説明

含亜鉛デンドリマー、その製造方法及び該デンドリマーからなる含亜鉛ルイス酸触媒

【課題】 ルイス酸触媒となる、デンドリマーのコア部に亜鉛酸素結合を有する含亜鉛デンドリマーを提供する。
【解決手段】 該含亜鉛デンドリマーを、一般式(I)
【化1】


[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化2】


〔式中、R、R、Rは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y、ZはO、S、NQ(QはH、アルキル基)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s、tは0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0〕
で表されるデンドリマーとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含亜鉛デンドリマー、このものを製造する方法、及びこのものからなる含亜鉛ルイス酸触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デンドリマーは中心核から周囲に樹木状に枝分かれした分子構造を有し、コアと呼ばれる中心部分とデンドロンと呼ばれる枝分かれ繰り返し部分、及び末端基から構成され、分子構造及び分子サイズを高度に制御することが可能な高分子化合物である。この特異な構造に着目し、近年デンドリマーのさまざまな部位に官能基を導入することにより、機能性高分子としての利用が試みられている(非特許文献1参照)。
【0003】
デンドリマーに触媒機能をもたせることもその1つで、既にこれまでに多くのデンドリマー固定化触媒が開発され、その殆どはデンドリマー分子の最外殻に触媒を固定化したものや中心核に触媒を固定化したものである(非特許文献2、3参照)。
【0004】
例えば代表的なデンドリマー固定化有機金属触媒として、デンドリマーの最外殻に触媒金属を固定化したデンドリマー固定化ニッケル錯体触媒(非特許文献4参照)、デンドリマーのコア部に触媒金属を固定化したデンドリマー固定化チタンアルコキシド触媒(非特許文献5参照)やデンドリマー固定化白金ホスフィン錯体触媒(非特許文献6参照)などが挙げられる。
【0005】
また重合開始剤をデンドリマーに固定化することにより、リビング重合が円滑に進行することが近年見出され(非特許文献7〜10参照)、これらの新規反応助剤の出現によりデンドリマーの特異な構造に起因する新規触媒の設計も求められ、デンドリマーのコア部に触媒金属を固定化した新規メタロデンドリマー等の簡便な製造法の開発が要望されている。
【0006】
【非特許文献1】「デンドリマーズ・アンド・デンドロンズ(Dendrimers and Dendrons)」、2001年、p.51(WILEY−VCH)
【非特許文献2】「有機合成化学協会誌」、2000年、第58巻、p.988
【非特許文献3】「化学工業」、2001年、第52巻、p.933
【非特許文献4】「ネイチャー(Nature)」、1994年、第372巻、p.659
【非特許文献5】「ケミストリー・ア・ヨーロピアン・ジャーナル(Chem.Eur.J.)」、第5巻、1999年、p.3221
【非特許文献6】「オルガノメタリクス(Organometallics)」、2001年、第20巻、p.5342
【非特許文献7】「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・パートA(J.Polym.Sci.PartA)」、1999年、第37巻、p.1923
【非特許文献8】「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・パートA(J.Polym.Sci.PartA)」、1998年、第36巻、p.1
【非特許文献9】「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」、1996年、第29巻、p.4167
【非特許文献10】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)」、1996年、第118巻、p.11111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、このような事情のもとで、ルイス酸触媒となる、デンドリマーのコア部に亜鉛−酸素結合を有する含亜鉛デンドリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記した含亜鉛デンドリマーについて鋭意研究を重ねた結果、溶媒中において炭化水素基含有亜鉛化合物と特定の構造のデンドロンを反応させると、新規な含亜鉛デンドリマーが容易に得られること、そしてこの含亜鉛デンドリマーは、ルイス酸により活性化される有機反応を効率的に促進させることから、新規ルイス酸触媒として有用であることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 一般式(I)
【化1】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化2】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
で表されるデンドリマーであることを特徴とする含亜鉛デンドリマー。
(2) 一般式(III)
【化3】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化4】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
で表されるデンドロンと、一般式(IV)
【化5】

