説明

吐水装置

【課題】流量調整の設定を保持したまま、吐止水切り替え用の押しボタンをロックすることができる吐水装置を提供する。
【解決手段】本発明は、押圧操作により吐水・止水が切り替えられ、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置(1)であって、主弁体を備え、押圧操作により主弁体が開閉され、回転操作により主弁体の開度が変化される開閉バルブユニット(10)と、使用者の押圧操作によって並進移動され、吐水・止水を切り替える開閉操作部(6)と、この開閉操作部の周囲に設けられ、使用者の回転操作によって回転移動されることにより吐水流量を調整する流量操作部(8)と、この流量操作部に設けられ、使用者によるロック操作により、流量操作部の回転位置に関わらず開閉操作部の並進移動を係止可能なロック機構(50)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吐水装置に関し、特に、押圧操作により吐水・止水が切り替えられ、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001−98596号公報(特許文献1)には、吐水装置が記載されている。この吐水装置は、中央に設けられた押しボタンを押すことによって吐水・止水が切り替えられ、押しボタンの周囲に設けられたハンドルを回すことによって流量を調節できるように構成されている。このような吐水装置は、押しボタンを押すだけで吐水・止水を切り替えることができるので、非常に使い勝手の良いものであるが、吐水装置上方からの物の落下等により、偶発的に吐水が開始されてしまう可能性があるという問題がある。
【0003】
この問題を解消するために、吐水・止水を切り替える押しボタンのロック機構を設けた吐水装置が市販されている。この吐水装置では、流量調整用ダイヤルの中心に配置され、ダイヤルよりも僅かに突出した状態にある押しボタンを一回押圧することにより、押しボタンがダイヤルから大きく突出して吐水状態となる。この状態でダイヤルを回すことにより、吐水流量が調節される。止水する場合には、大きく突出した状態の押しボタンを再び押圧して、押しボタンをもとの状態に戻す。また、不使用時等に押しボタンをロックするには、流量調整用のダイヤルを最少流量の位置まで回転させた後、ダイヤルを更にその方向に回転させる。これにより、吐止水切り替え用の押しボタンが押圧操作できなくなり、押しボタンがロックされる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−98596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のロック機構を設けた吐水装置では偶発的な吐水を防止することができるものの、押しボタンをロックする際に流量調整用のダイヤルを最少流量の位置まで回転させる必要がある。このため、ロック機構の使用後、次に吐水を開始する際には、再び流量を調整し直さなければならないという問題がある。これでは、押しボタン式吐水装置の使い勝手の良さも、効果が半減してしまう結果になる。
【0006】
従って、本発明は、流量調整の設定を保持したまま、吐止水切り替え用の押しボタンをロックすることができる吐水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、押圧操作により吐水・止水が切り替えられ、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置であって、主弁体を備え、押圧操作により主弁体が開閉され、回転操作により主弁体の開度が変化される開閉バルブユニットと、使用者の押圧操作によって並進移動され、吐水・止水を切り替える開閉操作部と、この開閉操作部の周囲に設けられ、使用者の回転操作によって回転移動されることにより吐水流量を調整する流量操作部と、この流量操作部に設けられ、使用者によるロック操作により、流量操作部の回転位置に関わらず開閉操作部の並進移動を係止可能なロック機構と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、使用者が開閉操作部を押圧操作すると、開閉操作部は並進移動され、これにより開閉バルブユニットの主弁体が開閉され、吐水・止水が切り替えられる。また、使用者が開閉操作部の周囲に設けられた流量操作部を回転操作すると、流量操作部は回転移動され、これにより開閉バルブユニットの主弁体の開度が変化されて吐水流量が調整される。使用者が、流量操作部に設けられたロック機構をロック操作すると、流量操作部の回転位置に関わらず、開閉操作部の並進移動が係止される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、流量操作部に設けられたロック機構により、開閉操作部が、流量操作部の回転位置に関わらず係止されるので、流量調整の設定を保持したまま、開閉操作部をロックすることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、ロック機構は、使用者によるロック操作により、流量操作部の回転中心に対して概ね半径方向に移動される係合端部を有し、この係合端部が、開閉操作部の外周に形成された係合受部と係合することにより、開閉操作部の並進移動が係止される。
【0011】
このように構成された本発明においては、開閉操作部の周囲に設けられた流量操作部に、概ね半径方向に移動可能な係合端部が配置される。この係合端部が、開閉操作部の外周に形成された係合受部と係合して開閉操作部が係止される。
このように構成された本発明によれば、流量操作部の回転位置に関わらず開閉操作部を係止する機構を、容易に構成することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ロック機構は、開閉操作部が吐水位置に並進移動されている場合には、開閉操作部の並進移動を係止しない。
このように構成された本発明によれば、吐水状態においては開閉操作部が係止されないので、開閉操作部が偶発的に係止され、吐水装置からの吐水が停止できなくなるのを防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、係合端部と係合受部が係合されると、開閉操作部の並進移動と共に流量操作部の回転移動も係止される。
このように構成された本発明によれば、止水状態で開閉操作部が係止されている間に偶発的に流量操作部が回転され、次に吐水を開始した際に、意図しない大流量で吐水が為される等の不都合を回避することができる。
【0014】
また、本発明は、押圧操作により吐水・止水が切り替えられ、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置であって、主弁体を備え、押圧操作により主弁体が開閉され、回転操作により主弁体の開度が変化される開閉バルブユニットと、使用者の押圧操作により並進移動されて吐水・止水を切り替え、使用者の回転操作により回転移動されて吐水流量を調整する開閉流量操作部と、この開閉流量操作部に設けられ、使用者によるロック操作により、開閉流量操作部の回転位置に関わらず開閉流量操作部の並進移動を係止可能なロック機構と、を有することを特徴としている。
【0015】
