説明

喘息の急性憎悪の治療及びそれに罹患した患者の入院の可能性の低減

本発明は、急性呼吸器発作に見舞われた個体における1種以上の臨床結果を向上させる方法を提供する。急性呼吸器発作には、急性可逆性気管支けいれん、重度の急性気管支けいれん又は喘息の急性憎悪を含むことができる。本発明の方法は、標準治療(standard of care: SOC)の処置療法と併用して、急性呼吸器発作を患う者に有効量のベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩を投与する工程を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喘息の重症発作の治療方法、喘息の持続性重症発作所見の悪化を予防する方法、及び喘息の急性憎悪を含むが、これに限定されず、喘息の持続性重症発作に罹患した患者の入院(又は他の不利な臨床結果)の可能性を低減させる方法に関する。特に、MN−221(一般名:ベドラドリン(bedoradrine))によるこの治療方法は、喘息の急性憎悪に対して知られている標準的な呼吸管理(すなわち、アルブテロールの吸入、イプラトロピウムの吸入、副腎皮質ステロイド)と併用して(すなわち、標準的な呼吸管理と組み合わせて)用いられると、気管支拡張作用が付加されて、入院期間の短縮を含む臨床結果が改善される。本発明は、この標準的な急性呼吸管理又は簡単な「標準治療」の処置療法では対応できない患者に特に適している。
【背景技術】
【0002】
喘息の急性憎悪(acute exacerbation of asthma: AEA)は、喘息の持続性重症発作であって、通常、気管支拡張剤又は副腎皮質ステロイドによる治療に反応を示さない。AEAは、これに限定されないが、例えば、呼吸困難及び気管支けいれんの症状で診断できる可能性がある。患者は、多くの場合、息切れ、咳、喘鳴及び胸部絞扼感が次第に悪化するか又はこれらAEA症状の併発に見舞われる。
【0003】
AEA治療に関する現在の標準治療(standard of care: SOC)は、低流量酸素の利用、β−作動薬(例えば、アルブテロール)や抗コリン作動薬(イプラトロピウム)の吸入、及び/又は副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン及びメチルプレドニゾロン)の静脈内注射若しくは経口投与に頼っており、マグネシウムの静脈内投与(intrvenous: IV)を含む場合もある。国又は時点によっては、アドレナリン受容体作動薬(例えば、成人にはエピネフリン及び子供にはテルブタリン)のIV又は皮下投与(subcutaneous; SC)並びにアミノフィリンのIVが与えられる場合もあるが、最新の米国喘息教育予防プログラム(National Asthma Education and Prevention Program:NAEPP)の喘息に関する指針(2007年)に依れば、ほとんどの場合、少なくとも成人には推奨されない。S.C.ラザロ(S. C. Lazarus)著、NEJM、2010年8月19日、G.J.ブラウン(G. J. Browne)ら著、Lancet(1997年)349号、301頁も同様に参照)。さらに、これらの治療は、SOCに付加されたときに、大きな臨床的利点をもたらさない可能性があり、またさらに/あるいは、望ましくない心血管系副作用(例えば、頻脈)を誘発する可能性もある。アドレナリン又はテルブタリンの皮下投与と、アルブテロールの吸入並びに副腎皮質ステロイド及びアミノフィリンとの併用は、過度の副作用を伴わずにある程度呼吸を助けることが20年以上前から報告されていたが(M.A.スピテリ(M. A. Spiteri)らの、Thorax(1988年)43号、19〜23頁)、このようなβ−作動薬の非経口治療は、限られた実際の便益としては(特に、心血管系障害の観点から)危険が多すぎることが長年かけて分かってきた。
【0004】
