説明

同時加飾成形品のバリ取り方法

【課題】 転写材を金型に挿入して同時加飾成形した同時加飾成形品から、特に転写材に起因する箔バリを迅速且つ確実に除去できるようにする。
【解決手段】 同時加飾成形品をバリ取り洗浄槽10に投入し、脱気機構11により洗浄液の溶存酸素量を1.5mg/リットル以下にするとともに、温度調整機構17により洗浄液の液温を30〜55℃にする。そして、例えば超音波発振装置12から基本周波数25〜50KHzの超音波を洗浄液中に放射して超音波バリ取り洗浄を行うことにより、転写材に起因する箔バリbを除去する。その後、必要に応じて、液温15℃以下の洗浄液を使用して超音波バリ取り洗浄を行うことで、成形品自体のバリ取りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写材を金型内にセットして同時加飾成形する際、成形された同時加飾成形品からバリを除去するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯電話のウィンドウ部や家電製品や雑貨品のケース等を成形する際、基材フィルムに転写層を形成したような転写材を使用し、この転写材を金型内にセットし、射出成形或いは真空成形と同時に転写層表面の絵柄を成形品に転写するとともに、成形品から基材フィルムを剥ぎ取ると、転写層が基材フィルムから離れて絵柄が成形品に加飾されているような同時加飾成形方法が知られており、この際、成形品の表面に貫通孔や凹溝等が存在して、このような箇所には転写層を転写させたくない場合でも、転写層が突出して残存するいわゆる箔バリが生じるため、成形品からこれを除去するような技術が知られている。
【0003】
このような箔バリの除去技術としては、例えば、手で剥ぎ取ったり、粘着テープを使用したり、吸引装置で吸引したり、レーザー光線処理したりするような技術(例えば、特許文献1参照。)や、被転写体に空気や窒素やネオンや水等の流体を吹き付けるような除去技術(例えば、特許文献2参照。)や、液体窒素等の低温流体を接触させて冷却、脆化し、その後、高圧気流を吹き付けて破断するような除去技術(例えば、特許文献3参照。)などである。
【特許文献1】特開平10−329169号公報
【特許文献2】特開平4−164699号公報
【特許文献3】特開2001−260598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、転写材による箔バリの場合は、金型の合わせ面で生じる成形物自体のバリに較べて薄くしかも品質が安定しているため、取り易いともいえるが、上記特許文献1のように手で剥ぎ取ったり、粘着テープを使用したり、吸引装置で吸引したり、レーザー光線処理するような方法は、例えば携帯電話のように15秒から20秒で2〜8個を生産するようなスピードに対応しようとすると容易ではない。
また、特許文献2のように、流体を吹き付けて除去する方法は、複雑な三次元形状の成形物の場合、流体を吹き付ける方向とか、吹き付ける場所を適切にしないと完全に除去しきれない恐れがあり、しかも、高速で大量に処理することは困難である。
また、特許文献3のように、液体窒素を使用して箔バリを脆化し、これに高圧気流を吹き付けて破断する方法は、処理コストが高くつき、また、時間と手間がかかるという問題がある。
そして、箔バリを取り残した場合、その後の電子部品組付け時に剥がれ落ちると、製品の不良を招くため、大きな問題となっていた。
【0005】
そこで本発明は、転写材を使用して同時加飾成形した同時加飾成形品から、特に転写材に起因する箔バリを迅速且つ確実に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、転写材を使用した同時加飾成形において成形される同時加飾成形品からバリを除去するバリ取り方法において、前記同時加飾成形品を超音波洗浄液に浸漬し、この洗浄液を脱気するとともに洗浄液の温度を30〜55℃の範囲に調整し、この洗浄液中に超音波を放射することで前記転写材から生じる箔バリを除去するようにした。
【0007】
ここで本発明者らは、脱気した洗浄液中に超音波を放射すると、そのときに発生する強力なキャビテーションの衝撃力により、金属加工のバリなどは極めて効果的に除去できるという知見を得ていたため、同時加飾成形品を通常の条件下で超音波バリ取り洗浄装置にかけたところ、至短時間に箔バリを除去することが出来なかった。ところが、実験を繰り返していたところ、ある一定の条件下で超音波を放射すると、極めて効率的に且つ綺麗に箔バリを除去できることを見出した。
