説明

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】0℃以下の環境下において遮音性に優れ、かつ、耐熱性にも優れる合わせガラス用中間膜を提供する。また、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供する。
【解決手段】少なくとも中間層と該中間層を挟持する保護層とを有する合わせガラス用中間膜であって、上記中間層は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である領域1と、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T2が前記T1より高い領域2とを有し、前記保護層の周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T3が前記T1より高い合わせガラス用中間膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0℃以下の環境下において遮音性に優れ、かつ、耐熱性にも優れる合わせガラス用中間膜に関する。また、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少ないため、安全性が高い。そのため、自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとして、少なくとも一対のガラス板間に、例えば、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する合わせガラス用中間膜を介在させ、積層し、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。
【0003】
近年、合わせガラスを軽量化するために、合わせガラスの厚さを薄くすることが検討されている。しかし、合わせガラスの厚さを薄くすると、遮音性が低下するという問題があった。このような合わせガラスを自動車等のフロントガラスとして用いた場合、風切り音やワイパーの駆動音等の2000〜5000Hz程度の音域の遮音性が充分に得られない。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、複数枚のガラス板と、該複数枚のガラス板間に介在された中間膜とを備えた合わせガラスであって、中間膜は、アセタール化度が60〜85mol%のポリビニルアセタール樹脂と、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と、可塑剤とを含み、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量が30質量部を超え、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量が0.001〜1.0質量部である遮音層を有する合わせガラスが開示されている。特許文献1に開示されている合わせガラスは遮音性に優れるとされている。しかしながら、0℃以下の環境下において遮音性に劣るという問題があった。
【0005】
遮音性を更に向上させる方法として、更に多量の可塑剤を遮音層に含有させることが考えられる。しかしながら、多量の可塑剤を含有する遮音層を有する合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスは、耐熱性が劣るという問題がある。例えば、多量の可塑剤を含有する遮音層を有する合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを、立てかけた状態で高温環境下に保管すると、ガラス板の重さにより、一方のガラス板に対して他方のガラス板がずれてしまう、いわゆる板ズレが発生することがあった。
【特許文献1】特開2007−070200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、0℃以下の環境下において遮音性に優れ、かつ、耐熱性にも優れる合わせガラス用中間膜を提供することを目的とする。また、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも中間層と該中間層を挟持する保護層とを有する合わせガラス用中間膜であって、上記中間層は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である領域1と、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T2が前記T1より高い領域2とを有し、前記保護層の周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T3が前記T1より高い合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である遮音層を含む合わせガラス用中間膜を用いれば、0℃以下の環境下において遮音性が優れた合わせガラス用中間膜が得られることを見出した。しかし、このような遮音層を有する合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスは、耐熱性に劣り、板ズレが発生することがある。そこで、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である領域1と、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T2が前記T1より高い領域2とを有する中間層を含む合わせガラス用中間膜とすることにより、0℃以下の環境下における優れた遮音性と、耐熱性とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本明細書においてtanδとは、動的粘弾性測定によって得られる損失正接の値を意味する。上記tanδは、以下の方法で測定することができる。
測定対象となる合わせガラス用中間膜を打ち抜いて、直径8mmの試験シートを作製する。この試験シートの動的粘弾性を、せん断法にて、歪み量1.0%及び周波数1Hzの条件下において、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定をすることにより、tanδを測定できる。
