説明

同期モータの磁極位置を検出する検出装置およびこれを備える制御装置

【課題】d相電流指令およびq相電流指令に基づいて回転が制御される磁極位置センサを有しない同期モータに対して、磁極補正値を高精度かつ短時間に検出することができる検出装置およびこれを備える制御装置を実現する。
【解決手段】d相電流指令およびq相電流指令に基づいて制御される同期モータ2の磁極位置を検出する検出装置1は、同期モータ2の電源投入時における磁極初期位置の検出後に、所定のd相電流指令を与えて同期モータ2を正転および逆転させたときにそれぞれ生成される同期モータ2を回転させるための正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差に基づいて磁極補正値を生成する生成手段11と、磁極補正値と同期モータ2のセンサの基準位置であるセンサ基準位置とに基づいて、磁極初期位置を補正する補正手段12と、を備え、制御装置100は、この検出装置1を備え、補正後の磁極初期位置に基づいて同期モータ2の回転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、d相電流指令およびq相電流指令に基づいて制御される同期モータの磁極位置を検出する検出装置およびこれを備える制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同期モータにおいては、dq座標制御系を用いてロータの磁極位置に応じて適切な励磁位相巻線に電流を流し、所望のトルクを発生させる。この同期モータには、ロータの磁極位置を検出するためのエンコーダなどの磁極位置センサを有する同期モータと、磁極位置センサを有しない同期モータがある。
【0003】
このうち磁極位置センサを有しない同期モータの場合、同期モータの電源投入(始動)の度に磁極位置検出処理を行って磁極の初期位置(以下、「磁極初期位置」と称する。)を検出し、この磁極初期位置を基準とした磁極位置に基づいて同期モータの回転を制御する。しかしながら、この電源投入時の磁極位置検出処理の検出精度にバラツキがある場合には、同期モータの駆動時におけるトルク定数にもバラツキが生じることになり、最大トルクを発生できないことがある。特に界磁弱め制御が必要な高速まで回転させる場合には、磁極位置にずれがあると適正なd相電流を流すことができず、このため同期モータに印加される駆動電圧が不足し、制御が不安定になる。
【0004】
この問題に対処するため、同期モータを初めて立ち上げる場合や、モータセンサの交換保守時などの場合に、磁極の基準位置と同期モータの回転センサの基準位置とのずれ量である磁極補正値θrを、予め不揮発性メモリに記憶しておき、実際に同期モータの電源投入時の磁極位置検出処理後に最初に同期モータの回転センサの基準位置を検出した時には、この基準位置に対応する磁極補正値θrに基づいて回転制御に用いる磁極位置を補正することで、同期モータの駆動時には常に同じ磁極位置を基準として制御できるようにした方法がある。この方法によれば、センサ基準位置に対応した磁極補正値θrを不揮発性メモリに予め設定しておき、磁極初期位置を補正することで、それ以降は常にセンサ基準位置に対応する磁極補正値θrを基準として制御できる。
【0005】
また、直流励磁してロックしたモータ固定子側の基準点(U相)にエンコーダの基準点を合わせ、その後初期磁極推定結果およびエンコーダ情報からずれ量を求め、エンコーダのメモリに記憶し、補正する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−072902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁極補正値を用いる方法では、同期モータの電源投入時の磁極位置検出処理後に最初に同期モータの回転センサの基準位置を検出した時に、この位置に対応した磁極初期位置を基準とした磁極位置を磁極補正値として設定する。しかしながら、磁極位置検出処理には上述のように検出精度にばらつきがあるので、この検出精度のばらつきに起因する磁極補正値の設定への影響を低減するためには、磁極位置検出処理を複数回行う必要があり、したがって時間がかかるという問題がある。また、この方法では、磁極位置検出処理を何回実行すればよいかといった指標は特になく、磁極補正値内に含まれる誤差を十分に除去できないといった問題がある。
【0008】
なお、磁極補正値の設定の方法として、同期モータの正回転時と逆回転時とで加速時間やトルク指令の差がでないように微調整パラメータを加減して調整することも考えられる。しかしながら、この方法によれば、d相電流をゼロに制御しq相電流でトルク制御を行う非突極性の同期モータにおいては、磁極位置がずれていても正転および逆転で必要な実q相電流(すなわちq相電流指令の実q軸への射影分)は絶対値として同じとなってしまうので、トルク指令の絶対値および実トルクに差が出ず、したがってこの方法は非突極性の同期モータには使用できない。
【0009】
また、特開2004−072902号公報(特許文献1)に記載された発明は、初期磁極推定結果を用いてずれ量を求めていることから、初期磁極推定結果がずれた場合にはエンコーダのメモリに記憶されるずれ量は誤差を有したままになるという問題がある。
【0010】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、d相電流指令およびq相電流指令に基づいて回転が制御される磁極位置センサを有しない同期モータに対して、センサ基準位置を検出した時に磁極検出動作で検出された磁極初期位置を補正するために使用される磁極補正値を高精度かつ短時間に検出し、不揮発性メモリに設定することができる検出装置およびこれを備える制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を実現するために、本発明においては、d相電流指令およびq相電流指令に基づいて制御される同期モータの磁極位置を検出する検出装置は、同期モータの電源投入時における磁極初期位置の検出後に、所定のd相電流指令を与えて同期モータを正転および逆転させたときにそれぞれ生成される同期モータを回転させるための正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差に基づいて磁極補正値を生成する生成手段と、磁極補正値と同期モータのセンサの基準位置であるセンサ基準位置とに基づいて、磁極初期位置を補正する補正手段と、を備える。
【0012】
ここで、生成手段において同期モータに与えられる所定のd相電流指令は、同期モータが非突極性の同期モータの場合は一定値であり、同期モータが突極性のある同期モータの場合はゼロである。また、補正手段は、磁極補正値からセンサ基準位置に対応した磁極初期位置を基準とした磁極位置を減算した値を磁極初期位置に加えることにより得られた値を、補正後の磁極初期位置として設定する。
