説明

同軸ケーブル及びその遮蔽性能評価方法

【課題】低周波帯において遮蔽性能が改善されてノイズの侵入を防止し、ワイヤーハーネスとの統合化を図ることができる同軸ケーブル及び手間をかけずに低費用で遮蔽性能を評価することができる同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法を提供する。
【解決手段】絶縁体4で被覆された内部導体3の外周に外部導体層17が設けられ、その外周にシース7が設けられた同軸ケーブル15において、前記外部導体層17が、絶縁体4の外周に設けられ、遮蔽抵抗が35mΩ/m以下に設定された1層の主導体層18と、その外周に設けられ、外部導体層17全体の遮蔽抵抗を6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mまで低減させる1層の補助導体層19とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両内の信号伝送(例えば、ラジオ、モニター画像等)に使用される同軸ケーブル及びその遮蔽性能評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の一般的な同軸ケーブルは、図8、図9に示すような構成になっている。図8に示す同軸ケーブル1は、絶縁体4で被覆された内部導体(中心導体)3の外周に、1層の外部導体層(遮蔽層)5が設けられ、その外周にシース(外被)7が設けられたものである。また、図9に示す同軸ケーブル2は、絶縁体4で被覆された内部導体3の外周に、遮蔽性能を改善するために、2層の外部導体層5、6が設けられ、その外周にシース7が設けられたものである。外部導体層5、6は、複数本の金属素線を網目状に編組したもの、複数本の金属素線を横巻きしたもの、金属箔、金属テープ又はプラスチックテープの片面に金属蒸着層をラミネートした複合テープを縦添え又は横巻きしたもの等が使用される(特許文献1参照)。
【0003】
また、同軸ケーブル1、2の遮蔽性能評価方法としては、一般に国際標準IEC61196に定められた伝達インピーダンス法が用いられている。この方法は、図10に示すような伝達インピーダンス測定装置8を用い、その金属パイプ9内に、規定長さlの同軸ケーブル1、2を挿入し、発信器10側から電流を流し、外部導体層5、6を流れる外部電磁界との結合により発生した内部導体3の電圧を測定し、その出力電圧U2と入力電圧U1との比を演算し、スペクトラムアナライザ11で周波数に対する伝達インピーダンスを読み取る方法である。この伝達インピーダンスが小さいほど、外部導体層5、6の遮蔽性能が改善されることを意味する。
【0004】
【特許文献1】特開2004−214137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車等の車両内の信号伝送(例えば、ラジオ、モニター画像等)に使用される同軸ケーブル1、2は、車両内に配索されたワイヤーハーネスやオルタネータ、モータ等のノイズ源から生じるノイズの影響を受けやすい。ノイズの影響は、ラジオ、テレビ、ナビゲーション等の音声、画像信号を乱し、雑音、画像のちらつき等となってあらわれるため、従来の同軸ケーブル1、2はノイズ源となるワイヤーハーネス(W/H)から離れた別の経路に配索させていた。
【0006】
近年、車両室内の拡大化の傾向に伴い、配線材の配索経路が制限されたり、配索スペースが削減されたりする傾向にあり、従来は距離を置いて配置していたワイヤーハーネスやモータ類などのノイズ源と近接配置する必要がでてきており、今までは問題視されなかった低周波帯であるLW帯(153〜279kHz)、AMラジオで使用されるAM帯(522〜1710kHz)、SW帯(2.94〜21.975MHz)にもノイズ源からノイズが侵入してくる恐れがあり、このため、低周波帯(LW帯〜SW帯)において同軸ケーブルの遮蔽性能を改善することが必要になってくる。
【0007】
