説明

合わせガラス用積層体及び合わせガラス用中間膜

【課題】ヘッドアップディスプレイ(HUD)として用いられ、光に曝されても劣化せず、耐衝撃性に優れる合わせガラスを作製することができる合わせガラス用積層体を提供する。
【解決手段】合わせガラス用中間膜2と、粘着剤層3、5で挟み込まれた位相差素子4とが積層されている合わせガラス用積層体7であって、前記合わせガラス用中間膜2は、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含有し、前記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル化合物等の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物とを含有し、前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物等の含有量の合計が0.8重量部以上、かつ、前記ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上であり、前記粘着剤層3、5は、ガラス転移温度が−20℃以下の粘着剤を含有する合わせガラス用積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)として用いられ、光に曝されても劣化せず、耐衝撃性に優れる合わせガラスを作製することができる合わせガラス用積層体に関する。また、本発明は、該合わせガラス用積層体に用いられる合わせガラス用中間膜に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機等の前面には、いわゆるフロントガラスとして、通常、2枚の対向する板ガラスと、その間に挟まれた合わせガラス用中間膜で構成された合わせガラスが用いられている。
近年、安全性を向上させるために、例えば、自動車用のフロントガラスについて、このフロントガラスと同じ視野内に、自動車走行データである速度情報等の計器表示をヘッドアップディスプレイ(HUD)として表示させようとする要望が高まっている。
例えば、HUD表示部がフロントガラス表面にはなく、コントロールユニットから送信される速度情報等をインストルメントパネル部の表示ユニットからフロントガラスに反射させることにより運転者にフロントガラスと同じ位置、すなわち、同一視野内で視認させる形態が提案されている。このようなヘッドアップディスプレイは、フロントガラスを構成する合わせガラスが2枚の平行なガラスから構成されているため、運転者の視野に写る計器表示が二重に見えるという欠点があった。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1には、位相差素子を用いた合わせガラスが開示されている。この合わせガラスは、位相差素子が、車外側ガラスと合わせガラス用中間膜との間に設けられており、位相差素子と車外側ガラスとが紫外線吸収剤を含有する粘着剤により接着されている。しかし、紫外線吸収能が充分ではなく、光に曝されるとともに位相差素子が劣化してしまうという問題や、合わせガラスの耐衝撃性が充分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−259280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)として用いられ、光に曝されても劣化せず、耐衝撃性に優れる合わせガラスを作製することができる合わせガラス用積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、該合わせガラス用積層体に用いられる合わせガラス用中間膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、合わせガラス用中間膜と、粘着剤層で挟み込まれた位相差素子とが積層されている合わせガラス用積層体であって、前記合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含有し、前記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物とを含有し、前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上、かつ、前記ベンゾトリアゾール化合物及びベンゾフェノン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上であり、前記粘着剤層は、ガラス転移温度が−20℃以下の粘着剤を含有する合わせガラス用積層体である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、合わせガラス用中間膜と、粘着剤層で挟み込まれた位相差素子とが積層されている合わせガラス用積層体において、合わせガラス用中間膜中に特定の紫外線吸収剤を一定量含有させ、かつ、粘着剤層を特定のガラス転移温度の粘着剤で構成することにより、該合わせガラス用積層体を用いてなる合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)として用いられ、光に曝されても劣化せず、耐衝撃性に優れた合わせガラスとなるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の合わせガラス用積層体は、合わせガラス用中間膜と、粘着剤層で挟み込まれた位相差素子とが積層されている。なお、上記合わせガラス用中間膜の大きさと上記位相差素子の大きさとは同一であってもよく、異なっていてもよいが、上記合わせガラス用中間膜が上記位相差素子より大きいことが好ましい。
【0009】
上記合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と、紫外線吸収剤とを含有する。これにより、本発明の合わせガラス用積層体を用いてなる合わせガラスが光に曝されても位相差素子の劣化を防止できる。
【0010】
上記合わせガラス用中間膜は、上記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物との混合物を含有する。このような紫外線吸収剤を用いることにより、特に位相差素子の劣化を防止できる。
【0011】
上記マロン酸エステル化合物は、芳香環を有することが好ましい。芳香環を有するマロン酸エステル化合物は、例えば、下記式(1−1)で表されるホスタビンPR−25(クラリアント社製)や、下記式(1−2)で表されるホスタビンB−CAP(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
上記シュウ酸アニリド化合物は、芳香環を有することが好ましい。芳香環を有するシュウ酸アニリド化合物は、例えば、下記式(2)で表されるサンデュボアVSU(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0014】
【化2】

【0015】
上記トリアジン化合物は、例えば、下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
式(3)中、R11は、炭素数1〜20の有機基を表し、R12は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、R13は、水素原子又は水酸基を表す。
上記トリアジン化合物の市販品は、例えば、Tinuvin400(チバガイギー社製、R11が−CHCH(OH)CH−O−C1225又は−CHCH(OH)CH−O−C1327、R12がCH−、R13がOH−である)、Tinuvin405(チバガイギー社製、R11が−CHCH(OH)CH−O−CHCH(C)C、R12がCH−、R13がOH−である)、Tinuvin460(チバガイギー社製、R11がC−、R12がCO−、R13がOH−である)、Tinuvin1577(チバガイギー社製、R11がC13−、R12がH−、R13がOH−である)、LA−46(アデカ社製、R11がCHCHCH−O−C(=O)−CHCHCHCH−、R12がH−、R13がOH−である)等が挙げられる。
式(3)中、R11は、炭素数3〜16の有機基を表すことが好ましい。上記有機基はアルキル基であってもよく、有機基中にエーテル結合と水酸基を有する有機基又はエステル結合を有する有機基であってもよい。
式(3)中、R12は、水素原子、炭素数2〜5のアルキル基又は炭素数2〜5のアルコキシ基であることが好ましい。式(3)中、R13は、水酸基であることが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
上記ベンゾトリアゾール化合物は、例えば、下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
式(4)中、R14は、水素原子又はハロゲン原子を表し、R15は、炭素数3〜10のアルキル基を表し、R16は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
上記ベンゾトリアゾール化合物の市販品は、例えば、Tinuvin328(チバガイギー社製、R14がH−であり、R15がCHCHC(CH−であり、R16がCHCHC(CH−である)、Tinuvin326(チバガイギー社製、R14がCl−であり、R15がCHC(CH−であり、R16がCH−である)、Tinuvin234(チバガイギー社製、R14がH−であり、R15が1−メチル−1−フェニルエチル基であり、R16が1−メチル−1−フェニルエチル基である)等が挙げられる。
式(4)中、R14は、水素原子であることが好ましい。式(4)中、R15は、炭素数3〜10の分岐構造を有するアルキル基であることが好ましい。式(4)中、R16は、炭素数3〜10の分岐構造を有するアルキル基であることが好ましい。
