説明

合成樹脂表皮材の製造方法

【課題】絞押された合成樹脂シートで製造される製品・部品の所定に位置・場所に所望の加飾(デザイン)を連続的に生産性よく施すのに好適な合成樹脂表皮材の製造方法の提供
【解決手段】長尺の合成樹脂シート10をアキュームレータ12を介して連続的に供給する第1の工程と、供給された長尺の合成樹脂シート10をプレス盤18Aと該プレス盤に対応する絞プレス盤18Bとの間で挟圧して絞押する第2の工程と、絞押された長尺の合成樹脂シートを裁断する第3の工程と、を有する合成樹脂表皮材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂表皮材の製造方法に係り、絞押された合成樹脂シートで製造される製品・部品の所定の位置・場所に所望の加飾(デザイン)を合成樹脂シートの生産に同期して連続的に生産性良く施すのに好適な合成樹脂表皮材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低コストで高品質な加飾シートを得る方法としては、通常、第1の方法と第2の方法がある。(特許文献1〜特許文献1等参照)
第1の方法は、シートの生産(送り速度)と同期して回転する円筒状加飾型(印刷ロール・エンボスロール)を用いて加飾し、その後、加飾された合成樹脂シートを裁断している。一般的に加飾ロールはその外周に加飾目的のパターンを継ぎ目なしで連続的に配置している。したがって、上記の加飾ロールで得られる長尺の合成樹脂シートには、その長手方向に連続性のある加飾が施されている。
【0003】
一方、第2の方法は、定位性(定位置性)、すなわち、絞押された合成樹脂シートで製造される製品・部品の所定に位置・場所に所望の加飾(デザイン)が配置されるようにするため、従来、加飾合成樹脂シートは、連続的に生産した長尺の合成樹脂シートを一度定寸法に切断・裁断した後、切断・裁断されたシートを別の装置で1シートずつ加飾していた。
【0004】
上記した第1の方法においては、合成樹脂シートの加飾(柄、模様、彩色、エンボス)位置に定位性がなく、あるいは定位性が不十分なため、それらを切断・裁断シートを使用する製品・部品には、下記のような弊害がある。
【0005】
(1)加飾の定位性がなく、あるいは定位性が不十分なため、製品・部品の加飾設計(デザイン)意図を十分に満たすことができない。つまり、加飾された合成樹脂シートを加工して製品・部品にする場合、製品・部品のどのような部分にどのような柄や色が現れるか確定せず、制御も難しい。
(2)加飾の定位性がなく、あるいは定位性が不十分なため、隣接する2製品間・部品間の加飾に連続性を確保することが困難で所望の加飾を有する製品・部品を製造することが困難である。
(3)加飾の定位性がもたらす高度な意匠性を十分に表現する表皮材を得ることができない。
【0006】
上記した第2の方法においては、連続生産する第1の方法と異なり,低生産性であり、製造される製品・部品が高コストとなる。
【0007】
【特許文献1】特開平7−276580号公報
【特許文献2】特開2007−62245号公報
【特許文献3】特開平6−238828号公報
【特許文献4】特開2006−21345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記した問題点を解決し、絞押された合成樹脂シートで製造される製品・部品の所定の位置・場所に所望の加飾(デザイン)を合成樹脂シートの生産に同期して連続的に生産性よく施すことができる合成樹脂表皮材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題は、以下の構成からなる方法によって解決された。
すなわち、本発明の合成樹脂表皮材は
<1> 長尺の合成樹脂シートをアキュームレータを介して連続的に供給する第1の工程と、供給された長尺の合成樹脂シートをプレス盤と該プレス盤に対応する絞プレス盤との間で挟圧して絞押する第2の工程と、絞押された長尺の合成樹脂シートを裁断する第3の工程と、を有することを特徴とする合成樹脂表皮材の製造方法である。
<2> 前記絞プレス盤の絞形成用凹凸部の少なくとも1部に設けられた孔からプリントインクを吐出させて挟圧による絞押中又は挟圧による絞押の直前後で合成樹脂シート面に彩色を施すことを特徴とする前記<1>に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【0010】
<3>第2の工程及び第3の工程において、前記プレス盤に絞押された合成樹脂シートを裁断すべき部位に裁断刃が設けられ、絞押工程と裁断工程を同時に行うことを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の合成樹脂表皮材の製造方法である。
