説明

合成ガスとナノカーボンの製造方法および製造システム

【課題】低級炭化水素を用いて、ナノカーボンの製造と同時に、所望のガス比の合成ガスを容易に製造する。
【解決手段】低級炭化水素供給路20が連通する空間に触媒が収容されて前記空間が低級炭化水素の直接分解がなされる反応空間である低級炭化水素分解反応装置10と、二酸化炭素供給路23、35が連通する空間にナノカーボンが収容されて前記空間が、二酸化炭素を一酸化炭素に還元する反応空間である二酸化炭素還元反応装置30と、低級炭化水素分解反応装置10および二酸化炭素還元反応装置30に接続され、低級炭化水素分解反応装置10で生成された水素と二酸化炭素還元反応装置30で生成された一酸化炭素とを混合する混合部50とを備えることで、ナノカーボンの製造と同時に、所望のガス比の合成ガスを容易に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタンなどの低級炭化水素と二酸化炭素から、ナノカーボンと各種化学製品あるいは燃料の製造原料となる合成ガスを製造する製造方法および製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の合成ガス製造方法としては特許文献1に記載される「合成ガスの製造方法」がある。この製造方法では、主にメタンリッチな炭化水素化合物を、(1)二酸化炭素と反応させるドライリフォーミング反応、(2)水蒸気と反応させるスチームリフォーミング反応、(3)酸素と反応させるオートサーマル反応の3つの反応を最適に組み合わせることで、反応に必要なエネルギーを最小限に抑えて合成ガス(一酸化炭素と水素との混合ガス)を製造する。
上記した(1)〜(3)の反応は具体的には下記に示す反応である。(1)、(2)は吸熱反応で、(3)は発熱反応である。
(1)CH+CO→2CO+H+284kJ/mol
(2)CH+HO→CO+3H+206kJ/mol
(3)CH+1/2O→CO+2H−35.6kJ/mol
【0003】
化学製品の原料としては、合成ガスの一酸化炭素と水素は1対2(モル比)の割合で存在することが好ましい。特許文献1では、合成ガス比が最適になるように、かつ、反応に必要なエネルギーが最小になるように上記した(1)〜(3)の反応を組合せ、かつ、エネルギーの足りない分については、太陽光熱などの自然エネルギーを利用して補うことで、最適化された製造方法を示している。
【0004】
また、特許文献2に記載の「メタンを原料とする水素、一酸化炭素の製造方法」では、200〜1000℃においてメタンを含む天然ガスを、まず希土類を含む金属酸化物に接触させることで格子酸素と反応させて金属酸化物を還元し、次に還元された反応媒体を水蒸気または二酸化炭素と反応させ水素または一酸化炭素を連続的に生成する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2における反応は(4)式となる。ここで、希土類酸化物をM(Mが希土類元素)とした。Xは化学量論係数である。
(4)X・CH+M→2X・H+X・CO+Mm−x
また、希土類としてセリウムを用いた場合は(5)式のような反応となる。
(5)X・CH+CeO→2X・H+X・CO+CeO2−x
(5)の反応では、メタン中の炭素が酸化セリウム中の酸素と結合し、COが発生すると共に、メタン中の残った水素が発生することで、合成ガスであるCOとHがある比率で生成する。
次に、酸素を還元された酸化セリウムをCOやHOと反応させると(6)、(7)式の様に初めの状態に再生する事ができ、同時にCOまたはHを製造することが可能となる。
(6)CeO2-x+X・CO→CeO+X・CO
(7)CeO2-x+X・HO→CeO+X・H
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−526759号公報
【特許文献2】特開平7−69603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の低級炭化水素分解反応は上記したようなプロセスであり、合成ガスである水素と一酸化炭素は同時に生成されるため、化学原料製造に最適なガス比(一酸化炭素と水素のモル比)にするためには、温度や圧力、空塔速度など反応条件の細かい設定による最適化が必要で、かつ水素や一酸化炭素の分離精製などが必要であり、操作が煩雑である。その上、副生物や未反応ガスである水や一酸化炭素、酸素などを除去する必要がある。さらに、二酸化炭素と水素の反応によって水を生成し水素が必要以上に使用されることで、システム効率が低下するなどの欠点がある。
【0008】
本発明は上記のような従来のものの課題を解決するためになされたもので、低級炭化水素を用いて、ナノカーボンの生成と同時に、所望のガス比の合成ガスを容易に得ることができる製造方法および製造システムを提供することを目的とする。また、水素が無駄に使用されて水が生成することを抑制した製造方法および製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法のうち、第1の本発明は、低級炭化水素を触媒を使用して直接分解し、水素とナノカーボンを生成する低級炭化水素分解工程と、前記低級炭化水素分解工程で生成された前記ナノカーボンの一部と二酸化炭素とを反応させて、一酸化炭素を製造する二酸化炭素還元工程と、前記低級炭化水素分解工程で生成された前記水素と前記二酸化炭素還元工程で生成された前記一酸化炭素とを所定の比率で混合して合成ガスを得る混合工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1の本発明において、前記混合工程で得られた合成ガスを反応させて合成物を得る合成工程をさらに有することを特徴とする。
