説明

吸尿装置

【課題】尿の吸引が速やかな吸尿装置の提供。
【解決手段】吸尿装置が容器部102aと尿検出部102bとを有する。尿検出部102bは、尿で濡れると検出信号を出す一対の電極部118a,118bを有する。一対の電極部118a,118bは透液性の第1シート128と透液性の第2シートとによってサンドウィッチされている。第1シート128と第2シートとは、一対の電極部118a,118bそれぞれの側縁部269a,269bの外側で互いに向かい合い、少なくとも一方のシートの厚さが局部的に薄くなった接合部位301,302,303において接合するとともに、接合部位301,302,303とそれに隣接する部位とにおいて密着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自分の意志で尿の排泄時期をコントロールすることが困難な人や排泄した尿を始末することが困難な人が尿を自動的に処理するために着用するのに好適な吸尿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老人や病人等では、自分の意志で尿の排泄時期をコントロールすることが困難であったり排泄した尿を自力で始末することが困難であったりすることがある。従来、このような人の尿を処理するために、尿道口周辺に吸尿装置を当てがい、吸尿装置の容器部に集められた尿を容器部とは別体の吸引ポンプ等の真空吸引手段によって尿タンクに導くことができる自動尿処理装置が、例えば特開2004−267517号公報(特許文献1)や特開2007−44493号公報(特許文献2)によって提案されている。吸引ポンプは、密閉された尿タンク内の空気を吸引することによって、容器部と尿タンクとの間に圧力差を作り、その圧力差によって容器部内の尿を尿タンクに導くことができる。
【0003】
前記従来の吸尿装置には、尿が排泄されたことを検知して吸引ポンプを作動させる尿センサが含まれている。尿センサは互いに離間並行する一対の電極を有し、尿によってこれらの電極が電気的につながると、尿検知回路に電流が流れて吸引ポンプが作動する。一対の電極は、透液性の表面シートと透液性の尿戻り抑制シートとの間に配置されている。
【特許文献1】特開2004−267517号公報
【特許文献2】特開2007−44493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来の吸尿装置では、表面シートと尿戻り抑制シートとが尿センサの周囲で重なり合っている。尿は、重なり合う両シートを透過して吸尿装置の容器部へと進む。これら両シートが互いに接触しているときには、これら両シートにおける繊維どうしの間隙を尿で満たしておくことが容易であるから、真空ポンプによって容器部を減圧状態にして尿を容器部へ速やかに吸引することができる。しかし、電極やそれを支持しているシート部材の厚さが厚くて両シートが離間しているというときには、これら両シートにおける繊維間隙を尿で満たすことが難しくなり、尿を容器部へ速やかに吸引することができない、ということがある。
【0005】
この発明では、尿の吸引が速やかになるように、従来の吸尿装置に改良を施すことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、尿道口とその周辺の肌とに向かい合うようにして着用する容器部と、前記肌と前記容器部との間に介在するように前記容器部に取り付けて前記尿道口から尿が排泄されたことを検出する尿検出部とを有し、前記容器部と前記尿検出部とをこれらとは別体の真空吸引手段に接続して前記尿検出部における検出信号に基づいて前記真空吸引手段を作動させると、前記尿の前記容器部への吸引が可能になる吸尿装置である。
【0007】
かかる吸尿装置において、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記尿検出部は、前記尿で濡れると前記検出信号を出すことが可能であって互いに離間並行して一方向へ延びる一対の電極部を有している。前記一対の電極部は、透液性の第1シートと透液性の第2シートとによってサンドウィッチされている。前記第1シートと前記第2シートとは、前記一対の電極部それぞれの前記一方向へ延びる両側縁部の外側で互いに向かい合って一体となるとともに少なくとも一方のシートの厚さが局部的に薄くなっている接合部位を形成していて、前記接合部位と前記接合部位に隣接する部位とにおいて密着している。
【0008】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記接合部位は、前記一対の電極部それぞれの前記両側縁部それぞれに沿って形成されていて、間欠的に分布する複数のスポットを成しているか直線を成しているかのいずれかの態様にある。
【0009】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記一対の電極部の間に形成される前記接合部位が前記一方向において一列を成している。
