説明

向上可逆的熱的性質を有する多成分繊維及びそれらの製造方法

向上可逆的熱的性質を有する多成分繊維及びそれらの製造方法が記載される。一つの具体的態様において、多成分繊維は細長い部材のセットから形成された繊維体を含み、そしてこのセットの細長い部材の少なくとも一つは少なくとも40J/gの潜熱及び22℃から40℃の範囲の転移温度を有する温度調節材料を含む。温度調節材料は、転移温度における潜熱の吸収及び放出の少なくとも一方に基づく温度調節を与える。多成分繊維は溶融紡糸法又は溶液紡糸法によって作られ得、そして温度調節性が所望される様々な製品に用いられ得又は組み込まれ得る。たとえば、多成分繊維は、生地、服飾品、履物、医用製品、容器及び包装材、建物、電気器具並びに他の製品に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2000年10月19日に出願された米国特許出願シリアルナンバー09/691,164の「温度適応性紡織繊維及びそれらを作製する方法」という名称のHaggard及び2001年9月21日に出願された米国特許出願シリアルナンバー09/960,591(2000年9月21日に出願された米国特許仮出願シリアルナンバー60/234,410の利益を主張する)の「向上可逆的熱的性質を有する多成分繊維」という名称のMagill等の特許出願の一部継続出願である2002年1月15日に出願された米国特許出願シリアルナンバー10/052,232の「向上可逆的熱的性質を有する多成分繊維及びそれらの製造方法」という名称のMagill等の特許出願の一部継続出願である2005年2月4日に出願された米国特許出願シリアルナンバー11/051,543の「向上可逆的熱的性質を有する多成分繊維及びそれらの製造方法」という名称のMagill等の特許出願の一部継続出願であり、しかしてそれらの出願の開示は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、向上可逆的熱的性質を有する合成繊維に関する。一層特には、本発明は、相変化材料を含む多成分繊維、及び溶融紡糸法又は溶液紡糸法によってのかかる繊維の形成に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの布が、合成繊維から作製される。慣用的には、2つの方法が、合成繊維を製造するために用いられる。すなわち、溶液紡糸法及び溶融紡糸法である。溶液紡糸法は一般にアクリル繊維を作るために用いられ、一方溶融紡糸法は一般にナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及び他の同様なタイプの繊維を作るために用いられる。よく知られているように、アクリル繊維はアクリロニトリル単位の存在により特徴づけられる長鎖合成ポリマーを含み、ナイロン繊維はアミド基−CONH−の存在により特徴づけられる長鎖合成ポリアミドポリマーを含み、ポリエステル繊維は置換芳香族カルボン酸単位のエステルを少なくとも85重量パーセント有する長鎖合成ポリマーを含み、そしてポリプロピレン繊維は少なくとも85重量パーセントのオレフィン単位を有し且つ典型的には約40,000又はそれ以上の数平均分子量を有する長鎖合成結晶性ポリマーを含む。
【0004】
溶融紡糸法が特に興味深く、何故なら繊維工業において用いられる合成繊維の大部分がこの技法により製造されるからである。溶融紡糸法は、一般に、紡糸口金として知られている装置に溶融ポリマー材料を通し、それにより個々の合成繊維のセットを形成させることを伴う。形成されると、合成繊維は集められてストランドにされ得、又は切断されてステープルファイバーにされ得る。合成繊維は編布、織布又は不織布を作製するために用いられ得、あるいはその代わりに合成繊維は糸に紡がれ得る(その後に合成布を作るための製織又は編成方法において用いられるために)。
【0005】
相変化材料が単成分アクリル繊維中に、向上可逆的熱的性質を繊維それら自体に並びにそれらから作製される布に与えるために組み込まれてきた。これは、典型的にはアクリル繊維を作る溶液紡糸法と関連した揮発性材料(たとえば、溶媒)の高レベルに部分的に因り、容易に成し遂げられる。しかしながら、相変化材料を溶融紡糸合成繊維中に組み込むことは比較的難しく、何故なら高レベルの揮発性材料は溶融紡糸法においては典型的には存在しないか又は所望されないからである。相変化材料を溶融紡糸合成繊維中に組み込もうとする以前の試みは、典型的には、相変化材料を含有するマイクロカプセルを標準的繊維等級熱可塑性ポリマーと混合してブレンド物を形成させ、そして引き続いてこのブレンド物を溶融紡糸して単成分合成繊維を形成させることを伴った。かかる試みは、一般に、マイクロカプセルの低濃度が用いられない限り、繊維内のマイクロカプセルの不十分な分散、劣った繊維性質及び劣った加工性に通じた。しかしながら、マイクロカプセルの低濃度の場合には、相変化材料の使用と通常関連している所望向上可逆的熱的性質は、実現するのが困難である。
【0006】
本明細書に記載された多成分繊維を開発する必要性が生じたのはこの背景がある。
【発明の開示】
【0007】
発明の要約
一つの側面において、本発明は、多成分繊維に関する。一つの具体的態様において、多成分繊維は細長い部材のセットから形成された繊維体を含み、そしてこのセットの細長い部材の少なくとも一つは少なくとも40J/gの潜熱及び22℃から40℃の範囲の転移温度を有する温度調節材料を含む。温度調節材料は、転移温度における潜熱の吸収及び放出の少なくとも一方に基づく温度調節を与える。
【0008】
別の具体的態様において、多成分繊維は、少なくとも40J/gの潜熱及び10℃から50℃の範囲の転移温度を有する相変化材料を含む芯部材を含む。相変化材料は、転移温度における潜熱の吸収及び放出の少なくとも一方に基づく温度調節を与える。多成分繊維はまた、芯部材を包囲する且つ多成分繊維の外面を形成する鞘部材を含む。
【0009】
更に別の具体的態様において、多成分繊維は島部材のセットを含み、そしてこのセットの島部材の少なくとも一つは少なくとも40J/gの潜熱及び10℃から50℃の範囲の転移温度を有する相変化材料を含む。相変化材料は、転移温度における潜熱の吸収及び放出の少なくとも一方に基づく温度調節を与える。多成分繊維はまた、島部材のセットを包囲する且つ多成分繊維の外面を形成する海部材を含む。
【0010】
別の側面において、本発明は、布に関する。一つの具体的態様において、布は、一緒に混紡された多成分繊維のセットを含む。このセットの多成分繊維の各々は細長い部材のセットから形成された繊維体を含み、そしてこのセットの細長い部材の少なくとも一つは22℃から40℃の範囲の転移温度を有する相変化材料を含む。相変化材料は、転移温度における相変化材料の溶融及び結晶化の少なくとも一方に基づく温度調節を与える。布は、少なくとも2J/gの潜熱を有する。
【0011】
本発明の他の諸側面及び諸具体的態様もまた想定される。以上の要約及び以下の詳細な説明は、本発明をいずれかの特定の具体的態様に限定するようには意図されておらず、単に本発明のいくつかの具体的態様を説明するように意図されている。
【0012】
本発明のいくつかの具体的態様の特質及び目的の一層十分な理解のために、添付図面と共に考慮される以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【0013】
詳細な説明
本発明の諸具体的態様は、向上可逆的熱的性質を有する多成分繊維及びそれらの製造方法に関する。本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、異なる環境条件下で熱エネルギーを吸収する及び放出する能力を有する。加えて、かかる多成分繊維は、改善加工性(たとえば、繊維の又はそれらから作製される製品の製造中)、改善強度、繊維内の相変化材料の改善封じ込め、又は相変化材料のより高い充填レベルを示し得る。製品に改善強度を与える一方、温度調節性を与えるために、多成分繊維は様々な製品に用いられ得又は組み込まれ得る。たとえば、本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、生地(たとえば、布)、服飾品(たとえば、戸外用被服、ドライスーツ及び防護服)、履物(たとえば、靴の中敷、ブーツ及び靴の内底)、医用製品(たとえば、オムツ、医用覆布、高保温性毛布、治療用パッド、失禁用パッド及び温/冷湿布)、容器及び包装材(たとえば、飲料/食品容器、食品保温器、座席クッション及び回路板ラミネート)、建物(たとえば、壁又は天井における断熱、壁紙、カーテン裏当て、パイプラップ、カーペット及びタイル)、電気器具(たとえば、家庭用電気器具における断熱)並びに他の製品(たとえば、自動車用内張り材、寝袋及び寝具)に用いられ得る。
【0014】
本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、たとえば服飾品又は履物のような製品に組み込まれる場合、改善快適さレベルを与え得る。特に、多成分繊維は、異なる又は変化する環境条件下でかかる改善快適さレベルを与え得る。相変化材料の使用は、多成分繊維が「単方向」又は「静的」温度調節というよりむしろ「多方向」又は「動的」温度調節を与えるのを可能にする。特に、「多方向」温度調節によれば、多成分繊維は、寒い天候において熱エネルギーを放出し得るだけでなく、暑い天候においては熱エネルギーを吸収し得る。かかる態様にて、多成分繊維は、暑い天候において冷却そして寒い天候において加熱をもたらし得、かくして異なる天候条件下で所望快適さレベルを維持する。また、「動的」温度調節によれば、多成分繊維は、変化する環境条件下でそれらの温度調節性を適応させ得る又は調整し得る。かかる態様にて、多成分繊維は、暑い天候及び寒い天候の両方についてのような多面的使用が可能であり得る。更に、多成分繊維は、湿度又は日光のような外的引き金手段を必要とすることなくそれらの温度調節性を適応させ得る又は調整し得る。
【0015】
備えられた温度調節性と共に、本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、たとえば服飾品又は履物に組み込まれる場合、快適さレベルについて他の改善を与え得る。たとえば、多成分繊維は、発汗に因るような個人の皮膚の湿気の低減をもたらし得る。特に、多成分繊維は皮膚の温度又は相対湿度を低下し得、それによりより低い皮膚湿気度及びより高い快適さレベルをもたらす。特定の材料及び特定の服飾品又は履物の設計上の特徴の使用により、快適さレベルは更に向上され得る。たとえば、多成分繊維は、温度調節性及び湿気管理性について更なる利益を与えるために、或る添加剤、処理剤又はコーティング剤と共に用いられ得る。
【0016】
本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維は、細長い部材のセットを含み得る。本明細書において用いられる場合、用語「セット」は、1つ又はそれ以上の要素の集合を指し得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、多成分繊維は、細長い部材から形成された繊維体を含み得る。繊維体は、典型的には、細長くそしてその直径よりも数倍(たとえば、100倍又はそれ以上)大きい長さを有し得る。繊維体は、例としてそして限定のためにではなしに円形、多葉形、八角形、卵形、五角形、矩形、正方形、台形、三角形、くさび形、等のような、様々な規則的又は不規則な横断面形状を有し得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、細長い部材の二つ又はそれ以上(たとえば、2つの隣接した細長い部材)は、接合、結合、一体化又は接着されて単一の繊維体を形成し得る。
【0017】
本発明のいくつかの具体的態様よれば、細長い部材の少なくとも一つは、温度調節材料を含む。典型的には、温度調節材料は、多成分繊維に向上可逆的熱的性質を付与するために、1種又はそれ以上の相変化材料を含む。本発明のいくつかの具体的態様において、細長い部材は同じ又は異なるポリマー材料を含み得、そして細長い部材の少なくとも一つはその中に分散された温度調節材料を有し得る。典型的には、温度調節材料は、細長い部材の少なくとも一つ内に一様に分散される。しかしながら、多成分繊維に所望される特定の特性に依存して、温度調節材料の分散は、細長い部材の一つ又はそれ以上内で変動され得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、2つ又はそれ以上の細長い部材は、同じ又は異なる温度調節材料を含み得る。
【0018】
多成分繊維の特定の用途に依存して、細長い部材は、様々な構成の一つにて配置され得る。たとえば、細長い部材は、海中島型構成又は芯−鞘型構成にて配置され得る。細長い部材は、例としてそして限定のためにではなしにマトリックス型又はチェッカーボード型構成、セグメント化パイ型構成、サイドバイサイド型構成、ストライプ型構成、等のような、他の構成にて配置され得る。本発明のいくつかの具体的態様よれば、細長い部材は、細長い部材が互いに対して全体的に平行にある束形態にて配置され得る。本発明の他の諸具体的態様によれば、1つ又はそれ以上の細長い部材は繊維体の長さの少なくとも一部にわたって延在し得、そして所望されるならばこれらの細長い部材は長さ方向に共延在し得る。たとえば、本発明のいくつかの具体的態様によれば、少なくとも1つの内部材は実質的に多成分繊維の長さにわたって延在し得、そして温度調節材料を含み得る。内部材が多成分繊維の長さにわたって延在する程度は、たとえば、多成分繊維についての所望温度調節性に依存し得る。加えて、他の因子(たとえば、所望機械的性質又は多成分繊維を作る方法)が、該程度を決定する際に役割を演じ得る。かくして、一つの具体的態様において、内部材は、所望温度調節性を与えるために、多成分繊維の約半分の長さから全長までにわたって延在し得る。外部材は、内部材を包囲し且つ多成分繊維の外面を形成し得る。
【0019】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、多成分繊維は、約0.1から約1,000デニールの間に又は約0.1から約100デニールの間にあり得る。典型的には、本発明の具体的態様による多成分繊維は、約0.5から約10デニールの間にあり得る。当業者により理解されるように、デニールは、典型的には、繊維の単位長さ当たりの重量の尺度(すなわち、9000メートル当たりのグラム数)であると理解される。
【0020】
所望されるならば、本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維は、1本又はそれ以上のより小さいデニールの繊維を形成するように更に加工され得る。たとえば、多成分繊維を形成する細長い部材は、2本又はそれ以上のより小さいデニールの繊維を形成するように分割され得、しかも各々のより小さいデニールの繊維は細長い部材の一つ又はそれ以上を含み得る。その代わりに又はそれと共に、多成分繊維を形成する1つ又はそれ以上の細長い部材(又はそれらの一部分)は、1本又はそれ以上のより小さいデニールの繊維を生じるように溶解又は溶融除去され得る。典型的には、少なくとも1本の生じたより小さいデニールの繊維は、所望温度調節性を与えるべき温度調節材料を含む。
【0021】
多成分繊維を製造する方法、更なる加工の所望度又は多成分繊維の特定の用途に依存して、多成分繊維は、更に、例としてそして限定のためにではなしに水、界面活性剤、分散剤、消泡剤(たとえば、ケイ素含有化合物及びフッ素含有化合物)、酸化防止剤(たとえば、ヒンダードフェノール及び亜リン酸塩)、熱安定剤(たとえば、亜リン酸塩、有機リン化合物、有機カルボン酸の金属塩、及びフェノール化合物)、光又はUV安定剤(たとえば、ヒドロキシベンゾエート、ヒンダードヒドロキシベンゾエート及びヒンダードアミン)、光又はUV吸収用添加剤(たとえば、IV族遷移金属の炭化物及び酸化物のセラミック粒子)、マイクロ波吸収用添加剤(たとえば、多官能性第1級アルコール、グリセリン及びカーボン)、強化用繊維(たとえば、炭素繊維、アラミド繊維及びガラス繊維)、導電性繊維又は粒子(たとえば、グラファイト又は活性炭の繊維又は粒子)、滑剤、加工助剤(たとえば、脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、脂肪酸アミド、スルホンアミド、ポリシロキサン、有機リン化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物及びフェノールポリエーテル)、難燃剤(たとえば、ハロゲン化化合物、リン化合物、オルガノホスフェート、オルガノブロマイド、アルミナ三水和物、メラミン誘導体、水酸化マグネシウム、アンチモン化合物、酸化アンチモン及びホウ素化合物)、ブロッキング防止剤(たとえば、シリカ、タルク、ゼオライト、金属炭酸塩及び有機ポリマー)、防曇用添加剤(たとえば、非イオン性界面活性剤、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル、ソルビタンエステル及びそれらのエトキシレート、ノニルフェニルエトキシレート、並びにアルコールエトキシレート)、帯電防止用添加剤(たとえば、脂肪酸エステル、エトキシル化アルキルアミン、ジエタノールアミド及びエトキシル化アルコールのような非イオン性物質、アルキルスルホネート及びアルキルホスフェートのようなアニオン性物質、塩化物、メトサルフェート又はニトレートの金属塩及び第4級アンモニウム化合物のようなカチオン性物質、並びにアルキルベタインのような両性物質)、抗微生物物質(たとえば、ヒ素化合物、硫黄、銅化合物、イソチアゾリン、フタルアミド、カルバメート、銀系無機作用物質、銀亜鉛ゼオライト、銀銅ゼオライト、銀ゼオライト、金属酸化物、及びシリケート)、架橋剤又は制御的分解剤(たとえば、過酸化物、アゾ化合物及びシラン)、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤(たとえば、ビス−ベンゾオキサゾール、フェニルクマリン及びビス−(スチリル)ビフェニル)、充填剤(たとえば、天然鉱物及び金属(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩のような)、タルク、粘土、ウォラストナイト、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、ガラス繊維及びビーズ、セラミック繊維及びビーズ、金属繊維及びビーズ、フラワー、並びに天然又は合成源の繊維(木材、デンプン、又はセルロースフラワーの繊維のような))、カップリング剤(たとえば、シラン、チタネート、ジルコネート、脂肪酸塩、無水物、エポキシド及び不飽和ポリマー酸)、強化剤、結晶化又は核形成剤(たとえば、結晶成長の速度/速度論、成長される結晶の数、又は成長される結晶のタイプを改善するように、ポリマー中の結晶化度を増加させる又は改善する任意の物質)、等のような、1種又はそれ以上の添加剤を含み得る。かかる1種又はそれ以上の添加剤は、多成分繊維を形成する細長い部材の一つ又はそれ以上内に分散され得る。
【0022】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、例としてそして限定のためにではなしに耐汚染性、撥水性、より柔軟な風合い及び湿気管理性のような、追加の性質を付与するために、或る処理剤又はコーティング剤が多成分繊維に施用され得る。処理剤及びコーティング剤の例は、エピック(Epic)(カリフォルニア州ビスタのNextec Applications Inc.から入手できる)、インテラ(Intera)(テネシー州チャタヌーガのIntera Technologies Inc.から入手できる)、ゾニル・ファブリック・プロテクターズ(Zonyl Fabric Protectors)(デラウェア州ウィルミントンのDuPont Inc.から入手できる)、スコッチガード(Scotchgard)(ミネソタ州メープルウッドの3M Co.から入手できる)、等を包含する。
【0023】
図1及び図2に関して、本発明のいくつかの具体的態様による様々な多成分繊維12、13、14、21、22、23、24、26、27、28、29、34、84及び88の拡大横断面図が図示されている。一層特には、図1及び図2は、本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維を形成する細長い部材を配置する様々な構成を図示する。
【0024】
図1及び図2に示されているように、各多成分繊維(たとえば、21)は、多成分繊維を形成する細長い部材(たとえば、39及び40)のセットに対応する明確な横断面領域のセットを含む。ここに図示されている具体的態様によれば、細長い部材は、第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)(たとえば、図1において陰影をつけて示された)及び第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)(たとえば、図1において陰影をつけないで示された)を含む。この場合において、第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)は、好ましくは、温度調節材料が分散されているポリマー材料から作られ得る。第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)は、同じポリマー材料又はいくぶん異なった性質を有する別のポリマー材料から作られ得る。図1及び図2に示された細長い部材の数、形状及びサイズは例としてそして限定のためにではなしに図示されており、そして様々な他の具体的態様が本発明の範囲内にある、ということが認識されるはずである。
【0025】
図1及び図2は円形又は三葉形の横断面形状を備えた多成分繊維を図示するけれども、例としてそして限定のためにではなしに多葉形、八角形、卵形、五角形、矩形、正方形、台形、三角形、くさび形、等のような、様々な他の規則的又は不規則な横断面形状を備えた多成分繊維が本発明により包含される。一般に、第1セットの細長い部材は同じ又は異なるポリマー材料から作られ得、そして第2セットの細長い部材は同じ又は異なるポリマー材料から作られ得る、ということが認識されるはずである。更に、温度調節材料は、本発明のいくつかの具体的態様によれば、第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)内に分散され得る。2種又はそれ以上の異なる温度調節材料が同じ又は異なる細長い部材内に分散され得る、ということが更に認識されるはずである。たとえば、第1温度調節材料が第1の細長い部材内に分散され得、そしていくぶん異なった性質を有する第2温度調節材料が第2の細長い部材内に分散され得る(たとえば、2種の異なる相変化材料)。
【0026】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、1つ又はそれ以上の細長い部材は、ポリマー材料内に分散される必要がない温度調節材料から作られ得る。たとえば、温度調節材料は、向上可逆的熱的性質を与える且つ第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を作るために用いられ得るポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。本発明のかかる諸具体的態様について、第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)は、第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を十分に包囲して温度調節材料の損失又は漏出を低減又は防止する、ということが望ましくあり得るがしかし必要とはされない。加えて、一般に、2つ又はそれ以上の細長い部材が同じ又は異なる温度調節材料から作られ得る、ということが認識されるはずである。
【0027】
図1に関して、左側の欄10は、3種の多成分繊維12、13及び14を図示する。多成分繊維12は、セグメント化パイ型構成にて配置された細長い部材のセットを含む。この具体的態様において、第1セットの細長い部材15、15′、15″、15″′及び15″″と第2セットの細長い部材16、16′、16″、16″′及び16″″は交互様式にて配置され、そしてくさび形である横断面域を有する。一般に、細長い部材は、同じ又は異なる横断面の形状又はサイズを有し得る。更に、多成分繊維12は10の細長い部材を含むように示されているけれども、一般に2つ又はそれ以上の細長い部材がセグメント化パイ型構成にて配置され得、そして細長い部材の少なくとも一つは典型的には温度調節材料を含む、ということが認識されるはずである。
【0028】
