説明

同相信号低減回路

【課題】ノイズ成分の同相信号を低減する同相信号低減回路に関し、比較的簡単な構成によりDSL方式に於けるツイストペアケーブルに重畳された同相信号を低減する。
【解決手段】データ端末を接続するDSL送受信器1と、伝送線路としてのツイストペアケーブル4とを送受信トランス2を介して接続し、ツイストペアケーブル4とアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランス3の第1、第2のコイル3a,3bを接続した構成を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイストペアケーブルを伝送線路としたDSL方式に於けるノイズ成分の同相信号を低減する同相信号低減回路に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的大容量のデータ伝送を可能としたADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)方式やVDSL(Very high−bit−rate Digital Subscriber Line)方式等のDSL(Digital Subscriber Line)方式が実用化されており、又伝送線路としては、電話加入者線として適用されているツイストペアケーブルを用いた構成が適用されている。このツイストペアケーブルに、各種のノイズ成分が重畳されることから、データの伝送誤り率を増加させる原因となる。DSL方式の伝送信号は差動信号として伝送するものであるが、ノイズ成分は、同相信号として重畳されるから、差動信号に対してはローインピーダンスで、同相信号に対してはハイインピーダンスとなるコモンモードチョークをツイストペアケーブルに接続して、ノイズ成分を低減する構成が知られている。
【0003】
図4は、コモンモードチョークコイルを用いた従来例のDSL方式の要部説明図であり、図示を省略したパソコン等のデータ端末を接続したDSL送受信器11に、送受信トランス12とコモンモードチョーク13とを介してツイストペアケーブル14を接続した構成が一般的である。伝送周波数を1MHz程度以下とした場合は、送受信トランス12により同相信号成分の除去も可能であったが、大容量伝送を可能とする為に、伝送周波数を数10MHz程度までの広範囲の周波数帯を使用する場合、送受信トランス12のみでは充分に同相信号成分を減衰させることができないので、伝送信号の差動信号に対してローインピーダンス、且つ同相信号に対してハイインピーダンスの特性の図示のコモンモードチョーク13を接続して、ノイズ成分となる同相信号成分を抑圧する。
【0004】
又コモンモードチョークとコンデンサとを用いて同相信号成分を低減する構成として、電力線通信システムに於ける分岐線路等に適用した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。又DSL方式に於ける伝送データと音声信号とを分離する為のローパスフィルタとハイパスフィルタとを含むスプリッタ装置に、コモンモードチョークを電話機の前段に接続した構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。又ADSL方式に於けるデータ伝送経路側、即ち、データ端末の前段に同相信号を低減する為のコモンモードチョークを接続し、音声信号経路側、即ち、電話機の前段にローパスフィルタを接続したスプリッタ装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−33113号公報
【特許文献2】特開2003−152894号公報
【特許文献3】特開2003−179454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコモンモードチョークを使用して、同相信号の低減を図る構成に於いては、コモンモードチョークの特性上、同相信号に対してはハイインピーダンス特性を示すから、DSL送受信器への同相信号成分からなるノイズ成分の入力を阻止することができるが、その反面、ハイインピーダンスによって伝送線路上に現れる同相信号成分による電圧は高くなる。従って、DSL送受信器への同相信号成分の低減作用の一部が相殺される問題がある。又同相信号成分は、伝送線路の平衡度によってその一部が差動信号成分に変換され、差動信号の送受信信号に対するノイズ成分として重畳されるから、伝送誤り率が増加する問題がある。
【0006】
本発明は、前述の従来の問題点を解決するものであり、比較的簡単な構成により同相信号成分を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の同相信号低減回路は、DSL送受信器と伝送線路としてのツイストペアケーブルとを送受信トランスを介して接続し、前記ツイストペアケーブルとアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランスを接続した構成を有するものである。
【0008】
又DSL送受信器と伝送線路としてのツイストペアケーブルとを送受信トランスを介して接続し、前記ツイストペアケーブルとアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランスの第1、第2のコイルを、それぞれコンデンサを介して接続した構成を有するものである。
【0009】
又DSL送受信器と伝送線路としてのツイストペアケーブルとを、送受信トランスとコモンモードチョークコイルとを介して接続し、前記ツイストペアケーブルとアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランスの第1、第2のコイルを、それぞれ第1、第2のコンデンサを介して接続し、前記差動トランスの第1、第2のコイルと前記第1、第2のコンデンサとの接続点に電話機を接続した構成を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