【0010】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記尿検出部は、前記第1シートに対して前記一対の電極部とは反対側で重なる少なくとも1枚の透液性シート片および前記第2シートに対して前記一対の電極部とは反対側で重なる少なくとも1枚の透液性シート片のうちのいずれかを有し、前記いずれかのシート片もまた前記接合部位において前記第1シートおよび前記第2シートのいずれかに接合していて、前記接合部位とその周囲とにおいて前記第1シートと前記第2シートと前記いずれかの透液性シート片とが密着している。
【0011】
この発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記接合部位は、前記第1シートと前記第2シートとのうちの少なくとも一方を溶融固化させて得られる溶着部位であって、前記溶着部位においては前記第1シートの厚さと前記第2シートの厚さとの合計厚さが前記溶着部位に隣接する部位においての前記合計厚さよりも薄くなっている。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る吸尿装置では、電極部をサンドウイッチしている透液性の第1シートと透液性の第2シートとが、電極部の両側縁部の外側において互いに重なり合って一体となる接合部位とその接合部位に隣接する部位とにおいて密着しているから、電極部の存在によって第1シートと第2シートとが離間して、吸尿部への尿の速やかな吸引が妨げられる、ということがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付図面を参照しながら、この発明に係る吸尿装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0014】
図1は、この発明に係る吸尿装置102と、その吸尿装置102と組み合わせられる真空吸引手段100aとを含んだ自動尿処理装置100の概略構成図である。吸尿装置102は、それを着用する者の肌に向ける内面側とその反対側であって着用者の着衣に向ける外面側とを有するもので、図ではその外面側の部材が部分的に破断した状態で示されている。
【0015】
自動尿処理装置100は、着用者(図示せず)が排泄した尿を吸尿装置102に集めて処理することができる装置である。その吸尿装置102は、着用者の尿道口近傍の肌に当接して排泄された尿を受け容れる容器部102aと尿が排泄されたことを検出する尿検出部102bとを含み、真空吸引手段100aは、吸尿装置102に接続される継手部材104、導尿チューブ106、尿タンク106a、ポンプユニット108、電気配線116等を含む。
【0016】
ポンプユニット108は、尿検出部102bから配線116を介して送られる信号に基づいて作動する吸引ポンプ(図示せず)を備えている。吸尿装置102では、容器部102aの容器112の周壁部に形成された尿排出用開口114に対して継手部材104を介して導尿チューブ106が接続される。ポンプユニット108から延びる配線116の先端には、尿検出部102bに設けられた尿センサ118の電極218a,218b(図3,4参照)を配線116へ電気的に接続するためのクリップ120が取り付けられている。かような自動尿処理装置100は、尿センサ118により尿が排泄されたことを検出し、その検出したことに基づく信号によってポンプユニット108に含まれる吸引ポンプを作動させて尿タンク106a内の空気を吸引することにより、尿を容器112の内部へ吸引し、その吸引した尿を継手部材104と導尿チューブ106とを介してさらに吸引して、尿タンク106aに集めることができる。
【0017】
図2は、吸尿装置102の着用方法の一例を示す図であって、クリップ120が腹側にある。吸尿装置102は、T字ベルト300の股間ベルト部301の内面側に粘着剤や商品名マジックテープで知られるメカニカルファスナ等を使用して固定されている。吸尿装置102の容器112は、その大部分が着用者身体の前側において上下方向へ延びてその内側が着用者の尿道口とその周辺の肌とに向かい合うとともに、下端部分が股間ベルト部301の内面に沿って緩やかに湾曲しながら肛門へ向かうように延びた状態で着用される。T字ベルト300は、胴ベルト部302の両端部がメカニカルファスナ等の連結手段303を介して分離可能に連結されており、股間ベルト部301は、一方の端部が胴ベルト部302に縫合されていてもう一方の端部がメカニカルファスナ304を介して分離可能に胴ベルト部302に連結されている。なお、吸尿装置102は、図示例の着用手段の他に、開放型のおむつやパンツ型のおむつ、おむつカバー、失禁患者用パンツ等適宜の手段を使用して着用することができる。
【0018】
