説明

吊下げ式引戸用防火装置

【課題】引戸を閉じた際、引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間、特に引戸の戸尻側に形成される隙間を独自の可動式の遮蔽プレートで塞ぐことにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐ。
【解決手段】吊下げ式の引戸10の閉鎖状態において引戸10と出入口となる開口部Oとの間に形成される隙間Sを塞ぐ遮蔽プレート20を備える。遮蔽プレート20は、引戸10の高さに相当する高さと引戸10の厚さより大きい幅W2とを有し、幅方向の先端部に屈曲部22を有し断面L字状に形成され、屈曲部22と反対側の端部において開口部Oの戸尻側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられる。火災時に遮蔽プレート20が作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動し、閉鎖した引戸10の戸尻13と、開口部と反対側の戸尻の出隅部13aとが遮蔽プレート20によって覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐことのできる、吊下げ式引戸用防火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レール上を走行する吊車によりドアを支持して開閉するようにした引戸においては、引戸を閉じた際、引戸と引戸の戸尻側の間仕切り(壁部)との間に隙間が形成され、この隙間から炎、煙等が漏れて隣室へと侵入してしまうという問題があった。
特許文献1には、引き戸と間仕切りとの間の隙間を極力抑えて火が漏れないようにした防火戸の隙間防止構造として、「防火戸1の戸尻には戸尻部材2を取付けし、防火戸1の表面4との間に隙間6を残して重合片5を戸先側へ屈曲して延ばし、一方、間口に設けた三方枠の縦桟7には縦桟部材8を取付けし、縦桟部材8には縦桟7の表面10との間に隙間11を介在して重合片9を形成し、防火戸1を閉じた場合に、この重合片9は戸尻部材2の重合片5と平行して防火戸表面4との間に形成した隙間6に位置させる。」という構造が記載されている(要約)。
しかし、上記技術は、防火戸1の戸尻に戸尻部材2を直にネジ止めして取り付けるものであるため、火災の際、戸尻部材2を介して戸尻に直接熱が伝わり、この熱の伝導によって戸の反りを生じる。これを防ぐためには戸の骨組強度を強くする必要があり、そうすると戸の重量や費用が嵩むという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−99463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑み開発されたもので、吊下げ式引戸用防火装置に関し、引戸を閉じた際、引戸と出入口となる開口部(間仕切りや枠部によって形成される。)との間に形成される隙間、特に引戸の戸尻側に形成される隙間を独自の可動式の遮蔽プレートで塞ぐことにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐこと、引戸の戸尻部分への加熱を抑えること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、引戸の高さに相当する高さと引戸の厚さより大きい幅とを有し、幅方向の先端部に屈曲部を有し断面L字状に形成され、前記屈曲部と反対側の端部において前記開口部の戸尻側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の戸尻と、前記開口部と反対側の戸尻の出隅部とを前記遮蔽プレートによって覆うように構成した、吊下げ式引戸用防火装置である。
戸尻とは、引戸の戸当りと反対側に位置する端面(側面)をいい、戸先とは、引戸の戸当りの側の端面(側面)をいう。
また、出入口側とは、引戸を基準として、引戸の背面側、つまり出入口、開口部が形成される間仕切りの側をいい、引戸側とは、引戸を基準として引戸の正面側、あるいは間仕切り、開口部、枠から見て引戸の側をいう。
(2)前記遮蔽プレートを出入口側の所定位置に固定可能なロック機構と、該ロック機構による固定を火災時に解除する機構とを備え、
通常の使用時において前記ロック機構によって前記遮蔽プレートを所定位置に固定し得るとともに、火災時に前記ロック機構による固定が解除されることにより、前記遮蔽プレートが作動するように構成した。
(3)前記ロック機構は、前記遮蔽プレートに、該遮蔽プレートを引戸側に向けて回動させるバネ力が付勢されている状態で、前記遮蔽プレートを出入口側の所定位置に固定するものである。
(4)前記引戸は自閉装置を備え、
前記ロック機構を解除可能な機構を備え、
通常の使用時において前記ロック機構を解除することを選択することにより、引戸の開閉に追随して前記遮蔽プレートが回動するように構成され、かつ
前記遮蔽プレートの、閉鎖した引戸の戸尻を覆う面側に、引戸の開閉時に引戸の背面に当接可能なガイドローラーを備えた。
(5)吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、引戸の高さに相当する高さと引戸の厚さより大きい幅を有し、幅方向の先端部に屈曲部を有し断面L字状に形成され、前記屈曲部と反対側の端部において前記開口部の戸先側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の戸先と、前記開口部と反対側の戸先の出隅部とを前記遮蔽プレートによって覆うように構成した、吊下げ式引戸用防火装置である。
(6)吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、前記開口部を形成する縦枠の内面の端部に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して前記縦枠の内面に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に前記遮蔽プレートがほぼ当接するように構成した、吊下げ式引戸用防火装置である。
