説明

吸気弁閉鎖油圧アジャスタ

【課題】内燃エンジンにおいて、エンジンシリンダ弁がエンジンサイクル中の種々の時期に閉鎖することができるようにするための機構体を提供する。
【解決手段】本発明の機構体(40)は、油圧アクチュエータ(58)及び制御弁(60)を有し、制御弁は、a)シリンダ弁(18)が次第に大きく開かれている間、弁ロッカ(52)のピボット軸を拘束して移動できないようにし、b)シリンダ弁が開かれた後にかかる拘束を解除してピボット軸が移動可能になって吸気弁を早期に閉じることができ、それにより早期IVCを提供するよう油圧アクチュエータを制御する。油圧スナッバ(64)が、油圧アキュムレータ(62)に対するスケジュール設定幾何学形態によってシリンダ弁の閉鎖運動を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容、即ち本発明は、内燃エンジンに関し、特に、エンジンシリンダ弁の動作タイミング、特にシリンダ吸気弁の閉鎖タイミングを制御する機構体に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンにおいて段階的に行われる燃焼の制御は、EGR(排気ガス再循環)方式、燃料噴射タイミング方式及びシリンダ冷却方式に利用されると有用である。しかしながら、較正が不良であると、望ましくないエンジン作動、例えばEGR率が高い範囲で失火(ミスファイヤ)が時々生じる場合がある。非一様なEGR分布又はシリンダ内冷却によっても、燃焼の段階的発生についてシリンダごとのばらつきが生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願人は、個々のエンジンシリンダごとに吸気弁閉時期(IVC)の制御により多シリンダ(多気筒)型ディーゼルエンジンの良好な全体的制御を得ることができるということを確信している。燃焼段階的発生フィードバック、例えばシリンダ圧力又はイオン検出技術の存在により制御を一段と向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示内容は、可変弁作動(VVA)、特にシリンダ圧縮比を効果的に制御するための個々のエンジンシリンダ用の吸気弁の可変閉時期をもたらすよう個々のエンジンシリンダに利用できる機構体に関する。
【0005】
本出願人は、ターボチャージャ(ターボ過給機)システム及びEGR制御と組み合わせた場合、リーンNOxトラップ(LNT)又はSCR(選択的触媒還元)触媒を収容した高価な後処理システムを用いる必要なくNOxを制限するレベルまでエンジンにかかる負荷を軽減する必要なく、エンジン排気ガス中のNOxを制限することができる。
【0006】
本開示内容の概略的な態様は、内燃エンジンであって、吸気系統を有し、空気が吸気系統を通って少なくとも1つのエンジンシリンダに入り、空気は、エンジンシリンダ内においてエンジンを作動させるよう燃料の燃焼を支援し、排気系統を有し、シリンダ内燃焼の生成物が排気系統を通って排出されるようになっている内燃エンジンに関する。シリンダ弁が吸気系統及び排気系統と少なくとも1つのシリンダとの連通を制御する。
【0007】
シリンダ弁のうちの1つは、弁座に着座するよう弁ばねによって付勢されて閉じられるが、移動可能な軸を中心に回動しシリンダ弁が次第に開くにつれて弁バネを圧縮する弁開放機構体のロッカによって次第に開かれる。
【0008】
油圧アクチュエータが、1つのシリンダ弁がロッカによって次第に大きく開かれているときに移動可能な軸を油圧の作用でロックして移動できないようにし、1つのシリンダ弁が開いた状態で、弁ばねが次第に拡張すると同時に1つのシリンダ弁を弁座に向かって押し進めると共に移動可能な軸が移動できるよう移動可能な軸をロック解除する。
【0009】
作動油圧力源が作動油を、第1の逆止弁を通って弁座に向かう1つのシリンダ弁の運動を抑制するよう配置された油圧スナッバの可変容積チャンバに送り出し、そして第2の逆止弁を通ってアクチュエータの可変容量チャンバに送り出し、次いでスナッバチャンバ及び制御弁の第1のポートと流体連通状態にある油圧アキュムレータに送り出し、制御弁は、アクチュエータチャンバと流体連通状態にある第2のポートを有する。
【0010】
スナッバの可変容量チャンバは、抑制要素とスナッバ本体との協働によって構成され、抑制要素は、スナッバ本体に対して伸長したり引っ込んだりすることができる。
【0011】
抑制要素とスナッバ本体は一緒になって、可変絞りを構成し、スナッバの可変容量チャンバは、可変絞りを介してアキュムレータ、作動油圧力源、及び制御弁の第1のポートと流体連通状態にあり、可変絞りは、抑制要素がスナッバ本体に対して伸長したり引っ込んだりすると、それぞれ縮小したり拡大したりする。
【0012】
作動油源とアキュムレータは一緒になった状態で、弁開放機構体が1つのシリンダ弁を次第に大きく開いているとき、作動油をスナッバチャンバ内に押し込み、それにより抑制要素をスナッバ本体に対して伸長させるのに有効である。
【0013】
弁開放機構体によって1つのシリンダ弁が次第に大きく開かれている間、制御弁は、1つのシリンダ弁を弁座から離脱させる前にアクチュエータチャンバ内に押し込まれた作動油がアクチュエータチャンバから逃げ出るのを阻止することによって、アクチュエータを油圧の作用でロックするよう第1のポートを第2のポートに対して閉じる。
【0014】
1つのシリンダ弁が開いている状態で、制御弁は、第1のポートを第2のポートに対して開き、それにより、アクチュエータチャンバをアキュムレータに連通させることによってアクチュエータをロック解除し、その結果、弁ばねは、1つのシリンダ弁が弁ばねによって弁座に向かって押し進められたり1つのシリンダ弁が弁座に向かって動いているときに絞りが次第に拡大している状態で、抑制要素を引っ込めて作動油をスナッバチャンバから押し出してこれをアキュムレータ内に押し込むようにするスナッバとの相互作用によって1つのシリンダ弁が抑制されたりしているときに、作動油をアクチュエータチャンバから押し出してこれをアキュムレータに押し込むことができる。
【0015】
本開示内容の別の一般的態様は、エンジンシリンダ弁と関連した機構体であって、エンジンシリンダ弁は、弁ばねによって付勢されて弁座に着座した状態で閉じられたりエンジンサイクル中、種々の時点でシリンダ弁に開放状態から閉鎖状態への作動能力を与える弁開放機構体の弁ロッカにより開かれたりするようになった機構体に関する。
【0016】
この機構体は、可変容量チャンバを備えた油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを、a)弁開放機構体が弁ロッカを作動させてシリンダ弁を次第に大きく開くと共に弁ばねを次第に強く圧縮している間、弁ロッカのピボット軸を拘束して移動できないようにし、b)弁ばねが次第に伸長してシリンダ弁を弁座に着座した閉鎖状態に向かって動かしているときに、ピボット軸が移動できるようにするためにシリンダ弁が開かれた後、拘束を解除するよう制御する制御弁とを有する。
