説明

周波数調整回路を備えた発振回路

【課題】広い温度範囲にわたって周波数を高精度に自動調整することができる周波数調整回路を備えた発振回路を得る。
【解決手段】第1コンデンサ回路23は、データ信号D0〜D2に応じた第1合成容量値をなし、選択回路24は、データ信号D0〜D2に応じて、データ入力端子Di3〜Di7に入力された5つの信号を、出力端子Q0〜Q7の内、連続した5つの出力端子から対応して第2コンデンサ回路25に出力し、第2コンデンサ回路25は、選択回路24から出力されたデータ信号に応じた第2合成容量値をなすようにして、第1コンデンサ回路23で選択された第1合成容量値が大きくなるにつれて、調整に用いる第2コンデンサ回路25の第2合成容量値を大きい系列にシフトするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子を用いた発振回路に関し、特に温度変化による周波数変動を自動調整する周波数調整回路を備えた発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電振動子(以下、振動子とは圧電振動子を示す)を用いた発振回路では、同じ品種の振動子を使用しても振動子間のバラツキによって発振周波数が異なっていた。
また、図4で示すように、同一の振動子においても周囲温度の影響を受けて発振周波数が変化していた。図4の場合では、25℃付近では周波数の偏差がほぼ0であったものが、−50℃では約−120ppmとなり、100℃では約−180ppmとなって周波数が低くなってしまう。このため、広い温度範囲にわたって高精度の周波数を得るようにする必要がある場合は、温度による周波数の変動を補正する周波数調整回路が必要であった。
【0003】
更に、反転増幅回路の入力端と出力端との間に振動子を接続し、該入力端と該出力端に負荷容量を接続した構成の発振回路では、図5に示すように、周波数変化と該負荷容量の関係はリニアではない。すなわち、水晶発振回路の負荷容量の変化量に対する発振周波数の変化量は、負荷容量が小さいときは、負荷容量の小さい変化で発振周波数は大きく変化するが、負荷容量が大きい場合は、同じ負荷容量の変化に対して、発振周波数の変化量は小さくなる。なお、負荷容量とは入力に接続した容量と、出力に接続した容量を直列接続した場合の合成容量である。
【0004】
図6は、周波数調整回路を有する発振回路の従来例を示した図である(例えば、特許文献1参照。)。
発振回路100は、水晶振動子101、帰還抵抗102、反転増幅回路103、ゲートコンデンサ104、ドレインコンデンサ105、容量可変装置106で構成されている。ゲートコンデンサ104とドレインコンデンサ105は、複数のコンデンサでそれぞれ構成されており、容量可変装置106によって該各コンデンサの接続を切り換えて、容量を可変できるようにしていた。
【0005】
このような発振回路で周波数調整を行う場合は、容量可変装置106によって、ゲートコンデンサ104の容量とドレインコンデンサ105の容量を同時に変更していた。このため、ゲートコンデンサ104の容量か、ドレインコンデンサ105の容量のどちらか一方だけを変更する場合よりも、可変容量値を小さくすることができる。また、ゲートコンデンサ104の容量とドレインコンデンサ105の容量との差が小さくなり、発振の安定性が向上する等のメリットがあった。
【0006】
図7は、周波数調整回路を含む発振回路の他の回路例を示した図である(例えば、特許文献2参照。)。
図7の発振回路110は、水晶振動子111、帰還抵抗112、反転増幅回路113、ゲートコンデンサ114、ドレインコンデンサ115、ゲート容量調整用コンデンサ116〜119、固定コンデンサ120、スイッチ121〜124及びPROM125で構成されている。
【0007】
このため、スイッチ121〜124をオン/オフさせて得られるゲート容量調整用コンデンサ116〜119の合成容量は、ゲート容量調整用コンデンサ116〜119のコンデンサを並列に接続した場合に得られる容量値の逆数で表される。すなわち、ゲート容量調整用コンデンサがn個の場合で、n個のゲート容量調整用コンデンサの最大容量をCmaxとし、nを1〜15までの整数とすると、合成容量Cadjは、Cadj=n/15×Cmaxとなる。このため、図5で示したように、負荷容量と周波数偏差の関係が非線形の場合には、1ステップ辺りの周波数変化が比較的均等になるような調整を行うことができた。
【特許文献1】特開平3−155206号公報