上記tanδの最大値を示す温度とは、得られた損失正接の最大値を示す温度を意味する。上記tanδの最大値を示す温度は、例えば、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ARES」)を用いて測定することができる。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜は、少なくとも中間層と該中間層を挟持する保護層とを有する。
上記中間層は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である領域1と、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T2が前記T1より高い領域2とを有する。上記領域1は、0℃以下の環境下における遮音性の向上に寄与する領域であり、上記領域2は、耐熱性の向上に寄与する領域である。
【0011】
上記領域1は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である。上記T1が0℃を越えると、0℃以下の環境下において遮音性が得られない。上記T1の好ましい上限は−5℃である。
ここで、0℃以下の環境下において遮音性が低下する理由を説明し、上記領域1が0℃以下の環境下における遮音性の向上に寄与する理由について説明する。
【0012】
本発明における遮音性の低下とは、コインシデンス効果による遮音性、即ち音響透過損失の低下を意味する。上記コインシデンス効果とは、音との接触面の鉛直方向に対して斜方向から、音が材料に当たったときに、材料に生じた曲げ振動の作用によって、あたかも材料がないかのように反対側に音が現れるため、質量則から予測される音響透過損失よりもはるかに値が小さくなる現象である。また、質量則による音響透過損失R、及び、コインシデンス効果が現れる中心周波数fcは、一般に下記式(1)及び下記式(2)で表される。
【0013】
【数1】

【0014】
式(1)中、ωは角周波数(2πf)を表し、mは材料の面密度(kg/m)を表し、ρは空気の密度(kg/m)を表し、cは音速(m/s)を表す。
【0015】
【数2】

式(2)中、hは材料の厚さ(m)を表し、ρmは材料の密度(kg/m)を表し、Eは材料のヤング率(N/m)を表し、σは材料のポアソン比を表し、cは音速(m/s)を表す。
【0016】
合わせガラスに用いられた合わせガラス用中間膜が、コインシデンス効果が現れる中心周波数の近傍においてガラス状態になると、合わせガラスに用いられた2枚のガラス板は一体化した挙動を示す。2枚のガラス板の間に、合わせガラス用中間膜が存在することにより面密度が増加するが、ガラス板の比重が合わせガラス用中間膜より大きいため、合わせガラスに用いられたガラス板2枚を1枚のガラス板に置き換えた単層ガラスの挙動に、合わせガラスが非常に近くなる。即ち、単層ガラスに近いコインシデンス効果が現れる。
合わせガラスに用いられた合わせガラス用中間膜が、コインシデンス効果が現れる中心周波数の近傍においてゴム状態になると、合わせガラスに用いられた2枚のガラス板がそれぞれ独立したガラス板のような挙動を示す。この場合、2枚のガラス板が独立した挙動を示すため、厚みが一体化した合わせガラスの半分となると近似できるため、コインシデンス効果が現れる中心周波数は、ガラス状態の合わせガラス用中間膜に比べて、2倍の周波数付近に現れる。
つまり、コインシデンス効果の改善とは、合わせガラスに用いられた合わせガラス用中間膜の状態をゴム状態として、コインシデンス効果が現れる中心周波数を2倍の周波数に移行させることで、改善することなのである。
【0017】
また、音の周波数特性に関して説明する。人間の耳の可聴領域は一般的には20〜20000kHzであり、数百〜5000Hzの領域の感度が高く、特に、1000〜2000Hzの領域の感度が高いとされている。すなわち、5000Hzを超える音に対して、感度はそれほど高くない。また、周波数が高くなれば、音の波長が短いため、音が物体に当たった時に影響を受けやすいので、周波数が高くなればなるほど減衰しやすくなる。即ち、高い周波数にコインシデンス効果が現れる中心周波数を移行させることは、防音技術として有効な手段である。
【0018】
以上のことから、従来の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスが0℃以下の環境下で遮音性が低下する理由は、低温時に合わせガラス用中間膜がガラス状態になってしまうことにより、合わせガラスに用いられた2枚のガラス板が一体化した挙動を示し、ガラス板2枚を1枚のガラス板に置き換えた単層ガラスの挙動に非常に近くなるためであると考えられる。
これに対して本発明の合わせガラス用中間膜では、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である領域1を有する層を設けることで、0℃以下の環境下であっても、合わせガラス用中間膜がガラス状態にならず、コインシデンス効果が現れる中心周波数をより高くすることにより遮音性を改善できる。
【0019】
周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が上記範囲にある領域1は、例えば、以下の2つの態様がある。
第1の態様は、アセタール基の炭素数が3又は4、アセチル基量が3〜30mol%、平均重合度が500〜5000であるポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して可塑剤を71〜150重量部含有する樹脂組成物により形成されている領域1である。
第2の態様は、アセタール基の炭素数が5〜20、アセチル基量が3〜30mol%、平均重合度が500〜5000であるポリビニルアセタール樹脂を含有する樹脂組成物により形成されている領域1である。
以下にこれらの態様について詳しく説明する。
【0020】
第1の態様の領域1は、特定のポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂A」ともいう。)100重量部に対して可塑剤を71〜150重量部含有する樹脂組成物により形成されている。本発明者らは、アセチル基量が特定の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂は、可塑剤との相溶性が高く大量の可塑剤を配合でき、大量の可塑剤とポリビニルアセタール樹脂とを含有する領域1はガラス転移温度が充分に低く、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1を0℃以下に調整できることを見出した。