【0018】
【化4】

【0019】
上記ベンゾフェノン化合物は、例えば、下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
式(5)中、R17は、水素、水酸基又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R18は水素、水酸基又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R17、R18は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
【化5】

【0021】
本発明の位相差素子の劣化を防止できるという優れた効果は、上記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物とのいずれもを一定量以上含有するときに、はじめて発揮される。
上記合わせガラス用中間膜における上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物の含有量の合計の下限は0.8重量部である。上記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.8重量部未満であると、光に曝されることにより位相差素子が劣化する。
上記合わせガラス用中間膜における上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記ベンゾトリアゾール化合物及びベンゾフェノン化合物の含有量の下限は0.8重量部である。前記ベンゾトリアゾール化合物及びベンゾフェノン化合物の含有量が0.8重量部未満であると、光に曝されることにより位相差素子が劣化する。
【0022】
特に、上記合わせガラス用中間膜は、上記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物とを含有し、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.8重量部以上、かつ、上記ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物の含有量が0.8重量部以上であることが好ましい。
【0023】
上記合わせガラス用中間膜において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が0.8重量部以上であることが好ましい。
また、上記合わせガラス用中間膜において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物の含有量が0.8重量部以上であることが好ましい。
【0024】
上記紫外線吸収剤としてトリアジン化合物とベンゾトリアゾール化合物とを含有する場合、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記トリアジン化合物の含有量の好ましい上限は2.0重量部、上記ベンゾトリアゾール化合物の含有量の好ましい上限は1.4重量部である。上記トリアジン化合物の含有量が2.0重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなることがあり、上記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が1.4重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜からベンゾトリアゾール化合物が析出することがある。
光に曝されることにより位相差素子が劣化することを防止する効果に優れることから、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記トリアジン化合物及びベンゾトリアゾール化合物の含有量の合計の好ましい下限は1.7重量部、好ましい上限は3.4重量部である。
【0025】
上記紫外線吸収剤としてシュウ酸アニリド化合物とベンゾトリアゾール化合物とを含有する場合、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記シュウ酸アニリド化合物の含有量の好ましい上限は1.4重量部、上記ベンゾトリアゾール化合物の含有量の好ましい上限は1.4重量部である。上記シュウ酸アニリド化合物の含有量が1.4重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなることがあり、上記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が1.4重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜からベンゾトリアゾール化合物が析出することがある。
光に曝されることにより位相差素子が劣化することを防止する効果に優れることから、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記シュウ酸アニリド化合物及びベンゾトリアゾール化合物の含有量の合計の好ましい下限は1.7重量部、好ましい上限は2.8重量部である。
【0026】
上記紫外線吸収剤としてマロン酸エステル化合物とベンゾトリアゾール化合物とを含有する場合、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記マロン酸エステル化合物の含有量の好ましい上限は1.2重量部、上記ベンゾトリアゾール化合物の含有量の好ましい上限は1.4重量部である。上記マロン酸エステル化合物の含有量が1.2重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなることがあり、上記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が1.4重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜からベンゾトリアゾール化合物が析出することがある。
光に曝されることにより位相差素子が劣化することを防止する効果に優れることから、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記マロン酸エステル化合物及びベンゾトリアゾール化合物の含有量の合計の好ましい下限は1.7重量部、好ましい上限は2.6重量部である。
【0027】
上記紫外線吸収剤としてトリアジン化合物とベンゾフェノン化合物とを含有する場合、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記トリアジン化合物の含有量の好ましい上限は2.0重量部、上記ベンゾフェノン化合物の含有量の好ましい上限は1.6重量部である。上記トリアジン化合物の含有量が2.0重量部を超えるか、又は、上記ベンゾフェノン化合物の含有量が1.6重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなる。
【0028】
上記紫外線吸収剤としてシュウ酸アニリド化合物とベンゾフェノン化合物とを含有する場合、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記シュウ酸アニリド化合物の含有量の好ましい上限は1.4重量部、上記ベンゾフェノン化合物の含有量の好ましい上限は1.6重量部である。上記シュウ酸アニリド化合物の含有量が1.4重量部を超えるか、又は、上記ベンゾフェノン化合物の含有量が1.6重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなる。
【0029】
上記紫外線吸収剤としてマロン酸エステル化合物とベンゾフェノン化合物とを含有する場合、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記マロン酸エステル化合物の含有量の好ましい上限は1.2重量部、上記ベンゾフェノン化合物の含有量の好ましい上限は1.6重量部である。上記マロン酸エステル化合物の含有量が1.2重量部を超えるか、又は、上記ベンゾフェノン化合物の含有量が1.6重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなる。
【0030】
上記紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール化合物を含有することが好ましく、例えば、トリアジン化合物とベンゾトリアゾール化合物との併用、シュウ酸アニリド化合物とベンゾトリアゾール化合物との併用、マロン酸エステル化合物とベンゾトリアゾール化合物との併用、トリアジン化合物とマロン酸エステル化合物とベンゾトリアゾール化合物との併用、トリアジン化合物とシュウ酸アニリド化合物とベンゾトリアゾール化合物との併用、マロン酸エステル化合物とシュウ酸アニリド化合物とベンゾトリアゾール化合物との併用が挙げられる。
【0031】
また、上記合わせガラス用中間膜は、上記紫外線吸収剤とともにヒンダードアミン化合物を併用することが好ましい。ヒンダードアミン化合物を併用することにより、光に曝されることによる位相差素子の劣化をより防止することができる。
【0032】
上記ヒンダードアミン化合物は特に限定されず、例えばLA−63P(アデカ社製、高分子量HALS)、Tinuvin144(チバガイギー社製、低分子量HALS)等が挙げられる。
【0033】