この条件は、洗浄液の温度であり、洗浄液の温度を30〜55℃の範囲にするだけで、その他の条件、例えば洗浄液の脱気の程度や基本周波数等の条件は同一であった。すなわち、洗浄液から脱気する際の溶存酸素量は1.5mg/リットル程度以下であり、超音波の基本周波数は25〜50KHZ程度である。
なお、洗浄液の温度は、通常の場合、温度が低い方がキャビテーションの衝撃力が強く、洗浄効果が高いため、15℃程度以下に設定しているのが普通である。
ここで、なぜ温度を上げると箔バリ除去が効果的に行われるか、その正確な理由は不明であるが、温度を上げると、キャビテーションの衝撃力は減少するものの、キャビテーションの密度が増大するため、箔バリのような薄いものを効率的に除去するためには、キャビテーションの衝撃力を向上させるより、密度を上げる方が効果的なのかもしれないが、その正確な理由は不明である。
そして、このような超音波バリ取り洗浄によって、大量の成形品でも迅速に且つ確実に処理できる。
また、洗浄液の温度範囲を30〜55℃の範囲にしているのは、温度を上げれば上げるほど箔バリの除去作用は高まる(より短時間に除去できる)が、55℃を超えると、樹脂成形品が変形したり、歪んだりするためであり、30℃未満では、さほどの除去作用(短時間の除去)が認められないためである。
【0008】
また、本発明では、請求項1の方法により同時加飾成形品から箔バリを除去する工程の前または後に、同時加飾成形品を15℃以下の温度で且つ脱気した超音波洗浄液中に浸漬して超音波を放射することで成形品自体に生じるバリを除去する工程を合わせて行うようにした。
【0009】
ここで、洗浄液の温度が15℃以下の場合は、通常の従来の超音波バリ取り洗浄と同じ条件であり、この条件下では、キャビテーションの衝撃力が強く、成形品自体のバリ(金型の合わせ面に入り込んで生じるバリ)を最も効果的に除去できるため、このような工程を合わせて行えば、成形によって生じる全てのバリを効率的に取り除くことができる。
【0010】
また本発明では、前記超音波洗浄槽の洗浄液面上に、成形品を通すためのスリット孔が形成されるシート部材を配設して、洗浄液が空気に接触する領域の局限を図るようにした。
このように、シート部材を洗浄槽の洗浄液面上に配設して、洗浄液が直接酸素に接触する機会を抑制すれば、洗浄液からの脱気がより効果的に行われるようになり、洗浄効果を一層高めることができ、特に、短時間でのバリ取り洗浄に効果的である。
なお、シート部材は空気と洗浄液の接触を遮断できれば材質等は任意である。また、シート部材の配設要領も任意であり、液面に浮かべるような状態にしても良く、周縁部の一部を洗浄槽の内壁等に固定するようにしても良い。
【0011】
また本発明では、前記超音波の放射方向を、成形品に対する転写材の転写面に対して略直角の方向にした。
このように、超音波の放射方向を、成形品の転写面に対して略直角の方向にすることで、特に箔バリの除去を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
同時加飾成形品から箔バリを除去する際、洗浄液を脱気するとともに、洗浄液の温度を30〜55℃の範囲に設定して超音波を放射することにより、箔バリを効果的に除去できる。しかも、この超音波によるバリ取り洗浄は、大量の成形品を同時に処理できるため、極めて効率的である。
また、この箔バリ除去工程に、洗浄液の温度を15℃以下にした成形品自体の超音波バリ取り工程を合わせて行えば、成形によって生じる全てのバリ取り作業を効率良く行え、また、超音波洗浄槽内の洗浄液の液面上にシート部材を配設して、洗浄液と空気の接触を抑制すれば、洗浄液からの脱気がより効率的に行えるようになって洗浄効率を高めることができ、また、超音波の放射方向を成形品に対する転写材の転写面に対して略直角方向にすれば、特に箔バリの除去作用を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで、図1は本発明に係るバリ取り方法を行うための装置構成の一例図、図2は超音波洗浄槽の拡大図で、(a)は正面図、(b)は側面図、図3は転写材の一形態を示す断面図、図4は携帯電話で実験したバリ取り状況の一例を示す説明図である。
【0014】