【0021】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aはポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールの鹸化度の好ましい下限は80mol%、好ましい上限は99.8mol%である。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aに含まれるアセタール基の炭素数は3又は4である。即ち、上記ポリビニルアセタール樹脂Aを製造するのに用いるアルデヒドは、炭素数が3又は4のアルデヒドである。上記ポリビニルアセタール樹脂Aに含まれるアセタール基の炭素数が3未満であると、ガラス転移温度が充分に低下せず、0℃以下の環境下において、遮音性が低下することがある。
【0023】
上記炭素数が3又は4のアルデヒドは、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒドが好適である。上記アルデヒドは、単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル基量の下限は3mol%、上限は30mol%である。上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル基量が3mol%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が充分に得られず、領域1のガラス転移温度が充分に低下しないことがある。そのため、0℃以下の環境下における遮音性が得られないことがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル基量が30mol%を超えると、上記ポリビニルアルコールとアルデヒドとの反応性が著しく低下することからポリビニルアセタール樹脂の製造が困難になることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル基量の好ましい下限は5mol%、好ましい上限は15mol%である。
【0025】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aの平均重合度の下限は500、上限は5000である。
上記ポリビニルアセタール樹脂Aの平均重合度が500未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Aの平均重合度が5000を超えると、合わせガラス用中間膜の成形が困難になることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Aの平均重合度の好ましい下限は800、好ましい上限は3000である。
【0026】
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
【0027】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。
【0028】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。
【0029】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、例えば、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,2−ブチレングリコールジ−2−エチレンブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0030】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0031】
上記可塑剤は、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、加水分解しにくいことから、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)がより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)が更に好ましい。
【0032】
第1の態様の領域1における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタール樹脂A100重量部に対して下限が71重量部、上限が150重量部である。第1の態様の領域1における可塑剤の含有量が71重量部未満であると、0℃以下の環境下において、遮音性が低下することがある。第1の態様の領域1における可塑剤の含有量が150重量部を超えると、可塑剤がブリードアウトすることにより、合わせガラス用中間膜の透明性が低下することがある。第1の態様の領域1における可塑剤の含有量の好ましい下限は80重量部、好ましい上限は130重量部である。
第1の態様の領域1は、ポリビニルアセタール樹脂に対して大量の可塑剤を含有しているため、0℃以下の環境下であっても、遮音性に優れる。
【0033】
第2の態様の領域1は、アセタール基の炭素数が5〜20、アセチル基量が3〜30mol%、平均重合度が500〜5000であるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂B」ともいう。)を含有する樹脂組成物により形成されている。本発明者らは、アセタール基の炭素数が特定の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂は、ガラス転移温度が充分に低く、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下に調整できることを見出した。
【0034】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bはポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールの鹸化度の好ましい下限は80mol%、好ましい上限は99.8mol%である。