(7)吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、前記開口部を形成する横枠の内面の端部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して前記横枠の内面に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に前記遮蔽プレートがほぼ当接するように構成した、吊下げ式引戸用防火装置である。
(8)吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、前記開口部を形成する床部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して前記床部に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に前記遮蔽プレートがほぼ当接するように構成した、吊下げ式引戸用防火装置である。
【発明の効果】
【0006】
(1)少なくとも火災時に遮蔽プレートが作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間が塞がれるとともに、閉鎖した引戸の戸尻と、開口部と反対側の戸尻の出隅部とが遮蔽プレートによって覆われ、これにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐことができる。また、遮蔽プレートは、引戸に直に固定されないので、引戸の戸尻部分への加熱を抑えることができる。
(2)通常の使用時においてロック機構によって遮蔽プレートを所定位置に固定し得るとともに、火災時に該ロック機構による固定が解除されることにより、遮蔽プレートが作動するように構成したので、通常の使用時において引戸の開閉の都度、遮蔽プレートが動作することがなく、炎、煙、熱が隣室に侵入するのを遮蔽プレートによって防ぐ必要な火災時にのみ遮蔽プレートを作動させることができる。
(3)ロック機構は、遮蔽プレートに、遮蔽プレートを引戸側に向けて回動させるバネ力が付勢されている状態で、遮蔽プレートを出入口側の所定位置に固定するため、ロック機構の解除時の遮蔽プレートの動作を行わせる機構が簡単である。
(4)通常の使用時においてロック機構を解除することを選択することにより、引戸の開閉に追随して遮蔽プレートが回動するように構成されているため、火災時に限らず、通常時でも遮蔽プレートが作動するため、安心で確実である。
また、遮蔽プレートの、閉鎖した引戸の戸尻を覆う面側に、引戸の開閉時に引戸の背面に当接可能なガイドローラーを備えたので、遮蔽プレートの屈曲部が引戸の背面に接触するのが防止され、引戸が傷つくこともなく、スムースに引戸の開閉が行われる。
(5)少なくとも火災時に遮蔽プレートが作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間が塞がれるとともに、閉鎖した引戸の戸先と、開口部と反対側の戸先の出隅部とが遮蔽プレートによって覆われ、これにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐことができる。また、遮蔽プレートは、引戸に直に固定されないので、引戸の戸先部分への加熱を抑えることができる。
(6)少なくとも火災時に遮蔽プレートが作動して縦枠の内面に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に遮蔽プレートがほぼ当接するため、縦枠の内面と引戸の背面との隙間から炎、煙、熱が隣室に侵入するの防ぐことができる。
(7)少なくとも火災時に遮蔽プレートが作動して横枠に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に遮蔽プレートがほぼ当接するため、横枠の内面と引戸の背面との隙間から炎、煙、熱が隣室に侵入するの防ぐことができる。
(8)少なくとも火災時に遮蔽プレートが作動して床部に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に遮蔽プレートがほぼ当接するため、床部と引戸の背面との隙間から炎、煙、熱が隣室に侵入するの防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施例を挙げ、図面を参照して説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形、付加等が可能である。
【実施例】
【0008】
(全体概要)
図1は遮蔽プレートの非作動状態における出入口の正面図、図2は遮蔽プレートの作動状態における出入口の正面図、図3は遮蔽プレートの非作動状態における出入口の背面図、図4は遮蔽プレートの作動状態における出入口の背面図である。図1,3は、破線で示す引戸10が開放された状態を示し、図2,4は引戸10が閉鎖された状態を示している。作動状態の遮蔽プレートをわかり易くするため、ハッチングで示している。ガイドローラーは一部、図示省略している。
本実施例において、防火装置は、合計6箇所に設けられている。
各防火装置は、夫々の位置において、吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ可動式の遮蔽プレートを備えてなる。
図1,図2に示すように、戸尻側の防火装置1の遮蔽プレート20が、出入口となる開口部Oの戸尻側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられている。また、戸先側の防火装置2の遮蔽プレート40が、出入口となる開口部Oの戸先側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられている。