図3,4,5において、図3は吸尿装置102の内面側を示す平面図であり、図4は図3のIV−IV線に沿う切断面を示す図であり、図5は図3のV−V線に沿う切断面を示す図であって、図4,5では、吸尿装置102の厚さ方向Rにおいて重なり合うべき各部材が一部のものを除いて互いに離間した状態で示されている。
【0019】
吸尿装置102は、着用者身体の上下方向に一致させる長さ方向Pと、長さ方向Pに直交する幅方向Qとを有し、長さ方向Pの両端部近傍で幅が広く、中央部で幅が狭くなっている。吸尿装置102はまた、厚さ方向Rを有し、容器112の図4における上方には、その厚さ方向Rの下方から順に、不透液性の防漏シート122、透液性の難通気性シート124、拡散シート126、クッションシート128、尿センサ118、シート状のスペーサ130、シート状のフィルタ132、透液性肌当てシート134からなる複数のシート状部材が重なり、肌当てシート134には防漏堤136が重なっている。防漏シート122と難通気性シート124と拡散シート126とは容器112と一体になって容器部102aを形成している。また、クッションシート128、尿センサ118、スペーサ130、フィルタ132、肌当てシート134は互いに重なり合って尿検出部102bを形成している。
【0020】
容器112は、トレー形状のものであり、軟質ポリエチレンやシリコンゴム等の軟質弾性材料で形成され、長さ方向Pにも幅方向Qにも湾曲できる可撓性を有しているが、吸引ポンプで尿を吸引するときに作用する負圧による変形には耐えられるように作られている。容器112における周縁フランジ部152には接着剤112aを介して防漏シート122が水密状態で接合している。
【0021】
防漏シート122は、容器112の外側へ広がっていて、吸尿装置102から尿が漏れることを防止している。防漏シート122は、熱可塑性合成樹脂フィルムやそのフィルムと不織布との複合シート等で形成することができ、図1の吸尿装置102では厚さ30μmの軟質ポリエチレンフィルムが使用されている。なお、吸尿装置102が容器112の周縁部における防漏性を必要としない場合には、防漏シート122を省いてこの発明を実施することも可能である。
【0022】
難通気性シート124は、透液性は高いが空気を殆どまたは全く通さないもので、図4に示されるように容器112の頂部の開口を覆っていて、周縁部が防漏シート122に対してホットメルト接着剤124aを介して上方から接合している。難通気性シート124を有する容器112は、ポンプユニット108の吸引ポンプが作動すると容易に負圧となり、尿を速やかに吸引することができる。難通気性シート124は、例えば22g/mのスパンボンド不織布と10g/mのメルトブローン不織布と22g/mのスパンボンド不織布とからなるSMS不織布を、好ましくは界面活性剤で親水化処理して使用することができる。難通気性シート124の通気性は、JIS L 1096のセクション6.27.1に規定される通気性測定方法のA法に従って測定したときに、湿潤状態においては0〜100cc/cm/秒、好ましくは0〜50cc/cm/秒の範囲にある。また、乾燥状態においては20〜200cc/cm/秒、好ましくは20〜100cc/cm/秒、さらに好ましくは20〜50cc/cm/秒の範囲にある。この通気性を測定するときの湿潤状態とは、下記の式(1)で算出される難通気性シート124の含水率が100%以上である状態を意味し、乾燥状態とは、難通気性シート124を20℃、RH50%の室内に24時間以上放置したときの同シート124の状態を意味している。
【0023】
含水率=(湿潤状態のシート重量−乾燥状態のシート重量)/(乾燥状態のシート重量)・・・式(1)
【0024】
拡散シート126は、レーヨン繊維を一例とする親水性繊維を含む不織布等の透液性シート片で形成され、尿が排泄されたときにその尿を難通気性シート124の上方において速やかに拡散させて難通気性シート124を広い面積にわたって湿潤状態にするために使用される。難通気性シート124が湿潤状態になることによって、容器112の内部を負圧にして尿をその内部に吸引することが容易になる。拡散シート126は、難通気性シート124に対してそれぞれの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。
【0025】
クッションシート128は、例えば坪量が20〜30g/mのサーマルボンド不織布等の透液性シート片で形成されており、尿を速やかに浸透させることができるもので、拡散シート126や難通気性シート124に存在する尿が尿センサ118に向かって逆流することを防いでいる。クッションシート128はまた、それに対して尿センサ118、スペーサ130、フィルタ132等のシート状部材を予め重ねておけば、吸尿装置102の製造過程においてこれらシート状部材を吸尿装置102における所定の位置に置くためのキャリヤ部材となる。クッションシート128は、拡散シート126に対して、互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合していることが好ましい。