本発明に係るバリ取り方法は、例えば携帯電話や家電製品や化粧雑貨のケース等を製造する際、転写材を金型内にセットして射出成形と同時に成形品の表面に加飾するような同時加飾成形において、成形された同時加飾成形品からバリを除去するための技術に関し、特に、転写材の転写層に起因する箔バリを効果的に除去することを特徴としている。
【0015】
ここで、本発明のバリ取り方法について説明する前に、同時加飾成形について簡単に説明する。
同時加飾成形は、図3に示すような転写材1を金型内に挿入し、射出成形などの熱と圧力により絵柄を成形品の表面に転写することにより、後加工での加飾工程を省略できるような工法であり、特に三次元的な形状でも印刷できるため近年の携帯電話の表示ウィンドウ部には欠かせない技術として広く普及するようになっているが、一般的な転写材1は、基材フィルム2に対して剥離可能な転写層3を備えている。そして転写層3は、紫外線や摩耗等から保護する役割を有する剥離層4の表面に絵柄層5を形成したものであり、絵柄層5が金型キャビティ内の成形品の加飾面側に対面するよう挿入セットされると、成形材料を射出して成形品を成形し、その後成形品を取出して、基材フィルム2を剥がすことによって、転写層3を成形品に転写するものである。
なお、転写材1を金型内にセットする際、必要に応じて絵柄層5の表面に接着剤が塗布されることがある。
【0016】
また、一般的には、基材フィルム2は熱で三次元的に変形しやすく且つ伸縮しにくいポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、金属箔、セロファンシート等の素材から厚み20〜500μm程度に形成されることが多く、剥離層4は適度な剥離性を有し耐候性や耐磨耗性や耐薬品性等に優れたアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂セルロース系樹脂等から厚み10〜100μm程度に形成されることが多い。
また、絵柄層5は、絵柄や模様等が印刷または蒸着等により形成されることが多い。
【0017】
以上のような転写材1を使用して同時加飾成形を行った場合、転写層3が成形品に転写させたい箇所のみならず、転写させたくない箇所、例えば穴や成形品の周縁部分等にも一部張り出して成形品側に転移されることがあり、また、絵柄層5の上に接着剤を塗布した場合などには接着剤層なども成形品の転写させたくない箇所に付着することがあるため、成形品から基材フィルム2を剥ぎ取ると、これらが箔バリとなっている。
また、成形品には、金型の合わせ面により形成される成形品自体のバリも当然生じている。
【0018】
本発明のバリ取り方法は、このような箔バリ及び成形品自体のバリを超音波によるキャビテーションにより効果的に除去できるようにされ、このようなバリ取り洗浄装置の基本的構成の一例は、図1に示すように、成形品Wからバリ取りを行うためのバリ取り洗浄槽10と、この洗浄槽10内の洗浄液から脱気するための脱気機構11を備えており、バリ取り洗浄槽10内には、洗浄液中に超音波を放射するための超音波発振装置12が設けられている。
【0019】
すなわち、バリ取り洗浄槽10には、洗浄液を抜き出して循環させるための洗浄液抜出し路13が接続され、この抜出し路13の途中には、ストレーナ14を介して循環ポンプ15が配設され、この循環ポンプ15の下流側には、複数のフィルタ部20を有する浄化機構16や、洗浄液の温度を調整するための温度調整機構17が配設されている。そして、更に温度調整機構17の下流側には、前記脱気機構11を介して洗浄液戻し路18が設けられ、この洗浄液戻し路18が前記洗浄槽10に接続されている。
【0020】
前記温度調整機構17は、加温器やヒータ等によって液温を高めるようにすることもでき、熱交換器等によって液温を低めるようにすることもできるが、液温を高める場合には、図に示す形態以外に、洗浄槽10内に直接ヒータ等を配設するようにすることもできる。
【0021】
前記脱気機構11は、温度調整機構17の下流の洗浄液通路に配設される中空糸モジュール21と、この中空糸モジュール21にトラップ22を介して接続される真空ポンプ23を備えており、真空ポンプ23を作動させることによって中空糸モジュール21により洗浄液中に含まれる空気等の気体を脱気するようにされている。そして、脱気した洗浄液を戻し路18によって洗浄槽10内に戻すようにされている。
【0022】
