説明

同期電動機の磁極位置推定装置および磁極位置推定方法

【課題】磁気突極性を有する同期電動機の磁気飽和の非線形性に対応でき、かつ、トルク脈動が発生しない磁極位置推定ができる。
【解決手段】単相高周波電圧発生部20はインバータの制御電圧に単相交流状の高周波電圧を重畳させ、そのときに発生する高周波電流成分から単振動軸位相演算部23等で同期電動機の磁極位置θeを推定する装置または方法において、
同期電動機10に発生する単相高周波電流成分によりトルク脈動が発生しないように前記高周波電圧の位相を二次元テーブル19で設定し、発生した単相高周波電流成分の単振動軸から電流座標におけるd軸を推定するための補正を位相補正テーブル24で補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を界磁源とする同期電動機の位置センサレス制御装置に係り、特に同期電動機の磁極位置推定装置および磁極位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同期電動機に所望のトルクを発生させるためには、回転子の磁極位置に対応した適切な位相で電流を供給する必要がある。この磁極位置検出による制御方式として、回転子軸に取り付けた磁極位置センサによる制御方式と、電動機電流から磁極位置を推定する位置センサレス制御方式がある。
【0003】
後者の磁極位置推定方式として、推定した界磁極のd軸(磁極軸)に単相高周波電圧を加え、この高周波電圧によって発生する電流から同期機の突極性を利用して、磁極軸(d軸)を推定するものがある(例えば、特許文献1参照)。これ以外にもq軸に電圧を加える方式や、電圧でなく高周波電流を加えて電圧を検出する方式などがある。
【0004】
特許文献1による磁極位置推定方式のブロック構成例を図4に示す。回転座標変換器1はd,q軸の正弦波電圧Vdc、Vqcとd−q軸位相角θ0とから三相UVWの電圧に変換し、これを電圧指令値とするインバータ2により同期電動機3に交番電圧を印加する。このときの電動機3に流れる各相電流は座標変換器4によってd−q軸電流Idc、Iqcに変換し、この電流から位相差検出器5にd−q軸との間の位相差θを検出し、この位相差θとd−q軸位相角θ0を加算することにより、磁極位置θnの推定値を得る。
【特許文献1】特許第3312472号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方式では下記のような問題がある。
【0006】
(1)高周波電流が流れた場合には。その周波数成分の脈動トルクが発生する。
【0007】
(2)誘導機に比べて、IPMSM(磁石埋め込み形同期機)は界磁磁極に磁石が埋め込まれており、電機子反作用磁束の影響により、磁気飽和による非線形が発生しやすい。そのため、負荷時のようにq軸電流が存在する場合には、d軸インダクタンス(Ld)やq軸インダクタンス(Lq)が変化する。この影響により、突極性のd軸磁気的特性のみから探索した場合には、正確な磁極が推定できない。
【0008】
図5は、IPMSMにd軸電流とq軸電流を流した場合に、d軸鎖交磁束とq軸鎖交磁束がどのように発生するか有限要素解析を用いて計算した例を示す。
【0009】
これは、横軸をd軸電流座標、縦軸をq軸電流座標にとった二次元座標である。この座標の電流ベクトル成分を流した場合に発生する磁束成分を有限要素法解析で計算し、d軸鎖交磁束成分とq軸鎖交磁束成分を求めた。これを各電流座標の点で繰り返して計算し、得られたd軸とq軸の計算結果をまとめて等高線として現したものである。
【0010】
ここで、d軸電流は実用的に使用されている弱め界磁の領域(Id<0)に限定し、また、q軸電流成分は力行と回生では対称な特性になるので、(Iq>0)のみに限定して表している。
【0011】
図6は、図5の磁束演算結果から、発生トルクと定格回転速度における端子電圧成分を計算し、同様に等高線で示したものである。
【0012】
特許文献1では、d軸の高周波電圧成分を加えることにより突極性を計測しているが、図5のA点のように、q軸電流成=0であってd軸座標上に基本波成分の電流ベクトルが存在する場合には、高周波電流は⇔で示すような単振動成分になる。
【0013】
しかし、q軸電流が発生している場合には、B点の⇔のように高周波電流を流すが、もし、実際のd軸と高周波電圧を入力する推定d軸に誤差が存在すると、発生する単振動電流の軸は電圧軸(d軸二点線の矢印)からずれてくる。この電流の単振動軸のずれ角Δθまたは、高周波電流成分のtan(Δθ)成分を図4の位相差検出器5で計算し、これが零になるように磁極推定位相を推定演算している。