近年、D.S.ウィーラー(D. S. Wheeler)らの、Pediatr. Crit. Care Med.(2005年)6号、142〜147頁によれば、喘息発作重積状態の子供のSOCにテルブテリンを加えても、喘息臨床スコア又はICU滞在期間の改善がほとんど得られないことが分かった。前記著者らは、G.J.ブラウン(G. J. Browne)ら著の、Pediatr. Crit. Care Med.(2002年)3(2)に記載のデータを再分析することにより、重度の急性喘息の子供の救急科での初期治療にサルブタモール急速静注薬を静脈内に1回投与することで、重度の発作期間を短縮しかつサルブタモールの吸入管理要件全般を緩和する可能性を有するという結論に至った。しかし、β2−作動薬のIV利用とプラセボ又はSOCの利用とを比較した無作為化対照臨床試験について記載されている論文である、A.H.トラヴァース(A. H. Travers)ら著の、Chest(2002年)122号、1200〜1207頁に記載された再検査により、前記著者らは、次の結論に至った。『(救急科で)重度の急性喘息患者にβ2−作動薬のIVを利用することを裏付ける証拠([e]vidence)が足りない。しかも、臨床的利点も疑わしいように思われるが、潜在的な臨床的リスクは疑う余地がない。β2−作動薬のIV利用が推奨されるのは、吸入治療ができない患者か又はβ2−作動薬のIVと標準治療との併用と標準治療単独との対照臨床試験下にある患者だけである。』。よって、β−作動薬の静脈内投与の潜在的な利点に関する文献には合意すべき点がほとんど見当たらない。重度の急性喘息発作に罹患して救急科に入院している子供に静脈内投与したときの結果と重度の急性喘息発作に罹患して救急科に入院している成人に静脈内投与したときの結果とをめぐる問題もあり得る。
【0005】
アペル(Appel)らの、J. Allergy Clin. Immunol.(1989年)84号、90〜98頁に記載の実験結果には、生命にかかわる喘息の治療における全身性β−作動薬の役割が明示されていないが、エピネフリン又はテルブタリンの皮下投与は、β2−作動薬の連続吸入に反応を示さない患者、及び精神状態が変わるために上手く対処できない患者、又は吸入治療に我慢できない患者に関して検討すべきであると提案されている。エピネフリンはまた、人工呼吸中で吸入治療が受けられない挿管された患者に与えてもよい。エピネフリンの皮下投与は、0.3〜0.5ml(1:1000)を20分毎に、最大3回投与してよい。テルブタリンも皮下投与されてよく(0.25〜0.5mg)、妊婦にとって好ましい治療法である。
【0006】
毎分0.05〜0.10μg/kgで開始するテルブタリンの静脈内注射は、主に小児患者に利用されている。これは、吸入又は皮下投与による治療に反応を示さない患者、いつ呼吸停止するか分からない患者、又は人工呼吸器を取り付けるのが最適であるにもかかわらず酸素が十分に供給されていない患者を治療する際に検討され得る。ボギー(Bogie)らの、Pediatric Emergency Care(2007年)23(6)に記載の最近の二重盲険無作為化対照試験では、既に高用量アルブテロールを既に連続吸入している、人工呼吸器を付けていない重度の急性喘息を患う子供ら49名において、テルブタリンの静脈内投与の効果を調べた。テルブタリンの静脈内投与の利用は、最初の24時間で喘息の臨床重症度スコアを改善させてアルブテロールの連続吸入時間を短縮し、しかもICUの滞在期間を短縮させたが、統計上は有意差がなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人らは、特に現在のSOCに反応を示さない患者におけるAEAを含む、重度の喘息発作を治療する新たな方法を見出した。本出願人らはまた、このような発作を患う患者における気管支拡張作用及び入院期間短縮が、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩(以下、これらをまとめて活性薬剤(Active Agent)と記す)を投与することによって達成され得ることも発見した。活性薬剤が、重度の急性呼吸発作を患う患者の治療に特に有効であるという発見は、既知のβ−作動薬を用いた当業者の臨床経験からは予測できなかった。本出願人らはまた、この発見が、喘息の急性憎悪に見舞われる危険性が高い、「憎悪傾向にある」喘息患者集団の治療に特に有用であるとも考えている(この喘息患者集団の論考に関しては、R.H.ドウアティ(R. H. Dougherty)の、Clin. Exp. Allergy(2009年)39号、193頁を参照のこと)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、重度の持続性喘息発作の薬物療法であって、β2−選択性の高いアドレナリン受容体作動薬の静脈内投与と標準治療の処置療法とを併用することで、重度の持続性喘息発作の悪化を予防し、かつ喘息の急性憎悪を含むが、これに限定されない重度の持続性喘息発作を患う患者の入院の可能性を低減させることによる方法を提供する。本明細書には、このような治療を受ける可能性のある患者とこのような治療を受ける可能性の低い患者を選別する方法も提供される。
