可視光レーザ照射装置
【課題】車両の乗員に情報を提供するために、当該車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する可視光レーザ照射装置の技術において、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現する。
【解決手段】可視光レーザ照射装置5は、車室1内において、車両のインナーミラー2よりも前方に配置され、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザは、車両のインストルメントパネル6の上面の上面前端部21に制限される。
【解決手段】可視光レーザ照射装置5は、車室1内において、車両のインナーミラー2よりも前方に配置され、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザは、車両のインストルメントパネル6の上面の上面前端部21に制限される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員に情報を提供するために、当該車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する可視光レーザ照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光レーザを車両前端部から路面に対して照射することで、路面に描画を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−210716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本件発明の発明者は、可視光レーザを、車外ではなく車両の車室内に照射することで、当該車両の乗員に情報を提供することを着想した。このような場合、車外から車室内に太陽光等が射し込むような状況においては、車室内に照射された可視光レーザの視認性を維持できる程度に、照射する可視光レーザの強度を高くすることが考えられる。しかし、強度の高い可視光レーザが人の目に直接照射されてしまった場合、網膜がダメージを受けてしまう危険性がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、車両の乗員に情報を提供するために、当該車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する可視光レーザ照射装置の技術において、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明の第1の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両の走行速度が基準速度より高いことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっていることである。
【0006】
車両が走行しているときは、走行していないときに比べ、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車両が走行しているときは、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。また、車速が高くなればなるほど、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車速が高いほど、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲を車速に応じて変化させることができる。
【0007】
また、本発明の第2の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両のシートベルトが装着されているか否かを判定し、当該シートベルトが装着されていると判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くすることである。
【0008】
乗員がシートベルトをしていれば、乗員が車室内で動き回ることができる範囲が制限される。したがって、乗員がシートベルトを装着している場合は、装着していない場合に比べ、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲をシートベルト装着の有無に応じて変化させることができる。
【0009】
また、本発明の第3の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、助手席に乗員が着座しているか否かを判定し、また、助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定し、そして、助手席に乗員が着座しており、かつ、助手席のシートベルトが装着されていることに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くすることである。
【0010】
助手席の乗員がシートベルトをしていれば、当該乗員が車室内で動き回ることができる範囲が制限される。したがって、助手席に乗員が着座しており、かつ、助手席の乗員がシートベルトを装着している場合は、装着していない場合に比べ、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。
【0011】
したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲を助手席の乗員のシートベルト装着の有無に応じて変化させることができる。
【0012】
制御回路はさらに、車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定すると共に、車両の走行速度が基準速度より高いか否かを判定するようになっていてもよい。この場合、制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっていてもよい。
【0013】
このようにすることで、運転者および助手席乗員のシートベルトの装着の有無、および車速の複合的な関係に応じて、可視光レーザの照射対象の領域を制御することで、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、より確実に同時に実現することができる。
【0014】
また、本発明の第4の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定し、かつ、車両の助手席に乗員が着座しているか否かを判定し、かつ、助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定するようになっていてもよい。
【0015】
この場合、制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くしてもよい。また制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していないと判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっていてもよい。
【0016】
さらに制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていないと判定した第1の場合、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていないと判定した第2の場合、および、走行速度が基準速度より低いと判定した第3の場合の3つの場合のそれぞれにおいて、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっていてもよい。
【0017】
このように、第1〜第3の条件のうち1つでも満たされていれば、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっていることで、運転者および助手席乗員のシートベルトの装着の有無、および車速の複合的な関係に応じて、可視光レーザの照射対象の領域を制御でき、それによって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、より確実に同時に実現することができる。
【0018】
本発明の第5の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器は、車室内において、車両のインナーミラーよりも前方に配置され、照射器から照射される可視光レーザは、車両のインストルメントパネルの上面のうち前端部に制限されていることを特徴とする。
【0019】
このようになっていることで、可視光レーザは、車室内でありかつ車両のインナーミラーよりも前方となる位置から、インストルメントパネルの前端部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0020】
なお、本明細書および特許請求の範囲においては、特記しない限り、「前」とは、車両の前端に近いことをいい、「後」とは、車両の後端に近いことをいう。また、照射態様としては、例えば、照射のオン・オフ、照射方向、照射タイミング、照射する可視光レーザの色、照射によって描画する文字または絵の内容が考えられる。
【0021】
また、本発明の第6の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器は、車室内において、車両のステアリングコラムの上面に配置され、照射器から照射される可視光レーザは、車両のメータ部に制限されていることである。
【0022】
このようになっていることで、可視光レーザは、ステアリングコラム上方から、メータ部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0023】
また、本発明の第7の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器の配置および照射器から照射される可視光レーザの照射先は、可視光レーザの光路が、車室内の部分空間であって、当該部分空間以外の空間から直径17センチメートルの球体を変形させずに当該部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっていることである。
【0024】
このようになっていることで、可視光レーザの光路に人の頭程度の大きさのものが入り込むことができなくなる。したがって、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0025】
また、本発明の第8の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置が、さらに、照射器から射出される可視光レーザの光路への物体の進入を検出するための検出信号を出力する光路進入検出器を備え、また、制御回路が、光路進入検出器から出力された検出信号に基づいて、光路への物体の進入があるか否かを判定し、その判定結果が肯定的なものであることに基づいて、照射器による可視光レーザの照射強度を抑制することである。
【0026】
このようになっていることで、乗員の目が光路に入る前に、あるいは、光路に入ると即座に、照射器による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、強い可視光レーザがユーザの目に入る可能性が低減される。また、光路上に反射物が置かれる前に、あるいは、置かれた直後に、照射器による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、反射物による可視光レーザの反射光がユーザの目に入る可能性が低減される。
【0027】
なお、ここでいう「光路への物体の進入」とは、光路へ物体が実際に進入することに加え、光路へ物体が近づきつつあることをも含む概念である。また、ここでいう「照射強度の抑制」とは、照射強度を低く調整することに加え、照射そのものを禁止することをも含む概念である。また、ここでいう「物体」とは、人をも含む概念である。
【0028】
この光路進入検出器は、光路またはその近傍に物体が接近していることを検出する近接センサであってもよいし、光路またはその近傍を撮影するカメラであってもよし、それらの両方の機能を併せ持つ装置であってもよい。
【0029】
光路進入検出器が、光路またはその近傍を撮影するカメラである場合、制御回路は、そのカメラによる撮影画像が基準画像より基準指標以上変化したことに基づいて、光路に物体が入り込んだことまたは入り込みつつあると判定するようになっていてもよい。
【0030】
また、制御回路は、可視光レーザの照射方向を変化させると共に、可視光レーザの照射方向の変化に追従させて光路進入検出器の検出方向も変化させるようになっていてもよい。このようになっていることで、照射器の照射方向の変化に合わせて光路進入検出器の検出範囲が変化するので、光路進入検出器が一度に検出可能なエリアを狭くすることができる。また、無駄なエリアを検出することがなくなるので、誤検出防止の一助となる。
【0031】
また、光路進入検出器は、照射器が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域に物体が入ったことに基づいて検出信号を出力するようになっていてもよい。このように、光路進入検出器の検出領域を、照射器が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域とすることで、照射器が可視光レーザを照射している領域へ乗員または反射物が侵入した結果乗員の目に可視光レーザが入ってしまうという事態を未然に防ぐことができるようになる。
【0032】
また、制御回路は、照射器に可視光レーザを照射させていないときに光路進入検出器から検出信号を受けたことに基づいて、車室内の当該可視光レーザ照射装置以外の装置の作動のオン・オフを切り替えるための信号を出力するようになっていてもよい。このように、照射器が利用されていないときには、光路進入検出器を、他の装置のオン・オフスイッチとして転用することで、光路進入検出器の共用による製造コスト低減が実現する。
【0033】
また、本発明の第9の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両のシートに乗員が座っているか否かを判定し、座っていないと判定したことに基づいて、照射器による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射し、また、座っていると判定したことに基づいて、照射器による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射することを禁止するようになっていてもよい。
【0034】
このように、シートへの着座の有無に応じて、当該シートおよびその近傍への可視光レーザの照射の禁止・許可を切り替えることで、乗員がシートに座っているときには、当該シートに可視光レーザを照射しないことで当該乗員の網膜への悪影響の可能性を低減し、当該シートに誰も座っていないときには、そのシートに照射を行うことで、乗員のいないスペースを有効に活用して情報を提供することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0035】
また、本発明の第10の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、車室内のガラスの位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、照射器による可視光レーザのガラスへの照射を禁止することである。
【0036】
このようになっていることで、可視光レーザがガラスを透過して車両外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0037】
また、本発明の第11の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、車室内の鏡面の位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、照射器による可視光レーザの鏡面への照射を禁止することである。
【0038】
このようになっていることで、可視光レーザが鏡面で反射して車両内外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0039】
また、本発明の第12の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、照射器から照射される可視光レーザの照射方向を変化させる速度が速いほど、照射器から照射される可視光レーザの照射強度を高くするようになっていることである。
【0040】
このようになっていることで、照射方向を変化させる速度が遅くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が高くなると、照射強度が低下する。その結果、目に入る可視光レーザのエネルギー量を抑えることができる。また、照射方向を変化させる速度が速くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が低くなると、照射強度が上昇する。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0041】
また、本発明の第13の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、可視光レーザの照射方向を制御することで、車両の乗員に情報を提供する制御回路と、照射器から照射される可視光レーザを透過させる材質から成る板材と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器は、車室内において、車両のインナーミラーよりも車室内の前方に配置されると共に、車両のインストルメントパネルの上面に可視光レーザを照射し、板材は、インナーミラーの下端部と同じ位置または高い位置であり、かつ、照射器における可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に、配置されていることである。
【0042】
このような場合、乗員の目が、板材の位置よりも照射器に近づくことはない。したがって、乗員の目が万一板材の下で可視光レーザの光路に入ったとしても、照射器における可視光レーザが射出される位置と乗員の目との間の距離、すなわち、可視光レーザの光路長が、当該射出位置と板材の間の距離以上確保できる。可視光レーザの照射方向の変化と、可視光レーザの照射位置の変化との比は、この光路長に比例するので、確保できる光路長が長ければ長いほど、乗員の目に可視光レーザが当たり続ける時間が短くなる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0043】
また、板材の底部が運転者から見てインナーミラーの陰に隠れるので、板材が運転者の運転の邪魔にならない。
【0044】
また、本発明の第14の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、照射器が照射する可視光レーザの照射方向を常に変化させることを特徴とする。