上記合わせガラス用中間膜における上記ヒンダードアミン化合物の含有量は特に限定されないが、後述する熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましい下限は0.03重量部、好ましい上限は0.4重量部である。上記ヒンダードアミン化合物の含有量が0.03重量部未満であると、ヒンダードアミン化合物を含有させることによる効果が得られないことがある。上記ヒンダードアミン化合物の含有量が0.4重量部を超えると、合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなることがある。上記ヒンダードアミン化合物の含有量のより好ましい下限は0.04重量部、より好ましい上限は0.2重量部であり、更に好ましい下限は0.05重量部、更に好ましい上限は0.15重量部である。
【0034】
上記合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含有する。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されないが、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、硫黄元素を含有するポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。なかでも、可塑剤と併用するとガラスに対して優れた接着性を発揮する合わせガラス用中間膜が得られることから、ポリビニルアセタール樹脂が好適に用いられる。
【0035】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は55モル%、より好ましい上限は80モル%であり、更に好ましい下限は60モル%、更に好ましい上限は75モル%である。
また、上記ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は55モル%、より好ましい上限は80モル%であり、更に好ましい下限は60モル%、更に好ましい上限は75モル%である。
なお、上記アセタール化度及びブチラール化度は、赤外吸収スペクトル(IR)法により、測定することができる。例えば、FT−IR(堀場製作所社製、FREEEXACT−II、FT−720)を用いて測定することができる。
【0036】
上記ポリビニルアセタール樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、水酸基量の好ましい下限は15モル%、好ましい上限は35モル%である。
水酸基量が15モル%未満であると、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下したり、合わせガラスの耐貫通性が低下したりすることがある。水酸基量が35モル%を超えると、合わせガラス用中間膜が硬くなることがある。
【0037】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。上記重合度が200未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。上記重合度が4000を超えると、合わせガラス用中間膜の成形が困難となることがある。上記重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は3000であり、更に好ましい下限は1000、更に好ましい上限は2500である。
【0038】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、上記アルデヒドは、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。
これらのアルデヒドは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記合わせガラス用中間膜は、上記構成のほか、可塑剤を含有することが好ましい。特に、上記合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有することが好ましい。
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤や、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられ、上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキシル酸エステル等のトリエチレングリコールジアルキル酸エステル等が好適である。
【0040】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジヘキシルアジペート、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0041】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコール−ジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。
【0042】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0043】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種は、接着力調整剤として炭素数5又は6のカルボン酸の金属塩を含有させた場合に、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着力の経時変化を防止することができる。
更に、上記可塑剤は、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)であることが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)であることがより好ましい。
【0044】
上記合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましい下限が30重量部、好ましい上限が70重量部である。上記可塑剤の含有量が30重量部未満であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が高くなり、合わせガラス製造時の脱気性が低下することがある。上記可塑剤の含有量が70重量部を超えると、合わせガラス用中間膜から可塑剤がブリードアウトを起こすことがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は35重量部、より好ましい上限は60重量部であり、更に好ましい下限は38重量部、更に好ましい上限は50重量部である。
【0045】
上記合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0046】
上記合わせガラス用中間膜の厚さは特に限定されないが、好ましい下限が0.1mm、好ましい上限が3mmである。合わせガラス用中間膜の厚さが0.1mm未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。合わせガラス用中間膜の厚さが3mmを超えると、合わせガラス用中間膜の透明性が低下し、ヘイズ値が高くなることがある。合わせガラス用中間膜の厚さのより好ましい下限は0.25mm、より好ましい上限は1.5mmであり、更に好ましい下限は0.3mm、更に好ましい上限は1.2mmであり、特に好ましい下限は0.5mm、特に好ましい上限は1.0mmである。
【0047】
上記合わせガラス用中間膜は、厚さを760μmとし、厚さ2.5mmのクリアガラス2枚の間に挟持して、JIS R 3106に準拠した方法で測定した可視光線透過率Tvが60%以上であることが好ましい。可視光線透過率Tvが60%未満であると、上記合わせガラス用中間膜を用いて得られた合わせガラスの透明性が低下し、ヘイズ値が高くなることがある。上記可視光線透過率Tvは70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。
なお、上記可視光線透過率Tvを測定する装置は特に限定されず、例えば、分光光度計(日立製作所社製「U−4000」)等が挙げられる。
【0048】
上記合わせガラス用中間膜を製造する方法は特に限定されず、例えば、紫外線吸収剤と、可塑剤と、必要に応じて配合する添加剤とを、上記熱可塑性樹脂に添加して混練し、合わせガラス用中間膜を成形する方法等が挙げられる。
上記混練の方法は特に限定されず、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー、カレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。
また、上記成形する方法は特に限定されず、例えば、押し出し法、カレンダー法、プレス法等が挙げられる。
【0049】
本発明の合わせガラス用積層体において、上記位相差素子は、粘着剤層で挟み込まれている。上記位相差素子を粘着剤層で挟み込むことにより、上記位相差素子が、合わせガラス用中間膜と、ガラスとに密着するため、合わせガラスの耐衝撃性が向上する。なかでも、粘着剤層で挟み込まれた位相差素子を、合わせガラス用中間膜と、車内側ガラスとに密着させることにより、合わせガラスの耐衝撃性が更に向上する。なお、粘着剤層で挟み込まれた位相差素子とは、粘着剤層、位相差素子、及び、粘着剤層が順次積層されていることを意味する。
【0050】
上記位相差素子は特に限定されず、液晶性化合物を含有する位相差素子であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明プラスチックフィルムの透明基板上に液晶性化合物を塗布し、せん断力をかけた後、熱処理し、冷却して液晶配向を固定化した位相差素子が挙げられる。