<4> 第2の工程において、前記絞プレス盤に製品の第1の絞模様を形成するための絞模様と絞押された合成樹脂シートを成形加工機又は打ち抜き加工機にセットするための位置決め用の第2の絞形態が形成されていることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の合成樹脂表皮材の製造方法である。
<5> 第2の工程において、前記絞プレス盤に形成された絞が、絞押された合成樹脂シートを凸型真空形成で成形する際の展開率の逆数に基づいて設定される凹凸パターン及び/又は絞深さで形成されていることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれかに記載の合成樹脂表皮材の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の合成樹脂表皮材の製造方法によれば、絞押された合成樹脂シートで製造される製品・部品の所定の位置・場所に所望の加飾(デザイン)を合成樹脂シートの生産に同期して連続的に生産性良く施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す概略的構成図である。図1において、長尺の合成樹脂シート10がアキュームレータ12を介して熱ドラム14及び加熱ヒーター16A、16Bで加熱された後、エンボス機18に供給される態様を示している。
【0013】
アキュームレータ12は、ガイドロール12A,昇降ガイドロール12B,12C,12D、12Eからなっており、昇降ガイドロール12B及び12Dはガイドロール12Aの高さを基準にしてその上方で昇降自在に設けられ、昇降ガイドロール12C及び12Eはガイドロール12Aの高さを基準にしてその下方で昇降自在に設けられている。
【0014】
エンボス機18は、プレス盤18Aと絞プレス盤18Bとからなっており、プレス盤18Aは固定され、絞プレス盤18Bは上下方向に昇降自在に設けられている。また、絞プレス盤18Bには、図示していないインク供給機構を介してプリントインクが供給されるとともに絞プレス盤18Bの絞形成用凹凸部の凸部に孔が形成されており、この孔は、図示していないインク供給機構に連通している。図中、20は裁断刃を示す。
【0015】
次に図1を基に本発明の合成樹脂表皮を製造する方法を説明する。
熱ドラム14及び加熱ヒーター16A、16Bがそれぞれ所定の温度に調整され、エンボス機18の絞プレス盤18Bがプレス盤18A側から上昇し、所定の位置で待機した状態で、長尺の合成樹脂シート10は、所定の加工速度でアキュームレータ12を経て熱ドラム14で加熱された後、加熱ヒーター16A、16Bで所定の温度に加熱される。次いでエンボス機18に供給される。
【0016】
長尺の合成樹脂シート10の先端部が、エンボス機18の合成樹脂シート搬送方向下流端に到達し、絞押工程の状態になると、エンボス機18内の合成樹脂シート10の搬送が停止する。このとき、合成樹脂シート10はその生産に同期して一定の搬送速度で供給されるが、絞押工程の時間に供給される長さに相当する合成樹脂シート10はアキュームレータ12で滞留する。この状態で絞プレス盤18Bが下降して、加熱された合成樹脂シート10はプレス盤18Aと絞プレス盤18Bとの間で挟圧されて絞押される。したがって、合成樹脂シート10の生産を中断することなく、合成樹脂シート10の生産と同期して絞押工程を行うことができる。
【0017】
この絞押工程中において、
1)絞プレス盤18Bが合成樹脂シート10面に押圧している段階
2)絞プレス盤18Bが合成樹脂シート10面に接触する直前の段階
3)絞プレス盤18Bが合成樹脂シート10面から離脱した直後の段階
の少なくともいずれかの段階で絞プレス盤18Bの絞形成用凹凸部の1部からプリントインクを吐出させることができる。
【0018】
この場合、プレス盤18Aと絞プレス盤18Bは常温であるため、プリントインクが加熱されて吐出用孔等に詰まる等の問題が生じることなく、所望の柄を形成するのに要する量のインクを吐出することができる。柄の例としては、例えば、絞プレス盤18Bの絞形成用凹凸部に複数の孔を設け、それぞれの孔からそれぞれ異なる色のプリントインクを吐出させて合成樹脂シート10に多色の印刷柄付けを行うことができる。また、絞形成用凹凸部の凸部に設けた孔から所定の色のプリントインクを吐出させると、合成樹脂シート10に所謂,谷汚しの印刷柄付けを行うことができる。したがって、合成樹脂シート10の生産と同期して印刷柄付けを絞押工程と同時に行うことができる。
【0019】
エンボス機18において、合成樹脂シート10に対する絞付けと印刷柄付けが施された後、絞プレス盤18Bは合成樹脂シート10面側から上昇し、表皮クランプで把持された合成樹脂シート10は剥がしロールによって絞プレス盤18Bから剥がされる。
【0020】
次に、合成樹脂シート10は表皮クランプで把持されたまま、裁断工程に搬送される。裁断工程では、裁断刃20によって合成樹脂シート10の用途に応じた寸法に裁断される。裁断された合成樹脂シート10(裁断シート22)は図示していない吸盤付ロボットアームを介して所定のパレットに積載された後、それぞれの用途に応じた加工工程に移される。