また、新たな洗浄液を供給するための給液部24が洗浄槽10のオーバーフロー槽部10bに接続され、オーバーフロー槽部10bに送られた洗浄液は脱気機構11を経由して脱気された後、洗浄槽10内に送り込むことができるようにされている。また、汚れた洗浄液を排液するための排液部25が循環ポンプ15より下流の洗浄液通路や、洗浄槽10の排液部10eに接続されている。
【0023】
前記洗浄槽10の細部について、図2に基づき説明する。
前記洗浄槽10の洗浄液面上には、洗浄液と空気との接触領域を制限するためのシート部材27が設けられている。そして、このシート部材27には、成形品Wを僅かなクリアランスで通すことのできるスリット孔27sが形成され、スリット孔27s以外の箇所では、洗浄液面の殆どの領域を覆うことができるようにされるとともに、オーバーフロー槽部10bとの接合部においては、オーバーフローした洗浄液がオーバーフロー槽部10bに入り込むことができるよう多少の隙間を持って配設されている。
なお、本実施例では、シート部材27の材質を樹脂製とし、液面上に浮かべるようにしている。
【0024】
前記成形品Wは、シート部材27のスリット孔27sを通して、転写材1の転写面が略水平方向を向くよう縦向き姿勢で洗浄槽10内に投入可能にされ、本実施例では、成形金型で成形された二個取りの形態のものをそのまま投入できるようにされ、不図示の保持手段によって成形品Wの上部のゲート部(不図示)を保持することにより、成形品Wの製品部だけを洗浄槽10内に浸漬できるようにされている。そして、前記超音波発振装置12は、成形品Wの転写面に対して略直角に超音波を放射できるよう、成形品Wの転写面に対向する位置の洗浄槽10の側壁に取り付けられており、また、放射する超音波の周波数の波長の山の部分が成形品Wの位置に対応するようにされている。
【0025】
そして、洗浄槽10の中間部付近にはダストコレクター28が配設され、その下方の排液部10eには、不図示の排出バルブが設けられ、箔バリが一定量溜まると排出バルブを開いて排出するようにしている。
【0026】
以上のようなバリ取り洗浄装置において、本バリ取り方法は、洗浄槽10内の洗浄液を循環させながら、脱気機構11により洗浄液中の気体を脱気して溶存酸素量を1.5mg/リットル以下にするとともに、箔バリ除去のため、まず、温度調整機構17により洗浄液の液温を30〜55℃に調整する。
そして、洗浄槽10の超音波発振装置12の基本周波数を25〜50KHzの範囲に設定し、洗浄槽10内に同時加飾成形品を投入して洗浄液中に超音波を放射すると、箔バリが効果的に除去される。
【0027】
また、温度調整機構17により洗浄液の液温を15℃以下に設定し、その他の条件は箔バリ除去の場合と同様にすれば、成形品自体のバリが効果的に除去される。
以下、箔バリの除去についての実験例について説明する。
【実施例】
【0028】
箔バリ除去実験に使用するサンプル品として、図4に示すような携帯電話ウィンドウ部とし、転写層3の材質として、アクリルとポリアミドの転写材1を使用したものにするとともに、接着剤の厚みや接着剤の種類の異なる多数のサンプルを使用して実験した。この時の加飾成形品Wには、図4(a)に示すように、多数の箔バリbが生じていた。また、このときの洗浄液は市水であり、液温は、12℃のものと30℃のものと50℃のものとした。またこの際の、洗浄液からの脱気の程度は溶存酸素量1.5/リットル以下であり、超音波発振装置の基本周波数は25〜50KHzであった。また、箔バリが除去される目標時間を40秒と設定した。
【0029】
この結果、液温が12℃のものでは、どのサンプルでも超音波を放射すると同時に箔バリbは取れ始めたが、目標時間の40秒以内では完全に除去することができなかった。この時の状態の一例は図3(b)に示す通りであった。
また、液温が12℃のものでは、超音波の放射を2分間継続しても完全に綺麗にならない場合があった。
【0030】
次に、液温を30℃にした場合は、どのサンプルでも超音波を放射すると同時に、箔バリbが取れ始め、20秒、及び30秒の時点で目視確認したところ、20秒では殆ど除去できたが細かい部分に箔バリbが残っており、この細かい部分を完全に除去するためには30〜40秒を要した。しかしながら、目標の40秒では、すべてのサンプルについて完全に綺麗に除去できることが確認された。この時の状態の一例は図3(c)に示す通りである。
【0031】
次に、液温を50℃にした場合、どのサンプルでも超音波を放射すると同時に、箔バリbが取れ始め、10秒の時点ですべてのサンプルについて完全に綺麗に除去できることが確認された。
