説明

同期モータ

【課題】加熱保護手段を固定子に取り付ける場合に、確実にその固定子の温度を検知することが出来る同期モータを提供する。
【解決手段】2スロットのU字型の固定子12の間に回転子18を回転自在に配した同期モータ10において、U字型の固定子12の間の空間であって、一対の固定子極20,22にそれぞれ巻回された固定子巻線16,16の両方に接触するようにホルダー36を介してサーマルプロテクター38が配されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相同期モータにおける加熱保護手段の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同期モータは、コストが安く、その構造が簡単であるためポンプ等の駆動源として多数使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この様な同期モータ100は、図5、図6に示す様に、U字型の固定子102の2つの固定子極106,106の間に、回転子108を回転自在に配した構造となっている。
【0004】
この同期モータ100において過負荷な状態で固定子102の温度が所定温度以上に上昇した時に、同期モータ100の回転を停止させるために、固定子巻線110の近傍にサーマルプロテクター104が取り付けられている。
【特許文献1】特開平8−242565公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の同期モータ100において、上記した様にサーマルプロテクター104は、固定子102の近傍に取り付けられているが、組み立て時のバラつきにより、固定子102とサーマルプロテクター104の間隙の寸法Hが異なり、サーマルプロテクター104の動作温度にバラつきが生じるという問題点がある。
【0006】
また、サーマルプロテクター104は固定子102に相対向して取り付けられているが、このサーマルプロテクター104において固定子102と相対向する面以外では周囲温度が低いため、サーマルプロテクター104の検知している温度が固定子102の温度より低くなり、固定子102が必要以上に加熱されるという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、加熱保護手段を固定子に取り付ける場合に、確実にその固定子の温度を検知することが出来る同期モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、2スロットのU字型の固定子の間に回転子を回転自在に配した同期モータにおいて、前記U字型の固定子を構成する一対の固定子極の間の空間であって、前記一対の固定子極にそれぞれ巻回された固定子巻線の両方の近傍に位置するように、または、両方に接触するように温度検知手段を配し、前記温度検知手段が検出した温度が所定温度以上のときに前記同期モータの回転を停止される過熱保護手段を有していることを特徴とする同期モータである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記固定子の側面に前記同期モータの駆動回路を有した配線基板を配し、前記配線基板にホルダーを取り付け、前記温度検知手段と前記過熱保護手段とを前記ホルダーに収納して、前記一対の固定子極の間の空間に配し、かつ、前記駆動回路と前記過熱保護手段とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の同期モータである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記温度検知手段と前記過熱保護手段とが一体となった自動復帰型の機能を有するサーマルプロテクターであることを特徴とする請求項1記載の同期モータである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の同期モータであると、温度検知手段がU字型の固定子の一対の固定子極の間の空間であって、前記固定子極にそれぞれ巻回された固定子巻線の両方の近傍に位置するように、または、両方に接触するように取り付けられているため、固定子の温度を確実に検知することが出来る。
【0012】
請求項2に係る発明の同期モータであると、固定子の側面に配した配線基板にホルダーを取り付け、このホルダーに温度検知手段と加熱保護手段とを収納して、前記U字型の固定子の間の空間に配することにより、駆動回路と加熱保護手段との電気的接続が容易になり、また、その取り付け作業も簡単である。
【0013】
請求項3に係る発明の同期モータであると、温度検知手段と加熱保護手段とが一体となった自動復帰型の機能を有するサーマルプロテクターを用いることにより、固定子の温度が下がった場合に同期モータを再び使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態の単相交流同期モータ(以下、単にモータという)10について説明する。
【0015】
(1)モータ10の構成
図1に示すように、モータ10の固定子12はU字型の固定子鉄心14の一対の固定子極20,22に固定子巻線16がそれぞれ巻回されている。
【0016】
また、回転子18は、図1に示すように、断面半円型のS極とN極の一対の磁極で挟持した構成となっており、全体としては断面真円型で、回転子18は円柱型となっている。そして、回転子18の中心部に回転軸24が貫通している。
【0017】