このように構成された本発明においては、使用者が開閉流量操作部を押圧操作すると、開閉流量操作部は並進移動され、これにより開閉バルブユニットの主弁体が開閉され、吐水・止水が切り替えられる。また、使用者が開閉流量操作部を回転操作すると、開閉流量操作部は回転移動され、これにより開閉バルブユニットの主弁体の開度が変化されて吐水流量が調整される。使用者が、開閉流量操作部に設けられたロック機構をロック操作すると、開閉流量操作部の回転位置に関わらず、開閉流量操作部の並進移動が係止される。
【0016】
このように構成された本発明によれば、開閉流量操作部に設けられたロック機構により、開閉流量操作部の並進移動が、その回転位置に関わらず係止されるので、流量調整の設定を保持したまま開閉流量操作部をロックすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吐水装置によれば、流量調整の設定を保持したまま、吐止水切り替え用の押しボタンをロックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による吐水装置を説明する。
まず、図1乃至図7を参照して、本発明の第1実施形態による吐水装置を説明する。図1は本実施形態による吐水装置の斜視図である。図2は本実施形態による吐水装置の止水状態における断面図であり、図3は吐水状態における断面図である。図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図である。図5は本実施形態による吐水装置の分解斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による吐水装置1は、吐水装置本体2を有し、この吐水装置本体2は、浴室やキッチン等のカウンター板4の背面側に収納されている。また、吐水装置1は、吐水・止水を切り替える開閉操作部である押しボタン6と、吐水流量を調整する流量操作部であるダイヤル8と、を有する。
【0020】
本実施形態による吐水装置1は、使用者が押圧操作により押しボタン6を並進移動させると吐水・止水が切り替えられ、回転操作によりダイヤル8を回転移動させると吐水流量が調整されるように構成されている。また、ダイヤル8は押しボタン6の周囲に設けられ、ダイヤル8の握り部8aにはロック機構50が設けられている。
【0021】
吐水装置本体2は、図2及び図3に示すように、カウンター板4の背面側に配置されており、サーモ水栓(図示せず)によって温度調節された湯水が流入する本体流入口2aと、吐水装置1を通過した湯水が流出する本体流出口2bが形成されている。
【0022】
押しボタン6は、図1乃至図3に示すように、概ね円筒形の部品であり、吐水装置1が止水状態にある場合には、ダイヤル8とほぼ面一に配置され、吐水状態にされると、ダイヤル8から突出するように移動される。
【0023】
ダイヤル8は、押しボタン6の周囲を取り囲むように配置された概ね円筒形の部品であり、その円周上には、半径方向外方に突出した握り部8aが形成されており、この握り部8aの内部にはロック機構50が内蔵されている。
【0024】
また、図2乃至図5に示すように、本実施形態による吐水装置1は、吐水装置本体2内に受け入れられた開閉バルブユニット10と、この開閉バルブユニット10を吐水装置本体2に固定するバルブ押さえ12と、を有する。さらに、吐水装置1は、バルブ押さえ12の周囲に配置された本体カバー14と、本体カバー14に回動可能に取り付けられた回転伝達部材16と、回転伝達部材16の脱落を防止する押さえリング18と、回転伝達部材16と共に回動され、回転伝達部材16の回転を開閉バルブユニット10に伝達する回動カラー20と、を有する。開閉バルブユニット10は、押しボタン6の押圧操作によって主弁体が開閉され、ダイヤル8の回転操作によって主弁体の開度が変化されるように構成されている。
【0025】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の第1実施形態による吐水装置1に内蔵されている開閉バルブユニット10の構成を説明する。図6は開閉バルブユニット10の断面図であり、図7は分解斜視図である。
【0026】
図6及び図7に示すように、開閉バルブユニット10は、バルブ本体22と、このバルブ本体22に取り付けられて圧力室を形成する圧力室形成部材24と、バルブ本体22と圧力室形成部材24の間に挟み込まれたダイヤフラム26と、このダイヤフラム26に取り付けられた主弁体28と、を有する。さらに、開閉バルブユニット10は、圧力室形成部材24に重ねて配置されたガイド部材30と、ガイド部材30の周囲に回動可能に配置された回転筒部材32と、押しボタン6の操作によって並進移動され、ダイヤル8の操作によって回転移動されるバルブ操作部材34と、回転筒部材32を圧力室形成部材24に回動可能に取り付けるバルブカバー36と、を有する。
【0027】
また、開閉バルブユニット10は、ガイド部材30に案内される摺動部材38と、この摺動部材38に取り付けられたパイロット弁シャフト40と、を有する。さらに、開閉バルブユニット10は、パイロット弁シャフト40の移動機構として、ガイド部材30の周囲に配置された回転誘起部材42と、バルブ操作部材34を付勢するコイルバネ44と、摺動部材38を移動させる送りねじが内周に形成された送りねじ部材46と、送りねじ部材46の周囲に配置され、押圧操作毎に回動される回動リング48と、を有する。
【0028】
バルブ本体22は、概ね円筒状の部材であり、外部側面のバルブ流入口22aから流入し、主弁座22bを通過した湯水を、バルブ流出口22cから流出させるように構成されている。
【0029】
圧力室形成部材24は、概ね円筒状の部材であり、ダイヤフラム26を挟むようにバルブ本体22に取り付けられて、ダイヤフラム26との間に圧力室25を形成するように構成されている。さらに、圧力室形成部材24の内側には、Oリング24a及びOリング押さえ24bが取り付けられ、この部分の水密性を確保している。また、圧力室形成部材24の外側にもOリング24cが配置され、この部分の水密性を確保している。
【0030】
主弁体28は概ね円盤状の部材であり、ダイヤフラム26に取り付けられて、ダイヤフラム26と共にバルブ本体22の主弁座22bを開閉するように構成されている。また、主弁体28の中心には圧力開放穴28cが設けられ、この圧力開放穴28cの入口には、Oリング28a及びOリング押さえ28bが取り付けられている。後述するように、この圧力開放穴28cは、パイロット弁シャフト40によって開閉されるように構成されている。さらに、主弁体28には、バルブ流入口22aから流入した湯水を圧力室25内に流入させる小穴28dが形成されている。
【0031】
ガイド部材30は、パイロット弁シャフト40に沿って延びる2本のガイド部30aと、ガイド部30aの基端に形成された円盤部30bと、を有する。円盤部30bは、圧力室形成部材24に重なるように配置され、圧力室形成部材24の外側に配置されたOリング24cを押さえるように構成されている。ガイド部30aは、パイロット弁シャフト40の両側にパイロット弁シャフト40に沿って延びるように形成されている。2本のガイド部30aの間には、摺動部材38が摺動可能に配置されており、摺動部材38の回転はガイド部30aによって阻止される。
