説明

哺乳動物サイトカインの用途;関連試薬

皮膚障害のための処置の方法が提供される。特定の処置において、この皮膚障害は一般的に炎症性の皮膚障害であり、不適当な創傷治癒を含む。サイトカイン分子を使用する方法が、提供される。本発明は、IL−23融合タンパク質の発見に部分的に基づく。例えば、p40サブユニットに連結したp19サブユニットを含む融合タンパク質は、種々のマウスモデルにおいて創傷治癒を高めた。本発明は処置または治癒を改善する方法を提供し、この方法は、被験体に有効量のIL−23アゴニストまたはIL−23アンタゴニストを投与する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に哺乳動物サイトカイン様分子の使用および関連試薬に関する。より具体的には、本発明は、皮膚の治癒または創傷の治癒(例えば、炎症性の皮膚状態)を調整する、哺乳動物サイトカイン様タンパク質およびそのインヒビターの同定に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
サイトカインは、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、樹状細胞およびマクロファージ)間のシグナル伝達および情報伝達を媒介する、小さなタンパク質である。これらのタンパク質は、増殖、成長、分化、移入、細胞活性化ならびに感染、外来の抗原および創傷に対する応答を含む、多くの細胞の活動を媒介する。
【0003】
特に重要なサイトカインのファミリーは、インターロイキン−6(IL−6)ファミリーである。これらのサイトカインは、広範囲の、多連鎖細胞表面レセプターを経由して伝達される、しばしば重複する生物学的な機能を示し、これらは典型的には、高い親和性であるサイトカイン特異的レセプター鎖および低い親和性であるシグナル伝達鎖によって形成される。レセプターサブユニットは、しばしばこのサイトカインサブファミリーのメンバー間で共有される。
【0004】
最近、サイトカインのIL−6ファミリーに構造的な相同性を有する、新しいらせん状のサイトカインが同定された。このタンパク質はp19と命名され、そしてIL−12のp19とp40サブユニットとの間のジスフィルド架橋複合体をなす新しい複合因子の一部であると示された。IL−23として公知でもあるこの新しいp19p40複合体は、活性化されたマウスおよびヒトの樹状細胞によって天然に発現され、そしてIL−12と類似であるが区別される生物学的活性を有する(例えば、Oppmannら、(2000)Immunity 13:715−725を参照のこと)。このIL−23のp19サブユニットはまた、「IL−23p19」として公知である。
【0005】
本発明は、IL−23、IL−23アゴニスト、ならびにそれらの改変体および誘導体を、皮膚障害の調節因子として同定および提供する。例えば、皮膚状態および皮膚障害または創傷治癒の処置または診断における使用について、以下を参照のこと:例えば、Fitzpatrickら(編)(1993)Dermatology in General Medicine 第4版、McGraw−Hill、NY;Bos(編)(1989)Skin Imuune System、CRC Press、Boca Raton、FL;Callen(1996)General Practice Dermatology、Appleton and Lange、Norwalk、CN;Rookら(編)(1998)Textbook of Dermatology、Blackwell Publ.、Malden、MA;HabiforおよびHabie(1995)Clinical Dermatology:A Color Guide to Diagnosis and Therapy、Mosby、Phila.、PA.;Grob(編)(1997)Epidemiology、Cause and Prevention of Skin Diseases、Blackwell、Malden、MA;HessおよびSalcido(2000)Wound Care、Springhouse Pub.Co.、Springhouse、PA;Maniら(1999)Chronic Wound Healing:Clinical Measurement and Basic、Balliere Tindall Ltd.、London、UK;WyngaardenおよびSmith(編)(1985)Cecil’s Textbook of Medicine、W.B.Saunders Co.、Phila.、PA;Berkow(編)(1982)The Merck Mannual of Diagnosis and Therapy、Merck Sharp & Dohme Research Laboratories、West Point、PA;Brauwaldら(編)(1991)Harrison’s Principles of Internal Medicine、第12版、McGraw−Hill、Inc.、NY、これらの全ては、本明細書中に参照として援用される。
【0006】
本発明は、創傷および創傷治癒(例えば、火傷、軟骨、神経および脊髄、筋、軟部組織、血管および血管形成、潰瘍および褥瘡、骨折および骨粗鬆症の創傷)の処置、予防および診断、ならびに皮膚の成長を改善する(例えば、収集部位または供与部位で皮膚移植において使用される)のための方法および試薬を提供する(例えば、YamaguchiおよびYoshikawa(2001)J.Dermatol.28:521−534;Cairnsら(1993)Arch.Surg.128:1246−1252;Homら(2002)Facial Plast.Surg.18:41−52;HackamおよびFord(2002)Surg.Infect.(Larchmt.)3(Suppl.1):S23−S35;Oshimaら(2002)Hum.Cell.15:118−128;Lalら(2000)Growth Horm.IGF Res.10(Suppl.B):S39−S43;RoseおよびHerndon(1997)Burns 23:S19−S26;Schryversら(2000)Arch.Phys.Med.Rehabil.81:1556−1562;Hidakaら(2002)Orthhop.Clin.North Am.33:439−446;Dagum(1998)J.Hand Ther.11:111−117;Couttsら(2001)Clin.Orthop.391(Suppl.)S217−S279;Larsson(2002)Scand.J.Surg.91:140−146;Goldstein(2000)Clin.Orthop.379(Suppl.)S113−S119;Liebermanら(2002)Mol.Therapy 6:141−147;Tuliら(2003)Arthritis Res.Ther.5:235−238;Liら(2003)Microsc.Res.Tech.60:107−114;van Hinsberghら(2001)936:426−437;Conwayら(2001)Cardiovasc.Res.49:507−521)。
【0007】
皮膚創傷治癒は、多くの段階を含む:炎症、まず好中球、そして後に単球/マクロファージでの炎症、新組織形成(マトリクス形成および新上皮の分化を含む)、そして最後に再構築および成熟。初期の炎症性段階は、血塊形成、感染の制御および血管新生を促進させ、そして成長因子を生成する。厳密に制御されていない場合、炎症は、病理学的な治癒(例えば、潰瘍または瘢痕)を導き得る。
【0008】
線維芽細胞は、一時的なマトリクスまたは肉芽形成組織に沈着し、一方新たに形成された一時的なマトリックスは、後に組織再構築プロセスにおいて分解される。細胞外マトリクスの分解は、プロテアーゼ(例えば、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)、ゼラチナーゼおよびコラゲナーゼ、ならびにプロテアーゼインヒビター)によって媒介される。マトリクスの形成および分解における不均衡が、一つの極端な状態では慢性潰瘍を導き、他の極端な状態では線維症を導く。例えば、一つの「過剰治癒応答」であるケロイドは、線維組織の派生物である(Michalikら(2001)J.Cell.Biol.154:799−814;Okadaら(1997)J.Cell.Biol.137:67−77;Fedykら(2001)J.Immunol.166:5749−5755;RavantiおよびKahari(2000)Int.J.Mol.Med.6:391−407;Peledら(2000)Clin.Past.Surg.27:489−500)。
【0009】
マトリクス形成および再上皮形成は、血管形成に依存する(Montesionsら(1997)J.Exp.Med.186:1615−1620;Malindaら(1998)J.Immunol.160:1001−1006)。
【0010】
創傷治癒に使用される成長因子は、抗微生物因子(例えば、デフェンシン、カテリシジン(cathelicidin)、分泌性プロテアーゼインヒビタおよびゼラチナーゼ関連リポカリン(lipocalin)(好中球由来))の発現を誘発する(Sorensenら(2003)J.Immunol.170:5583−5589)。
【0011】
創傷治癒において、例えば、血小板、単球/マクロファージ、T細胞および他の免疫細胞といった細胞は、創傷を浸潤し、そして組織の成長を制御する因子を生成する。これらの因子として、TGF、腫瘍壊死因子(TNF)、IL−1、IL−4、IL−6、オンコスタチンM、GRO−α、種々の血管形成の因子およびケモカインが挙げられる。これらの因子は順番に、例えば、細胞外マトリクスおよびメタロプロテアーゼの組織インヒビタ(TIMP)の発現について刺激する。(IhnおよびTamaki(2000)J.Immunol.165:2149−2155;Feugateら(2002)J.Cell.Biol.156:161−172)。線維形成性の細胞である線維芽細胞は、創傷の閉合および創傷の収縮のために重要である。線維芽細胞の集積によって特徴づけられる疾患状況は、肺線維症および強皮症を含む(Feugateら(2002)J.Cell.Biol.156:616−172)。
【0012】
皮膚および他の組織の創傷治癒は、免疫細胞、上皮細胞、線維芽細胞、間質細胞、筋線維芽細胞、平滑筋細胞、周皮細胞およびケラチノサイトの増殖および移入を包含する、複雑なプロセスである。
【0013】
治癒を測定するのに使用されるパラメーターには、治癒の速度、治癒創傷の破壊強度、上皮形成の度合、肉芽形成組織の厚さおよび細胞外マトリクスの密度が挙げられる(Matsudaら(1998)J.Exp.Med.187:297−306)。
【0014】
外傷性の障害および「筋の無負荷」(慢性的なベッドでの休養)で生じる、虚血または虚血再灌流は、好中性の浸潤を生じ、ここでこの好中球は、しばしば虚血によって引き起こされた損傷に対して、過度に組織損傷を生成する。治癒に対するこの好中球の有害効果と、IL−1またはTNFに対するアンタゴニストを含むサイトカインアンタゴニストの投与は調和し、サイトカインが通常の修復のために最終的に必要とされる場合でも、特定の条件下で創傷治癒を改善し得る(例えば、Ley(2003)Am.J.Physiol.Regul.Integr.Comp.Physiol.285:R718−R719;Gravesら(2001)J.Immunol.167:5316−5320を参照のこと)。本発明は、IL−23アンタゴニストを使用して好中球が誘発する組織損傷(例えば、外傷後、創傷後または長期のベッドでの休養後に)を阻害する方法を提供する。
【0015】
不適当な創傷治癒(例えば、皮膚創傷の)は、慢性的な不快または醜さを生じ得、そしてさらなる合併症(例えば、感染または脱水症)を導き得る。従って、予防的および治療的両方の、これらの状態の症状を軽減するための効果的な処置の必要性が存在する。あるいは、例えば異常な、あるいは改変されたこれらの組織の健康の、診断の方法は有用である。本発明は両方を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明は、IL−23融合タンパク質の発見に部分的に基づく。例えば、p40サブユニットに連結したp19サブユニットを含む融合タンパク質は、種々のマウスモデルにおいて創傷治癒を高めた。
【0017】
本発明は処置方法または治癒を改善する方法を提供し、この方法は、被験体に有効量のIL−23アゴニストまたはIL−23アンタゴニストを投与する工程を包含する。アゴニストまたはアンタゴニストが、IL−23のポリペプチドあるいはその誘導体または改変体;IL−23に、またはIL−23Rに特異的に結合する抗体に由来する結合組成物;あるいは、IL−23またはその誘導体または改変体のポリペプチドをコードする核酸、を含む上記の方法もまた、提供される。さらに、本発明は誘導体または改変体がIL−23ハイパーカイン;アゴニストが配列番号10の成熟配列の複合体;および配列番号12の成熟配列;を含む上記の方法を提供し、あるいは核酸が、さらに発現ベクターを含む、上記の方法を提供する。
【0018】
