説明

吸引装置、液滴吐出装置、マイクロアレイの製造装置及び液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法

【課題】 本発明は、液滴吐出ヘッド内に貯留されている液体を無駄に消費せずに、液滴吐出ヘッドの保守(メンテナンス)を可能とし得る吸引装置、液滴吐出装置、マイクロアレイの製造装置及び液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 液滴を吐出する液滴吐出ヘッド60の吐出口61を外部から吸引する吸引装置30であって、液滴吐出ヘッド60の吐出口61が形成された面63を凹部45で覆うキャップ31と、キャップ31に接続される第1の通路33と、第1の通路33に気液分離膜41を介して接する第2の通路35とを有する排出部37と、第2の通路35に接続されてキャップ31内を吸引する第1の吸引手段39と、を備える吸引装置により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式を利用した液滴吐出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に用いられているインクジェットプリンタでは、全ノズルから正常に液滴を吐出するために、吐出前の準備動作としてノズル先端に液体を充填する必要がある。
【0003】
また、液滴吐出ヘッドの吐出口であるノズルは非常に小さいためノズル内の液体が乾燥しやすく、長期にわたり保管すると溶媒の蒸発によりノズル内に気泡が生じたり、増粘物質が生じたりする場合がある。
【0004】
このような問題を解決する方法として、特許文献1には、吸引により気泡や増粘物質を吸引除去する方法が開示されている。しかしながら、吸引の際にインクが大量に排出されてしまい、インクが浪費される虞がある。
【0005】
一方で、インクジェット方式は効率良くしかも高精度に対象物に対し液滴を吐出し得ることから、近年では他の技術分野にも応用され始めている。例えば、特許文献2には、インクジェット方式の製造装置を利用してDNAマイクロアレイを製造する方法が開示されている。しかしながら、貴重な生体高分子溶液を無駄なく液滴吐出ヘッドの流路内に充填し、メンテナンスをすることは困難であった。
【特許文献1】特開平10−264402号公報
【特許文献2】特開2001−186880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、液滴吐出ヘッド内に貯留されている液体を無駄に消費せずに、液滴吐出ヘッドの保守(メンテナンス)を可能とし得る吸引装置、液滴吐出装置、マイクロアレイの製造装置及び液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの吐出口を外部から吸引する吸引装置であって、前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面を凹部で覆うキャップと、前記キャップに接続される第1の通路と当該第1の通路に気液分離膜を介して接する第2の通路とを有する排出部と、前記第2の通路に接続されて前記キャップ内を吸引する第1の吸引手段と、を備える吸引装置を提供するものである。
【0008】
かかる構成によれば、気液分離膜を介して吸引することにより、液滴吐出ヘッドから排出される液体の排出量を制限することが可能となる。また、液体の流れる通路(第1の通路)と気体の流れる通路(第2の通路)を分離することができるので、液体を容易に排出することが可能となる。したがって、液滴吐出ヘッド内に溜まった増粘物質、気泡、汚染液等を除去する際や液滴吐出ヘッドの吐出口先端に液体を充填する際などの液滴吐出ヘッドのメンテナンス時に、液体の浪費を低減することが可能となる。また、第1の吸引手段として、液体を嫌う装置を用いた場合であっても、かかる構成を有することにより、液体による装置の劣化を軽減することが可能となる。したがって、第1の吸引手段として使用し得る装置の選択の幅が広がる。
【0009】
前記第1の通路に接続される第2の吸引手段を更に備えることが好ましい。これによれば、液体の排出を促進させることが可能となる。
【0010】
前記第1の通路に設けられる第1の開閉弁を更に備えることが好ましい。これによれば、廃液の通過・不通過を制御することができる。また、キャップ内を密閉系にすることが可能となるので、第1の吸引手段による吐出口の吸引時に、より確実に吐出口から排出される液体の排出量を制御することが可能となる。
【0011】
前記第2の通路に設けられる第2の開閉弁を更に備えることが好ましい。これによれば、第2の吸引手段による吸引時に、吸引力を高めることが可能となる。
【0012】