【0013】
ここで、生成手段は、同期モータの電源投入時に検出された磁極初期位置を基準に、磁極補正値の候補値の初期値を設定する初期設定手段と、初期値および磁極初期位置または設定された候補値および磁極位置の下で所定のd相電流指令を与えて同期モータを正転および逆転させたときに検出された同期モータに流入するモータ電流のd相電流帰還値およびq相電流帰還値に基づいて、制御系のdq軸とモータ系のdq軸との軸ずれである磁極位置ずれ量、および正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差、をそれぞれ計算する計算手段と、計算手段により計算された正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差が、所定の閾値内であるか否かを判定する判定手段と、判定手段により上記差が所定の閾値外であると判定されたときの初期値もしくは候補値を磁極位置ずれ量だけ加算して得られる値を、新たなる候補値として設定するとともに、このときの磁極初期位置もしくは磁極位置を磁極位置ずれ量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定する更新手段と、判定手段により上記差が所定の閾値内であると判定されたときの候補値を、確定された磁極補正値としてメモリに記憶する確定手段と、を備え、計算手段および更新手段は、判定手段により上記差が所定の閾値内であると判定されるまで、上記の計算および更新の各処理を実行する。
【0014】
なお、生成手段は、初期設定手段により設定された初期値、ならびに計算手段により計算された磁極位置ずれ量および上記差、を表示させる表示手段と、外部からの終了指令があったか否かを判定する判定手段と、をさらに備えて、この生成手段内の更新手段が、終了指令がなかったと判定手段により判定されたときの初期値もしくは候補値を外部から入力された量だけ加算して得られる値を、新たなる候補値として設定するとともに、このときの磁極初期位置もしくは磁極位置を外部から入力された量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定し、生成手段内の確定手段が、終了指令があったと判定手段により判定されたときの候補値を、確定された磁極補正値としてメモリに記憶するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明による同期モータの制御装置は、上述の検出装置を備え、この検出装置内の補正手段により設定された補正後の磁極初期位置を基準にして検出された磁極位置に基づいて、同期モータの回転を制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の検出装置によれば、d相電流指令およびq相電流指令に基づいて回転が制御される磁極位置センサを有しない同期モータに対して、磁極補正値を高精度かつ短時間に検出することができる。また、本発明の検出装置によれば、同期モータを正転および逆転させて磁極補正値を生成しているので、磁極補正値内に含まれる誤差を従来技術に比べてより一層低減することができる。また、本発明の制御装置によれば、検出装置により生成される磁極補正値内に含まれる誤差は上述のように低減されるので、同期モータを回転制御するに際して同期モータに適正なd相電流を流すことができ、印加される駆動電圧が不足になることがなく、同期モータの制御が安定する。また、本発明の検出装置および制御装置は、突極性および非突極性どちらの同期モータにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例による検出装置の原理ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例による検出装置の動作フローを示すフローチャートである。
【図3】制御dq軸とモータdq軸とのずれを説明する図である。
【図4】正転時のトルクと逆転時のトルクとの関係を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施例による検出装置を備える同期モータの制御装置を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施例による検出装置の原理ブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施例による検出装置の動作フローを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施例による検出装置を備える同期モータの制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例による検出装置の原理ブロック図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。
【0019】
d相電流指令およびq相電流指令に基づいて制御される同期モータの磁極位置を検出する本発明の第1の実施例による検出装置1は、同期モータの回転を制御する制御装置(図1では示さず)内の1つの機能として設けられる。
【0020】
検出装置1は、同期モータの電源投入時における磁極初期位置の検出後に、所定のd相電流指令を与えて同期モータを正転および逆転させたときにそれぞれ生成される同期モータを回転させるための正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差に基づいて磁極補正値を生成する生成手段11と、磁極補正値と同期モータのセンサの基準位置であるセンサ基準位置とに基づいて、磁極初期位置を補正する補正手段12と、を備える。なお、詳細については後述するが、生成手段11において同期モータに与えられる所定のd相電流指令は、同期モータが非突極性の同期モータの場合は一定値であり、同期モータが突極性のある同期モータの場合はゼロである。
【0021】
生成手段11は、初期設定手段21と、計算手段22と、判定手段23と、更新手段24と、確定手段25と、を備える。
【0022】
生成手段11内の初期設定手段21は、センサ基準位置を検出した時、同期モータの電源投入時に検出された磁極初期位置を基準としたセンサ基準位置に対応した磁極位置を、磁極補正値の候補値の初期値として設定する。後述するように、この候補値の初期値は、更新手段24によって更新されて新たなる候補値が設定される。
【0023】