【0032】
回転筒部材32は、概ね筒状の部材であり、ガイド部30aを取り囲むように、ガイド部材30に対して回動可能に取り付けられる。
バルブ操作部材34は、概ね筒状の部材であり、回転筒部材32の内側に摺動可能に配置されている。また、バルブ操作部材34の外周側面には5本の案内突起34a(図7)が形成されており、これらの案内突起34aが、回転筒部材32の内側に形成された5本の案内溝32a(図7)に夫々受け入れられることにより、バルブ操作部材34と回転筒部材32は一体となって回転される。
【0033】
バルブカバー36は概ね筒状の部材であり、回転筒部材32を取り囲むように配置され、圧力室形成部材24に取り付けられる。また、バルブカバー36は、回転筒部材32の基端に形成されたフランジ部32b(図7)を、圧力室形成部材24との間に挟むことにより、回転筒部材32を回動可能に圧力室形成部材24に取り付けるように構成されている。
【0034】
摺動部材38は、概ね直方体状の部材であり、その両側面に送りねじ部38a(図7)が形成されている。また、摺動部材38の基端にはパイロット弁シャフト40の基端が嵌合されており、パイロット弁シャフト40は摺動部材38と共に軸線方向に移動されるように構成されている。
【0035】
パイロット弁シャフト40は、摺動部材38から延び、ガイド部材30、圧力室形成部材24、及び主弁体28を貫通するように配置されている。さらに、パイロット弁シャフト40の先端付近には径が細くなった縮径部40aが形成されており、この縮径部40aは、主弁体28に取り付けられたOリング28aの内部に位置決めされている。また、パイロット弁シャフト40は、止水操作によって軸線方向に移動されることにより、パイロット弁シャフト40の径の太い部分がOリング28aに挿入されるように構成されている(図2)。これにより、主弁体28の圧力開放穴28cが閉鎖される。
【0036】
回転誘起部材42は概ね円筒状の部品であり、回転筒部材32の内側に、ガイド部材30と回転筒部材32の間に挟まれるように取り付けられている。また、回転誘起部材42の先端側には、複数の回転誘起歯42a(図7)が形成されている。この回転誘起歯42aは、バルブ操作部材34が押し込まれた際、回動リング48と係合して回動リング48を所定角度回転させるように構成されている。
【0037】
コイルバネ44は、ガイド部材30の円盤部30bと送りねじ部材46との間に、ガイド部材30のガイド部30aを取り囲むように配置されている。また、コイルバネ44は、送りねじ部材46、回動リング48及びバルブ操作部材34を、先端側に向かって突出させるように付勢している。
【0038】
送りねじ部材46は概ね円筒状の部材であり、ガイド部材30のガイド部30aを取り囲むように配置されている。また、送りねじ部材46の内周には摺動部材38の送りねじ部38aと螺合される送り雌ねじ部46aが形成されている。このため、送りねじ部材46が回動されると、ガイド部30aに案内されている摺動部材38が、送り雌ねじ部46aによって軸線方向に摺動される。さらに、送りねじ部材46の基端側にはフランジ部46bが形成されており、このフランジ部46bの基端側にはコイルバネ44の先端が当接され、先端側には回動リング48が回動可能に配置されている。また、送りねじ部材46の外周側面には、軸線方向に延びる4本の突起部46cが形成されている。これらの突起部46cが、バルブ操作部材34の内周に形成された軸線方向の4本の溝34b(図6)に夫々受け入れられることにより、送りねじ部材46とバルブ操作部材34は、一体となって回転される。
【0039】
回動リング48は概ね円環状の部材であり、送りねじ部材46の周囲に回動可能に配置されると共に、フランジ部46bに当接されている。また、回動リング48には、放射状に突出した4つの係合爪48a(図7)が形成されている。これらの係合爪48aは、吐水状態においては、回転筒部材32の内周に形成された軸線方向に延びる8本のラッチ溝32cのうちの4本に受け入れられている。この状態においては、回動リング48が回転筒部材32の先端側に移動することが許容される。これにより、回動リング48と共に移動されるバルブ操作部材34及び送りねじ部材46も、回転筒部材32から突出した位置(図3、図6)に移動することが許容される。
【0040】
一方、回動リング48の係合爪48aは、バルブ操作部材34がコイルバネ44の付勢力に抗して押し込まれた際、回転誘起部材42の回転誘起歯42aと当接されるように形成されている。回転誘起歯42aの先端は傾斜するように形成されているので、これに係合爪48aが押し付けられると、回動リング48が所定角度回転される。回動リング48が所定角度回転されることにより、その係合爪48aは、回転筒部材32のラッチ溝32cと整合しなくなる。このため、コイルバネ44の付勢力によりバルブ操作部材34及び送りねじ部材46が回動リング48と共に押し戻された後も、係合爪48aが回転筒部材32と係合し、バルブ操作部材34は押し込まれた位置(図2)に保持される。
【0041】
次に、バルブ操作部材34が再び押し込まれ、係合爪48aが回転誘起歯42aに当接されると、回動リング48がさらに所定角度回転される。これにより、係合爪48aは、回転筒部材32のラッチ溝32cと再び整合するようになる。このため、バルブ操作部材34及び送りねじ部材46は、コイルバネ44の付勢力により、回転筒部材32から突出した位置(図3、図6)に移動される。
【0042】
次に、図2乃至図5を参照して、開閉バルブユニット10の吐水装置本体2への取り付け構造、及び使用者による押しボタン6及びダイヤル8への操作力を、開閉バルブユニット10に伝達する機構を説明する。
【0043】
バルブ押さえ12は、概ね円筒状に形成されており、開閉バルブユニット10を取り囲むように取り付けられる。また、バルブ押さえ12の内周には雌ねじ12aが形成されており、これを吐水装置本体2に形成された雄ねじと螺合させることにより、バルブ押さえ12が吐水装置本体2に取り付けられている。また、バルブ押さえ12の端面は、開閉バルブユニット10のバルブカバー36の肩部と係合するように形成されているので、バルブ押さえ12を吐水装置本体2に螺合させることにより開閉バルブユニット10が吐水装置本体2に固定される。
【0044】
本体カバー14は、概ね円筒状に形成されており、バルブ押さえ12を取り囲むように取り付けられている。
回転伝達部材16は、概ね円環状の部品であり、本体カバー14の前面側に、本体カバー14に対して回動可能に取り付けられている。また、図4に示すように、回転伝達部材16の外周には、2つの回転伝達部材切欠部16aが形成されている。これらの回転伝達部材切欠部16aが、ダイヤル8の内側に形成された2つのダイヤル突起8bを夫々受け入れることによって、回転伝達部材16はダイヤル8と共に回転される。
【0045】
また、ダイヤル8の内周4箇所には、ダイヤル係合爪8cが形成されており、このダイヤル係合爪8cが回転伝達部材16の外周に係合することにより、ダイヤル8と回転伝達部材16が嵌合されている。これにより、使用者により押しボタン6が操作され、押しボタン6が突出された場合にも、ダイヤル8は突出されずに、もとの位置に維持される。
【0046】
押さえリング18は、円環状の部品であり、回転伝達部材16の背面側に取り付けられて、回転伝達部材16の本体カバー14からの脱落を防止している。