【0017】
第1の逆止弁が作動油圧力源及び作動油圧力源と流体連通状態にある油圧アキュムレータからの作動油を導入してチャンバの容積を拡張することができると共に作動油がチャンバから逆流することができないようにする。
【0018】
油圧スナッバが弁座に着座した閉鎖状態に向かうシリンダ弁の運動を抑制する可変容量チャンバを備える。
【0019】
第2の逆止弁が作動油圧力源からの作動油がスナッバチャンバの容積を拡張することができるようにすると共に作動油がスナッバチャンバから逆流することができないようにする。
【0020】
スナッバの可変容量チャンバは、抑制要素とスナッバ本体の協働によって構成され、抑制要素は、第2の逆止弁を通ってスナッバ内に導入された作動油によってスナッバ本体に対して伸長される。
【0021】
抑制要素とスナッバ本体は協働して、可変絞りを構成し、スナッバチャンバは、可変絞りを介してアキュムレータと連通し、可変絞りは、抑制要素がスナッバ本体に対して引っ込んでいるときに変化する。
【0022】
制御弁は、アクチュエータチャンバをアキュムレータに対して閉鎖することによりアクチュエータがピボット軸を拘束して移動できないようにする機能及びアクチュエータチャンバをアキュムレータに対して開放することによりアクチュエータが拘束を解除し、その結果、弁ばねがロッカを介して作用して作動油がアクチュエータチャンバから押し出してアキュムレータ内に押し込み、抑制要素とのシリンダ弁の相互作用により、抑制要素が次第に引っ込められるにつれて可変絞りによる作動油の流れの絞りが次第に大きくなる状態で、作動油をスナッバチャンバから押し出してこれをアキュムレータ内に押し込むことができるようにする機能を実行する。
【0023】
本開示内容は又、弁ばねによって付勢されて弁座に着座した状態で閉じられ、エンジンサイクル中、弁開放機構体の弁ロッカを移動可能な軸を中心に回動させることにより開かれるエンジンシリンダ弁を作動させる方法であって、弁座に向かうエンジンシリンダ弁の閉鎖運動が油圧スナッバによって抑制されるようになっている方法に関する。
【0024】
この方法は、第1の逆止弁を介してスナッバの可変容量チャンバを作動油圧力源に連通させてスナッバチャンバ内への作動油の流れを可能にすると共にスナッバチャンバからの逆流を不可能にするステップと、第2の逆止弁を介して油圧アクチュエータの可変容量チャンバを作動油圧力源と流体連通状態にある油圧アキュムレータに連通させて作動油がアクチュエータチャンバ内に流れることができるようにすると共にアクチュエータチャンバから逆流することができないようにするステップと、制御弁を介してアクチュエータチャンバを作動油圧力源、スナッバチャンバ、及びアキュムレータに連通させるステップと、制御弁を、a)弁開放機構体が弁ロッカを作動させてシリンダ弁を次第に大きく開くと共に弁ばねを次第に強く圧縮し、それによりシリンダ弁開放中、アクチュエータを油圧の作用でロックすることにより弁ロッカの移動可能な軸を拘束して移動できないようにし、b)シリンダ弁を開いた後にアキュムレータ、作動油圧力源、及びスナッバチャンバに対してアクチュエータを開き、それにより弁ばねが次第に伸長して流体をアクチュエータチャンバから押し出してシリンダ弁を弁座に着座した閉鎖状態に向かって動かしているときに移動可能な軸が移動できるようにアクチュエータをロック解除することによって拘束を解除するよう選択的に作動させるステップと、シリンダ弁が弁座に向かう閉鎖運動中、スナッバと相互作用しているときに、弁ばねがシリンダ弁を弁座に向かって押し進めることによりスナッバがスナッバチャンバから押し出されている作動油の流れを次第に絞ることによって閉鎖運動を抑制するステップとを有する。
【0025】
本開示内容の別の態様は、弁座に対するエンジンシリンダ弁の閉鎖運動を抑制する油圧スナッバに関する。
【0026】
このスナッバは、抑制要素とスナッバ本体の協働によって構成される可変容量チャンバを有し、抑制要素は、スナッバ本体に対して直線的に変位可能であり、スナッバは、源ポートを更に有し、作動油圧力源からの作動油を源ポートを通って可変容量チャンバに送り出して抑制要素をスナッバ本体に対して直線伸長方向に油圧の作用で付勢することができ、スナッバは、ドレンポートを更に有し、シリンダ弁の閉鎖運動が抑制要素をスナッバ本体に対して直線引っ込み方向に押しやっているときに可変容量チャンバからの作動油をドレンポートから排出することができ、スナッバは、可変絞りを更に有し、抑制要素を直線引っ込み方向に変位させると、可変容量チャンバ内の作動油が可変絞りを通ってドレンポートまで押しやられる。
【0027】
可変絞りは、抑制要素のテール側端部の中空円筒形壁部分を貫通して延び、抑制要素を直線引っ込み方向に変位させると、抑制要素のテール側端部の中空円筒形壁部分を包囲しているスナッバ本体の円筒形壁部分の内面に設けられたアンダーカットを横切って動くスケジュール設定孔幾何学的形態を有する。
【0028】
本開示内容の別の態様は、VVA(可変弁作動)機構体を有する内燃エンジンにおける早期IVC(吸気弁閉時期)を利用する方法であって、VVA機構体は、弁ばねによって付勢されて閉じられるシリンダ吸気弁を開放するようプッシュロッドの運動を伝達する手段としてのロッカのピボット軸の存在場所を制御する油圧アクチュエータ及びピボット軸の存在場所が早期IVCをもたらさない規定された場所から遠ざかって早期IVCをもたらす場所まで動くことができるようにしたり動くことができないようにしたりするためにアクチュエータを油圧的にロック解除したりロックしたりするよう選択的に開閉される選択的に動作可能な制御弁を有するような方法に関する。
【0029】
この方法は、エンジンクランキング中に制御弁を開いて、ピボット軸が規定された場所から早期IVCをもたらす場所に動くようにする弁ばねの作用によって、幾分かの油及び同伴空気をアクチュエータから押し出して加圧油源と流体連通関係にあるアキュムレータ内に押し込む或る程度の早期IVCをもたらすステップと、吸気弁が閉じた後、制御弁を油がアキュムレータからアクチュエータに戻ってピボット軸を規定された場所に動かすことができるのに十分長く開放状態に保つステップとを有する。
【0030】
本開示内容の細部を伴う上述の発明の概要は、本開示内容の一部をなす以下の図面を参照して以下の詳細な説明の項目に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ディーゼルエンジンの一シリンダの全体図である。
【図2】4つのエンジンシリンダのバンク(列)の略図であり、本開示内容の機構体がエンジンシリンダの各々と関連している状態を示す図である。
【図3】シリンダ吸気弁が開いているときのエンジンシリンダ中の一時点におけるシリンダのうちの1つ及びその関連機構体の拡大図である。
【図4】図3に類似しているが、エンジンサイクル中の別の時点における略図である。
【図5】機構体それ自体の装置のうちの1つを示す部分縦断面図である。
【図6】図5の6‐6線矢視横断面図である。
