という語は、1以上の重合可能な炭素-炭素不飽和結合を有するシロキサニル化合物を指す。ある局面では、重合可能な炭素-炭素不飽和結合はアルキルアクリロイル部分(例えば、アクリロイル又はメタクリロイル部分)の部分となり得る。
【0028】
本明細書において、「アルキルアクリル酸」という用語は、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、これらの塩及びこれらの誘導体を指す。ある局面では、アルキルアクリル酸は、更に置換されていてもよい。更なる局面では、アルキルアクリル酸は、メタクリル酸である。
【0029】
本明細書において、「減圧蒸留」という用語は、ガス状の蒸気を凝縮して純粋な液体にするために、およそ大気圧より低い圧力(約1000mbar又は約760Torr)で蒸発又は沸騰させ、液体を精製する作用を指す。汚染物及び混入物は、典型的には、濃縮残留物に残ったままである。圧力は、例えば、約100mbar未満、約10mbar未満、約1mbar未満、約0.1mbar未満、約0.05mbar未満、約0.02mbar未満で良い。蒸留のための装置は、典型的には、蒸留容器(加熱している間、蒸留前物質を保持する)、冷却器(蒸発物質を冷却する)、及び受け容器(蒸留物を回収する)を含む。ある局面では、蒸留は化学蒸着を含まない。
【0030】
本明細書において、「薄膜蒸留」という用語は、短経路蒸留を指し、ここで、沸騰温度の実質的な減少は、運転圧力の減少で得られる。これは、従来の減圧蒸留(ポットスチル(pot still)又は蒸留塔)では、必要な高温及び長い残留時間のために破壊されるであろう生成物の、熱による分離を可能にする。ある局面では、この用語は、液体の薄層を蒸留にかける蒸留操作を指す。それ故に、一般に薄膜蒸留、分子蒸留、短経路蒸留、薄膜蒸発、短経路蒸発等と呼ばれる操作は、「薄膜蒸留」の範囲である。
【0031】
本明細書において、ときどき「ラジカル阻害剤」又は「ラジカル捕捉剤」のようなものを指す「重合阻害剤」という用語は、重合の過程を妨害する若しくは遅延させる物質を指す。典型的には、そのような阻害剤は、重合開始可能な遊離基の形成を遅延又は妨害する。一方、そのような阻害剤は、重合の阻害及び/又は増加段階より大きな割合で、いかなる形態の遊離基とも反応することができる。適した重合化阻害剤の例として、アルキルヒドロキノン及びヒドロキシナフタレンが含まれる。
【0032】
ある局面では、重合阻害剤は開示された物質の蒸留中に存在しても良い。さらにある局面では、重合阻害剤は蒸留の蒸留容器中に存在しても良い。さらにある局面では、重合阻害剤は蒸留過程の間、揮発を行なうために選択することができる。さらにある局面では、重合阻害剤は、蒸留過程の間、揮発させないために選択することができる。さらにある局面では、重合阻害剤は蒸留の受け容器に存在しても良い。
【0033】
本明細書において、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことを意図している。広い局面では、許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が含まれる。例示的な置換基には、例として、以下に記載するものが含まれる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対して、1つ若しくは複数であっても、又は同一若しくは異なっていてもよい。この開示の目的において、窒素等のヘテロ原子は、水素原子置換基及び/又は本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許容可能な置換基であって、このヘテロ原子の原子価を満たす置換基を有していてもよい。明確に開示されていなくても、本開示は、有機化合物の許容可能な置換基によって、いかなる形でも制限を受けることを意図していない。また、「置換」又は「〜で置換された」という用語には、このような置換が、置換された原子及び置換基の許容できる原子価数に一致するものであり、そして該置換が、安定な化合物、自発的に、例えば、転位、環化、脱離等により変化しない化合物を生じるという暗黙の条件が含まれる。
【0034】
種々の用語を定義するにおいて、「A1」、「A2」、「A3」及び「A4」は、ここでは、種々の特定の置換基を表す包括的記号として用いられる。これらの記号は、いずれの置換基であってもよく、本明細書に開示される置換基に限定されるものではない。そして、これらの記号が、1つの例において特定の置換基として定義される場合であっても、別の例では、別の置換基として定義される場合がある。
【0035】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、炭素数1〜24、例えば、炭素数1〜12又は炭素数1〜6の分枝状又は非分枝状の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等である。アルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アルキル基は、本明細書に記載される、置換又は非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよいが、これらの基に限定されるものではない。「低級アルキル」基とは、1ないし6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0036】
「アルキル」とは、明細書を通して、通常は、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すものとして用いられる;しかしながら、本明細書では、置換アルキル基はまた、該アルキル基上の具体的な置換基を特定することにより、具体的に言及される。例えば、「ハロゲン化アルキル」という用語は、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素のハロゲン化合物の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルコキシアルキル」という用語は、例えば、以下に記載されるアルコキシ基の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルキルアミノ」という用語は、例えば、以下に記載されるアミノ基等の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。1つの例で「アルキル」を用いて、そして、別の例で「アルキルアルコール」等の具体的な用語を用いた場合でも、「アルキル」という用語が、「アルキルアルコール」等の具体的な用語も指さないことを意味するものではない。
【0037】
このプラクティスは、本明細書に記載する他の基についても用いられる。即ち、「シクロアルキル」等の用語は、非置換シクロアルキル部分及び置換シクロアルキル部分の両方を指すが、本明細書では、該置換部分は、これに加えて、具体的に定義される場合がある;例えば、特定の置換シクロアルキルが、「アルキルシクロアルキル」等と呼ばれる場合もある。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」等と具体的に言及される場合があり、特定の置換アルケニルが、例えば「アルケニルアルコール」等となる場合もある。繰り返しになるが、「シクロアルキル」等の一般名と「アルキルシクロアルキル」等の具体的用語を用いるプラクティスは、該一般名が、該具体的用語を含まないことを暗示するものではない。
【0038】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、3個以上の炭素原子から構成される非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例は、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキル基の一種であり、「シクロアルキル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる1以上の炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0039】
本明細書で用いる「ポリアルキレン基」という用語は、相互に結合したCH2基を複数有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-で表すことが可能であり、ここで、「a」は、2〜500の整数である。
【0040】
本明細書で用いる「アルコキシ」及び「アルコキシル」という用語は、エーテル結合を介して結合したアルキル又はシクロアルキルを指す;即ち、「アルコキシ」基は、-OA1として定義可能であり、ここで、A1は、上記に定義されるアルキル又はシクロアルキルである。「アルコキシ」には、直ぐ上に記載するアルコキシ基から成るポリマーも含まれる;即ち、アルコキシは、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3等のポリエーテルであってもよく、ここで、「a」は、1〜200の整数であり、かつA1、A2及びA3は、アルキル基及び/又はシクロアルキル基である。
【0041】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、1以上の炭素−炭素二重結合を含有する構造式を有する炭素数2〜24の炭化水素基である。(A1A2)C=C(A3A4)等の非対称構造は、E異性体とZ異性体の両方を含むことを意図している。このことは、本明細書において、非対称アルケンが存在する構造式において適用されてもよく、又は、結合記号C=Cで明確に示してもよい。アルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0042】