(式中、Wは炭化水素基を示す)
で表される炭化水素基含有亜鉛化合物とを溶媒中で反応させることを特徴とする一般式(I)
【化6】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化7】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
で表される含亜鉛デンドリマーの製造方法。
(3) 前記(1)記載の含亜鉛デンドリマーから成る含亜鉛ルイス酸触媒。
【0010】
本発明の新規な含亜鉛デンドリマーは、一般式(I)で表される。
【化8】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化9】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
【0011】
このデンドリマーについて、前記式中の置換基における各符号で示される内容を具体的に説明することにより、その構造をさらに明らかにする。
(1)R、R及びRは2価炭化水素基を示すが、この基には、2価脂肪族基や2価芳香族基が包含される。2価脂肪族基には鎖状及び環状のものが包含される。2価芳香族基にはアリーレン基及びアラルキレン基が包含される。
2価脂肪族基としては、炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基等)や、炭素数3〜8、好ましくは5〜6のシクロアルキレン基(例えばシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等)が挙げられる。
2価芳香族基としては、炭素数6〜14、好ましくは6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基等)や、炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキレン基、例えば一般式(V)で表される基等が挙げられる。
−(R−Ar−(R− (V)
(式中、Arはアリーレン基を示し、R及びRは炭素数1〜6、好ましくは1〜3の低級アルキレン基を示し、u及びvは1又は0で、これらのいずれか一方は1である。)
(2)Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基を示し、2価炭化水素基は前記したと同様のものである。
(3)Xは炭化水素基を示すが、特に限定されず、例えば脂肪族基や芳香族基等が挙げられる。脂肪族基には鎖状及び環状のものが包含される。芳香族基にはアリール基及びアラルキル基が包含される。
脂肪族基としては、炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等)や、炭素数3〜8、好ましくは5〜6のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)が挙げられる。
芳香族基としては、炭素数6〜14、好ましくは6〜10のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)や、炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキル基、例えば一般式(VI)で表される基等が挙げられる。
−(R−Ar’−(R−H (VI)
(式中、Ar’はアリーレン基を示し、Rは炭素数1〜6、好ましくは1〜3の低級アルキレン基、Rは炭素数1〜6、好ましくは1〜3の低級アルキレン基を示し、w及びxは1又は0で、かつこれらのいずれか一方は1を示す。)
また、炭化水素基は置換されていてもよく、置換基としては、含亜鉛デンドリマーの製造における反応に不活性な置換基、例えばアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン等や、このような置換基から容易に変換される官能基、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、ナトリウムカルボキシレート、カリウムカルボキシレート等が挙げられる。
(4)Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基)、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO−)、エステル基(−OCO−、−CO−)、アミド基[−NRCO−、−CONR−(Rは水素原子又はアルキル基)]又はカルボニル基(−CO−)を示すが、好ましくはO、S又はスルホニル基(−SO−)である。
(5)p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1を示すが、好ましくはp、q及びrが1でs及びtは0、あるいはpが1でq、r、s及びtは0である。
(6)繰り返し構造の世代数mは1以上の整数を示すが、好ましくは2〜9である。
符号Gで表わされる基の一例として、d、e及びfのうち、いずれか2つが1でn=3の場合について示すと次のとおりである。
−(R−(Y)−(R−(Z)−(R−C−[O−(R−(Y)−(R−(Z)−(R−C−[O−(R−(Y)−(R−(Z)−(R−C−(O−X)
【0012】
前記一般式(I)のデンドリマーにおいて、繰り返し構造は一般式(VII)で表される。
【化10】

(式中、R、R、R、Y、Z、d、e、f、p、q、r、s及びtは、前記と同じ意味を示す。)
この繰り返し構造として好ましくは、化10中の各符号について、d、f及びpが1、e、q、r、s及びtが0、Rがアルキレン基であるものが挙げられる。
【0013】
本発明の含亜鉛デンドリマーは、以下の製法によって製造される。
一般式(III)
【化11】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化12】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
で表されるデンドロンと、一般式(IV)
【化13】