【図7】エンジンサイクル中における機構体の作動の一態様を説明するのに有用なグラフ図である。
【図8】エンジンサイクル中における機構体の作動の別の態様を説明するのに有用なグラフ図である。
【図9】エンジンサイクル中における機構体の作動の別の態様を説明するのに有用なグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、自動車に動力を供給する内燃エンジン10、例えばディーゼルエンジンの一部分を示している。
【0033】
エンジン10は、吸気系統12を有し、給気がこの吸気系統を通ってエンジン10の吸気マニホルド14に送り出される。給気は、マニホルド14から対応の吸気弁18を経て各エンジンシリンダ16に流入する。個々の燃料噴射装置20がディーゼル燃料をエンジン作動に対して適正に調時された関係をなして(正しくタイミングが取られた関係をなして)個々のエンジンシリンダ内に噴射する。噴射された燃料は、シリンダ内の高温圧縮空気の存在下で燃焼してロッド24によりクランクシャフト26に連結されたピストン22のパワーストローク(動力行程)を生じさせる。
【0034】
エンジン10は、エンジンシリンダ内における燃焼により生じた排気ガスをエンジンから運搬排出する排気系統28を更に有している。排気ガスは、各シリンダからそれぞれの排気弁30を経て出る。
【0035】
各シリンダのところの常閉の吸気弁及び排気弁は、図中、吸気弁18については参照符号32で示されると共に排気弁30については参照符号34で示された機構体によってエンジンサイクル中、適当な時点で開閉される。
【0036】
ディジタル処理機能を備えた電子エンジン制御モジュール(ECM)36がエンジン10と関連している。ECM36は、種々の入力データ信号源からのデータをプログラムされたアルゴリズムに従って処理してエンジン10の作動と関連した種々の機能の性能に用いられる信号に関する或る特定のデータを生じさせる1つ又は2つ以上のプロセッサを有する。
【0037】
エンジン10のターボ過給は、具体的には示されていないターボチャージャ(ターボ過給機)によって達成される。エンジン10は、これ又具体的には示されていないEGRシステムを更に有している。
【0038】
図2は、各々がそれぞれ対応のエンジンシリンダのための4つの機構体40を示している。各機構体の種々の装置の可動要素の図示の位置は、必ずしもエンジン作動中においてこれら可動要素が占める正確な位置である必要はないといえる。というのは、図2は、単に種々の装置を紹介すると共にこれらが各機構体内にどのように配置されているかを示すに過ぎないからである。機構体の可動要素の実際の作動については他の図と関連して後で説明する。理解されるべきこととして、シリンダは、特定の発火順序を備えているので、シリンダのエンジンサイクルは又、位相外れになり、それにより各機構体40の可動要素の位置も又、他の機構体の可動要素の位置に対して位相外れになる。
【0039】
各吸気弁18は、シリンダヘッド42に設けられている弁座に着座したりこれから離脱したりするヘッド18Hを有する。ばね44が、各ヘッド18Hを付勢してこれをそれぞれの弁座に着座させ、それによりそれぞれのシリンダを吸気マニホルド14に対して閉鎖する。
【0040】
各吸気弁のための弁開放機構体46が、カムシャフト50に取り付けられたそれぞれのカム48と、それぞれのロッカ52とを有している。各ロッカ52は、移動可能な軸54を中心に回動することができ、各ロッカは、互いに反対側に位置した端部を有し、これら端部のうちの一方は、ロッカとそれぞれの吸気弁との間の相互作用箇所を提供し、他方の端部は、それぞれのカム48により作動されるプッシュロッド56の端部とのその相互作用箇所を提供する。
【0041】
各機構体40は、油圧アクチュエータ58と、迅速作用制御弁60と、アキュムレータ62と、油圧スナッバ64と、2つの逆止弁66,68とを有している。機構体40によって用いられる作動油は、油レール70からの油によって提供され、この油レールは、燃料噴射器の形式に応じて、燃料をシリンダ16内に噴射する燃料噴射器20に油を供給することも可能であり、この油レールは、ポンプ72によって加圧油で満杯状態に保たれ、ポンプ72は、油受74からの油を、逆止弁76を通って油レール中に圧送する。
【0042】
アクチュエータ58は、可変容量チャンバ78を有し、可変容量チャンバ78は、油をこのチャンバ内に導入するときに内部ピストン80をアクチュエータの一端部に向かって押すことによって拡張する。ピストンロッド82が、このピストンの一端部から突き出ていて、ピストン80と一緒に動き、チャンバが拡張するにつれて次第に伸長する。ピストンロッド82の遠位端部は、円筒形ピン84によってロッカ52にピン止めされ、円筒形ピンの長手方向軸は、軸54と一致している。
【0043】
アクチュエータチャンバ78が、弁60の1つのポート86と連通している。弁60の別のポート88がアキュムレータ62、油レール70及びスナッバ64の1つのポート90と連通している。油レール70からの油が、逆止弁68を通ってスナッバ64の別のポート92に供給される。油レール70からの油は、逆止弁66を通ってアクチュエータチャンバ78にも供給される。
【0044】
弁60は、ポート90とポート92との間の流れを阻止するようばね付勢状態で閉じられているが、この弁は、電気信号によって作動されると、流体がその2つのポート相互間で流れることができるよう弁を開く電気オペレータ60Aを有する。
【0045】
図2は、閉鎖状態にある各シリンダ吸気弁18、それぞれのカム48のローブから外れた各プッシュロッド56及び同一位置にある各機構体の可動部品を示しており、この図の記載は、上述の互いに異なる発火順序を反映していない。次に、図3及び図4を参照して図2に示されている位置から始まる1つのシリンダのための機構体40の作動について説明する。
【0046】
カムシャフト50が図2の位置から反時計回りの方向に回ると、カム48のローブは、プッシュロッド56を上方に押し、それによりロッカ52は、軸54を中心に反時計回りに回動し、弁18を離脱させ、このプロセスにおいてばね44を更に圧縮する。この期間中、アクチュエータ58は、閉鎖状態にある弁60によって油圧の作用でロック状態に保たれ、それにより、チャンバ78内に存在する油が逃げ出るのを阻止し、軸54を拘束して移動できないようにし(即ち、軸54をロックし)、その結果、ロッカ52が第1種てことして働くようになる。アクチュエータ58が油圧の作用でロックされていない場合、プッシュロッド56の上方運動により、ロッカ52は、第2種てことして働くようになる。というのは、先とは異なり、軸54が拘束されていないので、ロッカ52が弁18とのその相互作用箇所を中心に回動し、それにより、軸54に関する上方移動限度に達するまで軸54を動かすからである。
【0047】