【0035】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bに含まれるアセタール基の炭素数は5〜20である。即ち、上記ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するのに用いるアルデヒドは、炭素数が5〜20のアルデヒドである。上記ポリビニルアセタール樹脂Bに含まれるアセタール基の炭素数が5未満であると、ガラス転移温度が充分に低下せず、所定量の可塑剤を用いなければ、0℃以下の環境下において、遮音性が低下することがある。上記アセタール基の炭素数が20を超えると、アセタール化反応が進みにくいので好ましくない。上記アセタール基の炭素数の好ましい上限は10である。
【0036】
上記炭素数が5〜20のアルデヒドは、例えば、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−デシルアルデヒド等が好適である。上記アルデヒドは、単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル基量の下限は3mol%、上限は30mol%である。上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル基量が3mol%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が充分に得られず、領域1のガラス転移温度が充分に低下しないことがある。そのため、0℃以下の環境下における遮音性が得られないことがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル基量が30mol%を超えると、上記ポリビニルアルコールとアルデヒドとの反応性が著しく低下することからポリビニルアセタール樹脂の製造が困難になることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル基量の好ましい下限は5mol%、好ましい上限は15mol%である。
【0038】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bの平均重合度の下限は500、上限は5000である。
上記ポリビニルアセタール樹脂Bの平均重合度が500未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Bの平均重合度が5000を超えると、合わせガラス用中間膜の成形が困難になることがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Bの平均重合度の好ましい下限は800、好ましい上限は3000である。
【0039】
上記可塑剤は特に限定されず、第1の態様の領域1で用いる可塑剤と同様の可塑剤を用いることができる。
【0040】
第2の態様の領域1における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタール樹脂B100重量部に対して好ましい上限が90重量部である。第2の態様の領域1では、アセタール基の炭素数が5〜20であるポリビニルアセタール樹脂Bを用いることにより0℃以下の環境下での遮音性を実現している。従って、第1の態様の領域1に比べて大量の可塑剤を含有させる必要がない。第2の態様の領域1における可塑剤の含有量のより好ましい上限は80重量部である。なお、合わせガラスの耐貫通性を向上させるために、第2の態様の領域1は可塑剤を含有することが好ましい。
第2の態様の領域1は、アセタール基の炭素数が5〜20であるポリビニルアセタール樹脂を含有しているため、0℃以下の環境下であっても、遮音性に優れる。
【0041】
上記中間層の領域2は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T2が前記T1より高い領域である。
上記中間層が上記領域1を有することにより、本発明の合わせガラス用中間膜は0℃以下の環境下であっても、遮音性に優れる。しかしながら、上記中間層が上記領域1のみにより形成されている場合には、80℃以上の過酷な環境下では、板ズレが発生してしまうことがある。上記中間層が上記領域2を有することにより、0℃以下の環境下における優れた遮音性を維持したまま、板ズレの発生を防止することができる。
【0042】
上記領域2の周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T2は、温度T1より高い。これにより、80℃以上の過酷な環境下でも、板ズレが発生するのを防止することができる。上記温度T2は、0℃〜50℃の範囲内であることが好ましい。上記保護層のtanδの最大値を示す温度T2が0℃未満であると、耐熱性の向上効果が得られないことがあり、50℃を超えると、合わせガラス用中間膜に成形することが困難となることがある。上記T2は、20℃〜35℃の範囲内であることがより好ましい。
【0043】
上記中間層において、上記領域1と領域2との面積比は特に限定されず、少なくとも上記領域2が上記中間層の一部にでも存在していればよい。
上記中間層において、上記領域1と領域2との配置は特に限定されず、例えば、上記領域1と領域2とがストライプ状に交互に配置されていてもよく、上記領域2が合わせガラス用中間膜の周辺部に、上記領域1が合わせガラス用中間膜の中央部に配置されていてもよい。なかでも、上記領域2が合わせガラス用中間膜の周辺部に、上記領域1が合わせガラス用中間膜の中央部に配置されていている場合には、上記領域1と領域2との屈折率の差による境界が視認されにくくなるため好ましい。
【0044】
上記領域2を構成する樹脂組成物は、例えば、後述する保護層を構成する樹脂組成物として挙げられる樹脂組成物が挙げられる。上記領域2を構成する樹脂組成物は、なかでも、上記保護層を構成する樹脂組成物と同一であることが好ましい。上記領域2を構成する樹脂組成物が上記保護層を構成する樹脂組成物と同一であることにより、上記中間層と保護層との密着性が向上し、より高い耐熱性を発揮することができる。
なお、上記領域2を構成する樹脂組成物が上記保護層を構成する樹脂組成物と同一である場合には、上記保護層と上記中間層の領域2とは、同時に成形されて、その境界がなくともよい。
【0045】
