吸湿塗料及びシート
【課題】１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性の吸湿材を製造できる吸湿塗料を提供することである。
【解決手段】乾燥剤をバインダー樹脂の溶液中に分散した吸湿塗料。乾燥剤をバインダー樹脂で固定した乾燥剤層１２を基材フィルム１１の表面に形成した吸湿シート１０。表裏に貫通する通気孔を有する透湿性フィルム１３を乾燥剤層の表面に貼り付けてもよい。吸湿シート１０の厚さは１００μｍ以下の範囲にある。乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものを使用する。乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムの混合物、又は、さらにゼオライトを加えた混合物が使用される。
【解決手段】乾燥剤をバインダー樹脂の溶液中に分散した吸湿塗料。乾燥剤をバインダー樹脂で固定した乾燥剤層１２を基材フィルム１１の表面に形成した吸湿シート１０。表裏に貫通する通気孔を有する透湿性フィルム１３を乾燥剤層の表面に貼り付けてもよい。吸湿シート１０の厚さは１００μｍ以下の範囲にある。乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものを使用する。乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムの混合物、又は、さらにゼオライトを加えた混合物が使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、精密機器やその部品（有機ＥＬ素子、半導体デバイスなど）、楽器（ピアノなど）、医薬品（錠剤など）、食料品（乾麺、塩など）、衣類、靴など、湿気によりその機能や効能、風味や風合いなどが劣化する物品の防湿材や吸湿材（以下、これらを総称して吸湿材という）に適した吸湿塗料及びこの吸湿塗料を使用して製造されるシート状の吸湿材すなわち吸湿シートに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
精密機器やその部品、医薬品、食料品、楽器などの物品の吸湿材として、シリカゲルやゼオライトなどの乾燥剤を通気性シートからなる袋に入れたものがある（特許文献１、２を参照）。例えば、合成繊維からなる二枚の通気性シートを重ねて形成した袋に乾燥剤を封入したものがある。このような吸湿材では、乾燥剤は袋内に投入されているだけなので、投入した乾燥剤のほぼ全量が防湿や吸湿に寄与し得るが、吸湿材の姿勢を変えると、乾燥剤が移動して片寄り、吸湿材の形状、特に厚さを一定にできず、嵩張るだけでなく、このような吸湿材を狭い空間内に配置して、この空間の防湿や吸湿をすることが困難である。
【０００３】
また、物品の吸湿材として、物品を収容するための容器の内面に乾燥剤を配置した吸湿材がある（特許文献３、４、５を参照）。例えば、有機ＥＬディスプレイでは、有機分子が酸素や水分（湿気）と反応して劣化し、ディスプレイの寿命が短くなるため、ガラス基板上にＩＴＯ等の透明電極層と有機ＥＬ発光層と対向電極層とを順次積層した有機ＥＬ積層体を封止する封止キャップの低部内面に乾燥剤を配置している。この乾燥剤として、２０μｍ〜２００μｍの無水硫酸カルシウムなど粒子が使用され、乾燥剤は、深さ約０．４ｍｍの封止キャップの低部内面に形成した粘着剤層に粘着保持され、厚さ２０μｍ〜２００μｍの合成繊維製の通気性シートで被覆される。しかし、粒子状の乾燥剤を粘着させる際、余分な乾燥剤は単に振り落とされるだけなので、この振り落とされた乾燥剤が封止キャップの内面に付着したままの状態で、この封止キャップで有機ＥＬ積層体を封止すると、封止キャップに付着している乾燥剤が浮遊し、有機ＥＬ積層体に付着して、有機ＥＬ積層体が汚染される。
【０００４】
さらに、物品を収容するための袋や包装紙に乾燥剤を練り込んだ吸湿材がある（特許文献６を参照）。例えば、乾燥剤を練り込んだ熱可塑性樹脂からなるシート材がある。このようなシート材では、その厚さを６０μｍ〜２００μｍにできるが、熱可塑性樹脂に練り込まれる乾燥剤の量を多くすると、袋が脆くなるので、多量の乾燥剤を練り込むことができず、高い吸湿性が得られない。また、シート材の表面部分に位置する乾燥剤のみが防湿や吸湿に寄与するだけなので、高い吸湿性が得られない。
【特許文献１】特開２０００−１８８３６７号公報
【特許文献２】特開２０００−２０２０１１号公報
【特許文献３】特開２００１−１８５３４９号公報
【特許文献４】特開２００１−２３５０７号公報
【特許文献５】特開平１０−３４７９１号公報
【特許文献６】特開平１０−２７２１６８号公報
【非特許文献１】有機ＥＬディスプレイ、ナノエレクトロニクス、今後の課題と展望、ｈｔｔｐ／／ｗｗｗ．ｎａｎｏｅｌｅｃｔｒｏｎｉｃｓ．ｊｐ／ｋａｉｔａｉ／ｏｅｌ／７．ｈｔｍ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
したがって、本発明の目的は、１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性の吸湿材を製造できる吸湿塗料を提供することである。また、本発明のその他の目的は、１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性のシート状の吸湿材すなわち吸湿シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成する本発明の吸湿塗料は、バインダー樹脂の溶液、及びこの溶液中に分散した乾燥剤から構成され、乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される。
【０００７】
吸湿塗料の総量を１００重量％として、乾燥剤の量は、１０重量％〜２４重量％の範囲にあり、バインダー樹脂の量は、６重量％〜１８重量％部の範囲にある。
【０００８】
乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとの混合物が使用される。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、４０重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、３０重量％〜６０重量％の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。好適に、混合物中の無水塩化マグネシウムの量は６０重量％であり、酸化マグネシウムの量は４０重量％である。
【０００９】
本発明の吸湿塗料は、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を適宜に利用して、任意の厚さや広さのシート状又はその他の形状の吸湿材の基材又は物品の任意の形状の表面の全部又は一部に塗布し、乾燥して、この基材又は物品の表面に乾燥剤層を形成するものである。
【００１０】
本発明では、乾燥剤として、上記の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムにさらにゼオライト（沸石ともいう）を混ぜた混合物が使用される。本発明の吸湿塗料の乾燥時（乾燥剤層の形成時）に、ゼオライトに吸着したバインダー樹脂の溶液が気泡となって揮発し、この気泡により、乾燥剤層の表面から乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤へと達する通気孔が形成され、これにより、乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤を有効に利用できる。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、２５重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、１８重量％〜６０重量％の範囲にあり、ゼオライトの量は、４０重量％以下の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。
【００１１】
本発明に従ったシート状の吸湿材すなわち吸湿シートは、織布、不織布、発泡体、紙、プラスチックフィルムなどから選択される基材フィルム、この基材フィルムの表面に形成した乾燥剤層から構成される。この吸湿シートは、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を利用して、基材フィルムの表面に上記本発明の吸湿塗料を塗布し、これを乾燥させることによって製造され、乾燥剤層には、上記の乾燥剤が、分散して、バインダー樹脂で固定されている。本発明の吸湿シートの厚さは、１００μｍ以下の範囲にある。
【００１２】
本発明に従った吸湿シートは、乾燥剤層の表面に貼り付けた透湿性フィルムからさらに構成され得る。透湿性フィルムとして、表裏にわたって連続する通気孔を有する織布、不織布などからなるフィルムや、表裏に貫通する通気孔を形成した紙、プラスチック材料などからなるフィルムを使用してもよく、また、フィルム自体が透湿性を有するアセテートフィルム、セロハンフィルムなどを使用してもよい。この本発明の吸湿シートの厚さ（透湿性フィルムの厚さを含む）は、１００μｍ以下の範囲にある。
【発明の効果】
【００１３】
本発明が以上のように構成されるので、以下のような効果を奏する。
【００１４】
１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性の吸湿材を製造できる吸湿塗料を提供できる。
【００１５】
物品の表面上に吸湿塗料を直接スプレーで吹き付け、乾燥させるだけの容易簡単な作業で、物品の表面上に乾燥剤層を直接形成できる。乾燥剤がバインダー樹脂で固定されているので、乾燥剤が乾燥剤層から脱粒し難い。
【００１６】
シートの表面上に吸湿塗料をスプレーで吹き付け、乾燥させるだけの容易簡単な作業で、シートの表面の全部又は一部に乾燥剤層を形成でき、このシートで物品を包装して物品の防湿や吸湿をすることができ、また、このシートを適当な形状及び大きさにカットして、これを物品を収容する袋内に入れて物品の防湿や吸湿ができる。
【００１７】
１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性の吸湿シートを提供できる。ここで、吸湿シートの基材フィルムの表面に形成した乾燥剤層において、乾燥剤がバインダー樹脂で固定されているので、乾燥剤が乾燥剤層から脱粒し難い。
【００１８】
この吸湿シートで物品を包装して物品の防湿や吸湿をすることができ、また、この吸湿シートを適当な形状及び大きさにカットして、これを物品を収容する袋や容器内に入れて物品の防湿や吸湿ができる。
【００１９】
本発明に従った吸湿材は、１００μｍ以下の厚さなので、狭い空間内に配置でき、この狭い空間内の防湿や吸湿ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
本発明の吸湿塗料は、バインダー樹脂の溶液中に乾燥剤を分散させたものである。乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される。
【００２１】
吸湿塗料の総量を１００重量％として、乾燥剤の量は、１０重量％〜２４重量％の範囲にあり、バインダー樹脂の量は、６重量％〜１８重量％の範囲にある。
【００２２】
バインダー樹脂の溶液は、ポリエステル系、ポリウレタン系などのバインダー樹脂を有機溶剤に溶解したものであり、イソシアネートなどの硬化剤をさらに添加し得る。また、吸湿塗料のゲル化を防ぐため、ジメチルホルムアミドをさらに添加してもよい。
【００２３】
乾燥剤として、自重を超える水分を吸収し、吸収した水分をマグネシアセメントとして固化する粒状の無水塩化マグネシウムと粒状の酸化マグネシウムとの混合物が使用される。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、４０重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、３０重量％〜６０重量％の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。好適に、無水塩化マグネシウムの量は６０重量％であり、酸化マグネシウムの量は４０重量％である。