多成分繊維13は、海中島型構成にて配置された細長い部材のセットを含む。この具体的態様において、第1セットの細長い部材35、35′、35″、35″′、等は、実質的に多成分繊維13の長さにわたって延在し且つ互いに分離されている。第1セットの細長い部材35、35′、35″、35″′、等は、第2の細長い部材36内に置かれ且つ完全に包囲され、それにより第2の細長い部材36の「海」内の「島」を形成するように示されている。「海」内のこれらの「島」の配置は、多成分繊維13内の温度調節材料のより一様な分布を与えるのに役立ち得る。この具体的態様において、第1セットの細長い部材35、35′、35″、35″′、等の各々は、台形である横断面形状を有する。しかしながら、例としてそして限定のためにではなしに円形、多葉形、八角形、卵形、五角形、矩形、正方形、三角形、くさび形、等のような、様々な他の規則的又は不規則な横断面形状が本発明により包含される、ということが認識されるはずである。一般に、第1セットの細長い部材35、35′、35″、35″′、等は、同じ又は異なる横断面の形状又はサイズを有し得る。更に、多成分繊維13は、17の細長い部材35、35′、35″、35″′、等が第2の細長い部材36内に置かれ且つ包囲されるように示されているけれども、一般に1つ又はそれ以上の細長い部材が第2の細長い部材36内に置かれ且つ包囲され得る、ということが認識されるはずである。
【0029】
多成分繊維14は、ストライプ型構成にて配置された細長い部材のセットを含む。この具体的態様において、第1セットの細長い部材37、37′、37″、37″′及び37″″と第2セットの細長い部材38、38′、38″及び38″′は、交互様式にて配置され且つ多成分繊維14の長さ方向の薄片として造形される。一般に、細長い部材は、同じ又は異なる横断面の形状又はサイズ(たとえば、長さ方向の薄片と関連した幅)を有し得る。所望されるならば、多成分繊維14は自己捲縮性又は自己捲縮嵩高化性繊維であり得、しかして繊維の捲縮又は捲縮嵩高化は嵩高性、嵩、断熱性、伸縮性又は他の同様な性質を付与する。多成分繊維14は、9つの細長い部材を含むように示されているけれども、一般に2つ又はそれ以上の細長い部材がストライプ型構成にて配置され得、そして細長い部材の少なくとも一つは典型的には温度調節材料を含む、ということが認識されるはずである。
【0030】
多成分繊維12及び14の場合において、第1の細長い部材(たとえば、15)は隣接した第2の細長い部材(たとえば、16及び16″″)により部分的に包囲されるように示されており、一方多成分繊維13の場合においては、第1の細長い部材(たとえば、35)は単一の第2の細長い部材36により完全に包囲されるように示されている。第1の細長い部材(たとえば、15)が完全には包囲されない場合、第1の細長い部材内に分散された相変化材料を封じ込めるために、封じ込め構造体(たとえば、マイクロカプセル)が用いられることが望ましくあり得るが、しかし必要とはされない。所望されるならば、多成分繊維12、13及び14は、1本又はそれ以上のより小さいデニールの繊維を形成するように更に処理され得る。かくして、たとえば、多成分繊維12を形成する細長い部材は分割され得、あるいは細長い部材の一つ又はそれ以上(又はそれらの一部分)は溶解又は溶融除去され得る。生じたより小さいデニールの繊維は、たとえば、細長い部材15及び16(互いに接合され得る)を含み得る。
【0031】
図1の中央の欄20は、芯/鞘型繊維21、22、23及び24を図示する。特に、芯/鞘型繊維21、22、23及び24は各々、芯−鞘型構成にて配置された細長い部材のセットを含む。
【0032】
芯/鞘型繊維21は、第2の細長い部材40内に置かれ且つ包囲された第1の細長い部材39を含む。一層特には、第1の細長い部材39は、温度調節材料を含む芯部材として作られる。この芯部材は、鞘部材として作られる第2の細長い部材40内に同心状に置かれ且つ完全に包囲されるように示されている。この場合において、芯/鞘型繊維21は、25重量パーセントの芯部材及び75重量パーセントの鞘部材を含む。
【0033】
芯/鞘型繊維22は、第2の細長い部材42内に置かれ且つ包囲された第1の細長い部材41を含む。先に論じられた具体的態様の場合のように、第1の細長い部材41は温度調節材料を含む芯部材として作られ、そして鞘部材として作られる第2の細長い部材42内に同心状に置かれ且つ完全に包囲される。この場合において、芯/鞘型繊維22は、50重量パーセントの芯部材及び50重量パーセントの鞘部材を含む。
【0034】
芯/鞘型繊維23は、第2の細長い部材44内に置かれ且つ包囲された第1の細長い部材43を含む。しかしながら、この具体的態様において、第1の細長い部材43は、鞘部材として作られる第2の細長い部材44内に偏心状に置かれる芯部材として作られる。芯/鞘型繊維23は、所望される温度調節性及び機械的性質を与えるように、事実上任意の重量百分率の芯部材及び鞘部材を含み得る。
【0035】
三葉形の芯/鞘型繊維24は、第2の細長い部材46内に置かれ且つ包囲された第1の細長い部材45を含む。この具体的態様において、第1の細長い部材45は、三葉形の横断面形状を有する芯部材として作られる。この芯部材は、鞘部材として作られる第2の細長い部材46内に同心状に置かれる。芯/鞘型繊維23は、所望される温度調節性及び機械的性質を与えるように、事実上任意の重量百分率の芯部材及び鞘部材を含み得る。
【0036】
芯部材は、一般に、例としてそして限定のためにではなしに円形、多葉形、八角形、卵形、五角形、矩形、正方形、台形、三角形、くさび形、等のような、様々な規則的又は不規則な横断面形状を有し得る、ということが認識されるはずである。芯/鞘型繊維21、22、23及び24は、1つの芯部材が鞘部材内に置かれ且つ包囲されるように示されているけれども、2つ又はそれ以上の芯部材が鞘部材内に置かれ且つ包囲され得る(たとえば、多成分繊維13について示された態様と同様な態様にて)、ということが認識されるはずである。これらの2つ又はそれ以上の芯部材は、同じ又は異なる横断面の形状又はサイズを有し得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、芯/鞘型繊維は、芯−鞘型構成にて配置された3つ又はそれ以上の細長い部材を含み、しかも細長い部材は芯/鞘型繊維の同心状又は偏心状の長さ方向の薄片として造形される。
【0037】
図1の右側の欄30は、本発明のいくつかの具体的態様による多数のサイドバイサイド型繊維を図示する。特に、サイドバイサイド型繊維26、27、28、29及び34は各々、サイドバイサイド型構成にて配置された細長い部材のセットを含む。
【0038】
サイドバイサイド型繊維26は、第2の細長い部材48に隣接して置かれ且つ部分的に包囲された第1の細長い部材47を含む。この具体的態様において、細長い部材47及び48は、半円形の横断面形状を有する。この場合において、サイドバイサイド型繊維26は、50重量パーセントの第1の細長い部材47及び50重量パーセントの第2の細長い部材48を含む。細長い部材47及び48は、その代わりに又はそれと共に、セグメント化パイ型又はストライプ型構成にて配置されるように特徴づけられ得る、ということが認識されるはずである。
【0039】
サイドバイサイド型繊維27は、第2の細長い部材50に隣接して置かれ且つ部分的に包囲された第1の細長い部材49を含む。この具体的態様において、サイドバイサイド型繊維27は、20重量パーセントの第1の細長い部材49及び80重量パーセントの第2の細長い部材50を含む。細長い部材49及び50は、その代わりに又はそれと共に、第1の細長い部材49が第2の細長い部材50に対して偏心状に置かれ且つ部分的に包囲される芯−鞘型構成にて配置されるように特徴づけられ得る、ということが認識されるはずである。
【0040】
サイドバイサイド型繊維28及び29は、混合粘度型繊維である。各繊維は、温度調節材料が分散されており、しかも第2の細長い部材52又は54に隣接して置かれ且つ部分的に包囲される第1の細長い部材51又は53を含む。混合粘度型繊維は、典型的には、自己捲縮性又は自己捲縮嵩高化性繊維であると考えられ、しかして繊維の捲縮又は捲縮嵩高化は嵩高性、嵩、断熱性、伸縮性又は他の同様な性質を付与する。典型的には、混合粘度型繊維は、異なるポリマー材料から作られる細長い部材のセットを含む。たとえば、サイドバイサイド型繊維28について、第1の細長い部材51は第1ポリマー材料から作られ得、そして第2の細長い部材52は第1ポリマー材料とは何らかの様式について異なり得る第2ポリマー材料から作られ得る。この具体的態様において、第1ポリマー材料と第2ポリマー材料は、異なる粘度又は分子量を有するポリマー(たとえば、異なる分子量を有する2種のポリプロピレン又はそれぞれポリプロピレンとポリエチレン)を含み得る。サイドバイサイド型繊維28が延伸される時、2つの細長い部材51と52の間に不均一な応力が発生され得、そしてサイドバイサイド型繊維28は捲縮し得る又は曲がり得る。本発明の他の諸具体的態様によれば、第1ポリマー材料と第2ポリマー材料は、異なる度合いの結晶化度を有するポリマーを含み得る。たとえば、第1ポリマー材料は、第2ポリマー材料よりも低い度合いの結晶化度を有し得る。サイドバイサイド型繊維28が延伸される時、第1ポリマー材料と第2ポリマー材料は、異なる度合いの結晶化及び配向を受けて配向及び強度をサイドバイサイド型繊維28中に「ロック」(「固定」)し得る。熱処理中のサイドバイサイド型繊維28の再配向を防止又は低減するために、十分な度合いの結晶化が所望され得る。サイドバイサイド型繊維28及び29は、所望される温度調節性、機械的性質及び自己捲縮性又は自己捲縮嵩高化性を与えるように、事実上任意の重量百分率の第1の細長い部材及び第2の細長い部材を含み得る。
【0041】
サイドバイサイド型繊維34は、第2セットの細長い部材56と56′の間に置かれ且つ部分的に包囲された第1の細長い部材55を含むABA型繊維である。この具体的態様において、第1の細長い部材55は、温度調節材料が分散されている第1ポリマー材料から作られる。この場合において、第2セットの細長い部材56及び56′は、第1ポリマー材料から又は第1ポリマー材料とは何らかの様式について異なり得る第2ポリマー材料から作られ得る。一般に、細長い部材56と56′は、同じ又は異なる横断面の形状又はサイズ(たとえば、長さ方向の薄片と関連した幅)を有し得る。細長い部材55、56及び56′は、その代わりに又はそれと共に、ストライプ型構成にて配置されるように特徴づけられ得る、ということが認識されるはずである。
【0042】
図2に関して、2種の多成分繊維84及び88が図示されている。多成分繊維84は芯/鞘型構成にて配置された細長い部材のセットを含み、一方多成分繊維88は海中島型構成にて配置された細長い部材のセットを含む。
【0043】
芯/鞘型繊維84は、第2セットの細長い部材86と86′の間に置かれ且つ包囲された第1の細長い部材85を含む。特に、細長い部材85、86及び86′は、芯/鞘型繊維84の同心状の長さ方向の薄片として造形される。この具体的態様において、第1の細長い部材85は、温度調節材料が分散されている第1ポリマー材料から作られる。この場合において、第2セットの細長い部材86及び86′は、第1ポリマー材料から又は第1ポリマー材料とは何らかの様式について異なり得る第2ポリマー材料から作られ得る。
【0044】
図2に示されているように、細長い部材86′は中空芯として形成される内部空洞87を画定し、そして空気のような断熱材料が内部空洞87中に置かれる。有利なことに、断熱材料の使用は、温度調節材料により与えられる向上温度調節性に加えて、向上温度調節性を与える。芯/鞘型繊維84は、所望される温度調節性及び機械的性質を与えるように、事実上任意の重量百分率の第1の細長い部材85、第2セットの細長い部材86及び86′並びに断熱材料を含み得る。芯/鞘型繊維84は1個の内部空洞87を備えるように示されているけれども、芯/鞘型繊維84は2個又はそれ以上の内部空洞を含み得、そしてこれらの内部空洞は同じ又は異なる横断面の形状又はサイズを有し得及び同じ又は異なる断熱材料を含有し得る、ということが認識されるはずである。細長い部材85、86及び86′は、その代わりに又はそれと共に、サイドバイサイド型構成にて配置されるように特徴づけられ得る、ということが認識されるはずである。
【0045】
海中島型繊維88は、第2の細長い部材90内に置かれ且つ完全に包囲された第1セットの細長い部材89、89′、89″、89″′、等を含み、それにより第2の細長い部材90の「海」内の「島」を形成する。この具体的態様において、第1セットの細長い部材89、89′、89″、89″′、等は、温度調節材料が分散されている第1ポリマー材料から作られる。この場合において、第2セットの細長い部材90は、第1ポリマー材料から又は第1ポリマー材料とは何らかの様式について異なり得る第2ポリマー材料から作られ得る。先に論じられたように、「海」内のこれらの[島」の配置は、海中島型繊維88内の温度調節材料のより一様な分布を与えるのに役立ち得る。この具体的態様において、第1セットの細長い部材89、89′、89″、89″′、等の各々は、円形である横断面形状を有する。しかしながら、台形、多葉形、八角形、卵形、五角形、矩形、正方形、三角形、くさび形、等のような様々な他の規則的又は不規則な横断面形状が想定される、ということが認識されるはずである。一般に、第1セットの細長い部材89、89′、89″、89″′、等は、同じ又は異なる横断面の形状又はサイズを有し得る。
【0046】
図2に示されているように、第2の細長い部材90は中空芯として形成される内部空洞91を画定し、そして空気のような断熱材料が内部空洞91中に置かれる。有利なことに、断熱材料の使用は、温度調節材料により与えられる向上温度調節性に加えて、向上温度調節性を与える。海中島型繊維88は、所望される温度調節性及び機械的性質を与えるように、事実上任意の重量百分率の第1セットの細長い部材89、89′、89″、89″′、等、第2の細長い部材90及び断熱材料を含み得る。海中島型繊維88は1個の内部空洞91を備えるように示されているけれども、海中島型繊維88は2個又はそれ以上の内部空洞を含み得、そしてこれらの内部空洞は同じ又は異なる横断面の形状又はサイズを有し得及び同じ又は異なる断熱材料を含有し得る、ということが認識されるはずである。更に、海中島型繊維88は、11の細長い部材89、89′、89″、89″′、等が第2の細長い部材90内に置かれ且つ包囲されるように示されているけれども、一般に1つ又はそれ以上の細長い部材が第2の細長い部材90内に置かれ且つ包囲され得る、ということが認識されるはずである。
【0047】
次に図3を参照すると、芯/鞘型繊維59の三次元図が図示されている。芯/鞘型繊維59は、細長い且つ環形の鞘部材58内に置かれ且つ包囲された細長い且つ全体的に円筒状の芯部材57を含む。この具体的態様において、芯部材57は、実質的に芯/鞘型繊維59の長さにわたって延在する。芯部材57は、温度調節材料61が分散されており、しかも芯/鞘型繊維59の外面を形成する鞘部材58内に置かれ且つ完全に包囲又は包まれる。この具体的態様において、温度調節材料61は相変化材料を含有するマイクロカプセルのセットを含み、そしてマイクロカプセルは芯部材57の全体にわたって一様に分散され得る。マイクロカプセルが芯部材57内に均一に分散されていることが好ましくあり得るけれども、これはすべての用途において必要であるとは限らない、ということを当業者は理解するであろう。芯部材57は鞘部材58内に同心状に又は偏心状に置かれ得、そして芯/鞘型繊維59は所望される温度調節性及び機械的性質を与えるように、事実上任意の重量百分率の芯部材57及び鞘部材58を含み得る。
【0048】
図4に関して、別の芯/鞘型繊維60の三次元図が図示されている。芯/鞘型繊維59の場合のように、芯/鞘型繊維60は、実質的に芯/鞘型繊維60の長さにわたって延在する細長い且つ全体的に円筒状の芯部材63を含む。芯部材63は、芯/鞘型繊維60の外面を形成する細長い且つ環形の鞘部材64内に置かれ且つ完全に包囲又は包まれる。この場合において、温度調節材料62は相変化材料を生の形態で(たとえば、相変化材料はカプセル化されていないすなわちマイクロカプセル化又はマクロカプセル化されていない)含み、そして相変化材料は芯部材63の全体にわたって一様に分散され得る。相変化材料が芯部材63内に均一に分散されていることが好ましくあり得るけれども、これはすべての用途において必要であるとは限らない、ということを当業者は理解するであろう。図4に示されたこの具体的態様において、相変化材料は、芯部材63内に分散されている明確なドメインを形成する。芯部材63を包囲することにより、鞘部材64は、芯部材63内の相変化材料を封じるのに役立ち得る。従って、鞘部材64は、繊維の加工中又は最終使用中の相変化材料の損失又は漏出を低減又は防止し得る。芯部材63は鞘部材64内に同心状に又は偏心状に置かれ得、そして芯/鞘型繊維60は所望される温度調節性及び機械的性質を与えるように、事実上任意の重量百分率の芯部材63及び鞘部材64を含み得る。
【0049】
図5に関して、海中島型繊維70の三次元図が図示されている。海中島型繊維70は、細長い海部材71内に置かれ且つ完全に包囲又は包まれた細長い且つ全体的に円筒状の島部材72、73、74及び75のセットを含む。この具体的態様において、島部材72、73、74及び75は、実質的に海中島型繊維70の長さにわたって延在する。4つの島部材がこの具体的態様において示されているけれども、海中島型繊維70は、海中島型繊維70の特定の用途に依存してより多い又はより少ない島部材を含み得る、ということが認識されるはずである。海部材71は海用ポリマー材料82で作られ、そして島部材72、73、74及び75はそれぞれ島用ポリマー材料76、77、78及び79で作られる。海用ポリマー材料82と島用ポリマー材料76、77、78及び79は、同じであり得又は何らかの様式について互いに異なり得る。1種又はそれ以上の温度調節材料が、島部材72、73、74及び75内に分散され得る。図5に示されているように、海中島型繊維70は、2種の異なる温度調節材料80及び81を含む。島部材72及び75は温度調節材料80を含み、一方島部材73及び74は温度調節材料81を含む。この場合において、温度調節材料80及び81は各々、それぞれの島部材内で明確なドメインを形成するところの生の形態の相変化材料を含み得る。島部材72、73、74及び75を包囲することにより、海部材71は、海中島型繊維70内の相変化材料を封じるのに役立ち得る。海中島型繊維70は、所望される温度調節性及び機械的性質を与えるように、事実上任意の重量百分率の島部材72、73、74及び75並びに海部材71を含み得る。
【0050】
先に論じられたように、本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維は、1種又はそれ以上の温度調節材料を含み得る。温度調節材料は、典型的には、1種又はそれ以上の相変化材料を含む。一般に、相変化材料は、熱流を温度安定化範囲に又は温度安定化範囲内に低減又は除去するように熱エネルギーを吸収又は放出する能力を有する任意の物質(又は物質の混合物)を含み得る。温度安定化範囲は、特定の転移温度、又は転移温度の範囲を含み得る。本発明の様々な具体的態様と共に用いられる相変化材料は、好ましくは、相変化材料が熱を吸収又は放出している時間中(典型的には、相変化材料が2つの状態(たとえば、液体状態と固体状態、液体状態と気体状態、固体状態と気体状態、又は2つの固体状態)の間の転移を受けている際に)、熱エネルギーの流れを阻止することが可能である。この作用は典型的には一時的であり、たとえば相変化材料の潜熱が加熱又は冷却過程中吸収又は放出されるまで起こる。本明細書において用いられる場合、用語「潜熱」は、物質(又は物質の混合物)が2つの状態の間の転移を受ける時にそれにより吸収又は放出される熱の量を指し得る。熱エネルギーは相変化材料に蓄積され得又は相変化材料から除去され得、そして相変化材料は典型的には熱源又は冷源により効果的に再チャージされ得る。適切な相変化材料を選択することにより、多成分繊維は、数多くの製品のいずれか一つにおける使用に充てられ得る。
【0051】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、相変化材料は、固/固相変化材料であり得る。固/固相変化材料は、典型的には2つの固体状態の間の転移(たとえば、結晶又は半結晶の相転移)を受けそして従って典型的には使用中液体にならないタイプの相変化材料である。
【0052】
相変化材料は、2種又はそれ以上の物質の混合物を含み得る。2種又はそれ以上の異なる物質を選択しそして混合物を作ることにより、温度安定化範囲は、多成分繊維の任意の特定の用途について調整され得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、2種又はそれ以上の異なる物質の混合物は、多成分繊維に組み込まれる場合、2つ若しくはそれ以上の明確な転移温度又は単一の改変転移温度を示し得る。
【0053】
本発明の様々な具体的態様により多成分繊維に組み込まれ得る相変化材料は、様々な有機及び無機物質を包含する。相変化材料の例は、例としてそして限定のためにではなしに、炭化水素(たとえば、直鎖アルカン又はパラフィン系炭化水素、分枝鎖アルカン、不飽和炭化水素、ハロゲン化炭化水素及び脂環式炭化水素)、水和塩(たとえば、塩化カルシウム六水和物、臭化カルシウム六水和物、硝酸マグネシウム六水和物、硝酸リチウム三水和物、フッ化カリウム四水和物、アンモニウムミョウバン、塩化マグネシウム六水和物、炭酸ナトリウム十水和物、リン酸二ナトリウム十二水和物、硫酸ナトリウム十二水和物及び酢酸ナトリウム三水和物)、ロウ、油、水、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基酸エステル、1−ハロゲン化物、第1級アルコール、芳香族化合物、包接化合物、半包接化合物、気体包接化合物、無水物(たとえば、ステアリン酸無水物)、エチレンカーボネート、多価アルコール(たとえば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ペンタグリセリン、テトラメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、テトラメチロールプロパン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、モノアミノペンタエリトリトール、ジアミノペンタエリトリトール、及びトリス(ヒドロキシメチル)酢酸)、ポリマー(たとえば、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンマロネート、ポリネオペンチルグリコールセバケート、ポリペンタングルタレート、ポリビニルミリステート、ポリビニルステアレート、ポリビニルラウレート、ポリヘキサデシルメタクリレート、ポリオクタデシルメタクリレート、グリコール(又はそれらの誘導体)と二酸(又はそれらの誘導体)との重縮合により製造されたポリエステル、並びにコポリマー(アルキル炭化水素側鎖又はポリエチレングリコール側鎖を備えたポリアクリレート又はポリ(メト)アクリレート、及びポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールを含むコポリマーのような))、金属、並びにそれらの混合物を包含する。
【0054】
相変化材料の選択は、典型的には、所望転移温度又は生じる多成分繊維の所望用途に依存する。たとえば、室温に近い転移温度を有する相変化材料は、使用者にとっての快適な温度を維持するために、生じる多成分繊維が服飾品又は履物中に組み込まれるところの用途について望ましくあり得る。
【0055】
本発明のいくつかの具体的態様による相変化材料は、たとえば約−40℃から約100℃又は約−5℃から約125℃のような、約−40℃から約125℃の範囲の転移温度を有し得る。被服用途に有用な一つの好ましい具体的態様において、相変化材料は、たとえば約10℃から約50℃、約15℃から約45℃、約22℃から約40℃又は約22℃から約28℃のような、約0℃から約50℃の範囲の転移温度を有する。また、本発明のいくつかの具体的態様による相変化材料は、たとえば少なくとも約50J/g、少なくとも約60J/g、少なくとも約70J/g、少なくとも約80J/g、少なくとも約90J/g又は少なくとも約100J/gのような、少なくとも約40J/gである潜熱を有し得る。被服用途に有用な一つの具体的態様において、相変化材料は、たとえば約60J/gから約400J/g、約80J/gから約400J/g又は約100J/gから約400J/gのような、約40J/gから約400J/gの範囲の潜熱を有する。
【0056】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、特に有用な相変化材料は、10から44個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素(すなわちC10〜C44パラフィン系炭化水素)を含む。表1は、本明細書に記載された多成分繊維において相変化材料として用いられ得るC13〜C28パラフィン系炭化水素のリストを与える。パラフィン系炭化水素の炭素原子の数は、典型的には、その融点と相関する。たとえば、分子当たり28個の直鎖炭素原子を含むn−オクタコサンは61.4℃の融点を有する。これと比較して、分子当たり13個の直鎖炭素原子を含むn−トリデカンは、−5.5℃の融点を有する。本発明の具体的態様によれば、分子当たり18個の直鎖炭素原子を含みそして28.2℃の融点を有するn−オクタデカンが、被服用途について特に望ましい。
【0057】
【表1】