なかでも、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物及び下記式(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と液晶性化合物とを含有する位相差素子が好適である。このような位相差素子は、耐熱性に優れ、高温雰囲気下において位相差値の変化が少なく、安定した光学性能を維持することができる。
【0051】
【化6】

【0052】
式(6)中、nは3〜10の整数を表し、Rは−CH−CH−基、−CH−CH(CH)−基又は−CH−CH−CH−基を表す。
式(7)中、Rは−(CH−基又はフェニレン基を表し、pは4〜8の整数を表す。
式(8)中、Rは置換フェニレン基を表す。
式(6)〜式(8)中R1−1、R1−2、R1−3は、炭素数5以上の分岐構造を有するアルキル基を表す。R1−1、R1−2、R1−3は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
上記式(6)〜式(8)中、R1−1、R1−2、R1−3は、炭素数5以上の分岐構造を有するアルキル基を表す。R1−1、R1−2、R1−3が分岐構造を有するアルキル基であるときに、高温雰囲気下における位相差値の変化が特に小さくなる。上記炭素数の下限は6、上限は18であることが好ましい。なかでも、R1−1、R1−2、R1−3はCH−(CH−CH(C)−基であることが好ましく、2−エチルヘキシル基又は2−エチルブチル基であることがより好ましい。ここでmは1〜6の範囲内の整数を表す。
上記式(7)中、Rがフェニレン基である場合、o位、m位、p位のいずれに置換基を有してもよいが、o位に置換基を有することが好ましい。
上記式(8)中、Rが置換フェニレン基である場合、o位、m位、p位のいずれに置換基を有してもよいが、o位及びp位に置換基を有することが好ましい。
【0054】
式(6)中、Rは−CH−CH−基、−CH−CH(CH)−基又は−CH−CH−CH−基を表す。なかでも、−CH−CH−基が好適である。
【0055】
上記式(6)で表される化合物は、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ペンタエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、オクタエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ノナエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、デカエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0056】
上記式(7)で表される化合物は、例えば、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−エチルブチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ビス(2−エチルブチル)、セバシン酸−ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸−ジ−2−エチルブチル、フタル酸−ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸−ジ−2−エチルブチル等が挙げられる。
【0057】
上記式(8)で表される化合物は、例えば、トリメリット酸−トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸−トリ−2−エチルブチル等が挙げられる。
【0058】
上記式(6)で表される化合物、上記式(7)で表される化合物、上記式(8)で表される化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、上記式(6)で表される化合物は、上記液晶性化合物との相溶性に優れ、安定した位相差素子を得ることができるため好ましい。上記式(6)で表される化合物のなかでも、上記液晶性化合物との相溶性に優れ、高温雰囲気下における位相差値の変化の抑制効果に特に優れることから、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)がより好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)が更に好ましい。
【0059】
上記式(6)で表される化合物、上記式(7)で表される化合物及び上記式(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量は特に限定されないが、上記液晶性化合物100重量部に対して好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が300重量部である。上記化合物の含有量が0.1重量部未満であると、高温雰囲気下での位相差値の変化の抑制効果が得られないことがある。上記化合物の含有量が300重量部を超えても本発明の高温雰囲気下での位相差値の変化の抑制効果は変わらない。上記化合物の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は50重量部であり、更に好ましい下限は0.8重量部、更に好ましい上限は30重量部、特に好ましい下限は1重量部、特に好ましい上限は15重量部である。
【0060】
上記液晶性化合物は、特定の方向へ配向(例えば、水平配向、垂直配向、スプレイ配向、ツイスト配向、チルト配向等)する際、液晶性を示す化合物であれば特に限定されない。上記液晶性化合物として、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルイミド等の主鎖型液晶ポリマーや、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロート、ポリエーテル等の側鎖型液晶ポリマーや、重合性液晶等が挙げられる。重合性液晶とは、分子内に重合性基を有する液晶性化合物である。なかでも、重合により配向状態を固定化できるため、上記液晶性化合物は重合性液晶であることが好ましい。
【0061】
上記重合性基は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、カルコニル基、シンナモイル基、エポキシ基等の反応性基が挙げられる。重合性液晶は通常、重合する前の状態で液晶性を示しており、特定の方向へ配向した後に重合させて配向状態を固定化する。固定化後は必ずしも液晶性を示す必要はなく、このような重合による配向状態を固定化した化合物も本発明における液晶性化合物に含まれる。また、上記重合性液晶を単独あるいは複数を用いて重合することにより得られる化合物、又は、上記重合性液晶と他の重合性化合物とを共重合することにより得られる化合物が、配向する際に液晶性を示すのであれば、重合前の重合性液晶や重合後の化合物が液晶性を示さなくても、いずれも本発明における液晶性化合物に含まれる。
【0062】
また、上記重合性液晶は、液晶性を示すために、分子内にメソゲン基を有することが好ましい。
ここで、上記メソゲン基として、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、(ポリ)安息香酸フェニルエステル基、(ポリ)エーテル基、ベンジリデンアニリン基、アセナフトキノキサリン基等のロッド状の置換基、板状の置換基、又は、トリフェニレン基、フタロシアニン基、アザクラウン基等の円盤状の置換基等が挙げられる。すなわち、上記メソゲン基は液晶相挙動を誘導する能力を有する。なお、ロッド状又は板状の置換基を有する液晶性化合物は、カラミティック液晶として知られている。また、円盤状の置換基を有する液晶性化合物は、ディスコティック液晶として知られている。
上記メソゲン基を有する重合性液晶は、必ずしもそれ自身が液晶相を示さなくても他の化合物との混合、他のメソゲン基を有する化合物との混合、他の液晶性化合物との混合、又は、これらの混合物のポリマー化によって液晶相を示す重合性液晶であってもよい。
上記重合性液晶は特に限定されず、例えば、特開平8−50206号公報、特開2003−315556号公報、特開2004−29824号公報に記載されている重合性液晶や、BASF社製「PALIOCOLORシリーズ」、Merck社製「RMMシリーズ」等が挙げられる。なかでも下記式(9)で表される重合性液晶は複数の重合性基を有することにより、耐熱性に優れるためより好ましい。
【0063】
【化7】

【0064】
式(9)中、q、rは1〜10の整数を表し、Xは−COO−又は−O−を表し、Yは−OC(O)O−又は−O−を表し、Zは−COO又は−OCO−を表し、Rはフェニレン基を表し、Rは置換フェニレン基、置換ビフェニレン基又はフルオレニル基を表し、Rは−H、−(CH)w−CH又は−COO−(CH)w−CHを表し、Wは0〜11の整数を表す。
【0065】
上記式(9)で表される重合性液晶は、より具体的には下記式(9−1)で表される重合性液晶や、下記式(9−2)で表される重合性液晶が更に好ましい。これらの重合性液晶は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
【化8】

【0067】
式(9−1)中、s、tは2〜10の整数を表し、Rは−(CH)w−CHを表す。
式(9−2)中、u、vは2〜10の整数を表し、Rは−COO−(CH)w−CH又は−(CH)w−CHを表す。
Wは0〜11の整数を表す。
【0068】
上記重合性液晶として、上記式(9)で表される重合性液晶を用いる場合には、更に下記式(10)〜(12)で表される重合性液晶を相転移温度や位相差素子の機械的強度を調整するために併用してもよい。
【0069】
【化9】

【0070】
式(10)〜(12)中、wは0〜11の整数を表し、R10は−O−(CH−CH、−(CH−CH又は−CNを表し、yは0〜12の整数を表す。