本明細書で用いる「シクロアルケニル」という用語は、3個以上の炭素原子から構成され、1以上の炭素−炭素二重結合、即ち、C=Cを含む非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルケニル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる1以上の炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0043】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む構造式を有する、炭素数2〜24の炭化水素基である。アルキニル基は、置換されていなくてもよく、又は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0044】
本明細書で用いる「シクロアルキニル」という用語は、7個以上の炭素原子から構成され、1以上の炭素−炭素三重結合を含む非芳香族炭素系環である。シクロアルキニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキニル基の一種であり、「シクロアルキニル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる1以上の炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0045】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、これらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼン等を含む、いずれかの炭素系芳香族基を含有する基である。「アリール」という用語には、芳香族基であって、該芳香族基の環内に少なくと1つのヘテロ原子が組み込まれた芳香族基を含有する基として定義される「ヘテロアリール」も含まれる。ヘテロ原子の例としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄及びリンが挙げられる。同様に、「アリール」の用語にも含まれる「非ヘテロアリール」という用語は、ヘテロ原子を含まない芳香族基を含有する基を定義する。アリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。「ビアリール」という用語は、特定の種類のアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールは、ナフタレンのような縮合環式構造を介して共に結合した2つのアリール基、又はビフェニルのように1つ以上の炭素−炭素結合を介して結合した2つのアリール基を指す。
【0046】
本明細書で用いる「アルデヒド」という用語は、式-C(O)Hで表される。この明細書を通して、「C(O)」はカルボニル基、即ち、C=Oの略式表記である。
【0047】
本明細書で用いる「アミン」又は「アミノ」という用語は、式NA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0048】
本明細書で用いる「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHにより表される。
【0049】
本明細書で用いる「エステル」という用語は、式-OC(O)A1又は-C(O)OA1により表され、ここで、A1は、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエステル」という用語は、式-(A1O(O)C-A2-C(O)O)a-または-(A1O(O)C-A2-OC(O))a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1〜500の整数である。「ポリエステル」とは、1個以上のカルボン酸基を有する化合物と1個以上のヒドロキシル基を有する化合物との反応により生成する基を説明するために用いられる用語である。
【0050】
本明細書で用いる「エーテル」という用語は、式A1OA2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエーテル」という用語は、式-(A1O-A2O)a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1〜500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0051】
本明細書で用いる「ハライド」及び「ハロ」という用語は、ハロゲン類、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0052】
本明細書で用いる「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という用語は、式-OHにより表される。
【0053】
本明細書で用いる「ケトン」及び「ケト」という用語は、式A1C(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載するような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0054】
本明細書で用いる「アジド」という用語は、式-N3により表される。
【0055】
本明細書で用いる「ニトロ」という用語は、式-NO2により表される。
【0056】
本明細書で用いる「ニトリル」及び「シアノ」という用語は、式-CNにより表される。
【0057】
本明細書で用いる「シリル」という用語は、式-SiA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0058】
本明細書で用いる「スルホ-オキソ(sulfo-oxo)」という用語は、式-S(O)A1、-S(O)2A1、 -OS(O)2A1、又は-OS(O)2 OA1で表され、ここで、A1は、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書を通じて、「S(O)」とは、S=Oの略式表記である。「スルホニル」という用語は、本明細書において、式-S(O)2A1で表されるスルホ-オキソ基を指し、ここで、A1は、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホン」という用語は、式A1S(O)2A2により表され、ここで、A1及びA2は、本明細書に記載するように、独立して、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホキシド」という用語は、式A1S(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0059】
本明細書で用いる「チオール」という用語は、式- SHにより表される。
【0060】
他に記載のない限り、くさび又は破線ではなく実線のみで示される化学結合を有する式は、それぞれの可能な異性体、例えば、各エナンチオマー及びジアステレオマー並びにラセミ混合物又はスケールミック(scalemic)混合物等の異性体の混合物を意図している。
【0061】
本発明の組成物の調製に用いられる成分、並びに本発明の方法で用いられる組成物自体が開示される。これらと他の原料が本明細書に開示されており、これら原料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合は、これら化合物の個々の種々の組合せ及び集合的な組み合わせ及び順序が明確に開示されていないかもしれないがその場合にも、それぞれは、本明細書において、具体的に意図されて記載されているものと理解される。例えば、特定の化合物が開示されて議論され、該化合物を含む数多くの分子に施すことが可能な数々の修飾が議論される場合、特に表示のない限り、該化合物と可能な修飾のそれぞれ及び全ての組合せと順序が具体的に意図されている。従って、あるクラスの分子A、B及びCが、あるクラスの分子D、E及びFと共に開示され、そして組合せ分子A-Dの例が開示されている場合には、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれが、個別かつ集合的に意図されており、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E及びC-Fが開示されているものとみなされることを意味している。同様に、これらのあらゆるサブセット又は組み合わせも開示されているものとする。従って、例えば、A-E、B-F及びC-Eのサブグループも開示されているものとみなされることになる。この概念は、これらに限定されないが、本発明の組成物の製造方法及び使用方法における工程を含む、本出願の全ての局面にあてはまる。従って、実施可能な種々の更なる工程が存在する場合には、これらの更なる工程のそれぞれが、本発明の方法のいずれかの具体的な態様又は態様の組合せで実施できるものと理解される。
【0062】
本明細書に開示する組成物が、一定の機能を有することが理解される。本明細書には、開示される機能を実行するための特定の構造上の要件が開示されており、開示される構造に関する機能と同一の機能を実行可能な種々の構造が存在すること、そしてこれらの構造が、典型的には同一の結果を達成するであろうことが理解されるべきである。
【0063】
B.化合物
ある局面において、本発明は、1以上のシリコーンプレポリマーに関する。より具体的には、化合物は、所望しない収縮、伸長並びに従来のシリコーンモノマーが有し及び従来の重合技術に関連した関連問題を、比較的低分子量並びに低多分散性を有する架橋性のプレポリマーからヒドロゲルを生産することで克服できることを開示する。さらに、十分な酸素透過性を有しつつ、水溶液又は、例えばポリ(エチレングリコール)/ポリ(ビニルピロリドン)(PEG/PVP)等の親水性溶液への十分な溶解度を提供する構造を有するプレポリマーを調製することを開示する。
【0064】
1.構造
ある局面では、プレポリマーは、以下の式で表わされる構造:
【0065】
【化1】

