説明

含フッ素エラストマーおよびその架橋性組成物

【課題】良好な常態物性、特に伸び特性を維持しつつ、耐圧縮永久歪特性を改善せしめた架橋物を与え得る含フッ素エラストマーおよびその架橋性組成物を提供する。
【解決手段】その共重合組成が(a)フッ化ビニリデン 50〜85モル%、(b)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)7〜20モル%、(c)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3 3〜15モル%(ここで、nは2〜6の整数である)で表わされるパーフルロビニルエーテルおよび(d)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕mCF2CF2Br 0.1〜2モル%(ここで、mは3〜5の整数である)で表わされる末端臭素化パーフルオロビニルエーテルである含フッ素エラストマーおよび該含フッ素エラストマーに有機過酸化物、多官能性不飽和化合物および受酸剤を添加してなる架橋性含フッ素エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エラストマーおよびその架橋性組成物に関する。更に詳しくは、良好な常態物性、特に伸び特性を維持しつつ、耐圧縮永久歪特性を改善せしめた架橋物を与え得る含フッ素エラストマーおよびその架橋性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、含フッ素エラストマーが本来有する成形加工性および耐圧縮永久歪特性を損うことなく、低温特性および耐溶剤性にすぐれた加硫物を与え得る含フッ素エラストマーを用い、耐寒性、耐燃料油性などにすぐれたその組成物として、その共重合組成が
(a)フッ化ビニリデン 50〜85モル%
(b)テトラフルオロエチレン 0〜25モル%
(c)パーフルオロ(メチルビニルエーテル) 7〜20モル%
(d)CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3 3〜15モル%
(ただし、nは2〜6の整数である)
(e)RfX(Rfは炭素数2〜8の不飽和フルオロ炭化水素基であり、 0.1〜2モル%
基中に1個以上のエーテル結合を有していてもよく、
Xは臭素またはヨウ素である)
であるパーオキサイド架橋性含フッ素エラストマー100重量部当り、有機過酸化物0.1〜10重量部、多官能性不飽和化合物0.1〜10重量部および受酸剤3〜20重量部を添加してなる含フッ素エラストマー組成物を提案している。
【特許文献1】特開2004−346087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この含フッ素エラストマー組成物は、耐寒性および耐燃料油性にすぐれた架橋物を与えるので、この架橋物は自動車燃料用シール材料として好適に用いられるが、さらなる耐圧縮永久歪特性の改善を目指した場合、一般的な架橋密度を上昇させる手法を採ると、常態物性値、特に伸び特性が低下してしまい、常態物性値と耐圧縮永久歪特性とのバランスのとれた架橋物を得ることができないという問題が新たにみられる。
【0004】
本発明の目的は、良好な常態物性、特に伸び特性を維持しつつ、耐圧縮永久歪特性を改善せしめた架橋物を与え得る含フッ素エラストマーおよびその架橋性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる本発明の目的は、その共重合組成が
(a)フッ化ビニリデン 50〜85モル%
(b)パーフルオロ(メチルビニルエーテル) 7〜20モル%
(c)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3 3〜15モル%
(ここで、nは2〜6の整数である)で表わされる
パーフルロビニルエーテル
(d)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕mCF2CF2Br 0.1〜2モル%
(ここで、mは3〜5の整数である)で表わされる
末端臭素化パーフルオロビニルエーテル
である含フッ素エラストマー
および該含フッ素エラストマー100重量部当り、
有機過酸化物 0.1〜10重量部
多官能性不飽和化合物 0.1〜10重量部
受酸剤 3〜20重量部
を添加してなる架橋性含フッ素エラストマー組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る含フッ素エラストマーにおいては、臭素基含有不飽和化合物として一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕mCF2CF2Brで表わされる末端臭素化パーフルオロビニルエーテルを共重合させた含フッ素エラストマーを用いることにより、CF2=CFOCF2CF2Brを等モル量共重合させた含フッ素エラストマーを用いた場合と比較して、良好な常態物性、特に伸び特性を維持しつつ、耐圧縮永久歪特性を改善せしめた架橋物を与えることができる。
