説明

吊枠及び重量構造物の沈設装置並びに沈設工法

【課題】大型構造物を、大水深の海域に正確かつ効率的に沈設させることにある。
【解決手段】吊枠18に重量構造物14を吊り込み、GPS52によって少なくとも起重機船のクレーン16のブームトップの位置を把握して、クレーン16のブームトップの位置を重量構造物14の設置目標地点に移動させて、重量構造物14の沈降を開始する。トランスポンダー受信器48によって、トランスポンダー発信器26の信号を受信し、吊枠18に吊り込まれた重量構造物14の位置を、沈設作業中、常時把握する。そして、重量構造部14の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、超音波作動式切離装置22の操作部50によって、吊枠18の超音波作動式切離装置22のリリースフック22aを開放することで、重量構造物14に玉掛けされたワイヤロープ24を解いて吊枠18から開放し、重量構造物14を海底GLに沈設させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量構造物の沈設のための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工漁礁を構成するための構造物等の沈設作業は、従来、起重機船のクレーンのワイヤロープに、いわゆるオートリリースフックを取付けて構造物を吊り込み、構造物を着底させることによりワイヤロープの荷重を抜き、オートリリースフックを自動開放して構造物の沈設を行う手法が広く用いられている。又、構造物を設置目標地点へと正確に沈降させるべく、起重機船の位置をGPSで確認する試みがなれている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−189042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の構造物の沈設工法は、比較的水深の浅い海域に構造物を設置する場合には適したものであるが、大水深の海域により大型の構造物を沈設する際には、起重機船から海底までの距離も遠く、かつ、海象、気象の影響もより大きく受けることから、設置目標地点の許容範囲内への沈設が困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大型構造物を、大水深の海域に正確かつ効率的に沈設させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)起重機船のクレーンにより重量構造物を吊り下げる際に用いられる吊枠であって、複数のシャックルと、先端部にリリースフックを備え基端部が前記シャックルの一つに吊り下げられる超音波作動式切離装置と、別のシャックルに一端が吊り下げられ他端部が前記超音波作動式切離装置のリリースフックに連結される玉掛け用ワイヤロープと、トランスポンダー発信器とを備える吊枠(請求項1)。
本項に記載の吊枠は、起重機船を用いて重量構造物を沈設する際に用いられるものであり、トランスポンダー発信器の信号によって当該吊枠に吊り込まれた重量構造物の位置を、沈設作業中、常時把握するものである。そして、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、超音波作動式切離装置のリリースフックを開放することで、重量構造物に玉掛けされたワイヤロープを解いて吊枠から開放し、重量構造物を海底に沈設させるものである。
【0007】
(2)上記(1)項において、前記超音波作動式切離装置及び前記玉掛け用ワイヤロープを少なくとも四組備える吊枠。
本項に記載の吊枠は、少なくとも四組のワイヤロープを重量構造物に玉掛けすることにより、ワイヤロープ一本あたりの長さを短くして、重量構造物を安定して吊り込むと共に、ワイヤロープの開放時にワイヤロープの吊筋への引っ掛かりの発生を防止するものである。そして、ワイヤロープの開放時には、各超音波作動式切離装置のリリースフックを順番に開放して、重量構造物に玉掛けされたワイヤロープを一本づつ解いて吊枠から順次開放し、重量構造物を海底に沈降させるものである。
【0008】
(3)上記(1)、(2)項記載の吊枠と共に、起重機船に設置される、トランスポンダー受信器と、前記超音波作動式切離装置の操作部と、少なくとも起重機船のクレーンブームトップに設置されるGPSとを含む重量構造物の沈設装置(請求項2)。