【００２４】
この乾燥剤は、塊状又は粒状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムを所定の量で混合してから（又は混合しながら）平均粒径０．０１μｍ〜５０μｍの範囲にある大きさの粒子に粉砕して得られたものである。乾燥剤を構成する粒子の一部は、粉砕中の酸化マグネシウムのセメント化により、酸化マグネシウムに無水塩化マグネシウムが付着したものとなっている。
【００２５】
好適に、この乾燥剤として、塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを６０重量％：４０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕して得られたものが使用される。
【００２６】
本発明の吸湿塗料は、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を適宜に利用して、任意の厚さや広さのシート状又はその他の形状の吸湿材の基材又は物品の任意の形状の表面の全部又は一部に塗布し、乾燥して、この基材又は物品の表面に乾燥剤層を形成するものである。
【００２７】
本発明では、乾燥剤として、上記の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムにさらにゼオライト（沸石ともいう）を混ぜた混合物が使用される。本発明の吸湿塗料の乾燥時（乾燥剤層の形成時）に、ゼオライトに吸着したバインダー樹脂の溶液が気泡となって揮発し、この気泡により、乾燥剤層の表面から乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤へと達する通気孔が形成され、これにより、乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤を有効に利用できる。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、２５重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、１８重量％〜６０重量％の範囲にあり、ゼオライトの量は、４０重量％以下の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。好適に、この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は５４重量％であり、酸化マグネシウムの量は３６重量％であり、ゼオライトの量は１０重量％である。より好適に、この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は４５重量％、酸化マグネシウムの量は３０重量％、ゼオライトの量は２５重量％である。ゼオライトとして、平均粒径０．０１μｍ〜５０μｍの範囲にあるものが使用される。
【００２８】
この乾燥剤は、塊状又は粒状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムを所定の量で混合してから（又は混合しながら）平均粒径０．０１μｍ〜５０μｍの範囲にある大きさの粒子に粉砕し（又は粉砕しながら）、これに、さらに所定の量のゼオライトを混合したものである。乾燥剤を構成する粒子の一部は、粉砕中の酸化マグネシウムのセメント化により、酸化マグネシウムに無水塩化マグネシウムやゼオライトが付着したものとなっている。
【００２９】
好適に、この乾燥剤として、塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを５４重量％：３６重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを１０重量％の割合で混合して得られたものが使用される。より好適に、乾燥剤として、塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを４５重量％：３０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを２５重量％の割合で混合して得られたものが使用される。
【００３０】
図１に示すように、本発明に従ったシート上の吸湿材すなわち吸湿シート１０は、織布、不織布、発泡体、紙、プラスチックフィルムなどから選択される基材フィルム１１の表面に乾燥剤層１２を形成したものである。この吸湿シート１０は、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を利用して、基材フィルム１１の表面に上記の吸湿塗料を塗布し、これを乾燥させることによって製造され、乾燥剤層１２には、上記の乾燥剤が、バインダー樹脂で分散して固定される。乾燥剤層１３を厚くすると、乾燥剤層１３中に固定される乾燥剤の量が増加するので、吸湿性が高くなるが、乾燥剤層１３が厚くなりすぎると嵩張るので、乾燥剤層１３の厚さは、必要に応じて適宜選定できる。本発明に従った吸湿シートの厚さは、好適に、１００μｍ以下の範囲にある。
【００３１】
本発明に従った吸湿シートは、図示のように、乾燥剤層１２の表面に貼り付けた透湿性フィルム１３からさらに構成され得る。この透湿性フィルムとして、織布、不織布などの布や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルなどのプラスチック材料からなるフィルムにエンボスなどの既知の穿孔技術を利用して通気孔を形成したものが使用される。この通気孔の大きさを大きくし、その個数を多くすると、吸湿シートの吸湿性が高くなるので、通気孔の大きさと個数を選定して、吸湿シートの吸湿速度が調節できる。また、透湿性フィルムとして、フィルム自体が透湿性を有するアセテートフィルム、セロハンフィルムなどを使用してもよい。この本発明の吸湿シートの厚さ（透湿性フィルム１３の厚さを含む）は、好適に、１００μｍ以下の範囲にある。
【００３２】
＜実施例１＞ 本発明に従った吸湿塗料を製造し、この吸湿塗料を使用して、本発明に従った実施例１の吸湿シートを製造した。
【００３３】
塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを６０重量％：４０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕して得られた乾燥剤（１５０重量部）と、ポリエステル系樹脂（８４．９重量部）と、酢酸エチル（３６．２重量部）と、メチルエチルケトン（７２．５重量部）と、トルエン（８９．４重量部）とをポットミルに投入し、７２時間攪拌し、これに７５重量％イソシアネート（２０重量部）を加えて、本発明に従った実施例１の吸湿塗料を製造した。
【００３４】
次に、コンマコーターを使用して、この吸湿塗料をポリエステルフィルム（厚さ２４μｍ）の表面に塗布し、乾燥して、ポリエステルフィルムの表面に乾燥剤層（厚さ１１μｍ）を形成して、本発明に従った実施例１の吸湿シート（厚さ３５μｍ）を製造した。
【００３５】
＜実施例２＞ 本発明に従った吸湿塗料を製造し、この吸湿塗料を使用して、本発明に従った実施例２の吸湿シートを製造した。
【００３６】
塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを５４重量％：３６重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを１０重量％の割合で混合して得られた乾燥剤（１５０重量部）と、ポリエステル系樹脂（８４．９重量部）と、酢酸エチル（３６．２重量部）と、メチルエチルケトン（７２．５重量部）と、トルエン（８９．４重量部）とをポットミルに投入し、７２時間攪拌し、これに７５重量％イソシアネート（２０重量部）を加えて、本発明に従った実施例２の吸湿塗料を製造した。
【００３７】
次に、コンマコーターを使用して、この吸湿塗料をポリエステルフィルム（厚さ２４μｍ）の表面に塗布し、乾燥して、ポリエステルフィルムの表面に乾燥剤層（厚さ１１μｍ）を形成して、本発明に従った実施例２の吸湿シート（厚さ３５μｍ）を製造した。
【００３８】
＜実施例３＞ 本発明に従った吸湿塗料を製造し、この吸湿塗料を使用して、本発明に従った実施例３の吸湿シートを製造した。
【００３９】
塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを４５重量％：３０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを２５重量％の割合で混合して得られた乾燥剤（１５０重量部）と、ポリエステル系樹脂（８４．９重量部）と、酢酸エチル（３６．２重量部）と、メチルエチルケトン（７２．５重量部）と、トルエン（８９．４重量部）とをポットミルに投入し、７２時間攪拌し、これに７５重量％イソシアネート（２０重量部）を加えて、本発明に従った実施例３の吸湿塗料を製造した。
【００４０】
次に、コンマコーターを使用して、この吸湿塗料をポリエステルフィルム（厚さ２４μｍ）の表面に塗布し、乾燥して、ポリエステルフィルムの表面に乾燥剤層（厚さ１１μｍ）を形成して、本発明に従った実施例３の吸湿シート（厚さ３５μｍ）を製造した。
【００４１】
＜吸湿試験＞ 上記実施例１〜３の吸湿シートをＡ４版の大きさにカットし、３０℃、４０％相対湿度の恒温恒湿槽内に１０時間放置し、その後、３０℃、６０％相対湿度の恒温恒湿槽内に放置し、各吸湿シートの重量変化から各吸湿シートの吸湿率（吸湿性）を算出した。
【００４２】
試験結果を下記の表１に示す。
【表１】
【００４３】
表１に示すように、本発明に従った吸湿シートは、１００μｍ以下の厚さでも、３０％を超える高い吸湿率を有し、また、ゼオライトを加えると、より長時間、高い吸湿率を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】図１は、本発明に従った吸湿シートの断面図である。
【符号の説明】
【００４５】
１０・・・吸湿シート
１１・・・基材フィルム
１２・・・乾燥剤層
１３・・・透湿性フィルム
【技術分野】
【０００１】
本発明は、精密機器やその部品（有機ＥＬ素子、半導体デバイスなど）、楽器（ピアノなど）、医薬品（錠剤など）、食料品（乾麺、塩など）、衣類、靴など、湿気によりその機能や効能、風味や風合いなどが劣化する物品の防湿材や吸湿材（以下、これらを総称して吸湿材という）に適した吸湿塗料及びこの吸湿塗料を使用して製造されるシート状の吸湿材すなわち吸湿シートに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
精密機器やその部品、医薬品、食料品、楽器などの物品の吸湿材として、シリカゲルやゼオライトなどの乾燥剤を通気性シートからなる袋に入れたものがある（特許文献１、２を参照）。例えば、合成繊維からなる二枚の通気性シートを重ねて形成した袋に乾燥剤を封入したものがある。このような吸湿材では、乾燥剤は袋内に投入されているだけなので、投入した乾燥剤のほぼ全量が防湿や吸湿に寄与し得るが、吸湿材の姿勢を変えると、乾燥剤が移動して片寄り、吸湿材の形状、特に厚さを一定にできず、嵩張るだけでなく、このような吸湿材を狭い空間内に配置して、この空間の防湿や吸湿をすることが困難である。
【０００３】
また、物品の吸湿材として、物品を収容するための容器の内面に乾燥剤を配置した吸湿材がある（特許文献３、４、５を参照）。例えば、有機ＥＬディスプレイでは、有機分子が酸素や水分（湿気）と反応して劣化し、ディスプレイの寿命が短くなるため、ガラス基板上にＩＴＯ等の透明電極層と有機ＥＬ発光層と対向電極層とを順次積層した有機ＥＬ積層体を封止する封止キャップの低部内面に乾燥剤を配置している。この乾燥剤として、２０μｍ〜２００μｍの無水硫酸カルシウムなど粒子が使用され、乾燥剤は、深さ約０．４ｍｍの封止キャップの低部内面に形成した粘着剤層に粘着保持され、厚さ２０μｍ〜２００μｍの合成繊維製の通気性シートで被覆される。しかし、粒子状の乾燥剤を粘着させる際、余分な乾燥剤は単に振り落とされるだけなので、この振り落とされた乾燥剤が封止キャップの内面に付着したままの状態で、この封止キャップで有機ＥＬ積層体を封止すると、封止キャップに付着している乾燥剤が浮遊し、有機ＥＬ積層体に付着して、有機ＥＬ積層体が汚染される。
【０００４】