【0007】
このことは、本発明で用いられる臭素基含有不飽和化合物がより長鎖化しているため、ポリマー組成の一つである耐寒性モノマー CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3による立体障害が回避することができ、そのため架橋効率が上がり、耐圧縮永久歪特性が向上し、一方でその構造から架橋点間分子量が伸びるため、伸び特性が維持されているものと推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
含フッ素エラストマ−の共重合組成比は、(a)フッ化ビニリデンが50〜85モル%、好ましくは60〜85モル%、(b)パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が7〜20モル%、好ましくは7〜15モル%、(c)前記一般式で表わされるパーフルオロビニルエーテルが3〜15モル%、好ましくは3〜10モル%、(d)前記一般式で表わされる末端臭素化パーフルオロビニルエーテルが0.1〜2モル%、好ましくは0.3〜1.5モル%であり、これらの組成比は所望の常態物性、特に伸び特性と耐圧縮永久歪特性のバランス性にすぐれた架橋物を与え得る範囲として選択されたものである。
【0009】
(a)成分のフッ化ビニリデンには、下記(b)〜(d)成分、好ましくは(b)〜(e)成分がぞれぞれ共重合される。
(b)成分のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)は、得られる共重合体に柔軟性を付与し、低温特性、特にTR試験におけるTR70値を改善するための必須成分である。
(e)成分のテトラフルオロエチレンをさらに共重合させた場合には、耐溶剤性を著しく改善することができる。ただし、(e)成分の組成比率が大きすぎると低温特性が損われるので、その割合は25モル%以下、好ましくは20モル%以下とするのがよい。また、(e)成分の共重合は、メタノール・ガソリン混合燃料、エタノール・ガソリン混合燃料等の酸素含有化合物混合燃料やメタノール、エタノール等のアルコール燃料に対する耐性を著しく改善させる。
(c)成分のパーフルオロビニルエーテルは、その一般式で表わされる化合物の単一成分を用いてもよいし、あるいは種々のn値を有する2種以上の混合物を用いてもよい。前記一般式で表わされるパーフルオロビニルエーテルは、フッ化セシウム触媒、ジグライム溶媒等の存在下にCF3OCF(CF3)COFとヘキサフルオロプロペンオキシドとを反応させ、次いで無水炭酸カリウムとの反応および熱分解反応を行うことによって得られ、生成物はn=2〜6の混合物であるが、それを分留することによって種々のn値を有するパーフルオロビニルエーテルを分離し、それを単独で用いることができる。あるいは、それらを分離することなく、混合物としても用いることができる。
(d)成分の末端臭素化パーフルオロビニルエーテルは、フッ化セシウム触媒、ジグライム溶媒等の存在下にBrCF2COFとヘキサフルオロプロペンオキシドとを反応させ、末端臭素化パーフルオロポリエーテル酸フロライド
BrCF2〔OCF(CF3)CF2mOCF(CF3)COF
とした後、ジグライム溶媒中炭酸ナトリウムと反応させ、対応するパーフルオロポリエーテルカルボン酸ナトリウム塩に変換させた後、熱分解による脱炭酸反応を行うことによって得られ、生成物はm=3〜5の混合物であるが、それを分留することによって種々のm値を有する生成物を分離し、それを単独で用いることができる。あるいは、それらを分離することなく、混合物としても用いることができる。
【0010】
また、本発明組成物で用いられる含フッ素エラストマ−共重合体の分子量を調節する目的であるいは成形加工性、特に硬化段階での発泡を抑制する目的で、一般式R(Br)n(I)mで表わされる含臭素および/またはヨウ素化合物の存在下で共重合反応を行うことは非常に有効である。かかる化合物としては、例えばICF2CF2CF2CF2I、ICF2CF2CF2CF2Br、ICF2CF2Br等が用いられ、特にICF2CF2CF2CF2Iは硬化特性等の面からみて好適である。
【特許文献2】特公昭54−1585号公報
【特許文献3】特公昭58−4728号公報
【0011】
これらの化合物は連鎖移動剤として作用し、生成する共重合体の分子量を調節する働きをする。また、連鎖移動反応の結果として、分子末端に臭素および/またはヨウ素原子が結合した共重合体が得られ、これらの部位は加硫成形段階において硬化部位として働く。ただし、重合工程でのそれの使用割合が多いと、最終成形品の機械的強度を低下させるので、それの使用割合は全単量体重量に対して約1重量%以下、好ましくは約0.5〜0.01重量%とされる。
【0012】