アクチュエータ58が油圧の作用でロック状態に保たれていて、ピン84が移動できない限り、弁18の開放は、専らカム48によって制御される。というのは、軸54の一方の側におけるロッカ52の端部に対するばね44の連続作用により、ロッカの反対側端部は、プッシュロッド56の一端部に当接付勢状態に保たれてプッシュロッドの反対側の端部がカムに当たった状態に保たれるからである。このロック状態では、弁18は、早期に開くことができない。
【0048】
図3は、弁18が実質的に完全に開いた状態を示している。早期閉鎖がECM36内に入っている特定のエンジン制御方式にとって適切である場合、各機構体40は、ピン84が移動できるようにすることによって各エンジンシリンダのための早期IVCをもたらす。弁18が開いた状態では、早期IVCは、制御弁60が開くようにするよう電気オペレータ60Aに対して働くECM36からの信号によって開始され、それによりアクチュエータ58がロック解除されてピン84が移動可能になる。ポート86がポート88に対して開かれている状態では、アクチュエータチャンバ78内の油は、弁60を通って押し出される。というのは、軸54がアクチュエータのロック解除によりロック解除状態になるので、ロッカ52が第2種てことして働くことができ、ばね44は、プッシュロッド56とのロッカの相互作用箇所を中心としてロッカを時計回りに回動させるからである。ロッカ52がこのように回動されている状態で、ピストンロッド82は、アクチュエータ58内に引っ込むようになり、それにより、ピストン80を押してチャンバ容積が収縮するにつれて油をチャンバ58から押し出す。
【0049】
アキュムレータ62は、開放状態の弁60を通ってチャンバ78に対して直接連通されるので、油レール70が油を受け入れる時点で備える機能がどのようなものであるかに関わらず、アクチュエータ58から押し出されている油を即座に受け入れることができる。というのは、油レールも又、開放状態の弁60を介してチャンバ78に対して開いているからである。アキュムレータ62によって受け入れられた流体は、以下に簡単に説明するように再使用可能状態になる。
【0050】
図4は、上述のアクチュエータ58のロック解除に起因して生じる早期IVC後に着座して閉じられた弁18を示しており、ピン84は、図3に示されている位置から図4に符号84′で示された位置までの距離94にわたり上方に動いている。
【0051】
弁18が次のエンジンサイクル中、カム48によってもう一度開かれる前に、ピン84は、図4の位置84′から図3の位置まで以下の仕方で戻る。
【0052】
弁60は、カム48が引き続き回転しているときに開いたままである。アクチュエータ58から押し出された油を貯蔵しているアキュムレータ62は、その油を弁60を通ってアクチュエータ58内に押し込むことによりこの油を元に戻すよう機能し、それによりピン84及びロッカ軸54を図3の位置に動かす。というのは、プッシュロッド56がカムローブから離れてプッシュロッドが下方に動くことができ、それによりアキュムレータが油をアクチュエータ内に押し込んでピストンロッド82を伸長させることができるからである。プッシュロッドがカムローブからいったん完全に離れると、弁60は、閉じられて軸54が図3の位置にある状態でアクチュエータ58を油圧の作用でロックする。
【0053】
それにより、アキュムレータ62は、油レール70からの油の機構体による消費を最小限に抑えるだけでなく、油を迅速に取り込む機能を発揮することにより、アキュムレータは、弁60が開いているときに迅速な早期IVCを可能にする。
【0054】
スナッバポート90も又、開放状態の弁60を介してアクチュエータチャンバ78に対して直接、連通されている間、スナッバ64は、代表的には、弁18の初期早期閉鎖に影響を及ぼさない。スナッバ64は、図5及び図6を参照して詳細に説明するように、シリンダヘッド42の弁座に着座した閉鎖状態に向かう弁18の最終運動を抑制するよう機能する。
【0055】
スナッバ64は、抑制要素98と本体100との協働によって構成された可変容量チャンバ96を有し、抑制要素は、このスナッバ本体に対して伸長したり引っ込んだりすることができる。抑制要素98は、吸気弁18と相互作用可能に本体100から突き出たヘッド側端部102及び抑制要素98が伸長したり引っ込んだりしているときに本体100内に位置したままであるテール側端部104を有している。
【0056】
スナッバ64は、弁が弁座に近づいているときに弁18の閉鎖運動を抑制するためにポート90とポート92との間における油の流れに対して絞りを提供する。絞りは、一般に、弁が弁座に次第に近づくにつれて大きくなるが、この絞りは、一様に増加するわけではない。絞りが変化する仕方は、テール側端部104の中空円筒形壁部分106を貫通して延びると共に抑制要素98を次第に引っ込めると、中空円筒形壁部分106を包囲しているスナッバ本体100の円筒形壁部分110の内面に設けられたアンダーカット108を横切って動くスケジュール設定孔幾何学的形態(scheduling aperture geometry)によって設定される。図示の実施形態では、スケジュール設定孔幾何学的形態は、4つの別々の貫通孔112,114A,114B,116から成っている。
【0057】
壁部分106は、ヘッド側端部102に対して閉じられており、その結果、スナッバチャンバ96の下方部分を形成する容積部を包囲し、このスナッバチャンバの上方部分は、本体100の壁部分110によって包囲されて頂端壁118によって閉じられている。ポート92は、端壁118の頂部のところに位置し、端壁118に設けられた通路120を介してチャンバ96に通じている。
【0058】
アンダーカット108は、壁部分110周りに360°にわたって延び、このアンダーカットは、これら全体にわたって一定の軸方向寸法を有している。壁部分110に設けられた通路122がアンダーカット108をポート90に連通させている。
【0059】
4つの貫通孔は、各々が互いに円周方向にオフセットするパターンで配列され、貫通孔114A,114Bは、互いに直径方向反対側に位置し、同一の開放面積を有している。貫通孔112は、貫通孔114A,114Bよりもヘッド側端部102から遠くに位置し、貫通孔112は、貫通孔114A,114Bの開放面積の合計よりも大きな開放面積を有している。図6は、貫通孔112から反時計回りの方向にオフセットした貫通孔114A及び時計回りにオフセットした貫通孔114Bを示している。図5は、貫通孔116よりもヘッド側端部102から遠くに位置する貫通孔114A,114Bを示しており、貫通孔114A,114Bは各々、貫通孔116の開放面積よりも大きな開放面積を有している。図6は、貫通孔114Aから反時計回りにオフセットした貫通孔116を示している。
【0060】
スナッバ本体100の底端部は、開口部124を有し、ヘッド側端部102は、この開口部を貫通して突き出ている。油圧の存在下において、ばね126が抑制要素98を付勢し、抑制要素の肩128が開口部124を包囲している本体のリップ130に押し付けられてヘッド側端部102の最大突出距離を設定している。この状態では、チャンバ96は、貫通孔112を介してのみアンダーカット108に対して開かれている。