【0026】
尿センサ118は、例えば導電性インクで所要形状の電極を合成樹脂フィルムに印刷することにより得ることができるもので、構造の詳細は後記のとおりである。尿センサ118は、クッションシート128に対して接合することができる。
【0027】
スペーサ130は、尿検出部102bにおけるシート状部材のうちでも厚さが最も厚いもので、ネット状の透液性シート片で形成される。吸尿装置102では、尿の吸引後にも尿が肌当てシート134に残り、その尿によって肌当てシート134が湿潤状態にあるということがある。そして、その肌当てシート134が、体圧等の作用を受けて尿センサ118に直接的または間接的に接触し、尿センサ118を誤動作させるということがある。スペーサ130は、そのような誤動作を防止するために尿センサ118とフィルタ132とを厚さ方向Rにおいて離間させておく手段であって、吸尿能力がなくて撥水性であり、かつ難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有し、体圧を受けてもその厚さが変化しないものである。そのようなスペーサ130は、例えばエチレン酢酸ビニル等の柔軟な合成樹脂で形成された厚さ0.5〜1mmのネットで作ることができ、クッションシート128に対して、互いの透液性を阻害することがないように接合していることが好ましい。
【0028】
フィルタ132は、尿に含まれる固形分が尿センサ118に付着して尿センサ118が恒久的に通電状態になるというような事態を防止するためのもので、難通気性シート124よりも高い通気性と透液性とを有するシート片、より好ましくは不織布片によって形成される。フィルタ132は、スペーサ130に対して互いの透液性を阻害することがないように間欠的に接合することができる。
【0029】
肌当てシート134はフィルタ132の上方に設けられるもので、吸尿装置102が着用されたときには、着用者の尿道口とその近傍の肌とに向かい合った状態で肌に接触する。かかる肌当てシート134は、例えば坪量が15〜25g/mのサーマルボンド不織布等の柔軟性と透液性とを有するシート片で形成される。肌当てシート134は、クッションシート128と同様に排尿の初期段階で尿を瞬間的に浸透させることができるもので、フィルタ132に対して、互いの透液性を阻害することがないようにして間欠的に接合していることが好ましい。肌当てシート134には、親水性のものである場合と、撥水性のものである場合とがある。
【0030】
防漏堤136は、図3,4に示されるように左右一対を成すもので、尿が肌当てシート134の上を幅方向Qへ流れて吸尿装置102から横漏れすることを防止することができる。防漏堤136では、吸尿装置102の外側寄りに位置する外側縁部136cが肌当てシート134に接合される一方、内側寄りに位置する内側縁部136dは、肌当てシート134に接合されておらず、そこには糸ゴム等の弾性部材136b(図4参照)が長さ方向Pへ伸長した状態で取り付けられている。吸尿装置102が、それを着用するときに図1の如く長さ方向Pにおいて湾曲して弾性部材136bが収縮すると、防漏堤136の内側縁部136dは、肌当てシート134から離間するように起立する。防漏堤136は、柔軟な熱可塑性合成樹脂フィルムやそのフィルムと不織布との複合シート等によって形成され、好ましくは不透液性である。吸尿装置102を平面的に見たときの防漏堤136(図3参照)は、上端部と下端部とのそれぞれが第1、第2エンドシート138,140のそれぞれで被覆されている。
【0031】
吸尿装置102を着用中に便が排泄されて、肌当てシート134が便で覆われると、吸尿装置102は尿を検出することができなくなったり尿を吸引することができなくなったりするという事態になる。そのような事態を防ぐために、図3,4,5に示されているように吸尿装置102には便センサ144が設けられている。便センサ144では、熱可塑性合成樹脂フィルム142c,142dの上面にアルミ蒸着等によって電極143a,143bが形成されていて、そのフィルム142c,142dが2枚のカバーシート142a,142bで被覆されている。カバーシート142aは透液性のものであって、便中の水分が電極143a,143bに向かって透過可能である。かような便センサ144では、電極143a,143bが尿検出用電極218a,218bに並行して長さ方向Pへ延びていて、図3,5における下端部分145bがエンドシート140から下方へ延出している。その下端部分145bが便で汚れると、便中の水分がカバーシート142aを透過して、電極143a,143bが電気的につながり、配線116に含まれている電源116a(図1参照)から電流が流れてポンプユニット108における警報器(図示せず)に信号を送り、便の処理と吸尿装置102の交換とを介護者等に促すことができる。
【0032】