図3,図4に示すように、縦枠内面側の防火装置3,3の遮蔽プレート50,50が、開口部Oを形成する縦枠6,6の内面の端部に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられている。
また、横枠7の内面に位置する防火装置4の遮蔽プレート60が、開口部Oを形成する横枠7の内面の端部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられている。
また、床部に位置する防火装置5遮蔽プレート70が、開口部Oを形成する床部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられている。
出入口となる開口部Oは、通常、左右の縦枠6,6と上部の横枠7からなる三方枠と床部とで形成される。縦枠6,6と横枠7の内部には、引戸10の背面と接触して気密性を保持するためのガスケット8が設けられている(図5、図10参照)。
このガスケット8は、気密性を保持するに適したゴム製、合成樹脂製のものが使用される。望ましくは、耐熱性に優れるシリコーンゴム、フッ素ゴム等の素材からなり、断面ロ字状をなすとともに、その一辺部に断面T字状に突出する係止部を有し、該係止部と対向する辺部にはその角部から斜めに突出するヒレ部を有し、このヒレ部が枠に設けた透孔から突出し、引戸10の背面と当接して気密性を保持する。
【0009】
(引戸)
符号10は引戸(本体)を示す。引戸10は、図1,2,10に示すように、レール11に係合する吊車12を介して吊り下げられた吊下げ式である。符号13は開閉を行う際に掴む引き棒(取っ手)である。
引戸10は、防火戸、すなわち建築物の火災時の延焼を防ぐために設置される難燃性の戸であって、建築基準法に規定された防火設備又は特定防火設備の基準を満たすものが好適に用いられる。
引戸10の吊下げ構造は、各種吊下げ構造を適用することができ、特に限定されない。
また、引戸は、その自重で自動的に閉まる自閉装置を備えたものとして構成することができる。
【0010】
<戸尻側の防火装置>
図5は出入口部を模式的に示す平断面図で、戸尻側の防火装置1、戸先側の防火装置2及び縦枠内面側の防火装置3,3が示されている。同図は引戸10の閉鎖状態における平面図である。ハッチングは省略している。
図5において、(a)は、遮蔽プレート20,40,50がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、(b)は、ロック機構30による遮蔽プレート20,40,50の所定位置における固定が解除された状態を示す。
図6〜8はロック機構30の説明図、図9は引戸の開閉と関連した動作を説明する平断面図である。
【0011】
(遮蔽プレート)
遮蔽プレート20は、引戸10の高さに相当する高さH(図1参照)と引戸10の厚さW1より大きい幅W2(図5参照)を有する基板部21と、該基板部21の幅方向の先端部にほぼ直角に曲げられた屈曲部22を有し、断面L字状に形成されている。遮蔽プレート20は、金属板その他の難燃性材料からなる。
図5に示すように、遮蔽プレート20は、屈曲部22と反対側の端部において、開口部Oの戸尻側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられている。図示の例では、遮蔽プレート20は、基板部21と対をなす固定板24と組み合わされて回動部(軸心)23を備えたヒンジを形成しており、回動部23は縦枠6の外側面側に位置し、この外側面と間仕切り9(壁部)とで形成される入隅部近傍に位置する態様で、固定板24が間仕切り9に固定されている。
また、遮蔽プレート20の、基板部21における屈曲部22が起立する側(閉鎖した引戸の戸尻を覆う面側)の面には、遮蔽プレート20の長手方向の適宜箇所(単数でも複数箇所でもよい。通常、数箇所程度。)には、引戸の開閉時に引戸の背面に当接可能なガイドローラー25が回転可能に設けられている。ガイドローラー25は、耐摩耗性を有する適宜材料によって構成される。ガイドローラー25の支持構造は、図示要略するが、特に限定されない。
【0012】
(ロック機構)
遮蔽プレート20は、出入口側の所定位置にロック機構30によって、固定し得るようになっている。出入口側の所定位置は、引戸10の開閉に際し、引戸10に対して遮蔽プレート20が離隔して接触せず、干渉しない位置であり、この実施例では、遮蔽プレート20(基板部21)が間仕切り9と引戸10の背面までのクリアランスT1内にあって、基板部21は間仕切り9又は引戸10とほぼ平行になる状態としている。
ロック機構30としては、機械的手段や電磁石を用いた電気的手段等、種々の構造のものが適用可能であるが、この実施例では、機械的手段を用いている。
図6は、ロック機構30による遮蔽プレート20の固定状態を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。図7は、ロック機構30による遮蔽プレート20の固定が解除された状態を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
すなわち、図6、図7に示すように、遮蔽プレート20の基板部21の裏面(屈曲部22が起立する方向と反対側)に鉤状の係止部21aが突出形成されており、一方、ロック機構30の内部には、該ロック機構30内に挿入される係止部21aに係脱可能なロックバー31が設けられている。このロックバー31が係止部21aに係止することによって、遮蔽プレート20は所定位置に固定される。
【0013】
(解除機構)
また、上記ロック機構30による遮蔽プレート20の所定位置における固定は、火災時に、図示しないセンサー(熱センサー、煙センサー等)や温度ヒューズ等と連動して解除されるようになっている。
この解除機構は、ソレノイド等のアクチュエータを用いて構成することができる。例えば、上記のロック機構30のロックバー31は、センサーや温度ヒューズと連動するソレノイドによって作動し、係止部21aとの係止を解く。
また、火災時における上記解除機構とは別に、センサー等との連動によらず、通常時において、任意にロック機構30を解除可能な機構(ロック機構を働かせない選択手段)を備える。