【0014】
しかし、図5に示すように、インダクタンスLdとLq成分は実際には一定ではない。本来、各軸のインダクタンスが一定であるならば、図5のd−q軸電流座標上のd軸およびq軸鎖交磁束成分は、各軸に直交でかつ等間隔な直線となる。しかし、磁気飽和を考慮した有限要素法解析によると、鎖交磁束の等高線の間隔が変化しており、これによりインダクタンスが変化していることがわかる。また、その鎖交磁束の等高線も各軸と直交していないため、d軸電流によってq軸鎖交磁束が発生するといった、軸間の干渉成分が存在することがわかる。
【0015】
特に、低コスト化のため鉄心の外形直径を小さくして小形に設計した場合には、磁気飽和の影響を受けてこのような非線形が発生しやすい。そのため、特許文献1の方式をそのまま適用した場合には、q軸電流が増加した場合には磁気飽和の影響によりインダクタンスが変化するので、図5の場合はd軸鎖交磁束の等高線の接線方向を推定してしまうため、正確な磁極軸を推定することができない。
【0016】
また、B点で発生する電流高周波成分は、位相推定の収束が完了した場合でも、図6のトルクの等高線上に描いてみると、トルク一定の等高線を横切っており、トルク脈動が発生することがわかる。PMモータは全般的に慣性モーメントが小さいため、このトルク脈動による速度変動の発生や、負荷の機械軸での軸共振を発生させる原因となることもある。
【0017】
本発明の目的は、磁気突極性を有する同期電動機の磁気飽和の非線形性に対応でき、かつ、トルク脈動が発生しない磁極位置推定ができる磁極位置推定装置および磁極位置推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記の課題を解決するため、高周波電圧を入力する位相をd軸に平行な方向に固定せず、トルク脈動が発生しない高周波電流成分、つまりトルクの等高線と平行な電流を発生させて磁極位置を推定するようにしたもので、以下の装置および方法を特徴とする。
【0019】
(1)磁気突極性を有する同期電動機をインバータの位置センサレス制御で可変速運転する装置において、前記インバータの制御電圧に単相交流状の高周波電圧を重畳させ、そのときに発生する高周波電流成分から同期電動機の磁極位置を推定する装置であって、
同期電動機に発生する単相高周波電流成分によりトルク脈動が発生しないように前記高周波電圧の位相を設定する手段と、発生した単相高周波電流成分の単振動軸から電流座標におけるd軸を推定するための補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
(2)上記(1)において、前記手段は、電流座標におけるd軸およびq鎖交磁束成分を実験または有限要素法などの解析により求め、この鎖交磁束成分と電流座標よりトルク成分を求め、各電流のトルクが一定となる単相電流成分の方向を求め、さらに、この電流が発生したときに生じるd軸およびq軸の鎖交磁束の変動成分から注入する単相高周波電圧の位相を求めることを特徴とする。
【0021】
(3)磁気突極性を有する同期電動機をインバータの位置センサレス制御で可変速運転する装置において、前記インバータの制御電圧に単相交流状の高周波電圧を重畳させ、そのときに発生する高周波電流成分から同期電動機の磁極位置を推定する方法であって、
同期電動機に発生する単相高周波電流成分によりトルク脈動が発生しないように前記高周波電圧の位相を設定する手段と、発生した単相高周波電流成分の単振動軸から電流座標におけるd軸を推定するための補正手段とによって、磁極位置を推定することを特徴とする。
【0022】
(4)上記(3)において、前記手段は、電流座標におけるd軸およびq鎖交磁束成分を実験または有限要素法などの解析により求め、この鎖交磁束成分と電流座標よりトルク成分を求め、各電流のトルクが一定となる単相電流成分の方向を求め、さらに、この電流が発生したときに生じるd軸およびq軸の鎖交磁束の変動成分から注入する単相高周波電圧の位相を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、高周波電圧を入力する位相をd軸に固定せず、トルク脈動が発生しない高周波電流成分、つまりトルクの等高線と平行な電流を発生させて磁極位置を推定するようにしたため、磁気突極性を有する同期電動機の磁気飽和の非線形性に対応でき、かつ、電圧高周波を注入してもトルク脈動が発生しない制御系を実現できる。また、磁気飽和によるインダクタンスの変動を補正する機能も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