図6は、図3,4,5において使用されている尿センサ118の平面図であり、吸尿装置102の輪郭が仮想線で示されている。尿センサ118は、合成樹脂フィルムで形成されたフィルム部260と、フィルム部260の片面に形成された一対の尿検出用電極218a,218bと、これらの電極218a,218bの大部分を覆っている絶縁性被覆170とを有する。フィルム部260は、長さ方向Pへ延びる矩形のものであるが、幅方向Qの中央部が長さ方向Pへ長く切り取られることによって形成されたほぼ矩形の開口171を有する。かようなフィルム部260は、図6における上方にクリップ120で把持するための上端部266を有し、上端部266の下方には尿センサ118の幅を二等分する中心線L−Lの両側に側部267a,267bを有し、さらに下方には側部267aにつながる下端部268aと、側部267bにつながる下端部268bとを有する。下端部268aと下端部268bとは、連結部268cを介してつながっている。フィルム部260の上端部266では、電極218a,218bが露出している。また、側部267a,267bと下端部268a,268bとにおいて絶縁性被覆170に対して形成されている複数の小さな円形の部分は、非塗装部分169a,169bであって、ここには被覆170が形成されておらず、電極218aまたは218bの尿検出部位175aまたは175bが露出している。
【0033】
図7は、図6におけるVII−VII線に沿う切断面を示す図である。図におけるフィルム部260の上面には、尿検出用の電極218aの他に、断線検出用の回路250が形成されており、非塗装部分169aでは、電極218aの尿検出部位175aが露出している。もう一方の回路250は、その全体が絶縁性被覆170によって覆われている。
【0034】
図8は、絶縁性被覆170が剥離された状態にある尿センサ118の平面図である。フィルム部260の片面には、側部267aと下端部268aとにおいてほぼL字形を画くように尿検出用電極218aが形成されている。また、側部267bと下端部268bとにおいて逆向きのL字形を画くように尿検出用電極218bが形成されている。これらの電極218a,218bに形成されている円形の部位175a,175bは、図6の非塗装部分169a,169bにおいて露出している。電極218aと218bとの間には、断線検出用回路250が形成されている。回路250は、尿検出用電極218a,218bそれぞれの下端部分173,174と電気的につながるとともに、図示の如く開口171の縁に沿って延びている。
【0035】
かような尿センサ118において、好ましいフィルム部260には、厚さが50〜100μmのポリエステルフィルムが使用される。電極218a,218bは、導電性インクや導電性塗料を使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。導電性インクや導電性塗料には、例えば導電性材料として3〜7重量%のカーボンブラック、10〜30重量%のカーボングラファイト等の人造黒鉛、適宜量の銀粉が含まれる。好ましい電極218a,218bのそれぞれは、幅が0.5〜2mm、抵抗値が150KΩ以下となるように作られ、非塗装部分169a,169bは1〜2mmの直径を有している。断線検出用回路250は、例えばカーボンブラックが3〜7重量%、人造黒鉛が5〜10重量%含まれるインクを使用して所要の形状をフィルム部260に印刷することによって得ることができる。この回路250は、その抵抗値が尿検出用電極218a,218bの抵抗値よりもはるかに高いもので、好ましい回路250は幅が0.3〜1mm、抵抗値が2〜10MΩ程度となるように作られる。
【0036】
図6の尿センサ118が吸尿装置102において使用されているときには、電気配線116に含まれる電源116aからクリップ120を介して電極218a,218bとこれらにつながる回路250との間に常時微弱な電流Aが流れている。電気配線116を含む電気回路110では、その電流Aが流れているならば、尿検出用電極218a,218bが正常であると判断する。一方、電流Aを検出することができなくなったときには、尿検出用電極218a,218bに断線等の異常があったと判断し、尿センサ118の交換を促す信号をポンプユニット108から外部に向かって出すことができる。図6において、仮想線176によって示された範囲が尿によって濡れると、側部267aと側部267bとに形成されている非塗装部分169a,169bに尿が進入して、尿検出部位175a,175bに接触し、側部267aにおける電極218aと側部267bにおける電極218bとが尿を介して電気的につながる。両電極218a,218b間の抵抗が回路250の抵抗よりも小さくなると、電気は抵抗の大きい回路250ではなくて、抵抗の小さい尿の中を流れる。尿の中を流れるときの電流Bが、回路250を流れるときの電流Aの値よりも大きければ、電気回路110では、この電流の変化またはそれに代わる電圧や抵抗値の急激な変化を捉えることによって、尿が排泄されたことを知ることができる。ポンプユニット108では、その変化によって生じる信号に基づいてポンプを作動させて尿を吸引し、電極218a,218b間の抵抗が大きくなるとポンプを停止させる。