【0014】
(遮蔽プレートの作動)
上記のロック機構及び解除機構によって、通常の使用時においてロック機構30によって遮蔽プレート20を所定位置に固定し得るとともに、火災時には、ロック機構30による固定が解除され、遮蔽プレート20が作動する。
遮蔽プレート20の作動は、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動する動きである。この回動により、図5(b)に示すように、引戸10の閉鎖状態において、引戸10と出入口となる開口部Oとの間に形成される隙間Sが遮蔽プレート20によって塞がれるとともに、閉鎖した引戸の戸尻13と、開口部と反対側(引戸10の正面側)の戸尻の出隅部(角部)13aとが遮蔽プレート20によって覆われる。
遮蔽プレート20の作動は、駆動モータ等の駆動手段を用いた構成を採用することも可能であるが、本実施例では、遮蔽プレート20に、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動させるバネ力が付勢されている。そして、この状態で、ロック機構30に遮蔽プレート20が出入口側の所定位置に固定されている。したがって、ロック機構30による固定が解除されると、遮蔽プレート20はそのバネ力によって出入口側の所定位置から引戸10側に向けて自動的に回動する。なお、遮蔽プレート20に対するバネによる付勢手段の図示は省略するが、その構造は限定されない。
【0015】
(実施例の遮蔽プレートの動作説明)
図6は、ロック機構30による遮蔽プレート20の固定状態を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。図7は、ロック機構30による遮蔽プレート20の固定が解除された状態を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図6は、通常時において、遮蔽プレート20がロック機構30によって所定位置に固定された状態である。図7は、火災時などにロック機構30による遮蔽プレート20の所定位置における固定が解除された状態である。
前記のとおり、遮蔽プレート20の基板部21の裏面には、鉤状の係止部21aが突出形成されている。符号21bは係止部21aを基板部21に固定するための補助片である。図6に示す通常時では、ロック機構30の内部に設けられたロックバー31に、係止部21aが係止されている。そして、遮蔽プレート20には、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動させるバネ力が付勢されている。
火災時には、ロック機構30のロックバー31は、センサーや温度ヒューズと連動して回動し(図6(a)に矢印で図示)、これによって図7に示すとおり、ロックバー31と係止部21aとの係止が解かれる(通常時において、ロック機構30による固定の解除を選択した場合も同様である。)。そうすると、遮蔽プレート20には、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動させるバネ力が付勢されているので、遮蔽プレート20はそのバネ力によって出入口側の所定位置から引戸10側に向けて自動的に回動し(図6(b)に矢印で図示)、これによって図7に示すとおり、元の所定位置から約90°回動する。
さらに、図6(a)に示すロック機構30による遮蔽プレート20の固定状態(初期状態)に戻すには、図8(a)に示すように、ロックバー30をセンサーや温度ヒューズと連動させて元の位置に復帰させるとともに、遮蔽プレート20を手動によって図8(b)の矢印に示すように回動させて所定の位置に戻し、係止部21aをロックバー30に係止すればよい。
【0016】
(引戸の開閉との関連における動作説明)
図5は、引戸10の閉鎖状態における平面図であり、(a)は遮蔽プレート20がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、(b)は、ロック機構30による遮蔽プレート20の所定位置における固定が解除された状態を示す。
図5(a)の状態から、遮蔽プレート20が作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて90°回動して戸尻13に当接することにより、図5(b)の状態へとなり、引戸10の閉鎖状態において、引戸10と出入口となる開口部O(縦枠6)との間に形成される隙間Sが塞がれるとともに、閉鎖した引戸10の戸尻13と、開口部と反対側の戸尻13の出隅部13aとが遮蔽プレート20によって覆われ、これにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぎ、また引戸10の戸尻部分13への加熱を抑えることができる。
なお、戸尻13には、ガイドローラー25が遊嵌する凹部14が形成されており、遮蔽プレート20が閉鎖した引戸10の戸尻13を覆う際の支障はない。
【0017】
図9は、引戸10の開放状態における平面図であり、(a)は遮蔽プレート20がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、(b)は、ロック機構30による遮蔽プレート20の所定位置における固定が解除された状態を示す。
図9(a)の状態から、遮蔽プレート20が作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動することにより、図9(b)の状態へとなる。このとき、遮蔽プレート20は、引戸10の背面に当たることになるが、遮蔽プレート20の、閉鎖した引戸10の戸尻13を覆う面側に、引戸の開閉時に引戸の背面に当接可能なガイドローラー25を備えているので、遮蔽プレート20の屈曲部22が引戸10の背面に接触するのが防止され、引戸が動く際に傷つくこともなく、スムースに引戸10の開閉が行われる。そして図9(b)に示す状態から、引戸10が閉じられると、遮蔽プレート20はさらに引戸側に向けて回動し、図5(b)に示す状態となる。