【0045】
このようになっていることで、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0046】
また、本発明の第15の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、照射器が照射する可視光レーザの強度を第1の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向を常に変化させ、可視光レーザの強度を第1の強度より低い第2の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向の変化を停止させる場合があることである。
【0047】
このようになっていることで、可視光レーザの強度が高いとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0048】
また、本発明の第16の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、乗員への情報の提供として、車室内の一ヶ所を指示するとき、可視光レーザの照射対象の位置が当該一ヶ所内において常に変化するよう、可視光レーザの照射方向を常に変化させることである。
【0049】
このようになっていることで、可視光レーザによって車両内の一ヶ所が指示されるとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態が適用される車室1の内部を概略的に示す。なお、以下の説明において、特記しない限り、上、下、右、左、前、後等の位置、方向の表現は、車両を基準とした位置、方向を示すものである。車室1内の左右方向に関する中央部には、運転者7が後方を確認するためのインナーミラー2が設置されている。
【0051】
運転者7からみてインナーミラー2の裏側には、可視光レーザ照射装置5が設置されている。したがって、可視光レーザ照射装置5は、車室内において、インナーミラー2よりも前方に配置されている。より具体的には、可視光レーザ照射装置5は、インナーミラー2よりもやや上方にあり、かつ、インナーミラー2とフロントガラス4との間に配置されている。さらに具体的には、可視光レーザ照射装置5は、フロントガラス4の車室1側の面に取り付けられている。
【0052】
この可視光レーザ照射装置5は、運転者7等の車両の乗員に情報を提供するために、車室1内の一部に可視光レーザを照射するための装置である。昼間の車外からの光によっても可視光レーザが見えなくならない程度に、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザの強度は設定されている。このような場合、可視光レーザが人の目に入ると、網膜に悪影響が及ぶ可能性があるので、可視光レーザが人の目に入る可能性を低減することが望ましい。
【0053】
可視光レーザ照射装置5の底部および側部は、カバー3によって覆われている。カバー3は、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザを透過させる材質(例えば透明な樹脂)から成る。また、カバー3の底面は、インナーミラー2の下端部と同じ位置または高い位置に配置されていると共に、可視光レーザ照射装置5における可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に配置されている。
【0054】
可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザの光路20は、フロントガラス4に対して概ね平行になっている。そして、可視光レーザ照射装置5は、可視光レーザを、インストルメントパネル6の上面の上面前端部21および上面中後部22に照射することができるようになっている。
【0055】
図2に、上面前端部21および上面中後部22の範囲の一例を表す斜視図を示す。上面前端部21は、インストルメントパネルの上面のうち、フロントガラス4にごく近い(例えばフロントガラス4から10センチメートル以内の)領域である。上面中後部22は、インストルメントパネル6の上面のうち、上面前端部21以外の部分、すなわち、上面前端部21の後方に続く部分である。
【0056】
なお、可視光レーザ照射装置5から上面前端部21内に可視光レーザが照射される場合、図1の仮想頭部イメージ71、72に示すように、可視光レーザの光路20に人の目が入り込むように人の頭を配置することは、極めて困難である。
【0057】
図3に、可視光レーザ照射装置5の構成および信号の入力関係を示す。可視光レーザ照射装置5は、制御ECU51、モータ52、および発光器53を含んでいる。
【0058】
モータ52は、制御ECU51からの制御信号に基づいて回転することで、発光器53の向き(例えば、上面前端部21の中央、上面前端部21の右端部等)を調整するための装置である。
【0059】
発光器53は、可視光レーザを生成し、生成した光を、発光器53自身が向いている方向に照射する装置である。なお、発光器53は、その照射方向に、1つの光点のみならず、複数の光点から成る広がりを持った領域(以下、光領域)を表すことができる。光領域としては、例えば図形や文字がある。このように、モータ52によって制御された発光器53の向きに、文字や図形を表示させるために、発光器53は、周知のMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)共振ミラーや、DMD(ディジタル・マイクロミラー・デバイス)等の、光領域の描画のための周知の装置を用いてもよい。MEMS共振ミラーを用いた装置としては、例えば、日本信号株式会社のエコスキャン(登録商標)がある。また、ディジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた装置としては、例えば米国Texas Instruments社のDLP(登録商標)方式のデジタルプロジェクタがある。
【0060】
制御ECU51は、車両内の各種装置からの信号を受け、受けた信号の内容に基づいて、モータ52および発光器53の作動を制御するための装置である。制御ECU51としては、例えば、図示しないCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備えたマイクロコンピュータで実現可能である。制御ECU51が受ける信号としては、例えば、図3に示すように、運転席シートベルトバックル信号、車速センサからの車速信号、助手席着座信号、助手席シートベルトバックル信号、描画信号等がある。
【0061】
運転席シートベルトバックル信号は、運転席のシートバックルが運転席バックルホルダに装着されているか否か、すなわち、運転席のシートベルトが装着されているか否かを検出するセンサからの検出信号である。
【0062】
助手席着座信号は、助手席に乗員が着座したか否かを検出する着座センサからの検出信号である。このようなセンサとしては、例えば、助手席シート内に埋め込まれた感圧センサ等を用いてもよい。
【0063】
助手席シートベルトバックル信号は、助手席のシートバックルが助手席バックルホルダに装着されているか否か、すなわち、助手席のシートベルトが装着されているか否かを検出する周知のセンサからの検出信号である。
【0064】
描画信号は、どのような態様で可視光レーザの照射を行うかを指令する信号である。この描画信号を出力する描画指令装置(図示せず)は、ケーブルまたは無線によって車内の各部から信号を受け付け、その受け付けた信号に基づいて乗員にどのような情報を提示するかを決定し、決定した表示内容に基づいて可視光レーザの照射の態様を決定し、決定した照射の態様を出力する。
【0065】
例えば、車内の各部から受ける信号としては、各種センサや操作スイッチからの信号、あるいは、車両用ナビゲーション装置からの信号等がある。車両用ナビゲーション装置からの信号としては、例えば、ターンバイターン用の方向を示す信号が考えられる。ターンバイターンとは、車両用ナビゲーション装置が決定した目的地までの最適経路に沿って車両を走行させるために、運転者に次の交差点で右折または左折を指示する図形(例えば矢印図形)を、右左折することが必要な交差点に車両が近づく度に表示する機能である。本例においては、車両用ナビゲーション装置は、ターンバイターンのために指示する必要のある曲折方向を示す信号を、描画指令装置に出力する。すると、描画指令装置は、この信号が示している方向に対応する図形を表示するよう指令する描画信号を、制御ECU51に出力する。
【0066】
機能の観点から見ると、制御ECU51は、表示エリア決定部51a、メカ機構駆動部51b、および発光器駆動部51cを有している。制御ECU51がマイクロコンピュータである場合、これらの機能のそれぞれを実現するために、所定のプログラムを読み出して実行するようになっていてもよい。また、制御ECU51は、これらの機能毎に専用のICチップを有していてもよい。
【0067】
表示エリア決定部51aは、運転席シートベルトバックル信号、車速信号、助手席着座信号、助手席シートベルトバックル信号、および図示しないイグニッション信号等に基づいて、発光器53の照射を許可するする領域、すなわち表示許可エリアを決定し、その決定内容をメカ機構駆動部51bに渡す機能を担う部分である。
【0068】
メカ機構駆動部51bは、描画信号および表示エリア決定部51aの決定した表示許可エリアに基づいて、モータ52に制御信号を出力することで、モータ52の作動、すなわち、発光器53の照射する方向を制御する機能を担う部分である。
【0069】
発光器駆動部51cは、描画信号に基づいて、発光器53を制御することで、描画信号の示す図形または光点を発光器53に描画させる機能を担う部分である。
【0070】
ここで、表示エリア決定部51aが上記の機能を実現するために実行する処理のフローチャートを図4に示す。なお、表示エリア決定部51aは、車両のイグニッションがオンのときに、この処理を実行する。この処理において、表示エリア決定部51aは、まずステップ105で、運転席シートベルトバックル信号を受け付け、続いてステップ110で、受け付けた運転席シートベルトバックル信号に基づいて、運転席のシートベルトが装着されているか否かを判定する。装着されている場合は、続いてステップ115を実行し、装着されていない場合は、続いてステップ150を実行する。
【0071】
ステップ115では、助手席着座信号を受け付け、続いてステップ120では、受けた助手席着座信号に基づいて、助手席に乗員がいるか否かを判定する。助手席に乗員がいる場合は続いてステップ125を実行し、いない場合は続いてステップ135を実行する。
【0072】
ステップ125では、助手席シートベルトバックル信号を受け付け、続いてステップ130では、受けた助手席シートベルトバックル信号に基づいて、助手席の乗員がシートベルトを装着しているか否かを判定する。装着している場合は続いてステップ135を実行し、装着していない場合は続いてステップ135を実行する。
【0073】
ステップ135では、車速信号を受け付け、続いてステップ140では、受けた車速信号が基準速度以上であるか否かを判定する。基準速度としては、一定値(例えば、時速20キロメートル、時速5キロメートル)であってもよいし、各種条件によって変化する値であってもよいし、一定の範囲内でランダムに変化する値であってもよい。基準速度以上である場合は続いてステップ145を実行し、基準速度未満である場合には続いてステップ150を実行する。
【0074】
ステップ145では、表示許可エリアを、2つのあらかじめ決められた範囲のうち、広い方の範囲に設定する。具体的には、表示許可エリアを、上面前端部21と上面中後部22の両方から成る領域とする。ステップ150では、表示許可エリアを、2つのあらかじめ決められた範囲のうち、狭い方の範囲に設定する。具体的には、表示許可エリアを、上面前端部21のみに限定する。ステップ145または150の後、処理は再度ステップ105に戻る。
【0075】
このような処理により、表示エリア決定部51aは、下記の第1〜第3の条件のうちいずれ1つでも満たされている間は、表示許可エリアを狭い方のエリア、すなわち上面前端部21に限定し続ける。
第1の条件:運転席シートベルトが装着されていない
第2の条件:助手席に乗員がおり、かつ、助手席のシートベルトが装着されていない
第3の条件:車速が基準速度未満である
そして、制御ECU51は、下記の第4、5、および7の条件がすべて満たされている間、ならびに、第4、6、および7の条件がすべて満たされている間には、表示許可エリアを広い方のエリア、すなわち上面前端部21と上面中後部22とを合わせた領域に設定し続ける。
第4の条件:運転席シートベルトが装着されている
第5の条件:助手席に乗員がおり、かつ、助手席のシートベルトが装着されている
第6の条件:助手席に乗員がいない
第7の条件:車速が基準速度以上である
メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、広い方のエリアである場合、描画信号に応じて、上面前端部21および上面中後部22のどの領域にも描画が可能な状態となる。
【0076】
例えば、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、広い方のエリアであり、かつ、描画信号が左折を示している場合は、図5に示すように、例えば上面中後部22のうち、ステアリングハンドル8よりも左側の位置に、左ターン矢印31が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0077】
また、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、広い方のエリアであり、かつ、描画信号が右折を示している場合は、図6に示すように、例えば上面中後部22のうち、ステアリングハンドル8よりも右側の位置に、右ターン矢印32が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0078】
また、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、狭い方のエリアである場合、描画信号の内容に関わらず、上面前端部21にしか可視光レーザの照射を行わない状態となる。
【0079】
例えば、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、狭い方のエリアであり、かつ、描画信号が左折を示している場合は、図7に示すように、上面前端部21のうち、例えばステアリングハンドル8よりも左側の位置に、左ターン矢印33が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0080】
また、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、狭い方のエリアであり、かつ、描画信号が右折を示している場合は、図8に示すように、上面前端部21のうち、例えばステアリングハンドル8よりも右側の位置に、右ターン矢印34が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0081】
また、発光器駆動部51cは、描画信号に基づいて発光器53を制御することで、図5〜8に例示するように、右折を示す矢印図形31、33または左折を示す矢印図形32、34を、モータ52によって発光器53が向けられた方向の先にあるインストルメントパネル6上の位置に、描画する。
【0082】
なお、可視光レーザ照射装置5から上面前端部21、上面中後部22への方向の情報は、可視光レーザ照射装置5の車両への設置時または設置前にあらかじめ制御ECU51内に記憶するようになっていてもよい。
【0083】
以上のように、制御ECU51は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっている。また制御ECU51は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していないと判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっている。
【0084】
車両が走行しているときは、走行していないときに比べ、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車両が走行しているときは、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。また、車速が高くなればなるほど、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車速が高いほど、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲を車速に応じて変化させることができる。
【0085】
また、運転席または助手席の乗員がシートベルトをしていれば、当該乗員が車室内で動き回ることができる範囲が制限される。したがって、乗員がシートベルトを装着している場合は、装着していない場合に比べ、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲をシートベルト装着の有無に応じて変化させることができる。
【0086】
さらに制御ECU51は、運転席用シートベルトが装着されていないと判定した第1の場合、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていないと判定した第2の場合、および、走行速度が基準速度より低いと判定した第3の場合の3つの場合のそれぞれにおいて、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっている。
【0087】
このように、第1〜第3の条件のうち1つでも満たされていれば、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっていることで、運転者および助手席乗員のシートベルトの装着の有無、および車速の複合的な関係に応じて、可視光レーザの照射対象の領域を制御することができ、それによって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、確実かつ同時に実現することができる。
【0088】
また、表示可能エリアが上面前端部21内に限定されたとき、乗員が可視光レーザの光源を覗き込みにくくなるため、乗員の目の安全性が高まる。
【0089】
また、カバー3は、インナーミラー2の下端部と同じ位置または高い位置であり、かつ、発光器53における可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に、配置されている。このような場合、乗員の目が、カバー3の位置よりも発光器53に近づくことはない。したがって、乗員の目が万一カバー3の下で可視光レーザの光路に入ったとしても、発光器53における可視光レーザが射出される位置と乗員の目との間の距離、すなわち、可視光レーザの光路長が、当該射出位置とカバー3の間の距離以上確保できる。可視光レーザの照射方向の変化と、可視光レーザの照射位置の変化との比は、この光路長に比例するので、確保できる光路長が長ければ長いほど、乗員の目に可視光レーザが当たり続ける時間が短くなる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0090】