(式中、Wは炭化水素基を示す)
で表される炭化水素基含有亜鉛化合物とを溶媒中で反応させることにより製造することができる。
この製法では、デンドロンと炭化水素基含有亜鉛化合物との反応により、炭化水素(WH)が生成するとともに、所望の、亜鉛をコアに有する含亜鉛デンドリマーが製造される。
【0014】
前記一般式(III)で表されるデンドロンのE、G、R、R、R、X,Y、Zの構造、及びa、b、c、d、e、f、j、m、p、q、r、s、tの数は前記一般式(I)で表されるデンドリマーの場合と同じである。
【0015】
溶媒としてはデンドロン及び炭化水素基含有亜鉛化合物を溶解できるものであり、かつ反応に関与しないものが用いられる。具体的にはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエンやヘキサン等の炭化水素、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素などが好ましく、これらの溶媒は単独または混合溶媒の形で使用される。その中でも好ましい溶媒としてはテトラヒドロフランやトルエンが挙げられる。
このような溶媒を用いてデンドロンと炭化水素基含有亜鉛化合物との反応を行うに際しては、好ましくは、窒素雰囲気下、デンドロンを溶媒に溶解させ、炭化水素基含有亜鉛化合物を溶媒に溶解させた溶液を滴下し、十分に攪拌しながら反応させる。
【0016】
反応は格別加熱することなく、室温程度で進行させることができるが、加熱により促進させるようにしてもよい。また反応時間は、反応温度及び使用する溶媒等のその他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは1時間〜10時間程度である。また反応中、反応液は攪拌するのがよい。
また、デンドロンと炭化水素基含有亜鉛化合物との使用割合については、必ずしも限定する必要はないが、一般的には、炭化水素基含有亜鉛化合物1モル当り2〜6モル、好ましくは2〜3モルの範囲のデンドロンが用いられる。
【0017】
反応終了後、溶媒の減圧留去により反応生成物が得られ、H−NMR測定より目的物の生成が確認される。
本反応により、一段階で目的とする含亜鉛デンドリマーを製造することができる。
【0018】
本発明の含亜鉛デンドリマーは、各種のルイス酸触媒により活性化される有機反応、例えばアルドール反応、ディールス−アルダー反応等の炭素−炭素結合生成反応やラクトン類の開環重合反応に適用することにより、反応を促進させることができることから、ルイス酸触媒として有用である。
【0019】
本発明の一般式(I)で表される含亜鉛デンドリマーをこのようなルイス酸触媒として用いた反応の1例について、以下に説明する。
前記触媒としての含亜鉛デンドリマーと開始剤としての一般式(III)で表されるアルコールの存在下に、一般式(VIII)
【化14】

(式中、jは0以上12以下の整数を示す)
で表されるラクトンを、溶媒中で反応させ、一般式(IX)
【化15】

(式中、jは前記と同じ意味を示し、kは重合度を示す)
で表されるポリエステルを製造することができる。
【0020】
この反応は、溶媒に原料物質及び触媒を溶解させて行われる。溶媒には通常有機溶媒、好ましくはジクロロメタン、アセトニトリル、トルエン等が用いられる。
また、反応は通常室温程度で進行させることができるが、加熱により促進させるようにしてもよい。また反応中、反応液は攪拌するのがよい。
反応終了後、反応液を濃縮しクロロホルムに溶解させ、メタノールに滴下することにより目的物を沈降させ、塩酸−メタノール液を添加した後、濾別することにより目的物質を得ることができる。
【0021】
本発明のルイス酸触媒は、デンドリマー固定化構造を有することから、亜鉛相互の会合が抑制されるため反応性は向上し、さらに反応点近傍が立体的に嵩高くトランスエステル化も抑制されるため、分散度(Mw/Mn)の小さいポリエステルが得られ、デンドリマー型新規リビング重合触媒として有用である。
【0022】
このように、前記一般式(I)で表される含亜鉛デンドリマーは、ルイス酸触媒として有用であり、中でも特にこの触媒を用いることにより溶媒中において効率的にラクトンの開環重合反応を促進させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、新規な含亜鉛デンドリマーを提供でき、この亜鉛化合物は、ルイス酸触媒として有効であり、有機溶媒中での化学反応、例えばラクトンの開環重合などの有機反応を効率よく進行させるのに資する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
窒素雰囲気下、3,5‐ジメトキシベンジルアルコール67.6mgの無水テトラヒドロフラン溶液(1.5ml)に0.99Mジエチル亜鉛/ヘキサン溶液0.20mlを0℃でゆっくりと滴下し、30℃で3時間攪拌したのち、反応溶媒を減圧留去し、40℃で16時間真空乾燥した。収量は81.6mgであった。
このものの核磁気共鳴スペクトル分析結果は次の通りである。
H−NMR(500MHz,CDSOCD)δ/ppm 7.45−6.80(m,6H),5.90−5.35(m,4H),4.45−4.20(m,12H)
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される含亜鉛デンドリマーと同定された。
【化16】