なお、上記引戸の閉鎖状態及び開放状態における、遮蔽プレート20の所定位置における固定が解除された状態は、火災時にロック機構30による固定が解除される場合と、通常の使用時において任意にロック機構30を解除している場合との二通りがある。
火災時にロック機構30による固定が解除されることにより、遮蔽プレート20が作動するようにすれば、通常の使用時において引戸10の開閉の都度、遮蔽プレート20が動作することはなく、必要最小限の動作が保障される。また、通常の使用時においてロック機構を解除することを選択すれば、引戸の開閉に追随して遮蔽プレートが回動するため、火災時に限らず、通常時でも遮蔽プレートが作動するため、安心で確実である。
【0018】
<戸先側の防火装置>
戸先側の防火装置2は、出入口となる開口部Oの戸先側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられており、その構造は、戸尻側の防火装置1と基本的と共通する部分が多い。
(遮蔽プレート)
遮蔽プレート40の形状、構造、動作、材質等、基本的に、戸尻側の防火装置1の遮蔽プレート20と共通している。したがって、重複する説明は適宜省略する。
図5に示すとおり、遮蔽プレート40は、出入口において、遮蔽プレート20とほぼ左右対称な位置に設けられている。主な相違点は、ガイドローラーを備えていない点である。
遮蔽プレート40は、引戸10の高さに相当する高さH(図1参照)と引戸10の厚さW1より大きい幅W3(図5参照)を有する基板部41と、該基板部41の幅方向の先端部にほぼ直角に曲げられた屈曲部42を有し、断面L字状に形成されている。
遮蔽プレート40は、屈曲部42と反対側の端部において、開口部Oの戸尻側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられている。図示の例では、遮蔽プレート40は、基板部41と対をなす固定板44と組み合わされて回動部(軸心)43を備えたヒンジを形成しており、回動部43は縦枠6の外側面側に位置し、この外側面と間仕切り9(壁部)とで形成される入隅部近傍に位置する態様で、固定板44が間仕切り9に固定されている。
【0019】
(ロック機構・解除機構)
ロック機構30及びその解除機構は、戸尻側の防火装置1と特に変わるところはないので、その説明を省略する。遮蔽プレート40の係止部41aは、遮蔽プレート20の係止部21aに相当する。
また、戸尻側の防火装置1と同様、遮蔽プレート40には、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動させるバネ力が付勢されている。この出入口側の所定位置は、遮蔽プレート40の基板部41が間仕切り9にほぼ平行に沿う状態としている。そして、この所定位置にロック機構30によって、固定し得るようになっている。したがって、ロック機構30による固定が解除されると、遮蔽プレート40はそのバネ力によって出入口側の所定位置から引戸10側に向けて自動的に回動する。
【0020】
(動作説明)
図5は、引戸10の閉鎖状態における平面図であり、(a)は遮蔽プレート40がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、(b)は、ロック機構30による遮蔽プレート40の所定位置における固定が解除された状態を示す。
図5(a)の状態から、遮蔽プレート40が作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて90°回動して戸先15に当接することにより、図5(b)の状態へとなり、引戸10の閉鎖状態において、引戸10と出入口となる開口部O(縦枠6)との間に形成される隙間S2が塞がれるとともに、閉鎖した引戸10の戸先15と、開口部と反対側の戸先15の出隅部15aとが遮蔽プレート20によって覆われ、これにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぎ、引戸10の戸先部分15への加熱を抑えることができる。
上記の動作は、引戸10の開放状態においても同様である。この場合、縦枠6の外側面が遮蔽プレート40の回動時のストッパーとなる。
なお、遮蔽プレート20の所定位置における固定が解除された状態は、火災時にロック機構30による固定が解除される場合と、通常の使用時において任意にロック機構30を解除している場合との二通りがある点は、戸尻側の防火装置1と同様である。
【0021】
<縦枠内面側の防火装置>
縦枠内面側の防火装置3,3は、開口部Oを形成する縦枠6,6の内面の端部に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられている。その構造は、戸先側の防火装置1及び戸尻側の防火装置2と基本的に共通する部分が多い。図示の例では、左右両側すなわち戸先側及び戸尻側の両側に設けられているが、必要に応じて片側のみに設けることもできる。
(遮蔽プレート)
遮蔽プレート50の構造、動作、材質等、基本的に、既に述べた戸尻側の防火装置1の遮蔽プレート20と共通しており、重複する説明は適宜省略する。
図5に示すとおり、遮蔽プレート50は、引戸10の高さにほぼ相当する高さ(図4参照)を有する平板状の基板部51により形成されており、戸尻側の防火装置1における遮蔽プレート20のような屈曲部22がない点で相違する。基板部51の幅は通常4〜7cm程度である。ガイドローラー55を備えている点は、戸尻側の防火装置1と同様である。
遮蔽プレート50は、開口部Oを形成する縦枠6の内面の端部に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられている。図示の例では、遮蔽プレート50は、基板部51と対をなす固定板54と組み合わされて回動部(軸心)53を備えたヒンジを形成しており、回動部53は縦枠6の内側面に位置し、この内側面と引戸10とで形成される入隅部近傍に位置する態様で、固定板54が縦枠6に固定されている。
【0022】