【0061】
抑制要素98に上向きの力を及ぼす弁18が存在しない場合、レール70内の油の存在により、油は、逆止弁68を通ってスナッバチャンバ96内に流れ、それにより肩128がリップ130に当接するまで抑制要素98を伸長させる。この状態では、スナッバ64は、弁がいったん要素98と相互作用するのに十分動くと、いつでも弁18の閉鎖運動を抑制する状態にある。抑制は、早期IVCが用いられるかどうかにかかわらず起こる。
【0062】
抑制要素98が完全に伸長された状態では、弁ばね44により抑制要素に及ぼされる弁18の上方運動により、この弁が戻るようになり、それによりこのプロセス中においてチャンバ96の容積を収縮させる。容積のこの収縮により、油は、先ず最初に貫通孔112を通り、そして貫通孔114A,114B,116を次々に通り、抑制要素が次第に引っ込められるにつれて、貫通孔のスケジュール設定幾何学的形態に起因して流れに対する絞りが次第に大きくなる。アキュムレータ62がポート90に対して直接通じているので、アキュムレータは、スナッバから強制的に排出されている油を即座に受け入れることができる。
【0063】
その結果、弁の閉鎖運動は、弁座に対する実質的に一定のランディング(着座)速度を保証する仕方で抑制される。というのは、貫通孔116は、弁の最終移動分が再着座状態に近づく間及び符号132で示された距離にわたって移動した後に弁が最終的に再び着座するときに油を通すことができる唯一の貫通孔だからである。
【0064】
図7は、抑制要素98の直線変位の関数としてアンダーカット108に対して提供されるスナッバスケジュール設定幾何学的形態の開放面積、即ちポート90,92相互間の絞りの関係を表すトレース133を含むグラフプロットを示している。水平軸(横軸)は、抑制要素の変位量又はストロークを表し、垂直軸(縦軸)は、アンダーカット108に提供されるスケジュール設定幾何学的形態の対応の開放面積を表している。グラフプロットは、寸法決めではなく、標準化されている。トレース133は、「ゼロ」で始まり、水平軸に沿って「1」で終わる。トレース133は、その始まりのところに、貫通孔116の開放面積に対応した「非ゼロ」値を有する。トレース133は、その終わりのところに、肩128がリップ130に当接している状態に対応した値「1」を有する。本質的にエンジン速度とは独立した一定の吸気弁ランディング速度は、貫通孔116をこれがランディング前の弁の最終移動分の間にアンダーカット108と位置が合うスケジュール設定幾何学的形態の唯一の貫通孔であるように配置することによって達成される。このように、弁は、ランディング速度がエンジン速度範囲全体を通じて実質的に一定である間、公差の可変蓄積範囲内で且つ弁持続時間指令の下で適切に引っ込むことができる。抑制要素98は、弁ランディングランプを超えて且つそれ故に抑制要素が弁閉鎖運動と相互作用することができる長い期間にわたって比較的長いストロークを有することができるので、結果的に生じる短い相互作用時間の間に生じる恐れのある作用効果、例えば一定の応力、圧力変動及び/又は騒音を軽減し又は回避することができる。
【0065】
図8は、スナッバチャンバ96内における圧力に対するアキュムレータ62の作用効果を示している。アキュムレータが存在しない状態では、第1のトレース134は、弁18が開かれると、油レール70がチャンバ96の次第に拡張する容積を満足させることができないということを示している。というのは、符号136で示されたエンジンサイクルの部分中、部分真空がチャンバ96内に引かれ、即ちキャビテーションが生じるからである。アキュムレータ62は、抑制要素98が次第に伸長するにつれて絞りが次第に小さくなるスナッバの可変絞りを介して追加の油源をチャンバ96に提供することによってキャビテーションを軽減する。トレース138は、スナッバチャンバ内に引かれる真空が存在しないことを示している。
【0066】
図9は、早期IVCありのエンジンサイクル及び早期IVCなしのエンジンサイクルの一部分をグラフ表示している。トレース140は、アクチュエータ58を油圧の作用でロック状態に保つことにより早期IVCなしで生じる弁運動を示している。トレース142は、早期IVCを生じさせるよう制御弁60が開いている状態を示している。制御弁60の開放に応答して、トレース144は、弁18が早期に閉じ始め、早期IVCなしの場合よりも早期に再び着座して閉鎖状態になることを示している。弁60は、弁18を再び着座させた後にのみ閉じてアクチュエータ58を再びロックするようになっている。トレース145は、肩128が完全伸長状態でリップ130に当接するまで吸気弁が開いているときに抑制要素98が伸長している状態を示している。
【0067】
機構体40をエンジン動弁装置(バルブトレーン)と関連可能な「ボルトオン(bolt-on )」ユニットとして製作するのが良い。迅速作用弁60とアクチュエータ58は、閉鎖指令に応答して吸気弁の閉鎖を迅速に開始させるよう相互作用する。
【0068】
軸54が移動可能であることにより、機構体40は、a)IVC調節指令が存在しない場合に油圧リフタとしての機能と、b)それぞれのアクチュエータ58、迅速作用弁60及びスナッバ64の幾何学的形態によって定められる速度でそれぞれの吸気弁を閉鎖する引っ込み要素としての機能の両方を実行することができる。吸気弁のランディング速度は、弁60に適用される制御アルゴリズム及び面積が一定のランディング速度を規定し、「遅い」穴、即ち貫通孔116が吸気弁をあらゆる条件下において着座させることができるようにするユニークなスケジュール設定面積幾何学的形態という特徴を有する特定のスナッバ設計のうちの一方又はこれらの組み合わせによって設定され又は制御される。
【0069】
アキュムレータ62がアクチュエータ58からの油を受け取ってこの油のうちの少なくとも何割かをエンジンサイクル中の適当な時点でスナッバ64に迅速に送り出すことができるので、抑制要素98は、比較的長い直線ストロークを有し、図8にトレース134によって例示されているキャビテーションを回避することができる。アキュムレータは、アクチュエータ58と油レール70の両方に連通されるので、機構体40は、迅速作用弁60に適した速度で動作しながら各エンジンサイクル中、「新たな」油を比較的僅かしか使用しない。
【0070】
エンジン10が或る期間にわたり作動停止される場合、幾分かの漏れが生じる場合があり、その結果、幾分かの圧力が失われると共にアクチュエータ58を含む機構体40の油圧系に気泡が生じる。機構体の性能に対するかかる気泡の作用効果を軽減し又は実際には完全に回避するため、機構体及びエンジンは、エンジンがそれ自体の動力下で作動を始める前に、特定の仕方で作動される。
【0071】