また、カバー3の底部が運転者から見てインナーミラー2の陰に隠れるので、カバー3が運転者の運転の邪魔にならない。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9に、本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5の車室1内の搭載位置および照射領域を示す。
【0091】
図9に示す通り、本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5は、車室1内において、スステアリングハンドル8を車体に繋げるためのステアリングコラム9の上面に配置されている。また、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザは、運転者席の正面において計器類が表示されるメータ部11に制限されている。
【0092】
本実施形態の可視光レーザ照射装置5の構成および作動は、第1実施形態において図3、4に示した構成と同じように、運転席シートベルトバックル信号、車速信号、助手席着座信号、助手席シートベルトバックル信号、描画信号に基づいて、あるときには表示許可エリアを広く設定し、別のときには狭く設定するようになっていてもよいし、あるいは、表示許可エリアを常にメータ部11上の一定領域とするようになっていてもよい。
【0093】
このようになっていることで、可視光レーザは、ステアリングコラム上方から、メータ部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0094】
また、発光器53の配置および発光器53から照射される可視光レーザの照射先は、可視光レーザの光路が、車室1内の部分空間であって、当該部分空間以外の空間から直径17センチメートルの球体(ほぼ成人の頭と同等)を変形させずに当該部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっている。
【0095】
このようになっていることで、図9の頭部73に示すように、可視光レーザの光路に人の頭程度の大きさのものが入り込むことができなくなる。したがって、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図10に、本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の装置の車室1内への配置を概略的に示す。
【0096】
車室1内の配置において本実施形態が第1実施形態と異なる点は、前席の乗員の手元を照らすためのマップランプ12がインナーミラー2の直下に設置されている点、および、近接センサ13がカバー3の底面の直上に設置されている点である。
【0097】
近接センサ13は、自らの検出領域に物体(人を含む)が入ったことを検出し、それに応じて検出信号を出力するセンサであり、例えば反射光量式の近接センサを用いて実現してもよい。この近接センサ13の検出領域は、近接センサ13の直下方向の領域である。この領域は、可視光レーザの照射先が上面前端部21および上面中後部22を含む領域内に制限されたときの、可視光レーザの光路20と乗員との間の領域である。したがって、乗員が座席から移動して光路20に近づいても、乗員が光路20に到達する前に近接センサ13が乗員を検出することができる。
【0098】
図11に、本実施形態における可視光レーザ照射装置5の構成を示す。可視光レーザ照射装置5は、制御ECU51、モータ52、および発光器53を有している。モータ52および発光器53は、第1実施形態のものと同じである。ただし、モータ52は、発光器53のみならずマップランプ12の姿勢も変化させることで、マップランプ12の検出範囲を移動させるようになっている。具体的には、発光器53の向きがインストルメントパネル6の上面において左右に移動すると、それに同調してマップランプ12の検出範囲も左右に移動する。
【0099】
本実施形態の制御ECU51が第1実施形態の制御ECU51と異なる点は、照射許可判定部51dおよびマップランプ駆動部51eを有している点である。なお、本実施形態の制御ECU51は、表示エリア決定部51aを有していてもよいし有していなくてもよい。
【0100】
マップランプ駆動部51eは、照射許可判定部51dからの指令に応じて、マップランプ12の点灯および消灯を制御する機能を担う部分である。照射許可判定部51dは、近接センサ13からの検出信号および第1実施形態と同じ描画信号に基づいて、可視光レーザを照射することを許可するか禁止するかを決定し、その決定の結果をメカ機構駆動部51bおよび発光器駆動部51cに渡す。
【0101】
図12に、このような機能を実現するために照射許可判定部51dが実行する処理のフローチャートを示す。照射許可判定部51dは、車両のイグニッションがオンのとき、この処理を実行する。
【0102】
この図に示すように、照射許可判定部51dは、まずステップ205で描画信号を受け付け、続いてステップ210で、描画信号の受け付けに成功したか、すなわち、描画信号があるか否かを判定する。描画信号があれば続いてステップ215を実行し、なければ続いてステップ245を実行する。
【0103】
ステップ215では、近接センサ13からの検出信号を受け付け、続いてステップ220で、近接センサ13が物体の近接を検出したか否かを判定し、近接ありの場合は続いてステップ235を実行し、近接なしの場合は続いてステップ225を実行する。
【0104】
ステップ235では、モータ52の作動を停止する旨の指令をメカ機構駆動部51bに渡し、さらに続くステップ240では、発光器53の作動を停止する旨の指令をメカ機構駆動部51bに渡す。この指令に応じてメカ機構駆動部51bおよび発光器駆動部51cがそれぞれモータ52および発光器53を停止させることで、モータ52の駆動が禁止されると共に、発光器53から可視光レーザが照射されることが禁止される。
【0105】
ステップ225では、モータ52の作動を許可する旨の指令をメカ機構駆動部51bに渡し、さらに続くステップ230では、発光器53の作動を許可する旨の指令を発光器駆動部51cに渡す。この指令に応じてメカ機構駆動部51bおよび発光器駆動部51cが、描画信号に応じてそれぞれモータ52および発光器53を駆動させることで、描画信号に応じた位置で、描画信号に応じた図形を描くために、可視光レーザ照射による照射が行えるようになる。
【0106】
描画信号がないと判定した後のステップ245および250以降では、ステップ235および240と同じ処理により、モータ52の駆動を禁止すると共に、発光器53からの可視光レーザの照射を禁止する。
【0107】
そしてステップ260以降では、照射許可判定部51dは、マップランプ駆動部51eに指令を送ることにより、近接センサ13の検出範囲への物体の近接があったときに(ステップ260参照)、マップランプ12が消灯中であれば(ステップ270参照)マップランプ12を点灯させ(ステップ275参照)、マップランプ12が点灯中であれば(ステップ270参照)マップランプ12を消灯させる(ステップ280参照)。そして、近接センサ13の検出範囲への物体の近接がなければ(ステップ260参照)、マップランプ12の点灯・消灯状態を現状のままにしておく(ステップ265参照)。ステップ230、240、265、275、280の後、処理は再度ステップ205に戻る。
【0108】
このようなフローチャートの処理を照射許可判定部51dが実行することで、制御ECU51は、描画信号の有無に応じて(ステップ205、210参照)、描画信号がある場合は近接センサ13を可視光レーザの照射・非照射を切り替えるためのオン・オフスイッチとして利用し、描画信号がない場合は近接センサ13を可視光レーザ照射装置5以外の装置であるマップランプ12の作動・非作動を切り替えるためのオン・オフスイッチとして流用する。このように、発光器53が利用されていないときには、近接センサ13を、他の装置のオン・オフスイッチとして転用することで、近接センサ13の共用による製造コスト低減が実現する。なお、近接センサ13の流用対象としては、マップランプ12のみならず、可視光レーザ照射装置5以外の装置であればどのようなものでもよい。
【0109】
また、描画信号があるときは、制御ECU51は、近接センサ13から出力された検出信号に基づいて、光路への物体の進入があるか否かを判定し、その判定結果が肯定的なものであることに基づいて、照射器による可視光レーザの照射強度を禁止する。このようになっていることで、乗員の目が光路に入る前に、発光器53による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、強い可視光レーザがユーザの目に入る可能性が低減される。また、光路上に反射物が置かれる前に、発光器53による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、反射物による可視光レーザの反射光がユーザの目に入る可能性が低減される。また、可視光レーザによる上方表示が不要の場合に、近接センサ13の検出領域に手をかざすことで、乗員が意図的に可視光レーザの照射を止めることが可能となる。
【0110】
また、制御ECU51は、可視光レーザの照射方向を変化させると共に、可視光レーザの照射方向の変化に追従させて近接センサ13の検出方向も変化させるようになっている。このようになっていることで、発光器53の照射方向の変化に合わせて近接センサ13の検出範囲が変化するので、近接センサ13が一度に検出可能なエリアを狭くすることができる。また、無駄なエリアを検出することがなくなるので、近接センサ13による誤検出を防止する一助となる。
【0111】
また、近接センサ13は、発光器53が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域に物体が入ったことに基づいて検出信号を出力するようになっている。このように、近接センサ13の検出領域を、発光器53が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域とすることで、発光器53が可視光レーザを照射している領域へ乗員または反射物が侵入した結果乗員の目に可視光レーザが入ってしまうという事態を未然に防ぐことができるようになる。また、このように、発光器53が可視光レーザを照射している領域と近接センサ13の検出領域が異なっていることで、近接センサ13を可視光レーザ照射装置5以外の装置のオン・オフスイッチとして流用し易くなる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図13に、本実施形態における可視光レーザ照射装置5の取り付け位置を示す。この図に示す通り、可視光レーザ照射装置5は、車室1の天井の前端部において、左右方向についての中央に搭載されている。なお、本実施形態の可視光レーザ照射装置5の構成は、第1実施形態の図3に示したものと同じである。ただし、表示エリア決定部51aが受ける信号は、車両の各シート15〜18に設けられた各着座センサからの信号である。なお、各着座センサは、第1実施形態における助手席用の着座センサと同じものを用いてもよい。さらに表示エリア決定部51aが実行する処理は、図4に示したようなものでなく、以下に示す通りのものである。
【0112】
すなわち、各席15〜18のそれぞれについて、乗員が着座しているか否かを、その座席における着座センサからの信号に基づいて検出し、着座している場合としていない場合とで、表示許可エリアを変化させる。
【0113】
例えば、助手席に乗員が着座していないと判定したときには、インストルメントパネル6の助手席側および助手席16を、表示許可エリアに含める。また、助手席に乗員がいるときには、インストルメントパネル6の助手席側部分および助手席16を、表示許可エリアから除外する。
【0114】
また例えば、助手席および後部座席共に乗員が着座していないときには、助手席16、左後部座席18、および左側リアピラー(右側リアピラー19の反対側のリアピラー)を、表示許可エリアに含める。また、助手席および後部座席のいずれかに乗員が着座している場合には、助手席16、左後部座席18、および左側リアピラー(右側リアピラー19の反対側のリアピラー)を、表示許可エリアから除外する。
【0115】
このように、発光器53は、車両のシートに乗員が座っているか否かを判定し、座っていないと判定したことに基づいて、発光器53による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射し、また、座っていると判定したことに基づいて、発光器53による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射することを禁止するようになっている。
【0116】
このように、シートへの着座の有無に応じて、当該シートおよびその近傍への可視光レーザの照射の禁止・許可を切り替えることで、乗員がシートに座っているときには、当該シートに可視光レーザを照射しないことで当該乗員の網膜への悪影響の可能性を低減し、当該シートに誰も座っていないときには、そのシートに照射を行うことで、乗員のいないスペースを有効に活用して情報を提供することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0117】
また、表示エリア決定部51aは、あらかじめ車両の各ガラス41〜44およびインナーミラー2の鏡面を、表示可能エリアから除外している。
【0118】
なお、可視光レーザ照射装置5から各シートの位置、ピラーの位置、ガラス41〜44の位置、インナーミラー2の鏡面の位置等への方向の情報は、可視光レーザ照射装置5の車両への設置時または設置前にあらかじめ制御ECU51内に記憶するようになっている。
【0119】
このように、制御ECU51は、車室内のガラスおよび鏡面の位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、照射器による可視光レーザのガラスおよび鏡面への照射を禁止する。
【0120】
このようになっていることで、可視光レーザがガラスを透過して車両外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。また、可視光レーザが鏡面で反射して車両内外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の可視光レーザ照射装置5は、上記第1〜第5実施形態のそれぞれにおいて、制御ECU51が、モータ52または発光器53を制御して可視光レーザによる照射対象の位置を変化させるとき、その変化の速度が大きいほど、発光器53から照射させる可視光レーザの強度を高くする。
【0121】
これによって、仮に人の目に可視光レーザが入ったとしても、目に入る可視光レーザのエネルギーが抑えられるようにする。例えば、人の目に入ってしまった可視光レーザがクラス1の被爆放出限界を超えないようにするためには、人の目に可視光レーザが入っている時間をt1とすると、クラス1の被爆放出限界は、7×10×t10.75/t1ワットとなる。
【0122】
したがって、可視光レーザの照射対象位置の移動速度が、人の目(直径およそ7ミリメートル)を10ミリ秒で通過する程度の速度(以下、第1の速度という)であるときの許容パワーは、上記計算式から2.2ミリワットとなる。また、可視光レーザの照射対象位置の移動速度が、人の目を100ミリ秒で通過する程度の速度(以下、第2の速度という)であるときの許容パワーは、上記計算式から1.2ミリワットとなる。
【0123】
従って、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザのパワーを、例えば、第1の速度の場合は2ミリワットとし、第1の速度よりも遅い第2の速度の場合は1ミリワットとするようになっていてもよい。
【0124】
なお、制御ECU51は、照射対象の位置の変化の速度を、照射方向の変化に所定の基準距離(例えば、図1の可視光レーザ照射装置5から上面前端部21までの距離、図9の可視光レーザ照射装置5からメータ部11までの距離、図13の可視光レーザ照射装置5から助手席16までの距離等)を乗じた値として特定するようになっていてもよい。
【0125】
このように、制御ECU51は、発光器53から照射される可視光レーザの照射方向を変化させる速度が高いほど、発光器53から照射される可視光レーザの照射強度を高くするようになっている。これにより、照射方向を変化させる速度が遅くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が高くなると、照射強度が低下する。その結果、目に入る可視光レーザのエネルギー量を抑えることができる。また、照射方向を変化させる速度が速くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が低くなると、照射強度が上昇する。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0126】
なお、上記の実施形態において、発光器53が照射器の一例に相当し、制御ECU51が制御回路の一例に相当し、近接センサ13が光路進入検出器の一例に相当し、カバー3が板材の一例に相当する。
【0127】
また、制御ECU51、がプログラム100のステップ110または130を実行することでシートベルト装着判定手段の一例として機能し、ステップ145を実行することで領域拡大手段の一例として機能し、ステップ120を実行することで助手席乗員判定手段の一例として機能し、ステップ130を実行することで助手席用シートベルト装着判定手段の一例として機能し、ステップ110を実行することで運転席用シートベルト装着判定手段の一例として機能し、ステップ140を実行することで車速判定手段の一例として機能し、ステップ150を実行することで領域縮小手段の一例として機能する。
【0128】
また、制御ECU51が、プログラム200のステップ220を実行することで、光路進入判定手段の一例として機能し、ステップ235または240を実行することで照射抑制手段の一例として機能する。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0129】
例えば、制御ECU51は、発光器53可視光レーザの照射を行っている間中、照射する可視光レーザの照射方向を常に変化させるようになっていてもよい。このようになっていることで、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0130】
また、制御ECU51は、照射器が照射する可視光レーザの強度を第1の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向を常に変化させ、可視光レーザの強度を第1の強度より低い第2の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向の変化を停止させる場合があるようになっていてもよい。
【0131】
このようになっていることで、可視光レーザの強度が高いとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0132】