【特許文献2】特開平11−355043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図6のような回路では、特定の温度だけでしか調整することができないため、広範囲の温度環境下で使用する場合は周波数が大きくずれるという問題があった。また、ゲートコンデンサ104の容量とドレインコンデンサ105の容量を同時に変更するため、ゲートコンデンサ104とドレインコンデンサ105が同じ数のコンデンサで形成されている場合、各々単独に調整することができる方式よりも調整できるステップ数が少なくなるため、同じステップ数を確保する場合はコンデンサの数が増えてしまうという問題があった。このため、水晶振動子ごとのバラツキが大きく、しかも高精度に調整する必要がある場合は、ゲートコンデンサ104とドレインコンデンサ105を形成するために多くのコンデンサが必要であった。
【0009】
また、図7の回路でも、特定の温度だけでしか調整することができないため、広範囲の温度環境下で使用する場合は周波数が大きくずれてしまうという問題があった。なお、調整可能な最大容量は、ゲート容量調整用コンデンサ116〜119の最大容量Cmaxとなり、調整容量を並列に接続する方式よりも、合成容量の最大値が1/2に減少してしまう。すなわち、同じ調整範囲を確保するためには2倍のコンデンサ容量が必要になる。これは、調整用コンデンサをICに内蔵した場合、コンデンサは大きな面積を必要とするため、チップサイズが大きくなってしまい、コストアップの要因になると考えられる。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、広い温度範囲にわたって周波数を高精度に自動調整することができる周波数調整回路を備えた発振回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る発振回路は、所定の周波数の信号を生成して出力する発振回路において、
圧電振動子の両端に所定の第1コンデンサ及び第2コンデンサを対応して接続した発振回路をなす発振回路部と、
前記第1コンデンサ及び第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変えて、前記発振回路部の発振周波数の調整を行う周波数調整回路部と、
を備え、
前記周波数調整回路部は、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す情報に応じて、前記第1コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変え、該コンデンサの容量に応じて、前記第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変えるものである。
【0012】
具体的には、前記周波数調整回路部は、前記第1コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量が大きいほど、前記第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量が大きくなるように、前記第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変えるようにした。
【0013】
この場合、前記周波数調整回路部は、
前記第1コンデンサに並列に接続され、入力された制御信号に応じた容量をなす第1可変容量回路と、
前記第2コンデンサに並列に接続され、入力された制御信号に応じた容量をなす第2可変容量回路と、
前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す前記情報に応じて、前記第1可変容量回路及び第2可変容量回路の各容量の制御を行う容量制御回路と、
を備え、
前記容量制御回路は、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す前記情報に応じて前記第1可変容量回路の容量を変え、該第1可変容量回路の容量に応じて前記第2可変容量回路の容量を変えるようにした。
【0014】
また、前記第1可変容量回路は、2のべき乗の系列を有する容量をなす複数のコンデンサを備え、前記容量制御回路からの制御信号に応じて該各コンデンサを選択的に前記第1コンデンサに並列に接続するようにした。
【0015】
また、前記第2可変容量回路は、2のべき乗の系列を有する容量をなす複数のコンデンサを備え、前記容量制御回路からの制御信号に応じて該各コンデンサを選択的に前記第2コンデンサに並列に接続するようにした。