エンジンがクランキングされているとき、空気をアクチュエータ58からパージする目的で迅速作用弁60を対応のエンジンシリンダにとってサイクルの適当なクランク角度で開いて或る程度の早期IVCで引き起こす。弁60の開放により、アクチュエータ58がロック解除され、その結果、ロッカ52に作用しているばね44の力が幾分かの油及びこの油が含んでいる場合のある同伴空気をアクチュエータ58から押し出してアキュムレータ62及び/又は油レール70内に押し込む。吸気弁18が閉じた後でも、迅速作用弁60は、閉じられる前に、アキュムレータ62が弁60を通って油を戻してアキュムレータ58内に押し込むことができ、それによりピン84が図3の位置に戻るようになるのに十分長く開いたままである。エンジンクランキング中におけるこのプロセスの続行により、失われた圧力が取り戻され、気泡がなくなる。空気パージの目的のための早期IVCの程度は、エンジンを始動させる性能を損なわないよう制御される。
【0072】
エンジンがいったん始動し、そして加速してそれ自体の動力下でアイドリングすると、アクチュエータ58の空気パージを続行させるのに、迅速作用弁60を特定のシリンダについてエンジンサイクル中、早期に開いてアイドリング速度がクランキング速度よりも高くなるようにするのが良い。或る程度の期間の経過後、機構体40の空気パージ方式が終了し、機構体40は、特定のエンジン作動条件にとって適当なECM36内における1つ又は複数の他の可変弁作動(VVA)方式がどのようなものであれ、これによって制御される。
【符号の説明】
【0073】
10 エンジン
12 吸気系統
14 吸気マニホルド
16 エンジンシリンダ
18 吸気弁
20 燃料噴射装置
22 ピストン
24 ピストンロッド
26 クランクシャフト
28 排気系統
30 排気弁
36 電子エンジン制御モジュール(ECM)
46 弁開放機構体
48 カム
50 カムシャフト
52 ロッカ
54 移動可能な軸
56 プッシュロッド
58 油圧アクチュエータ
60 迅速作用制御弁
62 アキュムレータ
64 油圧スナッバ
66,68 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンであって、
吸気系統を有し、空気が前記吸気系統を通って少なくとも1つのエンジンシリンダに入り、前記空気は、前記エンジンシリンダ内において前記エンジンを作動させるよう燃料の燃焼を支援し、
排気系統を有し、シリンダ内燃焼の生成物が前記排気系統を通って排出され、
前記吸気系統及び前記排気系統と前記少なくとも1つのシリンダとの連通を制御するシリンダ弁を有し、前記シリンダ弁のうちの1つは、弁座に着座するよう弁ばねによって付勢されて閉じられるが、弁開放機構体のロッカが移動可能な軸を中心に回動して前記弁ばねを次第に強く圧縮することによって次第に大きく開かれ、
前記1つのシリンダ弁が前記ロッカによって次第に大きく開かれているときに前記移動可能な軸を油圧の作用でロックして移動できないようにし、前記1つのシリンダ弁が開いた状態で、前記弁ばねが次第に拡張すると同時に前記1つのシリンダ弁を前記弁座に向かって押し進めると共に前記移動可能な軸が移動できるよう前記移動可能な軸をロック解除する油圧アクチュエータを有し、
作動油を、第1の逆止弁を通って前記弁座に向かう前記1つのシリンダ弁の運動を抑制するよう配置された油圧スナッバの可変容積チャンバに送り出し、そして第2の逆止弁を通って前記アクチュエータの可変容量チャンバに送り出し、次いで前記スナッバチャンバ及び制御弁の第1のポートと流体連通状態にある油圧アキュムレータに送り出す作動油圧力源を有し、前記制御弁は、前記アクチュエータチャンバと流体連通状態にある第2のポートを有し、
前記スナッバの前記可変容量チャンバは、抑制要素とスナッバ本体との協働によって構成され、前記抑制要素は、前記スナッバ本体に対して伸長したり引っ込んだりすることができ、
前記抑制要素と前記スナッバ本体は一緒になって、可変絞りを構成し、前記スナッバの前記可変容量チャンバは、前記可変絞りを介して前記アキュムレータ、前記作動油圧力源、及び前記制御弁の前記第1のポートと流体連通状態にあり、前記可変絞りは、前記抑制要素が前記スナッバ本体に対して伸長したり引っ込んだりすると、それぞれ縮小したり拡大したりし、
前記作動油源と前記アキュムレータは一緒になった状態で、前記弁開放機構体が前記1つのシリンダ弁を次第に大きく開いているとき、作動油を前記スナッバチャンバ内に押し込み、それにより前記抑制要素を前記スナッバ本体に対して伸長させるのに有効であり、
前記弁開放機構体によって前記1つのシリンダ弁が次第に大きく開かれている間、前記制御弁は、前記1つのシリンダ弁を前記弁座から離脱させる前に前記アクチュエータチャンバ内に押し込まれた作動油が前記アクチュエータチャンバから逃げ出るのを阻止することによって、前記アクチュエータを油圧の作用でロックするよう前記第1のポートを前記第2のポートに対して閉じ、
前記1つのシリンダ弁が開いている状態で、前記制御弁は、前記第1のポートを前記第2のポートに対して開き、それにより、前記アクチュエータチャンバを前記アキュムレータに連通させることによって前記アクチュエータをロック解除し、その結果、前記弁ばねは、前記1つのシリンダ弁が前記弁ばねによって前記弁座に向かって押し進められたり前記1つのシリンダ弁が前記弁座に向かって動いているときに絞りが次第に拡大している状態で、前記抑制要素を引っ込めて作動油を前記スナッバチャンバから押し出してこれを前記アキュムレータ内に押し込むようにする前記スナッバとの相互作用によって前記1つのシリンダ弁が抑制されたりしているときに、作動油を前記アクチュエータチャンバから押し出してこれを前記アキュムレータに押し込むことができる、
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項2】
前記1つのシリンダ弁は、前記吸気系統を前記シリンダのうちのそれぞれ1つに連通させる吸気弁を有する、
請求項1記載の内燃エンジン。
【請求項3】
前記移動可能な軸は、円筒形ピンの長手方向中心軸から成り、前記ロッカと前記アクチュエータのピストンロッドは、前記円筒形ピンによって互いに作動的に結合されている、
請求項2記載の内燃エンジン。
【請求項4】
前記ロッカは、前記ピンの各側に配置された互いに反対側の端部を有し、前記互いに反対側の端部のうちの一方は、前記ロッカと前記吸気弁との相互作用箇所を提供し、前記互いに反対側の端部の他方は、前記エンジンのカムシャフトに設けられたカムにより作動されるプッシュロッドの端部との相互作用箇所を提供する、
請求項3記載の内燃エンジン。
【請求項5】
前記作動油圧力源は、油レールを有し、前記油レールは、第3の逆止弁を通って油を前記油レール内に圧送するポンプによって加圧油で充填状態に保たれる、
請求項2記載の内燃エンジン。
【請求項6】
前記抑制要素は、前記吸気弁と相互作用するよう前記スナッバ本体から突き出たヘッド側端部及び前記抑制要素が伸長したり引っ込んだりしているときに前記スナッバ本体内に位置したままであるテール側端部を有し、前記可変絞りは、スケジュール設定孔幾何学的形態の協働によって構成され、前記スケジュール設定孔幾何学的形態は、前記抑制要素の前記テール側端部の中空円筒形壁部分を貫通して延び、前記スケジュール設定孔幾何学的形態は、前記抑制要素が次第に引っ込められているときに前記抑制要素の前記テール側端部の前記円筒形壁部分を包囲した前記スナッバ本体の円筒形壁部分の内面に設けられたアンダーカットを横切って動く、
