説明

可視光通信送信装置及び可視光通信受信装置

【課題】回路構成を極めて簡素化することができ、消費電力が少なく、可視光通信を良好に実施可能な可視光通信送信装置を提供する。
【解決手段】送信データ処理部1は、送信データ信号の各データを、第1サブキャリア用と第2サブキャリア用に、交互に割り当てるように組み替え、OFDM変調器2に送る。OFDM変調器2は、第1サブキャリア用の各データを、第1デジタル変調部21で第1周波数の第1サブキャリアによりデジタル変調し、第2デジタル変調部22で第2サブキャリア用の各データを、第1周波数とは周波数帯域が重なる第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調する。信号合成部27は、フィルターを通して、第1デジタル変調部21で変調されたデジタル送信信号と、第2デジタル変調部22で変調されたデジタル送信信号を入力し、第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号とが直交するように合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に照射された可視光を使用して通信を行なう可視光通信用の送信装置及びその受信装置に関し、特にOFDM(直交周波数分割多重)方式を用いて情報信号を可視光に重畳し送受信する可視光通信の送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を通信媒体とした無線通信は、携帯電話網、無線LAN、近距離無線通信など多くの分野で使用されている。
【0003】
しかしながら、電波を媒体として使用する無線通信は、人の近くで送受信を行なう場合、電磁波の人体への影響を考慮して、送信電力を上げることができない。また、無線通信に使用される電波の周波数帯域は、既に多くの使用分野において割り振られ、使用されていることもあって、広帯域の周波数帯を自由に使用することはできない。さらに、病院などの特殊な環境下においては、電波の使用に制限が加えられるなどの制約がある。
【0004】
そこで、近年、可視光を通信媒体として通信を行う可視光通信が開発され、下記特許文献1などにおいて、可視光に送信信号を重畳してそれを空間光として放射し、放射された光を受信器側で受光し、受光信号から送信信号を復調して通信を行う可視光通信システムが提案されている。
【特許文献1】特開2007−266794号公報
【特許文献2】特開2010−130603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の可視光通信システムは、照明光として可視光を使用しながら、可視光に高周波信号を重畳させて、照明光による可視光通信を行なうものであり、送信信号を高周波の搬送波に重畳させ、その高周波信号を投光用のLED(発光ダイオード)に入力してLEDを発光動作させ、送信信号を重畳した可視光を受信器側に送信するが、この可視光通信システムでは、回路構成が複雑化するわりに、通信速度が遅く、音声信号や画像信号などの大容量の情報を高速で送信することは難しい。
【0006】
一方、ブロードバンドのインターネット接続、デジタルテレビ放送などの広帯域デジタル通信の分野において、OFDM(直交周波数分割多重)方式を使用し、高速で大容量のデジタル信号の伝送を可能とした通信装置が開発されている。このOFDM方式のデジタル通信は、デジタル信号を多数の副搬送波(サブキャリア)に分割して変調し送信する一種のマルチキャリア伝送方式の通信システムであり、特に、多数のサブキャリアは、周波数軸上で重なりが生じる程度に密に配置しても、相互に直交関係にあって干渉しないため、サブキャリアつまりサブチャンネルのスペクトルを密に配置可能で、周波数利用効率を高くし、大容量のパラレルデータをシリアル化して高速で伝送することができる。
【0007】
そこで、上述の可視光を通信媒体とする可視光通信装置において、大容量のデジタル高速通信を実現するために、OFDM方式を用いてデジタル信号の各ビットにより多数のサブキャリアを変調し、それらのサブキャリアを逆離散フーリエ変換のアルゴリズムを用いて合成し、合成したデジタル信号をアナログに変換した高周波信号を、LEDに入力してLEDを発光動作させ、LEDから可視光を空間光として放射し、可視光通信を行なう可視光通信装置が、上記特許文献2で提案されている。
【0008】
このようなOFDM方式の可視光通信装置のひとつのアプリケーションとして、小型の携帯端末に搭載し、デジタルサイネージなどのディスプレイのバックライト、或いは地下街の照明から照射される可視光に重畳された情報信号を、携帯端末で受信し、携帯端末のユーザーに対し、各種の情報を提供するサービスなどへの適用が考えられている。
【0009】
しかし、OFDM方式の可視光送信装置では、周波数領域のデータを時間領域のデータ(複素データ)に変換するために高速の逆離散フーリエ変換回路を必要とし、またその可視光受信装置では、時間領域のデータを周波数領域のデータに戻すために高速の離散フーリエ変換回路が必要となり、送信装置、受信装置共に回路構成が非常に複雑化し製造コストも高くなる。また、これらの逆離散フーリエ変換回路や離散フーリエ変換回路は、非常に高速で変換動作するため、その消費電力が大きく、通信装置の電源装置を大型化する必要があり、この種の可視光通信装置を小型の携帯端末に搭載することは難しい。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、OFDM方式の可視光通信装置において、回路構成を極めて簡素化することができ、消費電力が少なく、可視光通信を良好に実施可能な可視光通信の送信装置及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の可視光通信送信装置は、
直交周波数分割多重方式により送信データのデジタル信号を複数のサブキャリアに分割して変調し、変調された高周波信号を、LEDの発光動作により照射される可視光に重畳させて、送信データ信号を送信する可視光通信送信装置において、
パケット化された送信データ信号の各データを、第1サブキャリア用と第2サブキャリア用に、交互に割り当てるように送信データを組み替える送信データ処理部と、
該送信データ処理部から送られる該第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数の該第1サブキャリアによりデジタル変調して第1デジタル変調信号を生成する第1デジタル変調部と、該送信データ処理部から送られる該第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを、該第1周波数とは周波数帯域が重なる第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調して第2デジタル変調信号を生成する第2デジタル変調部とを含み、該第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号が合成されたとき、合成信号の電力スペクトル密度が打ち消されて零となるように第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を直交関係に配置するデジタル変調部と、