回動カラー20は、概ね円筒状の部品であり、開閉バルブユニット10の回転筒部材32先端部の外周に嵌められている。また、図4に示すように、回動カラー20の円周上の一箇所には、開閉バルブユニット10の軸線方向に延びる回動カラー切欠部20aが形成されている。この回動カラー切欠部20aは、回転筒部材32の外周に形成された軸線方向に延びる係合突起32dを受け入れており、これにより、回転筒部材32は回動カラー20と共に回動される。
【0047】
さらに、図4に示すように、回動カラー20の外周には、半径方向外方に延びる回動カラー突起20bが形成されている。この回動カラー突起20bは、回転伝達部材16に形成された半径方向内方に延びる1対の回転伝達部材突起16bの間に受け入れられており、これにより、回動カラー20は回転伝達部材16と共に回動される。
【0048】
従って、使用者がダイヤル8を回転操作すると、ダイヤル8、回転伝達部材16、及び回動カラー20が共に回転され、開閉バルブユニット10の回転筒部材32が回転される。
【0049】
一方、概ね円筒形に形成された押しボタン6の内壁面6aには、回転伝達部材16の円周壁16cが受け入れられており、これにより、押しボタン6は、開閉バルブユニット10の軸線方向に摺動可能に支持される。また、押しボタン6は、その背面が、開閉バルブユニット10のバルブ操作部材34の端面に当接されるように配置されている。このため、押しボタン6が押圧操作されると、バルブ操作部材34が押圧され、軸線方向に並進移動される。
【0050】
また、押しボタン6の背面には、位置決用突出部6bが、開閉バルブユニット10の軸線方向に延びるように設けられている。この位置決用突出部6bは、本体カバー14から押しボタン6に向かって延びる円弧状壁14aに設けられた位置決用凹部14bに受け入れられている。これにより、押しボタン6の回転位置が位置決めされると共に、押しボタン6の回転が阻止される。
【0051】
次に、図2乃至図5を参照して、ロック機構50の構成を説明する。
ロック機構50は、スライドツマミ52と、このスライドツマミ52に取り付けられたロック爪54と、ロック爪54をスライドツマミ52に取り付けるビス56と、を有する。
【0052】
図5に示すように、ダイヤル8の握り部8aの上端面には、スライドツマミ52を落とし込むための長方形のスライド凹部8dと、このスライド凹部8dの中に形成された長方形断面の開口部8eが形成されている。
スライドツマミ52には、使用者が把持する把持部52aが表側に形成され、裏側には開口部8eに挿入してロック爪54を固定するための台座部52bが形成されている。
【0053】
ロック爪54は金属製の薄板で形成されており、開口部8eに挿入されたスライドツマミ52の台座部52bに、ビス56により固定されている。この構成により、ロック爪54は、スライドツマミ52と共にダイヤル8の半径方向に摺動可能に取り付けられる。また、係合端部であるロック爪54の先端54aは尖鋭に形成され、ロック爪54の後端には湾曲部54bが形成されている。この湾曲部54bは、スライドツマミ52が半径方向外方に位置する非ロック位置においては、ダイヤル8の握り部8aの内壁面に設けられたクリック凹部8fに受け入れられている(図3)。一方、スライドツマミ52が半径方向内方に位置するロック位置に移動されると、湾曲部54bはクリック凹部8fの外部へ移動され(図2)、この際、スライドツマミ52の摺動にクリック感が与えられる。この構造により、スライドツマミ52を摺動させる際の適度な操作力が必要になり、スライドツマミ52の偶発的な移動が防止される。
【0054】
一方、押しボタン6の外周側面には、全周に亘って、係合受部である係合溝6cが形成されており(図5)、この係合溝6cの底面にはスプライン状の凹凸が形成されている。また、係合溝6cは、吐水装置1が止水状態にある場合(図2)にはロック爪54の先端54aと整合し、押しボタン6が突出された吐水位置にある場合(図3)には、先端54aと整合しない位置に位置決めされている。このため、吐水装置1が止水状態にある場合には、スライドツマミ52を非ロック位置からロック位置に移動させ、ロック爪54の先端54aを係合溝6cと係合させることができる。一方、吐水装置1が吐水状態にある場合には、ロック爪54の先端54aと係合溝6cが整合していないため、スライドツマミ52をロック位置に移動させることができない。
【0055】
次に、本発明の第1実施形態による吐水装置1の作用を説明する。
まず、図2に示すように、吐水装置1が止水状態にある場合には、ダイヤフラム26が、バルブ本体22の主弁座22bに着座し、主弁座22bが閉鎖されている。即ち、吐水装置本体2の本体流入口2aからバルブ流入口22a及び主弁体28に設けられた小穴28dを通って圧力室25に流入した湯水の圧力により、ダイヤフラム26及び主弁体28が主弁座22bに向けて押圧されるため、主弁座22bは閉鎖されている。次に、使用者は、スライドツマミ52が、図2に示すロック位置にある場合には、これを半径方向外方にスライドさせて非ロック位置に移動させる。
【0056】
スライドツマミ52が非ロック位置にある場合には、使用者によって押しボタン6が押圧操作されると、その背面に配置されたバルブ操作部材34も、軸線方向に押し込まれる。バルブ操作部材34が押し込まれることにより、その背面側に配置された回動リング48も押し込まれ、回動リング48の係合爪48aが回転誘起部材42の回転誘起歯42aに当接される。これにより、回動リング48は、開閉バルブユニット10の中心軸線を中心に所定角度回転される。次いで、使用者による押圧力が作用しなくなると、コイルバネ44の付勢力により、送りねじ部材46、回動リング48及びバルブ操作部材34が、ダイヤル8から突出する方向に移動される。ここで、回動リング48が所定角度回転されたことにより、その係合爪48aは回転筒部材32のラッチ溝32cと整合する位置に移動されている。これにより、係合爪48aはラッチ溝32cに受け入れられるので、送りねじ部材46、回動リング48及びバルブ操作部材34は、コイルバネ44の付勢力により、図3に示す位置まで移動される。
【0057】
送りねじ部材46が図3に示す位置まで移動されると、これに螺合されている摺動部材38、及び摺動部材38に取り付けられているパイロット弁シャフト40も共に移動される。パイロット弁シャフト40が移動されると、その縮径部40aが、主弁体28に取り付けられているOリング28aと整合するようになる。これにより、主弁体28の圧力開放穴28cが開放され、圧力室25内部の圧力が低下する。圧力室25内の圧力が低下することにより、ダイヤフラム26及び主弁体28が主弁座22bから離れ、吐水状態となる。
【0058】
次いで、使用者がダイヤル8を回転操作すると、回転伝達部材16、回動カラー20、回転筒部材32、バルブ操作部材34及び送りねじ部材46が共に回動される。なお、ダイヤル8の内側の押しボタン6は、位置決用突出部6b及び位置決用凹部14bによって回転が阻止されているので、ダイヤル8と共に回動されることはない。
【0059】