【0066】
(式中、Raは、水素又はメチルを表し、そして、Aはシロキサニル基を表す)
を有する少なくとも1種のケイ素含有残基と、以下の式
【0067】
【化2】

【0068】
(式中、RPは水素又はメチルを表し、Pは少なくとも1種の重合可能部位を有する有機基である)
で表わされる構造を有する重合可能な残基を含み;プレポリマーは、該プレポリマーの約10重量%〜約30重量%のケイ素を有しており;少なくとも1種のケイ素含有残基の少なくとも1つは、少なくとも1種の極性部位をさらに含む極性ケイ素含有残基であり;そして、プレポリマーは、該プレポリマーの約30重量%〜約90重量%の極性ケイ素含有残基を有している、化合物又は化合物の集合であり得る。
【0069】
a.シロキサニル基
ある局面では、開示されたプレポリマーは1個以上のシロキサニル基を含む。特に記載のない限り、シロキサニル基は、当業者に公知のいかなるシロキサニル基であっても良い。
【0070】
さらにある局面では、少なくとも1種のAは以下の式で表される構造を有する:
【0071】
【化3】

【0072】
(式中、Lは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し;そして、Dはシロキサニル基で表わす)。さらにある局面では、少なくとも1種のAは以下の式で表される構造を有する:)
【0073】
【化4】

【0074】
(式中、Gは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し、そのアルキル残基又はアリール残基は1以上のヒドロキシル基をさらに含んでおり;Lは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し;そして、Dはシロキサニル基を表す)。
【0075】
さらなる局面では、Dは以下の式で表される構造を有する:
【0076】
【化5】

【0077】
(式中、E1〜E11は独立して、水素、置換されても良い炭素数1〜20のアルキル残基、又は置換されても良い炭素数6〜20のアリール残基を表し;そして、hは0〜200の整数を表し;そして、i、j及びkは独立に0〜20の整数を表わすが、h、i、j及びkは同時に0でない)。
【0078】
さらなる局面では、少なくとも1種のAは以下の式で表わされる構造を有する:
【0079】
【化6】

【0080】
(式中、nは3〜10の整数であり;そして、Rsは炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基である)。
【0081】
b.親水性残基
ある局面では、開示されたプレポリマーは1つ以上の親水性残基を含む。特に記載のない限り、親水性残基は当業者に公知のいかなる親水性残基であっても良い。ある局面では、親水性残基は開示されたプレポリマーに存在していなくても良い。
【0082】
さらなる局面では、プレポリマーは以下の式で表わされる構造を有する1つ以上の親水性残基をさらに含んでいても良い:
【0083】
【化7】

【0084】
(式中、Rbは水素又はメチルを表し;そして、Bは親水性基を表す)。
【0085】
さらなる局面では、親水性基は、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン又はビニルイミダゾールの1以上の残基を含む。
【0086】
c.極性部分
ある局面では、開示されたプレポリマーは1個以上の極性部分を含む。特に記載のない限り、極性部分は当業者に公知のいかなる極性部分でも良い。さらなる局面では、極性部分はヒドロキシル、アミド、カルボキシ、アミノ、カーボネート、カルバメート、スルホンアミド、スルホン酸基、ホスホン酸基、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、ヒドロキシエチル又はヒドロキシエトキシエチルで良い。
【0087】
d.重合可能な残基
ある局面では、開示されたプレポリマーは1個以上の重合可能な残基または基を含む。特に記載のない限り、重合可能な残基は当業者に公知のいかなる重合可能残基でも良い。さらなる局面では、重合可能残基は1個以上のエチレン性不飽和部位、例えば、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基、スチリル基、ビニル基、ビニルカーボネート基、ビニルカルバメート基、アリルカーボネート基又はアリルカルバメート基を含む
【0088】
さらなる局面では、重合可能残基は、以下の式で表される構造を有する単位と1つ以上の重合可能残基を有する少なくとも1種の化合物を反応させることで得られる:
【0089】
【化8】

【0090】
(式中、Rzは水素又はメチルであり;そして、Zは置換されても良い炭素数1〜20のアルキル残基又は置換されても良い炭素数6〜20のアリール残基を表し、そのアルキル又はアリールはヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基又はカルボン酸無水物基の少なくとも1種をさらに含む)。
【0091】
さらなる局面では、Zは1以上の:
【0092】
【化9】

【0093】
ハロゲノカルボニル基、(メタ)アクリロイルオキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基、2-アミノエトキシカルボニル基、4-ハロゲノカルボフェニル基、4-カルボキシフェニル基又は4-(炭素数1〜20アルキルオキシカルボニル)フェニル基を含む。
【0094】
ある局面では、1以上の重合可能基を有する化合物は、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、
【0095】
【化10】

【0096】
(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル無水物、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸無水物又は4-ビニル安息香酸エステルである。
【0097】
さらなる局面では、少なくとも1種の重合可能部分は以下の式で表わされる構造を有する:
【0098】
【化11】

【0099】
(式中、Rは水素又はメチルである)。
【0100】
e.末端基
開示されたプレポリマーは、該プレポリマーを調製するために用いる重合反応の開始時及び終了時に生じる末端基を有していても良いと理解されるべきである。例えば、プレポリマーは、開始反応で生じ、そして以下の式で表わされる構造を有する末端基を有していても良い:
【0101】
【化12】

【0102】
(式中、A、B及びPは、本明細書に記載されるような、シロキサニル基、親水性基及び重合可能基である。上記構造において、記号INは、例えば、アゾ開始剤又はぺルオキシド開始剤等の開始剤の残基を表す)。
【0103】
プレポリマーは、最終反応から生じ、そして、以下の式で表わされる構造を有する末端基を有していても良い:
【0104】
【化13】