【0009】
一態様では、本発明は、こうした治療を必要としている患者への有効量の活性薬剤の投与を含む、AEAの治療方法を提供する。特定の他の態様及び実施形態では、本発明は、前記患者への有効量の活性薬剤の投与を含む、AEAを患う患者の入院の可能性(例えば、入院率の低減又は集中治療室滞在期間の短縮)を低減させ及び/又はAEAの1種以上の所見の悪化を緩和する、新たな方法もまた提供する。別の態様において、本発明の他の方法は、患者が初期の標準治療の処置療法に反応を示さない重度の持続性喘息を患っていることを判断し、及び患者への有効量の活性薬剤の投与を含む。好ましい実施形態では、活性薬剤は、非経口投与され、さらに好ましくは静脈内投与される。
【0010】
静脈内投与される活性薬剤(MN−221、別名ベドラドリン又はその薬学的に許容可能な塩)は、AEA患者の鬱血した肺組織に配給・分配され、そして過度の心血管系副作用を伴わずに気管支を拡張させる。以下の表Iに、MN−221に関して実験で求めたアドレナリン受容体作用プロファイルの一例を示す。
【0011】
【表1】

【0012】
別の態様において、本発明は、AEAの治療を必要としている患者に有効量の活性薬剤を投与することによってAEAを治療する方法であって、AEA又はAEAの1種以上の所見がSOCでの処置に反応を示さない又はほとんど反応を示さないものである方法を提供する。別の態様において、本発明は、重度の持続性喘息発作の治療を必要としている患者に有効量の活性薬剤を投与することによって重度の持続性喘息発作を治療する方法であって、重度の持続性喘息発作又はその1種以上の所見がSOCでの処置に反応を示さない又はほぼ反応を示さないものである方法を提供する。本発明の態様及び実施形態の範囲内において、一実施形態では、投与される活性薬剤は、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩である。例えば、限定されないが、AEAを患う患者(例えば、喘息の急性憎悪が原因で緊急治療室において治療を受けている者)であって、SOCに反応を示さなかった者は、(SOCで治療したことに加えて)MN−221でも治療され、そしてその治療結果を、SOCのみ(又はSOCとプラセボの併用)で治療した同一患者の治療結果と比較した。SOCのみで治療した患者の入院率は54パーセント(13名中7名、およそ半数)であったのに対し、MN−221で治療しかつSOCでも治療した患者の入院率は25パーセント(4名中16名、およそ4分の1)であり、MN−221で更に治療したAEA患者では、呼吸性能の改善(図1参照)と、入院率の約50%の低減が示された。よって、本発明は、AEAを患っており、SOCに反応を示さない患者の入院の可能性を低減させる新たな方法も提供する。本発明の一実施形態において、喘息の急性憎悪に罹患している患者であって、MN−221単独で治療された又はSOCと併用治療された患者の入院の可能性は、ほぼ半分未満又はほぼ50パーセント未満まで低減し、急性呼吸器発作に罹患している患者のおよそ4分の1(又は25パーセント)まで好ましくは低減する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プラセボ及びSOCで治療された患者に対して、SOC及びMN−221で併用治療された患者のFEVベースライン全体が改善したことを表すものである。
【図2】プラセボ及びSOCを投与された患者に対して、SOC及びMN−221の組み合わせを投与された患者において心拍数の悪化が無いことを表すものである。
【図3】緊急治療室で治療を受けている急性呼吸器発作を患っている可能性のある患者に対する、典型的なSOCの処置療法のフローチャートを表す。