しかしながら、現在、低周波帯において遮蔽性能が改善された同軸ケーブルを開発する設計方法が確立されていない。このため、従来の同軸ケーブル1、2は、低周波帯において遮蔽性能が改善されておらず、低周波帯において、ノイズが侵入する恐れがあり、同軸ケーブルをワイヤーハーネスなどのノイズ源に近接配置することが困難であった。また、このような同軸ケーブルを開発する場合には、同軸ケーブルの遮蔽性能を評価する必要があるが、従来の伝達インピーダンス法による遮蔽性能評価方法は、伝達インピーダンス測定装置8が高価なこと、同軸ケーブルのサンプルを試行錯誤で多数試作する必要があること、伝達インピーダンスの測定に手間(労力、時間)がかかること等により、遮蔽性能評価方法に費用がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決し、低周波帯において遮蔽性能が改善されてノイズの侵入を防止し、ノイズ源と近接配置することができる同軸ケーブル及び手間をかけずに低費用で遮蔽性能を評価することができる同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、絶縁体で被覆された内部導体の外周に外部導体層が設けられた同軸ケーブルにおいて、前記外部導体層の遮蔽抵抗が6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mに設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の同軸ケーブルにおいて、前記外部導体層が複数層設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項2記載の同軸ケーブルにおいて、前記外部導体層が、絶縁体の外周に設けられ、遮蔽率が80%以上であるか、または、遮蔽抵抗が35mΩ/m以下に設定された1層又は複数層の主導体層と、その外周に設けられ、外部導体層全体の遮蔽抵抗を6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mまで低減させる1層又は複数層の補助導体層とからなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4記載の発明は、絶縁体で被覆された内部導体の外周に外部導体層が設けられた同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法において、前記外部導体層の遮蔽抵抗を測定又は算出することにより遮蔽性能を評価することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5記載の発明は、請求項7記載の同軸ケーブルの評価方法において、前記外部導体層の遮蔽抵抗を測定又は算出し、得られた遮蔽抵抗が11.0mΩ/m以下であるか否かを基準にして遮蔽性能を評価することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の同軸ケーブルによると、外部導体層の遮蔽抵抗が6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mに設定されているので、低周波帯において遮蔽性能が改善されて、ノイズの侵入を防止し、ノイズ源と近接配置することができる。また外部導体層の遮蔽性能の評価が簡単になるので、遮蔽性能の優れた同軸ケーブルを容易に設計して開発することができる。
【0015】
本発明の請求項2記載の同軸ケーブルによると、前記外部導体層が複数層設けられているので、外部導体層の遮蔽抵抗を容易に低減させ、遮蔽性能の改善を図ることができる。
【0016】
本発明の請求項3記載の同軸ケーブルによると、外部導体層が主導体層と補助導体層からなるので、外部導体層の遮蔽抵抗を調整する場合には、外側に位置する補助導体層の遮蔽抵抗を変更して、外部導体層の遮蔽抵抗を測定又は算出すればよい。従って、遮蔽抵抗の調整が容易になり、外部導体層の遮蔽抵抗を所望の抵抗値に的確に、且つ、速やかに設定することができる。また、主導体層の遮蔽率が80%以上、または、遮蔽抵抗が35mΩ/m以下に設定されているので、主導体層が絶縁体の外周に一様にむらなく被覆されて遮蔽性能がばらつかず安定し、遮蔽性能を改善し易くなる。更に、補助導体層の遮蔽抵抗の調整幅を広く取れるので、外部導体層全体の遮蔽抵抗を11.0mΩ/m以下に調整することが容易になる。
【0017】
本発明の請求項4記載の同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法によると、外部導体層の遮蔽性能を評価する基準として、伝達インピーダンスではなく、遮蔽抵抗(導体電気抵抗)を用いるので、その遮蔽抵抗を安価な測定装置を用いて簡単、且つ、正確に測定することができる。また、必ずしも同軸ケーブルのサンプルを試作して測定する必要がなく、外部導体層のサンプルだけ試作して測定することもできる。また、同軸ケーブル又は外部導体層のサンプルを試作する代わりに、数式計算により算出することもできる。更に、同軸ケーブル又は外部導体層のサンプルを試作する場合でも、数式計算により予測される遮蔽抵抗のサンプルを試作すればよいので、サンプルを試行錯誤して多数試作する必要がなくなる。従って、同軸ケーブルの遮蔽性能の評価を従来の伝達インピーダンス法よりも手間をかけることなく能率よく低費用で行うことができる。