本項に記載の重量構造物の沈設装置は、起重機船を用いて重量構造物を沈設する際に用いられるものであり、請求項1記載の吊枠に重量構造物を吊り込み、GPSによって少なくとも起重機船のクレーンブームトップの位置を把握して、クレーンブームトップの位置を重量構造物の設置目標地点上に移動させて重量構造物の沈降を開始する。そして、トランスポンダー受信器によって、トランスポンダー発信器の信号を受信し、吊枠に吊り込まれた重量構造物の位置を、沈設作業中、常時把握するものである。そして、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、超音波作動式切離装置の操作部によって、吊枠の超音波作動式切離装置のリリースフックを開放することで、重量構造物に玉掛けされたワイヤロープを解いて吊枠から開放し、重量構造物を海底に沈設させるものである。
【0009】
(4)上記(3)項記載の重量構造部の沈設装置を用いた沈設工法であって、前記GPSを用いて起重機船を沈降目標位置近傍に位置決めし、前記吊枠に重量構造物を吊り込み、前記クレーンブームトップの位置を重量構造物の設置目標地点上に移動させて重量構造物の沈降を開始し、沈設完了までの間、前記トランスポンダー受信器によって前記トランスポンダー発信器の位置を把握し、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放する重量構造物の沈設工法(請求項3)。
本項に記載の重量構造物の沈設工法は、GPSを用いて起重機船を沈降目標位置近傍に位置決めし、吊枠に重量構造物を安定的に吊り込み、GPSによって少なくとも起重機船のクレーンブームトップの位置を把握して、クレーンブームトップの位置を重量構造物の設置目標地点上に移動させて重量構造物の沈降を開始する。そして、トランスポンダー受信器によって、トランスポンダー発信器の信号を受信し、吊枠に吊り込まれた重量構造物の位置を、沈設作業中、常時把握する。そして、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、超音波作動式切離装置の操作部によって、吊枠の超音波作動式切離装置のリリースフックを開放することで、重量構造物に玉掛けされたワイヤロープを解いて吊枠から開放し、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量構造物を沈設するものである。
【0010】
(5)上記(4)項記載の重量構造部の沈設工法であって、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、一旦重量構造物を水底から離間させ、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放する重量構造物の沈設工法(請求項4)。
本項に記載の重量構造物の沈設工法は、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、一旦重量構造物を水底から離間させるよう吊上げることで、玉掛け用ワイヤロープに荷重が掛かり、タルミのない状態とする。この状態で、超音波式切離し装置のリリースフックを開放することで、玉掛け用ワイヤロープのリリースを確実に行い、海底の設置目標地点の許容範囲内に重量構造物を沈設するものである。なお、一旦重量構造物を水底から離間させる際の離間高さは、当然に、重量構造物が着底時に損傷しない程度の高さとする。
【0011】
(6)上記(3)、(4)項において、前記重量構造部の着底が確認された時点で、着底位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には、重量構造物を必要な位置まで引き上げて前記クレーンブームトップの位置を修正し、再度、重量構造物の沈降を開始する重量構造物の沈設工法(請求項5)。
本項に記載の重量構造物の沈設工法は、重量構造部の着底が確認された時点で、着底位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には、重量構造物を必要な位置まで引き上げてクレーンブームトップの位置を修正することにより、吊枠に吊り込まれた重量構造物の位置を適切に補正する。そして、再度、重量構造物の沈降を開始することにより、重量構造物を、海底の設置目標地点の許容範囲内に正確に沈設するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明はこのように構成したので、大型構造物を、大水深の海域に正確かつ効率的に沈設させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る吊枠、及び、重量構造物の沈設装置を示すものであり(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示される吊枠の単体図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視A図、(c)は(a)の矢視B図である。
【図3】図1に示される吊枠の超音波作動式切離装置の単体図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は下面図である。