さらに、加硫成形品の耐圧縮永久歪特性を改善するために、下記の如きパーフルオロジビニルエーテルを共重合させてもよい。その使用割合は、成形品の機械的物性の点から、全単量体重量に対して約1重量%以下、好ましくは約0.5〜0.1重量%とされる。
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2OCF=CF2
【0013】
また、含フッ素エラストマ−に求められる所望の性質を損わない範囲内において、他の単量体、例えばトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン等の含フッ素単量体をさらに共重合させてもよい。
【0014】
かかる含フッ素エラストマ−は、水性乳化重合法または水性けん濁重合法によって製造することができる。水性乳化重合法では、水溶性過酸化物を単独であるいはそれと水溶性還元性物質とを組合せたレドックス系のいずれをも反応開始剤系として用いることができる。水溶性過酸化物としては例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が、また水溶性還元性物質としては例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が用いられる。この際、水性乳化液の安定化剤として、pH調節剤(緩衡剤)、例えばリン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム等も用いられる。
【0015】
乳化重合法に用いられる乳化剤としては、一般にフッ素化カルボン酸塩が用いられ、好ましくは
CF3CF2CF2O〔CF(CF3)CF2O〕nCF(CF3)COONH4 (n:1または2)
が用いられる。これらの乳化剤は、約1〜30重量%、好ましくは約5〜20重量%の水溶液として用いられる。乳化剤量がこれよりも少ないと、モノマーおよび生成共重合体を水性媒体中に均一に分散させることができず、多すぎると経済的に不利となる。
【特許文献4】特公平5−13961号公報
【0016】
共重合反応は、約20〜80℃、好ましくは、約25〜60℃の温度で行われる。重合温度が高すぎると、成形加工時に発泡などの問題が発生し、また架橋成形品の耐圧縮永久歪特性も悪化する。また、重合圧力は、一般に約5MPa以下で行われる。
【0017】
このようにして得られる含フッ素エラストマ−は、分子量の指標としての溶液粘度ηsp/c(35℃、1重量%メチルエチルケトン溶液)は、約0.1〜2dl/g、好ましくは約0.2〜1dl/gであることが望ましい。
【0018】
この含フッ素エラストマーは、従来公知の種々の加硫方法、例えばパーオキサイド架橋法、ポリアミン加硫法、ポリオール加硫法あるいは放射線、電子線などの照射法によって硬化させることができるが、有機過酸化物を用いるパーオキサイド架橋法は、機械的強度にすぐれ、また架橋点の構造が安定した炭素-炭素結合を形成するため耐薬品性、耐摩耗性、耐溶剤性等にすぐれた架橋物を与えるので、特に好ましく用いられる。
【0019】
パーオキサイド架橋法に用いられる有機過酸化物としては、例えば2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシベンゼン、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロキシパーオキサイド、α,α′-ビス(第3ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0020】
これらの有機過酸化物が用いられるパーオキサイド架橋法では、共架橋剤として多官能性不飽和化合物、例えばトリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、亜リン酸トリアリル、1,2-ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート等を併用することが好ましい。これらの共架橋剤を併用することにより、よりすぐれた加硫特性、機械的強度、耐圧縮永久歪特性など有する架橋物を得ることができる。
【0021】
さらに、受酸剤としてハイドロタルサイト化合物や2価金属の酸化物または水酸化物、例えばCa、Mg、Pb、Znなどの酸化物または水酸化物を用いることもできる。
【0022】
パーオキサイド架橋系に配合される以上の各成分は、含フッ素エラストマー100重量部当り、有機過酸化物が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で、また必要に応じて共架橋剤が約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で、さらに受酸剤は約2重量部以上、好ましくは約3〜20重量部の割合でそれぞれ用いられる。受酸剤の使用割合がこれよりも少ないと、金属に対する耐腐食性が損われるようになる。
【0023】
含フッ素エラストマーに、有機過酸化物、多官能性不飽和化合物および受酸剤を添加して形成した組成物は、有機過酸化物架橋後に以下に示される低温特性を発現する架橋物を与える。