(ロック機構・解除機構)
ロック機構30及びその解除機構は、戸尻側の防火装置1と特に変わるところはないので、その説明を省略する。遮蔽プレート50の係止部51aは、遮蔽プレート20の係止部21aに相当する。
また、戸尻側の防火装置1と同様、遮蔽プレート50には、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動させるバネ力が付勢されている。この出入口側の所定位置は、遮蔽プレート50(基板部51)が縦枠6の内面に沿った位置であり、この実施例では、縦枠6の内面端部には凹部が形成されており、この凹部において、遮蔽プレート50が内面に沿った位置に納まり、出っ張ることがないようにしている。そして、この所定位置にロック機構30によって、固定し得るようになっている。したがって、ロック機構30による固定が解除されると、遮蔽プレート50はそのバネ力によって出入口側の所定位置から引戸10側に向けて自動的に回動する。
【0023】
(動作説明)
図5は、引戸10の閉鎖状態における平面図であり、(a)は遮蔽プレート50がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、(b)は、ロック機構30による遮蔽プレート50の所定位置における固定が解除された状態を示す。
図5(a)の状態から、遮蔽プレート50が作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて90°回動して引戸10の背面に当接することにより、図5(b)の状態へとなり、引戸10の閉鎖状態において、引戸10と出入口となる開口部Oとの間に形成される隙間S3が塞がれ、これにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐことができる。
上記の動作は、引戸10の開放状態においても同様である。この場合、戸先側に位置する縦枠内面側の防火装置3の遮蔽プレート50について、その回動角度を約90°に規制するストッパーを設けるとよい。
なお、遮蔽プレート50の所定位置における固定が解除された状態は、火災時にロック機構30による固定が解除される場合と、通常の使用時において任意にロック機構30を解除している場合との二通りがある点、戸尻側の防火装置1と同様である。ただし、通常の使用時において、遮蔽プレート50の固定が解除されている状態であると、邪魔になり易いので、通常の使用時において、ロック機構30によって遮蔽プレート50を所定位置に固定しておくとともに、火災時にロック機構30による固定が解除されることにより、遮蔽プレート50が作動するのを選択するのが望ましい。
【0024】
<横枠の内面に位置する防火装置>
横枠7の内面に位置する防火装置4は、開口部Oを形成する横枠7の内面の端部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられている。その構造は、縦枠内面側の防火装置3と共通する部分が多い。横枠7の内面に位置する防火装置4の遮蔽プレート60は、縦枠内面側の防火装置3と異なり、水平方向を軸心として回動可能に設けられている点が大きく相違する。
(遮蔽プレート)
遮蔽プレート60の構造、動作、材質等、基本的に、既に述べた縦枠6の内面に位置する防火装置3の遮蔽プレート50と共通しており、重複する説明は適宜省略する。
遮蔽プレート50は、開口部Oの幅に相当する横方向の長さ(図4参照)を有する平板状の基板部61により形成されており、図10に示すとおり、戸尻側の防火装置1における遮蔽プレート20のような先端部の屈曲部22はない。基板部61の幅は通常4〜7cm程度である。ガイドローラー65を備えている点は、戸尻側の防火装置1と同様である。ただし、ガイドローラー65の回転軸は、遮蔽プレート60の幅方向となる。
遮蔽プレート60は、開口部Oを形成する横枠7の内面の端部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられている。図示の例では、遮蔽プレート60は、基板部61と対をなす固定板64と組み合わされて回動部(軸心)63を備えたヒンジを形成しており、回動部63は横枠7の内側面に位置し、この内側面と引戸10とで形成される入隅部近傍に位置する態様で、固定板64が横枠6に固定されている。
【0025】
(ロック機構・解除機構)
ロック機構30及びその解除機構は、戸尻側の防火装置1と特に変わるところはないので、その説明を省略する。遮蔽プレート60の係止部61aは、遮蔽プレート20の係止部21aに相当する。
また、戸尻側の防火装置1と同様、遮蔽プレート60には、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動させるバネ力が付勢されている。この出入口側の所定位置は、遮蔽プレート60(基板部61)が横枠7の内面に沿った位置であり、この実施例では、横枠7の内面端部には凹部が形成されており、この凹部において、遮蔽プレート60が内面に沿った位置に納まり、出っ張ることがないようにしている。そして、この所定位置にロック機構30によって、固定し得るようになっている。したがって、ロック機構30による固定が解除されると、遮蔽プレート60はそのバネ力によって出入口側の所定位置から引戸10側に向けて自動的に回動する。
【0026】
(動作説明)
図10は、引戸10の閉鎖状態における側面(断面)図であり、遮蔽プレート60がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、図11は、引戸10の閉鎖状態における側面(断面)図であり、ロック機構30による遮蔽プレート60の所定位置における固定が解除された状態を示す。
図10の状態から、遮蔽プレート60が作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて90°回動して引戸10の背面に当接することにより、図11の状態へとなり、引戸10の閉鎖状態において、引戸10と出入口となる開口部Oとの間に形成される隙間S4が塞がれ、これにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐことができる。