【図4】賦形剤を投与されたイヌ、アルブテロールを投与されたイヌ、アルブテロールを投与されたイヌ、及びアルブテロールと3倍用量のMN−221とを併用して投与されたイヌの心拍数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、急性呼吸器発作に見舞われた個体の1種以上の治療結果を改善する方法を提供する。急性呼吸器発作は、重度であり、その個体自身が病院の緊急科(すなわち、緊急治療室)に通常受診する必要がある。急性呼吸器発作には、急性可逆性気管支けいれん、重度の急性気管支けいれん、又は喘息の急性憎悪が含まれ得る。本発明の方法は、急性呼吸器発作を患う個体に、標準治療(SOC)の処置療法と併用して有効量のベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む。ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩は、SOCの処置療法の投与後に投与してもよく、SOCの処置療法の投与と同時に投与してもよく、又はSOCの処置療法の投与前に投与してもよい。SOCの処置療法には、1種以上のβ−刺激薬である気管支拡張剤、1種以上の抗コリン作動薬、1種以上の副腎皮質ステロイド、又はこれらの組み合わせの投与が含まれる。SOCの処置療法には、マグネシウムの投与が含まれていてもよい。
【0015】
通常、1種以上のβ−刺激薬である気管支拡張剤又は1種以上の抗コリン薬は、吸入、注入又は静脈内注射により投与される。1種以上のβ−刺激薬である気管支拡張剤は、アルブテロール、ビトルテロール、レバルブテロール、ピルブテロール、エピネフリン、テルブタリン、ホルモテロール又はサルメテロールから選択されてよいが、1種以上の抗コリン薬も同じく、イプラトロピウム又はチオトロピウムから選択されてよい。1種以上の副腎に皮質ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾロンから選択されてよい。
【0016】
ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩は、任意の好適な経路で投与されてよく、さらに好ましくは静脈内に、経口で又は吸入により投与されてもよい。個体に投与されるベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の量は、通常、100〜5,000μgの範囲内である。さらに好ましくは、約500〜約1,500μgのベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩を約5分〜約120分かけて静脈内投与する。本発明は、1種以上の向上した臨床結果を提供する。このような向上した臨床結果には、FEVの増加、入院の可能性の低減、呼吸困難スコア(dyspnea scores)の改善、挿管頻度の低減、集中治療室での滞在期間の短縮、及び呼吸困難を伴わない独立歩行能力の改善を挙げることができる。通例、FEVは、5%以上、10%以上又は15%以上向上する。
【0017】
本出願人らは、本願により請求される併用(すなわち、MN−221とSOCとの併用)治療を受けている個体の入院の可能性が、SOCの処置療法のみを受けている個体に比べて低減することを見出した。(本開示において、「プラセボ」という用語をSOCと組み合わせて記載する場合、前記用語の意味は、個体が単にSOCの処置療法を受け続けるが、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩等の試験薬は受けないことである。)本発明の教示に従えば、主張している併用治療を受ける個体の入院の可能性は、約25%以下、約20%以下又は約15%以下まで低減する。ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の効能を得やすい個体とは、β−刺激薬である気管支拡張剤(大抵はアルブテロール)の吸入に反応を示さない個体である。このような個体には、本発明により請求される併用治療の後、急性呼吸器発作からの改善が、約1時間以上、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上又は約8時間以上の間、得られる傾向がある。改善の性質は、通常、本発明により請求される併用治療を受けた後で1種以上の臨床的に観測可能な有害な事象を伴わずに、FEV(L)の向上、FEV(予測%)の向上、PEFRの改善、動脈血酸素飽和度の改善、呼吸数の改善又はこれらの組み合わせという形で現れ得る。このような臨床的に観測可能な有害な事象としては、心拍数の増加、血糖上昇、震え、頭痛、動悸又は不安感(jittery feeling)を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0018】