【0021】
上記した実施の形態におけるエンボス機18の代わりに熱プレス盤と熱絞プレス盤を配置してもよい。この場合、熱プレス盤と熱絞プレス盤は、例えば、180℃程度の高温に制御されるので、プリントインクの吐出は困難であるが、絞模様をより微細な模様に形成させることができ、絞の意匠性を高めるのに有効である。
【0022】
上記した実施の形態におけるエンボス機18の代わりに図2に示すエンボス機を用いることができる。図2において、プレス盤30と絞プレス盤32が対応した状態で配置されている。プレス盤30はプレス盤基体30Aとこの面上に設けられた弾性層30Bとから構成され、プレス盤基体30Aに裁断刃34が固定されている。
【0023】
裁断刃34は、プレス盤基体30A面に対して、裁断される合成樹脂シート10の用途に応じた加工に対応した任意の形状、例えば、矩形状、三角形、正方形、楕円形等の刃形状となっている。絞プレス盤32側は絞プレス盤基体32Aとその下面に設けられた絞形成用凹凸部32Bとからなっており、絞形成用凹凸部32Bにプリントインクを吐出する孔が形成されており、絞プレス盤32は図示していない駆動機構を介して昇降可能となっている。
【0024】
このようなエンボス機を用いると、絞模様の形成領域と裁断領域の配置関係、すなわち、絞プレス盤32側の絞形成領域とプレス盤基体30A側に設けられる裁断刃34の位置関係を予め設計することができる。
例えば、絞押された合成樹脂シートを凸型真空成形機で成形して自動車内装材(インストルメントパネル等)を製造する場合、凸型真空成形機にセットする合成樹脂シートにおける製品・部品における絞模様部分が所定の位置・場所となるように合成樹脂シートを所定の位置で裁断し、凸型真空成形することによって、自動車内装材の所定の位置・場所に所望の柄付けを施すことができ、かつプレス盤30と絞プレス盤32によって、絞付け工程と柄付け工程と裁断工程とを同時に行うことができる。また、打ち抜き加工機の場合においては、絞模様の形成領域と裁断領域の配置関係が予め設計されているので打ち抜き加工された合成樹脂表皮材を縫製した際、柄等が連続した所望の意匠性を確保することができる。
【0025】
本発明において、第2の工程において、前記絞プレス盤に製品の絞模様を形成するための第1の絞模様と絞押された合成樹脂シートを成形加工機又打ち抜き加工機にセットするための位置決め用の第2の絞形態を形成することもできる。
【0026】
位置決めのための第2の絞形態は、「く」の形態の他、レーザー光等による検知手段による検知が可能な絞形態であればよく、特に制約はない。検知できれば凸形態でも良い。したがって、単に種々の形状の絞形態、例えば、+、×、*、○、△、□、矩形状、楕円状、各種文字等任意の絞形態も採用することができる。また、第2の絞形態は、第1の絞模様の絞形成領域付近に3箇所絞形態で設けられた例が望ましいが、1箇所のみに絞形態を設けてもよく、2箇所に絞形態を設けてもよい。ただし、絞付合成樹脂シートの成形加工機又は打ち抜き加工機における位置決めの精度を高めるためには、3箇所ないし4箇所に絞形態を設けることが望ましい。
【0027】
第1の絞模様と第2の絞形態との位置関係は、絞付された合成樹脂表皮材が成形加工機又は打ち抜き加工機におけるセットされる位置等によって個別に設定することができる。この設定条件に基づいて絞形成用凹凸部32Bにおける第1の絞模様と第2の絞形態の位置関係及び第2の絞形態の形状が決められる。
【0028】
成形加工機上には搬送された合成樹脂表皮材の第2の絞形態の位置がレーザー光等の検知手段により検知され、この検知信号に基づいて成形加工機上にセットされる合成樹脂表皮材の配置状態が補正された後、所定の加工が施される。これによって、例えば、インストルメントパネルの場合、インストルメントパネル面に形成されるそれぞれの絞模様が所定に位置に配置されることになる。
【0029】
第2の絞形態の検知手段は、レーザー光による高さ検知で凹形態の位置ずれを確認して補正する方法や、パルス発生器を使用したストロボ画像を基に凹形態の位置ずれを補正する方法の他に、超音波、赤外線、X線等による検知の方法を使用することもできる。また、第2の絞形態の位置を目視で捉え、手動で成形加工機上の合成樹脂表皮材の配置状態を調整してもよい。
【0030】
上記した実施の形態は、合成樹脂表皮材を成形加工機にセットする場合を説明したが、本発明においては、合成樹脂表皮材を打ち抜き加工機上にセットする場合には、第2の絞形態の位置を検知し、その検知情報に基づいて打ち抜き加工機上の合成樹脂表皮材の配置状態を補正又は調整することができる。これによって、打ち抜き加工された合成樹脂表皮材面の絞模様が製品における所定の位置に配置されることになり、これらを縫製して得られる製品は全体において所望の絞模様となり、見栄えのよいものとなる。