【0018】
本発明の請求項5記載の同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法によると、前記外部導体層の遮蔽抵抗を測定又は算出し、得られた遮蔽抵抗が11.0mΩ/m以下であるか否かを基準にして遮蔽性能を評価するようにしたので、低周波帯において同軸ケーブルの遮蔽性能が改善されているかどうかの評価を的確に行うことができ、低周波帯において遮蔽性能が改善された同軸ケーブルの設計、開発、試験、検査等に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明の好ましい実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明に係る同軸ケーブル15の1実施形態を示す斜視図である。なお、従来の同軸ケーブルと同一構成のものには同一符号が付してある。
【0020】
本実施形態の同軸ケーブル15は、絶縁体4で被覆された内部導体(中心導体)3の外周に、外部導体層17が設けられ、その外周にシース7が設けられている。外部導体層17は、絶縁体4の外周に、これを一様に、即ち、後記金属素線、金属テープ等の間に隙間が出来ないように密着させて設けられ、遮蔽率が80%以上、または、遮蔽抵抗が35mΩ/m以下に設定された1層の主導体層18と、その外周に設けられ、外部導体層17全体の遮蔽抵抗を6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mまで低減させる1層の補助導体層19とから構成されている。補助導体層19は、外部導体層17の遮蔽抵抗を調整する機能を備えるものであるから、主導体層18に示すように一様に覆うのではなく、金属素線、テープ等の間に周方向に1箇所又は複数箇所にわたり隙間が形成されるように設けてもよい。
【0021】
外部導体層17を構成する主導体層18及び補助導体層19は、複数本の金属素線を網目状に編組したもの、複数本の金属素線を同方向若しくは交互に横巻きし(撚り合わせ)たもの、又は内部導体3の長手方向に沿って縦添えしたもの、金属箔、金属テープ又はプラスチックテープの片面に金属蒸着層をラミネートした複合テープを縦添え又は横巻きし(撚り合わせ)たもの等で構成される。主導体層18及び補助導体層19は前記したような1層ではなく、複数層設けるようにしてもよい。
【0022】
低周波帯において遮蔽性能が改善された同軸ケーブル15の設計、開発、試験、検査等のために、その外部導体層17の遮蔽性能を評価する場合には、その基準として伝達インピーダンスではなく遮蔽抵抗を用いる。その遮蔽抵抗を6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mに設定する場合には、内側に位置する主導体層18の遮蔽抵抗を35mΩ/m以下の所定値に予め設定し、次に、外側に位置する補助導体層19の遮蔽抵抗を適宜選択した同軸ケーブル15又は外部導体層17のサンプルを試作し、外部導体層17の遮蔽抵抗を測定して遮蔽性能を評価する。その遮蔽抵抗の測定値が11.0mΩ/mよりも大きい場合には、その補助導体層19を別の遮蔽抵抗を有する補助導体層19に取り換えた同軸ケーブル15又は外部導体層17のサンプルを再度試作し、外部導体層17の遮蔽抵抗を測定して遮蔽性能を再評価する。このような操作を必要回数行って、外部導体層17の遮蔽抵抗を6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mに設定する。
【0023】
外部導体層17の遮蔽抵抗を測定する場合には、例えば、図2に示すような構造が簡単で安価な遮蔽抵抗測定装置21を用いて測定することができる。即ち、所定長さの同軸ケーブル15又は外部導体層17のサンプルを試作して用意し、その両端をチャック等の把持部材23で把持し、電源25から把持部材23を通して外部導体層17に電流を流し、電気抵抗計27で外部導体層17の遮蔽抵抗(導体電気抵抗)を測定する。そして、得られた測定値が合否判定の基準である11.0mΩ/m以下である場合には合格(遮蔽性能が改善されている)、11.0mΩ/mよりも大きい場合には不合格(遮蔽性能が改善されていない)と判定することにより、外部導体層17の遮蔽性能を評価する。
【0024】
外部導体層17の遮蔽抵抗は、数
式計算により算出することもできる。その計算式は式(1)に示す通りである。
【0025】
R=10ρL/S・・・・・・・(1)
【0026】