【図4】図3に示される超音波作動式切離装置の斜視図である。
【図5】図1に示される吊枠に重量構造物が吊り込まれた状態を示す斜視図である。
【図6】図1に示される重量構造部の沈設装置を用いた沈設工法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分、若しくは、相当する部分については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る重量構造物の沈設装置10は、図1に示されるように、起重機船12を用いて重量構造物14を水底に沈設する際に用いられるものであり、特に大水深の海域への沈設作業に適したものである。具体的には、重量構造物14は、20t〜50t程度の魚礁ブロックであり、水深300m前後の海域を設置の対象としている。そして、重量構造物の沈設装置10は、起重機船12のクレーン16に吊り下げられる吊枠18を含むものである。この吊枠18は、図2、図5にも示されるように、複数のシャックル20と、図3、図4にも示されるように、先端部にリリースフック22aを備え基端部がシャックル20の一つに吊り下げられる超音波作動式切離装置22と、別のシャックル20に一端が吊り下げられ他端部が超音波作動式切離装置22のリリースフックに連結される玉掛け用ワイヤロープ24と、トランスポンダー発信器26(図1、図5)とを備えるものである。
【0015】
吊枠18は、重量構造物14の重さに耐え得るだけの強度と、重量構造物14を安定して釣り込むための形状および大きさを有しており、図示の例では、円筒鋼管を日の字状に組み合わせることで、上記要請を満たすように構成されている。また、起重機船12の甲板への搭載時の安定性を確保するために、複数の脚28を備えている。なお、図2中符号30で示される部分は、トランスポンダー発信器26の取付部である。また、吊枠18の下面に設けられたシャックル20Aは、超音波作動式切離装置22及び玉掛け用ワイヤロープ24を掛けるためのものであり、図示の例では、超音波作動式切離装置22及び玉掛け用ワイヤロープ24を四組吊り下げるために、八個設けられている。一方、吊枠の上面に設けられたシャックル20Bは、クレーン16の吊り下げ用ワイヤロープ32を掛けるためのものであり、図示の例では、吊枠18の四隅近傍に四個設けられている。
【0016】
超音波作動式切離装置22は、先端部にはリリースフック22aを、基端部には吊枠18のシャックル20に吊り下げられるための留め環22bを有し、かつ、超音波の送受波器34と、送受波器34により伸縮作動制御される電動リニアアクチュエータ36とを備えている。リリースフック22aは、U字状下側開放部38aを有する固定部38と、第1のピボット40に回転自在に軸着され、U字状の開放部42aを有する可動部42と、第2のピボット44に回転自在に軸着され、可動部42のキー42bと噛合うことで可動部42の回転を制限するストッパー46とで構成され、電動リニアアクチュエータ36の伸縮動作が、ストッパー46の回転動作に変換される構造となっている。
【0017】
そして、図3に示されるように、固定部38のU字状下側開放部38aに対し、U字状開放部42aが交差するように可動部42を位置決めしてストッパー46を可動部42に噛合わせることで、固定部38のU字状下側開放部38aが閉じられ、玉掛け用ワイヤロープ24のシンブル24aは、固定部38及び可動部42の双方によって係止される。一方、図3の状態から電動リニアアクチュエータ36を伸張させて、第2のピボット44を中心として図3(a)の反時計回りにストッパー46を回転させ、可動部42のキー42bとストッパー46との噛合いを解除すると可動部42は玉掛け用ワイヤロープ24のシンブル24aからの荷重を受けて、可動部42は第1のピボット40を中心として図3(a)の時計回りに回転し、固定部38のU字状下側開放部38aが開放される。よって、シンブル24aは固定部38のU字状下側開放部38aから下方へとすり抜けるようにして、落下することとなる。
【0018】
又、本発明の実施の形態に係る重量構造物の沈設装置10は、図1に示されるように、起重機船12に設置されるトランスポンダー受信器48と、超音波作動式切離装置22の操作部50と、GPS(DGPS)52とを含むものである。超音波作動式切離装置22の操作部50は、計測室54内に設置されている。GPS52は、図示の例では、主として起重機船12の位置を把握するためのGPS52A、52Bと、主としてクレーンブームトップに設置されるGPS52Cの三つが用いられている。又、詳しい説明は省略するが、計測室54には、GPS52による位置把握システムも設置されている。
なお、図1中符号56で示される部分は、クレーン16の操作室である。又、符号58で示される部分は、クレーン荷重を把握するための歪ゲージであり、クレーン16のブームトップに設置されるGPS52Cと併せて、クレーンブームトップの位置が正確に把握されるものである。