該第1デジタル変調部で変調された該第1デジタル変調信号を含む信号を入力し、該第1デジタル変調信号のみをフィルタリングして出力する第1フィルター回路と、
該第2デジタル変調部で変調された該第2デジタル変調信号を含む信号を入力し、該第2デジタル変調信号のみをフィルタリングして出力する第2フィルター回路と、
該第1フィルター回路から出力された該第1デジタル変調信号と、該第2フィルター回路から出力された該第2デジタル変調信号とを入力し、合成信号の電力スペクトル密度が打ち消されて零となるように、該第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を合成して出力する信号合成回路と、
該信号合成回路で合成された送信信号を可視光に重畳させるように前記LEDを駆動するLED駆動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明の可視光通信送信装置によれば、第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号の2波による直交周波数分割多重方式となるため、従来のOFDM方式の可視光通信装置に比べ、逆離散フーリエ変換回路などの複雑な回路を必要とせず、回路構成を非常に簡素化することができる。また、回路の消費電力も非常に少なくなるので、例えば電源を電池とする小型の装置であっても、容易に搭載することができる。
【0013】
さらに、第1サブキャリアと第2サブキャリアの2波による直交周波数分割多重になるため、信号の帯域幅を非常に狭帯域とすることができ、これにより、可視光送信信号を受信する受信装置においても、比較的簡単な受信回路にて、良好なS/N比で、且つ高感度に信号を受信することができる。また、受信装置においては、離散フーリエ変換回路などの複雑な回路を必要とせず、回路構成を非常に簡素化することができ、受信回路の消費電力も非常に少なく、小型の携帯端末などにも搭載することができる。
【0014】
ここで、上記請求項1の可視光通信送信装置では、送信信号に対し、前記LEDが有する周波数特性の非線形ひずみに対し、予めひずみの逆特性を送信信号に加えて補正する帯域補正増幅器を信号合成部の出力側に接続することができる。この帯域補正増幅器は、OFDM変調され合成された高周波送信信号を、LEDの周波数特性とは逆の傾きの逆特性を付与して増幅するように構成される。
【0015】
これにより、LEDの発光特性が、周波数が低くなるほど発光レベルが高く、周波数が高くなるほど発光レベルが低下する周波数特性を有する場合でも、OFDM方式の送信信号のスペクトル分布にひずみを生じさせずに、LEDの可視光に送信信号を重畳させて、送信することができ、これにより、受信装置側でOFDM信号を正常に復調することができる。
【0016】
さらに、上記LED駆動部には上記信号合成部で合成された高周波信号を増幅する増幅器が設けられ、調光操作に応じて増幅器の直流オフセットレベルを調整してLEDの発光レベルの調整を行なうDCオフセット回路及び調光回路を設けることができる。
【0017】
この発明によれば、調光操作に応じて増幅器の直流オフセットレベルを調整し、照明光としてのLEDの発光レベルを調光することができる。
【0018】
さらに、上記LED駆動部の増幅器には、LEDの温度特性を補償してLEDの温度変化に対し照度を一定にする温度補償回路が接続され、検出されたLEDの電流・電圧及びLEDまたはその近傍の温度を検出する温度センサの温度検出信号に基づき、増幅器に信号を出力して直流オフセットレベルを調整するように構成することができる。
【0019】
この発明によれば、例えばLEDの温度が上昇して、その照度が低下したとき、増幅器の直流オフセットレベルを上げて照度を上げるようにして、LEDの温度変化に対し温度補償を行い、LEDの照度を安定化することができる。
【0020】
さらに、上記LED駆動部には、調光信号に応じてLEDの非線形の電流電圧特性をリニアに補正し、LEDの照度を安定させる照度安定化回路が設けられ、LEDドライバの出力電圧に応じて照度安定化回路から上記増幅器に信号を出力してその直流オフセットレベルを調整するように構成することができる。
【0021】
この発明によれば、LEDの電流電圧特性の非線形ひずみに対し、調光により特性曲線部分が変化したとき、その非線形ひずみを補償するように、上記増幅器に信号を出力してその直流オフセットレベルを調整し、LEDの電流電圧特性のひずみ、つまり発光特性のひずみをリニアに補正することができる。
【0022】
このように、上記可視光通信送信装置によれば、LEDが照射する可視光が照明光として使用され、調光操作により可視光の照度が調整された場合であっても、その照明光としての可視光の照度を安定化させつつ、情報信号を可視光に重畳して送信することができる。
【0023】
一方、本発明の可視光通信受信装置は、
可視光通信送信装置にて、送信データ信号の各データを、第1サブキャリア用と第2サブキャリア用に交互に割り当て、該第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数の該第1サブキャリアによりデジタル変調し、該第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを、該第1周波数とは周波数帯域が重なる第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調し、フィルター回路を通して得られた該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を、電力スペクトル密度が打ち消されて零となるように直交関係に配置し合成して直交変調し、直交変調された送信信号をLEDから照射される可視光に重畳させて、該可視光通信送信装置から送信される送信信号を受信する可視光通信受信装置であって、
該可視光を受光し、受光信号を出力する受光素子と、
該受光素子から出力された受光信号を増幅する増幅器と、
該増幅器から出力され直交変調された該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を含む高周波受信信号をフィルタリングし、該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号とを分離して取り出すフィルター回路と、
該フィルター回路から分離して出力された該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号を入力し、第1デジタル信号に復調する第1復調器と、
該フィルター回路から分離して出力された該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を入力し、第2デジタル信号に復調する第2復調器と、