【0037】
図6の尿センサ118において、その尿検出部位175a,175bを露出させるための非塗装部分169a,169bは、中心線L−Lに関して非対称となるように両側部267a,267bに形成されているが、非塗装部分169a,169bは、中心線L−Lに関して対称となるように形成されていてもよいものである。また、フィルム部260の下端部268a,268bとその近傍には、複数の非塗装部分169a,169bが互いに接近した態様で形成されている。非塗装部分169a,169bがこのような態様にあると、排泄直後の尿が難通気性シート124に向かわずに図の上方から下方に向かって急速に拡散するようなことがあっても、吸尿装置102はその尿を速やかに吸引することができる。非塗装部分169a,169bは、このような態様の他に、吸尿装置102を着用したときの着用者の姿勢がどのようであるかを想定して、側部267a,267bの適宜の部位に設けることができる。
【0038】
図9,10は、尿検出部102bの平面図と、その平面図におけるX−X線切断面を模式的に示す図とであって、図10には吸尿部102aが仮想線で示されている。尿検出部102bの尿センサ118では、図6〜8に示されているように、幅方向Qにおいて離間して、長さ方向Pへ並行して延びるフィルム部260の一対の側部267aと267bとに電極218aと218bとが形成されている。この尿センサ118のうちで側部267aと電極218aとによって形成される第1電極部118aは、それをサンドウイッチしているクッションシート128とスペーサ130とが第1電極部118aの両側縁部269aそれぞれの外側において向かい合い、両側縁部269aそれぞれの外側に形成された第1接合部位301と第2接合部位302とで互いに接合している。また、スペーサ130に重なっているフィルタ132と肌当てシート134とがこれら第1、第2接合部位301,302で互いに接合するとともに、クッションシート128とスペーサ130とに接合している。クッションシート128とスペーサ130とはまた、第2電極部118bの両側縁部269bそれぞれの外側において向かい合い、両側縁部269bそれぞれの外側に形成された第2接合部位302と第3接合部位303とでも互いに接合している。さらに、スペーサ130に重なっているフィルタ132と肌当てシート134とは、第2接合部位302の他に第3接合部位303でも互いに接合しており、クッションシート128とスペーサ130とにも接合している。
【0039】
第1〜第3接合部位301〜303では、互いに重なり合うシート状部材128,130,132,134がこれら部位301〜303において溶着または接着によって接合して、これら第1〜第3接合部位301〜303と第1〜第3接合部位301〜303に隣接する部位とにおいて密着している。ここでいう隣接する部位とは、接合部位の周縁から少なくとも3mm以内の範囲を意味している。また、より好ましい第1〜第3接合部位301〜303では、シート状部材128,130,132,134のうちの少なくともクッションシート128とスペーサ130とのいずれかがその厚さが薄くなるように、好ましくはその厚さが接合部位の周縁から5mm離れている非接合部位における厚さの2/3〜1/10となるように圧縮されている。第1〜第3接合部位301〜303がシート状部材128,130,132,134を局部的に加圧し、いずれかのシート状部材を溶融固化させて得られる溶着部位である場合には、例えば厚さが特に厚いスペーサ130を第1〜第3接合部位301〜303において薄くして、これら部位301〜303に隣接する部位においてのシート状部材128,130,132,134の密着の度合いを高めることができる。すなわち、互いに重なり合うシート状部材128,130,132,134を同一部位において加圧下に溶着させることは、これらシート状部材128,130,132,134の重なり合った厚さを局部的に薄くするうえにおいて効果的な方法である。また、その方法は、第1〜第3接合部位301〜303に隣接する部位においてシート状部材を互いに密着させるうえにおいても効果的である。接着剤を使用して第1〜第3接合部位301〜303を得るときには、シート状部材128,130,132,134が熱溶融性材料を含んでいなくてもよい、という利点が得られる。なお、図示してはいないが、シート状部材128,130,132,134は、第1〜第3接合部位301〜303以外において間欠的に接合して互いの位置にずれが生じることを防ぐことができる。
【0040】