Rは外部導体層17の遮蔽抵抗(mΩ/m)、ρは金属素線の体積固有抵抗値(μΩ・cm)、Sは外部導体層17の断面積(mm)で、金属素線の本数をn、外径をdmmとすると、nπd2/4、Lは外部導体層17の長さ(m)である。
【0027】
そこで、外部導体層17が、仮に外径0.32mmの軟銅素線の7本を横巻きし(撚り合わせて)構成された場合を想定すると、軟銅素線の体積固有抵抗値ρが1.742μΩ・cmなので、遮蔽抵抗Rは式(1)による計算で、30.96mΩ/mとなる。このサイズの外部導体層17を遮蔽抵抗測定装置21で測定した場合には、遮蔽抵抗が30.34mΩ/mになるので、遮蔽抵抗Rの理論計算値が実測値によく一致する。
【0028】
外部導体層17が複数層、例えば、前記主導体層18と補助導体層19で構成される場合の遮蔽抵抗Rは、各層の遮蔽抵抗、即ち、主導体層18の遮蔽抵抗R1と補助導体層19の遮蔽抵抗R2を並列に接続した場合の合成抵抗の計算式を適用することができる。その計算式は式(2)に示す通りである。
【0029】
R=1/(1/R1+1/R2)・・・・・(2)
【0030】
前記外部導体層17の遮蔽抵抗を6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mに設定した理由は次の理由によるものである。
【0031】
図3は、横軸にノイズ侵入が問題視されている低周波帯、即ち、LW帯(153〜279kHz)、AM帯(522〜1710kHz)、SW帯(2.94〜21.975MHz)の周波数(MHz)及びFM帯(76〜108MHz)、縦軸に伝達インピーダンス(mΩ/m)を取り、周波数をLW帯〜FM帯まで変化させたとき、外部導体層の伝達インピーダンスの目標性能値(T)と、外部導体層の異なる遮蔽抵抗(Ra、Rb、Rc、Rd)に対する伝達インピーダンスとがそれぞれ変化する状態を示すものである。
【0032】
図3において、Tは、従来一般的に用いられている同軸ケーブル(1.5C2V)の遮蔽性能に対し、ノイズレベルがLW帯〜SW帯において10dB以上低下するような遮蔽性能の改善が望まれるので、周波数をLW帯〜FM帯まで変化させ、その要件(10dB以上の低下)を満たすように求めた外部導体層の伝達インピーダンスの目標性能値を示す曲線である。また、Raは遮蔽抵抗が7.1mΩ/m、Rbは遮蔽抵抗が10.5mΩ/m、Rcは遮蔽抵抗が12.3mΩ/m、Rdは遮蔽抵抗が18.3mΩ/mの場合に、周波数をLW帯〜FM帯まで変化させ、求めた伝達インピーダンスの曲線である。
【0033】
図3に示す伝達インピーダンスの曲線から分かるように、LW帯の下限値である150kHz近傍において、外部導体層の伝達インピーダンスがその目標性能値(T)である8.5mΩ/m以下であれば、低周波帯(LW帯〜FM帯)すべてにおいて、遮蔽性能を改善(向上)させることができる。外部導体層の遮蔽抵抗で言えば、遮蔽抵抗(Rb)が10.5mΩ/mの場合には、LW帯〜FM帯のすべてにおいて、伝達インピーダンスが目標性能値(T)以下になり、遮蔽性能を改善することができる。しかしながら、外部導体層の遮蔽抵抗(Rc)が12.3mΩ/mの場合には、AM帯〜FM帯において目標性能値Tより低くなり、遮蔽性能を改善することができるが、LW帯において目標性能値Tである8.5mΩ/mより高くなってしまうため、遮蔽性能を改善することができない。
【0034】
そこで、上記知見に基づいて、150kHz近傍における外部導体層の伝達インピーダンスと遮蔽抵抗との関係を実験により調査した結果、図4に示すように、伝達インピーダンスと遮蔽抵抗との間には強い相関関係のあることが分かる。そこで、伝達インピーダンスの目標性能値である8.5mΩ/mを遮蔽性能の合格ラインの上限とすると、8.5mΩ/mの伝達インピーダンスに相当する遮蔽抵抗が10.5mΩ/m〜11.0mΩ/mになるので、11.0mΩ/mの遮蔽抵抗が遮蔽性能の合格ラインの上限となり、外部導体層の遮蔽抵抗が11.0mΩ/m以下に設定されることにより、低周波帯(LW帯〜SW帯)において、遮蔽性能が改善され、ノイズ源からのノイズの侵入を確実に防止することができる。 ところで、遮蔽抵抗が低くなるほど遮蔽性能が大きく改善されて好ましいが、外部導体層の肉厚が増大し、同軸ケーブルの外径が大きくなってくる。そこで、経済的な観点から遮蔽抵抗の下限値が6.6mΩ/mに設定される。
【0035】