請求項5記載の内燃エンジン。
【請求項7】
前記抑制要素の前記テール側端部の前記中空円筒形壁部分は、前記抑制要素の前記ヘッド側端部と反対側に位置した状態でこれに対して閉じられると共に前記スナッバ本体に設けられた貫通路を経て前記作動油圧力源と流体連通状態にあり、前記アンダーカットは、前記抑制要素が次第に引っ込められているときに作動油が前記スケジュール設定孔幾何学的形態を通って前記抑制要素の前記テール側端部の前記中空内側壁部分から押し出され、前記抑制要素が次第に伸長されているときに作動油が前記スケジュール設定孔幾何学的形態を通って前記スナッバチャンバに入るよう前記アキュムレータと連通状態にある、
請求項6記載の内燃エンジン。
【請求項8】
前記アンダーカットは、前記スナッバ本体の前記円筒形壁部分周りに360°にわたって延びている、
請求項7記載の内燃エンジン。
【請求項9】
前記アンダーカットは、前記スナッバ本体の前記円筒形壁部分全体にわたって一定の軸方向寸法を有する、
請求項8記載の内燃エンジン。
【請求項10】
前記スケジュール設定孔幾何学的形態は、多数個の別々の貫通孔から成る、
請求項9記載の内燃エンジン。
【請求項11】
前記多数個の別々の貫通孔は、第1の貫通孔が第2の貫通孔に対して円周方向と軸方向の両方にオフセットしたパターンをなして配列されている、
請求項10記載の内燃エンジン。
【請求項12】
前記第1の貫通孔は、前記第2の貫通孔よりも前記抑制要素の前記ヘッド側端部から遠くに位置し、前記第1の貫通孔は又、前記第2の貫通孔の開放面積よりも大きな開放面積を有する、
請求項11記載の内燃エンジン。
【請求項13】
前記第2の貫通孔は、再着座状態に近づく前記吸気弁の最終移動分の間及び前記吸気弁が最終的に再着座したときに前記アンダーカットに対面する、
請求項12記載の内燃エンジン。
【請求項14】
前記第2の貫通孔は、再着座状態に近づく前記吸気弁の最終移動分の間及び前記吸気弁が最終的に再着座したときに前記アンダーカットに対面する唯一の貫通孔である、
請求項13記載の内燃エンジン。
【請求項15】
前記スナッバは、前記スナッバ本体に対する前記抑制要素の伸長を制限する停止部を有する、
請求項6記載の内燃エンジン。
【請求項16】
前記制御弁は、前記第1のポートと前記第2のポートとの間の開閉を制御するよう電気によって選択的に付勢される電気オペレータを有する、
請求項1記載の内燃エンジン。
【請求項17】
エンジンシリンダ弁と関連した機構体であって、前記エンジンシリンダ弁は、弁ばねによって付勢されて弁座に着座した状態で閉じられたりエンジンサイクル中、種々の時点で前記シリンダ弁に開放状態から閉鎖状態への作動能力を与える弁開放機構体の弁ロッカにより開かれたりし、前記機構体は、
可変容量チャンバを備えた油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを、a)前記弁開放機構体が前記弁ロッカを作動させて前記シリンダ弁を次第に大きく開くと共に前記弁ばねを次第に強く圧縮している間、前記弁ロッカのピボット軸を拘束して移動できないようにし、b)前記弁ばねが次第に伸長して前記シリンダ弁を前記弁座に着座した閉鎖状態に向かって動かしているときに、前記ピボット軸が移動できるようにするために前記シリンダ弁が開かれた後、前記拘束を解除するよう制御する制御弁と、
作動油圧力源及び前記作動油圧力源と流体連通状態にある油圧アキュムレータからの作動油を導入して前記チャンバの容積を拡張することができると共に作動油が前記チャンバから逆流することができないようにする第1の逆止弁と、
前記弁座に着座した閉鎖状態に向かう前記シリンダ弁の運動を抑制する可変容量チャンバを備えた油圧スナッバと、
前記作動油圧力源からの作動油が前記スナッバチャンバの容積を拡張することができるようにすると共に作動油が前記スナッバチャンバから逆流することができないようにする第2の逆止弁とを有し、
前記スナッバの前記可変容量チャンバは、抑制要素とスナッバ本体の協働によって構成され、前記抑制要素は、前記第2の逆止弁を通って前記スナッバ内に導入された作動油によって前記スナッバ本体に対して伸長され、
前記抑制要素と前記スナッバ本体は協働して、可変絞りを構成し、前記スナッバチャンバは、前記可変絞りを介して前記アキュムレータと連通し、前記可変絞りは、前記抑制要素が前記スナッバ本体に対して引っ込んでいるときに変化し、
前記制御弁は、前記アクチュエータチャンバを前記アキュムレータに対して閉鎖することにより前記アクチュエータが前記ピボット軸を拘束して移動できないようにする機能及び前記アクチュエータチャンバを前記アキュムレータに対して開放することにより前記アクチュエータが前記拘束を解除し、その結果、前記弁ばねが前記ロッカを介して作用して作動油が前記アクチュエータチャンバから押し出して前記アキュムレータ内に押し込み、前記抑制要素との前記シリンダ弁の相互作用により、前記抑制要素が次第に引っ込められるにつれて前記可変絞りによる前記作動油の流れの絞りが次第に大きくなる状態で、作動油を前記スナッバチャンバから押し出してこれを前記アキュムレータ内に押し込むことができるようにする機能を実行する、
ことを特徴とする機構体。
【請求項18】
前記抑制要素は、前記吸気弁と相互作用するよう前記スナッバ本体から突き出たヘッド側端部及び前記抑制要素が伸長したり引っ込んだりしているときに前記スナッバ本体内に位置したままであるテール側端部を有し、前記可変絞りは、スケジュール設定孔幾何学的形態の協働によって構成され、前記スケジュール設定孔幾何学的形態は、前記抑制要素の前記テール側端部の中空円筒形壁部分を貫通して延び、前記スケジュール設定孔幾何学的形態は、前記抑制要素が次第に引っ込められているときに前記抑制要素の前記テール側端部の前記円筒形壁部分を包囲した前記スナッバ本体の円筒形壁部分の内面に設けられたアンダーカットを横切って動く、
請求項17記載の機構体。
【請求項19】
前記抑制要素の前記テール側端部の前記中空円筒形壁部分は、前記抑制要素の前記ヘッド側端部と反対側に位置した状態でこれに対して閉じられると共に前記スナッバ本体に設けられた貫通路を経て前記作動油圧力源と流体連通状態にあり、前記アンダーカットは、前記抑制要素が次第に引っ込められているとき、前記スケジュール設定孔幾何学的形態が前記アンダーカットを横切って動きながら作動油が前記スケジュール設定孔幾何学的形態を通って前記抑制要素の前記テール側端部の前記中空内側壁部分から押し出されるよう前記アキュムレータと連通状態にある、
請求項18記載の機構体。
【請求項20】
前記アンダーカットは、前記スナッバ本体の前記円筒形壁部分周りに360°にわたって延び、前記アンダーカットは、前記スナッバ本体の前記円筒形壁部分全体にわたって一定の軸方向寸法を有し、前記スケジュール設定孔幾何学的形態は、多数個の別々の貫通孔から成る、
請求項19記載の機構体。
【請求項21】