このように、第1、第2電極部118a,118bの両側縁部269a,269bそれぞれの外側においてクッションシート128と、スペーサ130と、フィルタ132と、肌当てシート134とが第1、第2、第3接合部位301,302,303で接合している態様の尿検出部102bでは、フィルム部260や電極218a,218bの厚さ方向Rの寸法が大きいとか開口171の幅方向Qの寸法が小さいとかということによってクッションシート128とスペーサ130との間に間隙が生じかねない場合であっても、第1、第2、第3接合部位301,302,303に隣接する部位では、クッションシート128とスペーサ130とフィルタ132と肌当てシート134とが互いによく密着している。また、シート状部材128,130,132,134の中でも厚さが厚くてしかも吸尿能力のないネット状のスペーサ130が圧縮されていると、その他のシート状部材128,132,134が互いに接近し、密着することが可能になる。そして、肌当てシート134に向かって排泄された尿は、真空吸引手段100aによる吸引力の作用下に、互いに密着しているシート状部材134,132,128の繊維間隙とスペーサ130の網の目とを順に通り抜け、さらに難通気性シート124を通り抜けて容器112に進入することができる。シート状部材134,132,128のそれぞれが不織布等の繊維集合体であれば、より好ましくは親水性の繊維集合体であれば、互いに密着しているこれらシート状部材134,132,128においての繊維間の毛管作用によって容器112に向かっての尿の移動を促進することができる。図9において複数のスポットからなる第1、第2、第3接合部位301,302,303のそれぞれは、長さ方向Pで一列を成すように間欠的に形成されていて、尿が幅方向Bへ移動することの妨げにならないものであることが好ましい。
【0041】
図10において明らかなように、この発明に係る吸尿装置102では、第1電極部118aと第2電極部118bとが幅方向Qにおいて離間して、例えば5〜15mm離間して開口部171を形成することによって、クッションシート128とスペーサ130とが開口部171において向かい合うので、これら両シート128,130を各電極部118a,118bにおける両側縁部269a,269bそれぞれの外側で接合することができる。なお、一列を成すように形成される第2接合部位302は、第1電極部118aに対する接合部位と第2電極部118bに対する接合部位とを兼ねることができる。図10において、クッションシート128と拡散シート126とを第1〜第3接合部位301〜303で接合することは可能であるが、これら両シート128,126は、第1、第2、第3接合部位301,302,303で互いに接合していなくても吸尿装置102の着用中に密着する。
【0042】
図11は、この発明に実施形態の一例を示す図9と同様な図である。図11の尿検出部102では、第1〜第3接合部位301〜303のそれぞれが長さ方向Pへ延びる一条の線または帯を成しており、好ましい第1〜第3接合部位301〜303は、第1、第2電極部118a,118bの長さの少なくとも1/2の長さを有している。これら第1〜第3接合部位301〜303は、尿が幅方向Qへ流れることの妨げにはなるが、シート状部位128,130,132,134を広い範囲にわたって密着させ、尿検出部102bから容器部102aへ向かっての尿の移動を促進することができる。
【0043】
図12は、この発明の実施形態の一例を示す図10と同様な図である。図12における尿検出部102bは、図10に例示の拡散シート126とフィルタ132とを含まないもので、難通気性シート124が熱可塑性合成繊維の他にレーヨン繊維等の親水性繊維を含むことによって図10の拡散性シート126の作用を兼ね備えている。また、肌当てシート134は、それを形成している不織布の繊維間隙を適宜小さくすることによって、図10のフィルタ132の作用を兼ね備えるように作られている。図12では、クッションシート128とスペーサ130と肌当てシート134とが、第1電極部118aの両側縁部269aの外側では第1接合部位301と第2接合部位302とで接合し、第2電極部118bの両側縁部269bの外側では第3接合部位303と第4接合部位304とで接合している。図示してはいないが、これら第1〜第4接合部位301〜304は長さ方向Pにおいて間欠的に形成されている。また、第2接合部位302と第3接合部位303とが第1電極部118aと第2電極部118bとの間に形成されている。図12に例示の第1〜第4接合部位301〜304は、第1電極部118aと第2電極部118bとの離間寸法が大きい場合に採用することが好ましい。
【0044】