該第1復調器から出力された第1デジタル信号と該第2復調器から出力された第2デジタル信号を交互に取り込み、該第1デジタル信号と該第2デジタル信号を時間的に交互に繋ぎ合わせて合成し、受信データとして出力するデータ合成部と、
を備えたことを特徴とする。
【0024】
この発明の可視光通信受信装置によれば、可視光通信送信装置のLEDから照射された可視光に重畳される送信信号が2波の直交周波数分割多重の信号、つまり第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号からなる信号のため、従来のOFDM方式の可視光通信受信装置に比べ、離散高速フーリエ変換回路、ADコンバータなどを必要とせず、回路構成を非常に簡素化することができる。また、受信回路の消費電力も非常に少なくなるので、例えば電源を電池とする小型の携帯端末などにも、容易に搭載することができる。
【0025】
さらに、可視光通信受信装置は、第1サブキャリアと第2サブキャリアの2波のOFDM変調された送信信号を受信し、受信信号の帯域幅は非常に狭い狭帯域となるので、比較的簡単な受信回路を使用して、良好なS/N比で、且つ高感度に信号を受信することができる。
【0026】
ここで、上記増幅器には、上記第1サブキャリアの第1周波数及び第2サブキャリアの第2周波数に共振する同調回路を設けることができ、それにより、非常に狭帯域の増幅器として、簡単な受信回路であっても、さらに良好なS/N比で、高感度に信号を受信することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の可視光通信送信装置及び可視光通信受信装置によれば、OFDM方式の可視光通信を行う装置であっても、回路構成を極めて簡素化することができ、消費電力が少なく、可視光通信を良好に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を示す可視光通信送信装置の構成ブロック図である。
【図2】可視光通信受信装置の構成ブロック図である。
【図3】第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号の電力スペクトル密度の関係を示す波形説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は可視光通信送信装置の構成ブロック図を示している。図1に示すように、この可視光通信送信装置は、パケット化された送信データ信号の各データを、OFDM(直交周波数分割多重)の第1サブキャリア用と第2サブキャリア用に、交互に割り当てるように送信データを組み替える送信データ処理部1と、送信データ処理部1から送られる第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数の第1サブキャリアによりデジタル変調する一方、第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調し、第1サブキャリアの第1デジタル変調信号及び第2サブキャリアの第2デジタル変調信号をフィルタリングした後、第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号とを合成して直交変調し、送信信号を出力するOFDM変調器2と、合成された送信信号を可視光に重畳させるようにLED(発光ダイオード)30を駆動するLED駆動部3と、を備えて構成される。
【0030】
図1に示すように、OFDM変調器2は、第1デジタル変調部21と第2デジタル変調部22とからなるデジタル変調部20を有し、第1デジタル変調部21は、送信データ処理部1から送られる第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数の第1サブキャリアによりデジタル変調(アップコンバージョン)する。第2デジタル変調部22は、送信データ処理部1から送られる第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数とは周波数帯域が重なる第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調(アップコンバージョン)する。またこのとき、デジタル変調部20の第1デジタル変調部21と第2デジタル変調部22は、第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を合成したとき、図3に示すように、合成信号の電力スペクトル密度(値)が打ち消されて零となるように、第1サブキャリアで変調した第1デジタル変調信号と第2サブキャリアで変調した第2デジタル変調信号を、直交関係に配置するようになっている。
【0031】
さらに、OFDM変調器2は、第1デジタル変調部21で変調されたデジタル送信信号を入力し、第1サブキャリアの第1デジタル変調信号のみをフィルタリングして出力する第1フィルター回路としてのローパスフィルター23、第2デジタル変調部22で変調されたデジタル送信信号を入力し、第2サブキャリアの第2デジタル変調信号のみをフィルタリングして出力する第2フィルター回路としてのハイパスフィルター24、及びローパスフィルター23から出力された第1デジタル変調信号と、ハイパスフィルター24から出力され第1デジタル変調信号とは周波数帯域が重なる第2デジタル変調信号とを合成して直交変調し、OFDMの送信信号を出力する信号合成部27、を備えている。
【0032】
LED30は、例えば図示しないデジタルサイネージなどのディスプレイのバックライト装置、照明用の灯具などに装着され、LANなどを通して送られた各種の情報信号を照明用の可視光に重畳させてLED30が照明光を照射し、可視光の到達範囲内に配置される後述の受信装置に対し、情報信号を送信するように構成される。
【0033】
送信データ処理部1のデータ処理部13は、CPU、メモリ、レジスタなどから構成され、イーサネット(登録商標)インタフェース11を通して、LANから送られた送信用のパケットデータを入力する。そして、データバッファ12にそれらのバケットデータを一時格納し、さらに、データ処理部13は、データメモリ14を用いて、パケットデータをOFDM用に組み直し、各データを時分割して、第1サブキャリア用の送信データと第2サブキャリア用の送信データに交互に割り付けるように、入出力部15からOFDM変調器2に出力する構成である。なお、LED30の調光を行なう調光信号が送信データ処理部1を通して送られる場合、入出力部15を通して調光信号が調光回路36及びDCオフセット回路37に送られるようになっている。
【0034】
OFDM変調器2は、上述のように、第1サブキャリアと第2サブキャリア用に時分割して交互に割り当てられた送信データ信号の各データを、各々デジタル変調する第1デジタル変調部21と第2デジタル変調部22とからなるデジタル変調部20を備え、第1デジタル変調部21の出力側にはローパスフィルター23が接続され、第2デジタル変調部22の出力側にはハイパスフィルター24が接続される。