【0011】
第3の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1または第2の本発明において、前記二酸化炭素還元工程は、前記低級炭化水素分解工程で使用された触媒の一部または全部を前記ナノカーボンと前記二酸化炭素との反応に供し、該反応に際し、前記触媒上から、前記低級炭化水素分解工程で生成されたナノカーボンの一部または全部を除去する触媒再生工程を含むことを特徴とする。
【0012】
第4の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第3の本発明において、前記触媒再生工程で再生された前記触媒を再度、前記低級炭化水素分解工程に供することを特徴とする。
【0013】
第5の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記低級炭化水素が、メタンまたはメタンを主成分とすることを特徴とする。
【0014】
第6の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記触媒は、ニッケル、鉄のうち1種類以上を、アルミナ、シリカ、マグネシア、カルシア、ハイドロタルサイト、炭素のうち1種類以上に担持したものであることを特徴とする。
【0015】
第7の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記二酸化炭素は、前記低級炭化水素分解工程における燃焼排ガス、前記二酸化炭素還元工程における燃焼排ガス、各種産業における排出ガス、または、バイオガス中のいずれか1以上から回収したものであることを特徴とする。
【0016】
第8の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記二酸化炭素還元工程において、低級炭化水素、水素のうち1種類以上を還元剤として使用することを特徴とする。
【0017】
第9の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1〜第8の本発明のいずれかにおいて、前記低級炭化水素分解工程と前記二酸化炭素還元工程とは、同一の前記触媒に対し前記低級炭化水素の供給と前記二酸化炭素の供給とを切り替えることによって行われることを特徴とする。
【0018】
第10の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1〜第8の本発明のいずれかにおいて、前記低級炭化水素分解工程で製造されたナノカーボンを回収する回収工程を有し、該回収工程で回収されたナノカーボンを前記二酸化炭素還元工程に供給することを特徴とする。
【0019】
第11の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法は、前記第1〜第10の本発明のいずれかにおいて、前記回収工程で触媒とともに回収されたナノカーボンを微粉化した後、高純度ナノカーボンと、前記触媒を高濃度に含有するナノカーボンとを比重選別し、前記触媒を高濃度に含有する前記ナノカーボンを優先的に前記二酸化炭素還元工程に供することを特徴とする。
【0020】
第12の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造システムは、低級炭化水素が供給される低級炭化水素供給路が接続され、該低級炭化水素供給路が連通する空間に触媒が収容されて前記空間が低級炭化水素の直接分解がなされる反応空間である低級炭化水素分解反応装置と、二酸化炭素が供給される二酸化炭素供給路が接続され、該二酸化炭素供給路が連通する空間にナノカーボンが収容されて前記空間が前記二酸化炭素が一酸化炭素に還元される反応空間である二酸化炭素還元反応装置と、前記低級炭化水素分解反応装置および前記二酸化炭素還元反応装置に接続され、前記低級炭化水素分解反応装置で生成された水素と前記二酸化炭素還元反応装置で生成された一酸化炭素とが混合される混合部とを備えることを特徴とする。
【0021】
第13の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造システムは、前記第12の本発明において、前記低級炭化水素分解反応装置で製造された前記水素を冷却する熱交換器を備え、該熱交換器で得られた熱を前記低級炭化水素分解反応装置および/または前記二酸化炭素還元反応装置に供給する排熱供給路を有することを特徴とする。
【0022】
第14の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造システムは、前記第12または第13本発明において、前記低級炭化水素分解反応装置と前記二酸化炭素還元反応装置は、前記各反応空間を共通とし、前記低級炭化水素供給路および前記二酸化炭素供給路における低級炭化水素および二酸化炭素との供給を切り替えて前記反応空間に選択的に供給する切替部を有することを特徴とする。
【0023】
第15の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造システムは、前記第12または第13本発明において、前記低級炭化水素分解反応装置で生成されたナノカーボンを回収するナノカーボン回収部と、該ナノカーボン回収部で回収した後のナノカーボンを前記二酸化炭素還元反応装置に移送するナノカーボン移送路を備えることを特徴とする。
【0024】