別の局面において、本発明は、処置方法または治癒を改善する方法を提供し、この方法は、被験体に有効量のIL−23アゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程を包含し、ここで、治癒は、皮膚創傷または皮膚性の創傷の治癒;潰瘍または移植片の治癒;または不適当な治癒、である。処置すること、または改善することが、治癒したか、または治癒中の創傷を破壊する圧力;治癒したかまたは治癒している創傷の剛性;創傷の治癒する速度;治癒したか、または治癒中の創傷の肉芽形成層の厚さ;創傷への細胞の動員;または抗微生物活性を増大する、上記の方法もまた提供される。さらに別の局面において、本発明はこの細胞が、CD11b,MHCクラスII細胞;単球/マクロファージ;CD31内皮細胞;または免疫細胞である、上記の方法を提供する。この動員が、肉芽形成組織中へ、またはその付近に対してである、上記の方法はまた、提供される;ここで、
増大された創傷を破壊する圧力が、創傷を破壊する圧力において、約15%または約20%の増大である;または、増大された剛性が、剛性において約15%または約20%の増大である、上記の方法もまた、提供される。別の実施形態において、本発明は、処置すること、または改善することが、増大された血管形成;または免疫監視を含む上記の方法;あるいは増大された血管形成が、ICAM−1またはICAM−2により媒介される上記の方法;または増大された免疫監視が、樹状細胞により媒介される、上記の方法を提供する。
【0019】
上記の発明のさらに別の局面は、処置方法または治癒を改善する方法を提供し、この方法は被験体に、有効量のIL−23のアゴニストまたはアンタゴニストを投与する工程を包含し、ここで、処置または治癒を改善することが、IL−23に加えて、サイトカインの核酸またはタンパク質;シグナル伝達分子;抗菌分子;プロテアーゼまたはプロテアーゼインヒビタ;または細胞外マトリクスの分子の増大された発現を含み;あるいはサイトカイン核酸またはサイトカインタンパク質が、IL−17、IL−6、IL−19、GRO−αまたはGM−CSFである上記の方法;あるいは遺伝子またはタンパク質が、以下:ラクトフェリン;DEC−205;CD50;一酸化窒素合成酵素、または分泌性ロイコプロテアーゼインヒビタ;またはCD40Lである、上記の方法。
【0020】
さらに上記の方法が提供され、ここで、アンタゴニストが、以下:
核酸;IL−23またはIL−23Rに対するブロッキング抗体;またはIL−23Rの細胞外部分に由来する可溶性レセプター;核酸が、アンチセンス核酸;または干渉RNA、を含む上記の方法、を含む。
【0021】
本発明のさらに別の側面は、IL−23レセプターに特異的に結合する抗体の結合部位に由来する、IL−23のアゴニスト;ポリクローナル抗体;モノクローナル抗体;Fabフラグメント、FvフラグメントまたはF(ab’)2フラグメント;ヒト化される;ペプチド擬態の;または検出可能に標識される、上記のアゴニストを提供する。別の実施形態において、本発明は、上記のアゴニストであって、:配列番号10の成熟配列の一つのポリペプチドと配列番号12の成熟配列の一つのポリペプチドとの複合体;上記のアゴニストであって、:配列番号10の成熟配列の二つのポリペプチドと配列番号12の成熟配列の二つのポリペプチドとの複合体、を含むアゴニストを提供する。さらに本発明は、上記のアゴニストであって、ここで、hIL−23RおよびhIL−12β1を発現する細胞に対するアゴニストの接触が、細胞の増殖の増大を生じるアゴニストを提供する。上記のアゴニストおよびコンパートメント;または使用または廃棄についての説明書、を含むキットもまた提供される。IL−23レセプターに特異的に結合する抗体の結合部位に由来する、IL−23のアゴニストをコードする核酸もまた提供される。
【0022】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書中に引用される全ての参考文献は、個々の刊行物または特許出願が特別にそして個々に、参考として援用されることを示すかのように同程度に参考として援用される。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形態の「a」、「an」、および「the」は、他に特に明確に示されない限りは、その対応する複数形の対象物を含む。
【0024】
(I.概要)
インターロイキン−23(IL−23)は、ヘテロダイマーのサイトカインであり、IL−12の新規のp19サブユニット(別名IL−B30)およびp40サブユニットから構成される(Oppmannら、前出)。このp19サブユニットは、それらの独特の4つのαヘリックス束によって特徴付けられる、IL−6らせん状サイトカインファミリーのメンバーについての、コンピューターを使用した検索の間に同定された。このファミリー(オンコスタチン−M、IL−11、カージオトロフィン(cardiotrophin)−1および白血病抑制因子がメンバーである)の遺伝的分析は、p19の進化的に最も近い近縁者が、IL−12のp35サブユニットであることを明らかにする。p35のように、p19は生物学的活動のためにp40の共発現を必要とする(Wiekowskiら(2001)J.Immunol.166:7563−7570)。IL−23レセプター(IL−23R)は、新規のレセプターサブユニット(IL−23R)(p19およびIL−12β1(p40に結合する)に結合する)を含む(Parhamら(2002)J.Immunol.168:5699−5708)。これらの二つのレセプターサブユニットは、機能的シグナル伝達複合体を形成し、そしてCD4CD45Rblo記憶T細胞上、ならびに、インターフェロンγ(IFNγ)活性化骨髄マクロファージ上に発現される(Parhamら、前出)。
【0025】
先行するIL−23の特徴付けは、増殖およびIFNγ生成によって測定されるように、それがヒトおよびマウスからの記憶T細胞に対して強力な効果を有することを示唆する。IL−23の免疫刺激特性と一致して、マウス(造血細胞が恒常的にトランスジェニックp19を発現している)は成熟前の死を生じる広範な多器官炎症を有する(Wiekowskiら、前出)。炎症性疾患は、激烈なマクロファージ浸潤、好中球、および上昇したレベルの炎症誘発性のモノカイン(例えば、IL−1およびTNF)によって特徴付けられ、IL−23がまた骨髄性細胞に作用し得ることを示唆する。
【0026】
感染症に対する抵抗におけるIL−12の必要性を分析する最近の研究は、p35−/−かp40−/−のどちらのマウスを使用するかに依存して、多岐にわたる結果を産出してきた。前者は特異的にIL−12を欠くがIL−23を発現し、感染に対して耐性であるが、後者は、IL−12とIL−23の両方を発現することができず、感染しやすい。
【0027】
IL−23のp19サブユニット(IL−23p19)について欠損性であるトランスジェニックマウスは、TH1細胞および炎症性マクロファージによって媒介されるCNS自己免疫疾患であるEAEに対して耐性であり、一方、野生型およびヘテロ接合性p19コントロールマウスは、非常に感染しやすかった。IL−12のp40サブユニットを欠くマウス(IL−12p40欠損マウス)はまた、EAEに対して耐性であり、一方、IL−12のp35サブユニットを欠くマウス(IL−12p35欠損マウス)は、EAEに対して非常に影響を受け易かった。これはEAEの誘発におけるIL−23の役割の指標である。
【0028】
p19欠損マウスは、マウスの油エマルジョンの皮下注入後、著しく変更された創傷治癒応答を有した。このp19欠損はまた、単球/マクロファージ活性化を必要とする種々のマウス疾患モデルにおいて不完全であった。単球/マクロファージは、創傷修復を刺激すると知られている(例えば、SchafferおよびNanney(1996)Intl.Rev.Cytol 169:151−181を参照のこと)。特に、マウス皮膚へのIL−23ポリペプチドの送達は、CD11b+,クラスII+活性化単球/マクロファージ群を誘引し得ることが、下に示される。
【0029】
(II.定義)
「IL−23のアゴニスト」および「IL−23アゴニスト」とは、IL−23レセプター(IL−23R)に特異的に結合し、そしてIL−23Rのシグナル伝達特性を高めるアゴニスト抗体を包含する。IL−23のアゴニストはまた、IL−23RとIL−12Rβ1との複合体に特異的に結合するアゴニスト抗体を包含する。
【0030】
「ブロッキング抗体」とは、例えば、IL−23に特異的に結合し、そしてIL−23およびIL−23Rによって媒介されるシグナル伝達を阻止するか、または、害する抗体を包含する。ブロッキング抗体はまた、IL−23Rに特異的に結合し、IL−23Rによって、またはIL−23およびIL−23Rによって媒介されるシグナル伝達を阻止するか、または、害する抗体を包含する。
【0031】
「保存的に改変された改変体」とは、アミノ酸配列および核酸配列両方に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一な、または本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸をいい、あるいは、その核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一な核酸配列をいう。遺伝的コードの縮重のために、数多くの機能的に同一な核酸が、任意の所定のタンパク質をコードし得る。
【0032】
アミノ酸配列に関して、当業者は、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列に対する個々の置換が、そのコードされた配列中の1つのアミノ酸または数%のアミノ酸を保存的アミノ酸で置換する「保存的に改変された改変体」であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する、保存的な置換テーブルは、当該分野において周知である。保存的な置換の一つの例は、以下の群における1つのアミノ酸と、同じグループの別のアミノ酸との交換である(Leeらに対して発行された米国特許第5,767,063号;KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−132):
(1)疎水性:ノルロイシン、Ile、Val、Leu、Phe、CysまたはMet;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His,Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe;
(7)小アミノ酸:Gly、Ala、Ser。
【0033】
フレーズ「有効量」は、医学的状態の症状または徴候を寛解するのに十分な量を意味する。典型的な哺乳動物の宿主として、マウス、ラット、ネコ、イヌおよびヒトを含む霊長類が挙げられる。特定の患者に対する有効量は、因子(例えば、処置されている状態、患者の健康全体、投与の経路および用量の方法、および副作用の感受性)に依存して異なり得る。組み合わせの場合、有効量は、成分の組み合わせに比例し、その効果は個々の成分単独に制限されない。
【0034】
改善された治癒(例えば、創傷治癒)を評価する、または診断するための「終点」として、創傷破壊圧力;剛性、柔性;免疫監視;血管形成;創傷関連抗微生物活性;炎症(例えば、好中球による);炎症、血管形成、再上皮形成、抗微生物作用および再構築(例えば、マトリクス形成、マトリクス崩壊または肉芽形成)の指標である遺伝子またはポリペプチドの発現の度合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
適切な終点によって決定されたように、本発明は、治癒を10%以上、より一般的には15%以上、最も一般的には20%以上、典型的には25%以上、より典型的には30%以上、最も典型的には35%以上、しばしば40%以上、よりしばしば50%以上、もっともしばしば60%以上、通常は70%以上、より通常は80%、最も通常は90%以上、理想的には100%(すなわち、2倍)以上、より理想的には4倍以上、最も理想的には8倍以上、改善する方法を提供する。適切な終点によって決定されたように、本発明はまた、治癒を10%以上、より一般的には15%以上、最も一般的には20%以上、典型的には25%以上、より典型的には30%以上、最も典型的には35%以上、しばしば40%以上、よりしばしば50%以上、もっともしばしば60%以上、通常は70%以上、より通常は80%、最も通常は90%以上、理想的には100%(すなわち、2倍)以上、より理想的には4倍以上、最も理想的には8倍以上、改善する方法を提供する。
【0036】
「不適当な創傷治癒」とは、創傷治癒の不存在または異常に遅い進行(例えば、遅延した再上皮形成)を包含する。不適当な創傷治癒は、例えば、糖尿病性の潰瘍および膿瘍、褥瘡、感染性創傷、火傷、高齢、不適切な灌流および肥満において見出され得る。不適当な創傷治癒はまた、瘢痕または持続性の感染を誘導する損傷を包含する。例えば、SingerおよびClark(1999)New Engl.J.Med.341:738−746;Calhounら(2002)Adv.Skin Wound Care 15:31−45;Ricoら(2002)J.Surg.Res.102:193−197;Thomas(2001)Cleve.Clin.J.Med.68:704−722;Ashcroftら(2002)Biogerontology 3:337−345;Thomason(1999)Home Care Provid.4:156−161;Gallagher(1997)Ostomy.Wound Manage.43:18−27を参照のこと。