【0019】
続いて、図6を参照しながら、重量構造物の沈設装置10を用いた沈設工法について説明する。なお、図6中S10は港での作業を、S30は重量構造物の沈設海域での作業を表している。
(S110)港にて、起重機船12に重量構造物14である魚礁ブロックを積み込む。
(S200)曳舟によって起重機船12を魚礁ブロックの沈設海域へと曳航する。
(S310)沈設海域に起重機船12を係留する。
(S312)GPS52を用い、起重機船12の船体位置決めを正確に行う。
(S314)起重機船12の甲板上で、吊枠作業(吊枠18のクレーン16への吊り下げ、超音波作動式切離装置22のセット等)を行う。
(S316)漁礁ブロックに玉掛け用ワイヤロープを玉掛けし、吊枠18に吊り込む。
(S318)GPS52Cによって得られる位置データを参照しながら、起重機船12の移動、クレーン16の旋回、起状を行い、クレーン16のブームトップの座標を目標座標にセットする。
(S320)クレーン16の吊り下げ用ワイヤロープ32を繰出し、魚礁ブロックの沈設を開始する。この際、吊荷重の変化を歪ゲージ58で把握する。又、吊り下げ用ワイヤロープ32の繰出し量、繰出し速度や、トランスボンダー発信器26の信号をトランスボンダー受信機48で受けることにより、吊枠18の水深、水中位置、沈降速度を、常時把握する。
(S322)歪ゲージ58による吊り加重の変化や音響測定から、魚礁ブロックの着底を判断する。
【0020】
(S324)魚礁ブロックの着底が確認された時点で、着底位置が設置座標の許容範囲を外れているか否かを、トランスボンダー発信器26の信号をトランスボンダー受信機48で受けることにより把握する。ここで、着底位置が設置座標の許容範囲を外れている場合には、以下のS325へと移行する。
(S325)クレーン16を操作して、少なくとも吊枠18が目視可能な位置まで、吊枠18を上昇させ、S318に戻る。
(S326)上記S324において、魚礁ブロックの着底位置が設置座標の許容範囲にあることが確認された場合は、クレーン16を操作して吊枠18を微上昇させ(例えば1m程度上昇)、一旦重量構造物を水底GL(図1)から離間させる。
(S328)超音波作動式切離装置22を作動させ、リリースフック22aを開放し、魚礁ブロックに玉掛けされたワイヤロープ24を解いて吊枠18から開放する。この際、四つの超音波作動式切離装置22のリリースフック22aを順番に開放し、漁礁ブロックに玉掛けされたワイヤロープ24を一本づつ解いて吊枠18から順次開放し、海底GLに沈設させる。
(S330)クレーン16を操作して吊枠18を上昇させ、起重機船12の甲板に戻す。
(S332)最終の魚礁ブロックの沈設作業が完了している場合にはS210へと移行し、曳舟によって起重機船12を港へと曳航する。完了していない場合には、S334へと移行する。
(S334)次の魚礁ブロックの沈設に適した位置へと、起重機船12の転船作業を行い、S312以降の作業を繰り返す。
【0021】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。まず、発明の実施の形態に係る吊枠18を用いることにより、トランスポンダー発信器26の信号によって吊枠18に吊り込まれた重量構造物14の位置を、沈設作業中、常時把握することができる。そして、重量構造部14の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に、超音波作動式切離装置22のリリースフック22aを開放することで、重量構造物14に玉掛けされたワイヤロープ24を解いて吊枠18から開放し、重量構造物14を海底に沈設させることができる。
【0022】
しかも、少なくとも四組のワイヤロープ24を重量構造物14に玉掛けすることにより、ワイヤロープ24一本あたりの長さを短くして、重量構造物14を安定して吊り込むと共に、ワイヤロープ24の開放時にワイヤロープ24の吊筋への引っ掛かりの発生を防止することができる。そして、ワイヤロープ24の開放時には、各超音波作動式切離装置22のリリースフック22aを順番に開放して、重量構造物14に玉掛けされたワイヤロープ24を一本づつ解いて吊枠18から順次開放し、重量構造物14を海底に沈降させることができる。
【0023】