第16の本発明の合成ガスとナノカーボンの製造システムは、前記第15の本発明において、前記ナノカーボン回収部で回収した、前記触媒を含むナノカーボンを微粉化する微粉化部と、前記微粉化部の後段にあって、高純度のナノカーボンと、触媒を高濃度で含有するナノカーボンとに選別する選別部と、を備え、前記ナノカーボン移送路は、選別された、触媒を高濃度に含有するナノカーボンを移送するように前記選別部に接続されていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、低級炭化水素が分解され、該分解によって水素とナノカーボンが生成され、前記ナノカーボンと二酸化炭素とから合成ガスが製造される。そして、合成ガスの成分となる水素と一酸化炭素は、それぞれ別々の工程で生成されて混合されるため、合成ガスのガス比(一酸化炭素と水素の比)は任意かつ容易に調整することができる。ナノカーボンは、前記二酸化炭素還元工程で使用するもの以外は、機能性材料として様々な用途で使用することができる。
なお、従来の合成ガス製造方法においては、二酸化炭素と水素の反応により水が生成し、水素が無駄遣いされていたが、本発明では水の生成を必要とせず、このような無駄を省くことができる。
【0026】
低級炭化水素分解工程および二酸化炭素還元工程に必要な反応熱は、本発明で生成された反応ガスを元に化学原料あるいは燃料を製造する際に排出される排熱や、各種産業からの排熱を利用することができ、これにより、エネルギーの有効活用ができる。上記各種産業からの排熱とは、例えば、鉄鋼業、化学工業、製紙・パルプ業等における工場からの排熱や、発電設備からの排熱が挙げられる。
【0027】
また、本発明によれば、前記混合工程で得られた合成ガスを反応させて合成物を得る合成工程をさらに有することも可能である。合成物としては、水素と一酸化炭素とから合成可能な物質であれば限定されるものではないが、メタノール、エタノール、DME、混合アルコール、エチレングリコール、シュウ酸、酢酸、FT合成生成物(人造ガソリン・灯軽油)などを例示できる。
【0028】
本発明によって製造される合成ガスは、低級炭化水素分解工程および二酸化炭素還元工程で生成された高温の状態の水素と一酸化炭素を用いるので、高温の状態で得ることができる。本発明では反応プロセス中に組み込まれて合成ガスが得られており、合成反応前の水素と一酸化炭素は比較的合成反応温度に近い。この高温の合成ガスを用いてメタノールなどの製造をすることにより、反応に必要なエネルギーの投入量を減らすことができる。
なお、低級炭化水素工程で生成された水素の温度が高すぎる場合、必要に応じて熱交換器などによって冷却した後、合成ガスの製造に供するようにしてもよい。この冷却に際し熱交換によって得た熱は、低級炭化水素分解工程および/または二酸化炭素還元工程の熱源などとして利用することができる。
【0029】
また、本発明によれば、低級炭化水素分解工程で生成したナノカーボンを触媒との混合状態で二酸化炭素還元工程に供し、二酸化炭素によりナノカーボンを酸化することで、触媒、例えば触媒金属およびこれを担持している担体が固形残渣となり、これを再度低級炭化水素分解用触媒として使用することができる。すなわちこの場合には、二酸化炭素還元工程には触媒の再生・賦活操作からなる触媒再生工程を含むことになる。
【0030】
低級炭化水素分解工程で用いられる低級炭化水素は、メタンが代表的であるが、これに限定されるものではなく、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブチレン等を用いることができる。これらの混合ガスであってもよい。代表的にはメタンまたはメタンを主成分とするものが挙げられる。メタンを主成分とする場合、メタンを80体積%以上含む天然ガスが挙げられる。
低級炭化水素の由来は特に限定されるものではなく、例えば、天然ガス、都市ガス13A、ボイルオフガス、バイオガスとして得られるものや、化学合成により得られるものを用いることができる。
【0031】
低級炭化水素分解工程で用いられる触媒は、低級炭化水素を分解して水素とナノカーボンを生成できるものであればよく、本発明としては特定のものに限定されるものではない。特に、ニッケル、鉄のうち1種類以上を、アルミナ、シリカ、マグネシア、カルシア、ハイドロタルサイト、炭素のうち1種類以上に担持したものが挙げられる。なお、この場合、ニッケル、鉄のうち1種類以上の担持量は30質量%以上とするのが望ましい。
また、触媒は、担体を用いることなく全量を触媒材料で構成するものであってもよい。
【0032】
本発明の二酸化炭素還元工程で使用する二酸化炭素には、低級炭化水素分解工程および/または二酸化炭素還元工程における燃焼ガス排ガス中から回収したものを使用することができる。これにより、最終的に排出される二酸化炭素量を低減することができる。また、各種産業における排出ガス中、または、バイオガス中から回収して、該二酸化炭素を有効活用することができる。
【0033】
また、二酸化炭素還元工程では、メタン、水素のうち1種類以上を還元剤として使用することもできる。これにより、二酸化炭素還元工程の反応が促進される。
【0034】
なお、低級炭化水素分解工程と二酸化炭素還元工程とは、同一の前記触媒に対し前記低級炭化水素の供給と前記二酸化炭素の供給とを切り替えることによって行うことも可能である。例えば、低級炭化水素分解反応装置と二酸化炭素還元反応装置の反応空間を共通とし、低級炭化水素および二酸化炭素との供給を切り替えて前記反応空間に選択的に供給する切り替え部を設けることにより実現できる。一つの反応空間内で両工程を行うので、設備がコンパクトになる。
なお、上記切り替えは、所定の時間毎に行うようにしてもよく、また反応の状態(反応効率の低下など)などに基づいて切り替えるようにしてもよい。切り替えは、手動で行うこともでき、また、時間のカウントや反応状態を判定する制御部などによって自動的に切り替えるようにしてもよい。
【0035】