【0071】
上記液晶性化合物は、更に上記重合性液晶と液晶性を有しない重合性化合物とを重合成分として含んでもよい。すなわち、上記重合性液晶と上記重合性化合物とを含有する液晶性組成物を重合させることにより、上記液晶性化合物を合成してもよい。なお、上記液晶性組成物は、上記式(6)で表される化合物、上記式(7)で表される化合物、又は、上記式(8)で表される化合物を含有してもよい。
上記液晶性を有しない重合性化合物は特に限定されず、例えば、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。
【0072】
上記紫外線硬化型樹脂は特に限定されず、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサメチレン−ジ−イソシアネートとの反応生成物、イソシアヌル環を有するトリイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロン−ジ−イソシアネートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリグリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、プロピレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール−ジ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール−ジ−(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6−ヘキサンジオール−ジ−(メタ)アクリレート、グリセロール−ジ−(メタ)アクリレート、エチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ジエチレングリコール−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタアクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールA−ジ−グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの液晶性を有しない重合性化合物は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記液晶性組成物中の上記液晶性を有しない重合性化合物の含有量は特に限定されないが、上記液晶性組成物の液晶性を失わない程度に添加しなければならず、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は20重量%であり、より好ましい下限は1.0重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0074】
上記液晶性化合物が紫外線硬化型の重合性液晶である場合、あるいは、上記液晶性を有しない重合性化合物が紫外線硬化型である場合、これらの成分を紫外線により硬化させるために、上記液晶性組成物には光重合開始剤が添加されることが好ましい。
【0075】
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュアー907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュアー369」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュアー184」)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュアー2959」)、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュアー953」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュアー1116」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュアー1173」)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(チバスペシャリティーケミカルズ社製「イルガキュアー651」)等のベンゾイン化合物、チオキサントン、2−クロルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーCTX」)、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーRTX」)、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロオチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーCTX」)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーDETX」)、2,4−ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーDITX」)等のチオキサントン化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記液晶性組成物中の上記光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記紫外線硬化型の重合性液晶と上記紫外線硬化型の液晶性を有しない重合性化合物の合計100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0077】
上記光重合開始剤として、上記チオキサントン化合物を用いる場合には、光重合反応を促進させるために、反応助剤を併用することが好ましい。
上記反応助剤は特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン化合物が挙げられる。
【0078】
上記液晶性組成物中の上記反応助剤の含有量は特に限定されないが、上記液晶性組成物の液晶性に影響を与えない範囲で使用することが好ましく、上記紫外線硬化型の重合性液晶と上記紫外線硬化型の液晶性を有しない重合性化合物の合計100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は8重量部である。
また、上記反応助剤の含有量は、上記光重合開始剤の含有量に対して、0.5〜2倍量であることが好ましい。
【0079】
上記位相差素子は、例えば、上記式(6)で表される化合物、上記式(7)で表される化合物及び上記式(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と液晶性化合物とを含有する液晶性組成物を調製する工程と、配向処理により上記液晶性組成物を一定方向に配向させる工程と、該配向を固定化する工程とにより製造することができる。
より具体的には、例えば、上記液晶性組成物を所定の濃度になるように溶剤に溶解させ、この溶液をラビング処理したフィルム上に塗布する。次いで、溶剤を加熱等により除去するが、この加熱の過程で、又は、その後液晶相を示す温度で放置することにより、上記液晶性化合物が一定方向に配向する。配向を固定化するために、このまま放冷しても、配向状態を維持したまま、紫外線を照射して重合等により硬化させてもよい。また上記位相差素子は、上記重合性液晶を重合させることにより得られたフィルムを、上記式(6)で表される化合物、上記式(7)で表される化合物及び上記式(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物により膨潤させて製造してもよい。
【0080】
上記配向処理する方法として、例えば、ポリエステルフィルムやセルロースフィルム等のプラスチックフィルムをラビング処理する方法や、ガラス板やプラスチックフィルム上に配向膜を形成し、上記配向膜をラビング処理又は光配向処理する方法等が挙げられる。
上記ラビング処理は、鋼やアルミニウム等の金属ロールに、ナイロン、レーヨン、コットン等のベルベット状のラビング布を、両面テープ等を用いて貼り合せて作製したラビングロールを用い、これを高速回転させ、ガラス板やプラスチックフィルムを接触させながら移動させることにより達成される。
上記ラビング処理の条件は、用いる液晶性化合物の配向のしやすさ、用いるラビング布の種類、ラビングロール径、ラビングロールの回転数、基板の進行方向に対する回転方向、基板とラビングロールの接触長、基板へのラビングロールの押し込みの強さ、基板の搬送速度、基板がプラスチックフィルムである場合には、該フィルムとラビングロール接触部分のラップ角、該プラスチックフィルムの搬送張力等の諸条件によって適宜調整すればよい。
【0081】
上記配向を固定化する方法として、例えば、紫外線硬化型の(液晶性)化合物を光重合開始剤の存在下、紫外線照射して重合反応によって硬化させて固定化する方法や、水酸基やカルボキシル基やアミノ基等の官能基を有する(液晶性)化合物を含む液晶性組成物を、該官能基と架橋反応することが可能な多価イソシアネートや多価エポキシ化合物といった架橋剤の存在下で、加熱により架橋させて固定化する方法や、液晶相を示す温度が高温領域にあるような液晶性化合物を用い、高温雰囲気下で配向後に急冷することにより、配向状態を固定化する方法等が挙げられる。
【0082】
上記液晶性組成物を塗布する方法として、例えば、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、カレンダーコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、スロットダイコート法等が挙げられ、所望の厚さ、位相差値を得るために適宜選択される。