前記第1の通路が、チューブから構成されることが好ましい。これによれば、簡便な構成で第1の通路を形成することが可能となる。
【0013】
本発明の他の態様は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの吐出口を外部から吸引する吸引装置であって、前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面を凹部で覆うキャップと、前記キャップに接続される第1の通路と、当該第1の通路に気液分離膜を介して接する第2の通路とを有する排出部と、前記キャップ内を前記第1又は第2の通路を介して選択的に吸引する吸引手段と、を備える吸引装置である。
【0014】
かかる構成によれば、気液分離膜を介して吸引することにより、液滴吐出ヘッドから排出される液体の排出量を制限することが可能となる。また、液体の流れる通路(第1の通路)と気体の流れる通路(第2の通路)を分離することができるので、液体を容易に排出することが可能となる。したがって、液滴吐出ヘッド内に溜まった増粘物質、気泡、汚染液等を除去する際や液滴吐出ヘッドの吐出口先端に液体を充填する際などの液滴吐出ヘッドのメンテナンス時に、液体の浪費を低減することが可能となる。また、一つの吸引手段により、第1の通路と第2の通路の吸引を選択的にし得るので、装置の小型化が図れる。
【0015】
本発明の液滴吐出装置は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、上記吸引装置とを備えるものである。これによれば、上記吸引装置を備えるので、液体吐出ヘッドのメンテナンス時に液体の浪費を低減することが可能な液滴吐出装置を提供し得る。このような液滴吐出装置としては、例えば、印刷装置、マイクロアレイの製造装置、又は金属配線材料を吐出するための吐出装置等が挙げられる。
【0016】
本発明のマイクロアレイの製造装置は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、上記吸引装置とを備えるものである。これによれば、上記吸引装置を備えるので、液体吐出ヘッドのメンテナンス時に液体の浪費を低減することが可能なマイクロアレイの製造装置を提供し得る。
【0017】
本発明の液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの吐出口を外部から吸引する工程を含む液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面をキャップの凹部で覆う第1過程と、前記キャップに接続される第1の通路に気液分離膜を介して接する第2の通路を吸引することにより、前記キャップ内を吸引する第2過程と、前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面から前記キャップを取り外した後、前記第1の通路を吸引することにより液体を排出する第3過程と、を含むものである。
【0018】
これによれば、気液分離膜を介して吸引するので、液滴吐出ヘッドから排出される液体の排出量を制限することが可能となる。また、液体の流れる通路(第1の通路)と気体の流れる通路(第2の通路)を分離しているので、液体の排出が容易となっている。したがって、液滴吐出ヘッド内に溜まった増粘物質、気泡、汚染液等を除去する際や液滴吐出ヘッドの吐出口先端に液体を充填する際などの液滴吐出ヘッドのメンテナンス時に、液体の浪費を低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る吸引装置を説明するための図である。
図1に示すように、本実施形態の吸引装置30は、液滴吐出ヘッド60の吐出口(ノズル)61が形成された面63(以下、ノズル形成面ともいう)を覆うキャップ31と、第1の通路33及び第2の通路35を有する排出部37と、第1の吸引手段としてのポンプ39と、第2の吸引手段としてのポンプ47から主に構成されている。
【0021】
キャップ31は、ポンプ39により減圧される空間43を形成するものであり、液滴吐出ヘッド60の吐出口61の周囲を覆って閉空間を形成するものである。キャップ31は、凹部45を有し、例えばブチルゴムなどの弾性部材を用いて射出成形等により形成される。弾性部材を用いることで、液滴吐出ヘッド60のノズル形成面63と密着させることが可能となり、閉空間43内の機密性を高めることが可能となるので好ましい。また、キャップ31の先端に、ノズル形成面63との密着性をさらに高めるためにOリング等のパッキンや襞部等が設けられていてもよい。
【0022】
排出部37は、第1の通路33と第2の通路35とを含み構成されている。
【0023】