【0105】
(式中、A、B及びPは、本明細書に記載されるような、シロキサニル基、親水性基及び重合可能基を表す。上記構造において、記号Tは、例えば、水又は他のプロトン性溶媒から抜き出された水素原子等の停止剤を表す。)
【0106】
開示されたプレポリマーは、コモノマーによる類似開始反応及び停止反応から生じる、類似末端基(analogous terminal groups)を有していても良い。
【0107】
2.ケイ素含有量
ある局面において、開示されたプレポリマーのケイ素含有量は約10重量%〜約30重量%であり得る。さらなる局面では、開示されたプレポリマーのケイ素含有量は約13重量%〜約20重量%であり得る。例えば、ケイ素含有量は約15%〜約20%、約13%〜約18%、約15%〜約18%、約13%、約15%、約18%又は約20%であり得る。開示されたケイ素含有量は、シリコーンプレポリマーの集合に対する平均ケイ素含有量を表わし得ることも理解される。
【0108】
さらなる局面では、極性シリコーン単位の総量は、プレポリマーの固形分に対して、約50重量%〜約80重量%であり得る。例えば、極性シリコーン単位の総量は、約55%〜約80%、約60%〜約80%、約50%〜約75%、約50%〜約70%、約60%〜約70%又は、約55%〜約75%であり得る。開示された極性シリコーン単位の総量は、シリコーンプレポリマーの集合に対する平均総量を表わし得ることも理解される。
【0109】
さらなる局面では、重合可能単位の含有量は、プレポリマーに対して、約0.1mol%〜15mol%であり得る。例えば、重合可能単位の含有量は約0.25mol%〜約15mol%、約0.5mol%〜約15mol%、約1mol%〜約15mol%、約0.1mol%〜12mol%、約0.1mol%〜約10mol%、約0.1mol%〜約5mol%又は約0.1mol%〜約10mol%であり得る。開示された重合可能単位の含有量は、シリコーンプレポリマーの集合に対する該重合可能単位の平均含有量を表す得ることも理解される。
【0110】
3.溶解度
ある局面において、開示されたプレポリマーは、例えば、PEG/PVPのような水溶液又は親水性溶液に優れた溶解度を示す。多くの異なる溶媒中にプレポリマーの試料を保管する溶解度試験で、溶解度を測定することができる。ポリマーが溶解、膨潤、又は変化しないかどうかを観察することにより、プレポリマーが任意の溶媒系に溶解するかどうか及びどの程度溶解するかを確認することが可能である。Hansen Solubility Parameters;A User's Handbook、Charles M. Hansen、43〜53ページ、CRC Press 2000参照。例えば、既知の質量のプレポリマーを、過剰量の任意の溶媒系に一定時間(例えば、10分)さらしても良い。混合物は、超音波処理されても及び/又は高温にさらされても良い。その後、すべての不溶性プレポリマーをデカンテーション又はろ過で取り除き、溶媒系中の可溶物の割合を計算することができる。
【0111】
溶解度は、以下の実施例のプロトコールを用いることで測定しても良い(wt%は、60wt%固溶体に対する例示であることに注意):(1)Irgacure819(光重合開始剤、0.42wt%)及びプレポリマー(55.38wt%)を、PEG(40wt%)/PVP(4.2wt%)溶液に添加する。(2)混合物をタッチミキサー及び超音波処理により、よく混合する。(3)混合物を、70℃のオーブンに1時間入れる。(4)混合物をオーブンから取出し、薬匙により混合する。(5)混合物を再びオーブンに約40分入れる。(6)工程4及び5を繰り返す。(7)混合物をオーブンから取り出した時、混合物が透明で相分離が見られない場合は、「可溶性」と考えられる。混合物が濁っているか又は相分離が見られる場合には、「不溶性」と考えられる。
【0112】
ある局面において、プレポリマーは、該プレポリマーの固形含量に対し、水溶性溶媒中で約50重量%以上の溶解性を有していても良い。例えば、溶解度は少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%又は少なくとも約90%で良い。ある局面では、溶解度はプレポリマー組成物の平均分子量により影響を受け得ることが理解される。すなわち、ある一定以下の分子量を有しているプレポリマーは溶解するが、ある一定以上の分子量を有しているプレポリマーは溶解しにくい。
【0113】
ある局面において、プレポリマーは、プレポリマーの固形含量を基に、ポリビニルピロリドンを約1重量%〜約10重量%(例えば、約1%〜約5%、約5%〜約10%、約2%〜約8%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%又は約9%)含む水溶性溶媒中に、約50重量%以上(例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%)の溶解度を有していても良い。
【0114】
開示されたプレポリマーと共に使用するのに好適な溶媒系は、典型的には水溶性溶媒であり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0115】
4.分子量
ある局面において、開示されたプレポリマーは約10kDa〜約1000kDa、例えば、約10kDa〜約500kDa、約10kDa〜約300kDa、又は約10kDa〜約200kDaの平均分子量を有していても良い。ある局面において、開示されたプレポリマーの多分散性(Mw/Mn)は、約1.00〜約10.00であって良い。例えば、多分散性は、約1.00〜約9.00、約1.00〜約8.00、約1.00〜約7.00、約1.00〜約6.00、又は約1.00〜約5.00であって良い。さらなる局面では、多分散性は約8より小さくても良い。例えば、約7.5より小さく、約7より小さく、約6.5より小さく、約6より小さく、約5.5より小さく、約5より小さく、約4.5より小さく、約4より小さいくてもよい。
【0116】
5.コモノマー
開示されたプレポリマーは、該プレポリマーが約10重量%〜約30重量%のケイ素含量を維持し、該プレポリマーの約30重量%〜約90重量%のシリコーン含有残基含量を維持する限り、さらなるコモノマーからの残基をさらに含んでいても良いことも意図される。このようなコモノマーの好ましい例として、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ビニル安息香酸、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、両末端に(メタ)アクリロキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン、片方の末端に(メタ)アクリロキシプロピル基を有したポリジメチルシロキサン及び側鎖に複数の(メタ)アクリロイル基を有したポリジメチルシロキサン等の多官能性(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルフォリン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリドン及びN-メチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、スチレン、α-メチルスチレン及びビニルピリジン等の芳香族ビニルモノマー;マレイミド;N-ビニルピロリドン等の複素環式ビニルモノマー;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン、片方の末端に(メタ)アクリロキシプロピル基を有したポリジメチルシロキサン、並びに下記の式(C1-1)〜(C6-1)及び(C6-2)で表わされる化合物が挙げられる。
【0117】
【化14】