上記紫外線の照射量は、液晶性化合物や他の重合性化合物の種類や反応性、光重合開始剤の種類と添加量、膜厚によって異なるが、通常、100〜1000mJ/cm程度がよい。また、紫外線照射時の雰囲気は空気中、窒素等の不活性ガス中等、重合のしやすさに応じて適宜選択することができる。
【0083】
上記位相差素子は、耐熱性に優れ、高温雰囲気下において位相差値の変化が少なく、安定した光学性能を維持することができる。
上記位相差値は、位相差素子の面内の最大屈折率方向(遅相軸)をn、それと面内で直交する方向をn、厚さ方向の屈折率をn、厚さをdとするとき、正面方向の位相差値R、及び、厚さ方向の位相差値Rthは、それぞれ下記式(13)及び下記式(14)によって求めることができる。
=(n−n)・d (13)
th=[{(n+n)/2}−n]・d (14)
、n、nの値は用いる液晶性組成物の種類や配向の方法によって制御することができる。そのような方法として、例えば、配向処理される基板の表面張力、ラビング強度、配向膜の種類等を調整する方法が挙げられる。
【0084】
上記位相差素子を挟み込む粘着剤層は、ガラス転移温度が−20℃以下の粘着剤(以下、単に粘着剤ともいう)を含有する。粘着剤のガラス転移温度が−20℃を超えると、充分な耐衝撃性を有する合わせガラス用積層体を得ることが難しい。上記位相差素子を挟み込む粘着剤層は、ガラス転移温度が−20〜−70℃の粘着剤を含有することが好ましい。なお、後述するように共重合により粘着剤の主成分となるポリマーを得る際、モノマー成分の組成を調節することによって所望のガラス転移温度を有する粘着剤を得ることができる。
上記ガラス転移温度が−20℃以下の粘着剤は特に限定されず、例えば、アクリル粘着剤、シリコーン粘着剤、ウレタン粘着剤、ポリエーテル粘着剤、ポリエステル粘着剤、ゴム粘着剤等の感圧接着剤が挙げられる。なかでも、耐衝撃性に優れることから、アクリル粘着剤が特に好ましい。
なお、ガラス転移温度は、粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、ARES)を用いて測定することができる。ガラス転移温度は、例えば、測定温度範囲が−100〜180℃、温度掃引速度が5℃/min、パラレルプレートが25mmφ、歪み量が10%、角速度が1rad/secの条件にて測定する。
【0085】
上記アクリル粘着剤として、複数の(メタ)アクリル酸エステルをモノマー成分の主成分として共重合させて得られるポリマーを含有するアクリル粘着剤が挙げられる。上記ポリマーのモノマー成分として、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート等のエステル部分の炭素数が1〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート、2−メチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシ−シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル以外のポリマーのモノマー成分として、ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマー、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の共重合できるモノマーを用いることができる。
【0086】
上記モノマー成分を用いて共重合させることにより、アクリル粘着剤の主成分となるポリマーを得ることができる。なかでも、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート等のエステル部分の炭素数が1〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの内の少なくとも1種のモノマーと、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート、2−メチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸の内の少なくとも1種のモノマーとを用いて共重合させたポリマーを用いることが好ましい。
【0087】
上記アクリル粘着剤が、モノマー成分として(メタ)アクリル酸を共重合させて得られるポリマーを含有する場合、(メタ)アクリル酸の含有量は、全モノマー成分100重量部に対して0.1重量部以上であることが好ましく、1.0重量部以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸の含有量が上記範囲内であると、得られる合わせガラス用積層体を加熱した場合の位相差素子の劣化を抑制することができる。
【0088】
特に、上記アクリル粘着剤は、次の5種(粘着剤1〜粘着剤5)が好適である。
粘着剤1は、モノマー成分として、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸を共重合して得られる。
粘着剤2は、モノマー成分として、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレートを共重合して得られる。
粘着剤3は、モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートを共重合して得られる。
粘着剤4は、モノマー成分として、ブチルアクリレート、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合して得られる。
粘着剤5は、モノマー成分として、ブチルアクリレート、アクリル酸を共重合して得られる。
【0089】
特に本発明の合わせガラス用積層体においては、合わせガラス用中間膜と接する粘着剤層を構成する粘着剤を粘着剤A、ガラスと接する粘着剤層を構成する粘着剤を粘着剤Bとするとき、(粘着剤A、粘着剤B)=(粘着剤1、粘着剤2)、(粘着剤1、粘着剤4)、(粘着剤2、粘着剤2)、(粘着剤1、粘着剤3)、(粘着剤4、粘着剤4)、(粘着剤5、粘着剤5)であることが好ましく、特に(粘着剤A、粘着剤B)=(粘着剤1、粘着剤2)、(粘着剤1、粘着剤4)、(粘着剤5、粘着剤5)である場合には、合わせガラス用積層体が高温雰囲気下においても位相差値の変化が少なく、安定した光学性能を維持することができるだけでなく、合わせガラス用積層体を用いた合わせガラスの耐衝撃性も優れる。特に、合わせガラス用積層体を用いた合わせガラスが耐衝撃性に優れることから、上記粘着剤Aは、(メタ)アクリル酸を用いて共重合させて得られるポリマーを含有することが好ましい。
【0090】
上記粘着剤は、粘着剤の耐久性や、位相差素子又はガラスに対する接着性を調整するために、架橋剤を含有してもよい。上記架橋剤は特に限定されず、例えば、上記粘着剤を構成するモノマー成分として、水酸基やカルボキシル基を含有するモノマーを用いた場合に、水酸基やカルボキシル基と反応することにより架橋する架橋剤が挙げられる。上記架橋剤として、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、金属塩等が挙げられる。
【0091】
上記イソシアネート化合物は特に限定されず、例えば、トルエンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのケトオキシムブロック物、フェノールブロック物等が挙げられる。また、上記イソシアネート化合物として、イソシアヌレート環、ビューレット体、アロファネート体等を形成させたポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0092】
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA、エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0093】
上記金属キレート化合物は特に限定されず、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、マグネシウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセト酢酸エステル配位化合物等が挙げられる。
【0094】
上記架橋剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよいが、高温環境下での変色を低減するために、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、これらのケトオキシムブロック物、フェノールブロック物、エポキシ化合物を用いることが好ましい。また、上記架橋剤の含有量は、上記モノマー成分100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜5重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0095】
なお、上記粘着剤層は、合わせガラス用中間膜側の粘着剤層(図1における粘着剤層3)と、車内側ガラス側の粘着剤層(図1における粘着剤層5)とで同じ粘着剤層を用いてもよいし、合わせガラス用中間膜と位相差素子との密着性、及び、位相差素子と車内側ガラスとの密着性を同程度に調整するために、異なる粘着剤層を用いてもよい。
【0096】