前記外部導体層17の主導体層18の遮蔽率を80%以上または、遮蔽抵抗を35mΩ/m以下に設定した理由は次の理由によるものである。即ち、図5に示すように、主導体層18の遮蔽率が80%以下、または、遮蔽抵抗が35mΩ/mを超えると、主導体層18を絶縁体4の外周に一様にむらなく被覆するのが難しくなり、遮蔽性能にばらつきが生じて不安定になる。また、外部導体層17全体の150kHz近傍における伝達インピーダンスを11.0mΩ/m以下、即ち、遮蔽抵抗を8.5mΩ/m以下に下げることが難しくなり、遮蔽性能を容易に改善することができなくなる。これに対して、主導体層18の遮蔽率を80%以上、または、遮蔽抵抗を35mΩ/m以下に設定すると、主導体層18が絶縁体4の外周に一様にむらなく被覆されて遮蔽性能がばらつかず安定し、遮蔽性能を改善し易くなる。また、図6に示すように、主導体層18の遮蔽抵抗に対して、補助導体層19の遮蔽抵抗の調整幅を広く取れるので、外部導体層17全体の遮蔽抵抗を11.0mΩ/m以下に調整することが容易になる。
【0036】
(実施形態1) 本実施形態の同軸ケーブル15は、図7(a)に示すように、ポリエチレンで形成された外径1.61mmの絶縁体4で被覆された外径(線径)0.265mmの軟銅線(単線)で出来た内部導体(中心導体)3の外周に、外部導体層17が設けられ、その外周に厚さ0.5mmに押出し成形されたポリ塩化ビニル製のシース7が設けられる。外部導体層17は、絶縁体4の外周に一様に設けられた1層の主導体層18とその外周に設けられた2層の補助導体層19とから構成される。主導体層18は、外径(線径)0.10mmの錫めっき軟銅線をピッチ10mm、編組密度88%で網目状に編組して構成され、遮蔽抵抗が39mΩ/mに設定されている。補助導体層19は、90本の外径0.16mmの錫めっき軟銅線を60mmのピッチで同方向に内外2層に横巻きして(撚り合わせ)構成され、遮蔽抵抗が9.53mΩ/mに設定される。主導体層18及び補助導体層19とを合わせた外部導体層17全体の遮蔽抵抗は7.65mΩ/mまで低減させることができた。
【0037】
(実施形態2) 本実施形態の同軸ケーブル15は、図7(b)に示すように、補助導体層19として、7本の外径0.127mmの錫めっき軟銅線を撚り合わせた撚り線を18本、主導体層の外周に60mmのピッチで横巻きして(撚り合わせ)構成され、遮蔽抵抗が11.13mΩ/mに設定される。主導体層18及び補助導体層19とを合わせた外部導体層17全体の遮蔽抵抗は9.18mΩ/mまで低減させることができた。
【0038】
(実施形態3) 本実施形態の同軸ケーブル15は、図示省略するが、主導体層18は、外径25μm厚さの銅テープを1/3ラップでラップ巻きして構成され、補助導体層19として、7本の外径0.16mmの錫めっき軟銅線を撚り合わせた撚り線を15本、主導体層の外周に60mmのピッチで横巻きして(撚り合わせ)構成され、遮蔽抵抗が8.42mΩ/mに設定される。主導体層18及び補助導体層19とを合わせた外部導体層17全体の遮蔽抵抗は7.93mΩ/mまで低減させることができた。
【0039】
本発明の同軸ケーブル15は、上記実施形態のものから明らかなように、外部導体層17の遮蔽抵抗が6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mに設定されているので、低周波帯において遮蔽性能が改善されて、ノイズの侵入を防止し、ワイヤーハーネスとの統合化を図ることができる。また外部導体層17の遮蔽性能の評価が簡単になるので、遮蔽性能の優れた同軸ケーブルを容易に設計して開発することができる。
【0040】
また、前記外部導体層17が複数層設けられていると、外部導体層17の遮蔽抵抗を容易に低減させ、遮蔽性能の改善を図ることができる。
【0041】
更に、外部導体層17が主導体層18と補助導体層19から構成されていると、外部導体層17の遮蔽抵抗を調整する場合には、外側に位置する補助導体層19の遮蔽抵抗を変更して、外部導体層17の遮蔽抵抗を測定又は算出すればよい。従って、遮蔽抵抗の調整が容易になり、外部導体層17の遮蔽抵抗を所望の抵抗値に的確に、且つ、速やかに設定することができる。また、主導体層18の遮蔽率が80%以上、または、遮蔽抵抗が35mΩ/m以下に設定されていると、主導体層18が絶縁体4の外周に一様にむらなく被覆されて遮蔽性能がばらつかず安定し、遮蔽性能を改善し易くなる。更に、補助導体層19の遮蔽抵抗の調整幅を広く取れるので、外部導体層17全体の遮蔽抵抗を11.0mΩ/m以下に調整することが容易になる。
【0042】