【0016】
また、前記第2可変容量回路は、前記第1可変容量回路が備える前記コンデンサの数よりも多い前記コンデンサを備えるようにしてもよい。
【0017】
また、前記容量制御回路は、前記第1可変容量回路及び第2可変容量回路における各コンデンサを選択するためのデータが格納されるメモリ回路部を備え、該メモリ回路部は、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す前記情報に応じて、格納されるデータが変わるようにした。
【0018】
この場合、前記容量制御回路は、前記メモリ回路部に格納されたデータにおける1つ以上の所定のビットデータに応じて前記第1可変容量回路のコンデンサを選択して前記第1コンデンサに並列に接続すると共に前記第2可変容量回路のコンデンサを選択し、該第2可変容量回路の選択されたコンデンサの内、前記データの残りのビットデータに応じて選択したコンデンサを前記第2コンデンサに並列に接続するようにした。
【0019】
また、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態は、前記発振回路部の周囲温度であるようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の発振回路によれば、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す前記情報、例えば周囲温度の情報に応じて、前記第1コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変え、該コンデンサの容量に応じて、前記第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変えるようにしたことから、周波数の調整分解能を維持しながら周波数調整範囲を広くすることができ、広い温度範囲においても周波数の調整が可能になった。
【0021】
また、前記周波数調整回路部における容量制御回路に備えられた前記メモリ回路部に格納されたデータにおける1つ以上の所定のビットデータに応じて前記第1可変容量回路のコンデンサを選択して前記第1コンデンサに並列に接続すると共に前記第2可変容量回路のコンデンサを選択し、該第2可変容量回路の選択されたコンデンサの内、前記データの残りのビットデータに応じて選択したコンデンサを前記第2コンデンサに並列に接続するようにした。このことから、制御するコンデンサの数を少なくすることができ、しかも、周囲温度の情報をなす温度補償データ等を記憶するメモリ容量を大幅に削減することができ、コストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
第1の実施の形態.
図1は、本発明の第1の実施の形態における発振回路の回路例を示した図である。
図1において、発振回路1は、水晶発振回路2と、水晶発振回路2の発振周波数の調整を行う周波数調整回路3とを備えている。
水晶発振回路2は、水晶振動子を使用したコルピッツ型の発振回路をなしており、水晶振動子11、反転増幅回路12、帰還抵抗R11、出力抵抗R12、ゲートコンデンサCG及びドレインコンデンサCDで構成されている。周波数調整回路3は、メモリ回路21、ラッチ回路22、第1コンデンサ回路23、選択回路24及び第2コンデンサ回路25で構成されている。
【0023】
なお、水晶発振回路2は発振回路部を、周波数調整回路3は周波数調整回路部をそれぞれなし、ドレインコンデンサCDが第1コンデンサをなす場合はゲートコンデンサCGは第2コンデンサをなし、このとき第1コンデンサ回路23は第1可変容量回路を、第2コンデンサ回路25は第2可変容量回路をそれぞれなす。また、ゲートコンデンサCGが第1コンデンサをなす場合はドレインコンデンサCDが第2コンデンサをなし、このとき第1コンデンサ回路23は第2可変容量回路を、第2コンデンサ回路25は第1可変容量回路をそれぞれなす。また、メモリ回路21、ラッチ回路22及び選択回路24は容量制御回路をなし、メモリ回路21及びラッチ回路22はメモリ回路部をなす。
【0024】
水晶発振回路2において、反転増幅回路12の入力端と接地電圧GNDとの間にはゲートコンデンサCGが接続されており、反転増幅回路12の入力端と出力端との間には、帰還抵抗R11と、出力抵抗R12及び水晶振動子11の直列回路とが並列に接続されている。出力抵抗R12と水晶振動子11との接続部と接地電圧GNDとの間にはドレインコンデンサCDが接続され、出力抵抗R12と水晶振動子11との接続部は、水晶発振回路2の出力端子OUTに接続されている。出力端子OUTは、発振回路1の出力端子をもなす。