また、制御ECU51は、乗員への情報の提供として、車室内の一部位(例えば、特定のシート、ステアリングハンドル、特定のドア、特定のメータ)を指示するとき、可視光レーザの照射対象の位置が当該一ヶ所内において常に変化するよう、可視光レーザの照射方向を常に変化させるようになっていてもよい。当該一ヶ所内において照射対象の位置を常に変化させる方法としては、例えば、当該一ヶ所における円周を可視光レーザの光点がなぞるように、照射方向を制御する方法がある。
【0133】
このようになっていることで、可視光レーザによって車両内の一ヶ所が指示されるとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0134】
また、照射器は、必ずしも自らが発光する(すなわち可視光レーザを生成する)必要はなく、生成された可視光レーザを照射対象に向けて照射するものであればよい。例えば、可視光レーザを生成する光生成部が、車両の他の部分(例えば車両後部)に搭載されており、その光生成部が生成した可視光レーザが光ケーブルで照射器に送られ、照射器は、光ケーブルから送られた可視光レーザを鏡等で反射することで、当該可視光レーザを照射対象に照射するようになっていてもよい。
【0135】
また、光路進入判定部の検出範囲と可視光レーザの照射範囲とは一致していてもよい。この場合は、可視光レーザが人の目に入ってもすぐに可視光レーザの照射が途切れるようにすることができ、また、可視光レーザの照射範囲内に異物が置かれて可視光レーザが反射しても、すぐに可視光レーザの照射が途切れるようにすることができる。また、制御ECU51は、照射器53とは大きく離れた位置にあっても構わない。
【0136】
また、第1実施形態においては、可視光レーザ照射装置5の表示許可エリアを常にインストルメントパネル6の上面前端部21上に制限してもよい。このようになっていることで、可視光レーザは、車室内でありかつ車両のインナーミラーよりも前方となる位置から、インストルメントパネルの上面の前端部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0137】
このようになっていることで、可視光レーザは、車室内でありかつ車両のインナーミラーよりも前方となる位置から、インストルメントパネルの前端部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0138】
また、第3実施形態においては、近接センサ13を光路またはその近傍を撮影するカメラに代えてもよい。その場合、制御ECU51は、周知の画像解析手法によって、そのカメラによる撮影画像が基準画像より基準指標以上変化したことに基づいて、光路に物体が入り込んだことまたは入り込みつつあると判定するようになっていてもよい。なお、基準画像は、カメラの車室1内への設置直後に、異物のない状態でそのカメラに撮影させた画像を用いてもよい。また、基準指標以上変化したか否かは、撮影画像が基準画像との一致度が所定スコア以下であるか否かで判定してもよい。一致度としては、撮影画像と基準画像のそれぞれを2値化し、それら2値化された2つの画像において、位置が対応するピクセル同士を比較することを全ピクセルについて行い、その結果、同じ値を有しているピクセル数が多いほど多くなる値を一致度として用いてもよい。
【0139】
また、発光器53の配置および発光器53から照射される可視光レーザの照射先は、可視光レーザの光路が、車室1内の部分空間であって、当該部分空間以外の空間から直径14センチメートルの球体(乳児の頭の大きさとほぼ同等)を変形させずに当該部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっていてもよい。このようにすることで、乳児の目に誤って可視光レーザが入射する可能性がほとんどなくなる。
【0140】
また、本発明の板材は、上記実施形態のカバー3のように、発光部5の底面および側面を覆うようになっていてもよいし、発光部5の底面にのみ存在していてもよい。板材は、照射器から照射される可視光レーザを透過する材質から成っており、かつ、照射器から離れた下方にあり、かつ、照射器からの可視光レーザの光路内にあれば足りる。
【0141】
また、上記の実施形態において、制御回路51がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】第1実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の車室1内の配置および照射方向を示す概略図である。
【図2】インストルメントパネル6の上面前端部21および上面中後部22の範囲の一例を表す斜視図である。
【図3】第1実施形態における可視光レーザ照射装置5の構成および信号の入力関係を示すブロック図である。
【図4】表示エリア決定部51aの実行する処理のフローチャートである。
【図5】表示許可範囲拡大時および左折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図6】表示許可範囲拡大時および右折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図7】表示許可範囲縮小時および左折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図8】表示許可範囲縮小時および右折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の車室1内の配置および照射方向を示す概略図である。
【図10】第3本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の装置の車室1内への配置を示す概略図である。
【図11】第3実施形態における可視光レーザ照射装置5の構成および信号の入力関係を示すブロック図である。
【図12】照射許可判定部51dの実行する処理のフローチャートである。
【図13】第4実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の車室1内の配置示す概略図である。
【符号の説明】
【0143】
1…車室、2…インナーミラー、3…カバー、4…フロントガラス、
5…可視光レーザ照射装置、6…インストルメントパネル、7…運転者、
8…ステアリングハンドル、9…ステアリングコラム、10…メータフード、
11…メータ部、12…マップランプ、13…近接センサ、15…運転席、
16…助手席、17…後部右座席、18…後部左座席、20…光路、
21…上面前端部、22…上面中後部、23…検出領域、31、33…左ターン矢印、
32、34…右ターン矢印、41〜44…ガラス、51…制御ECU、
51a…表示エリア決定部、51b…メカ機構駆動部、51c…発光器駆動部、
51d…照射許可判定部、51e…マップランプ駆動部51e、
52…モータ、53…発光器、71〜73…仮想頭部イメージ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員に情報を提供するために、当該車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する可視光レーザ照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光レーザを車両前端部から路面に対して照射することで、路面に描画を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−210716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本件発明の発明者は、可視光レーザを、車外ではなく車両の車室内に照射することで、当該車両の乗員に情報を提供することを着想した。このような場合、車外から車室内に太陽光等が射し込むような状況においては、車室内に照射された可視光レーザの視認性を維持できる程度に、照射する可視光レーザの強度を高くすることが考えられる。しかし、強度の高い可視光レーザが人の目に直接照射されてしまった場合、網膜がダメージを受けてしまう危険性がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、車両の乗員に情報を提供するために、当該車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する可視光レーザ照射装置の技術において、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明の第1の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両の走行速度が基準速度より高いことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっていることである。
【0006】
車両が走行しているときは、走行していないときに比べ、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車両が走行しているときは、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。また、車速が高くなればなるほど、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車速が高いほど、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲を車速に応じて変化させることができる。
【0007】
また、本発明の第2の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両のシートベルトが装着されているか否かを判定し、当該シートベルトが装着されていると判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くすることである。
【0008】
乗員がシートベルトをしていれば、乗員が車室内で動き回ることができる範囲が制限される。したがって、乗員がシートベルトを装着している場合は、装着していない場合に比べ、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲をシートベルト装着の有無に応じて変化させることができる。
【0009】
また、本発明の第3の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、助手席に乗員が着座しているか否かを判定し、また、助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定し、そして、助手席に乗員が着座しており、かつ、助手席のシートベルトが装着されていることに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くすることである。
【0010】
助手席の乗員がシートベルトをしていれば、当該乗員が車室内で動き回ることができる範囲が制限される。したがって、助手席に乗員が着座しており、かつ、助手席の乗員がシートベルトを装着している場合は、装着していない場合に比べ、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。
【0011】
したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲を助手席の乗員のシートベルト装着の有無に応じて変化させることができる。
【0012】
制御回路はさらに、車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定すると共に、車両の走行速度が基準速度より高いか否かを判定するようになっていてもよい。この場合、制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっていてもよい。
【0013】
このようにすることで、運転者および助手席乗員のシートベルトの装着の有無、および車速の複合的な関係に応じて、可視光レーザの照射対象の領域を制御することで、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、より確実に同時に実現することができる。
【0014】
また、本発明の第4の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定し、かつ、車両の助手席に乗員が着座しているか否かを判定し、かつ、助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定するようになっていてもよい。
【0015】
この場合、制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くしてもよい。また制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していないと判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっていてもよい。
【0016】
さらに制御回路は、運転席用シートベルトが装着されていないと判定した第1の場合、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていないと判定した第2の場合、および、走行速度が基準速度より低いと判定した第3の場合の3つの場合のそれぞれにおいて、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっていてもよい。
【0017】
このように、第1〜第3の条件のうち1つでも満たされていれば、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっていることで、運転者および助手席乗員のシートベルトの装着の有無、および車速の複合的な関係に応じて、可視光レーザの照射対象の領域を制御でき、それによって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、より確実に同時に実現することができる。
【0018】
本発明の第5の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器は、車室内において、車両のインナーミラーよりも前方に配置され、照射器から照射される可視光レーザは、車両のインストルメントパネルの上面のうち前端部に制限されていることを特徴とする。
【0019】
このようになっていることで、可視光レーザは、車室内でありかつ車両のインナーミラーよりも前方となる位置から、インストルメントパネルの前端部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0020】
なお、本明細書および特許請求の範囲においては、特記しない限り、「前」とは、車両の前端に近いことをいい、「後」とは、車両の後端に近いことをいう。また、照射態様としては、例えば、照射のオン・オフ、照射方向、照射タイミング、照射する可視光レーザの色、照射によって描画する文字または絵の内容が考えられる。
【0021】
また、本発明の第6の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器は、車室内において、車両のステアリングコラムの上面に配置され、照射器から照射される可視光レーザは、車両のメータ部に制限されていることである。
【0022】
このようになっていることで、可視光レーザは、ステアリングコラム上方から、メータ部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0023】
また、本発明の第7の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器の配置および照射器から照射される可視光レーザの照射先は、可視光レーザの光路が、車室内の部分空間であって、当該部分空間以外の空間から直径17センチメートルの球体を変形させずに当該部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっていることである。
【0024】
このようになっていることで、可視光レーザの光路に人の頭程度の大きさのものが入り込むことができなくなる。したがって、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0025】
また、本発明の第8の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置が、さらに、照射器から射出される可視光レーザの光路への物体の進入を検出するための検出信号を出力する光路進入検出器を備え、また、制御回路が、光路進入検出器から出力された検出信号に基づいて、光路への物体の進入があるか否かを判定し、その判定結果が肯定的なものであることに基づいて、照射器による可視光レーザの照射強度を抑制することである。
【0026】
このようになっていることで、乗員の目が光路に入る前に、あるいは、光路に入ると即座に、照射器による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、強い可視光レーザがユーザの目に入る可能性が低減される。また、光路上に反射物が置かれる前に、あるいは、置かれた直後に、照射器による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、反射物による可視光レーザの反射光がユーザの目に入る可能性が低減される。
【0027】
なお、ここでいう「光路への物体の進入」とは、光路へ物体が実際に進入することに加え、光路へ物体が近づきつつあることをも含む概念である。また、ここでいう「照射強度の抑制」とは、照射強度を低く調整することに加え、照射そのものを禁止することをも含む概念である。また、ここでいう「物体」とは、人をも含む概念である。
【0028】
この光路進入検出器は、光路またはその近傍に物体が接近していることを検出する近接センサであってもよいし、光路またはその近傍を撮影するカメラであってもよし、それらの両方の機能を併せ持つ装置であってもよい。
【0029】
光路進入検出器が、光路またはその近傍を撮影するカメラである場合、制御回路は、そのカメラによる撮影画像が基準画像より基準指標以上変化したことに基づいて、光路に物体が入り込んだことまたは入り込みつつあると判定するようになっていてもよい。
【0030】
また、制御回路は、可視光レーザの照射方向を変化させると共に、可視光レーザの照射方向の変化に追従させて光路進入検出器の検出方向も変化させるようになっていてもよい。このようになっていることで、照射器の照射方向の変化に合わせて光路進入検出器の検出範囲が変化するので、光路進入検出器が一度に検出可能なエリアを狭くすることができる。また、無駄なエリアを検出することがなくなるので、誤検出防止の一助となる。
【0031】
また、光路進入検出器は、照射器が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域に物体が入ったことに基づいて検出信号を出力するようになっていてもよい。このように、光路進入検出器の検出領域を、照射器が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域とすることで、照射器が可視光レーザを照射している領域へ乗員または反射物が侵入した結果乗員の目に可視光レーザが入ってしまうという事態を未然に防ぐことができるようになる。