-43℃≦TR10<-30℃<TR70≦-20℃
ここでTR10、TR70値は、TRテストでサンプルを50%伸長し、ガラス転移温度Tg以下としてガラス化させた後、徐々に温度を上げていくと歪みが緩和し、初期伸長に対して10%または70%回復した温度を示している。
【0024】
また、前記TR10、TR70についての条件を満足させるためには、前記(b)成分のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)と(c)成分のパーフルオロビニルエーテルとの組成合計量が10モル%以上、好ましくは15モル%以上とすることが望ましい。これらの各成分組成合計量が10モル%以下では、得られる共重合体が半樹脂状になったり、低温特性、特にTR70値が悪化するようになる。
【0025】
架橋に際しては、上記各成分に加えて、従来公知の充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、加工助剤、顔料などを適宜配合することもできる。充填剤または補強剤としてカーボンブラックを用いる場合、一般には含フッ素エラストマー100重量部当り約10〜50重量部程度の割合で用いられる。
【0026】
以上の各成分は、ロール混合、ニーダ混合、バンバリー混合、溶液混合など一般に用いられる混合法によって混練され、混練された混練物は、一般に約100〜250℃で約1〜60分間程度行われるプレス加硫によって加硫され、さらに約150〜250℃で約30時間以内のオーブン加硫(二次加硫)が行われる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0028】
参考例
容量500mlのステンレス鋼製オートクレーブ中に、フッ化セシウム6.0gおよびジグライム90gを仕込み、攪拌した後、BrCF2COF 56gおよびヘキサフルオロプロペンオキシド221gを順次圧入した。一夜攪拌を継続した後反応を終了させると、純度約80%の末端臭素化パーフルオロポリエーテル酸フロライドが250g得られた。
BrCF2〔OCF(CF3)CF2mOCF(CF3)COF
【0029】
この末端臭素化パーフルオロポリエーテル酸フロライドを炭酸ナトリウム70gおよびジグライム100gを仕込んだフラスコ中に、攪拌しながら徐々に滴下し、対応するポリエーテルカルボン酸ナトリウム塩に変換させた後、120℃に加熱して脱炭酸反応を行い、純度約70%の粗製物を得た。この粗製物を分留し、次式で示される沸点80〜82℃/267Paの末端臭素化パーフルオロビニルエーテル67g(BrCF2COFを基準とした収率22.5%)を得た。
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕4(CF2)Br 〔FBrPr4VE〕
【0030】
実施例1
(1) 容量500mlのステンレス鋼製オートクレーブ内を窒素ガスで置換し、脱気後下記反応媒体を仕込んだ。
界面活性剤CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4 30g
Na2HPO4・12H20 0.5g
イオン交換水 250ml
【0031】
オートクレーブ内を再び窒素ガスで置換し、脱気後以下の反応原料を仕込んだ。
フッ化ビニリデン〔VdF〕 40g(74.7%)
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔FMVE〕 24g(17.3%)
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕3CF3 〔MPr3VE〕 40g(7.2%)
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕4(CF2)2Br 〔FBrPr4VE〕 6.8g(0.8%)
ICF2CF2CF2CF2I 〔DIOFB〕 0.5g
なお、カッコ内の百分率はモル%である。
【0032】
次いで、オートクレーブ内部の温度を50℃とし、そこに亜硫酸水素ナトリウム0.01gおよび過硫酸アンモニウム0.05gをそれぞれ0.3重量%水溶液として加え、重合反応を開始させた。20時間反応を行った後冷却し、残ガスを排出して乳化液を取出し、これに5重量%塩化カルシウム水溶液を加えて重合物を凝析させ、水洗、乾燥して、溶液粘度ηsp/c(35℃、1重量%メチルエチルケトン溶液)が0.56dl/gで、下記組成(19F-NMRによる)を有するエラストマー状共重合体を103g得た。
VdF 77モル%
FMVE 15モル%
MPr3VE 7.2モル%
FBrPr4VE 0.8モル%
【0033】
(2) 上記(1)で得られたエラストマー状共重合体100部(重量、以下同じ)に、
MTカーボンブラック(キャンキャブ製品サーマックスN990) 30部
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品TAIC M60) 6部