低級炭化水素分解工程で製造されたナノカーボンの一部を二酸化炭素還元工程に供給する際には、回収部を設け、これにより製造されたナノカーボンを回収することができる。回収部の構成は、本発明としては特に限定されるものでなく、適宜の構成、方法を適用することができる。例えば、反応容器からのオーバーフローによる方法、反応容器下部に取出口を設け、ここから抜き出す方法などを回収部として適用することができる。
さらに、上記回収工程の下流側に、回収したナノカーボンを微粉化する微粉化部と、微粉化したナノカーボンのうち触媒を高濃度に含有するナノカーボンを選別する選別部を設け、触媒を高濃度に含有するナノカーボンを優先的に二酸化炭素還元反応器に供給するようにしてもよい。選別部としては、例えば、比重により選別する比重選別部、磁気による選別を行う磁気選別部などを用いることができる。上記選別により触媒再生量を増加して、低級炭化水素分解工程における触媒補充量を抑制することができる。なお、上記した微粉化部、選別部については本発明としては特定の物に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明の合成ガスとナノカーボンの製造方法によれば、低級炭化水素を触媒を使用して直接分解し、水素とナノカーボンを生成する低級炭化水素分解工程と、前記低級炭化水素分解工程で生成された前記ナノカーボンの一部と二酸化炭素とを反応させて、一酸化炭素を製造する二酸化炭素還元工程と、前記低級炭化水素分解工程で生成された前記水素と前記二酸化炭素還元工程で生成された前記一酸化炭素とを所定の比率で混合して合成ガスを得る混合工程と、を有するので、低級炭化水素と二酸化炭素からナノカーボンと合成ガスを製造することができる。また、従来方法では調整が難しかった合成ガスの水素/一酸化炭素比を任意の値にすることが容易になる。さらに、従来方法において水素の無駄遣いにより副生されていた水を生成しないものにすることができる。
【0037】
また、本発明の合成ガスとナノカーボンの製造システムによれば、低級炭化水素が供給される低級炭化水素供給路が接続され、該低級炭化水素供給路が連通する空間に触媒が収容されて前記空間が低級炭化水素の直接分解がなされる反応空間である低級炭化水素分解反応装置と、二酸化炭素が供給される二酸化炭素供給路が接続され、該二酸化炭素供給路が連通する空間にナノカーボンが収容されて前記空間が前記二酸化炭素が一酸化炭素に還元される反応空間である二酸化炭素還元反応装置と、前記低級炭化水素分解反応装置および前記二酸化炭素還元反応装置に接続され、前記低級炭化水素分解反応装置で生成された水素と前記二酸化炭素還元反応装置で生成された一酸化炭素とが混合される混合部とを備えるので、上記製造方法を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明における合成ガスとナノカーボンの製造システムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】同じく、他の実施形態を示す概略図である。
【図3】同じく、原料をメタンとして、合成ガスとナノカーボンを合成し、この合成ガスからメタノールを合成する実施例のプロセスフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(実施形態1)
以下、本発明における合成ガスとナノカーボンの製造システムの一実施形態について図1に基づいて説明する。本実施形態は、低級炭化水素直接分解装置と二酸化炭素還元反応装置を並列運転して、ナノカーボンおよび合成ガスを製造するものである。なお、この実施形態では、低級炭化水素としてメタンを用いるものとして説明する。なお、本発明としては低級炭化水素の種別がメタンに限定されるものではない。
【0040】
本発明の製造システムは、低級炭化水素分解反応装置10と、二酸化炭素還元反応装置30と、混合部50を備える。
低級炭化水素分解反応装置10は、メタンを直接分解する触媒13が収容される反応容器11と該反応容器11の周囲を囲んで該反応容器11内部を加熱する炉12とを備えている。反応容器11内がメタンを直接分解する反応空間となる。触媒13としては、ニッケル、鉄のうち1種類以上を、アルミナ、シリカ、マグネシア、カルシア、ハイドロタルサイト、炭素のうち1種類以上に、担持量が30質量%以上となるように担持したものや担体を用いることなく全量をニッケル、鉄のうち1種類以上などの触媒材料で構成したものが例示される。
【0041】
反応容器11には、原料となるメタンを反応容器11内に供給する低級炭化水素供給路20と、反応容器内で生成された排出ガスを移送する排出ガス移送路14が接続されている。低級炭化水素供給路20は反応容器11に至る途中に分岐部を有し、該分岐部に後述する燃料供給路21が接続されている。なお、本実施形態では、原料メタンの一部を炉加熱用の燃料としても用いるものとしたが、燃料には、原料とは異なる炭化水素などを用いるものであってもよい。その場合には、燃料供給路を低級炭化水素供給路から分岐させるのではなく、別途燃料供給路を設けるようにする。
【0042】
排出ガス移送路14は、排出ガスを冷却する熱交換器24を介して排出ガス中からメタンを回収するPSA(pressure swing adsorption)25が接続されている。PSA25には、分離、回収されたメタンが移送される返流路26と排出ガス中から分離した水素を移送する水素移送路14aとが接続されている。水素移送路14aの他端は、混合部50に接続されている。上記返流路26は熱交換器24を介して燃料供給路21に合流している。
本実施形態では、熱交換器24で回収した熱で、PSA25で回収したメタンを加熱するものとしたが、排出ガスの熱は、低級炭化水素分解工程および/または二酸化炭素還元工程での熱源などとして利用できれば、上記構成に限定されるものではない。