【0037】
治療学的な、薬理学的な、および診断用の薬剤に対する創傷治癒および創傷応答を評価するために使用される、パラメーターおよび終点として、多くの組織学的、生理学的、および生化学的パラメーター(例えば、好中球、単球およびマクロファージの浸潤、活性化または分化(例えば、単球の修復マクロファージへの分化、あるいは新しいストローマ、血管および神経の出現))が挙げられる。適切なパラメーターとしてはまた、シグナル伝達因子(トランスフォーミング成長因子、インターロイキン−1およびインスリン様成長因子)の発現レベルが挙げられる。上皮形成の測定(例えば、速度および厚み、上皮細胞の移入、肉芽形成厚、細胞外マトリクスの分解および成熟(例えば、暫定的マトリクス対コラーゲン性マトリクス、創傷強度(破壊強度)および線維芽細胞増殖速度あるいは表現型)はまた、適切なパラメーターである。増大した肉芽形成組織の厚みは、より強い創傷治癒を生じ得る(例えば、SingerおよびClark、前出、WernerおよびGrose(2002)Physiol.Rev.83:835−870;Matsudaら(1998)J.Exp.Med.187:297−306;Wankellら(2001)EMBO J.20:5361−5372を参照のこと)。
【0038】
「標識されている」組成物は、直接的または間接的いずれかで、例えば、分光学的方法、光化学的方法、生化学的方法、代謝的方法、免疫化学的方法、同位体的方法または化学的方法によって検出可能である。例えば、有用なラベルとして、エピトープタグ、蛍光剤(fluorette)、32P、33P、35P、14C、H、125I、適切なアイソトープ、蛍光化合物、電子密度試薬、基質または酵素(例えば、酵素連結イムノアッセイにおいて使用される)が、挙げられる。例えば、Invitrogen(2002)Catalogue、Carlsbad、CA;Molecular Probes(2002)Catalogue、Molecular Probes、Eugene、OR;RozinovおよびNolan(1998)Chem.Biol.5:713−728を参照のこと。
【0039】
「抗微生物活性」の増加は、生物学的な活性、濃度、個体群数(population)、もしくは、ヒトまたは動物の被験体あるいは宿主と接触している細菌数の、実証された減少の存在下および非存在下両方において、抗微生物活性のメディエータ−の、発現、濃度およびレベルの増加を包含する。抗微生物活性のメディエータ−は、例えば、細菌抗原、ウィルス性抗原、真菌の抗原もしくは原性動物の抗原、あるいは寄生虫の抗原に対して応答する免疫細胞またはデフェンシンのような抗微生物分子であり得る。「抗微生物活性」は、例えば、食作用および一般的にまたは通常は食作用に関連する任意の活性(例えば、有毒酸素に対する微生物の曝露)を包含する。「抗微生物活性」はまた、抗微生物作用と一般的にまたは通常関連する細胞、遺伝子、タンパク質または低分子の、発現、濃度またはレベルにおける変化(例えば、好中球遺伝子の発現の増加)を包含する。「抗微生物活性」は、発現の増加に限定されない、すなわち、その減少が抗微生物活性を促進する場合、発現の減少もまた包含する。
【0040】
「増殖」または「増殖の速度」は、例えば、所定の期間または時間の間隔に亘る細胞数の増加を評価することにより、あるいは任意の決められた時点に、S期にある細胞の数または割合によって測定され得る。
【0041】
(III.アゴニストおよびアンタゴニスト)
本発明は、サイトカインタンパク質(配列番号2または4)の全長を含む、IL−23アゴニストを使用する方法を提供する。「IL−23ハイパーカイン」(配列番号6または8)として公知である融合タンパク質もまた、提供され、IL−6について記載されるFLAG配列とともにp40に連結するp19を含む(例えば、Oppmannら、前出;Fischerら(1997)Nature Biotechnol.15:142−145;Rakemannら(1999)J.Biol.Chem.274:1257−1266;およびPetersら(1998)J.Immunol.161:3575−3581)。本発明はまた、IL−23レセプターに対してアゴニストである、アゴニスト抗IL−23R抗体(例えば、IL−23の存在下または非存在下においてIL−23を刺激する抗体)を提供する。
【0042】
これらの配列のペプチドまたはその改変体は、レセプターシグナル伝達を誘発するために使用される。レセプターシグナル伝達を誘発する低分子もまた、企図される。本発明のアゴニストは、種々の炎症性皮膚障害の処置において有用であり、その炎症性皮膚障害としては、創傷治癒、骨髄性細胞/単球細胞の弱められた動員と関連する皮膚障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明は、IL−23アンタゴニスト(例えば、IL−23に結合するブロッキング抗体、IL−23Rに結合するブロッキング抗体、IL−23Rの細胞外部分に基づく可溶性レセプターおよび核酸)を提供する。本発明のIL−23アンタゴニストは、アンチセンス核酸およびRNA干渉核酸である核酸を包含する(例えば、ArenzおよびSchepers(2003)Naturwissenschaften 90:345−359;SazaniおよびKole(2003)J.Clin.Invest.112:481−486;Pirolloら(2003)Pharmacol.Therapeutics 99:55−77;Wangら(2003)Antisense Nucl.Acid Drug Devel.13:169−189を参照のこと)。
【0044】
(III.抗体および関連試薬)
抗体および抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物が、提供される。これらは、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびFab、F(ab)およびFvフラグメントのような結合フラグメント、そしてこれらの人工操作バージョンが含まれる。抗体または結合組成物は、アゴニストまたはアンタゴニストであり得る。リガンドおよびレセプターに同時に結合する抗体が、企図される。モノクローナル抗体は、通常は少なくとも約1mM、より通常は少なくとも約300μM、典型的には少なくとも約100μM、より典型的には少なくとも約30μM、好ましくは少なくとも約10μM、そしてより好ましくは少なくとも約3μMまたはそれ以上のKと結合し得る。
【0045】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびヒト化抗体が、調製され得る。例えば、SheperdおよびDean(編)(2000)Monoclonal Antibodies、Oxford Univ.Press、New York、NY;KontermannおよびDubel(編)(2001)Antibody Engineering、Springer−Verlag、New York;HarlowおよびLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、pp.139−243;Carpenterら(2000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immunol.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27371−27378を参照のこと。
【0046】
単鎖抗体、単一ドメイン抗体(Single domain antibody)および二重特異的抗体が記載される、例えば、Maleckiら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:213−218;Conrathら(2001)J.Biol.Chem.276:7346−7350;Desmyterら(2001)J.Biol.Chem.276:26285−26290、Kostelneyら(1992)J.Immunol.148:1547−1553;米国特許第5,932,448号;同第5,532,210号;同第6,129,914号;同第6,133,426号;同第4,946,778号を参照のこと。
【0047】
本発明はまた、脱アミノ結合組成物(例えは、抗体)および脱アミノ結合組成物を使用する方法を包含する(例えば、ZhangおよびCzupryn(2003)J.Pharm.Biomed.Anal.30:1479−1490;Perkinsら(2000)Pharm.Res.17:1110−1117;Lehrmanら(1992)J.Protein Chem.11:657−663を参照のこと)。
【0048】
抗原フラグメントは、免疫原として使用するために他の材料と結合され得、例えば、ポリペプチドと融合されるかまたは共有結合される。抗原およびそのフラグメントは、種々の免疫原(例えば、キーホールリンペットヘモシニアン、ウシ血清アルブミン、またはオボアルブミン)に、融合または共有結合され得る(Coliganら(1994)Current Protocols in Immunol.、Vol.2、9.3−9.4、John Wiley and Sons、New York、NY)。適切な抗原性のペプチドは、アルゴリズム(例えば、Parkerら(1986)Biochemistry25:5425−5432;Wellingら(1985)FEBS Lett.188:215−218;JamesonおよびWolf(1988)Cabios 4:181−186;またはHoppおよびWoods(1983)Mol.Immunol.20:483−489)を用いてポリペプチド標的から選ばれ得る。
【0049】
抗原の精製は、抗体の産生のためには必要ではない。免疫は、DNAベクター免疫によって実施され得る。例えば、Wangら(1997)Virology 228:278−284を参照のこと。あるいは、動物は、目的の抗原を運ぶ細胞で免疫され得る。脾細胞は、次いで免疫された動物から単離され得、そしてこの脾細胞は、ハイブリドーマを生成するためにミエローマ細胞株と融合し得る。結果として生じるハイブリドーマは、機能的アッセイまたは生物学的アッセイによって、所望の抗体の生成についてスクリーニングされ得る。すなわち、アッセイは精製抗原の所有に依存しない。細胞による免疫は、精製抗原による免疫よりも、抗体産生について優れていることを実証し得る(Meyaardら(1997)Immunity 7:283−290;Wrightら(2000)Immunity 13:233−242;Prestonら(1997)Eur.J.Immunol.27:1911−1918;Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157−5164)。
【0050】
抗体親和性、すなわち抗体に対する抗原の結合特性は、例えば、表面プラズモン共鳴または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定され得る(例えば、MaynardおよびGeorgiou(2000)Annu.Rev.Biomed.Eng.2:339−376;Karlssonら(1991)J.Immunol.Methods 145:229−240;Neriら(1997)Nat.Biotechnol.15:1271−1275;Jonssonら(1991)Biotechniques 11:620−627;Friguetら(1985)J.Immunol.Methods 77:305−319;Hubble(1997)Immunol.Today 18:305−306を参照のこと)。
【0051】
本発明の抗体は、少なくとも通常は約10−3M、より通常は少なくとも10−6M、典型的には少なくとも10−7M、より典型的には少なくとも10−8M、好ましくは少なくとも10−9M、そしてより好ましくは少なくとも10−10M、そしてもっとも好ましくは少なくとも10−11Mの、Kで結合し得る(例えば、Prestaら(2001)Thromb.Haemost.85:379−389;Yangら(2001)Crit.Rev.Oncol.Hematol.38:17−23;Carnahanら(2003)Clin.Cancer.Res.(Suppl.)9:3982s−3990s;Wilchekら(1984)Meth.Enzymol.104:3−55を参照のこと)。
【0052】
IL−23Rに対する抗体(ここで、この抗IL−23R抗体は、本明細書中に列挙される配列と実質的に等しい核酸配列およびアミノ酸配列を有するが、核酸配列またはアミノ酸配列の機能的な側面に実質的に影響しない置換を有する)は、企図される発明の定義の範囲内である。これら核酸およびポリペプチドの生物学的機能を実質的に変化させない、領域の短縮、欠失、付加および置換を有する改変体はまた、企図される発明の定義の範囲内である。
【0053】