ツイストペアケーブルを差動トランスの第1、第2のコイルを介してアースに接続することにより、ツイストペアケーブルの線間に対して第1、第2のコイルが直列に接続されて、差動信号に対してはハイインピーダンスとなり、伝送するデータは差動信号であるから、減衰等の影響を及ぼすことはなく、ツイストペアケーブルに重畳されるノイズ成分は同相信号であり、この同相信号に対してローインピーダンス特性となるから、同相信号を低減することができる。従って、DSL方式に於けるノイズ成分による伝送誤りを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の同相信号低減回路は、図1を参照して説明すると、DSL送受信器1と伝送線路としてのツイストペアケーブル4とを送受信トランス2を介して接続し、ツイストペアケーブル4とアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランス3を接続した構成を有するものである。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1の説明図であり、1はDSL送受信器、2は送受信トランス、3は差動トランス、4はツイストペアケーブルを示す。DSL送受信器1には、図示を省略したデータ端末を接続するもので、このDSL送受信器1に送受信トランス2を介してツイストペアケーブル4を接続する。又差動トランス3は、第1、第2のコイル3a,3bを有し、その第1、第2のコイル3a,3bのそれぞれ一端をアースに接続し、他端をツイストペアケーブル4に接続する。従って、ツイストペアケーブル4の線間に差動トランス3の第1、第2のコイル3a,3bを直列接続し、第1、第2のコイル3a,3bの接続点をアースに接続した構成するもので、差動トランス3は、ツイストペアケーブル4を伝送する差動信号に対してはハイインピーダンス、同相信号に対してはローインピーダンスの特性となる。それにより、伝送信号としての差動信号に対しては影響を与えることなく、ノイズ成分の同相信号を減衰させることができる。従って、差動トランス3は、コモンモードチョークコイルのように、同相信号に対してハイインピーダンスによる同相信号電圧の上昇の問題はなく、ノイズ成分の同相信号を低減することができる。
【実施例2】
【0013】
図2は、本発明の実施例2の説明図であり、図1と同一符号は同一部分を示し、C1,C2は第1、第2のコンデンサである。この実施例2は、差動トランス3の第1、第2のコイル3a,3bをそれぞれ第1、第2のコンデンサC1,C2を介してアースに接続する。これらのコンデンサC1,C2は、DSL送受信器1による送受信信号の周波数帯域と差動トランス3の同相信号に対するインダクタンス等を考慮して静電容量値を選定することができる。
【実施例3】
【0014】
図3は、本発明の実施例3の説明図であり、1はDSL送受信器、2は送受信トランス、3は差動トランス、3a,3bは第1、第2のコイル、4はツイストペアケーブル、5はコモンモードチョーク、6は電話機、C1,C2は第1、第2のコンデンサを示す。この実施例3は、ツイストペアケーブル4に、コモンモードチョーク5と送受信トランス2とを介してDSL送受信器1を接続し、且つ差動トランス3を介して電話機6を接続し、この差動トランス3の第1、第2のコイル3a,3bと電話機6との間を、第1、第2のコンデンサC1,C2を介してアースに接続し、差動トランス3をスプリッタとして作用させる構成を有するものである。
【0015】
DSL送受信器1は、コモンモードチョーク5の同相信号に対するハイインピーダンス特性によりノイズ成分が入力されないようにし、且つ同相信号成分の電圧が高くなったとしても、差動トランス3と第1、第2のコンデンサC1,C2とにより、その同相信号成分に対してローインピーダンス特性となるから、同相信号成分の電圧上昇を確実に抑制することができる。又差動トランス3は、電話機6による音声信号帯域を通過させ、その音声信号帯域より高周波帯域のデータ伝送帯域を阻止する特性とするものであり、従って、差動トランス3をスプリッタとして動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1の説明図である。
【図2】本発明の実施例2の説明図である。
【図3】本発明の実施例3の説明図である。
【図4】従来例の要部説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 DSL送受信器
2 送受信トランス
3 差動トランス
4 ツイストペアケーブル
5 コモンモードチョークコイル
C1,C2 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSL送受信器と伝送線路としてのツイストペアケーブルとを送受信トランスを介して接続し、前記ツイストペアケーブルとアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランスを接続したことを特徴とする同相信号低減回路。
【請求項2】
DSL送受信器と伝送線路としてのツイストペアケーブルとを送受信トランスを介して接続し、前記ツイストペアケーブルとアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランスの第1、第2のコイルを、それぞれコンデンサを介して接続したことを特徴とする同相信号低減回路。
【請求項3】
DSL送受信器と伝送線路としてのツイストペアケーブルとを、送受信トランスとコモンモードチョークコイルとを介して接続し、前記ツイストペアケーブルとアースとの間に差動信号に対してハイインピーダンス且つ同相信号に対してローインピーダンスとなる差動トランスの第1、第2のコイルを、それぞれ第1、第2のコンデンサを介して接続し、前記差動トランスの第1、第2のコイルと前記第1、第2のコンデンサとの接続点に電話機を接続したことを特徴とする同相信号低減回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−72301(P2008−72301A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247925(P2006−247925)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000237662)富士通アクセス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】