【0025】
メモリ回路21は、例えば8ビット×n(nは整数でアドレス番号である)のメモリ回路で、水晶発振回路2の温度補償データを記憶するためのものであり、アドレス設定信号入力端子AD、リードライト信号入力端子RW及びデータ入出力端子Dio0〜Dio7を備えている。メモリ回路21は、リードライト信号がリードを示している場合は、アドレス設定信号に応じて、記憶しているデータをデータ入出力端子Dio0〜Dio7から出力する。アドレス設定信号は、図示しない温度検出回路から出力される信号であり、検出した温度に応じたアドレスを指定する信号である。
【0026】
ラッチ回路22は、データ設定信号入力端子Dinと、データ出力端子Do0〜Do7とを備えており、データ出力端子Do0〜Do7は、メモリ回路21のデータ入出力端子Dio0〜Dio7に対応して接続されている。ラッチ回路22は、入力されたデータ設定信号を一時的に記憶し、該記憶したデータをラッチ回路22のデータ出力端子Do0〜Do7から出力する。該出力されたデータは、メモリ回路21に書き込む信号であると共に、第1コンデンサ回路23及び第2コンデンサ回路25の各アナログスイッチを制御する信号でもある。このため、ラッチ回路22は、水晶振動子個々の周波数偏差データと温度補償用のデータを作成するためと、該作成したデータをメモリ回路21に書き込むために使用される。
【0027】
第1コンデンサ回路23は、インバータ30〜32、アナログスイッチS30〜S32及びコンデンサCD0〜CD2で構成されている。コンデンサCD0の容量が最も小さく、コンデンサCD1の容量はコンデンサCD0の2倍になるように、コンデンサCD2の容量はコンデンサCD1の2倍になるようにそれぞれ設定されている。アナログスイッチS30〜S32の各一端は接続され、該接続部は出力端子OUTに接続されている。アナログスイッチS30〜S32の各他端と接地電圧GNDとの間には、コンデンサCD0〜CD3が対応して接続されている。
【0028】
アナログスイッチS30の各制御電極にはインバータ30の入力端と出力端が対応して接続され、アナログスイッチS31の各制御電極にはインバータ31の入力端と出力端が対応して接続されており、アナログスイッチS32の各制御電極にはインバータ32の入力端と出力端が対応して接続されている。インバータ30の入力端とアナログスイッチS30の制御電極との接続部はメモリ回路21のデータ入出力端子Dio0に、インバータ31の入力端とアナログスイッチS31の制御電極との接続部はメモリ回路21のデータ入出力端子Dio1に、インバータ32の入力端とアナログスイッチS32の制御電極との接続部はメモリ回路21のデータ入出力端子Dio2にそれぞれ接続されている。
【0029】
選択回路24は、データ入力端子Di0〜Di7がメモリ回路21のデータ入出力端子Dio0〜Dio7に対応して接続されており、データ入力端子Di0〜Di2に入力された信号の状態に応じて、データ入力端子Di3〜Di7に入力された5つの信号を、出力端子Q0〜Q7の内、5つの出力端子、一例としては連続した5つの出力端子から対応して出力する。例えば、図2で示すように、選択回路24は、データ入力端子Di0、Di1、Di2が[0、0、0]と[1、0、0]である場合は、データ入力端子Di3〜Di7の信号を出力端子Q0〜Q4から出力している。データ信号[D0、D1、D2]が[0、1、0]の場合は出力端子Q1〜Q5で出力し、データ信号[D0、D1、D2]が[1、1、0]と[0、0、1]と[1、0、1]の場合は出力端子Q2〜Q6で出力し、データ信号[D0、D1、D2]が[0、1、1]と[1、1、1]の場合は出力端子Q3〜Q7で出力している。
【0030】
第2コンデンサ回路25は、インバータ40〜47、アナログスイッチS40〜S47及びコンデンサCG0〜CG7で構成されている。コンデンサCG0の容量が最も小さく、コンデンサCG1の容量はコンデンサCG0の2倍になるように、コンデンサCG2の容量はコンデンサCG1の2倍になるようにといったように、コンデンサCG0〜CG7の各容量は、2のべき乗の系列で大きくなるように設定されている。アナログスイッチS40〜S47の各一端は接続され、該接続部は、水晶発振回路2の水晶振動子11とゲートコンデンサCGとの接続部に接続されている。
【0031】