図1は、本実施形態を示す位置センサレス制御装置のブロック図である。ここで、速度制御などのメジャー制御ブロックは省略し、d軸とq軸電流指令が与えられており、磁極位置を推定しながら正確にd軸とq軸の基本波電流を発生するブロックを示す。すなわち、実用的には、トルク指令や電圧指令などからq軸やd軸電流指令に変換したり、速度推定が速度指令と一致するように速度制御ブロックを構成するが、これらのメジャー制御部は本発明とは別の原理であるため図1では省略している。
【0025】
図1のブロック図における各部を説明する。まず、IPMモータ(永久磁石界磁形同期電動機)の通常の制御装置がもつ要素を説明する。
【0026】
d軸電流指令id*は、IPMモータ10の端子電圧を制御するために与えられる。q軸電流指令iq*は、IPMモータ10の発生トルクを制御するために与えられる。
【0027】
基本波電流制御部11は、d軸電流指令id*とq軸電流指令iq*を入力とし、これらとIPMモータ10から検出される高周波成分を除去した基本波のd−q軸電流との偏差を比例積分(PI)制御などを利用してd−q軸電圧指令vd*、vq*を得る。この基本波電流制御部11は、d−q軸は基本波周波数で回転する回転座標系上であるため、この電流や電圧成分は直流成分になる。
【0028】
逆回転座標変換部12は、電圧指令vd*、vq*を入力とし、推定磁極の位相θeを用いて、回転座標から固定座標の電圧指令Vα*、Vβ*に変換する。この固定座標はα−β軸と呼ぶことにする。
【0029】
2相/3相変換部13は、逆回転座標変換部12の2軸成分の固定座標に変換された電圧指令Vα*、Vβ*を、3相の交流電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に変換する。
【0030】
PWM増幅部14は、PWM(パルス幅)変調技術とIGBTなどのスイッチング素子を利用して、3相交流電圧指令Vu*、Vv*、Vw*と等価な電圧に増幅する。通常はこの部分をインバータと称しており、この出力でモータ10を駆動する。
【0031】
電流検出器15は、IPMモータ10の駆動電流になる3相交流電流iu、iv、iwを検出する。この電流検出は、2相の高周波電流を検出し、残りの1相は演算により推定することもできる。3相/2相変換部16は、電流検出器15で検出した3相交流電流iu、iv、iwを2軸成分の固定座標電流成分に変換する。回転座標変換部17は、3相/2相変換部16に得る2相電流を推定位相θeを使って逆回転座標変換部12と逆の回転座標変換を行う。
【0032】
高周波成分除去部18は、回転座標変換部17の回転座標上の電流成分id、iqから高周波成分を除去し、IPMモータ10の電流検出信号として電流制御部11にフィードバックする。具体的には、低域通過フィルタ(LPF)を示すが、ディジタルフィルタ処理でもよい。
【0033】
次に、磁極位置推定を行う制御ブロックを説明する。
【0034】
二次元テーブル19は、d軸電流指令id*とq軸電流指令iq*をテーブル変数入力とし、単相高周波電圧成分のd軸との位相差角ΔθhVを出力する。
【0035】
単相高周波電圧発生部20は、二次元テーブル19からの単相高周波電圧位相(Δθhv)を基準位相として、d軸およびq軸の単相高周波電圧を発生する。ここでは、角周波数ωhの単相高周波を発生させる。
【0036】
この単相高周波電圧発生部20のブロックは、d軸電流指令id*とq軸電流指令iq*から単相高周波電圧指令Vh*を得る単相高周波電圧指令部20Aと、高周波(角周波数ωh)の正弦波発生部20Bと、回転座標変換部20Cで構成され、単相高周波電圧指令部20Aから発生した電圧指令Vh*と正弦波発生部20Bで発生した高周波信号cosωtの乗算で得る単相高周波電圧信号を、回転座標変換部20Cで二次元テーブル19の出力である単相電圧高周波成分の位相ΔθhVで回転座標変換することにより、d−q軸電圧座標上の単相高周波電圧指令ΔVhd*、ΔVhq*に変換する。
【0037】
ここで、原理的には座標変換であるが、実際には入力の片方の値は零値固定であるため、sin(ΔθhV)およびcos(ΔθhV)関数を乗算するのに等しい。また、電圧指令は二次元テーブル19から得ているが、電流振幅変動を許容すれば固定値でもかまわない。