生成手段11内の計算手段22は、初期値および磁極初期位置または設定された候補値および磁極位置の下で所定のd相電流指令を与えて同期モータを正転および逆転させたときに検出された同期モータに流入するモータ電流のd相電流帰還値およびq相電流帰還値に基づいて、制御系のdq軸とモータ系のdq軸との軸ずれである磁極位置ずれ量を計算するとともに、このときの正転時d相電圧指令、逆転時d相電圧指令、相電流帰還値およびq相電流帰還値に基づいて、正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差を計算する。なお、具体的な計算式については後述する。
【0024】
生成手段11内の判定手段23は、計算手段22により計算された正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差が、所定の閾値内であるか否かを判定する。
【0025】
生成手段11内の更新手段24は、判定手段23により正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差が所定の閾値外であると判定されたときの磁極補正値の初期値もしくは候補値を磁極位置ずれ量だけ加算して得られる値を、新たなる磁極補正値の候補値として設定するとともに、このときの磁極初期位置もしくは磁極位置を磁極位置ずれ量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定する。
【0026】
生成手段11内の確定手段25は、判定手段23により正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差が所定の閾値内であると判定されたとき候補値を、確定された磁極補正値としてメモリに記憶する。
【0027】
生成手段11内の計算手段22および更新手段24は、判定手段23により正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差が所定の閾値内であると判定されるまで、上記の計算および更新の各処理を実行する。
【0028】
そして、補正手段12は、磁極補正値からセンサ基準位置を減算した値を磁極初期位置に加えることにより得られた値を、補正後の磁極初期位置として設定する。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施例による検出装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0030】
上述したように、一般に磁極位置センサを有しない同期モータにおいては、同期モータの回転制御のために、同期モータの電源投入(始動)の度に磁極位置検出処理を行って磁極初期位置を検出する。ステップS101では、まずこの磁極位置検出処理を実行する。この磁極位置検出処理で検出された磁極初期位置は、この段階では既に述べたように誤差を含むものである。そこで、この後、本発明の第1の実施例の検出装置1が動作することで、磁極初期位置を磁極補正値で補正することで、この誤差を除去する。本明細書では、これ以降、検出装置1が動作するモードを、同期モータが実際に回転制御される通常駆動モードと区別して「調整モード」と称することにする。
【0031】
ステップS102において、制御装置は、現在、調整モードにあるか否かを判定する。調整モードにあると判定された場合、制御装置は、検出装置1の動作開始を指示し、ステップS103へ進む。
【0032】
ステップS103では、制御装置は、同期モータに対して、1回転正転するよう指令を与える。このとき同期モータの回転速度についても指令を与える。
【0033】
ステップS104では、検出装置1は、同期モータが1回転正転する間に、センサの基準位置(以下、「センサ基準位置」と称する。)を検出する。そして、検出装置1は、ステップS101で検出された磁極初期位置を基準にして、検出したセンサ基準位置に対応する「磁極補正値の候補値の初期値」を計算し、これをメモリに記憶する。
【0034】
次いでステップS105において、制御装置は、同期モータに対して、所定の正転d相電流指令を与えて正転回転させる。このとき同期モータの回転速度についても指令を与える。ここで、同期モータに与えられる所定の正転d相電流指令は、同期モータが非突極性の同期モータの場合は一定値であり、同期モータが突極性のある同期モータの場合はゼロである。
【0035】
次いでステップS106において、検出装置1は、同期モータを正転回転させたときに検出された同期モータに流入するモータ電流の正転時d相電流帰還値および正転時q相電流帰還値の各平均値IdPおよびIqPを計算し、これをメモリに記憶する。また、検出手段1は、同期モータを正転させたときの正転時d相電圧指令VdPおよび正転時q相電圧指令VqPを一定期間における平均値としてそれぞれ計算し、これらをメモリに記憶する。
【0036】
次いでステップS107において、制御装置は、同期モータに対して、所定の逆転d相電流指令を与えて逆転回転させる。このとき同期モータの回転速度についても指令を与える。ここで、同期モータに与えられる所定の逆転d相電流指令は、同期モータが非突極性の同期モータの場合は一定値であり、同期モータが突極性のある同期モータの場合はゼロである。
【0037】
次いでステップS108において、検出装置1は、同期モータを逆転回転させたときに検出された同期モータに流入するモータ電流の逆転時d相電流帰還値および逆転時q相電流帰還値の各平均値IdNおよびIqNを計算し、これをメモリに記憶する。また、検出手段1は、同期モータを逆転させたときの逆転時d相電圧指令VdNおよび逆転時q相電圧指令VqNを一定期間における平均値としてそれぞれ計算し、これらをメモリに記憶する。
【0038】
なお、上述のステップS105およびS106と、ステップS107およびS108とは、入れ替えて実行してもよい。
【0039】
次いでステップS109において、検出装置1は、ステップS106で記憶された正転時d相電流帰還値IdP、正転時q相電流帰還値IqP、逆転時d相電流帰還値IdN、逆転時q相電流帰還値IqNに基づいて、制御系のdq軸とモータ系のdq軸との軸ずれである磁極位置ずれ量Δθ、および、正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差、をそれぞれ計算する。
【0040】
ここでステップS109における、制御系のdq軸(以下、「制御dq軸」と称する。)とモータ系のdq軸(以下、「モータdq軸」と称する。)との軸ずれである磁極位置ずれ量Δθの、検出装置1による計算についてより詳細に説明する。
【0041】
図3は、制御dq軸とモータdq軸とのずれを説明する図である。制御dq軸とモータdq軸とがΔθだけずれていた場合、磁極位置は制御dq軸座標系とモータdq軸座標系とではΔθだけずれて検出されることになる。制御dq軸座標上の値(dc,qc)とモータdq軸座標上の値(dm,qm)との間の座標変換行列は式1および式2のように表わされる。
【0042】
【数1】