【0058】
他の有用な相変化材料は、多成分繊維の所望用途に適した転移温度(たとえば、被服用途について約22℃から約40℃)を有するポリマー相変化材料を含む。ポリマー相変化材料は、1つ又はそれ以上のタイプのモノマー単位を含む様々な鎖構造を有するポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。特に、ポリマー相変化材料は、線状ポリマー、分枝状ポリマー(たとえば、星形分枝状ポリマー、櫛形分枝状ポリマー又は樹枝状分枝状ポリマー)又はそれらの混合物を含み得る。或る用途について、ポリマー相変化材料は、望ましくは、線状ポリマー、又はより大きい密度並びにより大きい度合いの秩序分子パッキング及び結晶化を可能にするべき少量の分枝を備えたポリマーを含む。かかるより大きい度合いの秩序分枝パッキング及び結晶化は、より大きい潜熱及びより狭い温度安定化範囲(たとえば、はっきりした転移温度)に通じ得る。ポリマー相変化材料は、ホモポリマー、コポリマー(たとえば、ターポリマー、統計コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期コポリマー、ブロックコポリマー、ラジアルコポリマー又はグラフトコポリマー)又はそれらの混合物を含み得る。ポリマー相変化材料を形成する1つ又はそれ以上のタイプのモノマー単位の性質が、ポリマー相変化材料の転移温度に影響を及ぼし得る。従って、モノマー単位の選択は、所望転移温度又はポリマー相変化材料を含む多成分繊維の所望用途に依存し得る。当業者により理解されるように、ポリマーの反応性及び官能性は、たとえばアミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、エポキシド、無水物、イソシアネート、シラン、ケトン及びアルデヒドのような、官能基の付加により変えられ得る。また、ポリマー相変化材料は、その靱性又は熱、湿気若しくは化学薬品に対するその耐性を増加させるために、架橋、からみ合い又は水素結合の可能なポリマーを含み得る。
【0059】
当業者により理解されるように、異なる分子量を有する様々な形態の数種のポリマーが与えられ得、何故ならポリマーの分子量はそのポリマーを作るために用いられる加工条件により決定され得るからである。従って、ポリマー相変化材料は、特定の分子量又は特定の範囲の分子量を有するポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。本明細書において用いられる場合、用語「分子量」は、ポリマー(又はポリマーの混合物)の数平均分子量、重量平均分子量又はメルトインデックスを指し得る。
【0060】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、非ポリマー相変化材料(たとえば、パラフィン系炭化水素)に対してより高い分子量、より大きい分子サイズ又はより高い粘度を有する結果として、ポリマー相変化材料が望ましくあり得る。このより大きい分子サイズ又はより高い粘度の結果として、ポリマー相変化材料は、加工中又は最終使用中の多成分繊維から漏出する傾向について、より小さい傾向を示し得る。本発明のいくつかの具体的態様について、ポリマー相変化材料は、たとえば約2,000から約5,000,000、約8,000から約100,000又は約8,000から約15,000のような、約400から約5,000,000の範囲の数平均分子量を有するポリマーを含み得る。たとえば、芯/鞘型繊維又は海中島型繊維内に組み込まれる場合、そのより大きい分子サイズ又はそのより高い粘度は、繊維の外面を形成する鞘部材又は海部材を通じてポリマー相変化材料が流れるのを防止し得る。温度調節性を与えることに加えて、ポリマー相変化材料は、本発明の様々な具体的態様による多成分繊維に組み込まれる場合、改善機械的性質(たとえば、延性、引張り強さ及び硬度)を与え得る。所望されるならば、所望転移温度を有するポリマー相変化材料は、細長い部材を作るためのポリマー材料と合わせられ得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、ポリマー相変化材料は、ポリマー材料を必要とすることなく細長い部材を作るためにそれが用いられ得るような十分な機械的性質を与え得、かくしてポリマー相変化材料のより高い充填レベル及び改善温度調節性を可能にする。
【0061】
たとえば、ポリエチレングリコールが、本発明のいくつかの具体的態様において、相変化材料として用いられ得る。ポリエチレングリコールの数平均分子量は、典型的には、その融点と相関する。たとえば、約570から約630の範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(たとえば、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手できるCarbowaxTM600)は、典型的には、約20℃から約25℃の融点を有し、しかしてそれらを被服用途にとって望ましいようにする。他の温度安定化範囲において有用であり得る他のポリエチレングリコールは、約400の数平均分子量及び約4℃から約8℃の範囲の融点を有するポリエチレングリコール、約1,000から約1,500の範囲の数平均分子量及び約42℃から約48℃の範囲の融点を有するポリエチレングリコール並びに約6,000の数平均分子量及び約56℃から約63℃の範囲の融点を有するポリエチレングリコール(たとえば、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手できるCarbowaxTM400、1500及び6000)を包含する。
【0062】
追加的な有用な相変化材料は、脂肪酸で末端がキャップされているポリエチレングリコールをベースとしたポリマー相変化材料を包含する。たとえば、約22℃から約35℃の範囲の融点を有するポリテトラメチレングリコール脂肪酸ジエステルは、ステアリン酸又はラウリン酸で末端がキャップされるところの約400から約600の範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコールから作られ得る。更なる有用な相変化材料は、テトラメチレングリコールをベースとしたポリマー相変化材料を包含する。たとえば、約1,000から1,800の範囲の数平均分子量を有するポリテトラメチレングリコール(たとえば、デラウェア州ウィルミントンのDuPont Inc.から入手できるTerathane(登録商標)1000及び1800)は、典型的には、約19℃から約36℃の範囲の融点を有する。約60℃から約65℃の範囲の融点を有するポリエチレンオキシドもまた、本発明のいくつかの具体的態様において、相変化材料として用いられ得る。
【0063】
或る用途について、ポリマー相変化材料は、慣用の重合方法を用いて作られ得るところの約0℃から約50℃の範囲の融点を有するホモポリマーを含み得る。表2は、種々のタイプのモノマー単位から作られ得る様々なホモポリマーの融点を示す。
【0064】
【表2】