本発明はまた、急性可逆性気管支けいれん、重度の急性気管支けいれん及び喘息の急性憎悪からなる群から選択される急性気管支発作の1種以上の悪影響を緩和する方法であって、急性可逆性気管支けいれん、重度の急性気管支けいれん又は喘息の急性憎悪のいずれかに罹患していると診断された患者への有効量のベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む方法も対象としている。より詳細には、患者は、重度の急性喘息発作、別名喘息の急性憎悪として知られるものに罹患している。本発明の標的患者は、SOCの処置療法に一般的に反応を示さない者である。本出願人らの管理下では、このような患者は、患者の前治療FEVに比べて改善されたFEVを自覚し、この改善されたFEVは、ピーク効果の約50%以上のレベルを、平均して少なくとも約6時間持続する。患者に投与されるベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の好ましい1日量は、約300〜1500μgの範囲である。本出願人らは、本発明は、憎悪傾向にある喘息患者集団に属する者であって、喘息の急性憎悪を患う危険性が一般的に高い者を治療するのに特に有用であろうと考えている。
【0019】
本発明の他の好ましい実施形態は、本発明が開示する詳細な実験から明らかとなるであろう。本出願人らは、本発明の開示において引用した特許文献又は非特許文献の開示内容全てが参照により本明細書に組み込まれることも希望する。
【0020】
定義
以下の定義は、読み手の手助けをする目的で設けられている。別段の定義がなければ、本明細書で用いられる技術用語、表記方法、及び他の科学用語若しくは医学用語、又は他の専門用語は、化学分野及び医学分野における当業者によって一般に理解されている意味を表すものとする。場合により、一般に理解されている意味を持つ用語は、明確にするため及び/又は前もって言及するために本明細書中で定義されているが、本明細書中でこのような定義を含むことが、当該技術分野で一般に理解されている用語の定義とかなり相違する意味を表すものと必ずしも解釈すべきではない。
【0021】
「活性薬物」は、MN−221、MN−221の遊離塩基形態、MN−221の遊離塩基形態の他の薬学的に許容可能な塩(例えば、有機酸付加塩又は無機酸付加塩)、これらの薬学的に許容可能な代謝産物(例えば、カルボン酸)及びこれら代謝産物の薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される薬剤を意味する。
【0022】
患者(及びその語句の文法上の同等物)への薬物の「投与(Administrating又はAdministration of)」には、自己投与を含む直接投与と、薬物の処方行為を含む間接投与がいずれも含まれる。例えば、本明細書で使用されるとき、患者に薬物の自己投与するように指導する医師及び/又は患者に薬物の処方箋を与える医師もまた、患者に薬物を投与する者である。
【0023】
「有効量」の薬物は、AEA患者に投与するときに目的とする治療効果を有するものであり、例えば患者のAEA所見を1つ以上軽減、改善、緩和又は排除する量の薬物である。最大治療効果は、一服(又は一回用量)の投与では必ずしも生じるものではなく、連続投与を受けた後にのみ生じる可能性がある。よって、治療上の有効量は、1回以上の投与で与えられてもよい。
【0024】
「一次治療」とは、AEAの初期治療を表す治療を指す。一次治療が奏功しない又は不十分な場合は、二次治療及び三次治療と呼ばれる、それに続く治療を利用してもよい。
【0025】
AEAの「所見」とは、症状、兆候、生理学的状態(例えば、心拍数、咳、息切れ及び/若しくは呼吸困難、低酸素状態、又は呼吸不能に伴う不安)或いはAEA患者の特徴を表す報告(例えば、FEV、FEV%又はPEFR)を意味する。
【0026】