ヒト化抗体は、ヒト抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体などを包含し、非ヒト供給源から導入された一つ以上のアミノ酸残基を有する(移入抗体)。移植のために使用されるアミノ酸は、この供給源の可変ドメイン全体、この供給源の一つ以上の相補性決定領域(CDR)またはこの供給源抗体のCDRの全6個を含み得る。移入アミノ酸または移入ポリペプチド領域を宿主抗体上に移植することにより、宿主抗体の、対応するアミノ酸または領域が、通常取り除かれる。ヒト化抗体は、少なくとも一つの、そして典型的には二つの可変ドメインの、実質的に全て(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、Fv)を含み、ここで全てのまたは実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンの領域に対応し、そして全てのまたは実質的に全てのフレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリンの共通配列の領域である。このフレームワーク領域およびCDRは、配列および配座において高く保存され、そして正確に予測され得、例えば、受容体ヒト抗体フレームワークへのCDRの移植に用いられる。CDR領域は、天然に存在するヒト受容体フレームワークまたは多くのヒト抗体に由来する共通フレームワークに移植され得る。多数のヒト可変軽(VL)共通配列およびヒト可変重(VH)共通配列が、同定されてきた。ヒト化のために、マウス抗体の鎖が、利用可能なヒトフレームワーク鎖と比較され得、ここでもっとも近い相同性のヒト鎖が、移植のために選ばれる(例えば、MaynardおよびGeorgiou、前出;Liら(2002)Immunol.Revs.190:53−68;Coら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:2869−2873;Simsら(1993)J.Immunol.151:2296−2308;Satoら(1994)Mol.Immunol.31:371−381;Moreaら(2000)Methods 20:267−279;Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、4 vol.、U.S.Department of Health Human Services、NH、USA;Koikeらに対して発行された米国特許第6,538,111号;Vasquezらに対して発行された同第6,329,511号を参照のこと)。
【0054】
本発明のヒト化抗体はまた、部位特異的変異誘発(例えば、アラニンスキャンニングのために使用される)の標準的な技術を使用する、置換、欠失および/または挿入を包含する。例えば、JinおよびWells(1994)Protein Sci.3:2351−2357;CunninghamおよびWells(1997)Curr.Opin.Struct.Biol.7:457−462;Jonesら(1998)J.Biol.Chem.273:11667−11674;Cabillyらに対して発行された米国特許第4,816,567号を参照のこと。
【0055】
本発明の実施形態は、融合タンパク質、精製タグおよびエピトープタグを、N末端、C末端またはポリペプチド(例えば、FLAGタグおよびGSH−Sトランスフェラーゼ融合タンパク質)内の位置に包含する。アミノ酸変化は、抗IL−23R抗体アゴニストの翻訳後のプロセスを変更、追加または除去し得る(例えば、Oグリコシル化部位およびNグリコシル化部位、ならびにジスフィルド形成のために使用されるシステイン残基の位置)。例えば、WrightおよびMorrison(1997)Trends Biotechnol.15:26−32;Kunkelら(2000)Biothechnol.Prog.16:462−470を参照のこと。
【0056】
ヒト化抗体の結合特性は、以下の手順によって改善され得る(例えば、部位特異的変異誘発に関する)。コンピュータモデル化は、マウスフレームワークアミノ酸残基が、マウスCDRと相互作用するらしいことを視覚化させる。これらの「接触する」マウスフレームワークアミノ酸は、次いで相同なヒトフレームワークに上書きされる。ここで、この上書きは、マウスの「接触する」フレームワークアミノ酸が、対応するヒトフレームワークアミノ酸と異なり、ヒトアミノ酸が対応するマウスフレームワークアミノ酸に変化されることを示す。「接触する」とは、軽鎖と重鎖との間の鎖間接触を意味し、ここで、例えば、このアミノ酸は互いに約3オームストロング以内であると予測される。
【0057】
部位特異的変異誘発はまた、ヒトフレームワークのアミノ酸がその位置ではまれであり、そしてマウス免疫グロブリンにおいて対応するアミノ酸が、ヒト免疫グロブリン配列においてその位置で一般的である場合に、望ましくあり得る。ここで、ヒトフレームワークアミノ酸は、対応する供与フレームワークアミノ酸に変異され得る。例えば、Carterらに対して発行された米国特許第6,407,213号;Queenらに対して発行された同第6,180,370号;Jungら(2001)J.Mol.Biol.309:701−716を参照のこと。
【0058】
ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部(例えば、ヒト免疫グロブリンの一部)を含み得る。この抗体は、重鎖のCH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、CH3領域およびCH4領域を、必要に応じて含み得る。ヒト化抗体は、免疫グロブリンの任意のクラス(IgM、IgG、IgD,IgAおよびIgEが挙げられる)および任意のアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が挙げられる)から選択され得る。標準的な方法は、エフェクター機能を改善するか、または取り除くために使用され得る。エフェクター機能には、FcRn、FcγRおよび補体に結合することを含む。半減期は、例えば、ヒトIgG2またはIgG4サブクラスを使用することにより、あるいはヒンジ領域において残基を変更することにより改善され得る(例えば、Clark(2000)Immunol.Today 21:397−402;Prestaら(2002)Biochem.Soc.Trans.30:487−490;Moreaら(2000)Methods 20:267−279)。
【0059】
ヒト化抗体のCDRおよびフレームワーク領域は、移入するよう正確に対応する配列、または宿主配列を必要としない(例えば、これらの配列が、少なくとも一つの残基の置換、挿入または欠失によって、その部位の残基が共通抗体または移入抗体のいずれかに対応しないように、変異誘発され得る)。このような変異は、しかしながら、広範囲ではないだろう。通常、少なくとも75%の、よりしばしば90%の、もっとも好ましくは95%以上のヒト化抗体残基が、親のFR配列およびCDR配列に対応する。
【0060】
通常は、ヒト化抗IL−23R抗体のアミノ酸配列改変体は、最初のヒト化抗体アミノ酸配列の重鎖または軽鎖(例えば、配列番号2および配列番号4におけるように)のいずれかと、少なくとも75%の、より好ましくは少なくとも80%の、より好ましくは少なくとも85%の、より好ましくは少なくとも90%の、そしてもっとも好ましくは少なくとも95%にアミノ酸配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または相同性は、最大パーセント配列同一性を得るために、配列の整列および必要に応じてギャップの導入後、そしていかなる保存的な置換も配列同一性の一部としてみなさない、候補配列においてヒト化抗IL−23R残基と同一のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書中に定義される。N末端、C末端または内部の伸長、欠失または抗体配列への挿入は、配列同一性または配列相同性に影響するとみなされるべきではない。
【0061】
ヒト化に代わるものは、ファージ上に提示されるヒト抗体ライブラリまたはトランスジェニックマウス中に含まれるヒト抗体ライブラリを使用することである(例えば、Vaughanら(1996)Nat.Biotechnol.14:309−314;Barbas(1995)Nature Med.1:837−839;de Haardら(1999)J.Biol.Chem.274:18218−18230;McCaffertyら(1990)Nature 348:552−554;Clacksonら(1991)Nature 352:624−628;Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Mendezら(1997)Nature Genet.15:146−156;HoogenboomおよびChames(2000)Immunol.Today 21:371−377;Barbasら(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York;Kayら(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual、Academic Press、San Diego、CA;de Bruinら(1999)Nat.Biotechnol.17:397−399を参照のこと)。
【0062】
(IV.核酸、ベクターおよびタンパク質精製)
「発現ベクター」とは、核酸構築物であり、組換え的または合成的に生成され、特定の核酸の転写を可能にする一つ以上の所定の核酸成分を備える。代表的には、発現ベクターは、プロモーターに操作可能に連結するよう転写される核酸を含む。
【0063】
アゴニスト抗IL−23R抗体の軽鎖および重鎖は、一つの核酸によってコードされ得る(ここで、軽鎖の発現は、第1のプロモーターに操作可能に連結され、そして重鎖の発現は、第2のプロモーターに操作可能に連結される)。あるいは、軽鎖および重鎖の両方が、一つの核酸によってコードされ得る(ここで、両方の鎖の発現は、一つのプロモーターに操作可能に連結される)。軽鎖および重鎖をコードする核酸は、一つのベクターとして、または二つのベクターとして提供され得る。本発明の方法は、一つのベクターまたは二つのベクターを宿主細胞のゲノムに組み入れる工程を包含する(例えば、ChaddおよびChamow(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:188−194;Houdebine(2000)Transgenic Res.9.305−320;Stogerら(2002)Curr.Opin.Biotechnol.13:161−166を参照のこと)。
【0064】
軽鎖をコードする核酸は第一のベクターをさらに含み得、一方重鎖をコードする核酸は第二のベクターをさらに含み得る。あるいは、一つのベクターが、軽鎖および重鎖をコードする核酸を含み得る。
【0065】
長期の、または拡大されたアゴニスト抗IL−23Rの発現のために、軽鎖と重鎖両方をコードする核酸を含む一つのベクターは、宿主ゲノムに組み入れられ得る(例えば、宿主ゲノムの一点、または複数の点に組み入れられる)。宿主細胞における軽鎖および重鎖の共発現は、可溶性抗体を生成する。この宿主細胞は、例えば、哺乳動物細胞、形質転換細胞または不死化細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞、または細菌細胞であり得る。宿主細胞は、トランスジェニック動物をさらに含み得る。上記の実施形態の組み合わせは、企図される(例えば、軽鎖が、宿主細胞のゲノムに組み入れられるベクターによって、そしてゲノムに組み入れられていないベクターによって、同時に発現される)。
【0066】
抗体、またはそのフラグメントの精製として、イオン交換クロマトグラフィー、免疫沈降、エピトープタグ、アフィニティークロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、および安定剤、界面活性剤または乳化剤の使用が挙げられ得る(DennisonおよびLovrien(1997)Protein Expression Purif.11:149−161;Murbyら(1996)Protein Expression Purif.7:129−136;Ausubelら(2001)Curr.Protocols Mol.Biol.、Vol.3、John Wiley and Sons、New York、NY、pp.17.0.1−17.23.8;Rajanら(1998)Protein Expression Purif.13:67−72;Amersham−Pharmacia(2001)Catalogue、Amersham−Pharmacia Biotech、Inc.、pp.543−567、605−654;GoodingおよびRegnier(2002)HPLC of Biological Molecules、第2版、Marcel Dekker、NY)。
【0067】
(V.キット)