【表3】

【表4】

【0065】
更なる望ましい相変化材料は、たとえばグリコール(又はその誘導体)と二酸(又はそれらの誘導体)との重縮合により作られ得るところの、約0℃から約40℃の範囲の融点を有するポリエステルを包含する。表3は、グリコールと二酸との様々な組合わせでもって作られ得るポリエステルの融点を示す。
【0066】
【表5】

【表6】

【0067】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、所望転移温度を有するポリマー相変化材料は、相変化材料(たとえば、上記に論じられた相変化材料)をポリマー(又はポリマーの混合物)と反応させることにより作られ得る。かくして、たとえば、n−オクタデシル酸(すなわちステアリン酸)はポリビニルアルコールと反応すなわちエステル化されてポリビニルステアレートを生じ得、あるいはドデカン酸(すなわちラウリン酸)はポリビニルアルコールと反応すなわちエステル化されてポリビニルラウレートを生じ得る。所望転移温度を有するポリマー相変化材料を生じさせるために、相変化材料(たとえば、1個又はそれ以上の官能基(アミン、カルボキシル、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、サルファリック(「含硫黄」)、等のような)を備えた相変化材料)とポリマーとの様々な組合わせが反応され得る。
【0068】
所望転移温度を有するポリマー相変化材料は、様々なタイプのモノマー単位から作られ得る。たとえば、ポリオクタデシルメタクリレートと同様に、ポリマー相変化材料は、オクタデシルメタクリレート(メタクリル酸でのオクタデシルアルコールのエステル化により作られ得る)を重合することにより作られ得る。また、ポリマー相変化材料は、ポリマー(又はポリマーの混合物)を重合することにより作られ得る。たとえば、ポリ−(ポリエチレングリコール)メタクリレート、ポリ−(ポリエチレングリコール)アクリレート、ポリ−(ポリテトラメチレングリコール)メタクリレート及びポリ−(ポリテトラメチレングリコール)アクリレートは、それぞれポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリテトラメチレングリコールメタクリレート及びポリテトラメチレングリコールアクリレートを重合することにより作られ得る。この例において、モノマー単位は、メタクリル酸(又はアクリル酸)でのポリエチレングリコール(又はポリテトラメチレングリコール)のエステル化により作られ得る。ポリグリコールビニルエーテルを作るために、ポリグリコールがアリルアルコールでエステル化され得又はビニルアセテートでエステル交換され得、そして次にはポリ−(ポリグリコール)ビニルエーテルを作るために、ポリグリコールビニルエーテルが重合され得る、ということが想定される。同様な態様で、ポリマー相変化材料は、たとえばエステル又はエーテルで末端がキャップされたポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのような、ポリグリコールの同族体から作られ得る、ということが想定される。
【0069】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、温度調節材料は、相変化材料を生の形態で(たとえば、相変化材料はカプセル化されていないすなわちマイクロカプセル化又はマクロカプセル化されていない)含み得る。多成分繊維の製造中、生の形態の相変化材料は、様々な形態の固体(たとえば、バルク形態、粉末、ペレット、粒体、フレーク、等)として又は様々な形態の液体(たとえば、溶融形態、溶媒中に溶解された、等)として与えられ得る。
【0070】
本発明の他の諸具体的態様によれば、温度調節材料は、相変化材料をカプセル化する、収容する、包囲する、吸収する又は反応する封じ込め構造体を含み得る。この封じ込め構造体は、多成分繊維又はそれから作製される製品の製造中において相変化材料にある度合いの保護(たとえば、高い温度又は剪断力からの保護)を与える一方、相変化材料の取扱いを容易にし得る。更に、封じ込め構造体は、使用中多成分繊維からの相変化材料の漏出を低減又は防止するのに役立ち得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、相変化材料が分散されている第1の細長い部材が第2の細長い部材により完全には包囲されていない場合、封じ込め構造体の使用は望ましくあり得るが、しかし必要とはされない。
【0071】
たとえば、温度調節材料は相変化材料を含有するマイクロカプセルのセットを含み得、そしてマイクロカプセルは少なくとも1つの細長い部材内に一様に又は非一様的に分散され得る。マイクロカプセルは相変化材料を封じる殻として作られ得、また様々な規則的又は不規則な形状(たとえば、球状、楕円体状、等)及びサイズに作られた個々のマイクロカプセルをを含み得る。個々のマイクロカプセルは、同じ又は異なる形状又はサイズを有し得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、マイクロカプセルは、約0.01から約100ミクロンの範囲の最大線寸法(たとえば、直径)を有し得る。一つの好ましい具体的態様において、マイクロカプセルは全体的に球状の形状を有し、そしてたとえば約0.5から約3ミクロンのような、約0.5から約10ミクロンの範囲の最大線寸法(たとえば、直径)を有する。封じ込め構造体の他の例は、シリカ粒子(たとえば、沈降シリカ粒子、フュームドシリカ及びそれらの混合物)、ゼオライト粒子、カーボン粒子(たとえば、グラファイト粒子、活性炭粒子及びそれらの混合物)及び吸収性材料(たとえば、吸収性ポリマー材料、高吸収性材料、セルロース材料、ポリ(メト)アクリレート材料、ポリ(メト)アクリレートの金属塩材料、及びそれらの混合物)を包含する。たとえば、温度調節材料は、相変化材料で含浸されたシリカ粒子、ゼオライト粒子、カーボン粒子又は吸収性材料を含み得る。
【0072】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、1つ又はそれ以上の細長い部材は各々、約100重量パーセントまでの温度調節材料を含み得る。典型的には、細長い部材は、約90重量パーセントまでの温度調節材料(たとえば、約50重量パーセントまで又は約25重量パーセントまでの温度調節材料)を含み得る。いくつかの好ましい具体的態様において、細長い部材は、約5重量パーセントから約70重量パーセントの温度調節材料を含み得る。かくして、一つの具体的態様において、細長い部材は約5重量パーセントから約60重量パーセントの温度調節材料を含み得、そして他の諸具体的態様において、細長い部材は約10重量パーセントから約30重量パーセント又は約15重量パーセントから約25重量パーセントの温度調節材料を含み得る。
【0073】
先に論じられたように、本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維は、細長い部材のセットを含み得る。細長い部材は、同じ又は異なるポリマー材料から作られ得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、細長い部材は、温度調節材料が分散されている第1ポリマー材料から作られた第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を含み得る。加えて、細長い部材は、第1ポリマー材料とは何らかの様式について異なり得る第2ポリマー材料から作られた第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)を含み得る。細長い部材は同じポリマー材料から作られ得、しかしてこの場合において第1ポリマー材料と第2ポリマー材料は同じである、ということが認識されるはずである。本発明のいくつかの具体的態様によれば、温度調節材料は、第1ポリマー材料を必要とすることなく第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を作るためにポリマー相変化材料が用いられ得るような、十分な機械的性質を与えるポリマー相変化材料を含み得る。本発明の他の諸具体的態様によれば、温度調節材料は、第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を作るための第1ポリマー材料と反応又はブレンドされ得るポリマー相変化材料を含み得る。たとえば、ポリオクタデシルメタクリレートが、溶融紡糸法のためのポリプロピレンとブレンドされ得る。別の例として、ポリビニルラウレートが、溶液紡糸法のためのポリアクリル主鎖上にグラフト反応され得る。更なる例として、ポリビニルステアレートが、溶液紡糸法のためのポリアクリリックとブレンドされ得る。
【0074】
一般に、ポリマー材料(たとえば、第1ポリマー材料又は第2ポリマー材料)は、細長い部材に成形されることが可能である任意のポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、細長い部材は、任意の繊維形成性ポリマー(又は繊維形成性ポリマーの混合物)から作られ得る。多成分繊維を作るために溶融紡糸法が用いられるところの本発明の諸具体的態様によれば、ポリマー材料は、熱可塑性ポリマー(又は熱可塑性ポリマーの混合物)(すなわち、加熱されて溶融物を形成しそして引き続いて造形又は成型されて細長い部材を形成し得るもの)を含み得る。本発明の他の諸具体的態様によれば、ポリマー材料は、弾性ポリマー(又は弾性ポリマーの混合物)を含み得る。
【0075】
ポリマー材料は、1つ又はそれ以上のタイプのモノマー単位を含む様々な鎖構造を有するポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。特に、ポリマー材料は、線状ポリマー、分枝状ポリマー(たとえば、星形分枝状ポリマー、櫛形分枝状ポリマー又は樹枝状分枝状ポリマー)又はそれらの混合物を含み得る。ポリマー材料は、ホモポリマー、コポリマー(たとえば、ターポリマー、統計コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期コポリマー、ブロックコポリマー、ラジアルコポリマー又はグラフトコポリマー)又はそれらの混合物を含み得る。当業者により理解されるように、ポリマーの反応性及び官能性は、たとえばアミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、エポキシド、無水物、イソシアネート、シラン、ケトン及びアルデヒドのような、官能基の付加により変えられ得る。また、ポリマー材料は、その靱性又は熱、湿気若しくは化学薬品に対するその耐性を増加させるために、架橋、からみ合い又は水素結合が可能であるポリマーを含み得る。
【0076】
本発明の様々な具体的態様による細長い部材を作るために用いられ得るポリマーの例は、ポリアミド(たとえば、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン12、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、等)、ポリアミン、ポリイミド、ポリアクリリック(たとえば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、メタクリル酸及びアクリル酸のエステル、等)、ポリカーボネート(たとえば、ポリビスフェノールAカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、等)、ポリジエン(たとえば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリノルボルネン、等)、ポリエポキシド、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリプロピレンスクシネート、等)、ポリエーテル(たとえば、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)、ポリブチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレン(パラホルムアルデヒド)、ポリテトラメチレンエーテル(ポリテトラヒドロフラン)、ポリエピクロロヒドリン、等)、ポリフルオロカーボン、ホルムアルデヒドポリマー(たとえば、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、等)、天然ポリマー(たとえば、セルロース樹脂、キトサン、リグニン、ロウ、等)、ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブテン、ポリオクテン、等)、ポリフェニレン(たとえば、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテルスルホン、等)、ケイ素含有ポリマー(たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリカルボメチルシラン、等)、ポリウレタン、ポリビニル(たとえば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールのエステル及びエーテル、ポリビニルアセテート、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリビニルメチルケトン、等)、ポリアセタール、ポリアリーレート、及びコポリマー(たとえば、ポリエチレン−コ−ビニルアセテート、ポリエチレン−コ−アクリル酸、ポリブチレンテレフタレート−コ−ポリエチレンテレフタレート、ポリラウリルラクタム−ブロック−ポリテトラヒドロフラン、等)を包含する。
【0077】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、第1ポリマー材料は、温度調節材料を第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)内に分散する又は組み込むのを容易にするポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、第1ポリマー材料は、温度調節材料と相溶性若しくは混和性である又は温度調節材料に対する親和性を有するポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。本発明のいくつかの具体的態様において、この親和性は、例としてそして限定のためにではなしに、第1ポリマー材料と温度調節材料の溶解パラメーター、極性、疎水特性又は親水特性の同様性に依存し得る。かかる親和性は、多成分繊維の製造中において第1ポリマー材料の中間の溶融又は液体形態中における温度調節材料の分散を容易にし得、そしてかくして究極的には多成分繊維中における相変化材料のより一様な又はより多い量若しくは充填レベルの組込みを容易にし得る。温度調節材料が更に封じ込め構造体を含むところの諸具体的態様において、第1ポリマー材料は、相変化材料に対する親和性と共に又はその代わりに、封じ込め構造体に対する親和性のために選択されたポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。たとえば、温度調節材料が相変化材料を含有するマイクロカプセルのセットを含む場合、ポリマー(又はポリマーの混合物)は、マイクロカプセルに対する(たとえば、マイクロカプセルが作られている物質に対する)親和性を有するように選択され得る。たとえば、本発明のいくつかの具体的態様は、第1ポリマー材料がマイクロカプセルを形成するポリマーと同じ又は同様なポリマーを含むように選択し得る(たとえば、マイクロカプセルがナイロン殻を含む場合、第1ポリマー材料は、ナイロンを含むように選択され得る)。かかる親和性は、第1ポリマー材料の中間の溶融又は液体形態中における相変化材料を含有するマイクロカプセルの分散を容易にし得、そしてかくして究極的には多成分繊維中における相変化材料のより一様な又はより多い量若しくは充填レベルの組込みを容易にし得る。本発明の一つの好ましい具体的態様において、温度調節材料が第1ポリマー材料内に分散される場合、第1ポリマー材料は、所望温度安定化範囲が維持されるよう温度調節材料に対して十分に非反応性であるように選択され得る。
【0078】
たとえば、第1ポリマー材料は、約4から約36g/10minの範囲のメルトインデックスを有する高密度ポリエチレン(たとえば、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich Corp.から入手できるところの4、12及び36g/10minのメルトインデックスを有する高密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレンの変性形態(たとえば、デラウェア州ウィルミントンのDuPont Inc.から入手できるFusabond(登録商標)E MB100D)及びエチレンプロピレンゴムの変性形態(たとえば、デラウェア州ウィルミントンのDuPont Inc.から入手できるFusabond(登録商標)N MF416D)を包含し得る。当業者により理解されるように、メルトインデックスは、典型的には、ポリマー(又はポリマーの混合物)の流動特性の尺度を指しそしてポリマー(又はポリマーの混合物)の分子量と反比例的に相関する。極性相変化材料(たとえば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びそれらの同族体)については、第1ポリマー材料は、極性相変化材料の分散を容易にするべき極性ポリマー(又は極性ポリマーの混合物)を含み得る。かくして、たとえば、第1ポリマー材料は、たとえばポリブチレンテレフタレート−ブロック−ポリテトラメチレングリコール(たとえば、デラウェア州ウィルミントンのDuPont Inc.から入手できるHytrel(登録商標)3078、5544及び8238)のようなポリエステルのコポリマー、及びたとえばポリアミド−ブロック−ポリエーテル(たとえば、ペンシルベニア州フィラデルフィアのATOFINA Chemicals, Inc.から入手できるPebax(登録商標)2533、4033、5533、7033、MX 1205及びMH 1657)のようなポリアミドのコポリマーを包含し得る。