前記多数個の別々の貫通孔は、第1の貫通孔が第2の貫通孔に対して円周方向と軸方向の両方にオフセットしたパターンをなして配列され、前記第1の貫通孔は、前記第2の貫通孔よりも前記抑制要素の前記ヘッド側端部から遠くに位置し、前記第1の貫通孔は又、前記第2の貫通孔の開放面積よりも大きな開放面積を有する、
請求項20記載の機構体。
【請求項22】
前記第2の貫通孔は、前記抑制要素を完全に引っ込めたときに前記アンダーカットに対面する唯一の貫通孔である、
請求項21記載の機構体。
【請求項23】
前記制御弁は、電気アクチュエータを有し、前記電気アクチュエータは、前記制御弁の機能を制御するよう電気により選択的に付勢される、
請求項17記載の機構体。
【請求項24】
弁ばねによって付勢されて弁座に着座した状態で閉じられ、エンジンサイクル中、弁開放機構体の弁ロッカを移動可能な軸を中心に回動させることにより開かれるエンジンシリンダ弁を作動させる方法であって、前記弁座に向かう前記エンジンシリンダ弁の閉鎖運動は、油圧スナッバによって抑制される、方法において、
第1の逆止弁を介して前記スナッバの可変容量チャンバを作動油圧力源に連通させて前記スナッバチャンバ内への作動油の流れを可能にすると共に前記スナッバチャンバからの逆流を不可能にするステップと、
第2の逆止弁を介して油圧アクチュエータの可変容量チャンバを前記作動油圧力源と流体連通状態にある油圧アキュムレータに連通させて作動油が前記アクチュエータチャンバ内に流れることができるようにすると共に前記アクチュエータチャンバから逆流することができないようにするステップと、
制御弁を介して前記アクチュエータチャンバを前記作動油圧力源、前記スナッバチャンバ、及び前記アキュムレータに連通させるステップと、
前記制御弁を、a)前記弁開放機構体が前記弁ロッカを作動させて前記シリンダ弁を次第に大きく開くと共に前記弁ばねを次第に強く圧縮し、それによりシリンダ弁開放中、前記アクチュエータを油圧の作用でロックすることにより前記弁ロッカの前記移動可能な軸を拘束して移動できないようにし、b)前記シリンダ弁を開いた後に前記アキュムレータ、前記作動油圧力源、及び前記スナッバチャンバに対して前記アクチュエータを開き、それにより前記弁ばねが次第に伸長して流体を前記アクチュエータチャンバから押し出して前記シリンダ弁を前記弁座に着座した閉鎖状態に向かって動かしているときに前記移動可能な軸が移動できるように前記アクチュエータをロック解除することによって前記拘束を解除するよう選択的に作動させるステップと、
前記シリンダ弁が前記弁座に向かう閉鎖運動中、前記スナッバと相互作用しているときに、前記弁ばねが前記シリンダ弁を前記弁座に向かって押し進めることにより前記スナッバが前記スナッバチャンバから押し出されている作動油の流れを次第に絞ることによって前記閉鎖運動を抑制するステップとを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
弁座に対するエンジンシリンダ弁の閉鎖運動を抑制する油圧スナッバであって、抑制要素とスナッバ本体の協働によって構成される可変容量チャンバを有し、前記抑制要素は、前記スナッバ本体に対して直線的に変位可能であり、
源ポートを有し、作動油圧力源からの作動油を前記源ポートを通って前記可変容量チャンバに送り出して前記抑制要素を前記スナッバ本体に対して直線伸長方向に油圧の作用で付勢することができ、
ドレンポートを有し、前記シリンダ弁の閉鎖運動が前記抑制要素を前記スナッバ本体に対して直線引っ込み方向に押しやっているときに前記可変容量チャンバからの作動油を前記ドレンポートから排出することができ、
可変絞りを有し、前記抑制要素を前記直線引っ込み方向に変位させると、前記可変容量チャンバ内の作動油が前記可変絞りを通って前記ドレンポートまで押しやられ、
前記可変絞りは、前記抑制要素のテール側端部の中空円筒形壁部分を貫通して延び、前記抑制要素を前記直線引っ込み方向に変位させると、前記抑制要素の前記テール側端部の前記中空円筒形壁部分を包囲している前記スナッバ本体の円筒形壁部分の内面に設けられたアンダーカットを横切って動くスケジュール設定孔幾何学的形態を有する、
ことを特徴とするスナッバ。
【請求項26】
前記アンダーカットは、前記スナッバ本体の前記円筒形壁部分周りに360°にわたって延び、前記アンダーカットは、前記スナッバ本体の前記円筒形壁部分全体にわたって一定の軸方向寸法を有し、前記スケジュール設定孔幾何学的形態は、多数個の別々の貫通孔から成る、
請求項25記載のスナッバ。
【請求項27】
前記多数個の別々の貫通孔は、第1の貫通孔が第2の貫通孔に対して円周方向と軸方向の両方にオフセットしたパターンをなして配列され、前記第1の貫通孔は、前記第2の貫通孔よりも前記抑制要素の前記ヘッド側端部から遠くに位置し、前記第1の貫通孔は又、前記第2の貫通孔の開放面積よりも大きな開放面積を有する、
請求項26記載のスナッバ。
【請求項28】
前記第2の貫通孔は、前記抑制要素を完全に直線的に引っ込めたときに前記アンダーカットに対面する唯一の貫通孔である、
請求項27記載のスナッバ。
【請求項29】
VVA(可変弁作動)機構体を有する内燃エンジンにおける早期IVC(吸気弁閉時期)を利用する方法であって、前記VVA機構体は、弁ばねによって付勢されて閉じられるシリンダ吸気弁を開放するようプッシュロッドの運動を伝達する手段としてのロッカのピボット軸の存在場所を制御する油圧アクチュエータ及び前記ピボット軸の存在場所が早期IVCをもたらさない規定された場所から遠ざかって早期IVCをもたらす場所まで動くことができるようにしたり動くことができないようにしたりするために前記アクチュエータを油圧的にロック解除したりロックしたりするよう選択的に開閉される選択的に動作可能な制御弁を有し、前記方法は、
エンジンクランキング中に前記制御弁を開いて、前記ピボット軸が前記規定された場所から早期IVCをもたらす場所に動くようにする前記弁ばねの作用によって、幾分かの油及び同伴空気をアクチュエータから押し出して加圧油源と流体連通関係にあるアキュムレータ内に押し込む或る程度の早期IVCをもたらすステップと、
吸気弁が閉じた後、前記制御弁を油が前記アキュムレータから前記アクチュエータに戻って前記ピボット軸を前記規定された場所に動かすことができるのに十分長く開放状態に保つステップとを有する、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−38526(P2011−38526A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−194863(P2010−194863)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(501402947)インターナショナル エンジン インテレクチュアル プロパティー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (69)
【Fターム(参考)】