図13もまた、この発明の実施形態の一例を示す図10と同様な図である。ただし、図13における尿検出部102bは、図12と同様な難通気性シート124と、クッションシート128と、スペーサ130と、肌当てシート134とを有している。クッションシート128とスペーサ130とは第1、第2、第3接合部位301,302,303で接合しているが、肌当てシート134はこれら接合部位301,302,303ではスペーサ130に接合することがなく、肌当てシート134の周縁部(図示せず)がそれと重なるスペーサ130またはクッションシート128と接合している。肌当てシート134が柔軟なものであって、スペーサ130と容易に接触できるように形成されている場合には、図13の如く第1電極部118aをサンドウイッチしているシートどうし、第2電極部118bをサンドウイッチしているシートどうしのみを接合して、サンドウイッチしているシート間に間隙が生じることを確実に防ぐという態様でこの発明を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明によれば、尿を速やかに吸引することが可能な吸尿装置の生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】吸尿装置を含む自動尿処理装置の概略構成図。
【図2】吸尿装置の着用状態を示す図。
【図3】吸尿装置の平面図。
【図4】図3のIV−IV線切断面を示す図。
【図5】図3のV−V線切断面を示す図。
【図6】尿センサの平面図。
【図7】図6のVII−VII線切断面を示す図。
【図8】絶縁性被覆が剥離されている尿センサの平面図。
【図9】尿検出部の部分破断平面図。
【図10】図9のX−X線切断面を示す図。
【図11】尿検出部の一形態を示す図9と同様な図。
【図12】尿検出部の一形態を示す図10と同様な図。
【図13】尿検出部の一形態を示す図10と同様な図。
【符号の説明】
【0047】
100a 真空吸引手段
102 吸尿装置
102a 容器部
102b 尿検出部
112 容器
118a 第1電極部
118b 第2電極部
126 透液性シート片(拡散シート)
128 第1シート(クッションシート)
130 第2シート(スペーサ)
132 透液性シート片(フィルタ)
269a 側縁部
269b 側縁部
301 接合部位(第1接合部位)
302 接合部位(第2接合部位)
303 接合部位(第3接合部位)
304 接合部位(第4接合部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道口とその周辺の肌とに向かい合うようにして着用する容器部と、前記肌と前記容器部との間に介在するように前記容器部に取り付けて前記尿道口から尿が排泄されたことを検出する尿検出部とを有し、前記容器部と前記尿検出部とをこれらとは別体の真空吸引手段に接続して前記尿検出部における検出信号に基づいて前記真空吸引手段を作動させると、前記尿の前記容器部への吸引が可能になる吸尿装置であって、
前記尿検出部は前記尿で濡れると前記検出信号を出すことが可能であって互いに離間並行して一方向へ延びる一対の電極部を有していて、前記一対の電極部が透液性の第1シートと透液性の第2シートとによってサンドウィッチされており、
前記第1シートと前記第2シートとが、前記一対の電極部それぞれの前記一方向へ延びる両側縁部の外側で互いに向かい合って一体となるとともに少なくとも一方のシートの厚さが局部的に薄くなっている接合部位を形成していて、前記接合部位と前記接合部位に隣接する部位とにおいて密着していることを特徴とする前記吸尿装置。
【請求項2】
前記接合部位が、前記一対の電極部それぞれの前記両側縁部それぞれに沿って形成されていて、間欠的に分布する複数のスポットを成しているか直線を成しているかのいずれかの態様にある請求項1記載の吸尿装置。
【請求項3】
前記一対の電極部の間に形成される前記接合部位が前記一方向において一列を成している請求項1または2記載の吸尿装置。
【請求項4】
前記尿検出部は、前記第1シートに対して前記一対の電極部とは反対側で重なる少なくとも1枚の透液性シート片および前記第2シートに対して前記一対の電極部とは反対側で重なる少なくとも1枚の透液性シート片のうちのいずれかを有し、前記いずれかの透液性シート片もまた前記接合部位において前記第1シートおよび前記第2シートのいずれかに接合していて、前記接合部位とその周囲とにおいて前記第1シートと前記第2シートと前記いずれかの透液性シート片とが密着している請求項1〜3のいずれかに記載の吸尿装置。
【請求項5】
前記接合部位は前記第1シートと前記第2シートとのうちの少なくとも一方を溶融固化させて得られる溶着部位であって、前記溶着部位においては前記第1シートの厚さと前記第2シートの厚さとの合計厚さが前記溶着部位に隣接する部位においての前記合計厚さよりも薄くなっている請求項1〜4のいずれかに記載の吸尿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−189499(P2009−189499A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32193(P2008−32193)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】