又、本発明の実施の形態に係る重量構造物の沈設装置10は、起重機船12を用いて重量構造物14を沈設する際に用いられるものであり、吊枠18に重量構造物14を吊り込み、GPS52によって少なくとも起重機船のクレーン16のブームトップの位置を把握して、クレーン16のブームトップの位置を重量構造物14の設置目標地点に移動させて(S318)、重量構造物14の沈降を開始する(S320)。そして、トランスポンダー受信器48によって、トランスポンダー発信器26の信号を受信し、吊枠18に吊り込まれた重量構造物14の位置を、沈設作業中、常時把握するものである。そして、重量構造部14の設置目標地点の許容範囲内への着底を確認した後に(S322)、超音波作動式切離装置22の操作部50によって、吊枠18の超音波作動式切離装置22のリリースフック22aを開放することで、重量構造物14に玉掛けされたワイヤロープ24を解いて吊枠18から開放し、重量構造物14を海底GLに沈設させることができる。
【0024】
又、重量構造物の沈設作業時に、重量構造部14の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後(S322)、一旦重量構造物を水底から離間させるよう吊上げることで(S330)、玉掛け用ワイヤロープ24に荷重が掛かりタルミのない状態とする。この状態で、超音波式切離し装置22のリリースフック22aを開放することで、玉掛け用ワイヤロープ24のリリースを確実に行い、海底GLの設置目標地点の許容範囲内に重量構造物14を沈設することができる。
【0025】
又、重量構造部14の着底が確認された時点で、着底位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には(S324)、重量構造物14を必要な位置まで引き上げて(S325)クレーンブームトップの位置を修正することにより(S318)、吊枠に吊り込まれた重量構造物の位置を補正する。そして、再度、重量構造物の沈降を開始することにより(S320〜)、重量構造物14を、海底GLの設置目標地点の許容範囲内に正確に沈設することができる。
【0026】
なお、本発明者らの効果確認試験によれば、重量構造物14の設置目標地点の許容範囲を±30mに設定し、89個の魚礁ブロック(重量20t〜43t)を、水深約270mの海底に沈設させたところ、86個については再浮上することなく沈設することができ、3個については、再浮上の後の沈設作業で所定の精度を満足し、沈設を完了することが可能であった。
【0027】
10:重量構造物の沈設装置、12:起重機船、14:重量構造物、16:クレーン、18:吊枠、 20、20A、20B:シャックル、22:超音波作動式切離装置、22a:リリースフック、24:玉掛け用ワイヤロープ、26:トランスポンダー発信器、32:吊り下げ用ワイヤロープ、48:トランスポンダー受信器、 52、52A、52B、52C:GPS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起重機船のクレーンにより重量構造物を吊り下げる際に用いられる吊枠であって、複数のシャックルと、先端部にリリースフックを備え基端部が前記シャックルの一つに吊り下げられる超音波作動式切離装置と、別のシャックルに一端が吊り下げられ他端部が前記超音波切離装置のリリースフックに連結される玉掛け用ワイヤロープと、トランスポンダー発信器とを備えることを特徴とする吊枠。
【請求項2】
請求項1記載の吊枠と共に、起重機船に設置される、トランスポンダー受信器と、前記超音波作動式切離装置の操作部と、少なくとも起重機船のクレーンブームトップに設置されるGPSとを含むことを特徴とする重量構造物の沈設装置。
【請求項3】
請求項2記載の重量構造部の沈設装置を用いた沈設工法であって、前記GPSを用いて起重機船を沈降目標位置近傍に位置決めし、前記吊枠に重量構造物を吊り込み、前記クレーンブームトップの位置を重量構造物の設置目標地点上に移動させて重量構造物の沈降を開始し、沈設完了までの間、前記トランスポンダー受信器によって前記トランスポンダー発信器の位置を把握し、重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放することを特徴とする重量構造物の沈設工法。
【請求項4】
重量構造部の設置目標地点の許容範囲内での着底が確認された後、一旦重量構造物を水底から離間させ、前記超音波式切離し装置のリリースフックを開放することを特徴とする請求項3記載の重量構造物の沈設工法。
【請求項5】
前記重量構造部の着底が確認された時点で、着定位置が設置目標地点の許容範囲を外れている場合には、重量構造物を必要な位置まで引き上げて前記クレーンブームトップの位置を修正し、再度、重量構造物の沈降を開始することを特徴とする請求項3又は4記載の重量構造物の沈設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−229656(P2010−229656A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76260(P2009−76260)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】