【0035】
第1デジタル変調部21は、送信データ処理部1から送られた第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを入力し、例えば16QAM、BPSK、QPSKなどのデジタル変調方式により、第1サブキャリアをその送信データ信号の各データで変調して出力するものである。また、第2デジタル変調部22は、送信データ処理部1から送られた第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを入力し、同様のデジタル変調方式により、第2サブキャリアをその送信データ信号の各データで変調して出力するものである。
【0036】
図3は、第1サブキャリアにより変調した第1デジタル変調信号と第2サブキャリアにより変調した第2デジタル変調信号の電力スペクトル密度(値)を示しており、ここで、OFDMの搬送波(サブキャリア)の基本周波数をfc、送信データつまりベースバンド信号の周波数をfoとすると、第1デジタル変調信号の周波数は(fc+kfo)となり、第2デジタル変調信号の周波数は{fc+(k+1)fo}、(kはk番目のデジタル変調信号を示す)となるように選択される。第1デジタル変調信号の周波数つまり第1サブキャリアの第1周波数と第2デジタル変調信号の周波数つまり第2サブキャリアの第2周波数は、その周波数帯域が図3のように重なって選定され、非常に狭い狭帯域となっている。
【0037】
さらに、第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号とは直交関係、つまり第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号とを合成したとき、その電力スペクトル密度が打ち消されて零となる関係に配置される。デジタル変調信号はサブキャリアを送信データのベースバンド信号で変調したものであるので、送信データのシンボルレートで、直交関係となる周波数及び位相が決まることになる。
【0038】
第1デジタル変調部21の出力側に接続されるローパスフィルター23は第1サブキャリアを送信データで変調した第1デジタル変調信号のみを通過させるように設定され、第2デジタル変調部22の出力側に接続されるハイパスフィルター24は第2サブキャリアを送信データで変調した第2デジタル変調信号のみを通過させるように設定される。ローパスフィルター23とハイパスフィルター24の出力側は第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を合成する信号合成部27に接続される。信号合成部27は、第1デジタル変調部21からローパスフィルター23を通して出力された第1デジタル変調信号と、第2デジタル変調部22からハイパスフィルター24を通して出力された第2デジタル変調信号とを、時間軸方向に加算する加算器であり、第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を時間軸方向に加算して合成し、OFDM信号を出力するように構成される。
【0039】
なお、OFDM信号は第1サブキャリアによって変調された第1デジタル変調信号と第2サブキャリアによって変調された第2デジタル変調信号の合成波であるので、サブキャリアまたはベースバンド信号の合成によっては、同時に発生する複数の振幅の高い波が合成され、ピーク値の高いピーク波が現れるが、信号合成部27の出力側に補正回路を接続し、その補正回路に予め閾値を設定し、閾値を超えるピーク波が現れた場合、ピーク波のデータを線形圧縮補正するように構成することができる。
【0040】
このように、OFDM変調器2は、送信データ処理部1から送られた送信データ信号の各データを、第1デジタル変調部21と第2デジタル変調部22に交互に割り当て、その送信データを第1デジタル変調部21にて第1サブキャリアでデジタル変調し、第2デジタル変調部22では第1サブキャリアとは周波数帯域が重なる第2サブキャリアで送信データをデジタル変調すると共に、デジタル変調した第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を合成したとき、合成信号の電力スペクトル密度が打ち消されて零になるように、第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号が直交関係に配置される。このような第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号は、各々フィルター回路のローパスフィルター23またはハイパスフィルター24を通して信号合成部27に入力され、信号合成部27でこれらの信号が時間軸方向に加算して合成され、OFDM信号としてLED駆動部3に出力される。
【0041】
LED駆動部3は、OFDM信号を入力して増幅する増幅器31及び帯域補正増幅器32を有し、増幅したOFDM信号をLEDドライバ33に入力し、LEDドライバ33によりLED30を発光駆動すると共に、発光した可視光にOFDM信号を重畳させるように構成される。このために、増幅器31の出力側が帯域補正増幅器32に接続され、帯域補正増幅器32の出力側がLEDドライバ33に接続される。
【0042】
LEDドライバ33には、LED30を定電流で駆動する回路が使用されるが、LED30のIV特性(電流電圧特性)は、LED30の温度の上昇と共に電圧が低下し、また、調光により電流が低下したとき、電流の高い場合に比べ、そのIV特性曲線の傾きが変化する。このため、LED駆動部3には、LEDの温度補償を行う温度補償回路35、及び照度を安定して調光動作させる照度安定化回路34が設けられている。
【0043】
温度補償回路35は、LED30またはその近傍の温度を検出しその温度に基づき増幅器31の直流オフセットレベルを調整して、LED30のIV特性によるひずみを補正して温度補償を行なう。照度安定化回路34は、調光回路36によりLEDの照度が調光された場合、その調光操作に応じて生じるIV特性のひずみを補正して、照度を安定して調光動作させるようになっている。
【0044】
一方、照明光としても使用されるLED30の照度を調整し調光するために、調光回路36、DCオフセット回路37が設けられている。調光回路36及びDCオフセット回路37は、LANから送られる調光信号或いは図示しないリモートコントローラなどから送られる調光信号に基づき調光動作し、DCオフセット回路37は、調光信号に応じて、増幅器31の直流オフセットレベルを調整し、送信信号のレベルを調整してLED30の照度を変える。また、増幅器31の直流オフセットレベルは、温度補償回路35及び照度安定化回路34からの信号に基づき、LED30の温度によるIV特性のひずみや調光に伴うIV特性のひずみを補正するようになっている。
【0045】