第1の通路33は、液滴吐出ヘッド60の吐出口61から排出される液体65が通過する通路であり、キャップ31とポンプ47とを繋ぐものであり、例えばチューブ等が用いられる。第1の通路33は、少なくとも一部が気液分離膜41から構成されている。また、気液分離膜41で構成される以外の部分については、例えば、ブチレンゴム、シリコンゴム、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等からなるチューブ等を用いて構成される。気液分離膜41については後述する。第1の通路33には、第1の開閉弁49(例:バルブ)が設けられており、液体65の通過・不通過を制御することができる。また、第1の開閉弁49を閉じることにより、キャップ31内を密閉系にすることができるので、ポンプ47による吐出口61の吸引時に、より確実に吐出口61から排出される液体65の排出量を制御することが可能となる。
【0024】
第2の通路35は、第1の通路33に気液分離膜41を介して接している。第2の通路35は、気液分離膜41を介してキャップ31内から吸引された気体を外方に導くためのものである。第2の通路35は、少なくとも気液分離膜41を覆うように設けられる。具体的には、第2の通路35は、図1に示すように、ポンプ39に繋がる分岐管を有し、チューブ状の気液分離膜41の周囲をポンプ39で吸引するための空間51を隔てて覆う管状部材(例:ポリメチルメタクリレート(PMMA))から構成されていてもよい。また、第2の通路35には、第2の開閉弁53(例:バルブ)が設けられており、第2の開閉弁53を閉じることにより、第2の通路35を密閉空間とすることが可能となる。これにより、他からの気体の流入を防止することができるので、ポンプ47の作動時に吸引力を高めることが可能となる。
【0025】
第1の吸引手段としてのポンプ39は、第2の通路35を介してキャップ31内を吸引するものであり、キャップ31内の気体を吸引するためのものである。ポンプ47としては、吸引ポンプ(減圧ポンプ)等の吸引(減圧)機能を有するものであれば特に限定するものではない。後述するポンプ47と同様に、例えばチューブポンプを用いてもよい。
【0026】
第2の吸引手段としてのポンプ47は、第1の通路33を介してキャップ31内を吸引するものであり、第1の通路33及びキャップ31内に溜まった吐出口61からの廃液(排出された液体65)を外方に排出するのに用いられる。ポンプ47としては、吸引ポンプ(減圧ポンプ)等の吸引(減圧)機能を有するものであれば特に限定するものではない。単純な構造で減圧が可能で、また、溜まった廃液を外方に排出することも可能であるという観点からは、例えばチューブポンプが好ましい。チューブポンプは、軟質チューブを回転ローラが押しつぶし、一方向に連続的にしごくことによって、液体や気体を押出すことを利用したものである。
【0027】
次に気液分離膜41について説明する。気液分離膜41は、所定圧力をかけた場合に気体を透過するが液体65を透過しない多孔性膜(フィルタ)であり、使用するポンプの吸引力において、このような性質を有するものであればよい。気液分離膜41としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔性膜等が用いられる。気液分離膜41の平均孔径は、液体65の性質(例:濡れ性)にも依存し特に限定するものではないが、例えば1〜3μmのものが用いられる。このような孔径であれば、例えば空気は透過されるが、水や水を主成分とする液体は透過されない。気液分離膜41の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、チューブ状であると容易に取り付け可能となる。
【0028】
気液分離膜41は、第1の通路33の少なくとも一部を構成していればよく、大きさ、配置位置を特に限定するものではない。気液分離膜41の大きさ及び配置位置を適宜調整することにより、液滴吐出ヘッド60の吐出口61から吸引する液体量を調節することが可能となる。吸引量を最小限に抑えるという観点からは、気液分離膜41の大きさは小さい方が好ましく、また、配置位置はキャップ31の近傍に配置されることが好ましい。なお、気液分離膜41の一例を挙げると、例えば、チューブ状であって、外径5mm、内径4mm、肉厚0.5mm、長さ10cmのものが用いられる。
【0029】
次に、図2を参照しながら、本実施形態の吸引装置30の動作機序について説明する。図2は、本実施形態の吸引装置30の動作機序を説明するための図である。
【0030】