上記中間層の厚さの好ましい下限は20μm、好ましい上限は1800μmである。上記中間層の厚さが20μm未満であると、充分な遮音性を発揮できないことがある。上記中間層の厚さが1800μmを超えると、合わせガラス用中間膜全体の厚さが厚くなってしまい実用的ではないことがある。上記中間層の厚さのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は500μmである。
【0046】
上記保護層は、上記中間層を挟持して、本発明の合わせガラス用中間膜の取扱い性を向上させる役割を有する。また、上記保護層は、上記中間層と組み合わせることにより、0℃以下の環境下のみならず、0℃を超える環境下における遮音性を付与する役割を有する。
【0047】
上記保護層は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T3が、温度T1より高く、かつ、0℃〜50℃の範囲内であることが好ましい。上記T3が上記T1より高いことにより、合わせガラス用中間膜の取り扱い性が優れる。上記保護層のtanδの最大値を示す温度T3が0℃未満であると、合わせガラス用中間膜の取り扱いが困難になることがある。また、上記T3が50℃を越えると合わせガラス用中間膜に成形することが困難になることがある。上記T3は、20℃〜35℃の範囲内であることが好ましい。
【0048】
上記保護層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂C」ともいう。)と可塑剤とを含有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂Cはポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより製造される。
上記ポリビニルアルコールの鹸化度の好ましい下限は80mol%、好ましい上限は99.8mol%である。
【0049】
上記ポリビニルアセタール樹脂Cに含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。即ち、上記ポリビニルアセタール樹脂Cを製造するのに用いるアルデヒドは特に限定されず、上記ポリビニルアセタール樹脂A、ポリビニルアセタール樹脂Bに用いるアルデヒドと同様のアルデヒドを用いることができる。上記ポリビニルアセタール樹脂Cに含まれるアセタール基の炭素数は3又は4であることが好ましい。上記アルデヒドは、単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記ポリビニルアセタール樹脂Cのアセチル基量は10mol%以下であることが好ましい。アセチル基量が10mol%を超えると、合わせガラス用中間膜の強度が充分に得られないことがある。
また、上記第1の態様の領域1を有する中間層と組み合わせる場合には、上記ポリビニルアセタール樹脂Cのアセチル基量は3mol%以下であることが好ましい。アセチル基量が3mol%以下であるポリビニルアセタール樹脂は可塑剤との相溶性が低い。可塑剤との相溶性が低いポリビニルアセタール樹脂Cを含有する保護層を用いることにより、第1の態様の領域1に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトすることを防止することができる。
上記ポリビニルアセタール樹脂Cのアセチル基量のより好ましい上限は2.5mol%である。
【0051】
上記ポリビニルアセタール樹脂Cのアセタール化度の好ましい下限は60mol%、好ましい上限は75mol%である。アセタール化度が60〜75mol%の範囲内であるポリビニルアセタール樹脂は可塑剤との相溶性が低く、このようなポリビニルアセタール樹脂Cを含有する保護層を用いることにより、特に第1の態様の領域1に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトすることを防止することができる。上記ポリビニルアセタール樹脂Cのアセタール化度が60mol%未満であると、保護層の耐湿性が低下することがある。上記ポリビニルアセタール樹脂Cのアセタール化度が75mol%を超えると、領域1に含まれる可塑剤がブリードアウトすることがある。
【0052】
上記保護層に用いる可塑剤は、上述した可塑剤を用いることができる。上記保護層に用いる可塑剤は、上記中間層に用いる可塑剤と、同一であってもよく、異なってもよい。
【0053】
上記保護層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタール樹脂C100重量部に対して好ましい下限が25重量部、好ましい上限が50重量部である。上記保護層における可塑剤の含有量が25重量部未満であると、合わせガラスの耐貫通性が著しく低下することがある。上記保護層における可塑剤の含有量が50重量部を超えると、上記保護層から可塑剤がブリードアウトすることにより、合わせガラス用中間膜の透明性が低下することがある。上記保護層における可塑剤の含有量の好ましい下限は30重量部、好ましい上限は40重量部である。
【0054】
上記保護層の厚さの好ましい下限は100μm、好ましい上限は1000μmである。上記保護層の厚さが100μm未満であると、常温域における遮音性が低下したり、上記中間層から可塑剤がブリードアウトしたりすることがある。上記保護層の厚さが1000μmを超えると、合わせガラス用中間膜全体の厚さが厚くなってしまい実用的ではないことがある。上記保護層の厚さのより好ましい下限は200μm、より好ましい上限は500μmである。
【0055】
上記中間層及び上記保護層は、必要に応じて分散助剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、蛍光増白剤、青色顔料等の添加剤を含有してもよい。
【0056】
本発明の合わせガラス用中間膜の厚さの好ましい下限は300μm、好ましい上限は2000μmである。本発明の合わせガラス用中間膜の厚さが300μm未満であると、充分な耐貫通性が得られないことがある。本発明の合わせガラス用中間膜の厚さが2000μmを超えると、実用化されている合わせガラスの厚みを超えてしまうことがある。本発明の合わせガラス用中間膜の厚さのより好ましい下限は400μm、より好ましい上限は1200μmである。