本発明は、診断用のキットにおいて、アゴニスト抗IL−23R抗体、そのフラグメント、アゴニストIL−23R抗体をコードする核酸、またはそのフラグメントを企図する。IL−23Rおよび代謝物、ならびにそれらの分解産物の検出のために、ならびにIL−23R依存性活性(例えば、生化学的活性または細胞活性)の検出のために、抗体または抗体フラグメントを含む、結合組成物の使用が包含される。結合抗体は、診断またはキットの目的に対して有用であり、そして標識またはポリペプチド(例えば、色素、アイソトープ、酵素または金属)と連結した抗体を含む。例えば、Le Doussalら(1991)J.Immunol.146:169−175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891−3898;HsingおよびBishop(1999)J.Immunol.162:2804−2811;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883−889を参照のこと。
【0068】
本発明は、アゴニスト抗IL−23R抗体、その抗原性のフラグメントまたはアゴニスト抗IL−23R抗体をコードする核酸またはそのフラグメントを含むコンパートメントを包含するキットを提供する。別の実施形態において、このキットはコンパートメント、核酸(例えば、プローブ、プライマー)または分子ビーコンを有する。例えば、Zammatteoら(2002)Biotech.Annu.Rev.8:85−101;Klein(2002)Trends Mol.Med.8:257−260を参照のこと。
【0069】
このキットは、例えば試薬およびコンパートメント、試薬および使用説明書、またはコンパートメントおよび使用説明書両方と試薬、を包含し得る。試験化合物の結合を決定するためのキット(例えば、生物学的なサンプルから、または化学的ライブラリから獲得される)は、コントロール化合物、標識された化合物および結合標識された化合物から標識の無い化合物を分離するための方法を包含し得る。診断用アッセイは、生物学的マトリクス(例えば、生細胞、細胞抽出物および細胞溶解物、固定細胞、培養細胞、体液または法医学的サンプル)と共に使用され得る。種々のアッセイ形式、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISAおよびlab on a chip(米国特許第6,176,962号および同第6,517,234号)が存在する。
【0070】
本方法は、コントロール被験体、通常の被験体、あるいは、試験被験体からの通常組織または流体を結合組成物に接触させる工程をさらに包含し得る。さらに、本方法は、試験被験体に対する組成物の特異的結合と、通常被験体、コントロール被験体あるいは試験被験体からの通常組織または流体とを比較する工程を、さらに含み得る。試験サンプルまたは試験被験体の活性の発現は、コントロールサンプルまたはコントロール被験体からの活性の発現と比較され得る。コントロールサンプルは、例えば、免疫障害を罹患している患者における非影響組織または非炎症組織のサンプルが含まれ得る。コントロール被験体またはコントロールサンプルからの、発現または活性は、規定の値として提供され得る(例えば、コントロール被験体の統計的に適切な群から獲得される)。
【0071】
(VI.診断用の使用;治療組成物;方法)
本発明は、治癒、不適切な治癒、創傷治癒および不適切な創傷治癒(例えば、皮膚の)の、処置および診断のための方法を提供する。通常の創傷治癒を改善する(例えば、治癒速度の改善による)方法、および不適切な創傷治癒(例えば、創傷は潰瘍または過度の線維症によって特徴づけられる)を処置方法が提供される。さらに、本発明は創傷関連の感染症を処置方法、および予防する方法を提供する。
【0072】
皮膚障害の遺伝子治療が、種々の方法を使用して実施され得る。送達ビヒクルは、当該分野において十分に記載されている。例えば、Boulikas(1998)Gene Therapy and Molecular Biology、Vol.1、Gene Therapy Press、Palo Alto、CA;Jollyら(1994)Cancer Gene Therapy 1:51−64;Kimuraら(1994)Human Gene Therapy 5:845−852;およびKaplittら(1994)Nat.Genetics 6:148−153を参照のこと。
【0073】
サイトカインまたは低分子アゴニストを含む、薬学的組成物または無菌組成物を調製するために、実体は、薬学的に受容可能なキャリアまたは好ましくは不活性である賦形剤と共に混合されている。このような薬学的組成物の調製は、当該分野において公知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary、Mack Publishing Company、Easton、PA(1984)を参照のこと。
【0074】
サイトカインは、通常非経口的に、好ましくは静脈内に投与される。このようなタンパク質またはペプチドは、免疫原性であり得るため、それらは好ましくは、慣習的なIV投与セットまたは皮下デポー製剤からのいずれかによって、ゆっくり投与される(例えば、Tomasiらによって教示されるように、米国特許第4,732,863号)。免疫応答を最小化する手段が、適用され得る。低分子実体は、経口的に活性であり得る。皮膚障害の処置のために、本発明はまた、局所的に投与され得る。例えば、Gilmanら(編)(1990)Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Pergamon Press;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版(1990)、Mack Publishing Co.、Easton、Pennを参照のこと。
【0075】
非経口治療法は、水溶性のビヒクル(例えば、水、生理食塩水、または緩衝液ビヒクルで、種々の添加物および/または希釈剤を備えても備えなくても良い)において投与され得る。あるいは、懸濁剤(例えば、亜鉛懸濁剤)が、ペプチドを含むよう調製され得る。このような懸濁剤は、皮下(SQ)注射または筋内(IM)注射に対して有用であり得る。例えば、Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosages Forms:Parenteral Medications 第2版、Dekker、NY;Liebermanら(編、1990)Pharmaceutical Dosages Forms:Tablets 第2版、Dekker、NY;Liebermanら(編、1990)Pharmaceutical Dosages Forms:Disperse Systems Dekker、NY;Fodorら(1991)Science 251:767−773、Coligan(編)Current Protocols in Immunology;HoodらImmunology Benjamin/Cummings;Paul(編)Fundamental Immunology;Academic Press;Parceら(1989)Science 246:243−247;Owickiら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:4007−4011;ならびにBlundellおよびJohnson(1976)Protein Crystallography、Academic Press、New Yorkを参照のこと。
【0076】
治療のための投与レジメンの選択は、いくつかの因子(実体の血清または組織の代謝率、症状のレベル、実体の免疫原性、および標的細胞の接触性、投与のタイミング、上皮層を通しての吸収などを含む)に依存する。好ましくは、投与レジメンは、受容可能なレベルの副作用と両立する、患者に送達される治療薬の量を最大化する。従って、生物学的に送達される量は、部分的には特定の実体および処置される状態の重篤度に依存する。サイトカインまたは低分子の適切な用量を選択するガイダンスは、標準的な方法論を使用して決定される。
【0077】
この適切な用量の決定は、(例えば、処置に影響するまたは処置に影響すると予測されることが当該分野において公知な、あるいは疑わしいパラメーターまたは因子を使用して)臨床医によってなされる。一般的に、用量は適量よりいくぶん少ない量で開始され、そして任意の負の副作用と比較して、所望の効果または最適な効果に達するまで、少量ずつ増加される。重要な診断の測定は、これらの症状(例えば、炎症または炎症性サイトカイン生成のレベル)の測定を含む。好ましくは、試薬に対する体液応答を最小化する、処置の標的とされる動物と同種の動物由来の生物製剤が使用され得る。
【0078】
抗体、抗体フラグメントおよびサイトカインは、連続的な注入によって、あるいは、例えば1日、1週間または1週間に1〜7回という間隔での用量によって、提供され得る。用量は、静脈内に、皮下に、局所的に、経口的に、経鼻的に、直腸に、筋内に、脳内に、または吸入によって提供され得る。好ましい用量プロトコルは、有意な望ましくない副作用を避ける、最大の用量または用量頻度に関するものである。週あたり用量の合計は、一般的には少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には少なくとも0.2μg/kg、もっとも一般的には少なくとも0.5μg/kg、典型的には少なくとも1μg/kg、より典型的には少なくとも10μg/kg、もっとも典型的には少なくとも100μg/kg、好ましくは少なくとも0.2mg/kg、より好ましくは少なくとも1.0mg/kg、もっとも好ましくは少なくとも2.0mg/kg、最適には少なくとも10mg/kg、より最適には少なくとも25mg/kg、そしてもっとも最適には少なくとも50mg/kgである。例えば、Yangら(2003)New Engl.J.Med.349:427−434;Heroldら(2002)New Engl.J.Med.346:1692−1698;Liuら(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451−456;Portieljiら(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:133−144を参照のこと。低分子治療薬(例えば、ペプチド模倣の、天然生成物のまたは有機化学的な)の所望の用量は、抗体またはポリペプチドの、モル/kgベースでほぼ等しい。
【0079】
本発明はまた、症状(例えば、炎症に関連する症状)を緩和する公知の治療剤(例えば、ステロイド、特に糖質コルチコイド)、あるいは抗生物質または抗感染薬と組み合わせた、生物製剤の投与について提供する。糖質コルチコイドの1日あたりの投薬量は、1日あたり少なくとも約1mgから、一般的には少なくとも約2mg、そして好ましくは少なくとも約5mgの範囲である。一般的には、この投薬量は1日あたり約100mg未満、典型的には約50mg未満、好ましくは約20mg未満、そしてより好ましくは少なくとも約10mgである。通常、この範囲は、1日あたり少なくとも約1mg〜約100mg、好ましくは約2mg〜約50mgである。抗生物質、抗感染薬または抗炎症薬との最適な用量の組み合わせもまた、公知である。
【0080】
本発明は、治癒(例えば、創傷治癒)に関する遺伝子を調節するための、IL−23のアゴニストおよびアンタゴニストを提供する。治癒の診断の方法(例えば、IL−23調節遺伝子および遺伝子産物の発現における、発現または変化を検出することに関する)もまた、提供される。これらの遺伝子および遺伝子産物として、例えば、一酸化窒素合成酵素2(NOS2)、ラクトフェリン、IL−19、DEC−205、CD50(ICAM−2)、IL−25、TNFSF7(CD27L)、好酸性塩基性タンパク質などが挙げられる。
【0081】
本発明は、例えば、創傷治癒の処置のために、MMP−7の発現を調節する方法を提供する。マトリクスタンパク質分解は、炎症の特徴である。メタロプロテアーゼであるマトリリシン(matrilysin)は、創傷修復において使用される(例えば、Parksら(2001)Chest 120:36S−41S;Wilsonら(1999)Science 286:113−117を参照のこと)。
【0082】
本発明は、活性および好中球に関連するタンパク質(例えば、好中性化学誘引物質、ならびに、好中球によって発現されるタンパク質および代謝産物)を調節するための方法を提供する。IL−23は、IL−17の発現を刺激し、次に、好中球を誘引するケモキカインの生成を刺激する。好中性応答、ラクトフェリン、IL−17、IL−6および一酸化窒素の、増大された発現または活性は、数多くの炎症性状態において見出され、創傷治癒の調節において役割を果たし得る(例えば、Tsokosら(2002)Virchows Arch.441:494−499;Linden(2001)Int.Arch.Allergy Immunol.126:179−184;Sheppard(2002)Chest 121:21S−25S;Redington(2000)Monaldi Arch.Chest Dis.55:317−323;Vignolaら(2001)Curr.Allergy Asthma Rep.1:108−115を参照のこと)。
【0083】
好中球によって生成されるタンパク質であるラクトフェリンの発現を調節するための方法が、提供される(例えば、Boytonら(2002)Brit.Medical Bull.61:1−12;Singhら(2002)Nature 417:552−555;Gomezら(2002)Infect.Immun.70:7050−7053を参照のこと)。
【0084】