まず、図2(a)に示すように、液滴吐出ヘッド60のノズル形成面63にキャップ31を密着させて、吐出口61全体を凹部45で覆い、必要に応じて第1の通路33に設けられた第1の開閉弁49(図2(a)中、図示略)を閉じることにより、吐出口61を吸引するための閉空間を形成する。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、ポンプ39(図2(b)中、図示略)により第2の通路35を介してキャップ31内を吸引する。第2の通路35は、気液分離膜41を介して第1の通路33に接しており、気液分離膜41は液体65は透過し難いが気体は容易に透過し得るので、ポンプ39を作動させることにより、キャップ31内の気体は第1の通路33及び気液分離膜41を通って第2の通路35に移行されることになる。これにより、キャップ31内が減圧されるので、吐出口61内の液体65がキャップ内に排出されることになる。少なくとも第1の通路33の気液分離膜41で構成された領域(気液分離膜から構成されるチューブ)に液体65が充填されると、気液分離膜41を液体65が覆って吸引力が低下してしまうので、液体65の移動が止まる。これにより、吐出口61から排出される液体65の量が所定量に制限されることになる。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、液滴吐出ヘッド60をキャップ31から取り外し、キャップ31内及び第1の通路33内に溜まった液体65をポンプ47で吸引することにより、外方に排出する。この際、ポンプ47の吸引力をさらに向上させるため、第2の通路35に設けられた第2の開閉弁53を閉じることにより、第1の通路の密閉性を高めてもよい。このように、気液分離膜41を用いているため、吐出口61から吸引される液体65の量を制限し得る一方で、液体65を排出する流路を別途設けているので、液体65の廃棄も容易に行うことが可能となる。なお、この際、液滴吐出ヘッド60のノズル形成面63に付着した液体65は、ノズル形成面63をゴムブレードでかきとることにより除去することが可能である。
【0033】
また、吐出口61からの液体65の吸引量が十分でない場合には、上記図2(b)の吸引操作を繰り返し行ってもよい。
【0034】
上述した吸引装置30を用いた吸引動作を利用して、液滴吐出ヘッド60のメンテナンスを行うことが可能である。
【0035】
具体的には、例えば、上記動作を利用して、リザーバタンクに収容された吐出液体(例:インク、生体試料溶液等)をインクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドのノズル先端にまで充填させる操作(プライミング)を行うことができる。
【0036】
また、例えば、ノズル孔内の増粘した吐出液体や残留する気泡を除去する操作(サッキング)を行うことができる。
【0037】
なお、吸引装置30の停止時においては、キャップ31を液滴吐出ヘッド60の乾燥防止のために用いてもよい。
【0038】
本実施形態によれば、気液分離膜41を介して吸引することにより、液滴吐出ヘッド60から排出される液体65の排出量を制限することが可能となる。また、液体65の流れる通路(第1の通路33)と気体の流れる通路(第2の通路35)を分離することができるので、液体65を容易に排出することが可能となる。したがって、液滴吐出ヘッド60内に溜まった増粘物質、気泡、汚染液等を除去する際や液滴吐出ヘッド60の吐出口61先端に液体65を充填する際といった、液滴吐出ヘッド60をメンテナンスする際に、液体65の浪費を低減することが可能となる。また、第1の吸引手段としてのポンプ39が、液体を嫌うもの(液体の流入によりポンプ39の機能が低下するもの)であっても、液体65の流入を回避し得るので、液体による装置の劣化を軽減することが可能となる。したがって、第1の吸引手段として使用し得る装置の選択の幅が広がる。
【0039】
なお、上記例においては、第1の吸引手段と第2の吸引手段として別々の装置(ポンプ39及びポンプ47)を用いたが、同一の装置(ポンプ)を用いてもよい。
【0040】
図3は、本発明に用いられる吸引装置30の他の例を示す図である。図3に示すように、本例では、第1の通路33及び第2の通路35を一のポンプ55により吸引可能に構成されている。本例の吸引装置30では、ポンプ55と第1の通路33及び第2の通路35とを各々繋ぐ、二股に分岐された第3の通路57を備えている。第1の通路33及び第2の通路35に各々繋がれた分岐通路59a及び59bには、第1の開閉弁49及び第2の開閉弁53が各々設けられており、上述した開閉弁の機能に加え、第1の通路33と第2の通路35の吸引を選択可能にしている。具体的には、例えば図示せぬ制御部(CPU:中央処理装置)により、第1の通路33の吸引時に第1の開閉弁49を開き、第2の開閉弁53を閉じるように指示し、第2の通路35の吸引時には、第2の開閉弁53を開き、第1の開閉弁49を閉じるように指示するよう構成されていてもよい。なお、第1の開閉弁49及び第2の開閉弁53としては、例えば電磁バルブ等を用いることができる。また、ポンプ55としては、ポンプ39,47として例示したものと同様のものが用いられる。