通常、LEDの温度係数は約−2mV/℃であり、高温時のLED電圧は低温時のLED電圧より低くなり、IV特性曲線は電圧の低い方に平行移動して照度が低下し、IV特性曲線の傾きも変化する。このため、LED30の温度またはLED30の近傍の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサの検出信号に基づき、LED30の温度と調光に応じて、LED30のIV特性曲線の非線形ひずみを線形に補正するようになっている。
【0046】
つまり、LED30の温度が上昇した場合、LED30の端子電圧は低下し、LED30のIV特性曲線はLED30の照度の高さに応じても変化する。このため、送信信号を増幅する増幅器31の直流オフセットレベルを、調光信号と共に温度信号によっても調整するようにし、LED30の動作の温度補償及び照度の安定化を行なっている。
【0047】
温度補償回路35は、増幅器31に接続され、LED30またはその近傍の温度を検出する温度センサの温度検出信号に基づき、また、調光回路36から送られる調光信号に応じて増幅器31の直流オフセットレベルを調整する。
【0048】
調光信号によりLED30の動作IV領域が変わり照度が高く或いは低く変化した場合、例えば、照度の高い領域では、電圧Vの変化に対し電流Iの変化の直線性が比較的良好であるのに対し、照度の低い領域では、電圧Vの変化に対し電流Iの変化の直線性が悪くひずみが大きい。このため、LED30が照度の低い領域で動作中、調光が行われると、照度の高い領域のときに比べ、調光操作に応じた調光を行なうことができず、また調光幅も小さくなる。
【0049】
このため、LED駆動部3には、LED30の非線形の電流電圧特性をリニアに補正してLEDの照度を安定させる照度安定化回路34が設けられる。この照度安定化回路34は、調光回路36からの調光信号により増幅器31の直流オフセットレベルを調整して調光する際、例えば照度の高い領域では、そのIV特性曲線とは逆特性の補正曲線をもった補正回路により増幅器31の直流オフセットレベルを補正し、例えば照度の低い領域では、その特性曲線とは逆特性の補正曲線をもった補正回路により増幅器31の直流オフセットレベルを補正するようにしている。
【0050】
上述のように、LED駆動部3では、増幅器31に帯域補正増幅器32を接続し、帯域補正増幅器32により帯域のイコライジング補正を加えるように高周波送信信号を増幅し、これにより、高周波信号を良好な直線性をもって増幅するようにしている。帯域補正増幅器32の出力側には、LED30を発光駆動するLEDドライバ33が接続される。
【0051】
LED30の周波数特性は、周波数が低いほど発光レベルが高く、周波数が高くなるほど発光レベルが低下するような非線形特性となっている。このために、帯域補正増幅器32は、このようなLED30の周波数特性の逆特性を信号に加えて帯域補正をしつつ高周波送信信号を増幅するようになっている。
【0052】
図2は、上記可視光通信送信装置から送信された可視光信号を受信する可視光通信受信装置の構成ブロック図を示している。この可視光通信受信装置は、上述のように、可視光通信送信装置において、送信データ信号の各データを、第1サブキャリア用と第2サブキャリア用に交互に割り当て、第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数の第1サブキャリアによりデジタル変調し、第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数とは周波数帯域が重なる第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調し、フィルターを通して得られた第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を、合成して直交変調し、直交変調された送信信号をLED30から照射される可視光に重畳させて送信される送信信号を、受光素子50により受光(受信)し、復調するように構成される。
【0053】
この可視光通信受信装置は、図2に示すように、可視光を受光し、受光信号を出力する受光素子50と、受光素子50から出力された受光信号を増幅する増幅器51と、増幅器51から出力され直交変調された第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を含む高周波受信信号をフィルタリングして第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を分離して取り出すフィルター回路とを備えている。増幅器51には、受信信号に同調する同調回路が設けられ、2波のOFDM信号である狭帯域の受信信号を、高いS/N比で高感度に増幅するようになっている。
【0054】
フィルター回路は、高周波受信信号から第1サブキャリアの第1デジタル変調信号のみを取り出すローパスフィルター52と、第2サブキャリアの第2デジタル変調信号のみを取り出すハイパスフィルター53とから構成され、ローパスフィルター52の出力側に、分離された第1サブキャリアの第1デジタル変調信号を入力して、第1デジタル信号に復調する第1復調器54が接続され、ハイパスフィルター53の出力側に、分離された第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を入力して、第2デジタル信号に復調する第2復調器55が接続される。
【0055】
ローパスフィルター52とハイパスフィルター53は、可視光通信送信装置の第1サブキャリアの第1デジタル変調信号の周波数が例えばfc+kfo(図3)で、第2サブキャリアの第2デジタル変調信号の周波数がfc+(k+1)fo(図3)の場合、より低い周波数の第1サブキャリアの第1デジタル変調信号を、ローパスフィルター52を通して出力し、より高い周波数の第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を、ハイパスフィルター53を通して出力するように構成される。
【0056】
さらに、第1復調器54から出力された第1デジタル信号と第2復調器55から出力された第2デジタル信号を交互に取り込み、第1デジタル信号と第2デジタル信号を時間的に交互に繋ぎ合わせて合成し、受信データとして出力するデータ合成部56が、第1復調器54と第2復調器55の出力側に接続される。
【0057】
第1復調器54と第2復調器55は、デジタル変調された第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を復調(ダウンコンバージョン)してデータ信号を出力する回路であり、第1復調器54では、第1デジタル変調信号と同じ周波数信号を、ミキサで第1デジタル変調信号に乗算して第1データ信号を得るようにし、第2復調器55では、第2デジタル変調信号と同じ周波数、同位相の周波数信号を、ミキサで第2デジタル変調信号に乗算して第2データ信号を得るように構成される。
【0058】