【0079】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、第1ポリマー材料は、温度調節材料に対してわずかな又は部分的な相溶性若しくは混和性又は親和性を有するポリマー(又はポリマーの混合物)(たとえば、半混和性ポリマー)を含み得る。かかる部分親和性は、より高い温度において及び溶融紡糸法中において、温度調節材料の分散を容易にするのに及び加工を容易にするのに十分であり得る。より低い温度及び剪断条件において並びに多成分繊維が形成されるや否や、この部分親和性は、温度調節材料が析出するようにさせ得る。生の形態の相変化材料が用いられるところの本発明の諸具体的態様については、この部分親和性は、相変化材料の不溶化及び多成分繊維内の増加相変化材料ドメインの形成に通じ得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、ドメインの形成は、2つの状態の間の相変化材料の転移を容易にすることにより、改善温度調節性に通じ得る。加えて、ドメインの形成は、加工中又は使用中の多成分繊維からの相変化材料の損失又は漏出を低減又は防止するのに役立ち得る。
【0080】
たとえば、パラフィン系炭化水素のような或る相変化材料は、相変化材料のより低い濃度において又は温度が臨界溶解温度を超える場合、ポリオレフィン又はポリオレフィンのコポリマーと相溶性であり得る。かくして、たとえば、パラフィン系炭化水素(又はパラフィン系炭化水素の混合物)とポリエチレン又はポリエチレン−コ−ビニルアセテートとの混合は、より高い温度及びパラフィン系炭化水素のより高い濃度において達成されて、溶融紡糸法において容易に制御、ポンプ輸送及び加工され得る均質なブレンド物を生成させ得る。多成分繊維が形成されそして冷却されるや否や、パラフィン系炭化水素は、不溶性になり得そして析出して明確なドメインになり得る。これらのドメインは、改善温度調節性にとってのパラフィン系炭化水素の純粋な溶融又は結晶化を可能にし得る。加えて、これらのドメインは、パラフィン系炭化水素の損失又は漏出を低減又は防止するのに役立ち得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、ポリエチレン−コ−ビニルアセテートは約5と約90重量パーセントの間のビニルアセテートを有し得、そして本発明の他の諸具体的態様によれば、ビニルアセテート含有率は約5と約50重量パーセントの間にある。一つの好ましい具体的態様において、ビニルアセテート含有率は、望ましくは、約18から約25重量パーセントの間にある。ビニルアセテートのこの含有率は、パラフィン系炭化水素とポリエチレン−コ−ビニルアセテートを混合してブレンド物を形成させる場合に温度混和性制御を可能にし得る。特に、このビニルアセテート含有率は、より高い温度において優秀な混和性を可能にし得、かくして該ブレンド物の均質性の故に溶融紡糸法の安定性及び制御を容易にする。より低い温度(たとえば、室温又は普通の商業的布使用温度)において、ポリエチレン−コ−ビニルアセテートはパラフィン系炭化水素と半混和性であり、かくしてパラフィン系炭化水素の分離及びマイクロドメイン形成を可能にする。
【0081】
第1ポリマー材料は、多成分繊維が本発明のいくつかの具体的態様により形成されつつある時に、温度調節材料に対する担体として働き得る。加えて、第1ポリマー材料は、繊維加工中第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)の健全性を維持するのを容易にし得、そして生じる多成分繊維に向上機械的性質を与え得る。
【0082】
本発明の具体的態様によれば、第1ポリマー材料は、低分子量ポリマー(又は低分子量ポリマーの混合物)を含み得る。低分子量ポリマーは、典型的には、加熱されて溶融物を形成する時に低粘度を有し、しかしてこの低粘度は該溶融物中における温度調節材料の分散を容易にし得る。先に論じられたように、異なる分子量を有する様々な形態の数種のポリマーが与えられ得る。従って、本明細書において用いられる場合、用語「低分子量ポリマー」は、ポリマーの低分子量形態(たとえば、先に論じられたポリマーの低分子量形態)を指し得る。たとえば、約20,000(又はそれ以下)の数平均分子量を有するポリエチレンは、本発明の具体的態様において、低分子量ポリマーとして用いられ得る。低分子量ポリマーと関連した分子量又は分子量の範囲は、選択される特定のポリマー(たとえば、ポリエチレン)に又は温度調節材料を低分子量ポリマーの溶融物中に分散させるために用いられる方法若しくは装置に依存し得る、ということが認識されるはずである。
【0083】
本発明の別の具体的態様によれば、第1ポリマー材料は、低分子量ポリマーと高分子量ポリマーの混合物を含み得る。高分子量ポリマーは、典型的には、向上物理的性質(たとえば、機械的性質)を有するが、しかし加熱されて溶融物を形成する時に高粘度を有し得る。本明細書において用いられる場合、用語「高分子量ポリマー」は、ポリマーの高分子量形態(たとえば、先に論じられたポリマーの高分子量形態)を指し得る。低分子量ポリマーと高分子量ポリマーは、互いに相溶性若しくは混和性であるように又は互いに対する親和性を有するように選択され得る。かかる親和性は、多成分繊維の製造中において低分子量ポリマー、高分子量ポリマー及び温度調節材料の混合物を形成させるのを容易にし得、そしてかくして究極的には多成分繊維中における相変化材料のより一様な又はより多い量若しくは充填レベルの組込みを容易にし得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、低分子量ポリマーは、高分子量ポリマーと温度調節材料の間の相溶化のつなぎ役として働き、それにより温度調節材料を多成分繊維に組み込むのを容易にする。
【0084】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、細長い部材は、典型的には、約10重量パーセントから約30重量パーセントの温度調節材料を含むと共に、細長い部材の残部は低分子量ポリマー及び高分子量ポリマーを含む。たとえば、一つの好ましい具体的態様において、細長い部材は、15重量パーセントの低分子量ポリマー、70重量パーセントの高分子量ポリマー及び15重量パーセントの温度調節材料を含み得る。
【0085】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、第2ポリマー材料は、多成分繊維にとっての1つ又はそれ以上の所望物理的性質を有する又は与えるポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。所望物理的性質の例は、機械的性質(たとえば、延性、引張り強さ及び硬度)、熱的性質(たとえば、熱成形性)及び化学的性質(たとえば、反応性)を包含する。第2ポリマー材料は、温度調節材料の高い充填レベルに因るような第1ポリマー材料の又は第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)の欠陥(たとえば、機械的又は熱的欠陥)を補償するように選択されたポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、第2ポリマー材料は、多成分繊維の総合物理的性質(たとえば、機械的性質)及び多成分繊維の加工性(たとえば、溶融紡糸法によってのその形成を容易にすることにより)を改善するのに効果がある。第2ポリマー材料は、第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)中に含められた温度調節材料を封じるのに役立ち得る。従って、第2ポリマー材料は、高温及び高剪断の繊維加工の場合には最適化されない第1ポリマー材料又は温度調節材料の使用を可能にし得る。加えて、第2ポリマー材料は、繊維加工中又は最終使用中の相変化材料の損失又は漏出を低減又は防止し得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、第2ポリマー材料は、温度調節剤の所望温度安定化範囲を維持するのに十分に温度調節材料に対して非反応性であり得る。
【0086】
本発明の具体的態様によれば、第2ポリマー材料は、高分子量ポリマーを含み得る。先に論じられたように、高分子量ポリマーは、典型的には、向上物理的性質(たとえば、機械的性質)を有し、そしてポリマーの高分子量形態(たとえば、先に論じられたポリマーの高分子量形態)であるように選択され得る。
【0087】
本発明のいくつかの好ましい具体的態様によれば、第2ポリマー材料は、優秀な加工性、生じる繊維に付与される性質、及び或る相変化材料(パラフィン系炭化水素のような)に対する抵抗性(これらの相変化材料の損失又は漏出を低減又は防止するべき)のために(部分的には)、ポリエステルを含み得る。本発明の具体的態様によれば、ポリエステルは、約20,000(又はそれ以上)の数平均分子量を有し得る。本発明の他の諸具体的態様によれば、第2ポリマー材料は、たとえば約12g/10min、約18g/10min又は約30g/10minのような、約8から約1,500g/10minの範囲のメルトインデックスを有するポリプロピレンのようなポリオレフィンを含み得る。
【0088】
この時点において、当業者は、本発明の様々な具体的態様と関連した多くの利点を理解し得る。たとえば、本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、多成分繊維がたとえば服飾品又は履物のような製品に組み込まれる場合に改善快適さレベルを可能にする改善温度調節性を与え得る。本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)内に1種又はそれ以上の相変化材料の高い充填レベルを含み得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)が第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を包囲する故、高い充填レベルが与えられ得る。第2の細長い部材は、相変化材料の高い充填レベルに因るような第1の細長い部材と関連した欠陥(たとえば、機械的又は熱的欠陥)を補償するように選択されたポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。更に、第2の細長い部材は、繊維の総合物理的性質(たとえば、機械的性質)及び繊維の加工性(たとえば、溶融紡糸法によってのその形成を容易にすることにより)を改善するように選択されたポリマー(又はポリマーの混合物)を含み得る。第1の細長い部材を包囲することにより、第2の細長い部材は、相変化材料の損失又は漏出を低減又は防止するように多成分繊維内に相変化材料を封じるのに役立ち得る。
【0089】
本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)に対する実質的に任意の割合(繊維の総重量のうち)が温度調節材料を含む第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を含み得る。例としてそして限定のためにではなしに、多成分繊維の温度調節性が制御の考慮事項である場合、多成分繊維のうちのより大きい割合が、温度調節材料を含む第1の細長い部材を含み得る。他方では、多成分繊維の物理的性質(たとえば、機械的性質)が制御の考慮事項である場合、多成分繊維のうちのより大きい割合が、温度調節材料を含まない第2の細長い部材を含み得る。その代わりに、多成分繊維の温度調節性と物理的性質のバランスを取る場合、第2の細長い部材が同じ又は異なる温度調節材料を含むことが望ましくあり得る。更に、先に論じられたように、多成分繊維が断熱材料(多成分繊維内に形成された1個又はそれ以上の内部空洞内に含有され得る)を含むことが望ましくあり得る。
【0090】
本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維は、約1重量パーセントから約99重量パーセントまでの第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を含み得る。典型的には、本発明の具体的態様による多成分繊維は、約10重量パーセントから約90重量パーセントの第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)を含み得る。たとえば、芯/鞘型繊維の具体的態様は、90重量パーセントの芯部材及び10重量パーセントの鞘部材を含み得る。この具体的態様について、芯部材は、芯/鞘型繊維が54重量パーセントの温度調節材料を含むように60重量パーセントの温度調節材料を含み得る。芯/鞘型繊維の別の具体的態様は、約50重量パーセントまでの芯部材を含み得、そして次には芯部材は約50重量パーセントまでの温度調節材料を含み得る。かかる重量百分率を利用することにより、約25重量パーセントまでの温度調節材料を備えた芯/鞘型繊維が与えられ、また芯/鞘型繊維にとって有効な温度調節性及び機械的性質が与えられる。多成分繊維の総重量に対する細長い部材の重量パーセントは、たとえば細長い部材の横断面積を調整することにより又は細長い部材が多成分繊維の長さにわたって延在する程度を調整することにより変動され得る、ということが認識されるはずである。
【0091】
本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維は、たとえば少なくとも約5J/g、少なくとも約8J/g、少なくとも約11J/g又は少なくとも約14J/gのような、少なくとも約2J/gである潜熱を有し得る。たとえば、本発明の具体的態様による多成分繊維は、たとえば約5J/gから約20J/g、約8J/gから約20J/g、約11J/gから約20J/g又は約14J/gから約20J/gのような、約2J/gから約20J/gの範囲の潜熱を有し得る。
【0092】
本発明の様々な具体的態様による多成分繊維は、たとえば溶融紡糸法又は溶液紡糸法(湿式又は乾式)を用いてのような、様々な方法を用いて製造され得る。どちらの方法についても、多成分繊維は、材料を紡糸口金中のオリフィスのセットを通じて押し出して繊維(オリフィスから出現する)を形成させることにより作られ得る。本明細書において用いられる場合、用語「紡糸口金」は、1種又はそれ以上のポリマー材料及び1種又はそれ以上の温度調節材料を押出用オリフィスを通じて外部環境中に送り出す繊維押出装置の一部を指し得る。典型的紡糸口金は、たとえば紡糸口金の1メートルの長さ当たり1から5,000個のオリフィスのような、紡糸口金の1メートルの長さ当たり1から500,000個のオリフィスを含み得る。紡糸口金は、板を貫通するようにドリルで若しくは腐食法であけられた孔を又は所望繊維を発出させることが可能な任意の他の構造を備え得る。
【0093】
溶融紡糸法において、多成分繊維を形成する1種又はそれ以上のポリマー材料及び1種又はそれ以上の温度調節材料が、溶融状態で紡糸口金のオリフィスに送られ得る。オリフィスに通す前に、温度調節材料は、第1ポリマー材料と混合されてブレンド物を形成し得る。混合の結果として、温度調節材料は、第1ポリマー材料内に分散且つ少なくとも部分的に封じられ得る。第1ポリマー材料により封じられていないところの温度調節材料の部分は、生じる多成分繊維からの温度調節材料の損失又は漏出を低減又は防止するために、紡糸口金から出現するとすぐに第2ポリマー材料により封じられ得る。該ブレンド物と第2ポリマー材料は合わせられそして様々な構成の各オリフィスを通るように導かれて、それぞれ第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)及び第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)を形成し得、かくして多成分繊維を形成する。たとえば、ブレンド物は芯/鞘型繊維の芯部材又は海中島型繊維の島部材を形成させるためのオリフィスを通るように導かれ得、そして第2ポリマー材料は芯/鞘型繊維の鞘部材又は海中島型繊維の海部材を形成させるためのオリフィスを通るように導かれ得る。いくつかの例において、ブレンド物と第2ポリマー材料は、生じる多成分繊維内に1個又はそれ以上の内部空洞(かかる1個又はそれ以上の内部空洞は、空気のような断熱材料を収容し得る)を形成するように、合わせられそして各オリフィスを通るように導かれ得る。
【0094】
本発明のいくつかの具体的態様によれば、多成分繊維は、第1ポリマー材料と温度調節材料とを含むペレットを用いて作られ得る。ペレットは、たとえば、温度調節材料、低分子量ポリマー及び高分子量ポリマーの固化された溶融混合物を含み得る。本発明の他の諸具体的態様によれば、ペレットは第1ポリマー材料から作られ得、そしてこれらのペレットは相変化材料で含浸又はインビビジョンされ得る。ペレットは溶融されてブレンド物を形成しそして上記に論じられたように第2ポリマー材料と共に加工されて、多成分繊維を形成し得る。
【0095】
溶液紡糸法において、多成分繊維を形成する1種又はそれ以上のポリマー材料及び1種又はそれ以上の温度調節材料は、紡糸口金のオリフィスに通す前に、溶媒中に溶解され得る。湿式紡糸法において、紡糸口金を出るとすぐに材料が溶液から沈殿しそして固体繊維を形成し得るように、紡糸口金は薬浴中に沈められ得る。乾式紡糸法においては、材料は、紡糸口金から空気中に出現しそして空気中における溶媒(たとえば、アセトン)の蒸発に因り固化し得る。
【0096】