好中性エラスターゼの発現を調節するための方法が、提供される(例えば、創傷治癒を調節するために)(例えば、Tkalcevicら(2000)Immunity 12:201−210;Aprikyanら(2001)Curr.Opinion Immunol.13:535−538;Tremblayら(2003)Curr.Opin.Investig.Drugs 4:556−565;Leeら(2001)Curr.Opinion Crit.Care 7:1−7;Shapiro(2002)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.26:266−268を参照のこと)。
【0085】
創傷治癒を促進するための好中性誘引物質(例えば、IL−17、一酸化窒素およびGRO−α)を調節する方法もまた、提供される。IL−17は、好中性動員を調節する(例えば、Yeら(2001)J.Exp.Med.194:519−527;Yeら(2001)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.25:335−340を参照のこと)。一酸化窒素合成酵素によって合成される一酸化窒素は、例えば、単球および好中球を創傷に誘引することによって、創傷治癒を促進し得る。例えば、Schwentkerら(2002)Nitric Oxide 7:1−10;MacMickingら(1997)Annu.Rev.Immunol.15:323−350を参照のこと。CXCL−1(別名GRO−α)は、例えば、好中球を創傷に誘引し、ケラチノサイト増殖および血管形成を刺激することにより、創傷治癒を促進する(例えば、Gillitzerら(2001)J.Leukoc.Biol.69:513−521;LiおよびThornhill(2000)Cytokine 12:1409−1413を参照のこと)。
【0086】
IL−6は、損傷(例えば、皮膚創傷)の治癒を促進する。例えば、Gallucciら(2001)J.Interferon Cytokine Res.21:603−609;Sugawaraら(2001)Cytokine 15:328−336;Erdagら(2002)Ann.Surg.235:113−124;Nadeauら(2002)Microbes Infect.4:1379−1387;Imanishiら(2000)Prog.Retin.Eye Res.19:113−129;Gregoryら(1998)J.Immunol.160:6056−6061を参照のこと。
【0087】
インターフェロンγ(IFNγ)は、例えば、アクチンおよびコラーゲン含有量、収縮能力、そして瘢痕形成を調節することによって、適切な創傷治癒を媒介する。例えば、Moulinら(1998)Exp.Cell Res.238:283−293;Ahdiehら(2001)Am.J.Physiol.Cell Physiol.281:C2029−C2038;Cornelissenら(2000)J.Dent.Res.79:1782−1788;Shtrichmanら(2001)Curr.Opin.Microbiol.4:251−259;Ikedaら(2002)Cytokine Growth Factor Rev.13:95−109;Rottenbergら(2002)Curr.Opin.Immunol.14:444−451を参照のこと。
【0088】
IFNγ生成は、CD27(別名TNFRSF7)によって刺激される。CD27はまた、細胞増殖を刺激し、そしてT細胞の活性化と発達、B細胞によるIgE生成を含むT細胞依存性抗体生成において関与する。(例えば、Takedaら(2000)J.Immunol.164:1741−1745;Nagumoら(1998)J.Immunol.161:6496−6502;Tomiyamaら(2002)J.Immunol.168:5538−5550;BusseおよびLemanske(2001)New Engl.J.Med.344:350−362を参照のこと)。
【0089】
MUC5acは、創傷治癒を含む数多くの生物学的機能に供する。例えば、Dohrmanら(1998)Biochim.Biophys.Acta 1406:251−259;Roseら(2000)J.Aerosol.Med.13:245−261;Rogers(2000)Monaldi Arch.Chest Dis.55:324−332;Enssら(2000)Inflamm.Res.49:162−169を参照のこと。
【0090】
本発明の広い範囲は、本発明を特定の実施形態に制限することを意図しない以下の実施例を参照することでもっとも良く理解される。
【実施例】
【0091】
(I.一般的方法)
生物化学および分子生物学の標準的方法は、以下において記載され、または参照される:例えば、Maniatisら(1982)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Wu(1993)Recombinant DNA、Vol.217、Academic Press、San Diego、CA;Innisら(編)(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Academic Press、N.Y.。標準的な方法はまた、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology、Vol.1−4、John Wiley and Sons、Inc.New York、NYにおいて見出され、これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質発現およびタンパク質発現(Vol.3)、およびバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載する。融合タンパク質を生成するための方法が、記載される。例えば、Invitrogen(2002)Catalogue、Carlsbad、CA;Amersham Pharmacia Biotech(2002)、Catalogue、Piscataway、NJ;Liuら(2001)Curr.Protein Pept.Sci.2:107−121;Graddisら(2002)Curr.Pharm.Biotechnol.3:285−297を参照のこと。組織学の標準的な方法が記載される(Carson(1997)Histotechnology:A Self−Instructional Text、第2版、Am.Soc.Clin.Pathol.Press、Chicago、IL;BancroftおよびGamble(編)(2002)Theory and Practice of Histological Techniques、第5版、W.B.Saunders Co.、Phila.、PA)。
【0092】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)を含む、フローサイトメトリーについての方法が、利用可能である。例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice、John Wiley and Sons、Hoboken、NJ;Givan(2001)Flow Cytometry、第2版;Wiley−Liss、Hoboken、NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry、John Wiley and Sons、Hoboken、NJを参照のこと。
【0093】
免疫系の組織学の標準的な方法が記載される。例えば、Muller−Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology、Spriger Verlag、New York、NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology、Lippincott、Williams、and Wilkins、Phila、PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas、McGraw−Hill、New York、NYを参照のこと。
【0094】
抗体生成および抗体改変についての方法が、以下において記載される:例えば、Coliganら(2001)Current Protocols in Immunology、Vol.1、John Wiley and Sons、Ins.、New York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY);HarlowおよびLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Einhauerら(2001)J.Biochem.Biophys.Methods 49:455−465。例えば、細胞または哺乳動物への、アデノウィルスの操作およびトランスフェクションについての方法が、記載される(Hurstら(2002)New Engl.J.Med.169:443−453;DanthinneおよびImperiale(2000)Gene Ther.7:1707−1714;Carlisle(2002)Curr.Op.Mol.Ther.4:306−312)。
【0095】
タンパク質の精製のための方法(例えば、免疫沈降、カラムクロマトグラフィー、電気泳動、等電点電気泳動、遠心分離および結晶化)が記載される(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science、Vol.1、John Wiley and Sons、Inc.、New York)。化学的分析、化学的改変、翻訳後修飾およびタンパク質のグリコシル化が、記載される。例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science、Vo2.、John Wiley and Sons、Inc.、New York;Walker(編)(2002)Protein Protocols Handbook、Humana Press、Towota、NJ;Lundblad(1995)Techniques in Protein Modification、CRC Press、Boca Raton、FLを参照のこと。結合する相互作用を特徴付けるための方法が、記載される(Coliganら(2001)Current Protocols in Immunology、Vol.4、John Wiley and Sons、Inc.、New York;Parkerら(2000)J.Biomol.Screen.5:77−88;Karlssonら(1991)J.Immunol.Methods 145:229−240;Neriら(1997)Nat.Biotechnol.15:1271−1275;Jonssonら(1991)Biotechniques 11:620−627;Friguetら(1985)J.Immunol.Methods 77:305−319;Hubble(1997)Immunol.Today 18:305−306:Shenら(2001)J.Biol.Chem.276:47311−47319)。
【0096】
例えば、抗原性フラグメント、シグナル配列およびリーダー配列、タンパク質の折り畳みおよび機能的ドメインを決定するためのソフトウェアを使用して、コンピューター分析が実施される。例えば、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax、Inc.、Bethesda、MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys、Inc.、San Diego、CA)、およびDeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.、Crystal Bay、Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741−742を参照のこと。公開配列データベースはまた、例えば、GenBank他から、使用された。
【0097】
(II.p19欠損マウスにおける創傷生成)
IL−23のp19サブユニットを欠くマウス(p19ノックアウトマウス;p19KOマウス)に、4つの背側側腹(dorsal−flank)部位に対して、不完全フロイントアジュバント(IFA)において乳化した、1mgの熱殺菌したMycobacterium tuberculosis(H37 RA株)を注入した。細菌抗原に対する曝露後14〜18日目に、p19KOマウスは、有意な脱毛症および皮膚損傷を示した。これらの結果は、IL−23の非存在下で、マウスが、減損した創傷治癒応答を導く細菌抗原チャレンジに対する異常な免疫応答を有することを示唆する。
【0098】
(III.切開創傷の生成および組織学的応答の評価)
切開創傷(5mm)を、野生型(WT)マウスおよびp19KOマウスの背側皮膚上にて、記載されたように実施した(例えば、CohenおよびMast(1990)Advances in Understanding Trauma and Burn Injury 30:S149−S155を参照のこと)。直線的切開創傷の18時間後に、切開部周辺の皮膚からのサンプルを収集し、そして共焦点顕微鏡に供した。組織切片を、抗IA−FITCおよび抗CD11b−APCで染色した。p19KOマウスは、CD11b+,MHCクラスII陽性細胞の動員の遅延(すなわち、創傷治癒プロセスの間の骨髄由来単球の動員における遅延)を示した。