上述したような、本発明の合わせガラス用積層体に用いられる合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである。すなわち、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含有する合わせガラス用中間膜であって、前記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物とを含有し、前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上、かつ、前記ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上である合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである。
【0097】
本発明の合わせガラス用中間膜の用途は特に限定されないが、本発明の合わせガラス用中間膜とガラスとを用いることにより、合わせガラスを作製することができる。このような合わせガラスは、図1に示すように車外側ガラスと車内側ガラスとを有する。また、図1に示すように、位相差素子を粘着剤層で挟み込み、かつ、位相差素子を合わせガラス用中間膜に対して車内側ガラス側に配置することにより、得られる合わせガラスの耐衝撃性を向上させ、かつ、位相差素子の劣化を防止することができる。
上記車外側ガラス及び車内側ガラスは特に限定されず、従来公知の透明板ガラス等を用いることができる。
また、ガラスの代わりにポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の透明プラスチック板を用いてもよい。
上記合わせガラスを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0098】
本発明によれば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)として用いられ、光に曝されても劣化せず、耐衝撃性に優れる合わせガラスを作製することができる合わせガラス用積層体を提供することができる。また、本発明によれば、該合わせガラス用積層体に用いられる合わせガラス用中間膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の合わせガラス用積層体を用いて作製することのできる合わせガラスの構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。
【0101】
(実施例1)
(1)合わせガラス用中間膜の作製
可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部に、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール化合物(チバガイギー社製、Tinuvin326)0.8重量部、トリアジン化合物(チバガイギー社製、Tinuvin400)0.8重量部及びヒンダードアミン化合物(チバガイギー社製、Tinuvin144)0.1重量部を溶解させた溶液を、ポリビニルブチラール樹脂(水酸基量30.5モル%、アセチル基量0.9モル%、平均重合度1700)100重量部に添加し、ミキシングロールで均一に溶融混練した後、プレス成形機を用いて、150℃で30分間プレス成形し、厚み0.76mmの合わせガラス用中間膜を作製した。
【0102】
(2)位相差素子の作製
紫外線硬化型重合性液晶(BASF社製、PARIOCOLORLC242、上記式(9−1)においてsが4、tが4である重合性液晶)100重量部と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、ルシリンTPO)4重量部と、レベリング剤(ビックケミー社製、BYK361)0.1重量部とをシクロペンタノン243重量部に溶解させて固形分30重量%の溶液を調製した。次にトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を10重量部加えて均一になるまで攪拌し、液晶性組成物の溶液を得た。次にポリエステルフィルム(東洋紡社製、A4100)をラビングマシン(EHC社製、ラビングロール径45mm、ラビングロール回転数1500rpm、搬送速度1m/min)を用いてラビング処理した。ラビング処理面上にスピンコーターにて上記液晶性組成物の溶液を塗布し、80℃で1分間乾燥後、窒素置換した雰囲気下で高圧水銀灯(630mJ/cm)を照射して硬化させ、位相差素子を有するフィルムを得た。得られた位相差素子は厚さが4μmであり、ポリエステルフィルムを除去した位相差素子の位相差値を自動複屈折計(王子計測社製、KOBRA−21ADH)で測定した結果、540nmにおける位相差値が270nmであった。
【0103】
(3)合わせガラスの作製
2枚の離型フィルムに挟み込まれたアクリル粘着剤層Aの一方の離型フィルムを剥離して、得られた位相差素子(縦120mm×横120mm)を有するフィルムの位相差素子面に粘着剤層Aを貼り合わせた。次いで、位相差素子からポリエステルフィルムを剥離し、2枚の離型フィルムに挟み込まれたアクリル粘着剤層Bの一方の離型フィルムを剥離し、位相差素子に粘着剤層Bを貼り合わせ、離型フィルム/粘着剤層A/位相差素子/粘着剤層B/離型フィルムの順に積層された位相差素子積層体を作製した。
更に、得られた位相差素子積層体の粘着剤層A側の離型フィルムを剥離し、粘着剤層Aと得られた合わせガラス用中間膜とを、位相差素子の中心と合わせガラス用中間膜の中心とが一致するように貼り合わせることにより、合わせガラス用積層体を作製した。
【0104】
なお、粘着剤層Aはブチルアクリレートと、アクリル酸とを共重合させて得られたポリマーをイソシアネート架橋剤で架橋させた粘着剤5により形成された粘着剤層である。粘着剤5のガラス転移温度は−50℃であり、全モノマー成分100重量部に対するアクリル酸の含有量は10重量部であった。
粘着剤層Bはブチルアクリレートと、アクリル酸とを共重合させて得られたポリマーをイソシアネート架橋剤で架橋させた粘着剤5により形成された粘着剤層である。
なお、ガラス転移温度は、粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、ARES)を用いて測定した。ガラス転移温度は、測定温度範囲が−100〜180℃、温度掃引速度が5℃/min、パラレルプレートが25mmφ、歪み量が10%、角速度が1rad/secの条件にて測定した。
【0105】
得られた合わせガラス用積層体の粘着剤層B側の離型フィルムを剥離し、2枚の透明ガラス板(縦300mm×横300mm×厚さ2.5mm)の間に合わせガラス用積層体を挟み込ませた後、ゴムバッグに入れて減圧し、温度100℃で予備接着した。予備接着した合わせガラスを、オートクレーブを用いて、温度140℃、圧力1.3MPaの条件で、20分間加熱加圧し、本接着を行うことにより、図1に示される合わせガラスを作製した。
【0106】
(実施例2〜41、比較例1〜23)
可塑剤、紫外線吸収剤の種類及び配合量、ヒンダードアミン化合物の種類及び配合量、粘着剤層の種類を表1及び表2に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用積層体及び合わせガラスを作製した。
なお、本実施例及び比較例で用いた化合物について以下に示した。
【0107】
(可塑剤)
トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)
【0108】
(紫外線吸収剤)
ベンゾトリアゾール化合物(チバガイギー社製、Tinuvin326)
ベンゾトリアゾール化合物(チバガイギー社製、Tinuvin328)
ベンゾフェノン化合物(アデカ社製、ADEKA1413)
マロン酸エステル化合物(クラリアント社製、Hostavin PR−25)
シュウ酸アニリド化合物(クラリアント社製、Sanduor VSU)
トリアジン化合物(チバガイギー社製、Tinuvin400)
【0109】
(ヒンダードアミン化合物)
ヒンダードアミン化合物(アデカ社製、LA−63P)
ヒンダードアミン化合物(チバガイギー社製、Tinuvin144)
【0110】
(粘着剤層)
粘着剤1(ブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、メチルメタクリレートと、アクリル酸とを共重合させて得られたポリマーをイソシアネート架橋剤で架橋させた粘着剤、ガラス転移温度は−20℃)
粘着剤2(ブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、N,N−ジメチルアクリルアミドと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを共重合させて得られたポリマーをイソシアネート架橋剤で架橋させた粘着剤、ガラス転移温度は−30℃)
粘着剤3(2−エチルヘキシルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを共重合させて得られたポリマーをイソシアネート架橋剤で架橋させた粘着剤、ガラス転移温度は−70℃)
粘着剤4(ブチルアクリレートと、アクリル酸と、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとを共重合させて得られたポリマーをイソシアネート架橋剤で架橋させた粘着剤、ガラス転移温度は−45℃、全モノマー成分100重量部に対するアクリル酸の含有量は3重量部であった。)
粘着剤5(ブチルアクリレートと、アクリル酸とを共重合させて得られたポリマーをイソシアネート架橋剤で架橋させた粘着剤、ガラス転移温度は−50℃)
【0111】
(評価)
実施例及び比較例で得られた合わせガラスについて以下の評価を行った。結果を表1、表2及び表3に示した。
【0112】
(1)位相差変化測定