【0043】
【数2】

【0044】
また、同期モータに発生するトルクTは、同期モータの極対数をpole、周波数をω、逆起電圧をωφ、d相およびq相の各インダクタンスをLdおよびLq、モータ軸上のd相およびq相の各電流をIdmおよびIqmとして、式3のように表わされる。
【0045】
【数3】

【0046】
ここで、モータdq軸座標上のd相およびq相の各電流をIdmおよびIqmと制御dq軸座標上のd相およびq相の各電流をIdcおよびIqcとを式1に適用すると、式4が得られる。
【0047】
【数4】

【0048】
式3に式4を代入すると式5が得られる。
【0049】
【数5】

【0050】
ここで、同期モータが非突極性である場合、Ld=Lqとなるので式5は式6のように変形できる。
【0051】
【数6】

【0052】
図4は、正転時のトルクと逆転時のトルクとの関係を説明する図である。同期モータを一定回転数で正転および逆転させた時、摩擦などの機械的な条件はどちらの場合も同じであるから、正転時のトルクTPと逆転時のトルクTNとでは、極性が異なるだけで絶対値は同じとなるので、式7の関係がある。
【0053】
【数7】

リラクタンストルクのない非突極性の同期モータにおいて、d相電流をゼロに制御し、磁極がΔθだけずれた状態で正転および逆転させた場合を考えると、図4(a)および(b)のように表わせる。実トルクは速度制御された結果流れるq相電流Iqcが、モータdq軸座標上に射影される分の「Iqm=Iqc×cosΔθ」で決定され、その値はトルク定数をKtとするとトルクT=Kt×Iqmとなる。したがって、同期モータの正転および逆転時のトルクの絶対値は同じであるので、磁極がずれていてもトルク指令もしくはq相電流や発生トルクの絶対値は同じになり、差が出ない。しかし、一定のd相電流Idcを流す事で、磁極ずれがある場合はモータdq座標上のq軸電流には式6のようにIdcの射影分も含まれ、回転方向で影響が異なるため、速度制御された結果のIqcは回転方向によって、大きさが異なることになる。
【0054】
したがって、制御dq軸座標上の正転時のd相電流をIdcP、q相電流をIqcP、逆転時のd相電流をIdcN、q相電流をIqcNとすると、式6および式7から、式8が得られる。
【0055】
【数8】