【0032】
また、制御回路は、照射器に可視光レーザを照射させていないときに光路進入検出器から検出信号を受けたことに基づいて、車室内の当該可視光レーザ照射装置以外の装置の作動のオン・オフを切り替えるための信号を出力するようになっていてもよい。このように、照射器が利用されていないときには、光路進入検出器を、他の装置のオン・オフスイッチとして転用することで、光路進入検出器の共用による製造コスト低減が実現する。
【0033】
また、本発明の第9の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路が、車両のシートに乗員が座っているか否かを判定し、座っていないと判定したことに基づいて、照射器による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射し、また、座っていると判定したことに基づいて、照射器による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射することを禁止するようになっていてもよい。
【0034】
このように、シートへの着座の有無に応じて、当該シートおよびその近傍への可視光レーザの照射の禁止・許可を切り替えることで、乗員がシートに座っているときには、当該シートに可視光レーザを照射しないことで当該乗員の網膜への悪影響の可能性を低減し、当該シートに誰も座っていないときには、そのシートに照射を行うことで、乗員のいないスペースを有効に活用して情報を提供することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0035】
また、本発明の第10の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、車室内のガラスの位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、照射器による可視光レーザのガラスへの照射を禁止することである。
【0036】
このようになっていることで、可視光レーザがガラスを透過して車両外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0037】
また、本発明の第11の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、車室内の鏡面の位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、照射器による可視光レーザの鏡面への照射を禁止することである。
【0038】
このようになっていることで、可視光レーザが鏡面で反射して車両内外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0039】
また、本発明の第12の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、照射器から照射される可視光レーザの照射方向を変化させる速度が速いほど、照射器から照射される可視光レーザの照射強度を高くするようになっていることである。
【0040】
このようになっていることで、照射方向を変化させる速度が遅くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が高くなると、照射強度が低下する。その結果、目に入る可視光レーザのエネルギー量を抑えることができる。また、照射方向を変化させる速度が速くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が低くなると、照射強度が上昇する。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0041】
また、本発明の第13の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、可視光レーザの照射方向を制御することで、車両の乗員に情報を提供する制御回路と、照射器から照射される可視光レーザを透過させる材質から成る板材と、を備えた可視光レーザ照射装置において、照射器は、車室内において、車両のインナーミラーよりも車室内の前方に配置されると共に、車両のインストルメントパネルの上面に可視光レーザを照射し、板材は、インナーミラーの下端部と同じ位置または高い位置であり、かつ、照射器における可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に、配置されていることである。
【0042】
このような場合、乗員の目が、板材の位置よりも照射器に近づくことはない。したがって、乗員の目が万一板材の下で可視光レーザの光路に入ったとしても、照射器における可視光レーザが射出される位置と乗員の目との間の距離、すなわち、可視光レーザの光路長が、当該射出位置と板材の間の距離以上確保できる。可視光レーザの照射方向の変化と、可視光レーザの照射位置の変化との比は、この光路長に比例するので、確保できる光路長が長ければ長いほど、乗員の目に可視光レーザが当たり続ける時間が短くなる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0043】
また、板材の底部が運転者から見てインナーミラーの陰に隠れるので、板材が運転者の運転の邪魔にならない。
【0044】
また、本発明の第14の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、照射器が照射する可視光レーザの照射方向を常に変化させることを特徴とする。
【0045】
このようになっていることで、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0046】
また、本発明の第15の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、照射器が照射する可視光レーザの強度を第1の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向を常に変化させ、可視光レーザの強度を第1の強度より低い第2の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向の変化を停止させる場合があることである。
【0047】
このようになっていることで、可視光レーザの強度が高いとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0048】
また、本発明の第16の特徴は、車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、当該可視光レーザの照射態様を制御することで、当該車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備えた可視光レーザ照射装置において、制御回路は、乗員への情報の提供として、車室内の一ヶ所を指示するとき、可視光レーザの照射対象の位置が当該一ヶ所内において常に変化するよう、可視光レーザの照射方向を常に変化させることである。
【0049】
このようになっていることで、可視光レーザによって車両内の一ヶ所が指示されるとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態が適用される車室1の内部を概略的に示す。なお、以下の説明において、特記しない限り、上、下、右、左、前、後等の位置、方向の表現は、車両を基準とした位置、方向を示すものである。車室1内の左右方向に関する中央部には、運転者7が後方を確認するためのインナーミラー2が設置されている。
【0051】
運転者7からみてインナーミラー2の裏側には、可視光レーザ照射装置5が設置されている。したがって、可視光レーザ照射装置5は、車室内において、インナーミラー2よりも前方に配置されている。より具体的には、可視光レーザ照射装置5は、インナーミラー2よりもやや上方にあり、かつ、インナーミラー2とフロントガラス4との間に配置されている。さらに具体的には、可視光レーザ照射装置5は、フロントガラス4の車室1側の面に取り付けられている。
【0052】
この可視光レーザ照射装置5は、運転者7等の車両の乗員に情報を提供するために、車室1内の一部に可視光レーザを照射するための装置である。昼間の車外からの光によっても可視光レーザが見えなくならない程度に、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザの強度は設定されている。このような場合、可視光レーザが人の目に入ると、網膜に悪影響が及ぶ可能性があるので、可視光レーザが人の目に入る可能性を低減することが望ましい。
【0053】
可視光レーザ照射装置5の底部および側部は、カバー3によって覆われている。カバー3は、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザを透過させる材質(例えば透明な樹脂)から成る。また、カバー3の底面は、インナーミラー2の下端部と同じ位置または高い位置に配置されていると共に、可視光レーザ照射装置5における可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に配置されている。
【0054】
可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザの光路20は、フロントガラス4に対して概ね平行になっている。そして、可視光レーザ照射装置5は、可視光レーザを、インストルメントパネル6の上面の上面前端部21および上面中後部22に照射することができるようになっている。
【0055】
図2に、上面前端部21および上面中後部22の範囲の一例を表す斜視図を示す。上面前端部21は、インストルメントパネルの上面のうち、フロントガラス4にごく近い(例えばフロントガラス4から10センチメートル以内の)領域である。上面中後部22は、インストルメントパネル6の上面のうち、上面前端部21以外の部分、すなわち、上面前端部21の後方に続く部分である。
【0056】
なお、可視光レーザ照射装置5から上面前端部21内に可視光レーザが照射される場合、図1の仮想頭部イメージ71、72に示すように、可視光レーザの光路20に人の目が入り込むように人の頭を配置することは、極めて困難である。
【0057】
図3に、可視光レーザ照射装置5の構成および信号の入力関係を示す。可視光レーザ照射装置5は、制御ECU51、モータ52、および発光器53を含んでいる。
【0058】
モータ52は、制御ECU51からの制御信号に基づいて回転することで、発光器53の向き(例えば、上面前端部21の中央、上面前端部21の右端部等)を調整するための装置である。
【0059】
発光器53は、可視光レーザを生成し、生成した光を、発光器53自身が向いている方向に照射する装置である。なお、発光器53は、その照射方向に、1つの光点のみならず、複数の光点から成る広がりを持った領域(以下、光領域)を表すことができる。光領域としては、例えば図形や文字がある。このように、モータ52によって制御された発光器53の向きに、文字や図形を表示させるために、発光器53は、周知のMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)共振ミラーや、DMD(ディジタル・マイクロミラー・デバイス)等の、光領域の描画のための周知の装置を用いてもよい。MEMS共振ミラーを用いた装置としては、例えば、日本信号株式会社のエコスキャン(登録商標)がある。また、ディジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた装置としては、例えば米国Texas Instruments社のDLP(登録商標)方式のデジタルプロジェクタがある。
【0060】
制御ECU51は、車両内の各種装置からの信号を受け、受けた信号の内容に基づいて、モータ52および発光器53の作動を制御するための装置である。制御ECU51としては、例えば、図示しないCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備えたマイクロコンピュータで実現可能である。制御ECU51が受ける信号としては、例えば、図3に示すように、運転席シートベルトバックル信号、車速センサからの車速信号、助手席着座信号、助手席シートベルトバックル信号、描画信号等がある。
【0061】
運転席シートベルトバックル信号は、運転席のシートバックルが運転席バックルホルダに装着されているか否か、すなわち、運転席のシートベルトが装着されているか否かを検出するセンサからの検出信号である。
【0062】
助手席着座信号は、助手席に乗員が着座したか否かを検出する着座センサからの検出信号である。このようなセンサとしては、例えば、助手席シート内に埋め込まれた感圧センサ等を用いてもよい。
【0063】
助手席シートベルトバックル信号は、助手席のシートバックルが助手席バックルホルダに装着されているか否か、すなわち、助手席のシートベルトが装着されているか否かを検出する周知のセンサからの検出信号である。
【0064】
描画信号は、どのような態様で可視光レーザの照射を行うかを指令する信号である。この描画信号を出力する描画指令装置(図示せず)は、ケーブルまたは無線によって車内の各部から信号を受け付け、その受け付けた信号に基づいて乗員にどのような情報を提示するかを決定し、決定した表示内容に基づいて可視光レーザの照射の態様を決定し、決定した照射の態様を出力する。
【0065】
例えば、車内の各部から受ける信号としては、各種センサや操作スイッチからの信号、あるいは、車両用ナビゲーション装置からの信号等がある。車両用ナビゲーション装置からの信号としては、例えば、ターンバイターン用の方向を示す信号が考えられる。ターンバイターンとは、車両用ナビゲーション装置が決定した目的地までの最適経路に沿って車両を走行させるために、運転者に次の交差点で右折または左折を指示する図形(例えば矢印図形)を、右左折することが必要な交差点に車両が近づく度に表示する機能である。本例においては、車両用ナビゲーション装置は、ターンバイターンのために指示する必要のある曲折方向を示す信号を、描画指令装置に出力する。すると、描画指令装置は、この信号が示している方向に対応する図形を表示するよう指令する描画信号を、制御ECU51に出力する。
【0066】
機能の観点から見ると、制御ECU51は、表示エリア決定部51a、メカ機構駆動部51b、および発光器駆動部51cを有している。制御ECU51がマイクロコンピュータである場合、これらの機能のそれぞれを実現するために、所定のプログラムを読み出して実行するようになっていてもよい。また、制御ECU51は、これらの機能毎に専用のICチップを有していてもよい。
【0067】
表示エリア決定部51aは、運転席シートベルトバックル信号、車速信号、助手席着座信号、助手席シートベルトバックル信号、および図示しないイグニッション信号等に基づいて、発光器53の照射を許可するする領域、すなわち表示許可エリアを決定し、その決定内容をメカ機構駆動部51bに渡す機能を担う部分である。
【0068】
メカ機構駆動部51bは、描画信号および表示エリア決定部51aの決定した表示許可エリアに基づいて、モータ52に制御信号を出力することで、モータ52の作動、すなわち、発光器53の照射する方向を制御する機能を担う部分である。
【0069】
発光器駆動部51cは、描画信号に基づいて、発光器53を制御することで、描画信号の示す図形または光点を発光器53に描画させる機能を担う部分である。
【0070】
ここで、表示エリア決定部51aが上記の機能を実現するために実行する処理のフローチャートを図4に示す。なお、表示エリア決定部51aは、車両のイグニッションがオンのときに、この処理を実行する。この処理において、表示エリア決定部51aは、まずステップ105で、運転席シートベルトバックル信号を受け付け、続いてステップ110で、受け付けた運転席シートベルトバックル信号に基づいて、運転席のシートベルトが装着されているか否かを判定する。装着されている場合は、続いてステップ115を実行し、装着されていない場合は、続いてステップ150を実行する。
【0071】
ステップ115では、助手席着座信号を受け付け、続いてステップ120では、受けた助手席着座信号に基づいて、助手席に乗員がいるか否かを判定する。助手席に乗員がいる場合は続いてステップ125を実行し、いない場合は続いてステップ135を実行する。
【0072】
ステップ125では、助手席シートベルトバックル信号を受け付け、続いてステップ130では、受けた助手席シートベルトバックル信号に基づいて、助手席の乗員がシートベルトを装着しているか否かを判定する。装着している場合は続いてステップ135を実行し、装着していない場合は続いてステップ135を実行する。
【0073】
ステップ135では、車速信号を受け付け、続いてステップ140では、受けた車速信号が基準速度以上であるか否かを判定する。基準速度としては、一定値(例えば、時速20キロメートル、時速5キロメートル)であってもよいし、各種条件によって変化する値であってもよいし、一定の範囲内でランダムに変化する値であってもよい。基準速度以上である場合は続いてステップ145を実行し、基準速度未満である場合には続いてステップ150を実行する。
【0074】
ステップ145では、表示許可エリアを、2つのあらかじめ決められた範囲のうち、広い方の範囲に設定する。具体的には、表示許可エリアを、上面前端部21と上面中後部22の両方から成る領域とする。ステップ150では、表示許可エリアを、2つのあらかじめ決められた範囲のうち、狭い方の範囲に設定する。具体的には、表示許可エリアを、上面前端部21のみに限定する。ステップ145または150の後、処理は再度ステップ105に戻る。
【0075】
このような処理により、表示エリア決定部51aは、下記の第1〜第3の条件のうちいずれ1つでも満たされている間は、表示許可エリアを狭い方のエリア、すなわち上面前端部21に限定し続ける。
第1の条件:運転席シートベルトが装着されていない
第2の条件:助手席に乗員がおり、かつ、助手席のシートベルトが装着されていない
第3の条件:車速が基準速度未満である
そして、制御ECU51は、下記の第4、5、および7の条件がすべて満たされている間、ならびに、第4、6、および7の条件がすべて満たされている間には、表示許可エリアを広い方のエリア、すなわち上面前端部21と上面中後部22とを合わせた領域に設定し続ける。
第4の条件:運転席シートベルトが装着されている
第5の条件:助手席に乗員がおり、かつ、助手席のシートベルトが装着されている
第6の条件:助手席に乗員がいない
第7の条件:車速が基準速度以上である
メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、広い方のエリアである場合、描画信号に応じて、上面前端部21および上面中後部22のどの領域にも描画が可能な状態となる。
【0076】