さらに、物品を収容するための袋や包装紙に乾燥剤を練り込んだ吸湿材がある（特許文献６を参照）。例えば、乾燥剤を練り込んだ熱可塑性樹脂からなるシート材がある。このようなシート材では、その厚さを６０μｍ〜２００μｍにできるが、熱可塑性樹脂に練り込まれる乾燥剤の量を多くすると、袋が脆くなるので、多量の乾燥剤を練り込むことができず、高い吸湿性が得られない。また、シート材の表面部分に位置する乾燥剤のみが防湿や吸湿に寄与するだけなので、高い吸湿性が得られない。
【特許文献１】特開２０００−１８８３６７号公報
【特許文献２】特開２０００−２０２０１１号公報
【特許文献３】特開２００１−１８５３４９号公報
【特許文献４】特開２００１−２３５０７号公報
【特許文献５】特開平１０−３４７９１号公報
【特許文献６】特開平１０−２７２１６８号公報
【非特許文献１】有機ＥＬディスプレイ、ナノエレクトロニクス、今後の課題と展望、ｈｔｔｐ／／ｗｗｗ．ｎａｎｏｅｌｅｃｔｒｏｎｉｃｓ．ｊｐ／ｋａｉｔａｉ／ｏｅｌ／７．ｈｔｍ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
したがって、本発明の目的は、１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性の吸湿材を製造できる吸湿塗料を提供することである。また、本発明のその他の目的は、１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性のシート状の吸湿材すなわち吸湿シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記目的を達成する本発明の吸湿塗料は、バインダー樹脂の溶液、及びこの溶液中に分散した乾燥剤から構成され、乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される。
【０００７】
吸湿塗料の総量を１００重量％として、乾燥剤の量は、１０重量％〜２４重量％の範囲にあり、バインダー樹脂の量は、６重量％〜１８重量％部の範囲にある。
【０００８】
乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとの混合物が使用される。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、４０重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、３０重量％〜６０重量％の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。好適に、混合物中の無水塩化マグネシウムの量は６０重量％であり、酸化マグネシウムの量は４０重量％である。
【０００９】
本発明の吸湿塗料は、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を適宜に利用して、任意の厚さや広さのシート状又はその他の形状の吸湿材の基材又は物品の任意の形状の表面の全部又は一部に塗布し、乾燥して、この基材又は物品の表面に乾燥剤層を形成するものである。
【００１０】
本発明では、乾燥剤として、上記の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムにさらにゼオライト（沸石ともいう）を混ぜた混合物が使用される。本発明の吸湿塗料の乾燥時（乾燥剤層の形成時）に、ゼオライトに吸着したバインダー樹脂の溶液が気泡となって揮発し、この気泡により、乾燥剤層の表面から乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤へと達する通気孔が形成され、これにより、乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤を有効に利用できる。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、２５重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、１８重量％〜６０重量％の範囲にあり、ゼオライトの量は、４０重量％以下の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。
【００１１】
本発明に従ったシート状の吸湿材すなわち吸湿シートは、織布、不織布、発泡体、紙、プラスチックフィルムなどから選択される基材フィルム、この基材フィルムの表面に形成した乾燥剤層から構成される。この吸湿シートは、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を利用して、基材フィルムの表面に上記本発明の吸湿塗料を塗布し、これを乾燥させることによって製造され、乾燥剤層には、上記の乾燥剤が、分散して、バインダー樹脂で固定されている。本発明の吸湿シートの厚さは、１００μｍ以下の範囲にある。
【００１２】
本発明に従った吸湿シートは、乾燥剤層の表面に貼り付けた透湿性フィルムからさらに構成され得る。透湿性フィルムとして、表裏にわたって連続する通気孔を有する織布、不織布などからなるフィルムや、表裏に貫通する通気孔を形成した紙、プラスチック材料などからなるフィルムを使用してもよく、また、フィルム自体が透湿性を有するアセテートフィルム、セロハンフィルムなどを使用してもよい。この本発明の吸湿シートの厚さ（透湿性フィルムの厚さを含む）は、１００μｍ以下の範囲にある。
【発明の効果】
【００１３】
本発明が以上のように構成されるので、以下のような効果を奏する。
【００１４】
１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性の吸湿材を製造できる吸湿塗料を提供できる。
【００１５】
物品の表面上に吸湿塗料を直接スプレーで吹き付け、乾燥させるだけの容易簡単な作業で、物品の表面上に乾燥剤層を直接形成できる。乾燥剤がバインダー樹脂で固定されているので、乾燥剤が乾燥剤層から脱粒し難い。
【００１６】
シートの表面上に吸湿塗料をスプレーで吹き付け、乾燥させるだけの容易簡単な作業で、シートの表面の全部又は一部に乾燥剤層を形成でき、このシートで物品を包装して物品の防湿や吸湿をすることができ、また、このシートを適当な形状及び大きさにカットして、これを物品を収容する袋内に入れて物品の防湿や吸湿ができる。