【0056】
式8の両辺をcosΔθで割ると式9が得られる。
【0057】
【数9】

【0058】
よって、非突極性の同期モータの場合、制御dq軸とモータdq軸とのずれΔθすなわち磁極位置ずれ量Δθは、式10で求められることになる。
【0059】
【数10】

【0060】
なお、非突極性の同期モータの場合は、d相電流指令Idをゼロではない一定値とするので、式10におけるIdcPおよびIdcNはともにゼロにはならないので式10の分母がゼロになることはない。突極性の同期モータの場合は、Ld≠Lqであって式6を前提とした式10を利用することはできない。突極性の同期モータの場合は、以下のようにして磁極位置ずれ量Δθを計算する。
【0061】
同期モータが突極性である場合、Ld≠Lqであるが、式5を簡単にするためd相の電流Idcをゼロとすると、式5および式7から式11が得られる。
【0062】
【数11】

【0063】
式11を整理すると式12が得られる。
【0064】
【数12】

【0065】
さらに式12を整理すると式13が得られる。
【0066】
【数13】

【0067】
よって、非突極性の同期モータの場合、制御dq軸とモータdq軸とのずれΔθすなわち磁極位置ずれ量Δθは、式14で求められることになる。
【0068】
【数14】

【0069】
続いてステップS109における正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差の検出装置1による計算についてより詳細に説明する。なお、以下の式15〜18は正転時および逆転時で共通である。
【0070】
モータdq軸上で、同期モータの回路方程式は、抵抗をR、周波数をω、逆起電圧をωφ、d相およびq相の各インダクタンスをLdおよびLq、d相およびq相の各電流をIdmおよびIqm、d相およびq相の各電圧をVdmおよびVqmとして、式15のように表わせる。ここで、微分項であるLdt/diは無視する。
【0071】
【数15】

【0072】
式2を用いて式15を制御dq軸上に変換すると、式16のようになる。
【0073】
【数16】

【0074】
d相電圧指令Vdcは式17のように表わすことができる。
【0075】
【数17】

【0076】
一方、q相電圧指令Vqcは式18のように表わすことができる。
【0077】
【数18】

【0078】
したがって、正転時d相電圧指令VdcPは式19、逆転時d相電圧指令VdcNは式20のようにそれぞれ表わすことができる。
【0079】
【数19】

【0080】
【数20】

【0081】
なお、調整モードは、界磁弱めが不要な電圧的には余裕のある回転域で実行されるので、d相電流は指令通りに流れてIdcpはIdcNとほぼ一致する。一方、q相電流は速度制御した結果として流れるものであるので、磁極位置ずれ量Δθが存在することにより発生トルクTは同じ大きさとなるが、IqcP=−IqcNとはならない。
【0082】
なお、特に非突極性のモータの場合は、Ld=Lqであるので、式19および式20は、Ld=Lq=Lとして、それぞれ式21および式22のように表わせる。この時、Δθずれた状態で速度制御されているため、ωP=−ωN、IdcP=IdcN、ωP・IqcP≠ωN・IqcNとなるので、回転方向の違いでd相電圧指令が異なることになる。
【0083】
【数21】

【0084】
【数22】

【0085】
図2のステップS110において、検出手段1は、ステップS109において計算した正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差「VdcP−VdcN」の絶対値が、所定の閾値内であるか否かを判定する。差「VdcP−VdcN」の絶対値が、所定の閾値外であればステップS111へ進み、所定の閾値内であればステップS112へ進む。
【0086】
ステップS111において、検出手段1は、ステップS110において正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差「VdcP−VdcN」の絶対値が所定の閾値外であると判定されたときの初期値もしくは候補値を磁極位置ずれ量だけ加算して得られる値を、新たなる候補値として設定するとともに、このときの磁極初期位置もしくは磁極位置を磁極位置ずれ量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定する。
【0087】
ステップS112では、検出手段1は、ステップS110において正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差「VdcP−VdcN」の絶対値が所定の閾値内であると判定されたとき候補値を、確定された磁極補正値として確定し、これをメモリに記憶する。
【0088】
上記S105〜S112の各処理は、ステップS110において正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差「VdcP−VdcN」の絶対値が所定の閾値内であると判定されるまで、繰り返し実行される。
【0089】
ステップS112において確定された磁極補正値は、ステップS113において、ステップS101の磁極位置検出処理で検出された磁極初期位置の補正に用いられる。上述のようにステップS101で検出された磁極初期位置は誤差を含むものである。この誤差は、主としてS101における磁極初期位置の検出誤差に起因すると考えられるので、ステップS113では、ステップS112において確定された磁極補正値からセンサ基準位置を減算した値を、磁極初期位置へ加えることで、磁極初期位置に含まれていた誤差分を除去する。これより得られた値を、補正後の磁極初期位置として設定し、メモリに記憶する。上述の各処理を経て得られた、補正後の磁極初期位置は、磁極位置センサを有しない同期モータの回転制御の際の磁極位置の基準として用いられる。
【0090】
ここで、ステップS101で検出された磁極初期位置をθ0、同期モータの極対数をpole、同期モータのセンサの位置フィードバックの差分をΔfbとしたとき、磁極位置θは、式23で表わされる。
【0091】
【数23】