【0041】
このような動作を行うことにより、液滴吐出ヘッド60の種々のメンテナンスが可能となる。
【0042】
上記吸引装置30は、印刷装置やマイクロアレイの製造装置等の液滴吐出ヘッドを利用する装置に好適に用いられる。
【0043】
次に、上記吸引装置30を備えた印刷装置及びマイクロアレイの製造装置の一例について説明する。
【0044】
図4は、本実施形態のインクジェット印刷装置を説明するための図である。
図4に示すように、本実施形態のインクジェット印刷装置10は、キャリッジ11、液滴吐出ヘッド60、インクカートリッジ(リザーバタンク)13、キャリッジモータ14、タイミングベルト15、ガイド部材16、ブラテン17及び吸引装置30から要部が構成されている。
【0045】
キャリッジ11は、液滴(インク滴)を吐出する液滴吐出ヘッド60及び液滴吐出ヘッド60にインクを供給するインクカートリッジ13を搭載し、搬送するためのものである。キャリッジ11は、キャリッジモータ14により駆動されるタイミングベルト15に結合されており、ガイド部材16に案内されてプラテン17の主軸と平行(主走査方向X)に往復移動するように構成されている。記録媒体20の送り方向(副走査方向Y)は、主走査方向Xと直交している。
【0046】
液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)12は、ノズル孔から液滴を記録媒体20に吐出するものであり、キャリッジ11下部の記録媒体20に対向する側に装備されている。液滴吐出ヘッド60は、静電アクチュエータ、圧電方式のアクチュエータ、サーマル方式のいずれの方式を採るものであってもよい。
【0047】
インクカートリッジ(タンク)13は、液滴吐出ヘッド60に供給するインク(液体)を貯留する容器であり、不図示の接続部を介して液滴吐出ヘッド60上に取り付けられている。なお、本実施形態では、インクカートリッジ13は液滴吐出ヘッド60と別体として構成されているが、一体に構成されていてもよい。
【0048】
吸引装置30は、上述のように、液滴吐出ヘッド60のノズル孔を外部から吸引するための装置である。吸引装置30は、印刷領域外に位置する液滴吐出ヘッド60の格納位置(ホームポジション)に設置される。吸引装置30は、シリンダ又はボールネジ機構等により昇降可能に構成されている。これにより、必要に応じて、吸引装置30を液滴吐出ヘッド60のノズル開口面(ノズル形成面)まで移動させることが可能となる。なお、キャップ31のみが昇降可能になるよう構成されていてもよい。
【0049】
図5は、本実施形態のマイクロアレイの製造装置を説明するための図である。
図5に示すように、本実施形態のマイクロアレイの製造装置100は、基台101、X軸方向に往復移動する液滴吐出ヘッド60、Y軸方向に往復移動しマイクロアレイ基板105を載置するテーブル103、及び、液滴吐出ヘッド60の格納位置(ホームポジション)に吐出液体充填用の吸引装置30を備えている。なお、図5において、104は液滴吐出ヘッド60及びテーブル103の駆動部であり、液滴吐出ヘッド60及びテーブル103は、例えば、タイミングベルト機構やボールネジ機構等を用いて数値制御方式等により移動させることができる。
【0050】
液滴吐出ヘッド60は、DNA又はタンパク質等を含む生体試料溶液をマイクロアレイ基板105上に吐出するものである。液滴吐出ヘッド60は、外部に液滴を吐出するヘッド部とヘッド部に生体試料溶液を供給する貯留部(タンク)が一体的に形成されていても、別体として形成されていてもよい。
吸引装置30は、上述したものと同様のものを用いることが可能である。
【0051】
なお、本発明の吸引装置30は、このような印刷装置又はマイクロアレイの製造装置だけでなく、液滴吐出ヘッド60を利用するいかなる装置の吐出口の吸引に用いられてもよい。したがって、例えば、金属配線等の形成に用いられる液滴吐出ヘッドの吐出口61の吸引に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る吸引装置を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施形態の吸引装置30の動作機序を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明に用いられる吸引装置30の他の例を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態のインクジェット印刷装置を説明するための図である。