例えば、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、広い方のエリアであり、かつ、描画信号が左折を示している場合は、図5に示すように、例えば上面中後部22のうち、ステアリングハンドル8よりも左側の位置に、左ターン矢印31が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0077】
また、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、広い方のエリアであり、かつ、描画信号が右折を示している場合は、図6に示すように、例えば上面中後部22のうち、ステアリングハンドル8よりも右側の位置に、右ターン矢印32が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0078】
また、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、狭い方のエリアである場合、描画信号の内容に関わらず、上面前端部21にしか可視光レーザの照射を行わない状態となる。
【0079】
例えば、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、狭い方のエリアであり、かつ、描画信号が左折を示している場合は、図7に示すように、上面前端部21のうち、例えばステアリングハンドル8よりも左側の位置に、左ターン矢印33が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0080】
また、メカ機構駆動部51bは、表示エリア決定部51aから渡された表示許可エリアが、狭い方のエリアであり、かつ、描画信号が右折を示している場合は、図8に示すように、上面前端部21のうち、例えばステアリングハンドル8よりも右側の位置に、右ターン矢印34が表示されるように、モータ52を介して発光器53の照射方向を制御する。
【0081】
また、発光器駆動部51cは、描画信号に基づいて発光器53を制御することで、図5〜8に例示するように、右折を示す矢印図形31、33または左折を示す矢印図形32、34を、モータ52によって発光器53が向けられた方向の先にあるインストルメントパネル6上の位置に、描画する。
【0082】
なお、可視光レーザ照射装置5から上面前端部21、上面中後部22への方向の情報は、可視光レーザ照射装置5の車両への設置時または設置前にあらかじめ制御ECU51内に記憶するようになっていてもよい。
【0083】
以上のように、制御ECU51は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっている。また制御ECU51は、運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、助手席に乗員が着座していないと判定し、かつ、走行速度が基準速度より高いと判定したことに基づいて、可視光レーザの照射対象の領域を広くするようになっている。
【0084】
車両が走行しているときは、走行していないときに比べ、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車両が走行しているときは、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。また、車速が高くなればなるほど、乗員が車室内で動き回る可能性が低くなる。したがって、車速が高いほど、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲を車速に応じて変化させることができる。
【0085】
また、運転席または助手席の乗員がシートベルトをしていれば、当該乗員が車室内で動き回ることができる範囲が制限される。したがって、乗員がシートベルトを装着している場合は、装着していない場合に比べ、強度の高い可視光レーザを照射しても人の網膜に悪影響を与える可能性が低い領域が拡大する。したがって、上記のような作動により、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとが同時に実現するように、照射範囲をシートベルト装着の有無に応じて変化させることができる。
【0086】
さらに制御ECU51は、運転席用シートベルトが装着されていないと判定した第1の場合、助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、助手席のシートベルトが装着されていないと判定した第2の場合、および、走行速度が基準速度より低いと判定した第3の場合の3つの場合のそれぞれにおいて、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっている。
【0087】
このように、第1〜第3の条件のうち1つでも満たされていれば、可視光レーザの照射対象の領域を狭くするようになっていることで、運転者および助手席乗員のシートベルトの装着の有無、および車速の複合的な関係に応じて、可視光レーザの照射対象の領域を制御することができ、それによって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、確実かつ同時に実現することができる。
【0088】
また、表示可能エリアが上面前端部21内に限定されたとき、乗員が可視光レーザの光源を覗き込みにくくなるため、乗員の目の安全性が高まる。
【0089】
また、カバー3は、インナーミラー2の下端部と同じ位置または高い位置であり、かつ、発光器53における可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に、配置されている。このような場合、乗員の目が、カバー3の位置よりも発光器53に近づくことはない。したがって、乗員の目が万一カバー3の下で可視光レーザの光路に入ったとしても、発光器53における可視光レーザが射出される位置と乗員の目との間の距離、すなわち、可視光レーザの光路長が、当該射出位置とカバー3の間の距離以上確保できる。可視光レーザの照射方向の変化と、可視光レーザの照射位置の変化との比は、この光路長に比例するので、確保できる光路長が長ければ長いほど、乗員の目に可視光レーザが当たり続ける時間が短くなる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0090】
また、カバー3の底部が運転者から見てインナーミラー2の陰に隠れるので、カバー3が運転者の運転の邪魔にならない。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9に、本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5の車室1内の搭載位置および照射領域を示す。
【0091】
図9に示す通り、本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5は、車室1内において、スステアリングハンドル8を車体に繋げるためのステアリングコラム9の上面に配置されている。また、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザは、運転者席の正面において計器類が表示されるメータ部11に制限されている。
【0092】
本実施形態の可視光レーザ照射装置5の構成および作動は、第1実施形態において図3、4に示した構成と同じように、運転席シートベルトバックル信号、車速信号、助手席着座信号、助手席シートベルトバックル信号、描画信号に基づいて、あるときには表示許可エリアを広く設定し、別のときには狭く設定するようになっていてもよいし、あるいは、表示許可エリアを常にメータ部11上の一定領域とするようになっていてもよい。
【0093】
このようになっていることで、可視光レーザは、ステアリングコラム上方から、メータ部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0094】
また、発光器53の配置および発光器53から照射される可視光レーザの照射先は、可視光レーザの光路が、車室1内の部分空間であって、当該部分空間以外の空間から直径17センチメートルの球体(ほぼ成人の頭と同等)を変形させずに当該部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっている。
【0095】
このようになっていることで、図9の頭部73に示すように、可視光レーザの光路に人の頭程度の大きさのものが入り込むことができなくなる。したがって、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図10に、本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の装置の車室1内への配置を概略的に示す。
【0096】
車室1内の配置において本実施形態が第1実施形態と異なる点は、前席の乗員の手元を照らすためのマップランプ12がインナーミラー2の直下に設置されている点、および、近接センサ13がカバー3の底面の直上に設置されている点である。
【0097】
近接センサ13は、自らの検出領域に物体(人を含む)が入ったことを検出し、それに応じて検出信号を出力するセンサであり、例えば反射光量式の近接センサを用いて実現してもよい。この近接センサ13の検出領域は、近接センサ13の直下方向の領域である。この領域は、可視光レーザの照射先が上面前端部21および上面中後部22を含む領域内に制限されたときの、可視光レーザの光路20と乗員との間の領域である。したがって、乗員が座席から移動して光路20に近づいても、乗員が光路20に到達する前に近接センサ13が乗員を検出することができる。
【0098】
図11に、本実施形態における可視光レーザ照射装置5の構成を示す。可視光レーザ照射装置5は、制御ECU51、モータ52、および発光器53を有している。モータ52および発光器53は、第1実施形態のものと同じである。ただし、モータ52は、発光器53のみならずマップランプ12の姿勢も変化させることで、マップランプ12の検出範囲を移動させるようになっている。具体的には、発光器53の向きがインストルメントパネル6の上面において左右に移動すると、それに同調してマップランプ12の検出範囲も左右に移動する。
【0099】
本実施形態の制御ECU51が第1実施形態の制御ECU51と異なる点は、照射許可判定部51dおよびマップランプ駆動部51eを有している点である。なお、本実施形態の制御ECU51は、表示エリア決定部51aを有していてもよいし有していなくてもよい。
【0100】
マップランプ駆動部51eは、照射許可判定部51dからの指令に応じて、マップランプ12の点灯および消灯を制御する機能を担う部分である。照射許可判定部51dは、近接センサ13からの検出信号および第1実施形態と同じ描画信号に基づいて、可視光レーザを照射することを許可するか禁止するかを決定し、その決定の結果をメカ機構駆動部51bおよび発光器駆動部51cに渡す。
【0101】
図12に、このような機能を実現するために照射許可判定部51dが実行する処理のフローチャートを示す。照射許可判定部51dは、車両のイグニッションがオンのとき、この処理を実行する。
【0102】
この図に示すように、照射許可判定部51dは、まずステップ205で描画信号を受け付け、続いてステップ210で、描画信号の受け付けに成功したか、すなわち、描画信号があるか否かを判定する。描画信号があれば続いてステップ215を実行し、なければ続いてステップ245を実行する。
【0103】
ステップ215では、近接センサ13からの検出信号を受け付け、続いてステップ220で、近接センサ13が物体の近接を検出したか否かを判定し、近接ありの場合は続いてステップ235を実行し、近接なしの場合は続いてステップ225を実行する。
【0104】
ステップ235では、モータ52の作動を停止する旨の指令をメカ機構駆動部51bに渡し、さらに続くステップ240では、発光器53の作動を停止する旨の指令をメカ機構駆動部51bに渡す。この指令に応じてメカ機構駆動部51bおよび発光器駆動部51cがそれぞれモータ52および発光器53を停止させることで、モータ52の駆動が禁止されると共に、発光器53から可視光レーザが照射されることが禁止される。
【0105】
ステップ225では、モータ52の作動を許可する旨の指令をメカ機構駆動部51bに渡し、さらに続くステップ230では、発光器53の作動を許可する旨の指令を発光器駆動部51cに渡す。この指令に応じてメカ機構駆動部51bおよび発光器駆動部51cが、描画信号に応じてそれぞれモータ52および発光器53を駆動させることで、描画信号に応じた位置で、描画信号に応じた図形を描くために、可視光レーザ照射による照射が行えるようになる。
【0106】
描画信号がないと判定した後のステップ245および250以降では、ステップ235および240と同じ処理により、モータ52の駆動を禁止すると共に、発光器53からの可視光レーザの照射を禁止する。
【0107】
そしてステップ260以降では、照射許可判定部51dは、マップランプ駆動部51eに指令を送ることにより、近接センサ13の検出範囲への物体の近接があったときに(ステップ260参照)、マップランプ12が消灯中であれば(ステップ270参照)マップランプ12を点灯させ(ステップ275参照)、マップランプ12が点灯中であれば(ステップ270参照)マップランプ12を消灯させる(ステップ280参照)。そして、近接センサ13の検出範囲への物体の近接がなければ(ステップ260参照)、マップランプ12の点灯・消灯状態を現状のままにしておく(ステップ265参照)。ステップ230、240、265、275、280の後、処理は再度ステップ205に戻る。
【0108】
このようなフローチャートの処理を照射許可判定部51dが実行することで、制御ECU51は、描画信号の有無に応じて(ステップ205、210参照)、描画信号がある場合は近接センサ13を可視光レーザの照射・非照射を切り替えるためのオン・オフスイッチとして利用し、描画信号がない場合は近接センサ13を可視光レーザ照射装置5以外の装置であるマップランプ12の作動・非作動を切り替えるためのオン・オフスイッチとして流用する。このように、発光器53が利用されていないときには、近接センサ13を、他の装置のオン・オフスイッチとして転用することで、近接センサ13の共用による製造コスト低減が実現する。なお、近接センサ13の流用対象としては、マップランプ12のみならず、可視光レーザ照射装置5以外の装置であればどのようなものでもよい。
【0109】
また、描画信号があるときは、制御ECU51は、近接センサ13から出力された検出信号に基づいて、光路への物体の進入があるか否かを判定し、その判定結果が肯定的なものであることに基づいて、照射器による可視光レーザの照射強度を禁止する。このようになっていることで、乗員の目が光路に入る前に、発光器53による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、強い可視光レーザがユーザの目に入る可能性が低減される。また、光路上に反射物が置かれる前に、発光器53による可視光レーザの照射強度が抑制されるので、反射物による可視光レーザの反射光がユーザの目に入る可能性が低減される。また、可視光レーザによる上方表示が不要の場合に、近接センサ13の検出領域に手をかざすことで、乗員が意図的に可視光レーザの照射を止めることが可能となる。
【0110】
また、制御ECU51は、可視光レーザの照射方向を変化させると共に、可視光レーザの照射方向の変化に追従させて近接センサ13の検出方向も変化させるようになっている。このようになっていることで、発光器53の照射方向の変化に合わせて近接センサ13の検出範囲が変化するので、近接センサ13が一度に検出可能なエリアを狭くすることができる。また、無駄なエリアを検出することがなくなるので、近接センサ13による誤検出を防止する一助となる。
【0111】
また、近接センサ13は、発光器53が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域に物体が入ったことに基づいて検出信号を出力するようになっている。このように、近接センサ13の検出領域を、発光器53が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域とすることで、発光器53が可視光レーザを照射している領域へ乗員または反射物が侵入した結果乗員の目に可視光レーザが入ってしまうという事態を未然に防ぐことができるようになる。また、このように、発光器53が可視光レーザを照射している領域と近接センサ13の検出領域が異なっていることで、近接センサ13を可視光レーザ照射装置5以外の装置のオン・オフスイッチとして流用し易くなる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図13に、本実施形態における可視光レーザ照射装置5の取り付け位置を示す。この図に示す通り、可視光レーザ照射装置5は、車室1の天井の前端部において、左右方向についての中央に搭載されている。なお、本実施形態の可視光レーザ照射装置5の構成は、第1実施形態の図3に示したものと同じである。ただし、表示エリア決定部51aが受ける信号は、車両の各シート15〜18に設けられた各着座センサからの信号である。なお、各着座センサは、第1実施形態における助手席用の着座センサと同じものを用いてもよい。さらに表示エリア決定部51aが実行する処理は、図4に示したようなものでなく、以下に示す通りのものである。
【0112】
すなわち、各席15〜18のそれぞれについて、乗員が着座しているか否かを、その座席における着座センサからの信号に基づいて検出し、着座している場合としていない場合とで、表示許可エリアを変化させる。
【0113】
例えば、助手席に乗員が着座していないと判定したときには、インストルメントパネル6の助手席側および助手席16を、表示許可エリアに含める。また、助手席に乗員がいるときには、インストルメントパネル6の助手席側部分および助手席16を、表示許可エリアから除外する。
【0114】
また例えば、助手席および後部座席共に乗員が着座していないときには、助手席16、左後部座席18、および左側リアピラー(右側リアピラー19の反対側のリアピラー)を、表示許可エリアに含める。また、助手席および後部座席のいずれかに乗員が着座している場合には、助手席16、左後部座席18、および左側リアピラー(右側リアピラー19の反対側のリアピラー)を、表示許可エリアから除外する。
【0115】
このように、発光器53は、車両のシートに乗員が座っているか否かを判定し、座っていないと判定したことに基づいて、発光器53による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射し、また、座っていると判定したことに基づいて、発光器53による可視光レーザを当該シートまたは当該シートの近傍に照射することを禁止するようになっている。
【0116】
このように、シートへの着座の有無に応じて、当該シートおよびその近傍への可視光レーザの照射の禁止・許可を切り替えることで、乗員がシートに座っているときには、当該シートに可視光レーザを照射しないことで当該乗員の網膜への悪影響の可能性を低減し、当該シートに誰も座っていないときには、そのシートに照射を行うことで、乗員のいないスペースを有効に活用して情報を提供することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0117】