【００１７】
１００μｍ以下の厚さで嵩張らない高い吸湿性の吸湿シートを提供できる。ここで、吸湿シートの基材フィルムの表面に形成した乾燥剤層において、乾燥剤がバインダー樹脂で固定されているので、乾燥剤が乾燥剤層から脱粒し難い。
【００１８】
この吸湿シートで物品を包装して物品の防湿や吸湿をすることができ、また、この吸湿シートを適当な形状及び大きさにカットして、これを物品を収容する袋や容器内に入れて物品の防湿や吸湿ができる。
【００１９】
本発明に従った吸湿材は、１００μｍ以下の厚さなので、狭い空間内に配置でき、この狭い空間内の防湿や吸湿ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
本発明の吸湿塗料は、バインダー樹脂の溶液中に乾燥剤を分散させたものである。乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される。
【００２１】
吸湿塗料の総量を１００重量％として、乾燥剤の量は、１０重量％〜２４重量％の範囲にあり、バインダー樹脂の量は、６重量％〜１８重量％の範囲にある。
【００２２】
バインダー樹脂の溶液は、ポリエステル系、ポリウレタン系などのバインダー樹脂を有機溶剤に溶解したものであり、イソシアネートなどの硬化剤をさらに添加し得る。また、吸湿塗料のゲル化を防ぐため、ジメチルホルムアミドをさらに添加してもよい。
【００２３】
乾燥剤として、自重を超える水分を吸収し、吸収した水分をマグネシアセメントとして固化する粒状の無水塩化マグネシウムと粒状の酸化マグネシウムとの混合物が使用される。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、４０重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、３０重量％〜６０重量％の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。好適に、無水塩化マグネシウムの量は６０重量％であり、酸化マグネシウムの量は４０重量％である。
【００２４】
この乾燥剤は、塊状又は粒状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムを所定の量で混合してから（又は混合しながら）平均粒径０．０１μｍ〜５０μｍの範囲にある大きさの粒子に粉砕して得られたものである。乾燥剤を構成する粒子の一部は、粉砕中の酸化マグネシウムのセメント化により、酸化マグネシウムに無水塩化マグネシウムが付着したものとなっている。
【００２５】
好適に、この乾燥剤として、塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを６０重量％：４０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕して得られたものが使用される。
【００２６】
本発明の吸湿塗料は、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を適宜に利用して、任意の厚さや広さのシート状又はその他の形状の吸湿材の基材又は物品の任意の形状の表面の全部又は一部に塗布し、乾燥して、この基材又は物品の表面に乾燥剤層を形成するものである。
【００２７】
本発明では、乾燥剤として、上記の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムにさらにゼオライト（沸石ともいう）を混ぜた混合物が使用される。本発明の吸湿塗料の乾燥時（乾燥剤層の形成時）に、ゼオライトに吸着したバインダー樹脂の溶液が気泡となって揮発し、この気泡により、乾燥剤層の表面から乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤へと達する通気孔が形成され、これにより、乾燥剤層の下層部分に位置する乾燥剤を有効に利用できる。この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は、２５重量％〜７０重量％の範囲にあり、酸化マグネシウムの量は、１８重量％〜６０重量％の範囲にあり、ゼオライトの量は、４０重量％以下の範囲にある（混合物の総量を１００重量％とする）。好適に、この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は５４重量％であり、酸化マグネシウムの量は３６重量％であり、ゼオライトの量は１０重量％である。より好適に、この混合物中の無水塩化マグネシウムの量は４５重量％、酸化マグネシウムの量は３０重量％、ゼオライトの量は２５重量％である。ゼオライトとして、平均粒径０．０１μｍ〜５０μｍの範囲にあるものが使用される。
【００２８】
この乾燥剤は、塊状又は粒状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムを所定の量で混合してから（又は混合しながら）平均粒径０．０１μｍ〜５０μｍの範囲にある大きさの粒子に粉砕し（又は粉砕しながら）、これに、さらに所定の量のゼオライトを混合したものである。乾燥剤を構成する粒子の一部は、粉砕中の酸化マグネシウムのセメント化により、酸化マグネシウムに無水塩化マグネシウムやゼオライトが付着したものとなっている。
【００２９】
好適に、この乾燥剤として、塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを５４重量％：３６重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを１０重量％の割合で混合して得られたものが使用される。より好適に、乾燥剤として、塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを４５重量％：３０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを２５重量％の割合で混合して得られたものが使用される。
【００３０】