データ合成部56は、第1復調器54から各々出力された第1データ信号を取り込むと共に、第2復調器55から各々出力された第2データ信号を取り込み、第1データ信号と第2データ信号を時間的に交互に繋ぎ合わせ、送信された元のデータ信号として出力するように構成される。つまり、可視光通信送信装置の送信データ処理部1で送信データを時分割して交互に出力したときの処理と逆の処理を行なうように、第1データ信号と第2データ信号を交互に繋ぎ合わせ、元のデータ信号として、データ処理部57に出力するものである。データ処理部57は、復調されたデータ信号に基づき、可視光通信送信装置から送信された文字や画像の情報を表示器58に表示し、或いは送信されたデータ信号が音声データであれば、その音声を音声出力部59に出力するように構成される。音声出力部59は、その音声データに基づき図示しないスピーカーから音声を発生させるようになっている。
【0059】
このように、可視光通信受信装置は、可視光に重畳して送信されたOFDM信号を受信することになるが、そのOFDM信号は、第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号の2波の信号のみを用いてデータを変調しているため、通常のOFDM信号を復調する際に使用する高速離散フーリエ変換回路などのLSIが不要となり、受信回路を非常に簡素化し小型化することができる。さらに、受信回路の簡素化に伴い、その消費電力も極めて少なくなるので、可視光通信受信装置は、小型電源の携帯端末などであっても、十分に搭載することが可能となる。
【0060】
次に、上記構成の可視光通信送信装置及び可視光通信受信装置の動作を説明する。可視光通信送信装置のLED30は、TV、デジタルサイネージなどのディスプレイのバックライト装置、ショーウインドウや地下街などの照明用に使用されると共に、可視光通信用の投光器として使用される。
【0061】
一方、可視光通信受信装置は、携帯電話機などの携帯端末、或いは送信装置がTVのディスプレイの場合はTV用リモコンなどに搭載され、可視光通信送信装置から送信された可視光信号を受信するように使用される。例えばデジタルサイネージで表示する表示情報に関連する情報を、その前を通過する人の携帯端末などに対し可視光を照射して送信する場合、可視光通信送信装置はデジタルサイネージのディスプレイのバックライト装置に装着され、その可視光を携帯端末に内蔵した可視光通信受信措置で受光し受信するように使用される。また、TV用のリモコンに可視光通信受信装置を搭載する場合、TVのディスプレイのバックライト装置に可視光通信送信装置を搭載し、その送信装置から送信された情報を、TV用リモコンで受信し、それを表示し或いは音声を出力するように使用される。
【0062】
可視光通信送信装置が起動すると、送信データ処理部1のデータ処理部13は、イーサネットインタフェース11を通してLANから送られた送信用のパケットデータを入力し、データメモリ14を用いて、パケットデータをOFDM用に組み直し、データの各データを時分割して、第1サブキャリア用の送信データと第2サブキャリア用の送信データに交互に割り付けるように、入出力部15からOFDM変調器2に出力する。
【0063】
OFDM変調器2は、送信データ処理部1から送られた送信データ信号の各データを時分割して、第1デジタル変調部21と第2デジタル変調部22に交互に割り当てるように入力する。このとき、第1デジタル変調部21はその送信データを第1サブキャリアでデジタル変調し、第2デジタル変調部22は、第1サブキャリアとは周波数帯域が重なる第2サブキャリアで送信データをデジタル変調する。デジタル変調は、BPSK,QPSK,QAMなどの方式により行なわれ、第1デジタル変調部21からはデジタル変調された第1デジタル変調信号が出力され、第2デジタル変調部22からはデジタル変調された第2デジタル変調信号が出力される。
【0064】
第1デジタル変調部21から出力された第1デジタル変調信号はローパスフィルター23を通して信号合成部27に入力され、第2デジタル変調部22から出力された第2デジタル変調信号はハイパスフィルター24を通して信号合成部27に入力される。信号合成部27では第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を時間軸方向に加算して合成するが、第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号は、合成されたとき、合成信号の電力スペクトル密度を打ち消して零となるように直交関係に配置された信号であり、このような第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号が合成され、これによって、OFDM変調器2において直交変調が行なわれ、信号合成部27からはOFDM信号がLED駆動部3の増幅器31に出力される。
【0065】
増幅器31は、OFDM信号の第1サブキャリアと第2サブキャリアの送信信号を増幅し、増幅された送信信号が帯域補正増幅器32により帯域補正された後、LEDドライバ33に入力され、LEDドライバ33はLED30を発光駆動する。これにより、LED30が発光し、OFDM変調された高周波の送信信号を重畳した可視光が、LED30から可視光通信用及び照明用として、ディスプレイのバックライト装置或いは照明用ライトなどから照射される。
【0066】
このとき、可視光通信送信装置は、LED30を発光させて可視光を照射し、その可視光にOFDM信号を重畳させて送信するが、高周波領域で周波数特性にひずみの生じるLEDを使用しても、LED駆動部3では、増幅器31に接続された帯域補正増幅器32により、帯域のイコライジング補正を加えるように高周波送信信号を増幅し、これにより、高周波信号を良好な直線性をもって増幅する。
【0067】
また、照明光として使用されるLED30の光が調光回路36、DCオフセット回路37により調光された場合、調光信号によりLED30の動作IV領域が変わり、照度の高い領域では、電圧Vの変化に対し電流Iの変化の直線性が比較的良好であるのに対し、照度の低い領域では、電圧Vの変化に対し電流Iの変化の直線性が悪くひずみが大きくなる。このため、LED30が照度の低い領域で動作中、調光が行われると、照度の高い領域のときに比べ、調光操作に応じた高速伝送を行なうことができず、また調光幅も小さくなる。
【0068】
しかし、LED駆動部3の照度安定化回路34は、調光回路36からの調光信号により増幅器31の直流オフセットレベルを調整して調光する際、例えば照度の高い領域では、その特性曲線とは逆特性の補正曲線をもった補正回路により増幅器31の直流オフセットレベルを補正し、例えば照度の低い領域では、その特性曲線とは逆特性の補正曲線をもった補正回路により増幅器31の直流オフセットレベルを補正する。これにより、調光信号に応じてLED30の調光を安定して行うと共に重畳信号の補正をダイナミックに行なうことができる。
【0069】
さらに、LED駆動部3の温度補償回路35は、LED30の温度を検出する温度センサの検出信号に基づき、LED30の温度と調光に応じて、LED30のIV特性曲線の非線形ひずみを線形に補正する。
【0070】