【0057】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されず、例えば、上記中間層の領域1を構成する樹脂組成物、上記中間層の領域2を構成する樹脂組成物、及び、上記保護層を構成する樹脂組成物をプレス成形することによりそれぞれのシートを作製する工程と、上記中間層の領域1を構成する樹脂組成物により形成されているシートと上記中間層の領域2を構成する樹脂組成物により形成されているシートを水平方向に組み合わせて中間層用シートを形成する工程と、該中間層用シートを上記保護層を構成する樹脂組成物により形成されているシートで挟持して積層体を形成する工程と、該積層体をプレス成型する工程とを有する方法等が挙げられる。
また、本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は、上記中間層の領域1を構成する樹脂組成物、上記中間層の領域2を構成する樹脂組成物、及び、上記保護層を構成する樹脂組成物を、押出機を用いて押出法により作製する方法も挙げられる。
【0058】
本発明の合わせガラス用中間膜が、2枚の透明板の間に挟み込まれている合わせガラスもまた、本発明の1つである。なお、本発明の合わせガラスをペアガラスの一部として用いてもよい。
本発明の合わせガラスに用いられる透明板は特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができ、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ポリカーボネートやポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
【0059】
上記板ガラスとして、2種類以上の板ガラスを用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色された板ガラスとの間に、本発明の合わせガラス用中間膜を挟み込ませることにより得られた合わせガラスが挙げられる。また、上記無機ガラスと、上記有機プラスチックス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を挟み込ませることにより得られた合わせガラスが挙げられる。
本発明の合わせガラスは、自動車用ガラスとして使用する場合は、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス、パノラマガラスとして用いることができる。
また、本発明の合わせガラスの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、0℃以下の環境下において遮音性に優れ、かつ、耐熱性にも優れる合わせガラス用中間膜を提供できる。また、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
(1)樹脂組成物Aの調製
アセチル基量が13mol%、アセタール基の炭素数が4、ブチラール化度が65mol%のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度2100)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)120重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、中間層の領域1用の樹脂組成物Aを調製した。
【0063】
(2)樹脂組成物Cの調製
アセチル基量が1mol%、アセタール基の炭素数が4、ブチラール化度が65mol%のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、保護層用の樹脂組成物Cを調製した。
【0064】
(3)合わせガラス用中間膜の作製
樹脂組成物Aを2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.1mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.1mmのシートAを得た。
樹脂組成物Cを2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.35mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.35mmのシートC1を得た。
樹脂組成物Cを2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.1mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.1mmのシートC2を得た。
【0065】
得られたシートC2を15×30cmの長方形状に切り出し、更に、周辺部に1cmを残して内側をくり抜き、外形15×30cm、内径13×28cmの枠状体を作製した。
得られたシートAから13×28cmの長方形状体を切り出した。
シートAにより形成されている長方形状体を、上記シートC2により形成されている枠状体の枠の内側にはめ込んで中間層用シートを得た。
【0066】
得られたシートC1から15×30cmの長方形状体を切り出した。
得られた中間層用シートを、2枚のシートC1により形成されている長方形状体の間に挟み込んで積層体を得た。
得られた積層体を2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.8mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0067】
(実施例2)
実施例1で得られたシートAから6×30cmの長方形状体を切り出した。
実施例1で得られたシートC2から1×30cmの長方形状体を切り出した。
得られたシートAにより形成されている長方形状体とシートC2により形成されている長方形状体とをシートC2/シートA/シートC2/シートA/シートC2の順に隙間なく並べて、全体として15×30cmの中間層用シートを得た。
【0068】
実施例1で得られたシートC1から15×30cmの長方形状体を切り出した。
得られた中間層用シートを、2枚のシートC1により形成されている長方形状体の間に挟み込んで積層体を得た。
得られた積層体を2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.8mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0069】
(実施例3)