どちらの方法についても、第1ポリマー材料は或る用途について用いられる必要がない、ということが認識されるはずである。たとえば、温度調節材料は、所望転移温度を有する且つ多成分繊維に組み込まれる場合に十分な機械的性質を与えるポリマー相変化材料を含み得る。かくして、温度調節材料と第2ポリマー材料は合わせられそして様々な構成の各オリフィスを通るように導かれて、それぞれ第1の細長い部材(又は第1セットの細長い部材)及び第2の細長い部材(又は第2セットの細長い部材)を形成し得る。たとえば、温度調節材料は芯/鞘型繊維の芯部材又は海中島型繊維の島部材を形成させるためのオリフィスを通るように導かれ得、そして第2ポリマー材料は芯/鞘型繊維の鞘部材又は海中島型繊維の海部材を形成させるためのオリフィスを通るように導かれ得る。
【0097】
紡糸口金から出現した後、多成分繊維は、ゴデット又はアスピレーターを利用して延伸又は伸張され得る。たとえば、溶融紡糸法において紡糸口金から出現する多成分繊維は、紡糸口金の下に設置された長いスロット形状のエアアスピレーターに入る前に、下方に移動する繊維(少なくとも部分的に急冷される)の垂直配向カーテンを形成し得る。アスピレーターは、1個又はそれ以上の空気吸引ノズルからの圧縮空気により生成された速い下方に移動する空気流を導入し得る。空気流は繊維に対して延伸力を発生させ得、しかして紡糸口金と空気ノズルの間で繊維が延伸されるようにさせそして繊維を細長化する。当業者により理解されるように、溶融紡糸法は、たとえば繊維を細長化するために用いられる空気の温度及び容量並びに繊維が細長化される場所に依存して、メルトブローン法又はスパンボンド法として分類され得る。スパンボンド法と比べて、メルトブローン法は、典型的には、繊維を細長化するためにより高い温度において空気のより多い容量を用いる。また、スパンボンド法と比べて、メルトブローン法は、典型的には、生じる繊維を形成するポリマー材料が依然として固化しつつあり得るように紡糸口金により接近して細長化力を適用する。
【0098】
いったん形成されると、多成分繊維は、数多くの繊維用途のために更に加工され得る。特に、多成分繊維は、例としてそして限定のためにではなしに、様々なタイプのプリーツ加工布、編組布、加撚布、フェルト布、編布、織布又は不織布を作るために、織方法、不織方法、編成方法又は製織方法に付され得る。たとえば、多成分繊維は、ボビン上に巻かれ又は糸に紡がれそして次いで様々な慣用の編成又は製織方法にて利用され得る。別の例として、多成分繊維は、成形表面(たとえば、フォルドリニア金網のような移動コンベヤースクリーンベルト)上に無秩序に置かれて、繊維の連続不織ウェブを形成し得る。本発明の具体的態様によれば、多成分繊維は、ウェブを形成する前に、短いステープルファイバーに切断され得る。ステープルファイバーを用いる一つの潜在的利点は、より等方性の不織ウェブが形成され得ることであり、何故ならステープルファイバーはウェブにおいて、より長い又は切断されていない繊維(たとえば、連続繊維)よりも無秩序に配向され得るからである。様々な生地を製造する際に用いるための安定な不織布を作るために、ウェブは次いで任意の慣用の結合方法を用いて結合され得る。結合方法の例は、移動スクリーンベルトからウェブを引き上げそしてウェブを2本の加熱カレンダーロールに通すことを伴う。所望されるならば、ロールの少なくとも一方は、ウェブが数多くの箇所にて結合されるようにするためにエンボスされ得る。エアカードウェブ又はスパンレイドウェブもまた、本発明のいくつかの具体的態様による多成分繊維から形成され得る。更なる例として、メルトブローン法に従って形成された多成分繊維は、スパンボンド法に従って形成された繊維の2つの層の間に位置する中間層を形成し得、かくして繊維の不織積層物を形成する。スパンボンド法に従って形成された繊維はより大きいデニールの繊維(延伸されそして改善機械的性質を与える)を含み得、一方メルトブローン法に従って形成された繊維はより小さいデニールの繊維(延伸されずそして改善されたカバレージ及び温度調節性を与える)を含み得る。スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(「SMS」)布を作るために、不織積層物は次いで任意の慣用の結合方法を用いて結合され得る。
【0099】
本発明のいくつかの具体的態様による布は、たとえば少なくとも約5J/g、少なくとも約8J/g、少なくとも約11J/g又は少なくとも約14J/gのような、少なくとも約2J/gである潜熱を有し得る。たとえば、本発明の具体的態様による布は、たとえば約5J/gから約20J/g、約8J/gから約20J/g、約11J/gから約20J/g又は約14J/gから約20J/gのような、約2J/gから約20J/gの範囲の潜熱を有し得る。
【0100】
布は、2種又はそれ以上の異なる温度調節材料を含む多成分繊維から作られ得る、ということが認識されるはずである。本発明のいくつかの具体的態様によれば、温度調節材料のかかる組合わせは、2つ又はそれ以上の明確な転移温度を示し得る。たとえば、手袋を製造する際に用いるための布は、相変化材料A及びBを含む多成分繊維から作られ得る。相変化材料Aは約5℃の融点を有し得、そして相変化材料Bは約75℃の融点を有し得る。多成分繊維における相変化材料のこの組合わせは、熱い環境(たとえば、オーブントレーのような加熱物体を扱う場合)だけでなく冷たい環境(たとえば、冬の状況中の戸外使用)においても、向上温度調節性を手袋に与え得る。加えて、布は、何らかの様式について異なる2つ又はそれ以上のタイプの多成分繊維から作られ得る(たとえば、異なる構成を備えた又は異なる温度調節材料を含むものから作られ得る)。たとえば、布は、第1温度調節材料を含む芯/鞘型繊維の或る百分率及び第2温度調節材料を含む芯/鞘型繊維の残りの百分率から作られ得る。芯/鞘型繊維のこの組合わせは、異なる環境(たとえば、冷たいと熱い)において向上温度調節性を布に与え得る。
【0101】
次に図6を参照すると、本発明の具体的態様による多成分繊維134を作るための繊維押出装置110が図示されている。装置110は、溶融紡糸法によって多成分繊維134を作るために用いられ得る。加えて、装置110は、所望温度調節性を有する不織布を製造するために、作られた多成分繊維134をスパンボンド法に付すために用いられ得る。
【0102】
装置110は、多成分繊維134を押し出して作るための口金パック128を含む。本明細書において用いられる場合、用語「口金パック」は、1種又はそれ以上のポリマー材料及び1種又はそれ以上の温度調節材料を加工して押出繊維を製造するための組立体を指し得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、口金パックは、濾過システム、分配システム及び紡糸口金を含み得る。口金パックの諸例は、「複成分繊維を作製する方法」という名称のHillsの特許である米国特許第5,162,074号明細書及びその中で引用された参考文献に記載されており、そしてそれらの開示は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。この具体的態様において、口金パック128は2種又はそれ以上の溶融ポリマー材料のための流路を与え、そして多成分繊維134は1つ又はそれ以上の構成(たとえば、芯−鞘型又は海中島型構成)を有する紡糸口金130から出現し得る。
【0103】
図6に示されているように、装置110はまた、ポリマー材料A及びポリマー材料Bをそれぞれ受け取るホッパー112及び114を含む。ポリマー材料A及びBは液体又は固体(たとえば、ペレットとして)の形態で与えられ得、そしてそれぞれホッパー112及び114からスクリュー押出機116及び118中に供給される。当初に固体形態で与えられる場合、ポリマー材料A及びBは、典型的には、それらが加熱パイプ120及び122の方へ運ばれるにつれて溶融する。温度調節材料Cが、紡糸口金130においてポリマー材料Aと遭遇するする前に、装置110に沿って1つ又はそれ以上の場所においてポリマー材料Bに添加されそして混合されてブレンド物を形成し得る。図6は、装置110において温度調節材料Cをポリマー材料Bに添加するための様々な場所を示す。たとえば、温度調節材料Cは、場所113においてホッパー114に、場所119においてスクリュー押出機118に又は場所127において口金パック128に添加され得る。温度調節材料Cはポリマー材料Bに添加されてブレンド物を形成し得、そしてこのブレンド物は液体又は固体(たとえば、ペレットとして)の形態で与えられそして次いでホッパー114中に供給され得る、ということが認識されるはずである。その代わりに又はそれと共に、温度調節材料C(又はいくぶん異なった性質を有する別の温度調節材料)が、装置110に沿って1つ又はそれ以上の場所においてポリマー材料Aに添加されそして混合されてブレンド物を形成し得る。本発明のいくつかの具体的態様によれば、温度調節材料Cは、多成分繊維134に組み込まれる場合に十分な機械的性質を与えるポリマー相変化材料を含み得る。本発明のかかる具体的態様については、ポリマー材料Bは省かれ得、そして温度調節材料Cは単に場所113においてホッパー114に添加されそして紡糸口金130においてポリマー材料Aと合わせられて多成分繊維134を形成し得る。
【0104】
図6に示された本発明の具体的態様において、温度調節材料Cとポリマー材料Bとの混合は、静的又は動的様式のどちらか又は両方にて成し遂げられ得る。動的混合は、温度調節材料Cとポリマー材料Bとを効果的にかき混ぜて又は混合してブレンド物を形成させる任意の機械的方法(たとえば、スクリュー押出機118を用いることによるような)により行われ得る。たとえば、温度調節材料Cがホッパー114に又はスクリュー押出機118に添加される場合、動的混合が行われ、そしてブレンド物の液体流はスクリュー押出機118内で加熱パイプ122の方へ移動される。
【0105】
動的混合とは対照的に、静的混合は、典型的には、いかなる機械的かき混ぜ又は混合方法も利用する必要はない。本発明のいくつかの具体的態様によれば、静的混合は、異なる材料の2つ又はそれ以上の進行する液体流の進路を、所望混合を達成するのに十分な回数交差させることにより遂行され得る。本発明の具体的態様により用いられ得る静的混合機の例は、「瞬時ミキサー口金パック」という名称のHaggard等の特許である米国特許第5,851,562号明細書に記載されており、そしてその開示は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。温度調節材料Cとポリマー材料Bとの静的混合は、紡糸口金130においてポリマー材料Aと合わせられる前に、口金パック128内で又は装置110内の様々な他の場所において行われ得る。たとえば、温度調節材料Cは、場所121において添加されそしてそれが加熱パイプ122内で進行するにつれてポリマー材料Bと静的に混合され得る。特に、温度調節材料Cの第1液体流はポリマー材料Bの第2液体流と交差されて、生じる液体流にての所望ブレンド物を形成し得る。所望されるならば、生じた液体流は、紡糸口金130においてポリマー材料Aと合わせられる前に、更に静的又は動的混合のどちらか又は両方に付され得る。
【0106】
図6に関して、ポリマー材料Aの液体流及びブレンド物の液体流は、それぞれ加熱パイプ120及び122を通って計量型ポンプ124及び126(これらの2つの液体流を口金パック128に供給する)へ流れ得る。口金パック128は、所望構成(たとえば、芯−鞘型又は海中島型構成)を有する多成分繊維134を形成させることの可能な適当な内部部品を有する。図6の装置110において、それらの液体流は、ポリマー材料Aがブレンド物を包囲するように、口金パック128において合わせられる。口金パック128は、オリフィス132を備えた紡糸口金130を含み、しかしてオリフィス132はそれらを通じて押し出される多成分繊維134を形成させる。多成分繊維134の配列体が紡糸口金130を出て、そしてアスピレーター136により下方に引っ張られそして細長化される。アスピレーター136は、パイプ138から圧縮空気又は水蒸気が供給される。アスピレーター136は、たとえば、銃型又はスロット型であり得、そして所望されるならば、繊維配列体の全幅にわたって、たとえば多成分繊維134から形成されるべきウェブの幅に対応する方向にて延在し得る。
【0107】
別個のブレンド物のセットが形成され得、しかも各ブレンド物は1種又はそれ以上の温度調節材料及び1種又はそれ以上のポリマー材料を含む、ということが認識されるはずである。別個のブレンド物は、何らかの様式について互いに異なり得る。たとえば、別個のブレンド物は、異なる温度調節材料又は異なるポリマー材料を含み得る。いったん形成されると、別個のブレンド物は、ポリマー材料Aが別個のブレンド物のセットを包囲するように、口金パック128においてポリマー材料Aと合わせられ得る。別個のブレンド物及びポリマー材料Aは、次いで、所望構成(たとえば、海中島型構成)を有する多成分繊維を形成するように、紡糸口金130から押し出され得る。本発明の具体的態様によれば、外部材(たとえば、海部材)は、ポリマー材料Aで作られ得そして別個のブレンド物のセットから作られた内部材(たとえば、島部材)のセットを包囲し得る。
【0108】
図6に関して、アスピレーター136は、細長化多成分繊維140をウェブ形成スクリーンベルト142(ロール144、146及び150により支持され且つ駆動される)上に送る。細長化多成分繊維140がスクリーンベルト142上で不織ウェブを形成するようにさせるために、サクションボックス148は、スクリーンベルト142を通じて周囲空気を吸引するためのファン(図6に示されていない)に連結され得る。生じた不織ウェブは、次いで、温度調節性が付与されている生地、服飾品又は他の製品を作るために更に加工され得る。
【実施例】
【0109】
以下の例は、当業者に例示及び説明するために、本発明のいくつかの具体的態様の特定の側面を記載する。これらの例は本発明のいくつかの具体的態様を理解及び実施する際に有用な特定の方法論を与えるにすぎないので、これらの例は本発明を限定するものと解されるべきでない。
【0110】
実施例1
約5ポンドの低分子量ポリエチレンホモポリマー(Honeywell Specialty Chemical製のAC−16ポリエチレン,滴点102℃)を湿式フラッシング装置に添加し、そしてこのホモポリマーを約110℃から約130℃にてゆっくり溶融及び混合した。該ホモポリマーが溶融されると、約8ポンドの湿潤ケーキをこの溶融ホモポリマーに約30分の期間をかけてゆっくり添加して、第1ブレンド物を形成させた。該湿潤ケーキは、相変化材料を含有するところの水で湿っているマイクロカプセル(Microtek Laboratories, Inc.製のマイクロPCMロット#M 45−22,63.2重量パーセントのマイクロカプセル及び相変化材料)を含んでいた。
【0111】
相変化材料を含有する該マイクロカプセルが該溶融ホモポリマーに添加されそして分散されるにつれて、水がフラッシュ分離された。約0.15重量パーセントより少ない水が残存する(カールフィッシャー滴定を用いて測定して)まで、混合を続行した。次いで、生じた第1ブレンド物を冷却しそして細断して、更なる加工のための細断材料を作った。
【0112】
次いで、約30ポンドのこの細断材料を約70ポンドの繊維等級ポリプロピレン熱可塑性ポリマー(BP Amoco Polymers製のポリプロピレンホモポリマー6852)と乾式ブレンドすることにより、乾燥ブレンド物を形成させた。
【0113】
次いで、21/2インチ一軸スクリュー押出機を用いて、すべての帯域を約230℃に設定すると共に、約70rpmのスクリュー速度、150メッシュフィルタースクリーン及び窒素パージでもって、生じた乾燥ブレンド物を押し出した。この態様で、ペレットを作った。次いで、乾燥剤床型ポリマーペレット乾燥システムにおいて105℃にて及び−40℃露点にて、これらのペレットを一晩乾燥した。これらのペレットは、示差走査熱量計(「DSC」)測定により測定して、23.1J/gの熱エネルギー貯蔵能(すなわち潜熱)を示した。
【0114】
次いで、二成分繊維用口金パックを用いて230℃と245℃の間の温度にて、多成分繊維(この場合においては二成分繊維)を溶融紡糸した。この一般タイプの口金パックは、「複成分繊維を作製する方法」という名称のHillsの特許である米国特許第5,162,074号明細書に記載されている。芯部材を作るために上記のペレットを用い、そして鞘部材を作るためにポリプロピレン又はナイロンを用いた。
【0115】
様々な芯/鞘比率及びポリマー材料でもって形成された多成分繊維を製造した。図7に関して、製造された6種の芯/鞘型繊維の多数の性質及び製造パラメーターが示されている。これらの繊維はすべて相変化材料及びマイクロカプセルが組み込まれており、しかもこれらのマイクロカプセルは各繊維の芯部材の約15重量パーセント及び各繊維の総重量の約7.5重量パーセントから約11.25重量パーセントを構成する該相変化材料(「mPCM」)を含有する。サンプル1、2及び3は、ポリプロピレン(「PP」)(BP Amoco Polymersからのポリプロピレンホモポリマーである)を含む鞘部材を有する。サンプル4、5及び6は、ナイロン6(BASF Corp.から名称ウルトラミド(Ultramid)B下で製造されている)を含む鞘部材を有する。
【0116】
実施例2
様々なポリエチレン−コ−ビニルアセテート(「EVA」)ペレットをK19パラフィンロウ(融点29℃,150J/gの潜熱,ペンシルベニア州ブラッドフォードのAmerican Refining Group製)でもって浸漬及び加熱によりインビビジョンして、該ペレットを膨潤させた。特に、エルヴァックス(Elvax)350(19のメルトインデックス,25重量パーセントのビニルアセテート,DuPont Inc.製)のペレット及びエルヴァックス(Elvax)450(8のメルトインデックス,18重量パーセントのビニルアセテート,DuPont Inc.製)のペレットを、様々な時間及び温度で加熱した。ドレーンタンクにおいてこれらのペレットをパラフィンロウの残部から濾別し、そしてこれらのペレット中にインビビジョンされたパラフィンロウの量を初期ペレット重量と最終ペレット重量から算出した(すなわち、初期ペレット重量に対する増加重量パーセントとして)。表4は、様々な条件下で得られた結果を示す。
【0117】
【表7】