また、表示エリア決定部51aは、あらかじめ車両の各ガラス41〜44およびインナーミラー2の鏡面を、表示可能エリアから除外している。
【0118】
なお、可視光レーザ照射装置5から各シートの位置、ピラーの位置、ガラス41〜44の位置、インナーミラー2の鏡面の位置等への方向の情報は、可視光レーザ照射装置5の車両への設置時または設置前にあらかじめ制御ECU51内に記憶するようになっている。
【0119】
このように、制御ECU51は、車室内のガラスおよび鏡面の位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、照射器による可視光レーザのガラスおよび鏡面への照射を禁止する。
【0120】
このようになっていることで、可視光レーザがガラスを透過して車両外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。また、可視光レーザが鏡面で反射して車両内外にいる人の目に入射してしまう可能性を低減することができる。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の可視光レーザ照射装置5は、上記第1〜第5実施形態のそれぞれにおいて、制御ECU51が、モータ52または発光器53を制御して可視光レーザによる照射対象の位置を変化させるとき、その変化の速度が大きいほど、発光器53から照射させる可視光レーザの強度を高くする。
【0121】
これによって、仮に人の目に可視光レーザが入ったとしても、目に入る可視光レーザのエネルギーが抑えられるようにする。例えば、人の目に入ってしまった可視光レーザがクラス1の被爆放出限界を超えないようにするためには、人の目に可視光レーザが入っている時間をt1とすると、クラス1の被爆放出限界は、7×10×t10.75/t1ワットとなる。
【0122】
したがって、可視光レーザの照射対象位置の移動速度が、人の目(直径およそ7ミリメートル)を10ミリ秒で通過する程度の速度(以下、第1の速度という)であるときの許容パワーは、上記計算式から2.2ミリワットとなる。また、可視光レーザの照射対象位置の移動速度が、人の目を100ミリ秒で通過する程度の速度(以下、第2の速度という)であるときの許容パワーは、上記計算式から1.2ミリワットとなる。
【0123】
従って、可視光レーザ照射装置5から照射される可視光レーザのパワーを、例えば、第1の速度の場合は2ミリワットとし、第1の速度よりも遅い第2の速度の場合は1ミリワットとするようになっていてもよい。
【0124】
なお、制御ECU51は、照射対象の位置の変化の速度を、照射方向の変化に所定の基準距離(例えば、図1の可視光レーザ照射装置5から上面前端部21までの距離、図9の可視光レーザ照射装置5からメータ部11までの距離、図13の可視光レーザ照射装置5から助手席16までの距離等)を乗じた値として特定するようになっていてもよい。
【0125】
このように、制御ECU51は、発光器53から照射される可視光レーザの照射方向を変化させる速度が高いほど、発光器53から照射される可視光レーザの照射強度を高くするようになっている。これにより、照射方向を変化させる速度が遅くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が高くなると、照射強度が低下する。その結果、目に入る可視光レーザのエネルギー量を抑えることができる。また、照射方向を変化させる速度が速くなると、すなわち、人の目に可視光レーザが連続して入っている時間が長くなってしまう可能性が低くなると、照射強度が上昇する。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0126】
なお、上記の実施形態において、発光器53が照射器の一例に相当し、制御ECU51が制御回路の一例に相当し、近接センサ13が光路進入検出器の一例に相当し、カバー3が板材の一例に相当する。
【0127】
また、制御ECU51、がプログラム100のステップ110または130を実行することでシートベルト装着判定手段の一例として機能し、ステップ145を実行することで領域拡大手段の一例として機能し、ステップ120を実行することで助手席乗員判定手段の一例として機能し、ステップ130を実行することで助手席用シートベルト装着判定手段の一例として機能し、ステップ110を実行することで運転席用シートベルト装着判定手段の一例として機能し、ステップ140を実行することで車速判定手段の一例として機能し、ステップ150を実行することで領域縮小手段の一例として機能する。
【0128】
また、制御ECU51が、プログラム200のステップ220を実行することで、光路進入判定手段の一例として機能し、ステップ235または240を実行することで照射抑制手段の一例として機能する。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0129】
例えば、制御ECU51は、発光器53可視光レーザの照射を行っている間中、照射する可視光レーザの照射方向を常に変化させるようになっていてもよい。このようになっていることで、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0130】
また、制御ECU51は、照射器が照射する可視光レーザの強度を第1の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向を常に変化させ、可視光レーザの強度を第1の強度より低い第2の強度に設定しているとき、可視光レーザの照射方向の変化を停止させる場合があるようになっていてもよい。
【0131】
このようになっていることで、可視光レーザの強度が高いとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0132】
また、制御ECU51は、乗員への情報の提供として、車室内の一部位(例えば、特定のシート、ステアリングハンドル、特定のドア、特定のメータ)を指示するとき、可視光レーザの照射対象の位置が当該一ヶ所内において常に変化するよう、可視光レーザの照射方向を常に変化させるようになっていてもよい。当該一ヶ所内において照射対象の位置を常に変化させる方法としては、例えば、当該一ヶ所における円周を可視光レーザの光点がなぞるように、照射方向を制御する方法がある。
【0133】
このようになっていることで、可視光レーザによって車両内の一ヶ所が指示されるとき、可視光レーザの照射対象の位置が同じ場所に留まることが無いので、万一可視光レーザが人の目に入射しても、それが長時間持続することはない。したがって、可視光レーザの強度を高く維持することと、可視光レーザが人の目に及ぼす悪影響の可能性を抑えることとを、同時に実現することができる。
【0134】
また、照射器は、必ずしも自らが発光する(すなわち可視光レーザを生成する)必要はなく、生成された可視光レーザを照射対象に向けて照射するものであればよい。例えば、可視光レーザを生成する光生成部が、車両の他の部分(例えば車両後部)に搭載されており、その光生成部が生成した可視光レーザが光ケーブルで照射器に送られ、照射器は、光ケーブルから送られた可視光レーザを鏡等で反射することで、当該可視光レーザを照射対象に照射するようになっていてもよい。
【0135】
また、光路進入判定部の検出範囲と可視光レーザの照射範囲とは一致していてもよい。この場合は、可視光レーザが人の目に入ってもすぐに可視光レーザの照射が途切れるようにすることができ、また、可視光レーザの照射範囲内に異物が置かれて可視光レーザが反射しても、すぐに可視光レーザの照射が途切れるようにすることができる。また、制御ECU51は、照射器53とは大きく離れた位置にあっても構わない。
【0136】
また、第1実施形態においては、可視光レーザ照射装置5の表示許可エリアを常にインストルメントパネル6の上面前端部21上に制限してもよい。このようになっていることで、可視光レーザは、車室内でありかつ車両のインナーミラーよりも前方となる位置から、インストルメントパネルの上面の前端部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0137】
このようになっていることで、可視光レーザは、車室内でありかつ車両のインナーミラーよりも前方となる位置から、インストルメントパネルの前端部に照射される。したがって、可視光レーザの光路に人の目が入り込む可能性がほとんどなくなるので、可視光レーザの出力を上げても、乗員の網膜への悪影響の可能性を十分抑えることができる。
【0138】
また、第3実施形態においては、近接センサ13を光路またはその近傍を撮影するカメラに代えてもよい。その場合、制御ECU51は、周知の画像解析手法によって、そのカメラによる撮影画像が基準画像より基準指標以上変化したことに基づいて、光路に物体が入り込んだことまたは入り込みつつあると判定するようになっていてもよい。なお、基準画像は、カメラの車室1内への設置直後に、異物のない状態でそのカメラに撮影させた画像を用いてもよい。また、基準指標以上変化したか否かは、撮影画像が基準画像との一致度が所定スコア以下であるか否かで判定してもよい。一致度としては、撮影画像と基準画像のそれぞれを2値化し、それら2値化された2つの画像において、位置が対応するピクセル同士を比較することを全ピクセルについて行い、その結果、同じ値を有しているピクセル数が多いほど多くなる値を一致度として用いてもよい。
【0139】
また、発光器53の配置および発光器53から照射される可視光レーザの照射先は、可視光レーザの光路が、車室1内の部分空間であって、当該部分空間以外の空間から直径14センチメートルの球体(乳児の頭の大きさとほぼ同等)を変形させずに当該部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっていてもよい。このようにすることで、乳児の目に誤って可視光レーザが入射する可能性がほとんどなくなる。
【0140】
また、本発明の板材は、上記実施形態のカバー3のように、発光部5の底面および側面を覆うようになっていてもよいし、発光部5の底面にのみ存在していてもよい。板材は、照射器から照射される可視光レーザを透過する材質から成っており、かつ、照射器から離れた下方にあり、かつ、照射器からの可視光レーザの光路内にあれば足りる。
【0141】
また、上記の実施形態において、制御回路51がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】第1実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の車室1内の配置および照射方向を示す概略図である。
【図2】インストルメントパネル6の上面前端部21および上面中後部22の範囲の一例を表す斜視図である。
【図3】第1実施形態における可視光レーザ照射装置5の構成および信号の入力関係を示すブロック図である。
【図4】表示エリア決定部51aの実行する処理のフローチャートである。
【図5】表示許可範囲拡大時および左折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図6】表示許可範囲拡大時および右折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図7】表示許可範囲縮小時および左折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図8】表示許可範囲縮小時および右折時における可視光レーザの照射位置の一例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の車室1内の配置および照射方向を示す概略図である。
【図10】第3本実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の装置の車室1内への配置を示す概略図である。
【図11】第3実施形態における可視光レーザ照射装置5の構成および信号の入力関係を示すブロック図である。
【図12】照射許可判定部51dの実行する処理のフローチャートである。
【図13】第4実施形態に係る可視光レーザ照射装置5等の車室1内の配置示す概略図である。
【符号の説明】
【0143】
1…車室、2…インナーミラー、3…カバー、4…フロントガラス、
5…可視光レーザ照射装置、6…インストルメントパネル、7…運転者、
8…ステアリングハンドル、9…ステアリングコラム、10…メータフード、
11…メータ部、12…マップランプ、13…近接センサ、15…運転席、
16…助手席、17…後部右座席、18…後部左座席、20…光路、
21…上面前端部、22…上面中後部、23…検出領域、31、33…左ターン矢印、
32、34…右ターン矢印、41〜44…ガラス、51…制御ECU、
51a…表示エリア決定部、51b…メカ機構駆動部、51c…発光器駆動部、
51d…照射許可判定部、51e…マップランプ駆動部51e、
52…モータ、53…発光器、71〜73…仮想頭部イメージ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車両の走行速度が基準速度より高いことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くすることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項2】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記車両のシートベルトが装着されているか否かを判定するシートベルト装着判定手段と、
前記シートベルト装着判定手段が、前記シートベルトが装着されていると判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くする領域拡大手段と、を有していることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項3】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記車両の助手席に乗員が着座しているか否かを判定する助手席乗員判定手段と、
前記助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定する助手席用シートベルト装着判定手段と、
前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていると判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くする領域拡大手段と、を有していることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項4】
前記制御回路はさらに、
前記車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定する運転席用シートベルト装着判定手段と、
前記車両の走行速度が基準速度より高いか否かを判定する車速判定手段と、を備え、
前記領域拡大手段は、前記運転席用シートベルト装着判定手段が、前記運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より高いと判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くすることを特徴とする請求項3に記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項5】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定する運転席用シートベルト装着判定手段と、
前記車両の助手席に乗員が着座しているか否かを判定する助手席乗員判定手段と、
前記助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定する助手席用シートベルト装着判定手段と、
前記運転席用シートベルト装着判定手段が、前記運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より高いと判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くし、また、前記運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していないと判定し、かつ、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より高いと判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くする領域拡大手段と、
前記運転席用シートベルト装着判定手段が、前記運転席用シートベルトが装着されていないと判定した第1の場合、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていないと判定した第2の場合、および、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より低いと判定した第3の場合の3つの場合のそれぞれにおいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を狭くする領域縮小手段と、を有していることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項6】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記照射器は、前記車室内において、前記車両のインナーミラーよりも前方に配置され、
前記照射器から照射される前記可視光レーザは、前記車両のインストルメントパネルの上面のうち前端部に制限されていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項7】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記照射器は、前記車室内において、前記車両のステアリングコラムの上面に配置され、
前記照射器から照射される前記可視光レーザは、前記車両のメータ部に制限されていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項8】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記照射器の配置および前記照射器から照射される前記可視光レーザの照射先は、前記可視光レーザの光路が、前記車室内の部分空間であって、前記部分空間以外の空間から直径17センチメートルの球体を変形させずに前記部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項9】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、
前記照射器から射出される前記可視光レーザの光路への物体の進入を検出するための検出信号を出力する光路進入検出器と、を備え、
前記制御回路は、前記光路進入検出器から出力された前記検出信号に基づいて、前記光路への物体の進入があるか否かを判定する光路進入判定手段と、