【0031】
本発明において、絞プレス盤の絞形成用凹凸部には任意の材質が用いられる。シリコンゴム層の代わりに彫刻が容易で耐熱性が高く、離型性が高い材料を用いることもできる。このような材料としては、フッ素系ゴム等を用いることができる。また、ゴム層の代わりに金属層であってもよい。金属としては、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、真鍮等が挙げられる。これらの中でレーザーによる絞の微細な形態の再現性が良い点で特にシリコンゴムからなる絞板が望ましい。彫刻時間が長くなるのでコスト的には難点があるが、レーザーによる金属への彫刻の方が耐久性の点で優れているので金属絞板もシリコンゴム絞板に次いで望ましい。
【0032】
絞模様及び絞形態は、絞の凹凸パターンの形態、絞深さに基づいてコンピュータグラフィック上に予め計算されたデータに基づいたスポット径のレーザービームをゴム層又は金属層の表面に照射して表面が彫刻されたものが望ましい。
【0033】
レーザービームを照射する場合、ゴム層又は金属層の表面に長波長の第1のレーザービームを照射して、ゴム層又は金属層の表面に粗い表面構造を彫刻し、その後、第1のレーザービームよりも短波長で、第1のレーザービームよりも小さいスポット径の第2のレーザービームをゴム層又は金属層の表面に照射してゴム層又は金属層の表面に微細な表面構造を彫刻したものを用いることが望ましい。
【0034】
レーザービームによる彫刻以外に絞プレス盤を形成する方法としては、通常の絞形成方法であるミルロール方式、電鋳方式、原稿からの樹脂転写方式のいずれかの方法によるものであっても良い。
【0035】
本発明において、合成樹脂シートを構成する成分は、合成樹脂表皮材の用途に応じてオレフィン系樹脂、熱可塑性オレフィン(TPO)系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂等から任意に選定されるべきものであり、さらに絞付けされる合成樹脂シートの裏面には用途に応じてオレフィン系発泡体あるいはポリエステル系・テトロン系・レーヨン系等の生地が裏打ちされる。これらの用途として、自動車内装部品、鉄道車両・航空機内装部品、家具、建築物内外装、靴・履物・鞄、衣類表層材・裏地、壁装の表皮材等が挙げられる。自動車内装部品用の表皮材の場合、凸型真空成形によって平面部、曲面部等を有し、上記した展開率が異なる部位を有する表皮材張り込み部品等に有効である。このような表皮材が使用できる部位としては、インストルメントパネル、ドアトリムの他に、センターコンソール、センターコンソールリッド、フロントピラー、センターピラー、リヤピラー、グラブボックス、天井材、メーターフード等が挙げられる。
【0036】
自動車内装部品用の表皮材で真空成形しない縫製部品の場合は、座席用表皮のように座席形状と位置をきちんと合わせた絞外観を持つ表皮材を作るのに有効である。このような表皮材が使用できる部位としては、シートメイン、シートカマチ、シートバックの他に、ヘッドレスト、アームレスト、インストルメントパネル、メーターフード等が挙げられる。
【0037】
自動車内装部品等の表皮材の場合、凸型真空成形によって平面部、曲面部等を有する部品においては、凸型真空成形前の合成樹脂シートは、成型後の部位によって展開率が異なる。例えば、インストルメントパネルを凸型真空成形によって成形した場合、インストルメントパネルの各ゾーン、部位によって展開率が異なる。ここで展開率とは、テスト成形用シートにおける凸型真空成形前の合成樹脂シート面に示された1つのマス目(分割領域)の(X方向、Y方向、X×Y=面積)が凸型真空成形後どの程度拡大したかを示す指標である。
【0038】
このように成型後の部位によって展開率が異なると、成型前の合成樹脂シートに形成された絞模様および絞深さが凸型真空成形後の部位によって異なることになる。合成樹脂シートに対して各ブロック毎に任意の絞模様および絞深さを形成させることが望ましい。
【0039】
ここで各ブロック毎の任意の絞模様とは、例えば、各ブロック毎に上記した展開率の逆数から求められた収縮率を織り込んだ絞模様を有する絞プレス盤を作製し、次いで合成樹脂シート面に各ブロック毎に任意の絞模様を形成し、その後、凸型真空成形すると、成型後の各部位の絞模様がほぼ均一となる。
【0040】
一方、各ブロック毎の任意の絞深さとは、例えば、一様な絞深さの絞板を用いる場合は、各ブロック毎に上記した展開率に基づいて展開率の逆数を基準にして求められた絞深さを設定し、これらの絞深さとなるように各ブロックの加圧ユニットによるプレス圧、加熱温度、加熱時間及びストロークを調整して絞押し、その後、凸型真空成形すると、成型後の各部位の絞深さがほぼ均一となる。