【0092】
確定した磁極補正値をθr、センサ基準位置に対応した磁極初期位置を基準とした磁極位置をθ1、磁極位置ずれ量をΔθとすると、Δθ補正量=Δθ=θr−θ1となり、補正後の磁極位置θは、式24で表わされる。
【0093】
【数24】

【0094】
図5は、本発明の第1の実施例による検出装置を備える同期モータの制御装置を示すブロック図である。本発明の第1の実施例による検出装置1は、同期モータの回転を制御する制御装置100内の1つの機能として設けられる。
【0095】
指令選択部31および32は、調整モードと通常駆動モードとで指令を切り替えるためのものである。指令選択部31は、検出装置1からの選択信号に基づき、通常駆動モード時では外部からの速度指令が、調整モード時では検出装置1からの正転および逆転の向きおよび速度指令が、速度制御部33に入力されるように切り替える。また、指令選択部32は、検出装置1からの選択信号に基づき、通常駆動モード時ではDQ電流生成部34からのd相電流指令Idが、調整モード時では検出装置1からのからのd相電流指令Idが、DQ相電流制御部35に入力されるように切り替える。
【0096】
速度制御部33は、通常駆動モード時では外部からの速度指令と、調整モード時では検出装置1からの正転および逆転の向きおよび速度指令とに基づいて、DQ電流生成部34に対してトルク指令を出力する。
【0097】
DQ電流生成部34は、速度制御部33からのトルク指令と、同期モータ2の回転速度を示す速度検出部39からの速度帰還信号とに基づいて、d相電流指令Idおよびq相電流指令Iqを生成する。
【0098】
DQ電流制御部35は、DQ電流生成部34からのq相電流指令Iqと、通常駆動モード時におけるDQ電流生成部34からのd相電流指令Idまたは調整モード時における検出装置1からのd相電流指令Idと、d相電流帰還値Idと、q相電流帰還値Iqとに基づいて、d相電圧指令Vdおよびq相電圧指令Vqを生成する。
【0099】
DQ−3相変換部36は、入力されたd相電圧指令Vdおよびq相電圧指令Vqを、検出装置1により生成された補正後の磁極初期位置を基準とした磁極位置でDQ−3相変換し、3相電圧指令を生成して電力増幅部37へ出力する。
【0100】
電力増幅部37は、入力された3相電圧指令に基づき同期モータ2に対して3相の駆動電圧を印加する。
【0101】
3相−DQ変換部38は、3相の駆動電圧が印加された同期モータ2に流入する電流(例えu相電流Iuおよびv相電流Iv)を検出してこれを検出装置1により生成された補正後の磁極初期位置を基準とした磁極位置で3相−DQ変換し、d相電流帰還値Idおよびq相電流帰還値Iqを生成して検出装置1へ出力する。
【0102】
速度検出部39は、センサ41からのセンサ位置に関する信号から速度帰還信号を生成する。
【0103】
同期モータ2は、印加された3相の駆動電圧に基づき回転する。同期モータ2は、通常駆動モード時では、外部からの速度指令に基づき、検出装置1により設定された補正後の磁極初期位置を基準にして検出された磁極位置に基づいて回転制御されることになる。また、同期モータ2は、調整モード時では検出装置1からの指令に回転することになる。
【0104】
センサ41は、モータ磁極0度位置に対してセンサ基準位置が任意の位置で取付けられており、同期モータ2の回転位置およびセンサ基準位置を出力する。
【0105】
検出装置1は、センサ41からの現在位置信号およびセンサ基準位置信号と、dq相帰還(もしくは指令)電流IdおよびIqと、dq相電圧指令VdおよびVqとに基づいて、上述した処理に基づき、「補正後の磁極初期位置」に関する信号を生成し、出力する。
【0106】
図6は、本発明の第2の実施例による検出装置の原理ブロック図である。本発明の第2の実施例は、図1を参照して説明した第1の実施例において、計算された磁極位置ずれ量および正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差「VdcP−VdcN」の絶対値をディスプレイ装置に表示してユーザに視認できるようにし、ユーザが入力したデータを磁極初期位置の補正に反映させるようにしたものである。
【0107】
本発明の第2の実施例による検出装置1は、生成手段11内に、図1を参照して説明した初期設定手段21、計算手段22、更新手段24および確定手段25に加え、初期設定手段21により設定された初期値、ならびに計算手段22により計算された磁極位置ずれ量および正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差、を外部表示装置に表示させる表示手段26と、外部より終了指令があったか否かを判定する判定手段27と、をさらに備える。表示手段26により表示指示される外部表示装置は公知のディスプレイ装置でよい。また、特に図示しないが、キーボードおよび座標入力装置などの各種入力装置からユーザが外部入力できる構成とする。
【0108】
生成手段11内の判定手段27は、外部より終了指令があったか否かを判定する。終了指令は上述の各種入力装置から入力される。
【0109】