【0118】
次いで、芯部材を作るために上記に記載されたペレットのいくつかを用いて、標準的なHills, Inc.製の二成分繊維用口金パックでもって、芯/鞘型繊維を作った。特に、26パーセントロウインビビジョンエルヴァックス(Elvax)450ペレット又は31パーセントロウインビビジョンエルヴァックス(Elvax)350ペレットのどちらかを用いて、芯部材を作った。ポリエチレンテレフタレート(テネシー州キングスポートのEastman Chemical, Inc.製のイーストマン(Eastman)F61HC)(「PET」)又はポリトリメチレンテレフタレート(テキサス州ヒューストンのShell Chemical Corp.製のコルテラ(Corterra)509210)(「PTT」)のどちらかを用いて、鞘部材を作った。
【0119】
Perkin Elmer製のピリス(Pyris)1機器を用いて、芯/鞘型繊維のDSC測定を行った。FTS Systems製のインタークーラー(Intercooler)1を用いて冷却を成し遂げ、そしてPerkin Elmer製のピリス(Pyris)熱分析システム及びウインドウズ用ソフトウェア・バージョン3.72を用いてデータ分析を遂行した。試験サンプルをPerkin Elmer製の密封アルミニウム製サンプルパン中に用意し、そして試験サンプルをN2流に連続的に付しながら試験を遂行した。試験条件は、次のものを含んだ。すなわち、試験サンプルを約−10℃に冷却する、2)−10℃に約1分間等温保持する、3)約5℃毎分の速度にて−10℃から約50℃に加熱する、4)50℃に約1分間等温保持する、そして次いで5)約5℃毎分の速度にて50℃から約−10℃に冷却する。パラフィンロウの測定結晶化発熱ピークの自動機械積分を用いて、結果を算出した。表5は、芯/鞘型繊維の様々な性質を示す。
【0120】
【表8】

【0121】
実施例3
ポリプロピレンを用いて、芯/鞘型繊維を作った。これらの芯/鞘型繊維に12J/gの潜熱を与えるように相変化材料を組み込み、そして12J/gの潜熱を有する100パーセントフリース製品(「PPアウトラスト」)に織った。表6は、相変化材料を欠いているポリプロピレン繊維から作られた対照フリース製品(「PP対照」)と比べて、PPアウトラストの様々な性質を示す。
【0122】
「任意の薄手材料の熱的評価のための装置及び方法」という名称のHittle等の特許である米国特許第6,408,256号明細書及びアメリカ材料試験協会(「ASTM」)D7024−04 − 繊維材料の定常状態及び動的熱的性能についての標準試験方法(それらの開示は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)に記載されたようにして、PPアウトラスト及びPP対照の動的熱測定を行った。表6は、熱抵抗値(「R値」)及び最大温度値と最小温度値の間の差(「温度振幅」)を含めて、様々な測定設定及び結果を示す。図8に関して、PPアウトラスト及びPP対照と関連した温度値が、時間の関数として示されている。表6及び図8を参照することにより理解され得るように、PPアウトラストは、PP対照と比べて1.8℃の低減温度振幅を示した。
【0123】
【表9】

【0124】
実施例4
ポリエチレンテレフタレートを用いて、芯/鞘型ステープルファイバーを作った。これらの芯/鞘型繊維に7.1J/gの潜熱を与えるように相変化材料を組み込み、そして低融点バインダーを用いて作られた繊維と80/20にてブレンドし、嵩高化しそして加熱して、5.7J/gの潜熱を有する嵩高化不織断熱製品(「ポリエステル不織品」)を作った。表7は、相変化材料を欠いている繊維から作られた対照製品(「対照」)と比べて、ポリエステル不織品の様々な性質を示す。
【0125】
実施例3に記載されたようにして、ポリエステル不織品及び対照の動的熱測定を行った。表7は、熱抵抗値(「R値」)及び最大温度値と最小温度値の間の差(「温度振幅」)を含めて、様々な測定設定及び結果を示す。図9に関して、ポリエステル不織品及び対照と関連した温度値が、時間の関数として示されている。表7及び図9を参照することにより理解され得るように、ポリエステル不織品は、対照と比べて0.87℃の低減温度振幅を示した。
【0126】
【表10】