あるいは、例えば、各ブロック毎に上記した展開率に基づいて展開率の逆数を基準にして求められた絞深さを設けた絞模様を有する絞プレス盤を作製し、次いでこの絞プレス盤を用いて合成樹脂シート面に各ブロック毎に任意の絞深さを形成し、その後、凸型真空成形すると、成型後の各部位の絞深さがほぼ均一となる。
【0041】
したがって、このような凸型真空成形によって成型される部品の場合、合成樹脂シートに対して各ブロック毎に展開率の逆数から求められた収縮率を織り込んだ絞パターンを形成し、かつ、展開率の逆数を基準にして求められた絞深さを形成すると、部品の各部位に所望の一様な絞パターンと絞深さ(絞パターンと絞深さを合わせて絞模様と呼ぶ)を持った極めて見栄えの良い製品を得ることができる。
【実施例】
【0042】
図1において、プレス盤18A(1000mm×2000mm)及び絞プレス盤18B(
1000mm×2000mm)を用い、熱ロール14を160℃、加熱ヒーター16A及び加熱ヒーター16Bを180℃に調整し、プレス盤18A及び絞プレス盤18Bは常温に設定した。
アキュームレーター12はシートを最大3m滞留される構造となっている。
押出成形機によって、厚さ1.5mmの長尺の値合成樹脂シート10(熱可塑性オレフィン(TPO)系樹脂)を加工速度:20m/分で押し出してアキュームレーター12,熱ロール14,加熱ヒーター16A,16B及びエンボス機18に供給した。
加熱ヒーター16A及び加熱ヒーター16Bでは熱可塑性オレフィン(TPO)系樹脂10を180℃に6秒加熱し、プレス盤18A及び絞プレス盤18Bにおるエンボス時間は、2秒であり、このエンボス工程中に絞プレス盤18Bの絞形成用凹凸部の1部からプリントインクを吐出させた。
上記の絞押工程と柄付け工程が終了した絞付合成樹脂シートは裁断刃20によって裁断された合成樹脂表皮材(950mm×1950mm)22を得た。
押出成形機による生産に同期して上記工程を繰り返してサイクルタイム:6秒で合成樹脂表皮(裁断シート22)を10枚/分の生産量で得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の好ましい一実施の形態を示す概略的構成図である。
【図2】図1におけるエンボス機の他の実施の形態を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0044】
10 合成樹脂シート
12 アキュームレーター
14 熱ロール
16A、16B 加熱ヒーター
18 エンボス機
20 裁断刃
22 裁断シート
30 プレス盤
32 絞プレス盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の合成樹脂シートをアキュームレータを介して連続的に供給する第1の工程と、供給された長尺の合成樹脂シートをプレス盤と該プレス盤に対応する絞プレス盤との間で挟圧して絞押する第2の工程と、絞押された長尺の合成樹脂シートを裁断する第3の工程と、を有することを特徴とする合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項2】
前記絞プレス盤の絞形成用凹凸部の少なくとも一部に設けられた孔からプリントインクを吐出させて挟圧による絞押中又は挟圧による絞押の直前後で合成樹脂シート面に彩色を施すことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項3】
第2の工程及び第3の工程において、前記プレス盤に絞押された合成樹脂シートを裁断すべき部位に裁断刃が設けられ、絞押工程と裁断工程を同時に行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項4】
第2の工程において、前記絞プレス盤に製品の絞模様を形成するための第11の絞模様と絞押された合成樹脂シートを成形加工機又は打ち抜き加工機にセットするための位置決め用の第2の絞形態が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。
【請求項5】
第2の工程において、前記絞プレス盤に形成された絞形成用凹凸部が、絞押された合成樹脂シートを凸型真空形成で成形する際の展開率の逆数に基づいて設定される凹凸パターン及び/又は絞深さで形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに1項に記載の合成樹脂表皮材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−274235(P2009−274235A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125117(P2008−125117)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(390023009)共和レザー株式会社 (17)
【Fターム(参考)】