送りねじ部材46が回動されると、これに螺合されている摺動部材38が、送りねじにより軸線方向に移動される。これにより、パイロット弁シャフト40も軸線方向に移動される。ここで、パイロット弁シャフト40が、図3に示す位置から背面側(図3における右方向)に移動された場合には、その縮径部40aの端部がリング28aに接近するので、圧力開放穴28cの開度が減少する。これにより圧力室25内の圧力が上昇して、ダイヤフラム26及び主弁体28は主弁座22bの方向(図3における右方向)に移動され、開閉バルブユニット10から流出する湯水の流量が少なくなる。このように、ダイヤフラム26及び主弁体28は、パイロット弁シャフト40の移動に追従するように移動されるので、ダイヤル8の回転により吐水流量が調節される。
【0060】
次に、使用者が押しボタン6を再び押圧操作すると、バルブ操作部材34、送りねじ部材46、及び回動リング48が押しボタン6と共に軸線方向に押し込まれる。これにより、回動リング48の係合爪48aが回転誘起部材42の回転誘起歯42aに当接され、回動リング48は再び所定角度回転される。回動リング48が所定角度回転されたことにより、係合爪48aは回転筒部材32のラッチ溝32cと整合しなくなるので、係合爪48aが回転筒部材32に係合するようになる。これにより、バルブ操作部材34、送りねじ部材46、及び回動リング48は、コイルバネ44の付勢力に抗して、図2に示す止水位置に保持される。図2に示す状態においては、パイロット弁シャフト40が主弁体28の圧力開放穴28cを閉鎖するので、圧力室25内の圧力が上昇する。圧力室25内の圧力上昇により、ダイヤフラム26及び主弁体28は主弁座22bに着座され、止水状態となる。
【0061】
吐水装置1を暫く使用しない場合や、吐水装置1近辺の清掃を行う場合等に、使用者はロック操作を行い、スライドツマミ52をダイヤル8の半径方向内方のロック位置に移動させる。これにより、図2に示すように、ロック爪54の先端54aと押しボタン6側面の係合溝6cが係合し、押しボタン6を押圧操作することができなくなる。また、ロック爪54の先端54aと係合溝6cが係合することにより、先端54aが係合溝6cの底面のスプライン状の凹凸に嵌入するため、ダイヤル8の回動も係止される。ここで、係合溝6cは押しボタン6の全周に形成されているため、ダイヤル8の回転位置に関わらず、スライドツマミ52をロック位置に移動させることができる。即ち、ダイヤル8による吐水流量の設定を維持したまま押しボタン6の並進移動を係止し、吐水操作をできなくすることができる。
【0062】
なお、本実施形態の吐水装置1では、スライドツマミ52がロック位置に移動されている場合においても、押しボタン6を押圧して僅かに押し込むことは可能であるが、この僅かな移動により開閉バルブユニット10が図3に示す吐水状態に切り替えられることはない。即ち、押しボタン6が僅かに移動されても、開閉バルブユニット10内の回動リング48と回転誘起部材42が接触しないため、回動リング48は回動されず、係合爪48aが回転筒部材32と係合した状態が維持され、止水状態が保持される。本明細書において、押しボタン6(開閉操作部)が係止された状態には、このような状態が含まれるものとする。
【0063】
一方、ロックを解除し、再び吐水操作を可能とするには、スライドツマミ52を非ロック位置に移動させる。これにより、ロック爪54の先端54aと係合溝6cが係合しなくなり、押しボタン6を並進移動させることができるようになる。
【0064】
また、吐水装置1が吐水状態にある場合には、ロック爪54の先端54aと、押しボタン6側面の係合溝6cが形成されていない部分が当接するので、スライドツマミ52のロック位置への移動は阻止される。これにより、吐水状態において押しボタン6の並進移動が偶発的に係止され、吐水停止不能になるのを防止することができる。
【0065】
本発明の第1実施形態の吐水装置によれば、ダイヤルに設けられたロック機構により、押しボタンが、ダイヤルの回転位置に関わらず係止されるので、流量調整の設定を保持したまま、押しボタンをロックすることができる。
【0066】
また、本実施形態の吐水装置によれば、ダイヤルに設けられたロック爪を半径方向内方に移動させ、押しボタンに形成された係合溝に係合させるだけで、押しボタンを係止することができるので、ロック機構を簡単に構成することができる。
【0067】
さらに、本実施形態の吐水装置によれば、押しボタンが吐水位置にある場合には押しボタンが係止されないので、吐水中に誤って押しボタンがロックされ、止水できなくなるのを防止することができる。
【0068】
また、本実施形態の吐水装置によれば、押しボタンの並進移動をロックすると、ダイヤルの回転移動もロックされるので、止水時に押しボタンがロックされている間に偶発的にダイヤルが回転され、次に吐水を開始した際に、意図しない大流量で吐水が為される等の不都合を回避することができる。
【0069】
次に、図8乃至図11を参照して、本発明の第2実施形態による吐水装置を説明する。本実施形態による吐水装置は、ロック機構が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成については同一の符号を附して説明を省略する。
【0070】
図8は、本発明の第2実施形態による吐水装置200の分解斜視図である。図9は本実施形態による吐水装置の止水状態における断面図であり、図10は吐水状態における断面図である。図11は、図9のXI−XI線に沿う断面図を、(a)非ロック位置、及び(b)ロック位置において示すものである。
【0071】
図8乃至図10に示すように、本発明の第2実施形態による吐水装置200は、吐水装置本体2と、開閉操作部である押しボタン206と、吐水流量を調整する流量操作部であるダイヤル208と、を有する。本実施形態による吐水装置200も、使用者が押圧操作により押しボタン206を並進移動させると吐水・止水が切り替えられ、回転操作によりダイヤル208を回転移動させると吐水流量が調整されるように構成されている。また、ダイヤル208は押しボタン206の周囲に設けられ、ダイヤル208の側面にはロック機構250が設けられている。
【0072】
押しボタン206は、図9及び図10に示すように、概ね円筒形の部品であり、吐水装置200が止水状態にある場合には、ダイヤル208とほぼ面一に配置され、吐水状態にされると、ダイヤル208から突出するように移動される。
ダイヤル208は、押しボタン206の周囲を取り囲むように配置された概ね円筒形の部品であり、その側面には、ロック機構250が内蔵されている。
【0073】
なお、本実施形態による吐水装置200は、吐水装置本体2内に内蔵されている開閉バルブユニット10、及びこれに使用者による操作を伝達する機構も、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0074】
図8に示すように、ロック機構250は、ティルト部材252と、このティルト部材252の中央を回動可能に支持するシャフト254と、を有する。ティルト部材252は、ダイヤル208の側面上部に配置され、開閉バルブユニット10の軸線と平行に向けられたシャフト254を中心に回動可能に取り付けられている。また、ティルト部材252の内部には、板バネ(図示せず)が内蔵されている。この板バネ(図示せず)により、ティルト部材252は、シーソースイッチのように、ロック位置又は非ロック位置の何れかの位置に回動される。さらに、ティルト部材252の一方の突出端部252aは、ダイヤル208の半径方向内方に大きく突出するように形成されており、この突出端部252aは係合端部として機能する。