LEDの温度係数は例えば約−2mV/℃程度であり、定電流駆動される高温時のLED電圧は低温時のLED電圧より低くなり、IV特性曲線は電圧の低い方に平行移動して照度が低下し、IV特性曲線の傾きも変化するが、温度補償回路35は、LED30の温度またはLED30の近傍の温度を検出する温度センサの検出信号に基づき、LED30の温度と調光に応じて、LED30のIV特性曲線の非線形ひずみを線形に補正し、LED30の温度が上昇した場合、LED30の端子電圧は低下するので、増幅器31の直流オフセットレベルを、温度の上昇に応じて上昇させ、温度の下降に応じて増幅器31の直流オフセットレベルを下げるように動作する。これにより、LED30の温度の変化に伴う照度の不安定さを解消し、LEDとその駆動部の温度補償を行なうことができる。
【0071】
また、LED駆動部3では、増幅器31に帯域補正増幅器32を接続し、帯域補正増幅器32により帯域のイコライジング補正を加えるように高周波送信信号を増幅し、周波数帯域の広い高周波信号であっても、良好な直線性をもって増幅する。
【0072】
また、LED30の周波数特性は、上記の如く、周波数が低いほど発光レベルが高く、周波数が高くなるほど発光レベルが低下するような非線形特性であるが、帯域補正増幅器32は、このようなLED30の周波数特性の逆特性を信号に加えて帯域補正をしつつ高周波送信信号を増幅するので、高周波の周波数帯域を用いて信号を送信する際、周波数が低いほど発光レベルが高く、周波数が高くなるほど発光レベルが低下する周波数特性のLED30を可視光投光用に使用した場合でも、ひずみを生じさせずに、LEDの可視光に送信信号を重畳させて、情報を高速で送信することができる。
【0073】
さらに、照明光として使用されるLED30の光が調光された場合には、調光回路36からの調光信号により増幅器31の直流オフセットレベルが調整されて調光されるが、このとき、LED30の動作点の電流と電圧が変化し、リニアに調光することが難しくなる。しかし、照度安定化回路34は、LED30の照度の高い領域または低い領域つまり調光信号に応じて、その特性曲線とは逆特性の補正曲線をもった補正回路により増幅器31の直流オフセットレベルを補正することにより、LED30の調光を安定して行うことができる。
【0074】
さらに、LED駆動部3の温度補償回路35は、LED30の温度を検出する温度センサの検出信号に基づき、増幅器31の直流オフセットレベルを温度の上昇に応じて上昇させ、温度の下降に応じて増幅器31の直流オフセットレベルを下げるように動作し、LED30のIV特性曲線の非線形ひずみを線形に補正するので、LED30の温度の変化に伴う照度の不安定さを解消することができる。
【0075】
可視光通信送信装置から送信され照射された可視光は、可視光通信受信装置の受光素子50により受光され、受光素子50から出力された受信信号は増幅器51で増幅される。受信信号は、2波のOFDM信号からなる非常に狭帯域の高周波信号であり、その狭帯域の高周波信号に同調する同調回路を設けた増幅器51により、受信信号は高いS/N比で高感度に受信され増幅される。
【0076】
増幅器51から出力された受信信号は、ローパスフィルター52を通すことにより、第1サブキャリアの第1デジタル変調信号のみが分離して第1復調器54に入力され、ハイパスフィルター53を通すことにより、第2サブキャリアの第2デジタル変調信号のみが分離して第2復調器55に入力される。
【0077】
第1復調器54では、第1デジタル変調信号と同じ周波数信号を、ミキサで第1デジタル変調信号に乗算して第1データ信号を抽出し、第2復調器55では、第2デジタル変調信号と同じ周波数、同位相の周波数信号を、ミキサで第2デジタル変調信号に乗算して第2データ信号を抽出するように動作し、これにより、デジタル変調された第1サブキャリアの第1デジタル変調信号に含まれる送信データ、及び第2サブキャリアの第2デジタル変調信号に含まれる送信データが復調(ダウンコンバージョン)され、第1復調器54、第2復調器55から復調された各々のデータ信号が出力される。
【0078】
次に、復調されたデータ信号は、データ合成部56に入力され、データ合成部56では、第1復調器54から各々出力された第1データ信号を取り込むと共に、第2復調器55から各々出力された第2データ信号を取り込み、第1データ信号と第2データ信号を時間的に交互に繋ぎ合わせ、送信された元のデータ信号として出力する。出力されたデータ信号は、データ処理部57に入力され、データ処理部57は、復調されたデータ信号に基づき、可視光通信送信装置から送信された文字や画像の情報を表示器58に表示し、或いは送信されたデータ信号が音声データであれば、その音声信号を音声出力部59に出力し、スピーカーなどから音声を発生させる。
【0079】
このように、可視光通信送信装置のLED30から照射された可視光に重畳される送信信号が2波の直交周波数分割多重の信号、つまり第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と第2サブキャリアの第2デジタル変調信号のみからなる信号のため、従来のOFDM方式の可視光通信受信装置に比べ、離散高速フーリエ変換回路、ADコンバータなどを必要とせず、回路構成を非常に簡素化することができる。また、受信回路の消費電力も非常に少なくなるので、例えば電源を電池とする小型の携帯端末などにも、容易に搭載することができる。
【0080】
さらに、可視光通信受信装置は、第1サブキャリアと第2サブキャリアの2波のOFDM変調された送信信号を受信し、受信信号の帯域幅は非常に狭い狭帯域となるので、可視光通信受信装置は、比較的簡単な受信回路を使用して、良好なS/N比で、且つ高感度に信号を受信することができる。
【0081】
なお、可視光通信送信装置における上記OFDM変調器2は、ハードウエア構成であったが、CPUを基本構成とするデータ処理部のソフトウエアにより、OFDM変調、つまり、送信データ処理部1から送られたデータを時分割し、時分割された各データを交互に、第1サブキャリアの第1周波数と第2サブキャリアの第2周波数で変調し、それらを時間軸方向に加算して合成し、OFDM信号を生成する処理を行なうこともできる。
【0082】
また、同様に、可視光通信受信装置の上記第1復調器54、第2復調器55は、ハードウエア構成であったが、CPUを基本構成とするデータ処理部のソフトウエアにより、OFDM復調、つまり、受信信号からフィルターを通して分離された第1デジタル変調信号を、第1サブキャリアの第1周波数と同じ周波数の信号を乗算して、そこに含まれるデータを抽出し、分離された第2デジタル変調信号を、第2サブキャリアの第2周波数と同じ周波数の信号を乗算して、そこに含まれるデータを抽出し、それらのデータを時間的に交互に繋ぎ合わせ、OFDM信号の復調を行なうこともできる。
【符号の説明】
【0083】
1 送信データ処理部
2 OFDM変調器
3 LED駆動部
11 イーサネットインタフェース
12 データバッファ
13 データ処理部
14 データメモリ
15 入出力部
20 デジタル変調部
21 第1デジタル変調部
22 第2デジタル変調部
23 ローパスフィルター
24 ハイパスフィルター