【0118】
【化15】

【0119】
本発明での使用に適した他のシリコーン含有成分としては、ポリシロキサン基、ポリアルキレンエーテル基、ジイソシアネート基、ポリフッ素化炭化水素基、ポリフッ素化エーテル基及び多糖基を含有するマクロマーといった、国際公開公報第WO 96/31792号に記載される成分が挙げられる。米国特許第5,321,108号;同第5,387,662号及び同第5,539,016号には、極性を有するフッ素化グラフト又は末端のジフルオロ置換炭素原子に結合した水素原子を有する側鎖を有するポリシロキサンが記載されている。米国特許公開第2002/0016383号公報には、エーテル及びシロキサン結合を含有する親水性のシロキサニルメタクリレート並びにポリエーテル基及びポリシロキサニル基を含有する架橋性モノマーが記載されている。
【0120】
ある態様において、コモノマーは、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、化合物C1-1、C2-1、C3-1、C4-1、C5-1、C6-1、C1-2、C2-2、C3-2、C4-2、C5-2、C6-2、ポリシロキサンマクロマー、エーテル及びシロキサニル結合を有する親水性シロキサニルメタクリルレート並びにそれらの組み合わせ等を含む。
【0121】
そのようなモノマーとしてさらに好ましい例としては、2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(SiGMA);末端にモノメタクリロキシプロピル及び末端にモノ-n-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS;MW800-1000(Mn));ビス-3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(acPDMS)(MW1000及び2000、それぞれ、Gelest製及びDegussa製のアクリル化ポリジメチルシロキサン);Gelest製の末端にメタクリルオキシプロピルを有するポリジメチルシロキサン(MW550-700)(maPDMS);並びに末端にモノ-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル及び末端にモノ-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS-OH)が挙げられる。
【0122】
C.化合物の製造方法
ある局面において、本発明はプレポリマーの製造方法に関する。プレポリマーに関して開示された化合物、構造、及び部位が、開示された方法に関連して用いられても良いと理解されるべきである。
【0123】
ある局面では、開示されたプレポリマーは、以下の方法により製造することができる。すなわち、シロキサニル基を有する少なくとも1つのモノマーを含む混合物を提供する工程であって、該混合物が、シロキサニル基を有する少なくとも1つのモノマーであって、そのうち少なくとも1種は、少なくとも1種の極性部分をさらに含む極性シリコーン含有モノマーであるものと、重合可能基を有する少なくとも1種のモノマーと、任意的に、少なくとも1種のコモノマー(例えば、HEMA)と、任意的に、親水性基を有する少なくとも1つのモノマーを含む混合物である工程と;該混合物を反応温度(例えば、約50℃〜約60℃)で反応時間(例えば、約2時間〜約6時間)加熱することにより、及び/又は該混合物をラジカル開始剤にさらすことにより(例えば、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))モノマーを反応させ、それにより、未官能基化中間体ポリマーを提供する工程と;未官能基化中間体ポリマーを、エチレン性不飽和部位(例えば、アクリロイル部分)を有する反応性化合物(例えば、2-イソシアネートエチルメタクリレート)、さらに任意的に、重合阻害剤(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)、及び、任意に触媒(例えば、ジブチルスズジラウリル酸)と一緒にする工程と;前記反応性化合物により、未官能基化中間体ポリマーに官能基を付与させ、それにより、プレポリマーを提供する工程とを含む方法であって、混合物中のモノマーの相対的比率は、プレポリマーの約10重量%〜約30重量%のケイ素含量、及びプレポリマーの約30重量%〜約90重量%の極性ケイ素含有残基含量を有するプレポリマーを提供するように選択される方法により製造することができる。さらなる局面では、シロキサニル基を有する少なくとも1のモノマーと、重合可能基を有する少なくとも1つのモノマーは、同一のモノマーであっても良い。
【0124】
さらなる局面では、開示されたプレポリマーは、以下の方法により製造することができる。すなわち、シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーを含む混合物を提供する工程であって、該混合物が、シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーであって、シロキサニル基を有する少なくとも1種のモノマーの少なくとも1種は、少なくとも1種の極性部分をさらに含む極性シリコーン含有モノマーであるものと、少なくとも1種の重合可能基を有する少なくとも1種のモノマーと、任意的に、少なくとも1種のコモノマー(例えばHEMA)と、任意的に、親水性基を有する少なくとも1種のモノマーとを含む混合物である工程と、混合物を反応温度(例えば、約50℃〜約60℃)で反応時間(例えば、約2時間〜約6時間)加熱することにより、及び/又は混合物をラジカル開始剤にさらすことにより(例えば、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))モノマーを反応させ、それにより、プレポリマーを提供する工程を含む方法であって、混合物中のモノマーの相対的比率は、プレポリマーの約10重量%〜約30重量%のケイ素含量、及びプレポリマーの約30重量%〜約90重量%の極性シリコーン含有残基含量を与えるように選択される方法により製造することができる。
【0125】
中間体ポリマーの製造後及び/又はプレポリマーの製造後に、溶媒を取り除いても良いと理解される(例えば、蒸発により)。中間体ポリマー及びプレポリマーの一方又は両方は、例えば、洗浄、ろ過及び/又は蒸留により精製されてよいことも理解される。精製は、例えば、従来の蒸留により又は減圧蒸留(例えば、薄膜蒸留)により達成されても良く、重合阻害剤、例えば、1つ以上のアルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンの存在下でもよい。すなわち、さらなる局面では、蒸留、たとえば、減圧蒸留により低分子量不純物を除去することで、開示されたプレポリマーを精製してもよい。そのような精製方法は:(1)プレポリマー混合物又は未精製プレポリマーを提供する工程、及び(2)アルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンを含む、少なくとも1種の重合阻害剤の存在下で、プレポリマー混合物又は未精製プレポリマーから低分子量不純物の減圧蒸留をする工程を含んでいて良い。さらなる局面では、該方法は蒸留されたシロキサニルモノマーを回収する工程をさらに含んでいても良い。モノマーは、例えば、受け容器中に回収することができる。ある局面では、重合阻害剤は、1つ以上のアルキルヒドロキノン又はヒドロキシナフタレンを含むことができる。
【0126】
典型的には、中間体ポリマー又はプレポリマーが形成された後に、実質的にすべての未反応の反応物及び副産物は取り除かれる。「実質的にすべての」とは、精製後に約0.1重量%未満の残存ということを意味する。これは、限外濾過のような従来の方法で行われても良い。しかしながら、水を満たし、そして、水ですすぐことにより実質的にすべての所望しない成分、すなわち、製造に使用される、単量体の、オリゴマーの、又は重合体の開始化合物及び触媒並びに中間体ポリマー又はプレポリマーの製造の間に形成される副産物、を取り除き、中間体ポリマー又はプレポリマーを精製することも可能である。脱イオン水で洗浄を行っても良く、そして、条件は中間体ポリマー又はプレポリマー粒子の容積比に大きな表面を提供することを選択しても良い。これは、中間体ポリマーまたはプレポリマーを凍結乾燥すること、中間体ポリマー又はプレポリマーから薄膜を作ること、中間体ポリマー又はプレポリマーを棒状体に押し出すこと、中間体ポリマー又はプレポリマー溶液を脱イオン水中に噴霧すること、等の当業者に公知の方法により行っても良い。
【0127】
さらなる局面では、重合可能残基は、下記の式で表わされる構造を有する単位と少なくとも1種の重合可能残基を有する少なくとも1種の化合物を反応することで得ることができる。
【0128】
【化16】