【0043】
また、反応容器11には、ナノカーボンを触媒との混合状態で取出すナノカーボン回収部42が設けられている。ナノカーボン回収部42の構成は特に限定されるものではなく、反応容器11からオーバーフローさせたり、反応容器11下部に抜き出し口を設けて取出すものであってもよい。ナノカーボン回収部42には、ナノカーボン・触媒移送路43が接続されており、該ナノカーボン・触媒移送路43は、後述する反応容器31に接続されている。該ナノカーボン・触媒移送路43は、本発明のナノカーボン移送路に相当する。
なお、ナノカーボン回収部42で回収した、触媒を含むナノカーボンは、微粉化した後、高純度のナノカーボンと、触媒を高濃度で含有するナノカーボンとに選別し、選別した、触媒を高濃度で含有するナノカーボンをナノカーボン・触媒移送路43によって反応容器31に移送するようにしてもよい。上記微粉化は微粉化部で行い、上記選別は、比重選別や磁気選別による選別部で行うことができる。
【0044】
また、炉12には、前記したように、メタンを燃料として炉12内に供給する燃料供給路21と、炉12内での燃焼により発生した排ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素還元反応装置30へと供給する二酸化炭素供給路23が接続されている。
【0045】
二酸化炭素還元反応装置30は、ナノカーボンが触媒と混合した状態で収容される反応容器31と、該反応容器31の周囲を囲んで該反応容器31内部を加熱する炉32とを備えている。前記反応容器31内は、ナノカーボンと二酸化炭素との反応によって一酸化炭素を生成する反応空間に相当する。反応容器31には、上記した二酸化炭素供給路23とナノカーボン・触媒移送路43が接続されている。また、反応容器31には、反応容器31内で製造された一酸化炭素を混合部50へ移送する一酸化炭素移送路34が接続されている。
炉32には、メタンを燃料として炉32内に供給する燃料供給路22と、炉32内での燃焼により発生した排ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素供給路23へと移送するための二酸化炭素供給路35が接続されている。
【0046】
混合部50には、水素移送路14aと、一酸化炭素移送路34が接続されており、水素および一酸化炭素が供給される。また、混合部50には、製造された合成ガスを外部へ移送する合成ガス移送路51と、余剰の水素を外部へ移送する余剰水素移送路52が接続されている。水素の外部移送量を調整することで、混合部50において水素と一酸化炭素の混合比を任意に調整することができる。水素の外部移送量は流量調整弁などによって調整することができる。
【0047】
次に、本実施形態の動作について説明する。
低級炭化水素分解反応装置10の反応容器11には、触媒13が収容される。反応容器11内には、メタンが低級炭化水素供給路20を通して供給される。
反応容器11は、燃料供給路21を通じて供給されたメタンを燃料として、炉12によって加熱される。このとき、炉12から排出される燃焼排ガス中の二酸化炭素は、二酸化炭素供給路23により二酸化炭素還元反応装置30の反応容器31へと供給される。
反応容器11が所定の温度に加熱された状態で、メタンが反応容器11内に供給されると、触媒13とメタンとの反応によって、ナノカーボンと水素が製造される。このときの温度、圧力は特に限定されるものではなく、メタンの転化率等を考慮して適宜定めることができる。
【0048】
反応容器11内で生成された排出ガスは、排出ガス移送路14により反応容器11外へ排出され、熱交換器24を介してPSA25に移送される。
また、排出ガスは、PSA25によって未反応のメタンと水素とが分離され、回収されメタンは、返流路26により熱交換器24を介して燃料供給路21へと移送され、再度燃料として使用することができる。熱交換器24では、排出ガスと回収メタンとの間で熱交換され、排出ガスが冷却されるとともに、回収メタンが加熱される。回収メタンの加熱は、燃料の予熱としてエネルギー効率を高める。
一方、PSA25で分離された水素は水素移送路14aを通して混合部50に移送される。
【0049】
また、反応容器11内では、前記分解反応によってナノカーボンが生成される。このナノカーボンは、触媒とともにナノカーボン回収部42により反応容器11外へと取出される。必要量のナノカーボンは分離して機能性材料などとして使用することができる。また、ナノカーボンの一部および触媒は、ナノカーボン・触媒移送路43を通して反応容器31へと移送される。なお、本発明としては、ナノカーボンのみを反応容器31に移送するものであってもよい。
【0050】
二酸化炭素還元反応装置30の反応容器31には、二酸化炭素供給路23によって二酸化炭素が供給され、ナノカーボン・触媒移送路43によって触媒を含むナノカーボンが供給される。また、反応容器31は、燃料供給路22を通じて供給されたメタンを燃料として、炉32によって加熱される。このとき、炉32から排出される燃焼排ガス中の二酸化炭素は、二酸化炭素供給路35、二酸化炭素供給路23を通して反応容器31に供給される。
反応容器31では、所定の温度、圧力の下で、ナノカーボンと二酸化炭素が反応し、一酸化炭素が製造される。また、反応の進行とともに触媒に付着したナノカーボンが消費され、触媒の再生・賦活がなされる触媒再生工程が同時に行われる。再生された触媒は、再び低級炭化水素分解反応装置で使用することができる。再生された触媒は、ナノカーボン・触媒移送路43およびナノカーボン回収部42を通して低級炭化水素分解反応装置10の反応容器11に返流させることができる。反応容器31で製造された一酸化炭素は、一酸化炭素移送路34を通して混合部50へと移送される。