生成手段11内の更新手段24は、終了指令がなかったと判定手段27により判定されたときの初期値もしくは候補値を「外部から入力された量」だけ加算して得られる値を、新たなる候補値として設定するとともに、このときの磁極初期位置もしくは磁極位置を外部から入力された量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定する。なお、上記「外部から入力された量」は、ユーザにより任意に設定可能である。また、第2の実施例も、第1の実施例の場合同様、生成手段11において同期モータに与えられる所定のd相電流指令は、同期モータが非突極性の同期モータの場合は一定値であり、同期モータが突極性のある同期モータの場合はゼロである。
【0110】
生成手段11内の確定手段25は、終了指令があったと判定手段27により判定されたときの候補値を、確定された磁極補正値としてメモリに記憶する。
【0111】
なお、これ以外の回路構成要素については図5に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0112】
生成手段11内の計算手段22および更新手段24は、終了指令があったと判定手段27により判定されるまで、上記の計算および更新の各処理を実行する。
【0113】
そして、補正手段12は、磁極補正値からセンサ基準位置を減算した値を磁極初期位置へ加算することにより得られた値を、補正後の磁極初期位置として設定する。
【0114】
図7は、本発明の第2の実施例による検出装置の動作フローを示すフローチャートである。本発明の第2の実施例において、ステップS101〜S109およびS112の各処理は、上述した第1の実施例におけるステップS101〜S109およびS112の各処理と同様である。
【0115】
ステップS121では、検出装置1は、ステップS109において計算された磁極位置ずれ量および正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差をディスプレイに表示させる。なお、ステップS121においては、ステップS104におけるセンサ基準位置、および磁極補正値の候補値の初期値についてもディスプレイ装置に表示させるようにしてもよい。
【0116】
ステップS122では、検出装置1は、外部から終了指令があったか否かを判定する。終了指令がなければステップS123へ進み、終了指令があれステップS112へ進む。
【0117】
ステップS123において、検出手段1は、初期値もしくは候補値を「外部から入力された量」だけ加算して得られる値を、新たなる候補値として設定するとともに、このときの磁極初期位置もしくは磁極位置を外部から入力された量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定する。なお、上記「外部から入力された量」は、ユーザにより任意に設定可能である。
【0118】
ステップS112では、検出手段1は、終了指令があったと判定されたとき候補値を、確定された磁極補正値として確定し、これを不揮発性メモリに記憶する。
【0119】
上記S105〜S109、S112、およびS121〜S123の各処理は、ステップS122において外部から終了指令があったと判定されるまで、繰り返し実行される。
【0120】
ステップS112において確定された磁極補正値は、ステップS113において、ステップS101の磁極位置検出処理で検出された磁極初期位置の補正に用いられる。上述のようにステップS101で検出された磁極初期位置は誤差を含むものである。この誤差は、主として磁極初期位置検出時の検出誤差に起因すると考えられるので、ステップS113では、ステップS112において確定し、不揮発性メモリに格納された磁極補正値からセンサ基準位置に対応した磁極位置を減算した値を、磁極初期位置へ加える事で、誤差分を除去する。これより得られた値を、補正後の磁極初期位置として設定し、制御上の磁極位置として使用する。上述のようにユーザにより「外部から入力された量」が磁極補正値の生成に用いられるので、ユーザが入力したデータを磁極初期位置の補正に反映させることができる。上述の各処理を経て得られた、補正後の磁極初期位置は、磁極位置センサを有しない同期モータの回転制御の際の磁極位置の基準として用いられる。
【0121】
図8は、本発明の第2の実施例による検出装置を備える同期モータの制御装置を示すブロック図である。本発明の第2の実施例による検出装置1も、第1の実施例の場合同様、同期モータの回転を制御する制御装置100内の1つの機能として設けられる。
【0122】
検出装置1は、外部表示装置43に対して、表示データを出力する。表示データには、磁極位置ずれ量、正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差、センサ基準位置、補正後の磁極初期位置、補正前の磁極初期位置、確定した磁極補正値、磁極補正値の候補値およびその初期値、ならびに終了指令などがあるが、これら以外情報であってもよい。
【0123】
なお、これ以外の回路構成要素については図5に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。なお、制御装置100に、通常駆動モードと調整モードとを選択できるようモード選択部42を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、磁極位置センサを有しない同期モータに適用することができる。この同期モータは突極性および非突極性のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 検出装置