【0129】
(式中、Rzは、水素又はメチルを表す;Zは置換されても良い炭素数1〜20のアルキル残基を表し又は置換されても良い炭素数6〜20のアリール残基を表す。このアルキル又はアリールは、少なくとも1種のヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基又はカルボン酸無水物基をさらに含む)。
【0130】
D.組成物
ある局面において、該プレポリマーは、例えば、熱開始又は光開始重合若しくは架橋反応によりさらに調製するために用いることができる。したがって、さらなる局面では、本発明は、1つ以上の開示されたプレポリマーを重合又は架橋させることにより得られるポリマーに関する。
【0131】
さらに、開示されたポリマーは、眼用レンズ、例えばコンタクトレンズ、眼内レンズ及び人工角膜;ステント、インプラント及びカテーテル;及び他の光学機器等の医療用具を製造するために使用することができる。したがって、さらなる局面では、本発明は1つ以上の開示されたプレポリマーを重合又は架橋することにより得られる眼用レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、ステント、インプラント、カテーテル;又は、他の光学機器に関する。
【0132】
E.組成物の用途
本発明は、十分な酸素透過性、満足できる親水性及び満足できる破壊耐性を有するプラスチック成型体を重合により製造可能な原料を提供する。該プラスチック成型体は、ドラッグデリバリー用の薬剤吸収剤、及びコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズ等の眼用レンズとして有用である。中でも、コンタクトレンズに特に好適である。
【0133】
ある局面において、該化合物はプラスチック成型体を製造するための原料を提供することができる。この原料は2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の親水性モノマーとの親和性に優れており、該原料を重合することにより、満足できる酸素透過性、満足できる親水性、及び低弾性係数並びに優れた光学的特性を有するプラスチック成型体を生産することができる。
【0134】
本発明により、プラスチック成型体を生産するための原料を提供することができる。該原料は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、及びこれらの組み合わせ等であるがこれらに限定されない親水性モノマーとの親和性に優れており、該原料を重合させることにより満足できる酸素透過性、満足できる親水性及び低弾性率並びに優れた光学的特性を有するプラスチック成型品を生産することができる。
【0135】
ある局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を少なくとも1種含む成形品を提供することができる。更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を少なくとも1種含む眼用レンズを提供することができる。また更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を少なくとも1種含むコンタクトレンズが提供することができる。
【0136】
例えばコンタクトレンズのようなプラスチック成型体は、開示されたプレポリマーを単独で、又は、明細書記載の1以上のコモノマー若しくは材料と重合若しくは架橋することにより製造することができる。プラスチック成型体、特に眼用レンズを製造するためには、重合混合物中にさらなる材料を含ませてもよい。例えば、良好な機械物性と消毒液や洗浄液に対する良好な耐性を得るため、分子中に2個以上の重合可能な炭素-炭素不飽和結合を有する架橋剤を含ませることができる。共重合させるモノマー全量に対する架橋剤の比率は、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.05重量%〜約15重量%、さらに好ましくは約0.1重量%〜約5重量%である。ある局面においては、開示されたプレポリマーは重合可能部位を含むので、さらなる架橋剤は省略してもい。
【0137】
得られるプラスチック成型体中における本発明のプラスチック成型体用材料の比率は、十分な酸素透過性と十分な親水性を両立させるという観点から、他のシロキサニル基含有重合性材料を共重合しない場合には、好ましくは約30重量%〜約100重量%、より好ましくは約50重量%〜約99重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約95重量%である。1種以上の他のシロキサニル基含有重合性材料を共重合する場合には、得られるプラスチック成型体中における本発明の材料及び他のシロキサニル基含有重合性材料の合計量の比率は、好ましくは約30重量%〜約100重量%、より好ましくは約50重量%〜約99重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約95重量%である。
【0138】
プラスチック成型体は、更なる成分を含んでいてもよく、これらに限定されないが、UV吸収剤、着色剤、色素剤、湿潤剤、易滑剤、医薬成分及び栄養補助成分、相溶化成分(compatibilizing component)、抗菌化合物、離型剤及びこれらの組み合せ等を含んでいてもよい。前述のいずれも、非反応性の形態、重合可能な形態、そして/又は共重合された形態で組み込むことができる。
【0139】
プラスチック成型体の調製のための重合または架橋においては、容易に重合を行うために、過酸化物及びアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合、好適な反応温度で最適な分解特性を示す熱重合開始剤を選択する。一般的に、アゾ開始剤及び過酸化物開始剤は、約40℃ないし約120℃の温度で、10時間の半減期を有するものが好ましい。光開始剤の例としては、カルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化化合物及び金属塩が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は組み合わせで用いることができる。重合開始剤の量は、重合混合物に対して約1重量%以下であり得る。
【0140】
本発明のプラスチック成型体の調製のための(共)重合においては、重合溶媒を用いることができる。この溶媒としては、種々の有機溶媒及び無機溶媒を用いることができる。この溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、直鎖プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、直鎖ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル及び安息香酸メチル等のエステル系溶媒;直鎖ヘキサン、直鎖ヘプタン及び直鎖オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン及びエチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;並びに石油系溶媒。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、又はこれらの溶媒の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
本発明のプラスチック成型体製造用の原料の重合方法、及びプラスチックの成形方法については、公知の方法を用いることができる。例えば、原料を一度重合させて、丸い棒又はプレートの形状に成形し、次いで、得られた丸い棒又はプレートを切削などにより所望の形状へ加工する方法、モールド重合法及びスピンキャスト重合法を用いることができる。
【0142】
開示されたプレポリマーから眼用レンズを製造する工程の例を記載する。最初に、2つのモールドパーツ間の所定の形状を有する空隙をプレポリマー組成物で満たし、光重合又は熱重合を行って、前記組成物を、モールド間の空隙の形状へ成形する。モールドは、樹脂製、ガラス製、セラミック製、金属製等である。光重合の場合、光透過性の原料が用いられ、通常は樹脂又はガラスが用いられる。眼用レンズを作製する場合、相互に向かい合う2つのモールドパーツの間に空隙が形成され、この空隙が、原料組成物で充填される。空隙の形状と原料組成物の特性にもよるが、眼用レンズに所定の厚さを与えて、空隙間に充填された原料組成物の漏出を防ぐため、ガスケットを用いてもよい。空隙に原料組成物を充填したモールドは、続いて紫外線、可視光線又はこれらの組み合わせのような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱され、重合される。2通りの重合方法を併用する方法もありうる。すなわち、光重合の後に加熱重合したり、又は加熱重合後に光重合することもできる。光重合の具体的態様では、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えばFL15BL、東芝)の光のような紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射する。熱重合を行う場合には、組成物を室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて約60℃〜約200℃の温度まで高めて行く条件が、眼用レンズの光学的な均一性、高品質及び高い再現性の観点から好ましい。
【0143】
開示されたプレポリマーから製造されるプラスチック成型体は、動的接触角(前進時、浸漬速度:約0.1mm/sec)が例えば約130゜以下が好ましく、約120゜以下がより好ましく、約100゜以下がさらに好ましい。含水率は約3%〜約50%が好ましく、約5%〜約50%がより好ましく、約7%〜約50%がさらに好ましい。眼用レンズをコンタクトレンズとして使用した場合の装用者の観点から、酸素透過性は高いほど好ましい。酸素透過係数[x10-11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]は約50以上が好ましく、約60以上がより好ましく、約65以上がさらに好ましい。ある局面では、酸素透過係数は、約90以上、約95以上、約100以上、約105以上、約110以上である。引張弾性率は、約0.01〜約30MPaが好ましく、約0.1〜約7MPaがより好ましい。引張伸びは約50%以上が好ましく、約100%以上がより好ましい。引張伸びが大きいとプラスチック成型体が破れにくいので、プラスチック成型体は引張伸びが大きいことが好ましい。これらの特性はWO03/022321に記載される試験方法を用いて測定することができる。
【0144】
成型体は、ドラッグデリバリーに用いられる薬剤担体や、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、メガネレンズなどの眼用レンズとして有用である。中でも、コンタクトレンズ、眼内レンズ及び人工角膜などの眼用レンズに特に好適である。その中でも、眼用レンズ、とりわけコンタクトレンズに特に好適である。
【0145】
F.実験
下記の実施例は、当業者に、本出願の請求項に係る化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を作製して評価する方法について完全な開示と記載を提供するために示されるものであり、単に本発明の例示として意図されているに過ぎず、本発明者らが彼らの発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度等)については、正確を期するために尽力したが、誤差や偏差も考慮すべきである。特に他に表示のない限り、部(parts)は重量部であり、温度は℃であるか又は周囲温度であり、圧力は、大気圧であるか又はその前後である。
【0146】
1.分析方法
分子量:サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)装置は、40℃のカラム・オーブン、PE Nelson 900 A/Dを備えたaPE LC-410ポンプ及びシリーズ200オートサンプラーから構成されている。検出器は、RI Merck L7490であることができる。カラムの組み合わせは、2種類のTosoHaas社製TSK-ゲル カラム(G4000PW+G2500PW)及びガードカラムからなることができる。溶離剤は、メタノール-水(75/25 wt/wt)から作ることができ、50mM塩化ナトリウム(NaCl)に調整された。注入量は150μlで、実行時間は60分であることができる。標準対照として、分子量ピークが960000〜194のPEG及びPEOを用い3次回帰で検量線を得ることができる。これらの標準ポリマーはPolymer Laboratories Inc(アマースト、マサチューセッツ)から購入できる(キャリブレーションキット PEG-10 部品番号 2070-0100;PEO 部品番号 2080-0101)。194のピーク分子量である添加された標準対照のPEGは、内部標準又は凝視点として用いられる明確な点でのフローシグナルを与える。添加されたNaClは、同様の役割を果たし、第2の凝視点を与える。ピーク積分は手動でなされ得る。積分開始点及び終了点を手動で全体のベースライン上の有意差から定量できる。2mg/mLのポリマー濃度を与える60mMNaClに調整するメタノール-水75/25wt/wtから、注入溶液を調製できる。ピークフローの対照を与えるために、1mg/mL濃度のサンプルにテトラエチレングリコールを加えることもできる。注入する前に、溶液を0.5μm使い捨てフィルター上でろ過することが好ましい。ポリマー試料の多分散、PdをPd=Mw/Mnと定義することができる。分子量のピークMpは、分子量分布曲線中の最も高いピーク分子量である。
【0147】
酸素透過率:サンプルの酸素透過係数は、理化精機工業社製の製科研式フィルム酸素透過率計を用いて測定した。35℃の水中にてフィルム状サンプルの酸素透過係数を測定した(温度調節器は図示せず)。3mmの8面体型MAGMIXマグネチックスターラー(三田村理研工業)を用いて800rpmにて撹拌した。厚さの異なる4種類のフィルム状サンプルを調製した(0.1 mm、0.2 mm、0.3 mm、及び0.4 mm; 直径16 mm)。厚さの異なる4種類のサンプルのそれぞれについてPmを測定した(図1参照);縦型ダイヤルゲージは目盛り0.001mmのものを使用;精度約+/- 0.003 mm。サンプルの1つを電極にセットした。電極中には電解液として0.5 N KCl(水溶液)を注入した(図2〜4参照)。該電極を蒸留水(pH=7、体積=800ml)中にセットした。はじめに、窒素バブリング下での電流(流速=100mL/min; 電流iは平衡状態になった後に測定)を測定してゼロ調整した。次いで、酸素バブリング下での電流を測定した。Rは次式により計算した:R = (Ps x N x F xA)/i [cm2 sec mmHg / mL (STP)] (ここでPs = 760 mmHg (大気圧)、N = 4(電極における反応に関与する電子数)、F=96500 クーロン/mol (ファラデー定数)、A = 電極の面積 (cm2)、i = 電流測定値(uA))。Rは定数(比例ではない)部分に関与するため、Pm測定のためには反復して測定とプロットを行う必要がある(図1参照)。R対サンプル厚さをプロットした。傾きの逆数が酸素透過係数(Pm)である。
【0148】
酸素透過性試験では、材料の酸素が透過する面積がサンプルの一方の表面と他方の表面において異なる場合、典型的には、エッジ補正(edge correction)が考慮される。本測定法では、フィルム状サンプルに隣接してセットしたリングの穴の面積(図3左上段参照)が白金電極の面積と同じなので、エッジ補正は必要ではない。
【0149】
含水率:サンプルとして約10mmx10mmx0.2mmのサイズのフィルム状のものを使用した。サンプルを真空乾燥器で40℃、16時間乾燥し、サンプルの重量(Wd)を測定した。その後、純水に浸漬して40℃恒温槽に一晩以上おいて含水させた後、表面水分をキムワイプで拭き取って重量(Ww)を測定した。次式にて含水率を求めた:
含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww
【0150】
引張試験:サンプルとして、19.5mmx15mmx0.2mm程度のサイズのフィルム状のものを使用した。オリエンテック社製のテンシロンRTM-100型を用いて引張弾性率を測定した。引張速度は100mm/minとし、つかみ間距離は5mmとした。
【0151】
2.実施例1
51.14gの以下の式(h)で表わされるシリコーンモノマー(SiMAA):
【0152】
【化17】