アナログスイッチS40〜S47の各他端と接地電圧GNDとの間には、コンデンサCG0〜CG7が対応して接続されている。アナログスイッチS40の各制御電極にはインバータ40の入力端と出力端が対応して接続され、アナログスイッチS41の各制御電極にはインバータ41の入力端と出力端が対応して接続されるといったように、アナログスイッチS40〜S47の各制御電極には、インバータ40〜47の入力端と出力端が対応して接続されている。インバータ40の入力端とアナログスイッチS40の制御電極との接続部は選択回路24の出力端子Q0に接続され、インバータ41の入力端とアナログスイッチS41の制御電極との接続部は選択回路24の出力端子Q1に接続されるというように、インバータ40〜47の各入力端と対応するアナログスイッチS40〜S47の制御電極との各接続部は、選択回路24の対応する出力端子Q0〜Q7にそれぞれ接続されている。
【0032】
このような構成において、図3のデータテーブルを参照しながら図1の回路の動作について説明する。
図3のデータテーブルは、第1コンデンサ回路23で生成可能な第1合成容量値No1〜No8に、第2コンデンサ回路25で生成可能な第2合成容量値を組み合わせた場合における、発振周波数の偏差及び調整可能な周波数範囲である調整値を示している。例えば、第1合成容量値No1は、メモリ回路21のデータ入出力端子Dio0〜Dio2から出力されるデータ信号D0〜D2がすべて0(ローレベル)である場合の容量値を示している。このとき、第1コンデンサ回路23のアナログスイッチS30〜S32はすべてオフし、第1コンデンサ回路23の第1合成容量値No1は0になる。
【0033】
また、第1合成容量値No1の場合、選択回路24は、図2で示しているように、データ入力端子Di3〜Di7に入力されたデータ信号D3〜D7を出力端子Q0〜Q4から出力し、出力端子Q5〜Q7をそれぞれローレベルに固定する。このため、第2コンデンサ回路25における第2合成容量値は、コンデンサCG0の容量を1とすると、0〜31の範囲で変えることができ、この場合、図3から、周波数の調整値は約120ppm〜160ppmまでであり、調整幅は約40ppmである。
次に、第1合成容量値No2の場合は、データ信号D0が1になるが、図2から分かるように、選択回路24は、第1合成容量値No1のときと同じ動作を行う。このことから、第2コンデンサ回路25における第2合成容量値は、コンデンサCG0の容量を1とすると、0〜31の範囲で変えることができ、この場合、図4から、周波数の調整値は約92ppm〜127ppmまでであり、調整幅は約35ppmになる。
【0034】
次に、第1合成容量値No3の場合は、メモリ回路21からのデータ信号[D0、D1、D2]が[0、1、0]となり、選択回路24は、図2で示しているように、データ入力端子Di3〜Di7に入力されたデータ信号D3〜D7を出力端子Q1〜Q5から出力し、出力端子Q0、Q6及びQ7をそれぞれローレベルに固定する。このため、第2コンデンサ回路25における第2合成容量値は、コンデンサCG0の容量を1とすると、0〜62の範囲で変えることができるが、コンデンサCG0を選択することができなくなることから、第2合成容量の最小値は、第1合成容量値No1及びNo2の場合の2倍の容量になる。しかし、図3から分かるように、周波数の調整値は約47ppm〜100ppmまでであり、調整幅は約53ppmになっている。水晶発振回路2の全負荷容量値が増加して容量変化に対する周波数変化率が小さくなっているため、第2コンデンサ回路25で選択できるコンデンサの分解能が2倍になっても、周波数の分解能はそれほど大きくなっていない。しかも、選択可能な容量範囲が2倍になったため、周波数調整範囲は逆に少し増えている。
【0035】
同様に、第1合成容量値No4〜No6の場合に、第2コンデンサ回路25が選択できる第2合成容量値は、コンデンサCG0の容量を1とした場合に、0〜124となり、分解能は第1合成容量値No1のときの4倍になる。このときの調整値と調整幅は、第1合成容量値No4のときは約17ppm〜90ppmとなり調整幅は約73ppmであり、第1合成容量値No5のときは約4ppm〜70ppmとなり調整幅は約66ppmであり、第1合成容量値No6のときは約−8ppm〜56ppmとなり調整幅は約64ppmである。また、第1合成容量値No7とNo8の場合は、第2合成容量値は、コンデンサCG0の容量を1とした場合に、0〜248となり、分解能は第1合成容量値No1のときの8倍になる。このときの調整値と調整幅は、第1合成容量値No7のときは約−38ppm〜45ppmとなり調整幅は約83ppmであり、第1合成容量値No8のときは約−45ppm〜35ppmとなり調整幅は約80ppmである。