【図5】図5は、本実施形態のマイクロアレイの製造装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
10・・・インクジェット印刷装置、11・・・キャリッジ、13・・・インクカートリッジ、14・・・キャリッジモータ、15・・・タイミングベルト、16・・・ガイド部材、17・・・プラテン、20・・・記録媒体、30・・・吸引装置、31・・・キャップ、33・・・第1の通路、35・・・第2の通路、37・・・排出部、39・・・ポンプ、41・・・気液分離膜、43・・・空間(閉空間)、45・・・凹部、47・・・ポンプ、49・・・第1の開閉弁、51・・・空間、53・・・第2の開閉弁、55・・・ポンプ、57・・・第3の通路、59a,b・・・分岐通路、60・・・液滴吐出ヘッド、61・・・吐出口、63・・・ノズル形成面、65・・・液体、100・・・マイクロアレイの製造装置、101・・・基台、103・・・テーブル、105・・・マイクロアレイ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの吐出口を外部から吸引する吸引装置であって、
前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面を凹部で覆うキャップと、
前記キャップに接続される第1の通路と、当該第1の通路に気液分離膜を介して接する第2の通路とを有する排出部と、
前記第2の通路に接続されて前記キャップ内を吸引する第1の吸引手段と、
を備えることを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記第1の通路に接続される第2の吸引手段を更に備える、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記第1の通路に設けられる第1の開閉弁を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記第2の通路に設けられる第2の開閉弁を更に備える、請求項1〜3のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項5】
前記第1の通路がチューブから構成される、請求項1〜4のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項6】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの吐出口を外部から吸引する吸引装置であって、
前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面を凹部で覆うキャップと、
前記キャップに接続される第1の通路と、当該第1の通路に気液分離膜を介して接する第2の通路とを有する排出部と、
前記キャップ内を前記第1又は第2の通路を介して選択的に吸引する吸引手段と、
を備えることを特徴とする吸引装置。
【請求項7】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、請求項1〜6のいずれかに記載の吸引装置とを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、請求項1〜6のいずれかに記載の吸引装置とを備えることを特徴とするマイクロアレイの製造装置。
【請求項9】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの吐出口を外部から吸引する工程を含む液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、
前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面をキャップの凹部で覆う第1過程と、
前記キャップに接続される第1の通路に気液分離膜を介して接する第2の通路を吸引することにより、前記キャップ内を吸引する第2過程と、
前記液滴吐出ヘッドの吐出口が形成された面から前記キャップを取り外した後、前記第1の通路を吸引することにより液体を排出する第3過程と、
を含むことを特徴とする液滴吐出ヘッドのメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−76064(P2006−76064A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260957(P2004−260957)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】