【0075】
一方、押しボタン206の側面上部には、全周に亘って係合受部である係合溝206cが形成されており、この係合溝206cの底面にはスプライン状の凹凸が形成されている。この係合溝206cは、ダイヤル208と押しボタン206がほぼ面一になる図9に示す止水状態においては、ティルト部材252と整合し、押しボタン206が突出した図10に示す吐水状態においては、ティルト部材252と整合しない位置に位置決めされている。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態による吐水装置200の作用を説明する。
本実施形態の吐水装置200の吐水・止水の切り替え、及び流量調整における作用は、上述した第1実施形態と同様であるので説明を省略し、ここでは、ロック機構250の作用を説明する。
【0077】
まず、図11(a)に示すように、ティルト部材252の突出端部252aが、ダイヤル208の半径方向外方に移動された位置では、ティルト部材252は、押しボタン206の係合溝206cと係合しないため、押しボタン206の押圧操作による吐水・止水の切り替え、及びダイヤル208の回転操作による流量調整を行うことができる。
【0078】
次に、図9に示す止水状態において、使用者がティルト部材252の突出端部252aの側を押圧すると、ティルト部材252は、図11(b)に示すロック位置に移動される。このロック位置では、突出端部252aはダイヤル208の半径方向内方に移動された位置に移動され、係合溝206cの内部に嵌入される。これにより、突出端部252aと押しボタン206が係合し、押しボタン206を押圧操作することができなくなる。また、ロック位置においては、突出端部252aが係合溝206cの底面のスプライン状の凹凸に嵌入するため、ダイヤル208の回転操作も阻止される。
【0079】
本発明の第2実施形態の吐水装置によれば、使用者は、ティルト部材の端部を軽く押圧するだけで、簡単に押しボタンをロックすることができる。
【0080】
また、上述した第1、第2実施形態においては、何れも、吐水・止水を切り替える押しボタンと、流量を調整するダイヤルが別体で構成されていたが、変形例として、これらを一体に構成することもできる。
【0081】
図12及び図13は、第2実施形態における押しボタン及びダイヤルを一体の開閉流量操作部として構成した、第2実施形態の変形例による吐水装置を示す。図12は本変形例による吐水装置の止水状態における断面図であり、図13は本変形例による吐水装置の吐水状態における断面図である。
【0082】
図12及び図13に示すように、本変形例による吐水装置270は、押しボタン及びダイヤルを一体に構成した概ね円筒形の開閉流量操作部272を有し、この開閉流量操作部272を押圧操作することにより吐水・止水が切り替えられ、回転操作することにより吐水流量を調節できるように構成されている。
【0083】
また、開閉流量操作部272の内側には非回転部である内側筒部材274が配置されており、この内側筒部材274は、本体カバー14に固定されている。従って、使用者の押圧操作及び回転操作により、開閉流量操作部272は、内側筒部材274に対して並進移動されると共に回転移動される。さらに、開閉流量操作部272の中央部は、開閉バルブユニット10のバルブ操作部材34に固定されている。これにより、開閉流量操作部272の並進移動及び回転移動は、直接バルブ操作部材34に伝達され、開閉バルブユニット10の開閉及び開度の調整ができるように構成されている。
【0084】
一方、開閉流量操作部272の外周側面には、ロック機構280が設けられている。このロック機構280は、上述した第2実施形態と同様に構成された、ティルト部材282及びシャフト284を有する。また、内側筒部材274の外周上部には、全周に亘って係合溝274aが形成されており、この係合溝274aの底面には、スプライン状の凹凸が形成されている。また、係合溝274aは、吐水装置270が止水状態にある場合にはティルト部材282と整合し(図12)、吐水状態にある場合にはティルト部材282と整合しない(図13)位置に位置決めされている。
【0085】
この構成によれば、止水状態において、ティルト部材282を操作し、その突出端部(図12、13には図示せず)を開閉流量操作部272の半径方向内方に移動させることにより、突出端部が係合溝274aの中に嵌入し、開閉流量操作部272の並進移動が係止される。また、この際、突出端部は係合溝274aの底面のスプライン状の凹凸に入り込むため、開閉流量操作部272の回転移動も係止される。一方、吐水状態においては、ティルト部材282と係合溝274aが整合していないため、開閉流量操作部272は係止されない。
【0086】
本変形例の吐水装置によれば、開閉流量操作部に設けられたロック機構により、開閉流量操作部の並進移動が、その回転位置に関わらず係止されるので、流量調整の設定を保持したまま開閉流量操作部をロックすることができる。
【0087】
次に、図14乃至図16を参照して、本発明の第3実施形態による吐水装置を説明する。本実施形態による吐水装置は、ロック機構が上述した第1、第2実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態の第1、第2実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成については同一の符号を附して説明を省略する。
【0088】
図14は、本発明の第3実施形態による吐水装置300の分解斜視図である。図15は本実施形態による吐水装置の止水状態における断面図であり、図16は吐水状態における断面図である。
【0089】
図14乃至図16に示すように、本発明の第3実施形態による吐水装置300は、吐水装置本体2と、開閉操作部である押しボタン306と、吐水流量を調整する流量操作部であるダイヤル308と、を有する。本実施形態による吐水装置300も、使用者が押圧操作により押しボタン306を並進移動させると吐水・止水が切り替えられ、回転操作によりダイヤル308を回転移動させると吐水流量が調整されるように構成されている。また、ダイヤル308は押しボタン306の周囲に配置され、ダイヤル308には半径方向外方に延びる握り部308aが設けられている。この握り部308aには、ロック機構350が組み込まれている。
【0090】
押しボタン306は、図15及び図16に示すように、概ね円筒形の部品であり、吐水装置300が止水状態にある場合には、ダイヤル308とほぼ面一に配置され、吐水状態にされると、ダイヤル308から突出するように移動される。
ダイヤル308は、押しボタン306の周囲を取り囲むように配置された概ね円筒形の部品であり、その握り部308aには、ロック機構350が内蔵されている。
【0091】
なお、本実施形態による吐水装置300は、吐水装置本体2内に内蔵されている開閉バルブユニット10、及びこれに使用者による操作を伝達する機構も、上述した第1、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0092】