図１に示すように、本発明に従ったシート上の吸湿材すなわち吸湿シート１０は、織布、不織布、発泡体、紙、プラスチックフィルムなどから選択される基材フィルム１１の表面に乾燥剤層１２を形成したものである。この吸湿シート１０は、ロールコーター、コンマコーター、スプレーなどの既知の塗工技術を利用して、基材フィルム１１の表面に上記の吸湿塗料を塗布し、これを乾燥させることによって製造され、乾燥剤層１２には、上記の乾燥剤が、バインダー樹脂で分散して固定される。乾燥剤層１３を厚くすると、乾燥剤層１３中に固定される乾燥剤の量が増加するので、吸湿性が高くなるが、乾燥剤層１３が厚くなりすぎると嵩張るので、乾燥剤層１３の厚さは、必要に応じて適宜選定できる。本発明に従った吸湿シートの厚さは、好適に、１００μｍ以下の範囲にある。
【００３１】
本発明に従った吸湿シートは、図示のように、乾燥剤層１２の表面に貼り付けた透湿性フィルム１３からさらに構成され得る。この透湿性フィルムとして、織布、不織布などの布や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルなどのプラスチック材料からなるフィルムにエンボスなどの既知の穿孔技術を利用して通気孔を形成したものが使用される。この通気孔の大きさを大きくし、その個数を多くすると、吸湿シートの吸湿性が高くなるので、通気孔の大きさと個数を選定して、吸湿シートの吸湿速度が調節できる。また、透湿性フィルムとして、フィルム自体が透湿性を有するアセテートフィルム、セロハンフィルムなどを使用してもよい。この本発明の吸湿シートの厚さ（透湿性フィルム１３の厚さを含む）は、好適に、１００μｍ以下の範囲にある。
【００３２】
＜実施例１＞ 本発明に従った吸湿塗料を製造し、この吸湿塗料を使用して、本発明に従った実施例１の吸湿シートを製造した。
【００３３】
塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを６０重量％：４０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕して得られた乾燥剤（１５０重量部）と、ポリエステル系樹脂（８４．９重量部）と、酢酸エチル（３６．２重量部）と、メチルエチルケトン（７２．５重量部）と、トルエン（８９．４重量部）とをポットミルに投入し、７２時間攪拌し、これに７５重量％イソシアネート（２０重量部）を加えて、本発明に従った実施例１の吸湿塗料を製造した。
【００３４】
次に、コンマコーターを使用して、この吸湿塗料をポリエステルフィルム（厚さ２４μｍ）の表面に塗布し、乾燥して、ポリエステルフィルムの表面に乾燥剤層（厚さ１１μｍ）を形成して、本発明に従った実施例１の吸湿シート（厚さ３５μｍ）を製造した。
【００３５】
＜実施例２＞ 本発明に従った吸湿塗料を製造し、この吸湿塗料を使用して、本発明に従った実施例２の吸湿シートを製造した。
【００３６】
塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを５４重量％：３６重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを１０重量％の割合で混合して得られた乾燥剤（１５０重量部）と、ポリエステル系樹脂（８４．９重量部）と、酢酸エチル（３６．２重量部）と、メチルエチルケトン（７２．５重量部）と、トルエン（８９．４重量部）とをポットミルに投入し、７２時間攪拌し、これに７５重量％イソシアネート（２０重量部）を加えて、本発明に従った実施例２の吸湿塗料を製造した。
【００３７】
次に、コンマコーターを使用して、この吸湿塗料をポリエステルフィルム（厚さ２４μｍ）の表面に塗布し、乾燥して、ポリエステルフィルムの表面に乾燥剤層（厚さ１１μｍ）を形成して、本発明に従った実施例２の吸湿シート（厚さ３５μｍ）を製造した。
【００３８】
＜実施例３＞ 本発明に従った吸湿塗料を製造し、この吸湿塗料を使用して、本発明に従った実施例３の吸湿シートを製造した。
【００３９】
塊状の無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとを４５重量％：３０重量％の割合で混合しながら平均粒径３μｍの大きさに粉砕し、これに、さらに平均粒径０．１μｍの天然ゼオライトを２５重量％の割合で混合して得られた乾燥剤（１５０重量部）と、ポリエステル系樹脂（８４．９重量部）と、酢酸エチル（３６．２重量部）と、メチルエチルケトン（７２．５重量部）と、トルエン（８９．４重量部）とをポットミルに投入し、７２時間攪拌し、これに７５重量％イソシアネート（２０重量部）を加えて、本発明に従った実施例３の吸湿塗料を製造した。
【００４０】
次に、コンマコーターを使用して、この吸湿塗料をポリエステルフィルム（厚さ２４μｍ）の表面に塗布し、乾燥して、ポリエステルフィルムの表面に乾燥剤層（厚さ１１μｍ）を形成して、本発明に従った実施例３の吸湿シート（厚さ３５μｍ）を製造した。
【００４１】
＜吸湿試験＞ 上記実施例１〜３の吸湿シートをＡ４版の大きさにカットし、３０℃、４０％相対湿度の恒温恒湿槽内に１０時間放置し、その後、３０℃、６０％相対湿度の恒温恒湿槽内に放置し、各吸湿シートの重量変化から各吸湿シートの吸湿率（吸湿性）を算出した。
【００４２】
試験結果を下記の表１に示す。
【表１】
【００４３】
表１に示すように、本発明に従った吸湿シートは、１００μｍ以下の厚さでも、３０％を超える高い吸湿率を有し、また、ゼオライトを加えると、より長時間、高い吸湿率を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】図１は、本発明に従った吸湿シートの断面図である。
【符号の説明】
【００４５】
１０・・・吸湿シート
１１・・・基材フィルム
１２・・・乾燥剤層
１３・・・透湿性フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項１】
吸湿塗料であって、
バインダー樹脂の溶液、及び
この溶液中に分散した乾燥剤、
から成り、
前記乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、前記乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される、