【0036】
このように、第1コンデンサ回路23で生成された第1合成容量値が大きくなるにつれて、調整に用いる第2コンデンサ回路25の第2合成容量値を大きい系列にシフトするようにしたことから、周波数調整範囲を広くとることができ、しかも周波数の調整ステップの最小値が大きくなるのを抑制することができる。
【0037】
また、メモリ回路21に記憶するデータは、従来であれば第1コンデンサ回路23のための3ビットに、第2コンデンサ回路25のための8ビットをプラスした11ビットが必要であるのに対して、本第1の実施の形態における発振回路1では、8ビットでよく、メモリ回路21の大幅な縮小を図ることができる。
【0038】
更に、第1コンデンサ回路23を設定した後、第2コンデンサ回路25によって、水晶発振回路2による発振周波数の微調整が行なわれるため、第1コンデンサ回路23で合成される容量の可変ステップをそれほど細かくする必要がないため、第1コンデンサ回路23を構成するコンデンサの数を第2コンデンサ回路25よりも少なくすることができる。
【0039】
なお、前記第1の実施の形態では、第1コンデンサ回路23に使用する各コンデンサの容量が2のべき乗の系列をなしている場合を例にして説明したが、これは一例であって2のべき乗に限定する必要はなく、第2コンデンサ回路25で調整可能な範囲を考慮して、2のべき乗とは異なる系列にしてもよい。
また、前記第1の実施の形態において、第1コンデンサ回路23及び第2コンデンサ回路25を構成するコンデンサの数は一例であり、これに限定するものではない。
【0040】
また、前記第1の実施の形態では、第1コンデンサ回路23の第1合成容量値を基に第2コンデンサ回路25で調整に用いるコンデンサ群を選択しているが、これを逆にしてもよい。すなわち、第1コンデンサ回路23と第2コンデンサ回路25のコンデンサの数を逆にし、第2コンデンサ回路25の第2合成容量値に応じて、第1コンデンサ回路23で調整に使用するコンデンサ群を選択するようにしてもよい。しかし、第1コンデンサ回路23の第1合成容量値を先に決定することで、調整回路を含めた発振回路の性格を決めることができるため、第1コンデンサ回路23の第1合成容量値で第2コンデンサ回路25の第2合成容量値を決定する方が望ましい。
【0041】
これは、反転増幅回路12の出力側のコンデンサ容量が大きいと、発振回路1の消費電流が増加するため、消費電流を少なくする場合は、第1コンデンサ回路23の第1合成容量値をできるだけ小さくなるように設定する必要がある。また、反転増幅回路12の入力側の容量よりも反転増幅回路12の出力側の容量を少し大きくすると、水晶発振回路2の安定性が向上するため、安定性を重視する場合は、第1コンデンサ回路23の第1合成容量値を、予想される反転増幅回路12の入力側の合成容量値よりもやや大きくなるように設定すればよい。このように、発振回路に特別な仕様を要求する場合は、先に第1コンデンサ回路23の第1合成容量値を決めた方がよい。
【0042】
なお、前記説明では、周囲温度の変動に対する水晶発振回路2の発振周波数の調整を行う場合を示したが、その他の要因で水晶発振回路2の発振周波数が変動する場合には、該変動要因の状態を示す情報をなすデータ設定信号及びアドレス設定信号を入力するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態における発振回路の回路例を示した図である。
【図2】図1の選択回路24の動作例を示した図である。
【図3】図1の第1コンデンサ回路23と第2コンデンサ回路25の各合成容量値の組み合わせた場合の周波数偏差の例を示した図である。
【図4】発振回路の温度特性の例を示した図である。
【図5】発振回路の負荷容量と周波数偏差との関係例を示した図である。
【図6】周波数調整回路を有する発振回路の従来例を示した図である。
【図7】周波数調整回路を有する発振回路の他の従来例を示した図である。
【符号の説明】
【0044】
1 発振回路
2 水晶発振回路
3 周波数調整回路
11 水晶振動子
12 反転増幅回路
21 メモリ回路
22 ラッチ回路
23 第1コンデンサ回路
24 選択回路
25 第2コンデンサ回路
30〜32,40〜47 インバータ
CG ゲートコンデンサ
CD ドレインコンデンサ
R11 帰還抵抗
R12 出力抵抗
CD0〜CD2,CG0〜CG7 コンデンサ
S30〜S32,S40〜S47 アナログスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の信号を生成して出力する発振回路において、