2 モータ
11 生成手段
12 補正手段
21 初期設定手段
22 計算手段
23 判定手段
24 更新手段
25 確定手段
26 表示手段
27 判定手段
31 指令選択部
32 指令選択部
33 速度制御部
34 DQ電流生成部
35 DQ相電流制御部
36 DQ−3相変換部
37 電力増幅部
38 3相−DQ変換部
39 速度検出部
41 センサ
42 モード選択部
43 外部表示装置
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
d相電流指令およびq相電流指令に基づいて制御される同期モータの磁極位置を検出する検出装置であって、
前記同期モータの電源投入後に磁極検出処理で磁極初期位置を検出した後、所定のd相電流指令を与えて前記同期モータを正転および逆転させたときにそれぞれ生成される前記同期モータを回転させるための正転時d相電圧指令と逆転時d相電圧指令との差に基づいて磁極補正値を生成する生成手段と、
前記磁極補正値と、前記同期モータのセンサの基準位置であるセンサ基準位置と、に基づいて、前記磁極初期位置を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記生成手段は、
前記同期モータの電源投入後、磁極検出処理で検出された前記磁極初期位置を基準とした磁極補正値の候補値の初期値を設定する初期設定手段と、
前記初期値および前記磁極初期位置または設定された前記候補値および磁極位置の下で所定のd相電流指令を与えて前記同期モータを正転および逆転させたときに検出された前記同期モータに流入するモータ電流のd相電流帰還値とq相電流帰還値およびd相電圧指令とq相電圧指令に基づいて、制御系のdq軸とモータ系のdq軸との軸ずれである磁極位置ずれ量、および前記正転時d相電圧指令と前記逆転時d相電圧指令との差、をそれぞれ計算する計算手段と、
前記計算手段により計算された前記正転時d相電圧指令と前記逆転時d相電圧指令との差が、所定の閾値内であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記差が前記所定の閾値外であると判定されたときの前記初期値もしくは前記候補値を前記磁極位置ずれ量だけ加算して得られる値を、新たなる前記候補値として設定するとともに、このときの前記磁極初期位置もしくは前記磁極位置を前記磁極位置ずれ量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定する更新手段と、
前記判定手段により前記差が前記所定の閾値内であると判定されたときの前記候補値を、確定された前記磁極補正値としてメモリに記憶する確定手段と、
を備え、
前記計算手段および前記更新手段は、前記判定手段により前記差が前記所定の閾値内であると判定されるまで、前記の計算および更新の各処理を実行する請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記生成手段は、
前記同期モータの電源投入時後、磁極検出処理で検出された前記磁極初期位置を基準とした磁極補正値の候補値の初期値を設定する初期設定手段と、
前記初期値および前記磁極初期位置または設定された前記候補値および磁極位置の下で所定のd相電流指令を与えて前記同期モータを正転および逆転させたときに検出された前記同期モータに流入するモータ電流のd相電流帰還値とq相電流帰還値およびd相電圧指令とq相電圧指令とに基づいて、制御系のdq軸とモータ系のdq軸との軸ずれである磁極位置ずれ量、および前記正転時d相電圧指令と前記逆転時d相電圧指令との差、をそれぞれ計算する計算手段と、
前記初期設定手段により設定された前記初期値、ならびに前記計算手段により計算された前記磁極位置ずれ量および前記差、を表示させる表示手段と、
終了指令があったか否かを判定する判定手段と、
前記終了指令がなかったと前記判定手段により判定されたときの前記初期値もしくは前記候補値を外部から入力された量だけ加算して得られる値を、新たなる前記候補値として設定するとともに、このときの前記磁極初期位置もしくは前記磁極位置を外部から入力された量だけずらして得られる位置を、新たなる磁極位置として設定する更新手段と、
前記終了指令があったと前記判定手段により判定されたときの前記候補値を、確定された前記磁極補正値としてメモリに記憶する確定手段と、
を備え、
前記計算手段および前記更新手段は、前記判定手段により前記差が前記所定の閾値内であると判定されるまで、前記の計算および更新の各処理を実行する請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記生成手段において前記同期モータに与えられる前記所定のd相電流指令は、前記同期モータが突極性のある同期モータの場合は一定値であり、前記同期モータが非突極性のある同期モータの場合はゼロである請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−217298(P2012−217298A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82025(P2011−82025)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】