【0153】
15.2gのシリコーンモノマー(mPDMS、平均分子量:約1000)
【0154】
【化18】

【0155】
18.42gのN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、6.12gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2.04gの2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(UV吸収剤)、0.0204gの以下の式(r)で表わされる色素:
【0156】
【化19】

【0157】
0.93gの1-ドデシルメルカプタン(DSH)、及びt-アミルアルコール(TAA)を、温度計、三方コック及び機械式スターラーを備えた300mL三つ口フラスコに添加し、雰囲気をアルゴンに置換した。該混合物をアルゴン雰囲気下で50℃、0.5時間、次いで60℃、4.5時間撹拌し、それによりモノマーを重合した。反応完了後、溶媒をエバポレーターで蒸発させた。得られた固形物を150mLのメタノールに加熱しつつ溶解し、そして撹拌しつつ300mLの40%(v/v)メタノール水溶液に得られた溶液を添加した。得られた混合物を静置し、上清を取り除いた。得られた沈殿物を65%(v/v)エタノール水溶液300mLで一度洗浄し、75%(v/v)メタノール水溶液300mLで一度洗浄した。得られた固形物を真空下、40℃で18時間乾燥させ、次いで液体窒素添加後微粉砕し、その後40℃、3時間乾燥させ未官能基化ポリマーを得た。
【0158】
得られた65gの未官能基化ポリマー、69mgの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)及び220gの1,4-ジオキサンを、機械式スターラー、窒素ラインにつながった接続チューブ、及びクライゼンチューブが据え付けられた300mL四つ口フラスコに添加し、リービッヒ冷却器、吸引管、及びナスフラスコをクライゼンチューブの先端に接続した。窒素ガス流下で混合物を撹拌しながら温度を110℃に上げ、110gの1,4-ジオキサンが蒸発するまで温度を110℃に保持し、それにより、反応系から水分を除去した。混合物を60℃に冷却後、30μLのジブチルスズラウリン酸(DBTDL)及び3.40gの2-イソシアネートエチルメタクリレート(MOI)を窒素ガス流下で添加し、そして得られた混合物を60℃、3時間反応させた。反応完了後、50mLのメタノールを添加し、混合物を15分間撹拌した。反応溶液を50℃のエバポレーター中で濃縮し、得られた濃縮物に100mLのメタノールを添加して均一な溶液を形成した。得られた溶液を70%(v/v)メタノール水溶液300mLに撹拌しつつ添加し、そして、混合物を静置し、その後上清を取り除いた。沈殿物を85%(v/v)メタノール水溶液300mLで2回さらに洗浄した。得られた固形物を真空下、40℃で18時間乾燥させ、それから液体窒素添加後微粉砕し、その後40℃、3時間乾燥させ所望するシリコーンポリマーを得た。
【0159】
3.実施例2〜5
重合混合物の組成物を表1に示すように変えたことを除き、実施例1と同様の操作を繰り返した。表1に示されていないが、UV吸収剤、色素(r)、DBTDL及びBHTも、実施例1と同様の比率で使用した。
【0160】
表1において、以下の式(j)は、極性シリコーンモノマーを示し:
【0161】
【化20】