圧電振動子の両端に所定の第1コンデンサ及び第2コンデンサを対応して接続した発振回路をなす発振回路部と、
前記第1コンデンサ及び第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変えて、前記発振回路部の発振周波数の調整を行う周波数調整回路部と、
を備え、
前記周波数調整回路部は、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す情報に応じて、前記第1コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変え、該コンデンサの容量に応じて、前記第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変えることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記周波数調整回路部は、前記第1コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量が大きいほど、前記第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量が大きくなるように、前記第2コンデンサに並列に接続するコンデンサの容量を変えることを特徴とする請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
前記周波数調整回路部は、
前記第1コンデンサに並列に接続され、入力された制御信号に応じた容量をなす第1可変容量回路と、
前記第2コンデンサに並列に接続され、入力された制御信号に応じた容量をなす第2可変容量回路と、
前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す前記情報に応じて、前記第1可変容量回路及び第2可変容量回路の各容量の制御を行う容量制御回路と、
を備え、
前記容量制御回路は、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す前記情報に応じて前記第1可変容量回路の容量を変え、該第1可変容量回路の容量に応じて前記第2可変容量回路の容量を変えることを特徴とする請求項2記載の発振回路。
【請求項4】
前記第1可変容量回路は、2のべき乗の系列を有する容量をなす複数のコンデンサを備え、前記容量制御回路からの制御信号に応じて該各コンデンサを選択的に前記第1コンデンサに並列に接続することを特徴とする請求項3記載の発振回路。
【請求項5】
前記第2可変容量回路は、2のべき乗の系列を有する容量をなす複数のコンデンサを備え、前記容量制御回路からの制御信号に応じて該各コンデンサを選択的に前記第2コンデンサに並列に接続することを特徴とする請求項3又は4記載の発振回路。
【請求項6】
前記第2可変容量回路は、前記第1可変容量回路が備える前記コンデンサの数よりも多い前記コンデンサを備えることを特徴とする請求項4又は5記載の発振回路。
【請求項7】
前記容量制御回路は、前記第1可変容量回路及び第2可変容量回路における各コンデンサを選択するためのデータが格納されるメモリ回路部を備え、該メモリ回路部は、前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態を示す前記情報に応じて、格納されるデータが変わることを特徴とする請求項4、5又は6記載の発振回路。
【請求項8】
前記容量制御回路は、前記メモリ回路部に格納されたデータにおける1つ以上の所定のビットデータに応じて前記第1可変容量回路のコンデンサを選択して前記第1コンデンサに並列に接続すると共に前記第2可変容量回路のコンデンサを選択し、該第2可変容量回路の選択されたコンデンサの内、前記データの残りのビットデータに応じて選択したコンデンサを前記第2コンデンサに並列に接続することを特徴とする請求項7記載の発振回路。
【請求項9】
前記発振回路部の発振周波数における所定の変動要因の状態は、前記発振回路部の周囲温度であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−28292(P2010−28292A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184915(P2008−184915)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】