ところの吸湿塗料。
【請求項２】
当該吸湿塗料の総量を１００重量％として、
前記乾燥剤の量が、１０重量％〜２４重量％の範囲にあり、
前記バインダー樹脂の量が、６重量％〜１８重量％の範囲にある、
ところの請求項１の吸湿塗料。
【請求項３】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムの混合物が使用される、ところの請求項１の吸湿塗料。
【請求項４】
前記混合物の総量を１００重量％として、
前記無水塩化マグネシウムの量が、４０重量％〜７０重量％の範囲にあり、
前記酸化マグネシウムの量が、３０重量％〜６０重量％の範囲にある、
ところの請求項３の吸湿塗料。
【請求項５】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとゼオライトの混合物が使用される、請求項１の吸湿塗料。
【請求項６】
前記混合物の総量を１００重量％として、
前記無水塩化マグネシウムの量が、２５重量％〜７０重量％の範囲にあり、
前記酸化マグネシウムの量が、１８重量％〜６０重量％の範囲にあり、
前記ゼオライトの量が、４０重量％以下の範囲にある、
ところの請求項５の吸湿塗料。
【請求項７】
吸湿シートであって、
基材フィルム、
前記基材フィルムの表面に形成した乾燥剤層であって、前記乾燥剤中に、乾燥剤がバインダー樹脂で分散して固定される、ところの乾燥剤層、
から成り、
前記乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、前記乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される、
ところの吸湿シート。
【請求項８】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムの混合物が使用される、ところの請求項７の吸湿シート。
【請求項９】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとゼオライトの混合物が使用される、ところの請求項７の吸湿シート。
【請求項１０】
前記乾燥剤層の表面に貼り付けた透湿性フィルム、
からさらに成る請求項７の吸湿シート。
【請求項１１】
当該吸湿シートの厚さが、１００μｍ以下の範囲にある、ところの請求項７の吸湿シート。
【請求項１２】
当該吸湿シートの厚さが、１００μｍ以下の範囲にある、ところの請求項１０の吸湿シート。
【請求項１】
吸湿塗料であって、
バインダー樹脂の溶液、及び
この溶液中に分散した乾燥剤、
から成り、
前記乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、前記乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される、
ところの吸湿塗料。
【請求項２】
当該吸湿塗料の総量を１００重量％として、
前記乾燥剤の量が、１０重量％〜２４重量％の範囲にあり、
前記バインダー樹脂の量が、６重量％〜１８重量％の範囲にある、
ところの請求項１の吸湿塗料。
【請求項３】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムの混合物が使用される、ところの請求項１の吸湿塗料。
【請求項４】
前記混合物の総量を１００重量％として、
前記無水塩化マグネシウムの量が、４０重量％〜７０重量％の範囲にあり、
前記酸化マグネシウムの量が、３０重量％〜６０重量％の範囲にある、
ところの請求項３の吸湿塗料。
【請求項５】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとゼオライトの混合物が使用される、請求項１の吸湿塗料。
【請求項６】
前記混合物の総量を１００重量％として、
前記無水塩化マグネシウムの量が、２５重量％〜７０重量％の範囲にあり、
前記酸化マグネシウムの量が、１８重量％〜６０重量％の範囲にあり、
前記ゼオライトの量が、４０重量％以下の範囲にある、
ところの請求項５の吸湿塗料。
【請求項７】
吸湿シートであって、
基材フィルム、
前記基材フィルムの表面に形成した乾燥剤層であって、前記乾燥剤中に、乾燥剤がバインダー樹脂で分散して固定される、ところの乾燥剤層、
から成り、
前記乾燥剤として、４０℃、９０％相対湿度で放置したとき、前記乾燥剤の重量の７０％以上の水分を吸収するものが使用される、
ところの吸湿シート。
【請求項８】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムの混合物が使用される、ところの請求項７の吸湿シート。
【請求項９】
前記乾燥剤として、無水塩化マグネシウムと酸化マグネシウムとゼオライトの混合物が使用される、ところの請求項７の吸湿シート。
【請求項１０】
前記乾燥剤層の表面に貼り付けた透湿性フィルム、
からさらに成る請求項７の吸湿シート。
【請求項１１】
当該吸湿シートの厚さが、１００μｍ以下の範囲にある、ところの請求項７の吸湿シート。
【請求項１２】
当該吸湿シートの厚さが、１００μｍ以下の範囲にある、ところの請求項１０の吸湿シート。
【図１】
【公開番号】特開２００６−６３１１８（Ｐ２００６−６３１１８Ａ）
【公開日】平成１８年３月９日（２００６．３．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−２４４５３４（Ｐ２００４−２４４５３４）
【出願日】平成１６年８月２５日（２００４．８．２５）
【出願人】（３９００３７１６５）日本ミクロコーティング株式会社 (79)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年３月９日（２００６．３．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年８月２５日（２００４．８．２５）
【出願人】（３９００３７１６５）日本ミクロコーティング株式会社 (79)
【Ｆターム（参考）】
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