このモータを駆動させるための駆動回路を有した配線基板26が、図3に示すように固定子12の側面に取り付けられている。この配線基板26の上部は、図2に示すように、回転子18が貫通できるように半円型に切り欠かれている。また、配線基板26の下部は固定子12の下部にまで延びており、配線基板26の下部付近には4つの端子28,30,32,34が設けられている。この端子28,30には、一方の固定子極の固定子巻線16の両端部がそれぞれ接続され、端子32,34には、他方の固定子極に巻回された固定子巻線16の両端部がそれぞれ接続される。
【0018】
配線基板26の中央部には、合成樹脂性のホルダー36が設けられ、このホルダー36内部には自動復帰型の機能を有するサーマルプロテクター38が収納されている。このサーマルプロテクター38の2つの端子はホルダー36を介して、配線基板26の上に設けられている駆動回路に電気的に接続されいている。
【0019】
ホルダー36は、サーマルプロテクター38を収納した状態で、図1に示すように、1対の固定子極20,22の間の空間に配され、且つ、このホルダー36は両固定子極に巻回された固定子巻線16の両方に接触した状態となっている。
【0020】
(2)モータ10の回転状態
このモータ10を回転させるためには、交流電源から駆動回路を通して、回転子18の回転方向へのトルクが生じるような磁束を発生させるように固定子巻線16,16を励磁する。
【0021】
そして、何らかの理由で負荷が過大となり固定子12は加熱した場合には、ホルダー36に収納されているサーマルプロテクター38が検知する温度が所定温度以上になった場合には、サーマルプロテクター38が動作し、駆動回路を遮断してモータ10の回転を停止させる。
【0022】
このような加熱保護の構成において、ホルダー36を介してサーマルプロテクター38が一対の固定子巻線に接触するように取り付けられているため、固定子巻線16の温度とサーマルプロテクター38との温度に差が無く、確実に固定子12を加熱状態から回避させることが出来る。
【0023】
また、ホルダー36に収納した状態でサーマルプロテクター38を取り付けるため、組み立て時の位置のバラ付きが無く、また、配線基板26を固定子12の側面に取り付ける構造であるため、その取り付けが簡単に行うことが出来る。
【0024】
(3)変更例
(3−1)変更例1
上記の実施形態では加熱保護手段として自動復帰型のサーマルプロテクターを使用したが、これに代えてヒューズであってもよい。
【0025】
(3−2)変更例2
上記の実施形態では、サーマルプロテクター38が両固定子極に巻回された固定子巻線16の両方と若干間隔を開けて配されているが、これに代えて、図4に示すように、サーマルプロテクター38と両方の固定子巻線16の間に熱伝導性の高い充填材50を充填してもよい。この構造であると充填材50により、固定子巻線16の熱がサーマルプロテクター38に確実に伝わる。
【0026】
(3−3)変更例3
上記の実施形態では、サーマルプロテクター38が両固定子極に巻回された固定子巻線16の両方と若干間隔を開けて配されているが、これに代えて、サーマルプロテクター38と両方の固定子巻線16とを直接接触されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の同期モータは、ポンプ等の駆動源に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す同期モータの正面図である。
【図2】同じく同期モータの正面図である。
【図3】同じく同期モータの側面図である。
【図4】本発明の変更例2を示す同期モータの正面図である。
【図5】従来の同期モータの正面図である。
【図6】従来の同期モータの側面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 同期モータ
12 固定子
14 固定子鉄心
16 固定子巻線
18 回転子
20 固定子極
22 固定子極
24 回転軸
26 配線基板
36 ホルダー
38 サーマルプロテクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2スロットのU字型の固定子の間に回転子を回転自在に配した同期モータにおいて、
前記U字型の固定子を構成する一対の固定子極の間の空間であって、前記一対の固定子極にそれぞれ巻回された固定子巻線の両方の近傍に位置するように、または、両方に接触するように温度検知手段を配し、
前記温度検知手段が検出した温度が所定温度以上のときに前記同期モータの回転を停止される過熱保護手段を有している
ことを特徴とする同期モータ。
【請求項2】
前記固定子の側面に前記同期モータの駆動回路を有した配線基板を配し、
前記配線基板にホルダーを取り付け、
前記温度検知手段と前記過熱保護手段とを前記ホルダーに収納して、前記一対の固定子極の間の空間に配し、かつ、前記駆動回路と前記過熱保護手段とが電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の同期モータ。
【請求項3】
前記温度検知手段と前記過熱保護手段とが一体となった自動復帰型の機能を有するサーマルプロテクターである
ことを特徴とする請求項1記載の同期モータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−187044(P2006−187044A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374421(P2004−374421)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(398061810)日本電産シバウラ株式会社 (197)
【Fターム(参考)】