【0127】
実施例5
ポリエチレンテレフタレートを用いて、芯/鞘型ステープルファイバーを作った。これらの芯/鞘型繊維に8.9J/gの潜熱を与えるように相変化材料を組み込み、そしてカージングしそしてニードルパンチして、8.9J/gの潜熱を有するニードルパンチ不織断熱製品(「ニードルパンチNW」)を作った。表8は、相変化材料を欠いている繊維から作られた対照製品(「対照」)と比べて、ニードルパンチNWの様々な性質を示す。
【0128】
実施例3に記載されたようにして、ニードルパンチNW及び対照の動的熱測定を行った。表8は、熱抵抗値(「R値」)及び最大温度値と最小温度値の間の差(「温度振幅」)を含めて、様々な測定設定及び結果を示す。図10に関して、ニードルパンチNW及び対照と関連した温度値が、時間の関数として示されている。表8及び図10を参照することにより理解され得るように、ニードルパンチNWは、対照と比べて1.40℃の低減温度振幅を示した。
【0129】
【表11】

【0130】
実施例6
ポリエチレンテレフタレートを用いて、芯/鞘型繊維を作った。これらの芯/鞘型繊維に相変化材料を組み込み、そしてこれらを用いて2.3J/gの潜熱を有する糸(160デニール/72フィラメント)を作った。次いで、この糸を一重たて編みして、2.3J/gの潜熱を有する布(「PET編物」)を作った。また、ポリトリメチレンテレフタレートを用いて、芯/鞘型繊維を作った。これらの芯/鞘型繊維に相変化材料を組み込み、そしてこれらを用いて10.1J/gの潜熱を有する糸(150デニール/36フィラメント)を作った。次いで、この糸を一重たて編みして、10.1J/gの潜熱を有する布(「PTT編物」)を作った。表9は、相変化材料を欠いているポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(60デニール/50フィラメント)から作られた対照製品(「PET対照」)と比べて、PET編物及びPTT編物の様々な性質を示す。
【0131】
実施例3に記載されたようにして、PET編物、PTT編物及びPET対照の動的熱測定を行った。表9は、熱抵抗値(「R値」)及び最大温度値と最小温度値の間の差(「温度振幅」)を含めて、様々な測定設定及び結果を示す。図11に関して、PET編物、PTT編物及びPET対照と関連した温度値が、時間の関数として示されている。表9及び図11を参照することにより理解され得るように、PET編物はPET対照と比べて1.00℃の低減温度振幅を示し、そしてPTT編物はPET対照と比べて2.40℃の低減温度振幅を示した。
【0132】
【表12】

【0133】
実施例7
ポリブチレンテレフタレートを用いて、芯/鞘型繊維を作った。これらの芯/鞘型繊維の1セットに相変化材料を組み込み、そしてこれらを用いて12.9J/gの潜熱を有する糸を作った。次いで、この糸を一重たて編みして、12.9J/gの潜熱を有する布(「#2PBT編物」)を作った。また、該芯/鞘型繊維の別のセットに相変化材料を組み込み、そしてこれらを用いて19.9J/gの潜熱を有する糸を作った。次いで、この糸を一重たて編みして、19.9J/gの潜熱を有する布(「#3PBT編物」)を作った。表10は、相変化材料を欠いているポリエチレンテレフタレート糸から作られた対照製品(「PET対照」)と比べて、#2PBT編物及び#3PBT編物の様々な性質を示す。
【0134】
実施例3に記載されたようにして、#2PBT編物、#3PBT編物及びPET対照の動的熱測定を行った。表10は、熱抵抗値(「R値」)及び最大温度値と最小温度値の間の差(「温度振幅」)を含めて、様々な測定設定及び結果を示す。図12に関して、#2PBT編物、#3PBT編物及びPET対照と関連した温度値が、時間の関数として示されている。表10及び図12を参照することにより理解され得るように、#2PBT編物はPET対照と比べて1.1℃の低減温度振幅を示し、そして#3PBT編物はPET対照と比べて1.8℃の低減温度振幅を示した。
【0135】
【表13】

【0136】
当業者は本明細書に記載された多成分繊維を開発する際に追加的説明を必要としないが、しかしそれでも2004年2月10日に発せられた「温度調節性合成繊維、布及び生地における使用のための安定な相変化材料」という名称のHartmannの特許である米国特許第6,689,466号明細書及び2004年9月21日に発せられた「向上可逆的熱的性質を有する溶融紡糸可能な濃厚物ペレット」という名称のHartmann等の特許である米国特許第6,793,856号明細書(それらの開示は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)を調べることにより、何らかの有用なガイダンスを見出し得る。
【0137】
本明細書において挙げられた又は言及された特許出願明細書、特許明細書、特許出願公開明細書及び他の刊行物の各々は、あたかも各々の特許出願明細書、特許明細書、特許出願公開明細書及び他の刊行物が参照することにより組み込まれるように特定的に及び個々に指摘されていたかのような場合と同じ程度まで、参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0138】
本発明はその特定の諸具体的態様に関して記載されてきたけれども、添付の請求項により定められる本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得る及び等価物が代用され得ることが当業者により理解されるはずである。加えて、特定の状況、材料、物質の組成物、方法又はプロセス工程を本発明の目的、精神及び範囲に適応させるように、多くの改変がなされ得る。かかる改変はすべて、本明細書に添付された請求項の範囲内にあるよう意図されている。特に、本明細書に開示された方法は特定の順序で遂行される特定の工程に関して記載されてきたけれども、本発明の教示から逸脱することなく、これらの工程は等価の方法を形成するように結合、分割又は再順序化され得る、ということが理解されるであろう。従って、本明細書に特定的に指摘されていなければ、工程の順序及びグループ分けは本発明の限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1及び図2は、本発明のいくつかの具体的態様による様々な多成分繊維の拡大横断面図を図示する。
【図2】図1及び図2は、本発明のいくつかの具体的態様による様々な多成分繊維の拡大横断面図を図示する。
【図3】図3は、本発明の具体的態様による芯/鞘型繊維の三次元図を図示する。
【図4】図4は、本発明の具体的態様による別の芯/鞘型繊維の三次元図を図示する。
【図5】図5は、本発明の具体的態様による海中島型繊維の三次元図を図示する。
【図6】図6は、本発明の具体的態様による多成分繊維を作るための繊維押出装置を図示する。
【図7】図7は、実施例1に論じられたようにして製造された6種の芯/鞘型繊維の多数の性質及び製造パラメーターを図示する。
【図8】図8は、本発明の具体的態様による相変化材料を含むフリース製品(「PPアウトラスト」)及び対照フリース製品(「PP対照」)についての動的温度測定の結果を図示する。
【図9】図9は、本発明の具体的態様による相変化材料を含む嵩高化不織断熱製品(「ポリエステル不織品」)及び対照製品(「対照」)についての動的温度測定の結果を図示する。
【図10】図10は、本発明の具体的態様による相変化材料を含むニードルパンチ不織断熱製品(「ニードルパンチNW」)及び対照製品(「ポリエステル対照」)についての動的温度測定の結果を図示する。
【図11】図11は、本発明の具体的態様による相変化材料を含む2種の布(「PET編物」及び「PTT編物」)及び対照製品(「PET対照」)についての動的温度測定の結果を図示する。
【図12】図12は、本発明の具体的態様による相変化材料を含む2種の布(「#2PBT編物」及び「#3PBT編物」)及び対照製品(「PET対照」)についての動的温度測定の結果を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分繊維であって、複数の細長い部材から形成された繊維体を含み、しかも該複数の細長い部材の少なくとも一つは少なくとも40J/gの潜熱及び22℃から40℃の範囲の転移温度を有する温度調節材料を含み、該温度調節材料は該転移温度における該潜熱の吸収及び放出の少なくとも一方に基づく温度調節を与える多成分繊維。
【請求項2】
温度調節材料の潜熱が、少なくとも50J/gである、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項3】
温度調節材料の潜熱が、少なくとも60J/gである、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項4】
温度調節材料が、カプセル化されていない相変化材料を含む、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項5】
温度調節材料が、相変化材料及びこの相変化材料を収容する複数のマイクロカプセルを含む、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項6】
温度調節材料が、多価アルコールを含む、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項7】
温度調節材料が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール及びポリエステルの一つを含む、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項8】
温度調節材料が、16から22個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素を含む、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項9】
複数の細長い部材の少なくとも一つが更にポリマー材料を含み、そして温度調節材料が該ポリマー材料内に分散されている、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項10】
ポリマー材料が、ポリアクリリック、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンの一つを含む、請求項9に記載の多成分繊維。
【請求項11】
複数の細長い部材の少なくとも一つが第1の細長い部材であり、そして第1の細長い部材が複数の細長い部材の第2の細長い部材により包囲されている、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項12】
第2の細長い部材が、繊維体の外面を形成する、請求項11に記載の多成分繊維。
【請求項13】
第1の細長い部材が第2の細長い部材と複数の細長い部材の第3の細長い部材との間に置かれ、そして第3の細長い部材が内部空洞を画定している、請求項12に記載の多成分繊維。
【請求項14】
更に、内部空洞中に置かれた断熱材料を含む、請求項13に記載の多成分繊維。
【請求項15】
温度調節材料が第1温度調節材料であり、そして第2の細長い部材が少なくとも40J/gの潜熱及び22℃から40℃の範囲の転移温度を有する第2温度調節材料を含む、請求項11に記載の多成分繊維。
【請求項16】
第1温度調節材料と第2温度調節材料が異なっている、請求項15に記載の多成分繊維。
【請求項17】
複数の細長い部材が、海中島型構成、セグメント化パイ型構成、芯−鞘型構成、ならびサイドバイサイド型構成及びストライプ型構成の一つにて配置されている、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項18】
多成分繊維が、少なくとも2J/gの潜熱を有する、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項19】
多成分繊維が、少なくとも5J/gの潜熱を有する、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項20】
多成分繊維が、少なくとも8J/gの潜熱を有する、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項21】
多成分繊維が、溶融紡糸法及び溶液紡糸法の一つによって作られている、請求項1に記載の多成分繊維。
【請求項22】
多成分繊維であって、
少なくとも40J/gの潜熱及び10℃から50℃の範囲の転移温度を有する相変化材料を含む芯部材、しかも該相変化材料は該転移温度における該潜熱の吸収及び放出の少なくとも一方に基づく温度調節を与え、及び
該芯部材を包囲する且つ該多成分繊維の外面を形成する鞘部材
を含む多成分繊維。
【請求項23】
相変化材料の潜熱が、少なくとも50J/gである、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項24】
相変化材料の潜熱が、少なくとも60J/gである、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項25】
相変化材料の転移温度が、22℃から40℃の範囲にある、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項26】
芯部材が、更に、相変化材料を封じ込める封じ込め構造体を含む、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項27】
相変化材料が、転移温度における相変化材料の溶融及び結晶化の少なくとも一方に基づく温度調節を与える、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項28】
芯部材が、鞘部材内に同心状に置かれている、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項29】
芯部材が、鞘部材内に偏心状に置かれている、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項30】
芯部材が、10重量パーセントから30重量パーセントの相変化材料を含む、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項31】
相変化材料が第1相変化材料であり、そして鞘部材が少なくとも40J/gの潜熱及び10℃から50℃の範囲の転移温度を有する第2相変化材料を含む、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項32】
第1相変化材料と第2相変化材料が異なっている、請求項31に記載の多成分繊維。
【請求項33】
多成分繊維が、少なくとも2J/gの潜熱を有する、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項34】
多成分繊維が、少なくとも5J/gの潜熱を有する、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項35】
多成分繊維が、少なくとも8J/gの潜熱を有する、請求項22に記載の多成分繊維。
【請求項36】
多成分繊維であって、
複数の島部材、しかも該複数の島部材の少なくとも一つは少なくとも40J/gの潜熱及び10℃から50℃の範囲の転移温度を有する相変化材料を含み、該相変化材料は該転移温度における該潜熱の吸収及び放出の少なくとも一方に基づく温度調節を与え、及び
該複数の島部材を包囲し且つ該多成分繊維の外面を形成する海部材
を含む多成分繊維。
【請求項37】
相変化材料の潜熱が、少なくとも50J/gである、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項38】
相変化材料の潜熱が、少なくとも60J/gである、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項39】
相変化材料の転移温度が、22℃から40℃の範囲にある、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項40】
複数の島部材の少なくとも一つが、更に、相変化材料を封じ込める封じ込め構造体を含む、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項41】
相変化材料が、転移温度における相変化材料の溶融及び結晶化の少なくとも一方に基づく温度調節を与える、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項42】
複数の島部材の少なくとも一つが、10重量パーセントから30重量パーセントの相変化材料を含む、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項43】
複数の島部材の少なくとも一つが第1島部材であり、相変化材料が第1相変化材料であり、そして複数の島部材の第2島部材が少なくとも40J/gの潜熱及び10℃から50℃の範囲の転移温度を有する第2相変化材料を含む、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項44】
第1相変化材料と第2相変化材料が異なっている、請求項43に記載の多成分繊維。
【請求項45】
多成分繊維が、少なくとも2J/gの潜熱を有する、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項46】
多成分繊維が、少なくとも5J/gの潜熱を有する、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項47】
多成分繊維が、少なくとも8J/gの潜熱を有する、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項48】
海部材が内部空洞を画定し、そして多成分繊維が更に該内部空洞中に置かれた断熱材料を含む、請求項36に記載の多成分繊維。
【請求項49】
布であって、一緒に混紡された複数本の多成分繊維を含み、しかも該複数本の多成分繊維の各々は複数の細長い部材から形成された繊維体を含み、該複数の細長い部材の少なくとも一つは22℃から40℃の範囲の転移温度を有する相変化材料を含み、該相変化材料は該転移温度における該相変化材料の溶融及び結晶化の少なくとも一方に基づく温度調節を与え、該布は少なくとも2J/gの潜熱を有する布。
【請求項50】
相変化材料が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール及びポリエステルの一つを含む、請求項49に記載の布。
【請求項51】
相変化材料が、16から22個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素を含む、請求項49に記載の布。
【請求項52】
複数の細長い部材が、海中島型構成、セグメント化パイ型構成、芯−鞘型構成、ならびサイドバイサイド型構成及びストライプ型構成の一つにて配置されている、請求項49に記載の布。
【請求項53】
布の潜熱が、少なくとも5J/gである、請求項49に記載の布。
【請求項54】
布の潜熱が、少なくとも8J/gである、請求項49に記載の布。
【請求項55】
布の潜熱が、少なくとも11J/gである、請求項49に記載の布。
【請求項56】
複数本の多成分繊維が、溶融紡糸法及び溶液紡糸法の一つによって作られている、請求項49に記載の布。
【請求項57】
布が複数の層を含み、そして複数本の多成分繊維が該複数の層の中間層を形成する、請求項49に記載の布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−530379(P2008−530379A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554073(P2007−554073)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/041030
【国際公開番号】WO2006/086031
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(503107196)アウトラスト テクノロジーズ,インコーポレイティド (10)
【Fターム(参考)】