【0099】
IL−23は、活性化単球/マクロファージの動員を誘発することが見出された。C57BL/6マウスに、10μgの組換えIL−23(rIL−23)を、背側皮内部位に注入した。皮膚サンプルを、抗IA−FITCおよび抗CD11b−APCで染色し、そして共焦点顕微鏡によって分析した。IL−23は、MHCクラスII+,CD11b+単球の、サイトカイン注入部位への動員を誘発した。PBS処理した皮膚サンプルは、これらの単球の動員について陰性を現した。ひとまとめにして考えると、注入したMycobacterium tuberculosisに対するp19KOマウスの変化した治癒応答および活性化単球/マクロファージのIL−23動員は、創傷治癒応答におけるIL−23の役割を示唆する。
【0100】
IL−23はまた、創傷床肉芽形成組織において単球/マクロファージ動員を誘発した。10μgのrIL−23を、2つの6mm全厚背側切開創傷周辺の8つの部位に、創傷直後に皮内送達した。3日目に、この2つの創傷および周辺の皮膚を切除し、OCT中で凍結させ、切片化し、そして抗CD11bで染色した。対比染色を、ヘマトキシリン(ブルー)を用いて行った。IL−23処理した創傷組織は、創傷3日後に緩衝剤コントロールよりも高い単球/マクロファージ浸潤を示した。同様の結果が、CD31内皮細胞遊走について見出された。
【0101】
組換えIL−23は、創傷治癒を増強することが見出された。10μgのrIL−23を、治癒適格性野生型Balb/cマウスの背中の、6mm全厚切開創傷周辺の8つの部位に、創傷直後に皮内送達した。創傷3日後に、その2つの切開創傷に加えてさらなる周辺の皮膚を切除した。創傷を、ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン包埋し、そしてヘマトキシリンおよびエオジンで染色した。組織学的スライドガラスを、肉芽形成組織の深さについて評価した。IL−23処理したマウスは、緩衝剤コントロール処理マウスと比較し大きな肉芽形成組織層の厚みを示した。肉芽形成組織層における増加は、後期創傷治癒のために必須である(例えば、SchafferおよびNanney、前出を参照のこと)。同様の結果が、創傷3日後、6日後および10日後であった。
【0102】
同一の手順を、IL−23が創傷治癒において生じる通常の再上皮形成を増強するか否かを確認するために利用した。IL−23処理マウスは、緩衝剤コントロールマウスよりも厚いケラチノサイト層を示した。
【0103】
(IV.切開創傷治癒および破壊強度の評価)
12週齢の雄C57Bl/6NTマウスを、剃毛し、そして脱毛剤(Nair(登録商標)、Church and Dwight Co.、Princeton、NJ)を使用して背側から毛を取り除いた。2つの0.5cm切開創傷を、外科用ハサミを使用して頚部の項から約4cm下に正中から1cm離して作製した。各マウスに、各創傷の表面の周りに、両端で切開の全長に及ぶように、生理食塩水またはmIL−23(マウス1匹あたり10μg)のいずれかを用いて4回の20μl皮内注射を与えた。各創傷を、医療用接着剤(Mastisol(登録商標)、Ferndale Labs.、Ferndale、MI)および透明な包帯(OpSite 3000(登録商標)、Smith and Nephew、Largo、FL)を使用して閉じた。3日後、マウスを、ケタミン/キシラジン カクテルで麻酔し、そして創傷を、製造業者の使用説明書に従い、生体力学的組織キャラクタライザー(BTC−2000、SRLI Technologies、Nashville、TN)を使用してインビボで分析した。このBTC−2000は、高解像度標的レーザーおよび真空を用い、一定範囲の陰圧および時間にわたる皮膚変形を測定する。陰圧を、10mm Hg/秒の速度で、創傷破裂が生じるまで適用した。
【0104】
データを、皮膚変形を陰圧の関数としてプロットすることによって分析し、以下:1)治癒創傷の剛性(組織を変形するのに必要な陰圧mmHg)および2)治癒創傷の全強度(すなわち、創傷を破壊するのに必要な陰圧mmHg)を得た。生理食塩水処理コントロールとmIL−23処理実験とを比較する試験は、生理食塩水処理創傷を破壊するために必要とされる(134.1mmHg)よりも、46%大きい陰圧が、mIL−23処理創傷を破壊するために必要とされる(195.6mmHg)ことを実証した。さらに、mIL−23処理後の治癒中の創傷(262.7mmHg/mm)は、生理食塩水処理コントロール(198.4mmHg/mm)と比べて、固かった。
【0105】
IL−23アゴニストの投与は、治癒した創傷の剛性の望ましい増加(すなわち柔性の減少)を生じるよう企図され、これを超えて、剛性の望ましくない増加(または柔性の望ましくない減少)が起こる。ゆえに、IL−23アンタゴニストが、自然治癒創傷またはIL−23アゴニスト処理した創傷を減少させる、あらゆる望ましくない剛性(または柔性の望ましくない減少)のために提供される。あるいは、例えば、IL−23アゴニストが、望ましくない剛性(例えば、過度の線維症に起因する)の減少を生じるよう企図される。ゆえに、IL−23アゴニストが、あらゆる望ましくない剛性を減少するために提供される。
【0106】
(V.IL−23処理は、肉芽形成組織を増加する)
マウスの背部切除モデルにおける創傷治癒応答は、増大した肉芽形成組織形成、再上皮形成および創傷収縮の組み合わせにより媒介される。このモデルにおける創傷収縮の一段階は、非常に早く起こり、そして創傷閉合全体に対して有意に寄与する。IL−23の創傷治癒促進活性が、それは治癒応答に対する顕著に早い創傷収縮局面を有さない、マウスモデルにおいて観察されることを確認するために、マウス頭部切除モデルを選択した。
【0107】
10μgの組換えIL−23を、Balb/cマウスの頭冠の、一つの3mm全厚切開創傷周辺の4つの部位に、創傷直後に皮内送達した。創傷3日後に、創傷および周辺の皮膚を切除した。創傷を、ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン包埋し、そしてヘマトキシリンおよびエオジン(H/E)で染色した。創傷の中央からの組織学的スライドガラスを、肉芽形成組織の深さについて評価した。
【0108】
創傷を与えた後3日目のデータは、IL−23処理に起因する増大した肉芽形成組織活性が、後期収縮の開始に先立って観察されたこと、従って、IL−23処理は、早期創傷収縮とは独立であることを示す。後期創傷収縮段階はまた、本モデルにおいて起こるが、これは4〜6日後に起こることに注意するべきである。
【0109】
(VI.遺伝子治療)
IL−23を、皮膚創傷の部位に、遺伝子治療技術を使用して送達する。皮膚への治療的な送達を、エキソビボ方法またはインビボ方法によって実行する(例えば、Khavari(1997)Mol.Med.Today 3:533−538およびKhavariら(2002)J.Int.Med.252:1−10を参照のこと)。
【0110】
組換えアデノウィルス調製物を、慣習的な技術によって調製した。例えば、WO 93/09239におけるSrivastava、Samulskiら(1989)J Virol.63:3822−3828;Mendelsonら(1988)Virol.166:154−165;およびFlotteら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10613−10617を参照のこと。マウスIL−23ハイパーカイン(hyperkine)または緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする漸増濃度のアデノウイルス粒子、あるいは生理食塩水希釈液を、Balb/cマウスの背部にある二つの6mm全厚切開創傷周辺の8つの部位に、創傷直後に皮内送達した。創傷3日後に、その二つの創傷および周辺の皮膚を切除した。創傷を、ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン包埋し、そしてヘマトキシリンおよびエオジン(H/E)で染色した。創傷の中央からの組織学的スライドガラスを、肉芽形成組織の深さについて評価した。この方法によるmIL−23ハイパーカインの送達は、ビヒクルのみと比較して、増大した創傷治癒応答を生じた。
【0111】
(VII.mIL−23ハイパーカイン処理にともなう遺伝子発現)
切開創傷を、C57BI6/NTマウスの背部に作製した。創傷を、創傷の周辺部への皮内注入(i.d.)により、10μgのmIL−23ハイパーカインまたは生理食塩水コントロールで処理した。創傷を、創傷後1日目および3日目に収集した。創傷した部位に対して遠位にある皮膚サンプルを、「非創傷」コントロールとして得た。Taqman(登録商標)リアルタイムPCR分析(Applied Biosystems、Foster City、CA)を、組織サンプルに対して実施した。発現データは、ユビキチンの発現に対して相対的であった(ここで、ユビキチンの発現を1に設定した)。次いで発現データを、データセット対と照らして比較した。
【0112】
発現を、創傷の非存在下でIL−23ハイパーカイン処理がある場合と無い場合とについて試験し(表1)、創傷の存在下でIL−23ハイパーカインがある場合と無い場合とについて試験した(表2)。C57BI6/NTマウスを、IL−23ハイパーカインまたは生理食塩水で処理し、続いてTaqman(登録商標)リアルタイムPCR分析によって示される遺伝子の発現を決定した(表1)。各マウスに、生理食塩水または10μgのIL−23ハイパーカインのいずれかを、背部に注入した。組織サンプルを、注入後1日目、3日目または7日目に取得および抽出し、そしてこの3つの日付のサンプルをプールし、それからTaqman(登録商標)分析のために使用した。IL−23ハイパーカイン処理がある場合と無い場合との遺伝子発現の比を示す(表1)。IL−23ハイパーカインは、試験した157遺伝子のうち15遺伝子の発現の2倍以上の増加を刺激した。これらは、IL−6(33倍)、IL−19(32倍)およびCXCL−1(GRO−α)(11倍)を含んだ(表1)。
【0113】
【表1】

1日目(創傷1日後)からの発現データ、および3日目(創傷3日後)からの発現データを示す(表2)。創傷をともなうIL−23は、創傷がある場合に、治癒応答または好中球応答と関連する多くの遺伝子(IL−17、一酸化窒素合成酵素、ラクトフェリンおよびマトリクスメタロプロテアーゼを含む)についてのみ見出される発現を超える発現の増加を刺激した(表2)。
【0114】
【表2】


2系統のマウス(C57B1/6NTマウス;Balb/cマウス)に共通する遺伝子発現におけるIL−23依存的な傾向は、以下の通りであった。158遺伝子群を、創傷治癒の間にどれがIL−23処理によって調節されるのか決定するためにスクリーニングした。これらの遺伝子のうちわずかに5つだけが、少なくとも2倍に上方制御され(表3)、そしてこれらの遺伝子のうちわずかに3つだけが、1/2以下に下方制御された(表3)。
【0115】
IL−17は、他の組織系において、再構築のために重要な遺伝子を調節することが示されてきた。IL−17は、ヒト結腸の上皮下筋線維芽細胞においてTNFおよびIL−1によって刺激される、MMP−3およびTIMP−1両方の、発現および分泌を増強する(Bambaら(2003)J Gastroenterol.38:548−554)。ヒト骨芽細胞において、IL−17は、TNF−α、TGF−βおよびIFN−γと相乗作用し、MMP−13の生成を刺激する(RifasおよびArackal(2003)Arthritis Rheum.48:993−1001)。IL−17単独が、これらのモデルにおいて最小限の効果しか有さないことを考慮すると、IL−17の主要な役割は、再構築応答を増幅することであり得る。IL−19は、皮膚において見出され、そして乾癬に関連付けられてきた(Ghoreschikら(2003)Nature Med.9:40−46;Gallagherら(2000)Genes Immunity 1:442−450)。ラクトフェリンは、成熟好中球顆粒中に存在する鉄結合タンパク質で、抗微生物特性を含む多くの生物学的機能を有し、したがって創傷において細菌感染に対して防御し得る(Massonら(1969)J.Exp.Med.130:643−658;FarnaudおよびEvans(2003)Mol Immunol.40:395−405)。ICAM−2は、創傷においてIL−23が血管形成を促進し得ることを示唆する血管内皮細胞上に構成的に発現される(Yasudaら(2002)Am.J.Physiol.282:C917−C925;Sakuraiら(2003)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.44:2743−2749;Moromizatoら(2000)Am.J.Pathol.157:1277−1281)。DEC−205は、樹状細胞の成熟に関与する樹状細胞マーカーである(Anjuereら(1999)Blood 93:590−598;Bonifaxら(2002)J.Exp.Med.196:1627−1638)。従って、本発明のIL−23は、皮膚において免疫監視機構を促進し得る。