JIS R 3211及びJIS R 3212に準拠した方法により、得られた合わせガラスに紫外線を1000時間照射した後、自動複屈折計(王子計測社製、KOBRA−21ADH)を用いて540nmにおける位相差値を測定した。紫外線照射前後の位相差変化を下記式により算出した。
変化率(%)=[{(紫外線照射後の位相差値)−(初期位相差値)}/(初期位相差値)]×100
なお、粘着剤層Bと接触していないガラス板側から、紫外線を合わせガラスに照射した。
得られた位相差変化の変化率(%)が0%以上〜3%未満であった場合を「◎」、3%以上〜6%未満であった場合を「○」、6%以上〜8%未満であった場合を「△」、8%以上であった場合を「×」と評価した。
【0113】
(2)耐衝撃性評価
得られた合わせガラスについて、JIS R 3211及びJIS R 3212に準拠した方法により、耐衝撃性評価を行った。合格した合わせガラスを「○」、不合格の合わせガラスを「×」と評価した。
なお、粘着剤層Bと接触していないガラス板側に、剛球を落球させた。
【0114】
(3)ヘイズ値
得られた合わせガラスについて、積分式濁度計(東京電色社製)を用い、JIS K 7105に準拠してヘイズを測定した。
なお、ガラス板/合わせガラス用中間膜/粘着剤層A/位相差素子/粘着剤層B/ガラス板が積層されている部位のヘイズを測定した。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によれば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)として用いられ、光に曝されても劣化せず、耐衝撃性に優れる合わせガラスを作製することができる合わせガラス用積層体を提供することができる。また、本発明によれば、該合わせガラス用積層体に用いられる合わせガラス用中間膜を提供することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 車外側ガラス
2 合わせガラス用中間膜
3 粘着剤層
4 位相差素子
5 粘着剤層
6 車内側ガラス
7 合わせガラス用積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラス用中間膜と、粘着剤層で挟み込まれた位相差素子とが積層されている合わせガラス用積層体であって、
前記合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含有し、
前記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物とを含有し、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上、かつ、前記ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上であり、
前記粘着剤層は、ガラス転移温度が−20℃以下の粘着剤を含有する
ことを特徴とする合わせガラス用積層体。
【請求項2】
紫外線吸収剤としてシュウ酸アニリド化合物とベンゾトリアゾール化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記シュウ酸アニリド化合物の含有量が0.8〜1.4重量部、前記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が0.8〜1.4重量部であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用積層体。
【請求項3】
紫外線吸収剤としてマロン酸エステル化合物とベンゾトリアゾール化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物の含有量が0.8〜1.2重量部、前記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が0.8〜1.4重量部であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用積層体。
【請求項4】
紫外線吸収剤としてシュウ酸アニリド化合物とベンゾフェノン化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記シュウ酸アニリド化合物の含有量が0.8〜1.4重量部、前記ベンゾフェノン化合物の含有量が0.8〜1.6重量部であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用積層体。
【請求項5】
紫外線吸収剤としてマロン酸エステル化合物とベンゾフェノン化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物の含有量が0.8〜1.2重量部、前記ベンゾフェノン化合物の含有量が0.8〜1.6重量部であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用積層体。
【請求項6】
合わせガラス用中間膜は、更にヒンダードアミン化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用積層体。
【請求項7】
粘着剤層は、アクリル粘着剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用積層体。
【請求項8】
熱可塑性樹脂はポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用積層体。
【請求項9】
更に、合わせガラス用中間膜は可塑剤を含有することを特徴とする請求項8記載の合わせガラス用積層体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤を含有する合わせガラス用中間膜であって、
前記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物とを含有し、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物、シュウ酸アニリド化合物及びトリアジン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上、かつ、前記ベンゾトリアゾール化合物又はベンゾフェノン化合物の含有量の合計が0.8重量部以上である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
紫外線吸収剤としてシュウ酸アニリド化合物とベンゾトリアゾール化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記シュウ酸アニリド化合物の含有量が0.8〜1.4重量部、前記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が0.8〜1.4重量部であることを特徴とする請求項10記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
紫外線吸収剤としてマロン酸エステル化合物とベンゾトリアゾール化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物の含有量が0.8〜1.2重量部、前記ベンゾトリアゾール化合物の含有量が0.8〜1.4重量部であることを特徴とする請求項10記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
紫外線吸収剤としてシュウ酸アニリド化合物とベンゾフェノン化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記シュウ酸アニリド化合物の含有量が0.8〜1.4重量部、前記ベンゾフェノン化合物の含有量が0.8〜1.6重量部であることを特徴とする請求項10記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
紫外線吸収剤としてマロン酸エステル化合物とベンゾフェノン化合物とを含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対する前記マロン酸エステル化合物の含有量が0.8〜1.2重量部、前記ベンゾフェノン化合物の含有量が0.8〜1.6重量部であることを特徴とする請求項10記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
熱可塑性樹脂はポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする10、11、12、13又は14記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項16】
更に、可塑剤を含有することを特徴とする請求項15記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
請求項1記載の合わせガラス用積層体、又は、請求項10記載の合わせガラス用中間膜を用いてなることを特徴とする合わせガラス。

【図1】
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【公開番号】特開2010−265170(P2010−265170A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121787(P2010−121787)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【分割の表示】特願2009−554649(P2009−554649)の分割
【原出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(594190998)株式会社ポラテクノ (30)
【Fターム(参考)】