樹脂組成物Aに添加した可塑剤量を71重量部とした以外は実施例1と同様にして、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0070】
(実施例4)
樹脂組成物Aに添加した可塑剤量を150重量部とした以外は実施例1と同様にして、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0071】
(実施例5)
クリアランス板を変更することで、シートA及びシートC2を0.05mm、シートC1を0.5mmとした以外は実施例1と同様にして、厚さ1.05mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0072】
(実施例6)
樹脂組成物Aの調製において、アセチル基量が13mol%、アセタール基の炭素数が4、ブチラール化度が65mol%のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1000)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)100重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、領域1用の樹脂組成物Aを調製した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0073】
(実施例7)
樹脂組成物Aの調製において、アセチル基量が13mol%、アセタール基の炭素数が4、ブチラール化度が65mol%のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度4200)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)100重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、領域1用の樹脂組成物Aを調製した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0074】
(実施例8)
樹脂組成物Aの調製において、アセチル基量が7mol%、アセタール基の炭素数が4、ブチラール化度が65mol%のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度2100)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)100重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、領域1用の樹脂組成物Aを調製した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0075】
(実施例9)
樹脂組成物Aの調製において、アセチル基量が24mol%、アセタール基の炭素数が4、ブチラール化度が65mol%のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度2100)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)100重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、領域1用の樹脂組成物Aを調製した以外は実施例1と同様にして、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0076】
(実施例10)
(1)樹脂組成物Bの調製
アセチル基量が18mol%、アセタール基の炭素数が6、アセタール化度が65mol%のポリビニルヘキサナール樹脂(平均重合度2100)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)75重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物Bを調製した。
【0077】
(2)樹脂組成物Cの調製
アセチル基量が1mol%、アセタール基の炭素数が4、ブチラール化度が65mol%のポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物Cを調製した。
【0078】
(3)合わせガラス用中間膜の作製
樹脂組成物Bを2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.1mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.1mmのシートBを得た。
樹脂組成物Cを2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.35mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.35mmのシートC3を得た。
樹脂組成物Cを2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.1mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.1mmのシートC4を得た。
【0079】
得られたシートC4を15×30cmの長方形状に切り出し、更に、周辺部に1cmを残して内側をくり抜き、外形15×30cm、内径13×28cmの枠状体を作製した。
得られたシートBから13×28cmの長方形状体を切り出した。
シートBにより形成されている長方形状体を、上記シートC4により形成されている枠状体の枠の内側にはめ込んで中間層用シートを得た。
【0080】
得られたシートC3から15×30cmの長方形状体を切り出した。
得られた中間層用シートを、2枚のシートC3により形成されている長方形状体の間に挟み込んで積層体を得た。
得られた積層体を2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.8mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ0.8mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0081】
(実施例11)