上記の動作は、引戸10の開放状態においても同様である。この場合、遮蔽プレート60について、その回動角度を約90°に規制するストッパーを設けるとよい。
なお、遮蔽プレート60の所定位置における固定が解除された状態は、火災時にロック機構30による固定が解除される場合と、通常の使用時において任意にロック機構30を解除している場合との二通りがある点、戸尻側の防火装置1と同様である。ただし、通常の使用時において、遮蔽プレート60の固定が解除されている状態であると、邪魔になり易いので、通常の使用時において、ロック機構30によって遮蔽プレート60を所定位置に固定しておくとともに、火災時にロック機構30による固定が解除されることにより、遮蔽プレート60が作動するのを選択するのが望ましい。
【0027】
<床部に位置する防火装置>
床部に位置する防火装置5は、開口部Oを形成する床部(引戸10の背面側)に、水平方向を軸心として回動可能に設けられている。その構造は、横枠内面に位置する防火装置4と共通する部分が多い。横枠内面に位置する防火装置4を上下方向に反転させ、ほぼ上下対称に位置している点が大きく相違する。
(遮蔽プレート)
床部に位置する防火装置5の遮蔽プレート70の構造、動作、材質等、基本的に、前記横枠7の内面に位置する防火装置4の遮蔽プレート60と共通しており、重複する説明は適宜省略する。
遮蔽プレート70は、開口部Oの幅に相当する横方向の長さ(図4参照)を有する平板状の基板部71により形成されており、図10に示すとおり、戸尻側の防火装置1における遮蔽プレート20のような先端部の屈曲部22はない。基板部71の幅は通常4〜7cm程度である。ガイドローラー75を備えている点は、戸尻側の防火装置1と同様である。ただし、ガイドローラー75の回転軸は、遮蔽プレート70の幅方向となる。
遮蔽プレート70は、開口部Oを形成する床部(引戸10の背面側)に、水平方向を軸心として回動可能に設けられている。図示の例では、遮蔽プレート70は、基板部71と対をなす固定板74と組み合わされて回動部(軸心)73を備えたヒンジを形成しており、回動部73は床部に形成された凹部に位置し、この凹部と引戸10とで形成される入隅部近傍に位置する態様で、固定板74が床部に形成された凹部に固定されている。
【0028】
(ロック機構・解除機構)
ロック機構30及びその解除機構は、戸尻側の防火装置1と特に変わるところはないので、その説明を省略する。遮蔽プレート70の係止部71aは、遮蔽プレート20の係止部21aに相当する。
また、戸尻側の防火装置1と同様、遮蔽プレート70には、出入口側の所定位置から引戸10側に向けて回動させるバネ力が付勢されている。この出入口側の所定位置は、遮蔽プレート70(基板部71)が床部に沿った位置であり、この実施例では、床部に凹部が形成されており、この凹部において、遮蔽プレート70がこの凹部に沿った位置に納まり、出っ張ることがないようにしている。そして、この所定位置にロック機構30によって、固定し得るようになっている。したがって、ロック機構30による固定が解除されると、遮蔽プレート70はそのバネ力によって出入口側の所定位置から引戸10側に向けて自動的に回動する。
【0029】
(動作説明)
図10は、引戸10の閉鎖状態における側面(断面)図であり、遮蔽プレート70がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、図11は、引戸10の閉鎖状態における側面(断面)図であり、ロック機構30による遮蔽プレート70の所定位置における固定が解除された状態を示す。
図10の状態から、遮蔽プレート70が作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて90°回動して引戸10の背面に当接することにより、図11の状態へとなり、引戸10の閉鎖状態において、引戸10と出入口となる開口部Oとの間に形成される隙間S5が塞がれ、これにより、火災時に炎、煙、熱が隣室に侵入するのを効果的に防ぐことができる。
上記の動作は、引戸10の開放状態においても同様である。この場合、遮蔽プレート70について、その回動角度を約90°に規制するストッパーを設けるとよい。
なお、遮蔽プレート70の所定位置における固定が解除された状態は、火災時にロック機構30による固定が解除される場合と、通常の使用時において任意にロック機構30を解除している場合との二通りがある点も同様である。ただし、通常の使用時において、遮蔽プレート70の固定が解除されている状態であると、邪魔になり易いので、通常の使用時において、ロック機構30によって遮蔽プレート70を所定位置に固定しておくとともに、火災時にロック機構30による固定が解除されることにより、遮蔽プレート70が作動するのを選択するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】遮蔽プレートの非作動状態における出入口の正面図である。
【図2】遮蔽プレートの作動状態における出入口の正面図である。
【図3】遮蔽プレートの非作動状態における出入口の背面図である。
【図4】遮蔽プレートの作動状態における出入口の背面図である。
【図5】出入口部を模式的に示す平断面図で、(a)は、遮蔽プレート20,40,50がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、(b)は、ロック機構30による遮蔽プレート20,40,50の所定位置における固定が解除された状態を示す。