【実施例2】
【0026】
窒素雰囲気下、以下の構造式
【化17】

で表されるデンドロン88.1mgの無水テトラヒドロフラン溶液(1.5ml)に0.99Mジエチル亜鉛/ヘキサン溶液0.10mlを0℃でゆっくりと滴下し、30℃で2時間攪拌したのち、反応溶媒を減圧留去し、40℃で16時間真空乾燥した。収量は107.9mgであった。
このものの核磁気共鳴スペクトル分析結果は次の通りである。
H−NMR(500MHz,CO(テトラヒドロフラン−d))δ/ppm 6.45−6.15(m,18H),4.75−4.45(m,12H),3.65−3.45(m,24H)
これらの分析結果より、この生成物は以下の式(X)で表される含亜鉛デンドリマーと同定された。
【化18】

【実施例3】
【0027】
窒素雰囲気下、以下の構造式
【化19】

で表されるデンドロン98.7mgの無水テトラヒドロフラン溶液(1.5ml)に0.99Mジエチル亜鉛/ヘキサン溶液0.05mlを0℃でゆっくりと滴下し、30℃で2時間攪拌したのち、反応溶媒を減圧留去し、40℃で16時間真空乾燥した。収量は107.2mgであった。
このものの核磁気共鳴スペクトル分析結果は次の通りである。
H−NMR(500MHz,CO)δ/ppm 6.55−6.15(m,42H),4.80−4.35(m,24H),3.65−3.45(m,48H)
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される含亜鉛デンドリマーと同定された。
【化20】

【実施例4】
【0028】
窒素雰囲気下、以下の構造式
【化21】

で表されるデンドロン88.7mgの無水トルエン溶液(2ml)に0.99Mジエチル亜鉛/ヘキサン溶液0.10mlを0℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間攪拌することにより式(X)の含亜鉛デンドリマーからなる含亜鉛ルイス酸触媒を調製した。
この含亜鉛ルイス酸触媒の無水トルエン溶液(3ml)を、以下の構造式
【化22】

で表されるアルコール44.6mgとε−カプロラクトン1.202gとの無水トルエン溶液(8ml)に窒素雰囲気下0℃でゆっくりと滴下し、45℃で2時間攪拌した。
反応終了後、反応液を濃縮し少量のクロロホルムに溶解させ、メタノール(500ml)に滴下することにより目的物を沈降させ、このものに10%塩酸−メタノール液(10ml)を加え、一晩室温で放置した後、ろ過、洗浄し、40℃で12時間真空乾燥したところ、下記構造式のポリ(ε−カプロラクトン)が得られた(収率91%)。
【化23】

このポリマーは、GPCカラム(東ソー、TSKgel GMHXL−L 2本)を用いた高速液体クロマトグラフ分析より、数平均分子量Mn6700、分散度Mw/Mn1.17(標準ポリスチレン換算)であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化2】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
で表されるデンドリマーであることを特徴とする含亜鉛デンドリマー。
【請求項2】
一般式(III)
【化3】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化4】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
で表されるデンドロンと、一般式(IV)
【化5】

(式中、Wは炭化水素基を示す)
で表される炭化水素基含有亜鉛化合物とを溶媒中で反応させることを特徴とする一般式(I)
【化6】

[式中、Eはカルボニル基又は2価炭化水素基から成る2価連結基、jは0又は1、a、b及びcのうち少なくとも1つが1、残りは0、Gは一般式(II)
【化7】

〔式中、R、R及びRは2価炭化水素基、Xは炭化水素基、Y及びZはO、S、NQ(Qは水素原子又はアルキル基である)、SO、SO、エステル基、アミド基又はカルボニル基から成る2価連結基、p、q、r、s及びtはそれぞれ0又は1、mは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す〕
で表される基である]
で表される含亜鉛デンドリマーの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の含亜鉛デンドリマーから成る含亜鉛ルイス酸触媒。

【公開番号】特開2006−225284(P2006−225284A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38369(P2005−38369)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】