前記光路進入判定手段の肯定的判定に基づいて、前記照射器による可視光レーザの照射強度を抑制する照射抑制手段を有することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項10】
前記光路進入検出器は、光路またはその近傍に物体が接近していることを検出する近接センサであることを特徴とする請求項9に記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項11】
前記光路進入検出器は、前記光路またはその近傍を撮影するカメラであり、
前記光路進入判定手段は、前記カメラによる撮影画像が基準画像より基準指標以上変化したことに基づいて、光路に物体が入り込んだことまたは入り込みつつあると判定することを特徴とする請求項9に記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項12】
前記制御回路は、前記可視光レーザの照射方向を変化させると共に、前記可視光レーザの照射方向の変化に追従させて前記光路進入検出器の検出方向も変化させることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項13】
前記光路進入検出器は、前記照射器が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域に物体が入ったことに基づいて前記検出信号を出力することを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項14】
前記制御回路は、前記照射器に前記可視光レーザを照射させていないときに前記光路進入検出器から前記検出信号を受けたことに基づいて、車室内の当該可視光レーザ照射装置以外の装置の作動のオン・オフを切り替えるための信号を出力することを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項15】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車両のシートに乗員が座っているか否かを判定する着座判定手段と、
前記着座判定手段が、前記車両のシートに乗員が座っていないと判定したことに基づいて、前記照射器による前記可視光レーザを前記シートまたは前記シートの近傍に照射し、また、前記着座判定手段が、前記車両のシートに乗員が座っていると判定したことに基づいて、前記照射器による前記可視光レーザを前記シートまたは前記シートの近傍に照射することを禁止する許可・禁止手段と、を有することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項16】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車室内のガラスの位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、前記照射器による前記可視光レーザの前記ガラスへの照射を禁止することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項17】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車室内の鏡面の位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、前記照射器による前記可視光レーザの前記鏡面への照射を禁止することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項18】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記照射器から照射される前記可視光レーザの照射方向を変化させる速度が速いほど、前記照射器から照射される前記可視光レーザの照射強度を高くすることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項19】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射方向を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、
前記照射器から照射される前記可視光レーザを透過させる材質から成る板材と、を備え、
前記照射器は、前記車室内において、前記車両のインナーミラーよりも前記車室内の前方に配置されると共に、前記車両のインストルメントパネルの上面に前記可視光レーザを照射し、
前記板材は、前記インナーミラーの下端部と同じ位置または高い位置であり、かつ、前記照射器における前記可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に、配置されていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項20】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記照射器が照射する前記可視光レーザの照射方向を常に変化させることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項21】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記照射器が照射する前記可視光レーザの強度を第1の強度に設定しているとき、前記可視光レーザの照射方向を常に変化させ、前記可視光レーザの強度を前記第1の強度より弱い第2の強度に設定しているとき、前記可視光レーザの照射方向の変化を停止させる場合があることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項22】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記乗員への情報の提供として、前記車室内の一ヶ所を指示するとき、前記可視光レーザの照射対象の位置が当該一ヶ所内において常に変化するよう、前記可視光レーザの照射方向を常に変化させることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項1】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車両の走行速度が基準速度より高いことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くすることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項2】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記車両のシートベルトが装着されているか否かを判定するシートベルト装着判定手段と、
前記シートベルト装着判定手段が、前記シートベルトが装着されていると判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くする領域拡大手段と、を有していることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項3】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記車両の助手席に乗員が着座しているか否かを判定する助手席乗員判定手段と、
前記助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定する助手席用シートベルト装着判定手段と、
前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていると判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くする領域拡大手段と、を有していることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項4】
前記制御回路はさらに、
前記車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定する運転席用シートベルト装着判定手段と、
前記車両の走行速度が基準速度より高いか否かを判定する車速判定手段と、を備え、
前記領域拡大手段は、前記運転席用シートベルト装着判定手段が、前記運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より高いと判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くすることを特徴とする請求項3に記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項5】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記車両の運転席用シートベルトが装着されているか否かを判定する運転席用シートベルト装着判定手段と、
前記車両の助手席に乗員が着座しているか否かを判定する助手席乗員判定手段と、
前記助手席の助手席用シートベルトが装着されているか否かを判定する助手席用シートベルト装着判定手段と、
前記運転席用シートベルト装着判定手段が、前記運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より高いと判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くし、また、前記運転席用シートベルトが装着されていると判定し、かつ、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していないと判定し、かつ、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より高いと判定したことに基づいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を広くする領域拡大手段と、
前記運転席用シートベルト装着判定手段が、前記運転席用シートベルトが装着されていないと判定した第1の場合、前記助手席乗員判定手段が、前記助手席に乗員が着座していると判定し、かつ、前記シートベルト装着判定手段が、前記助手席のシートベルトが装着されていないと判定した第2の場合、および、前記車速判定手段が、前記走行速度が前記基準速度より低いと判定した第3の場合の3つの場合のそれぞれにおいて、前記可視光レーザの照射対象の領域を狭くする領域縮小手段と、を有していることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項6】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記照射器は、前記車室内において、前記車両のインナーミラーよりも前方に配置され、
前記照射器から照射される前記可視光レーザは、前記車両のインストルメントパネルの上面のうち前端部に制限されていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項7】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記照射器は、前記車室内において、前記車両のステアリングコラムの上面に配置され、
前記照射器から照射される前記可視光レーザは、前記車両のメータ部に制限されていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項8】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記照射器の配置および前記照射器から照射される前記可視光レーザの照射先は、前記可視光レーザの光路が、前記車室内の部分空間であって、前記部分空間以外の空間から直径17センチメートルの球体を変形させずに前記部分空間に入り込ませることができないような部分空間内に制限されるようになっていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項9】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、
前記照射器から射出される前記可視光レーザの光路への物体の進入を検出するための検出信号を出力する光路進入検出器と、を備え、
前記制御回路は、前記光路進入検出器から出力された前記検出信号に基づいて、前記光路への物体の進入があるか否かを判定する光路進入判定手段と、
前記光路進入判定手段の肯定的判定に基づいて、前記照射器による可視光レーザの照射強度を抑制する照射抑制手段を有することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項10】
前記光路進入検出器は、光路またはその近傍に物体が接近していることを検出する近接センサであることを特徴とする請求項9に記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項11】
前記光路進入検出器は、前記光路またはその近傍を撮影するカメラであり、
前記光路進入判定手段は、前記カメラによる撮影画像が基準画像より基準指標以上変化したことに基づいて、光路に物体が入り込んだことまたは入り込みつつあると判定することを特徴とする請求項9に記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項12】
前記制御回路は、前記可視光レーザの照射方向を変化させると共に、前記可視光レーザの照射方向の変化に追従させて前記光路進入検出器の検出方向も変化させることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項13】
前記光路進入検出器は、前記照射器が可視光レーザを照射している領域と乗員との間の領域に物体が入ったことに基づいて前記検出信号を出力することを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項14】
前記制御回路は、前記照射器に前記可視光レーザを照射させていないときに前記光路進入検出器から前記検出信号を受けたことに基づいて、車室内の当該可視光レーザ照射装置以外の装置の作動のオン・オフを切り替えるための信号を出力することを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の可視光レーザ照射装置。
【請求項15】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車両のシートに乗員が座っているか否かを判定する着座判定手段と、
前記着座判定手段が、前記車両のシートに乗員が座っていないと判定したことに基づいて、前記照射器による前記可視光レーザを前記シートまたは前記シートの近傍に照射し、また、前記着座判定手段が、前記車両のシートに乗員が座っていると判定したことに基づいて、前記照射器による前記可視光レーザを前記シートまたは前記シートの近傍に照射することを禁止する許可・禁止手段と、を有することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項16】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車室内のガラスの位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、前記照射器による前記可視光レーザの前記ガラスへの照射を禁止することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項17】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記車室内の鏡面の位置の情報を記憶しており、また、この記憶している位置の情報に基づいて、前記照射器による前記可視光レーザの前記鏡面への照射を禁止することを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項18】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記照射器から照射される前記可視光レーザの照射方向を変化させる速度が速いほど、前記照射器から照射される前記可視光レーザの照射強度を高くすることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項19】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射方向を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、
前記照射器から照射される前記可視光レーザを透過させる材質から成る板材と、を備え、
前記照射器は、前記車室内において、前記車両のインナーミラーよりも前記車室内の前方に配置されると共に、前記車両のインストルメントパネルの上面に前記可視光レーザを照射し、
前記板材は、前記インナーミラーの下端部と同じ位置または高い位置であり、かつ、前記照射器における前記可視光レーザが射出される位置から空間を隔てた下方の位置に、配置されていることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項20】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記照射器が照射する前記可視光レーザの照射方向を常に変化させることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項21】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記照射器が照射する前記可視光レーザの強度を第1の強度に設定しているとき、前記可視光レーザの照射方向を常に変化させ、前記可視光レーザの強度を前記第1の強度より弱い第2の強度に設定しているとき、前記可視光レーザの照射方向の変化を停止させる場合があることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【請求項22】
車両の車室内の一部に可視光レーザを照射する照射器と、
前記可視光レーザの照射態様を制御することで、前記車両の乗員に情報を提供する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記乗員への情報の提供として、前記車室内の一ヶ所を指示するとき、前記可視光レーザの照射対象の位置が当該一ヶ所内において常に変化するよう、前記可視光レーザの照射方向を常に変化させることを特徴とする可視光レーザ照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−201191(P2008−201191A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37484(P2007−37484)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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