図14に示すように、ロック機構350は、ロックボタン352と、門型バネ354と、門型バネ保持部材356と、ロック用シャフト358と、ロックボタン付勢バネ360と、ハートカム部材362と、係止片緩衝バネ364と、係止片366と、を有する。
【0093】
ロックボタン352は、概ね立方体状の部品であり、ダイヤル308の握り部308aに、半径方向に摺動可能に取り付けられている。
門型バネ354は、概ね門型に折り曲げられた捩りバネであり、その中央部354aが門型バネ保持部材356に保持されている。
【0094】
門型バネ保持部材356は、概ね円筒状の部材である。門型バネ保持部材356は、その端面で門型バネ354を保持しており、門型バネ354の脚部354bは、門型バネ保持部材356の内側を、その軸線方向に延びるように向けられている。
【0095】
ロック用シャフト358は、その基端が門型バネ保持部材356の端面に取り付けられており、門型バネ保持部材356の中心軸線上に延びるように向けられている。
【0096】
ロックボタン付勢バネ360は、その先端が門型バネ保持部材356に当接されており、門型バネ保持部材356及びロックボタン352を半径方向外方に付勢している。
【0097】
ハートカム部材362は、概ね正方形断面の筒状部362aと、この筒状部362aの端面に形成された概ね正方形のフランジ部362bと、を有する。さらに、筒状部362aの両側面にはハートカム溝362cが形成されている。また、フランジ部362bは、握り部308aの基端部に取り付けられると共に、ロックボタン付勢バネ360の基端に当接されている。このため、門型バネ保持部材356は、ロックボタン付勢バネ360により、ハートカム部材362に対して半径方向外方に付勢されている。
【0098】
また、ハートカム部材362の筒状部362aは、門型バネ保持部材356の内側に摺動可能に受け入れられている。さらに、門型バネ保持部材356の内部に延びている門型バネ354の2本の脚部354bの先端は、夫々、筒状部362aの両側面に形成されたハートカム溝362cの中に受け入れられている。
【0099】
係止片緩衝バネ364は、その基端部が、ハートカム部材362の筒状部362aの中心に延びているロック用シャフト358の先端に取り付けられている。また、係止片緩衝バネ364は、係止片366の内部に受け入れられ、その先端が係止片366に取り付けられている。従って、係止片366は、係止片緩衝バネ364を介してロック用シャフト358の先端に取り付けられている。
【0100】
係止片366は、概ね四角柱状の部材であり、その係合端部である先端366aは、尖鋭に形成されている。また、係止片366は、ハートカム部材362の筒状部362aに摺動可能に受け入れられており、ダイヤル308の半径方向内方に移動されたロック位置(図15)と、半径方向外方に移動された非ロック位置(図16)の間で摺動されるようになっている。
【0101】
一方、押しボタン306の側面上部には、全周に亘って係合受部である係合溝306cが形成されており、この係合溝306cの底面にはスプライン状の凹凸が形成されている。この係合溝306cは、ダイヤル308と押しボタン306がほぼ面一になる図15に示す止水状態においては、係止片366と整合し、押しボタン306が突出した図16に示す吐水状態においては、係止片366と整合しない位置に位置決めされている。
【0102】
次に、本発明の第3実施形態による吐水装置300の作用を説明する。
本実施形態の吐水装置300の吐水・止水の切り替え、及び流量調整における作用は、上述した第1実施形態と同様であるので説明を省略し、ここでは、ロック機構350の作用を説明する。
【0103】
まず、図16に示す係止片366が非ロック位置にある場合には、門型バネ354の各脚部354bの先端は、ハートカム溝362cの点P1付近に位置する。この状態においては、ロックボタン352及び門型バネ保持部材356は、ロックボタン付勢バネ360の付勢力により、半径方向外方に移動されている。これにより、ロック用シャフト358及び係止片緩衝バネ364を介して門型バネ保持部材356に取り付けられた係止片366も、半径方向外方の非ロック位置に移動されている。
【0104】
次に、止水状態において、使用者のロック操作によりロックボタン352が、半径方向内方に押圧されると、ロックボタン付勢バネ360の付勢力に抗して、門型バネ保持部材356が半径方向内方に移動される。これにより、門型バネ保持部材356に取り付けられた門型バネ354も半径方向内方に移動され、これに伴って門型バネ354の脚部354bの先端は、ハートカム溝362cの中を半径方向内方に移動される。
【0105】
使用者のロック操作が終了し、ロックボタン352に押圧力が働かなくなると、ロックボタン352及び門型バネ保持部材356は、ロックボタン付勢バネ360の付勢力により、半径方向外方に移動を開始する。この際、ハートカム溝362cの中に配置されている門型バネ354の脚部354bの先端は、ハートカム溝362cの点P2に移動され、脚部354bの先端は、この位置に保持される。これにより、ロックボタン352及び門型バネ保持部材356は、ロックボタン付勢バネ360の付勢力に抗して、図15に示すロック位置に保持される。
【0106】
また、ロックボタン352のロック位置への移動に伴って、ロック用シャフト358の先端に取り付けられた係止片366も、半径方向内方のロック位置に移動され、その先端366aが押しボタン306の係合溝306cに嵌入される。これにより、係止片366の先端366aと押しボタン306が係合し、押しボタン306を押圧操作することができなくなる。また、ロック位置においては、係止片366の先端366aが係合溝306cの底面のスプライン状の凹凸に嵌入するため、ダイヤル308の回転操作も阻止される。
【0107】
さらに、使用者がロックボタン352を再び押圧すると、ロックボタン352は、図15に示す位置から僅かに半径方向内方に移動される。この移動により、ハートカム溝362cの点P2に保持されていた脚部354bの先端は、その位置から外れ、ハートカム溝362cとの係合が解除される。次いで、使用者のロックボタン352への押圧力が作用しなくなると、ロックボタン352及び門型バネ保持部材356は、ロックボタン付勢バネ360の付勢力により半径方向外方に移動され、図16に示す非ロック位置に移動される。
【0108】
本発明の第3実施形態の吐水装置によれば、ハートカム機構を使用して係止片を移動させているので、押しボタンを確実にロックすることができる。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施形多胎を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、押しボタンの全周に係合溝が形成されていたが、係合溝は全周に形成されていなくても良い。即ち、係合溝は、ダイヤルの回動可能範囲全体に亘ってロックが可能になるように、ダイヤルの回動範囲に応じて押しボタンの外周の一部のみに設けても良い。
【0110】