本発明の同軸ケーブル15の遮蔽性能評価方法は、外部導体層17の遮蔽性能を評価する基準として、伝達インピーダンスではなく、遮蔽抵抗(導体電気抵抗)を用いるので、その遮蔽抵抗を安価な遮蔽抵抗測定装置21を用いて簡単、且つ、正確に測定することができる。また、必ずしも同軸ケーブル15のサンプルを試作して測定する必要がなく、外部導体層17のサンプルだけ試作して測定することもできる。また、同軸ケーブル15又は外部導体層17のサンプルを試作する代わりに、数式計算により算出することもできる。更に、同軸ケーブル15又は外部導体層17のサンプルを試作する場合でも、数式計算により予測される遮蔽抵抗のサンプルを試作すればよいので、サンプルを試行錯誤して多数試作する必要がなくなる。従って、同軸ケーブル15の遮蔽性能の評価を従来の伝達インピーダンス法よりも手間をかけずに能率よく低費用で行うことができる。
【0043】
更に、上記遮蔽性能評価方法を使用する場合、前記外部導体層17の遮蔽抵抗を測定又は算出し、得られた遮蔽抵抗が11.0mΩ/m以下であるか否かを基準にして遮蔽性能を評価するようにすると、低周波帯において同軸ケーブル15の遮蔽性能が改善されているかどうかの評価を的確に行うことができ、低周波帯において遮蔽性能が改善された同軸ケーブル15の設計、開発、試験、検査等に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る同軸ケーブルの1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す同軸ケーブルの遮蔽性能を評価する遮蔽抵抗測定装置の概要図である。
【図3】周波数をLW帯〜FM帯まで変化させたとき、外部導体層の伝達インピーダンスの目標性能値と、外部導体層の異なる遮蔽抵抗に対する伝達インピーダンスとがそれぞれ変化する状態を示す図である。
【図4】150kHz近傍における外部導体層の伝達インピーダンスと遮蔽抵抗との関係を示す図である。
【図5】外部導体層の主導体層と伝達インピーダンスとの関係を示す図である。
【図6】外部導体層の主導体層の遮蔽抵抗と補助導体層の遮蔽抵抗との関係を示す図である。
【図7】(a)は本発明の同軸ケーブルの実施形態1を示す断面図、(b)は実施形態2を示す断面図である。
【図8】従来の同軸ケーブルを示す断面図である。
【図9】従来の他の同軸ケーブルを示す断面図である。
【図10】同軸ケーブルの伝達インピーダンス法による遮蔽性能評価方法を示す概要図である。
【符号の説明】
【0045】
3:内部導体 4:絶縁体 7:シース 15:同軸ケーブル 17:外部導体層 18:主導体層 19:補助導体層 21:遮蔽抵抗測定装置 23:把持部材 25:電源 27:電気抵抗計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体で被覆された内部導体の外周に外部導体層が設けられた同軸ケーブルにおいて、前記外部導体層の遮蔽抵抗が6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mに設定されていることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記外部導体層が複数層設けられていることを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記外部導体層が、絶縁体の外周に設けられ、遮蔽率が80%以上であるか、または、遮蔽抵抗が35mΩ/m以下に設定された1層又は複数層の主導体層と、その外周に設けられ、外部導体層全体の遮蔽抵抗を6.6mΩ/m〜11.0mΩ/mまで低減させる1層又は複数層の補助導体層とからなることを特徴とする請求項2記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
絶縁体で被覆された内部導体の外周に外部導体層が設けられた同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法において、前記外部導体層の遮蔽抵抗を測定又は算出することにより遮蔽性能を評価することを特徴とする同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法。
【請求項5】
前記外部導体層の遮蔽抵抗を測定又は算出し、得られた遮蔽抵抗が11.0mΩ/m以下であるか否かを基準にして遮蔽性能を評価することを特徴とする請求項4に記載の同軸ケーブルの遮蔽性能評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−84800(P2008−84800A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266614(P2006−266614)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】