アセチル基量が18mol%、アセタール基の炭素数が8、アセタール化度が65mol%のポリビニルオクタナール樹脂(平均重合度2100)100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物Bを調製したこと以外は、実施例10と同様の方法で、合わせガラス用中間膜を作製した。
【0082】
(比較例1)
樹脂組成物Aに添加した可塑剤量を60重量部とした以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜を得た。
【0083】
(比較例2)
樹脂組成物Aに添加した可塑剤量を160重量部とした以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜を得た。
【0084】
(評価)
実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0085】
(1)周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度の測定
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物A、B及びCをそれぞれ150℃でプレス成形し、厚さ0.8mmのシートを作製した。次いで、シートを直径8mmの円形に切り抜き、試験シートを作製した。試験シートの動的粘弾性を、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ARES」)を用いて、せん断法にて、歪み量1.0%及び周波数1Hzの条件下において、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定をすることにより、tanδを測定し、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度を測定した。
【0086】
(2)音響透過損失の評価
得られた合わせガラス用中間膜を平面方向に60×60cm(縦2枚×横4枚)の大きさになるように隙間なく配置し、2枚の透明なフロートガラス(縦60cm×横60cm×厚さ2.0mm)で挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で、30分保持し、真空プレスした。
JIS A 1416に準拠し、音源室と受音室間の開口部(50×50cm)に評価用サンプルを音漏れがないように隙間を粘土にて埋めて、取り付け、評価用サンプルの表面温度が0℃となる様に調整した後、音響透過損失の測定を行った。
厚さ4mmの単層のガラス板で音響透過損失の測定をしたところ、3150Hzにコインシデンス効果が現れる中心周波数が確認された。よって、3150Hzの音響透過損失の値を測定値とした。
【0087】
(3)板ズレ(耐熱性)の評価
得られた合わせガラス用中間膜(15×30cm)を2枚の透明なフロートガラス(縦15cm×横30cm×厚さ2.0mm)で挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で、30分保持し、真空プレスして評価用サンプルを得た。
得られた評価用サンプルの一方の面を垂直面に固定し、他方の面に両面テープを用いてフロートガラス(15×30cm×厚み15mm)を接着した。合わせガラスの側面にズレ量を測定するための基準線を引き、80℃の環境下にて30日間放置した。30日経過した後、評価用サンプルの2枚のガラスのズレ量を測定した。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、0℃以下の環境下において遮音性に優れ、かつ、耐熱性にも優れる合わせガラス用中間膜を提供できる。また、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも中間層と該中間層を挟持する保護層とを有する合わせガラス用中間膜であって、
上記中間層は、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T1が0℃以下である領域1と、周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T2が前記T1より高い領域2とを有し、
前記保護層の周波数1Hzにおけるtanδの最大値を示す温度T3が前記T1より高い
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
中間層の領域2を構成する樹脂組成物と、保護層を構成する樹脂組成物とが同一であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
温度T2及びT3は、0℃〜50℃の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
中間層の領域1は、アセタール基の炭素数が3又は4、アセチル基量が3〜30mol%、平均重合度が500〜5000であるポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤を71〜150重量部含有する樹脂組成物により形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
中間層の領域1は、アセタール基の炭素数が5〜20、アセチル基量が3〜30mol%、平均重合度が500〜5000であるポリビニルアセタール樹脂を含有する樹脂組成物により形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
保護層は、アセタール基の炭素数が3又は4、アセタール化度が60〜75mol%、アセチル基量が10mol%以下のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤を25〜50重量部含有する樹脂組成物により形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の合わせガラス用中間膜が、2枚の透明板の間に挟み込まれていることを特徴とする合わせガラス。

【公開番号】特開2010−150065(P2010−150065A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328513(P2008−328513)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】