【0116】
まとめると、創傷におけるIL−23処理は、創傷治癒応答を促進する多面的効果を有し得る。IL−23処理はまた、創傷環境において3つの遺伝子(すなわち、IL−25、TNSF7および好酸球塩基性タンパク質)の発現を減少させた。マウスへのIL−25の注入は、肺再構築病理に関連するIL−4、IL−5およびIL−13の遺伝子発現を誘発した(Fortら(2001)Immunity 15:985−995)。したがって、IL−23は、創傷治癒において過度の線維症を調節または減少し得る。
【0117】
適切な方法論は、以下の通りであった。毛を、9週齢の雄C57B1/6NTおよび8週齢の雄Balb/cマウスの背部からナイル(Nair)で剃毛し、そして取り除いた。二つの直径6mm切開創傷を、パンチ生検用具を使用し、頚部の項から約3.5cm下に正中から0.6cm離して作製した。各マウスに、mIL−23ハイパーカインを(マウス1匹あたり10μg)または生理食塩水を、各創傷の外周のまわりに、4回の20μl皮内注入で与えた。透明な包帯を適用し、マウスを回復および治癒させた。1日後、マウスを屠殺し、そして創傷を約1.5mmの縁とともに切除した。さらに、各マウスから非創傷皮膚のサンプルを得た。全てのサンプルを、液体窒素中ですばやく凍結させ、さらなる処理のために−80℃で保存した。各サンプルからRNAを抽出し、適切な群にまとめてプールし、そして158個の候補遺伝子群の発現についてリアルタイムPCRで分析した。
【0118】
【表3】

(VIII.アゴニスト抗IL−23R抗体)
マウス抗IL−23R抗体を、標準的な方法を使用しヒトIL−23Rに対して調製した。生じた抗IL−23R抗体を、hIL−23RおよびhIL−12Rβ1でトランスフェクトした細胞を使用し、アゴニスト活性についてスクリーニングした。アゴニスト活性を、細胞増殖の増加により決定した。トランスフェクト体Ba/F3細胞の増殖を、成長指標色素であるAlamar Blueを使用し、比色定量方法により測定した。
【0119】
細胞増殖を、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)−1640培地、ウシ胎仔血清(10%)、0.05mM 2−メルカプトエタノール、グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびマウスインターロイキン−3(mIL−3)(10ng/ml)において培養後、測定した。細胞を、一定濃度の抗体の存在下でインキュベートした。濃度は0.01〜10,000ng/mlの範囲であった。基線細胞増殖は、抗体の非存在下であった。試験された抗体による最大増殖は、1000〜10,000ng/mlの範囲の濃度において生じた。例えば、細胞活性、細胞増殖または所定の活性の「検出可能な刺激」とは、例えば、IL−23アゴニストの存在下と非存在下とで、例えば増殖を比較することをいう。「検出可能な」とは、文脈(例えば、試薬の、計測器の、または生物学的系の)の関数であり得る。
【0120】
発現を刺激した抗体として、TC48−8B10.D5(軽鎖、配列番号9および配列番号10;重鎖、配列番号11および配列番号12)、TC48−1H3.G5、TC48−2C9A5およびTC48−5B12.C9が挙げられた。これらの抗体のうち、TC48−8B10.D5は、細胞増殖の半値(1/2 maximal)増加を刺激する抗体濃度に関して、一番高いアゴニスト活性を示した。100%細胞増殖とは、滴定曲線において、抗体に応答した細胞増殖における最大増加を意味する(表4)。TC48−8B10.D5軽鎖のシグナル配列についての推定切断点は、配列番号10のアミノ酸22(Ala)と23(Glu)との間であり、一方重鎖についての推定切断点は、配列番号12のアミノ酸19(Ser)と20(Gln)との間である。
【0121】
【表4】

本発明は、ヒトIL−23Rに特異的に結合するアゴニストマウス抗体TC48−8B10.D5を提供する。この抗体は、TC48−8B10.D5の、軽鎖の核酸(配列番号9)およびポリペプチド(配列番号10)、ならびに重鎖の核酸(配列番号11)およびポリペプチド(配列番号12)を含む。配列番号9〜12の超可変領域を含む、核酸およびポリペプチドもまた、提供する。
【0122】
軽鎖の超可変領域は:配列番号10の、ITSTDIDDDMI(アミノ酸46〜56);EGNTLRP(アミノ酸72〜78);およびLQSDNMPLT(アミノ酸111〜119)である。重鎖の超可変領域は:配列番号12の、GYTFTSYWMN(アミノ酸45〜54);MIDPLDSETHYNQMFKD(アミノ酸69〜87);およびGDNYYAMDY(アミノ酸118〜126)である。
【0123】
(IX.ラットの抗マウスIL−23R抗体および創傷治癒)
標準的な方法を使用し、ラットにおいてマウスIL−23Rに対する抗体を惹起させ、5C10、29A5および10E11と名づけた抗体を生じた(表5)。エラスティックリンカー(InvivoGen、San Diego、CA)によって共有結合しているp19サブユニットおよびp40サブユニットを含むIL−23ハイパーカインを調製し、そして「IL−23エラスティカイン(IL−23elastikine)」と名付けた。抗マウスIL−23R抗体、IL−23エラスティカイン(コントロール)、36E10抗体(アイソタイプコントロール)および生理食塩水(コントロール)を、創傷治癒アッセイにおいて試験した。その結果により、IL−23エラスティカインでの創傷治癒の刺激、および5C10抗体でのより少ない刺激が実証された(表5)。
【0124】
【表5】

配列表における配列を要約する(表6)。
【0125】
【表6】

本明細書中の全て引用は、個々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個々に、その全体が参考として援用されることを示されたのと同程度に、本明細書中に参考として援用される。
【0126】
本発明の多くの改変およびバリエーションが、当業者に明らかなように、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中に記載される具体的実施形態は、例示のためにのみ提供される。本発明は、添付の特許請求の範囲およびこのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲によって限定される;本発明は、例示のために本明細書中に提示されている具体的実施形態によっては限定されない。
【配列表】



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置方法または治癒を改善する方法であって、被験体に、有効量のIL−23アゴニストまたはIL−23アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記アゴニストまたはアンタゴニストが、以下:
a)IL−23ポリペプチド、またはその誘導体もしくは改変体;
b)IL−23またはIL−23Rに特異的に結合する抗体に由来する結合組成物;あるいは
c)IL−23ポリペプチドをコードする核酸、またはその誘導体もしくは改変体、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘導体または改変体が、IL−23ハイパーカイン(hyperkine)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アゴニストが、以下の複合物:
a)配列番号10の成熟配列;および
b)配列番号12の成熟配列、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸が、発現ベクターをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記治癒が、以下:
a)皮膚または皮膚性創傷の治癒;
b)潰瘍または移植片の治癒;あるいは
c)不適当な治癒、
である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処置または改善が、以下:
a)治癒した創傷または治癒中の創傷を破壊するのに必要とされる圧力;
b)治癒した創傷または治癒中の創傷の剛性;
c)創傷を治癒する速度;
d)治癒した創傷または治癒中の創傷の肉芽形成層厚;
e)創傷または創傷方向への細胞の動員;
f)抗菌活性、
を増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、以下:
a)CD11b+,MHCクラスII+細胞;
b)単球/マクロファージ;または
c)CD31+内皮細胞、
である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記動員が、肉芽形成組織内でかまたは肉芽形成組織近くに向かう、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
以下:
a)前記増大された創傷を破壊する圧力が、創傷を破壊する圧力において、約15%または約20%の増大であるか;あるいは
b)前記増大された剛性が、剛性において約15%または約20%の増大である、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記処置または改善が、以下;
a)増大された血管形成;または
b)増大された免疫監視、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
以下:
a)前記増大された血管形成が、ICAM−1またはICAM−2により媒介されるか;あるいは
b)前記増大された免疫監視が、樹状細胞により媒介される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処置または改善が、以下:
a)IL−23に加えて、サイトカイン;
b)シグナル伝達分子;
c)抗菌分子;
d)プロテアーゼまたはプロテアーゼインヒビタ;あるいは
e)細胞外マトリクスの分子、
の核酸もしくはタンパク質の増大された発現を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記サイトカイン核酸またはサイトカインタンパク質が、IL−17、IL−6、IL−19、GRO−αまたはGM−CSFである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子またはタンパク質が、以下:
a)ラクトフェリン;
b)DEC−205;
c)CD50;
d)一酸化窒素合成酵素、または
e)分泌性ロイコプロテアーゼインヒビタ;または
f)CD40L
である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アンタゴニストが、以下:
a)核酸;
b)IL−23またはIL−23Rに対するブロッキング抗体;または
c)IL−23Rの細胞外部分に由来する可溶性レセプター、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記核酸が、以下:
a)アンチセンス核酸;または
b)干渉RNA、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
IL−23レセプターに特異的に結合する抗体の結合部位に由来する、IL−23のアゴニスト。
【請求項19】
請求項18に記載のアゴニストであって、以下;
a)ポリクローナル抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)Fabフラグメント、FvフラグメントまたはF(ab’)2フラグメント;
d)ヒト化された抗体;
e)ペプチド擬態の抗体;あるいは
f)検出可能に標識された抗体、
である、アゴニスト。
【請求項20】
請求項18に記載のアゴニストであって、以下の複合体:
a)配列番号10の成熟配列の一つのポリペプチド;および
b)配列番号12の成熟配列の一つのポリペプチド、
を含む、アゴニスト。
【請求項21】
請求項18に記載のアゴニストであって、以下の複合体:
a)配列番号10の成熟配列の二つのポリペプチド;および
b)配列番号12の成熟配列の二つのポリペプチド、
を含む、アゴニスト。
【請求項22】
hIL−23RおよびhIL−12β1を発現する細胞へのアゴニストの接触が、該細胞の増殖の増加を生じる、請求項18に記載のアゴニスト。
【請求項23】
請求項18に記載のアゴニスト、および以下:
a)コンパートメント;または
b)使用または廃棄についての説明書、
を備える、キット。

【公表番号】特表2006−511584(P2006−511584A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563949(P2004−563949)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/040937
【国際公開番号】WO2004/058178
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】