【図6】ロック機構30による遮蔽プレート20の固定状態を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図7】ロック機構30による遮蔽プレート20の固定が解除された状態を示す説明図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図8】ロック機構30の説明図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図9】引戸10の開放状態における平面図であり、(a)は遮蔽プレート20がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示し、(b)はロック機構30による遮蔽プレート20の所定位置における固定が解除された状態を示す。
【図10】引戸10の閉鎖状態における側面(断面)図であり、遮蔽プレート60,70がロック機構30によって所定位置に固定された状態を示す。
【図11】引戸10の閉鎖状態における側面(断面)図であり、ロック機構30による遮蔽プレート60,70の所定位置における固定が解除された状態を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 (戸尻側の)防火装置
2 (戸先側の)防火装置
3 (縦枠内面側の)防火装置
4 (横枠の内面に位置する)防火装置
5 (床部に位置する)防火装置
6 縦枠
7 横枠
9 間仕切り
10 引戸
13 戸尻
13a 開口部と反対側の戸尻の出隅部
15 戸先
20,40,50,60,70 遮蔽プレート
21,41,51,61,71 基板部
22,42 屈曲部
25,45,55,65,75 ガイドローラー
30 ロック機構
O 開口部
S,S2,S3,S4,S5 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、引戸の高さに相当する高さと引戸の厚さより大きい幅とを有し、幅方向の先端部に屈曲部を有し断面L字状に形成され、前記屈曲部と反対側の端部において前記開口部の戸尻側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の戸尻と、前記開口部と反対側の戸尻の出隅部とを前記遮蔽プレートによって覆うように構成した、吊下げ式引戸用防火装置。
【請求項2】
前記遮蔽プレートを出入口側の所定位置に固定可能なロック機構と、該ロック機構による固定を火災時に解除する機構とを備え、
通常の使用時において前記ロック機構によって前記遮蔽プレートを所定位置に固定し得るとともに、火災時に前記ロック機構による固定が解除されることにより、前記遮蔽プレートが作動するように構成した、請求項1に記載の吊下げ式引戸用防火装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記遮蔽プレートに、該遮蔽プレートを引戸側に向けて回動させるバネ力が付勢されている状態で、前記遮蔽プレートを出入口側の所定位置に固定するものである、請求項2に記載の吊下げ式引戸用防火装置。
【請求項4】
前記引戸は自閉装置を備え、
前記ロック機構による固定を解除可能な機構を備え、
通常の使用時において前記ロック機構を解除することを選択することにより、引戸の開閉に追随して前記遮蔽プレートが回動するように構成され、かつ
前記遮蔽プレートの、閉鎖した引戸の戸尻を覆う面側に、引戸の開閉時に引戸の背面に当接可能なガイドローラーを備えた、請求項3に記載の吊下げ式引戸用防火装置。
【請求項5】
吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、引戸の高さに相当する高さと引戸の厚さより大きい幅を有し、幅方向の先端部に屈曲部を有し断面L字状に形成され、前記屈曲部と反対側の端部において前記開口部の戸先側の縦辺位置に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して出入口側の所定位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の戸先と、前記開口部と反対側の戸先の出隅部とを前記遮蔽プレートによって覆うように構成した、吊下げ式引戸用防火装置。
【請求項6】
吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、前記開口部を形成する縦枠の内面の端部に、鉛直方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して前記縦枠の内面に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に前記遮蔽プレートがほぼ当接するように構成した、吊下げ式引戸用防火装置。
【請求項7】
吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、前記開口部を形成する横枠の内面の端部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して前記横枠の内面に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に前記遮蔽プレートがほぼ当接するように構成した、吊下げ式引戸用防火装置。
【請求項8】
吊下げ式の引戸の閉鎖状態において引戸と出入口となる開口部との間に形成される隙間を塞ぐ遮蔽プレートを備えてなり、
前記遮蔽プレートは、前記開口部を形成する床部に、水平方向を軸心として回動可能に設けられており、
少なくとも火災時に前記遮蔽プレートが作動して前記床部に沿った位置から引戸側に向けて回動することにより、引戸の閉鎖状態において、閉鎖した引戸の背面に前記遮蔽プレートがほぼ当接するように構成した、吊下げ式引戸用防火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−68946(P2010−68946A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238497(P2008−238497)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(591029921)フジモリ産業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】