【0051】
混合部50では、上記のようにして製造された水素および一酸化炭素が供給されて混合され、所定量の水素を外部に排出することで、所定のガス比を有する合成ガスが製造される。また、混合部50に供給される水素および一酸化炭素の量を調整することで、所望のガス比を有するものとしてもよい。製造された合成ガスは、合成ガス移送路51を通って混合部50外部へと移送される。合成ガス移送路51で移送された合成ガスは、そのままメタノール等を製造する合成工程に供給してもよいし、一旦ボンベ等に貯蔵されてもよい。なお、合成ガスの高温の熱を有効利用するために、そのまま合成工程に供するのが望ましい。
混合部50において余剰となった水素は、混合部50より余剰水素移送路52を通って移送して適宜利用したり、廃棄したりすることができる。
合成ガスのガス比は、合成ガスを元に製造する物質の種類、製造方法等によって、任意の値とすることができる。例えば、合成ガスをもとにメタノールを製造する場合、理論的には、一酸化炭素と水素の比を1対2とするのがよい。
【0052】
(実施形態2)
次に、他の実施形態について図2に基づいて説明する。
本実施形態2は、低級炭化水素分解を行う反応空間と二酸化炭素還元反応を行う反応空間を共通とするべく、一つの反応容器で低級炭化水素分解と二酸化炭素還元を行うものである。なお、この実施形態2において前記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略または簡略にする。
【0053】
本発明の製造システムは、反応装置60と、混合部50を備える。
反応装置60は、反応容器61と反応容器61の周囲を囲んで該反応容器61を加熱する炉62を備える。反応容器61内には、低級炭化水素を直接分解する触媒が収容される。また、反応容器61には、原料となるメタンを供給する低級炭化水素供給路20と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給路27とがそれぞれ接続されており、低級炭化水素供給路20には開閉弁20a、二酸化炭素供給路27には開閉弁27aが介設されており、反応容器61に水素と二酸化炭素とを選択的に供給することが可能になっている。したがって、この実施形態では、開閉弁20a、27aが本発明の切替部に相当する。
【0054】
上記炉62には、メタンを燃料として炉62内に供給する燃料供給路21が接続されており、該燃料供給路21は、前記低級炭化水素供給路20に分岐接続されている。また、炉62には、炉62内での燃焼により発生した排ガス中の二酸化炭素を炉外へと排出する二酸化炭素供給路27の一端が接続されており、該二酸化炭素供給路27には二酸化炭素貯留タンク28、前記開閉弁27aが順次介設されて、前記したように反応容器61に接続されている。
【0055】
さらに反応容器61には、低級炭化水素分解工程において反応容器61内で生成された排出ガスを移送する排出ガス移送路64が接続されており、該排出ガス移送路64は、熱交換器24を介してPSA25に接続されている。PSA25には、分離、回収されたメタンが移送される返流路26と排出ガス中から分離した水素を移送する水素移送路64aとが接続されている。水素移送路64aの他端は、混合部50に接続されている。上記返流路26は熱交換器24を介して燃料供給路21に合流している。
【0056】
また、反応容器61には、二酸化炭素還元工程において反応容器61内で生成された一酸化炭素を移送する一酸化炭素移送路65が接続されており、該一酸化炭素移送路65の他端は混合部50に接続されている。
【0057】
次に、本実施形態の動作について説明する。
初期状態では、低級炭化水素供給路20の開閉弁20aを開け、二酸化炭素供給路27の開閉弁を閉じて、反応容器61内にメタンを供給可能にする。
また、反応容器61は、燃料供給路21を通じて供給されたメタンを燃料として、炉62によって加熱される。このとき、炉62から排出される燃焼排ガス中の二酸化炭素の一部または全部は、二酸化炭素供給路27に介設した二酸化炭素貯留タンク28に一時的に貯留される。これにより系外に排出される二酸化炭素の量を軽減する。
【0058】
反応容器61内で生成された排出ガスは、排出ガス移送路64により反応容器11外へ排出され、熱交換器24を介してPSA25に移送される。
また、排出ガスは、PSA25によって未反応のメタンと水素とが分離され、回収されメタンは、返流路26により熱交換器24を介して燃料供給路21へと移送され、再度燃料として使用することができる。熱交換器24では、排出ガスと回収メタンとの間で熱交換され、排出ガスが冷却されるとともに、回収メタンが加熱される。PSA25で分離された水素は水素移送路64aを通して混合部50に移送される。
また、反応容器61内では、前記分解反応によってナノカーボンが生成される。
【0059】
予め定めた所定時間の経過後、開閉弁20aを閉じ、開閉弁27aを開けて二酸化炭素供給路27を通して反応容器61内に二酸化炭素を供給する。この際に、二酸化炭素貯留タンク28を通して十分な量の二酸化炭素が供給される。必要に応じて燃料供給量を調整するなどして、炉62の温度を適宜調整する。上記開閉弁20a、27aの動作は、図示しない制御部による制御によって行うことができる。
【0060】
反応容器61内では、低級炭化水素分解工程から二酸化炭素還元工程に移行し、反応容器61内に存在しているナノカーボンと二酸化炭素とが反応し、一酸化炭素が生成される。このとき、反応の進行とともに触媒に付着しているナノカーボンが消費され、触媒の再生・賦活がなされる触媒再生工程が同時に行われる。
なお、二酸化炭素還元反応を始める前に、反応前のナノカーボンを一部取出してもよい。