【0162】
及び、以下の式(k)は、極性シリコーンモノマーを示す。:
【0163】
【化21】

【0164】
4.比較例1〜5
重合混合物の組成を表1に示すように変えたことを除き、実施例1と同様の操作を繰り返した。比較例1、3及び4中、UV吸収剤、色素(p)、DBTDL及びBHTも、実施例1と同様の比率で使用した。比較例2及び5中、溶解度だけが確認され、そして、官能基付与は行なわれなかった。
【0165】
実施例5
ポリエチレングリコール200に溶解させた0.49gのポリビニルピロリドンK90を含有している溶液4.49gに対し、実施例1〜4並びに比較例1及び2のいずれかで得たシリコーンプレポリマー又は未官能基化ポリマー5.51gを添加し、70℃に加熱しながらこれらの物質を混合し、その後、減圧することで脱気した。溶解性は視覚的に観察され、結果は表1に示した。
【0166】
本発明の範囲と趣旨を逸脱することなく、本発明に種々の修飾及び変更を施すことが可能なことは、当業者にとって自明であろう。本明細書及び本明細書に開示する本発明の実施態様を検討することにより、本発明のその他の態様も当業者に明らかとなるであろう。本明細書と実施例は、単に例示的なものとしてのみ解釈されることが意図されており、本発明の真の範囲と趣旨は、これに続く各請求項に示されている。
【0167】
【表1−1】

【0168】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式で表わされる構造を有する少なくとも1つシリコーン含有残基と、
【化1】

(式中、Raは、水素又はメチルを表し、
Aは、シロキサニル基を表す)
以下の式で表わされる構造を有する少なくとも1つの重合可能残基:
【化2】

(式中、Rpは、水素又はメチルを表し、
Pは、1つ以上の重合可能部位を含む有機基を表す)
とを有するシリコーンプレポリマーであって、
該プレポリマーは、その約10重量%〜約30重量%のケイ素含量を有し;
少なくとも1つのシリコーン含有残基のうち少なくとも1つが、少なくとも1つの極性部位をさらに有する極性シリコーン含有残基であり;及び
前記プレポリマーは、その約30重量%〜約90重量%のシリコーン含有残基を有する、
シリコーンプレポリマー。
【請求項2】
以下の式で表わされる構造を有する親水性残基の少なくとも1つをさらに含む、請求項1記載のプレポリマー:
【化3】

(式中、Rbは、水素又はメチルを表し;及び
Bは、親水性基を表す)。
【請求項3】
極性部位がヒドロキシル、アミド、カルボキシル、アミノ、カルボネート、カルバメート、スルホアミド、スルホン酸基、ホスホン酸基、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、ヒドロキシエチル又はヒドロキシエトキシエチルである、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項4】
極性部位がヒドロキシルである、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項5】
少なくとも1つのAが、以下の式で表わされる構造を有する請求項1記載のプレポリマー。
【化4】

(式中、Lは、炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し;
Dは、シロキサニル基を表す)。
【請求項6】
少なくとも1つのAが、以下の式で表わされる構造を持つ、請求項1記載のプレポリマー。
【化5】

(式中、Gは、炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し、そのアルキル残基又はアリール残基は、1つ以上のヒドロキシル基をさらに含み;
Lは、炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表し;
Dは、シロキサニル基を表す)。
【請求項7】
Dは、以下の式で表わされる構造を有する、請求項5記載のプレポリマー:
【化6】

(式中、E1〜E11は独立して水素、置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル残基、又は置換されてもよい炭素数6〜20のアリール残基を表し;
hは、0〜200の整数を表し;及び
i、j及びkは、独立に0〜20の整数を表すが、h、i、j及びkは同時に0ではない)。
【請求項8】
少なくとも1つのAが、以下の式で表わされる構造を有する、請求項1記載のプレポリマー。
【化7】

(式中、nは、3〜10の整数を表し;
RSは、炭素数1〜20のアルキル残基又は炭素数1〜20のアリール残基を表す)。
【請求項9】
親水性残基が、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン又はN-ビニルイミダゾールの1つ以上の残基を含む、請求項2記載のプレポリマー。
【請求項10】
重合可能残基が、1つ以上のメタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基、スチリル基、ビニル基、ビニルカーボネート基、ビニルカルバメート基、アリルカーボネート基又はアリルカルバメート基を含む、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項11】
重合可能残基が、以下の式で表わされる構造
【化8】

(式中、RZは、水素又はメチルを表し;
Zは、置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル残基又は置換されてもよい炭素数6〜20のアリール残基を表し、そのアルキル又はアリールは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、又はカルボン酸無水物基の少なくとも1つをさらに含む)
と、
少なくとも1つの重合可能残基を有する少なくとも1つの化合物と反応させることにより得られる、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項12】
Zは、1つ以上の:
【化9】

ハロゲノカルボニル基、(メタ)アクリロイルオキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基、2-アミノエトキシカルボニル基、4-ハロゲノカルボフェニル基、4-カルボキシフェニル基、又は4-(C1-C20アルキルカルボニル)フェニル基を含む、請求項11記載のプレポリマー。
【請求項13】
1つ以上の重合可能基を有する化合物が、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、
【化10】

(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル無水物、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニル安息香酸ハロゲン化物、4-ビニル安息香酸無水物、又は4-ビニル安息香酸エステルである、請求項11記載のプレポリマー。
【請求項14】
少なくとも1の重合可能部位が、以下の式で表わされる構造を有する、請求項1記載のプレポリマー。
【化11】

(式中、Rは、水素又はメチルを表す)。
【請求項15】
約13重量%〜約20重量%のケイ素含量を有する、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項16】
極性シリコーン単位の総量が、前記プレポリマーの固形含量に対して約50重量%〜約80重量%である、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項17】
重合可能単位の含量が、前記プレポリマーに対して約0.1〜約15mol%である、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項18】
前記プレポリマーが、水溶性溶媒中に該プレポリマーの固形含量に対して約50重量%以上の溶解度を有する、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項19】
前記プレポリマーが、約1重量%〜約10重量%のポリビニルピロリドンを含む水溶性溶媒中に、該プレポリマーの固形含量に対して約50重量%以上の溶解度を有する、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項20】
水溶性溶媒が、1つ以上のエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はエチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー又はそれらの混合物を含む、請求項1記載のプレポリマー。
【請求項21】
請求項1記載のプレポリマーを重合することにより得られるポリマー。
【請求項22】
請求項21記載のポリマーを含む眼用レンズ。
【請求項23】
請求項21記載のポリマーを含むコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−532417(P2010−532417A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515175(P2010−515175)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/068544
【国際公開番号】WO2009/006285
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】