24 ハイフィルター
27 信号合成部
30 LED
31 増幅器
32 帯域補正増幅器
33 LEDドライバ
34 照度安定化回路
35 温度補償回路
36 調光回路
37 DCオフセット回路
50 受光素子
51 増幅器
52 ローパスフィルター
53 ハイパスフィルター
54 第1復調器
55 第2復調器
56 データ合成部
57 データ処理部
58 表示器
59 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交周波数分割多重方式により送信データのデジタル信号を複数のサブキャリアに分割して変調し、変調された高周波信号を、LEDの発光動作により照射される可視光に重畳させて、送信データ信号を送信する可視光通信送信装置において、
パケット化された送信データ信号の各データを、第1サブキャリア用と第2サブキャリア用に、交互に割り当てるように送信データを組み替える送信データ処理部と、
該送信データ処理部から送られる該第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数の該第1サブキャリアによりデジタル変調して第1デジタル変調信号を生成する第1デジタル変調部と、該送信データ処理部から送られる該第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを、該第1周波数とは周波数帯域が重なる第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調して第2デジタル変調信号を生成する第2デジタル変調部とを含み、該第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号が合成されたとき、合成信号の電力スペクトル密度が打ち消されて零となるように第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を直交関係に配置するデジタル変調部と、
該第1デジタル変調部で変調された該第1デジタル変調信号を含む信号を入力し、該第1デジタル変調信号のみをフィルタリングして出力する第1フィルター回路と、
該第2デジタル変調部で変調された該第2デジタル変調信号を含む信号を入力し、該第2デジタル変調信号のみをフィルタリングして出力する第2フィルター回路と、
該第1フィルター回路から出力された該第1デジタル変調信号と、該第2フィルター回路から出力された該第2デジタル変調信号とを入力し、合成信号の電力スペクトル密度が打ち消されて零となるように、該第1デジタル変調信号と第2デジタル変調信号を合成して出力する信号合成回路と、
該信号合成回路で合成された送信信号を可視光に重畳させるように前記LEDを駆動するLED駆動部と、
を備えたことを特徴とする可視光通信送信装置。
【請求項2】
前記信号合成部の出力側に帯域補正増幅器が接続され、該帯域補正増幅器は、前記LEDの周波数特性の非線形ひずみに対し、予めひずみの逆特性を送信信号に加えて補正するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の可視光通信送信装置。
【請求項3】
前記LED駆動部には前上記信号合成部で合成された高周波信号を増幅する増幅器が設けられ、調光操作に応じて該増幅器の直流オフセットレベルを調整してLEDの発光レベルの調整を行なうDCオフセット回路及び調光回路が設けられたことを特徴とする請求項1記載の可視光通信送信装置。
【請求項4】
前記LED駆動部の前記増幅器には、前記LEDの温度特性を補償してLEDの温度変化に対し照度を一定にする温度補償回路が接続され、検出されたLEDの電流・電圧及びLEDまたはその近傍の温度を検出する温度センサの温度検出信号に基づき、該増幅器に信号を出力して直流オフセットレベルを調整することを特徴とする請求項3記載の可視光通信送信装置。
【請求項5】
前記LED駆動部には、前記調光回路の調光信号に応じて前記LEDの非線形の電流電圧特性をリニアに補正し、該LEDの照度を安定させる照度安定化回路が設けられ、LEDドライバの出力電圧に応じて該照度安定化回路から前記増幅器に信号を出力してその直流オフセットレベルを調整することを特徴とする請求項3記載の可視光通信送信装置。
【請求項6】
可視光通信送信装置にて、送信データ信号の各データを、第1サブキャリア用と第2サブキャリア用に交互に割り当て、該第1サブキャリア用の送信データ信号の各データを、第1周波数の該第1サブキャリアによりデジタル変調し、該第2サブキャリア用の送信データ信号の各データを、該第1周波数とは周波数帯域が重なる第2周波数の第2サブキャリアによりデジタル変調し、フィルター回路を通して得られた該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を、その電力スペクトル密度が打ち消されて零となるように直交関係に配置し合成して直交変調し、直交変調された送信信号をLEDから照射される可視光に重畳させて、該可視光通信送信装置から送信される送信信号を受信する可視光通信受信装置であって、
該可視光を受光し、受光信号を出力する受光素子と、
該受光素子から出力された受光信号を増幅する増幅器と、
該増幅器から出力され直交変調された該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を含む高周波受信信号をフィルタリングし、該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号と該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号とを分離して取り出すフィルター回路と、
該フィルター回路から分離して出力された該第1サブキャリアの第1デジタル変調信号を入力し、第1デジタル信号に復調する第1復調器と、
該フィルター回路から分離して出力された該第2サブキャリアの第2デジタル変調信号を入力し、第2デジタル信号に復調する第2復調器と、
該第1復調器から出力された第1デジタル信号と該第2復調器から出力された第2デジタル信号を交互に取り込み、該第1デジタル信号と該第2デジタル信号を時間的に交互に繋ぎ合わせて合成し、受信データとして出力するデータ合成部と、
を備えたことを特徴とする可視光通信受信装置。
【請求項7】
前記増幅器に、前記第1サブキャリアの第1周波数及び第2サブキャリアの第2周波数に共振する同調回路が設けられたことを特徴とする請求項6記載の可視光通信受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−49901(P2012−49901A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191161(P2010−191161)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(507299758)株式会社アウトスタンディングテクノロジー (16)
【Fターム(参考)】