製造された一酸化炭素は、一酸化炭素移送路65を通して混合部50へと移送される。
【0061】
混合部50では、上記のようにして製造された水素および一酸化炭素が供給されて混合され、所定のガス比を有する合成ガスが製造される。混合部50に供給される水素および一酸化炭素の量を調整することで、所望のガス比を有する合成ガスを得ることができる。
【0062】
予め定めた所定時間の経過後、開閉弁20aを開き、開閉弁27aを閉じて低級炭化水素供給路20を通して反応容器61内にメタンを供給する。必要に応じて燃料供給量を調整するなどして、炉62の温度を適宜調整する。なお、この所定時間は、低級炭化水素分解工程から二酸化炭素還元工程に移行するべく切り替える際の所定の時間とは異なるものにすることができる。
【0063】
反応容器61内では、二酸化炭素還元工程から低級炭化水素分解工程に移行し、反応容器61内で触媒によるメタンの分解反応が生じ、水素とナノカーボンが生成され、ナノカーボンの製造とともに前記した合成ガスの製造が行われる。
このように、低級炭化水素の供給と二酸化炭素の供給を切り替えることで、一つの反応容器で低級炭化水素分解反応と二酸化炭素還元反応とを行い、最終的に合成ガスとナノカーボンを製造することができる。
なお、低級炭化水素の供給と二酸化炭素の供給を切り替える間隔は、必要とされる水素、一酸化炭素の量や、反応条件等に応じて適宜定めることができる。
【0064】
以上本発明について上記各実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【実施例1】
【0065】
図1に示す製造システムを用いて、メタンと二酸化炭素から合成ガスとナノカーボンを製造し、この合成ガスを元にメタノールを製造する工程の一例を、図3のプロセスフローに基づいて説明する。
図3中のA.低級炭化水素分解、B.二酸化炭素還元、C.熱交換器による冷却、D.メタノール合成反応、および、E.メタノールの除熱の各段階における反応条件と物質収支(マテリアルバランス)を表1に示す。なお、本実施例では、製造された合成ガスを元にメタノールを製造する際の排熱、および、このメタノールを除熱する際の排熱を反応工程内で再利用するものとする。触媒としては、CuまたはZnまたはその合金を主成分とした触媒などを用いる。
【0066】
【表1】

【0067】
原料メタン60molを低級炭化水素分解反応装置10の反応容器11に供給し、燃料メタンにより炉12を750℃に加熱すると、以下の反応によって水素120molとナノカーボン60molが製造される(A.低級炭化水素分解)。
CH→2H+C+Q1 (Q1=74.5kJ/mol)
また、燃焼排ガスとして二酸化炭素が排出される。このときの低級炭化水素分解反応における反応熱は、二酸化炭素還元工程の熱源として利用できる。上記反応で製造される水素は750℃と高温であり、これを熱交換器により冷却して300℃にする(C.熱交換器による冷却)。
【0068】
熱交換器で得られた排熱は二酸化炭素還元工程の熱源として利用される。
上記で製造されたナノカーボンのうち30molと、上記二酸化炭素30molを二酸化炭素還元装置の反応容器に供給し、燃焼メタンにより炉を650℃に加熱すると、下記反応によって一酸化炭素60molが製造される(B.二酸化炭素還元)。
C+CO→2CO+Q2 (Q2=172.37kJ/mol)
【0069】
製造された一酸化炭素60molと水素120molを混合部で混合すると、一酸化炭素と水素の比が1対2である合成ガスが180mol製造される。この合成ガス180molを用いて反応温度300℃で反応させると、下記反応によって、メタノール60molを製造することができる(D.メタノール合成反応)。なお、合成ガスからメタノールを製造する反応は発熱反応であるので、反応熱を熱源として利用できる。
CO+2H→CHOH+Q3 (Q3=−30.75kJ/mol)
製造したばかりのメタノールは300℃であり、これを除熱して20℃とする(E.メタノールの除熱)。除熱で得られた熱は、他の工程における熱源として利用できる。
【0070】
本実施例におけるマテリアルバランスについて表1に基づいて説明する。表1に示したように、燃料としてメタンを使用し、炉の効率を50%と仮定した場合、理論上、燃料の燃焼により排出される二酸化炭素量が約30molとなる。排出される二酸化炭素を全て用いて合成ガスを製造し、この合成ガスからメタノールを合成すると、本実施例で最終的に排出される二酸化炭素の量をゼロとする事が可能となる。
【符号の説明】
【0071】
10 低級炭化水素分解反応装置
11 反応容器
12 炉
14 排出ガス移送路
14a水素移送路
20 低級炭化水素供給路
20a開閉弁
21 燃料供給路
22 燃料供給路
23 二酸化炭素供給路
24 熱交換器
27 二酸化炭素供給路
27a開閉弁
30 二酸化炭素還元反応装置
31 反応容器
32 炉
34 一酸化炭素移送路
42 ナノカーボン回収部
43 ナノカーボン・触媒移送路
50 混合部
60 反応装置
61 反応容器
62 炉
64 排出ガス移送路
64a水素移送路
65 一酸化炭素移送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級炭化水素を触媒を使用して直接分解し、水素とナノカーボンを生成する低級炭化水素分解工程と、
前記低級炭化水素分解工程で生成された前記ナノカーボンの一部と二酸化炭素とを反応させて、一酸化炭素を製造する二酸化炭素還元工程と、
前記低級炭化水素分解工程で生成された前記水素と前記二酸化炭素還元工程で生成された前記一酸化炭素とを所定の比率で混合して合成ガスを得る混合工程と、を有することを特徴とする合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項2】