また、上述した実施形態においては、係合溝の底面にスプラインが形成されていたが、係合溝の底面は平滑であっても良く、この場合には、ロック時におけるダイヤルの回転が許容される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1実施形態による吐水装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による吐水装置の止水状態における断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による吐水装置の吐水状態における断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による吐水装置の分解斜視図である。
【図6】吐水装置に内蔵されている開閉バルブユニットの断面図である。
【図7】吐水装置に内蔵されている開閉バルブユニットの分解斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態による吐水装置の分解斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態による吐水装置の止水状態における断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による吐水装置の吐水状態における断面図である。
【図11】図9のXI−XI線に沿う断面図を、(a)非ロック位置、及び(b)ロック位置において示すものである。
【図12】本発明の第2実施形態の変形例による吐水装置の止水状態における断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の変形例による吐水装置の吐水状態における断面図である。
【図14】本発明の第3実施形態による吐水装置の分解斜視図である。
【図15】本発明の第3実施形態による吐水装置の止水状態における断面図である。
【図16】本発明の第3実施形態による吐水装置の吐水状態における断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 本発明の第1実施形態による吐水装置
2 吐水装置本体
2a 本体流入口
2b 本体流出口
4 カウンター板
6 押しボタン(開閉操作部)
6a 内壁面
6b 位置決用突出部
6c 係合溝(係合受部)
8 ダイヤル(流量操作部)
8a 握り部
8b ダイヤル突起
8c ダイヤル係合爪
8d スライド凹部
8e 開口部
8f クリック凹部
10 開閉バルブユニット
12 バルブ押さえ
14 本体カバー
14a 円弧状壁
14b 位置決用凹部
16 回転伝達部材
16a 回転伝達部材切欠部
16b 回転伝達部材突起
18 押さえリング
20 回動カラー
20a 回動カラー切欠部
20b 回動カラー突起
22 バルブ本体
22a バルブ流入口
22b 主弁座
22c バルブ流出口
24 圧力室形成部材
24a Oリング
24b Oリング押さえ
24c Oリング
25 圧力室
26 ダイヤフラム
28 主弁体
28a Oリング
28b Oリング押さえ
28c 圧力開放穴
28d 小穴
30 ガイド部材
30a ガイド部
30b 円盤部
32 回転筒部材
32a 案内溝
32b フランジ部
32c ラッチ溝
32d 係合突起
34 バルブ操作部材
34a 案内突起
36 バルブカバー
38 摺動部材
38a 送りねじ部
40 パイロット弁シャフト
40a 縮径部
42 回転誘起部材
42a 回転誘起歯
44 コイルバネ
46 送りねじ部材
46a 送り雌ねじ部
46b フランジ部
46c 突起部
48 回動リング
48a 係合爪
50 ロック機構
52 スライドツマミ
52a 把持部
52b 台座部
54 ロック爪
54a 先端(係合端部)
54b 湾曲部
56 ビス
200 本発明の第2実施形態による吐水装置
206 押しボタン(開閉操作部)
206c 係合溝(係合受部)
208 ダイヤル(流量操作部)
252 ティルト部材
252a 突出端部(係合端部)
254 シャフト
270 本発明の第2実施形態の変形例による吐水装置
272 開閉流量操作部
274 内側筒部材
274a 係合溝(係合受部)
280 ロック機構
282 ティルト部材
284 シャフト
300 本発明の第3実施形態による吐水装置
306 押しボタン(開閉操作部)
306c 係合溝(係合受部)
308 ダイヤル(流量操作部)
308a 握り部
350 ロック機構
352 ロックボタン
354 門型バネ
354a 中央部
354b 脚部
356 門型バネ保持部材
358 ロック用シャフト
360 ロックボタン付勢バネ
362 ハートカム部材
362a 筒状部
362b フランジ部
362c ハートカム溝
364 係止片緩衝バネ
366 係止片
366a 先端(係合端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作により吐水・止水が切り替えられ、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置であって、
主弁体を備え、押圧操作により上記主弁体が開閉され、回転操作により上記主弁体の開度が変化される開閉バルブユニットと、
使用者の押圧操作によって並進移動され、吐水・止水を切り替える開閉操作部と、
この開閉操作部の周囲に設けられ、使用者の回転操作によって回転移動されることにより吐水流量を調整する流量操作部と、
この流量操作部に設けられ、使用者によるロック操作により、上記流量操作部の回転位置に関わらず上記開閉操作部の並進移動を係止可能なロック機構と、
を有することを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
上記ロック機構は、使用者によるロック操作により、上記流量操作部の回転中心に対して概ね半径方向に移動される係合端部を有し、この係合端部が、上記開閉操作部の外周に形成された係合受部と係合することにより、上記開閉操作部の並進移動が係止される請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
上記ロック機構は、上記開閉操作部が吐水位置に並進移動されている場合には、上記開閉操作部の並進移動を係止しない請求項1又は2記載の吐水装置。
【請求項4】
上記係合端部と上記係合受部が係合されると、上記開閉操作部の並進移動と共に上記流量操作部の回転移動も係止される請求項2又は3記載の吐水装置。
【請求項5】
押圧操作により吐水・止水が切り替えられ、回転操作により吐水流量を調整する吐水装置であって、
主弁体を備え、押圧操作により上記主弁体が開閉され、回転操作により上記主弁体の開度が変化される開閉バルブユニットと、
使用者の押圧操作により並進移動されて吐水・止水を切り替え、使用者の回転操作により回転移動されて吐水流量を調整する開閉流量操作部と、
この開閉流量操作部に設けられ、使用者によるロック操作により、上記開閉流量操作部の回転位置に関わらず上記開閉流量操作部の並進移動を係止可能なロック機構と、
を有することを特徴とする吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−232188(P2008−232188A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69122(P2007−69122)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】