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ25B-40) 1.4部
ZnO 4部
を加え、2本ロールミルで混和し、得られた架橋性組成物を180℃で10分間圧縮成形して厚さ2mmのシートおよびOリング(P24)を得、さらに200℃で10時間の二次加硫(オーブン加硫)を行った。
【0034】
これらの架橋物について、次の各試験を行った。
常態物性:JIS K6250,6253に準拠
圧縮永久歪:ASTM D395 Method Bに準拠して、P24 Oリングについて200℃、
70時間の値を測定
低温特性:ASTM D1329に準拠して、TR10,TR70値を測定
【0035】
実施例2
実施例1(1)において、FBrPr4VEの仕込み量を3.4gに変更し、溶液粘度ηsp/c(35℃、1重量%メチルエチルケトン溶液)が0.58dl/gで、下記組成(19F-NMRによる)を有するエラストマー状共重合体を103g得た。
VdF 76モル%
FMVE 16.6モル%
MPr3VE 7モル%
FBrPr4VE 0.4モル%
【0036】
このエラストマー状共重合体を用いての架橋性組成物の調製、加硫および架橋物についての試験が、実施例1(2)と同様にして行われた。
【0037】
比較例
実施例1において、FBrPr4VEの代りにCF2=CFO(CF2)2Br〔FBrVE〕2gが用いられ、溶液粘度ηsp/c(35℃、1重量%メチルエチルケトン溶液)が0.56dl/gで、下記組成(19F-NMRによる)を有するエラストマー状共重合体を105g得た。
VdF 83モル%
FMVE 11モル%
MPr3VE 5.2モル%
FBrVE 0.8モル%
【0038】
このエラストマー状共重合体を用いての架橋性組成物の調製、加硫および架橋物についての試験が、実施例1(2)と同様にして行われた。
【0039】
以上の各実施例および比較例における測定結果は、次の表に示される。

測定項目 実施例1 実施例2 比較例
常態物性
硬さ (Duro A) 66 65 67
引張強さ (MPa) 10.5 8.9 10.7
伸び (%) 180 230 150
圧縮永久歪
200℃、70時間(%) 28 34 33
低温特性
TR10 (℃) -36.2 -35.8 -35.8
TR70 (℃) -25.5 -25.2 -24.7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その共重合組成が
(a)フッ化ビニリデン 50〜85モル%
(b)パーフルオロ(メチルビニルエーテル) 7〜20モル%
(c)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕nCF3 3〜15モル%
(ここで、nは2〜6の整数である)で表わされる
パーフルオロビニルエーテル
(d)一般式 CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕mCF2CF2Br 0.1〜2モル%
(ここで、mは3〜5の整数である)で表わされる
末端臭素化パーフルオロビニルエーテル
である含フッ素エラストマー。
【請求項2】
(b)成分と(c)成分との合計共重合量が10モル%以上である請求項1記載の含フッ素エラストマー。
【請求項3】
さらに、25モル%以下の(e)テトラフルオロエチレンを共重合させた請求項1記載の含フッ素エラストマー。
【請求項4】
溶液粘度ηsp/c(35℃、1重量%メチルエチルケトン溶液)が0.1〜2dl/gである請求項1または3記載の含フッ素エラストマー。
【請求項5】
一般式 R(Br)n(I)m (ここで、Rは炭素数2〜6の飽和フルオロ炭化水素基または飽和クロロフルオロ炭化水素基であり、nおよびmは0、1または2であり、m+nは2である)で表わされる含臭素および/またはヨウ素化合物の存在下で共重合反応させて得られた請求項1または3記載の含フッ素エラストマー。
【請求項6】
含臭素および/またはヨウ素化合物がICF2CF2CF2CF2Iである請求項5記載の含フッ素エラストマー。
【請求項7】
請求項1または3記載の含フッ素エラストマー100重量部当り、
有機過酸化物 0.1〜10重量部
多官能性不飽和化合物 0.1〜10重量部
受酸剤 3〜20重量部
を添加してなる含フッ素エラストマー組成物。
【請求項8】
有機過酸化物架橋後に、
-43℃≦TR10<-30℃<TR70≦-20℃
で示される低温特性を発現する架橋物を与える請求項7記載の含フッ素エラストマー組成物。

【公開番号】特開2010−111789(P2010−111789A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286166(P2008−286166)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】