前記混合工程で得られた合成ガスを反応させて合成物を得る合成工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素還元工程は、前記低級炭化水素分解工程で使用された触媒の一部または全部を前記ナノカーボンと前記二酸化炭素との反応に供し、該反応に際し、前記触媒上から、前記低級炭化水素分解工程で生成されたナノカーボンの一部または全部を除去する触媒再生工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項4】
前記触媒再生工程で再生された前記触媒を再度、前記低級炭化水素分解工程に供することを特徴とする請求項3記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項5】
前記低級炭化水素が、メタンまたはメタンを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項6】
前記触媒は、ニッケル、鉄のうち1種類以上を、アルミナ、シリカ、マグネシア、カルシア、ハイドロタルサイト、炭素のうち1種類以上に担持したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項7】
前記二酸化炭素は、前記低級炭化水素分解工程における燃焼排ガス、前記二酸化炭素還元工程における燃焼排ガス、各種産業における排出ガス、または、バイオガス中のいずれか1以上から回収したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項8】
前記二酸化炭素還元工程において、低級炭化水素、水素のうち1種類以上を還元剤として使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項9】
前記低級炭化水素分解工程と前記二酸化炭素還元工程とは、同一の前記触媒に対し前記低級炭化水素の供給と前記二酸化炭素の供給とを切り替えることによって行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項10】
前記低級炭化水素分解工程で製造されたナノカーボンを回収する回収工程を有し、
該回収工程で回収されたナノカーボンを前記二酸化炭素還元工程に供給することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項11】
前記回収工程で触媒とともに回収されたナノカーボンを微粉化した後、高純度ナノカーボンと、前記触媒を高濃度に含有するナノカーボンとを比重選別し、前記触媒を高濃度に含有する前記ナノカーボンを優先的に前記二酸化炭素還元工程に供することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の合成ガスとナノカーボンの製造方法。
【請求項12】
低級炭化水素が供給される低級炭化水素供給路が接続され、該低級炭化水素供給路が連通する空間に触媒が収容されて前記空間が低級炭化水素の直接分解がなされる反応空間である低級炭化水素分解反応装置と、
二酸化炭素が供給される二酸化炭素供給路が接続され、該二酸化炭素供給路が連通する空間にナノカーボンが収容されて前記空間が前記二酸化炭素が一酸化炭素に還元される反応空間である二酸化炭素還元反応装置と、
前記低級炭化水素分解反応装置および前記二酸化炭素還元反応装置に接続され、前記低級炭化水素分解反応装置で生成された水素と前記二酸化炭素還元反応装置で生成された一酸化炭素とが混合される混合部とを備えることを特徴とする合成ガスとナノカーボンの製造システム。
【請求項13】
前記低級炭化水素分解反応装置で製造された前記水素を冷却する熱交換器を備え、該熱交換器で得られた熱を前記低級炭化水素分解反応装置および/または前記二酸化炭素還元反応装置に供給する排熱供給路を有することを特徴とする請求項12に記載の合成ガスとナノカーボンの製造システム。
【請求項14】
前記低級炭化水素分解反応装置と前記二酸化炭素還元反応装置は、前記各反応容器を共通とし、前記低級炭化水素供給路および前記二酸化炭素供給路における低級炭化水素および二酸化炭素との供給を切り替えて前記反応空間に選択的に供給する切替部を有することを特徴とする請求項12または13に記載の合成ガスとナノカーボンの製造システム。
【請求項15】
前記低級炭化水素分解反応装置で生成されたナノカーボンを回収するナノカーボン回収部と、該ナノカーボン回収部で回収した後のナノカーボンを前記二酸化炭素還元反応装置に移送するナノカーボン移送路を備えることを特徴とする請求項12または13に記載の合成ガスとナノカーボンの製造システム。
【請求項16】
前記ナノカーボン回収部で回収した、前記触媒を含むナノカーボンを微粉化する微粉化部と、前記微粉化部の後段にあって、高純度のナノカーボンと、触媒を高濃度で含有するナノカーボンとに選別する選別部と、を備え、前記ナノカーボン移送路は、選別された、触媒を高濃度に含有するナノカーボンを移送するように前記選別部に接続されていることを特徴とする請求項15に記載の合成ガスとナノカーボンの製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−188321(P2012−188321A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53865(P2011−53865)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(504238806)国立大学法人北見工業大学 (80)
【Fターム(参考)】