【0038】
高周波電圧重畳部21は、基本波電流制御部11の基本波電圧指令Vd*、Vq*に、単相高周波電圧発生部20からの高周波電圧指令Δvhd*、Δvhq*を加算することにより、高周波電圧を基本波成分に重畳させる。
【0039】
高周波成分抽出部22は、回転座標変換部17から得る回転座標上の電流id、iqから、高周波電圧成分Δvhd*、Δvhq*と同じ周波数の高周波電流成分ihd、ihqのみを取り出す。具体的には、高域通過フィルタ(HPF)を示すが、ディジタルフィルタ処理でもよい。
【0040】
単振動軸位相演算部23は、高周波成分抽出部22で抽出した高周波電流成分ihd、ihqから、電流の単振動成分が発生している軸の推定位相Δθhieを演算で求める。
【0041】
位相補正テーブル24は、d軸とq軸電流指令id*、iq*をテーブル変数入力とし、高周波電流の単振動位相軸と磁極軸の位相差(Δθhic)を出力する二次元テーブルデータを、補間演算した連続の位相補正量として出力する。
【0042】
磁極推定誤差演算部25は、単振動軸位相演算部23からの電流の単振動軸推定位相Δθhieから、位相補正テーブル24からの位相補正量Δθhicを減算して、磁極推定の軸ずれ位相量Δθheを求める。
【0043】
回転速度推定演算部26は、磁極推定誤差演算部25の出力である磁極推定の軸ずれ位相量Δθheを積分して、磁極の推定回転速度ωeを求める。
【0044】
推定d軸位相演算部27は、回転速度推定演算部26の磁極の推定回転速度ωeを積分して、磁極の推定位相θeを求める。この位相θeは逆回転座標変換部12や回転座標変換部17の基準位相として使用する。なお、推定d軸位相演算部27は、磁極推定誤差演算部25の出力である位相誤差を直接利用せず、回転速度推定演算部26の速度推定演算を行う間接方式を採用したのは、ランプ波形状に速度が加速する場合には、磁極推定遅れにより推定位相誤差が零に収束しないことを防止するためである。
【0045】
以上のように、本実施形態では、高周波単相交流電圧を3相交流電圧に重畳して磁極位置を推定する方式であるが、発生する高周波電流成分によってトルク脈動が発生しないように注入する電圧位相を設定し、その代わり検出された電流の高周波成分の単振動軸から磁極を推定する位相補正テーブル24を設けることにより、高周波電圧を入力する位相をd軸に固定せず、トルク脈動が発生しない高周波電流成分から磁極位置を推定することができる。また、テーブル24の機能により、磁気飽和の非線形性に対応できる。
【0046】
(実施形態2)
実施形態1では、高周波電流によるトルク脈動を発生させない制御機構を示した。本実施形態では、位相補正テーブルの設定方法について提案するものである。この設定方法を説明するために、図5及び図6のような、d−q軸電流座標上における磁束成分と、トルクの等高線が得られているものと仮定する。説明をするための記号を記入するため、図5を新たに図2、図6を図3として書き直す。
【0047】
図2はIPMモータの有限要素法解析例d−q軸電流座標における、d軸およびq軸鎖交磁束成分の等高線で表示したものである。図3は図2の磁束分布より発生トルクと端子電圧を計算し等高線で示したものである。
【0048】
高周波電流が存在してもトルク脈動が発生しないようにするためには。一定トルクの等高線と平行な高周波電流が発生できればよい。そこで、基本波電流指令が図3のC点のようなd軸及びq軸の基本波電流指令が入力された場合で説明する。
【0049】
このC点を通過するトルク等高線の接線を求め、d軸と位相差(Δθhic)を求める。これを、各電流点で計算することにより、図1の位相補正テーブル24に相当する二次元テーブルを設定する。
【0050】
次に、図1の二次元テーブル19に相当する単振動電圧の発生軸のテーブルの設定方法を説明する。例えば、C点の電流座標の場合には、磁束の分布は図3のC点に相当している。ここで、発生させたい電流の高周波成分の振幅に相当する電流直線を引き、この両端部分(Ba,Bb)のd軸磁束成分とq軸磁束成分を求める。このd軸とq軸両端の磁束の差成分ΔΦd、ΔΦqを求め、これを用いてd軸とq軸の電圧成分を計算する。
【0051】
【数1】

【0052】
この(1)式は、高周波電圧を半周期間積分すると磁束の振幅に相当することを示す。
積分を半周期の期間に限定すると(2)式となる。
【0053】
【数2】

【0054】