この結果、温度を上げるについて箔バリの除去作用が高まることが確認された。
【0032】
一方、液温を30〜55℃範囲に設定した場合、成形品自体のバリ(金型の合わせ面で生じるバリ)は、目標時間内に除去することは出来なかった。
このため、こうして箔バリを除去した成形品については、その後の工程において、液温が15℃以下の洗浄液を使用した超音波バリ取り洗浄により、成形品自体のバリ取りを行う。この時のバリ取り洗浄条件は、液温を変えるだけで、その他の条件は同一である。
そして、このような2回のバリ取り洗浄工程を合わせて行うことで、成形品のバリ取りを効率的に行うことができ、また、超音波洗浄も兼ねているため、その後、洗浄機等にかける必要もない。
【0033】
なお、この際、洗浄液の液面上にシート部材27を配設して洗浄液と空気が接触するのを抑制するようにしているが、シート部材27を配設した場合は、シート部材27を設置しない場合に較べて、洗浄液の溶存酸素量を1.5mg/リットルまでに脱気するまでの時間を大幅に短縮することができ、しかもその後の洗浄液からの脱気効果に非常に有効であることが確認されている。そして、この洗浄液の脱気度を上げることが、洗浄効率またはバリ取り効率に大きく影響し、脱気度を上げれば上げるほど洗浄効率が高まることは、本出願人が既に明らかにしていることである。
【0034】
以上のような要領により、同時加飾成形品に生じるバリ、特に転写材に起因する箔バリの除去を効果的に行うことができ、しかも加飾成形品が大量に生産される場合でも成形タクトに合わせて迅速に処理できるため便利である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
転写材を使用した同時加飾成形において、特に転写材に起因する箔バリの除去を効率的に行うことができ、しかも洗浄を兼ねた処理が可能なため、生産性を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るバリ取り方法を行うための装置構成の一例図
【図2】超音波洗浄槽の拡大図で、(a)は正面図、(b)は側面図
【図3】転写材の一形態を示す断面図
【図4】携帯電話のウインドウ部で実験したバリ取り状況の一例を示す説明図
【符号の説明】
【0037】
1…転写材、3…転写層、10…バリ取り洗浄槽、11…脱気機構、12…超音波発振装置、17…温度調整機構、27…シート部材、b…箔バリ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材を使用した同時加飾成形において成形される同時加飾成形品からバリを除去するバリ取り方法であって、前記同時加飾成形品を超音波洗浄槽の洗浄液中に浸漬し、この洗浄液を脱気するとともに洗浄液の温度を30〜55℃の範囲に調整し、この洗浄液中に超音波を放射することで前記転写材から生じる箔バリを除去することを特徴とする同時加飾成形品のバリ取り方法。
【請求項2】
請求項1の方法により同時加飾成形品から箔バリを除去する工程の前または後に、同時加飾成形品を15℃以下の温度で且つ脱気した超音波洗浄液中に浸漬して超音波を放射することで成形品自体に生じるバリを除去する工程を合わせて行うことを特徴とする同時加飾成形品のバリ取り方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバリ取り方法であって、前記超音波洗浄槽の洗浄液面上に、成形品を通すためのスリット孔が形成されるシート部材を配設して、洗浄液が空気に接触する領域を局限することを特徴とする同時加飾成形品のバリ取り方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバリ取り方法であって、前記超音波の放射方向を、成形品に対する転写材の転写面に対して略直角の方向にすることを特徴とする同時加飾成形品のバリ取り方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−98817(P2007−98817A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293145(P2005−293145)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(598071334)株式会社スター・クラスター (5)
【Fターム(参考)】