(2)式より、d軸とq軸に正弦波状に入力する電圧成分が、磁束の振幅より(3)式として計算できる。
【0055】
【数3】

【0056】
d軸とq軸の電圧成分を局座標に変換すると、単振動電圧の発生位相が(4)式で、電圧の振幅が(5)式で得られる。
【0057】
【数4】

【0058】
この演算結果を各電流座標で計算すれば、図1の二次元テーブル19に相当する単振動電圧の発生位相Δθhvのテーブルデータを求めることができる。また、20Aに設定する電圧テーブルも|Vh|を設定すれば電流振幅を一定にすることができる。
【0059】
以上のように、電流座標におけるd軸およびq鎖交磁束成分を実験や有限要素法などの解析により求め、この鎖交磁束と電流座標よりトルク成分を求め、各電流のトルクが一定となる単相電流成分を求め、さらに、この電流が発生したときに生じるd軸およびq軸の鎖交磁束の変動成分から注入する電圧の位相を求めることができる。
【0060】
なお、これらのデータは、インバータ本体にオートチューニング機能がある場合にはインバータ本体に組みこんで自動的に計算することができるし、外部の計算機で解析した結果からオフラインで計算したテーブルを入力するなどの方式でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態を示す位置センサレス制御装置のブロック図。
【図2】d軸鎖交磁束とq軸鎖交磁束の二次元座標。
【図3】端子電圧成分の等高線図。
【図4】磁極位置推定方式のブロック構成例。
【図5】d軸鎖交磁束とq軸鎖交磁束の二次元座標。
【図6】端子電圧成分の等高線図。
【符号の説明】
【0062】
10 同期電動機
11 基本波電流制御部
12 逆回転座標変換部
17 回転座標変換部
19 二次元テーブル
20 単相高周波電圧発生部
23 単振動軸位相演算部
24 位相補正テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気突極性を有する同期電動機をインバータの位置センサレス制御で可変速運転する装置において、前記インバータの制御電圧に単相交流状の高周波電圧を重畳させ、そのときに発生する高周波電流成分から同期電動機の磁極位置を推定する装置であって、
同期電動機に発生する単相高周波電流成分によりトルク脈動が発生しないように前記高周波電圧の位相を設定する手段と、発生した単相高周波電流成分の単振動軸から電流座標におけるd軸を推定するための補正手段とを備えたことを特徴とする同期電動機の磁極位置推定装置。
【請求項2】
前記手段は、電流座標におけるd軸およびq鎖交磁束成分を実験または有限要素法などの解析により求め、この鎖交磁束成分と電流座標よりトルク成分を求め、各電流のトルクが一定となる単相電流成分の方向を求め、さらに、この電流が発生したときに生じるd軸およびq軸の鎖交磁束の変動成分から注入する単相高周波電圧の位相を求めることを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の磁極位置推定装置。
【請求項3】
磁気突極性を有する同期電動機をインバータの位置センサレス制御で可変速運転する装置において、前記インバータの制御電圧に単相交流状の高周波電圧を重畳させ、そのときに発生する高周波電流成分から同期電動機の磁極位置を推定する方法であって、
同期電動機に発生する単相高周波電流成分によりトルク脈動が発生しないように前記高周波電圧の位相を設定する手段と、発生した単相高周波電流成分の単振動軸から電流座標におけるd軸を推定するための補正手段とによって、磁極位置を推定することを特徴とする同期電動機の磁極位置推定方法。
【請求項4】
前記手段は、電流座標におけるd軸およびq鎖交磁束成分を実験または有限要素法などの解析により求め、この鎖交磁束成分と電流座標よりトルク成分を求め、各電流のトルクが一定となる単相電流成分の方向を求め、さらに、この電流が発生したときに生じるd軸およびq軸の鎖交磁束の変動成分から注入する単相高周波電圧の位相を求めることを特徴とする請求項3に記載の同期電動機の磁極位置推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−206330(P2008−206330A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40535(P2007−40535)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】