「MN−221」とは、以下の化学式の硫酸塩を意味する。アセトアミド、N,N−ジメチル−2−[[(7S)−5,6,7,8−テトラヒドロ−7−[[(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]エチル]アミノ]−2−ナフタレニル]オキシ]、硫酸エステル(ビス[2−[[(7S)−7−[[(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]エチル]アミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル]オキシ]−N,N−ジメチルアセトアミド]硫酸エステル又は(−)−ビス(2−{[(2S)−2−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]エチル}アミノ)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−7−イル]オキシ}−N,N−ジメチルアセトアミド)モノ硫酸エステルとしても知られるもの)。
【0027】
【化1】

【0028】
MN−221は、文献に報告されている方法に従って合成される。例えば、Yanagiらの、Chem. Pharm. Bull.(東京)(2003年)51(2)、221〜223頁及び米国特許第6,133,266号明細書を参照のこと。反応機構に束縛されないが、MN−221は、喘息の急性憎悪に一般に使用されるβ−刺激薬(すなわち、アルブテロール、レバルブテロール、テルブタリン)よりもヒトβ2−アドレナリン受容体に対して大きな選択性を有している可能性がある。さらに、MN−221は、β−アドレナリン受容体では完全刺激薬として働き、またβ−アドレナリン受容体では部分刺激薬として働く可能性がある。MN−221は、心血管系の合併症(例えば、頻脈や不整脈)のリスクを抑えながら、気管支拡張作用を与える可能性がある。MN−221の薬学的に許容可能な代謝産物の一例としては、アミド部分の加水分解によって生じる代謝産物が挙げられるが、これに限定されない。加水分解生成物の代表例であるカルボン酸は、米国特許第6,136,852号明細書に記載されており、その開示内容は本明細書に参照により組み込まれる。
【0029】
「患者」、「個体」又は「被験者」は、ヒトを指す。
【0030】
一または複数の症状(及びこの語句の文法上の同等語)の「軽減」とは、一または複数の症状の重症度又は発症頻度を低減させること、或いは一または複数の症状を無くすことを表す。入院の可能性の低減とは、入院頻度の低減又は入院率の低減を表し、例えば、50%から25%の割合、又は15%若しくは10%のように、それ未満である。
【0031】
状態又は患者を「治療すること」とは、臨床結果等の有益な結果又は所望の結果を得るための対策を講じることを指す。本発明の様々な態様及び実施形態を目的として、有益な又は所望の臨床結果には、急性呼吸器発作(例えば、AEA)の1種以上の所見若しくは急性呼吸器発作による悪影響の軽減、緩和又は改善、1種以上の臨床結果の向上、病気の程度の減弱、病気の進行の遅延又は減速、病状の改善、苦痛緩和又は安定化、及び本明細書に記載した他の有益な結果が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
以下に、本発明の様々な態様及び実施形態を説明する。具体的な実施形態は、本発明の包括的な説明を意図するものではなく、本発明の範囲の限定を意図するものでもないことに留意すべきである。態様又は実施形態は、本発明の特定の実施形態と合わせて記載されているが、必ずしもその特定の実施形態に限定されるものではなく、また、本発明の任意の他の一または複数の実施形態と合わせて実行されてもよい。
【0033】
一態様において、本発明は、AEAの治療方法であって、このような治療を必要としている患者への有効量の活性薬剤の投与を含む方法を提供する。特定の他の態様及び実施形態において、本発明は、AEAを患う患者の入院を回避する新たな方法、又はAEAを患う患者の入院率及び/若しくはAEAの1種以上の所見の悪化を軽減する新たな方法であって、このような回避を必要としている患者への有効量の活性薬剤の投与を含む方法も提供する。他の態様において、本発明の他の方法は、患者が、初期の標準治療に反応を示さない重度の持続性喘息発作を患っていることの判断と、非反応の患者への有効量の活性薬剤の投与と、を含む。
【0034】
別の態様において、本発明は、AEA又はAEAの1種以上の所見が、SOCによる治療に反応を示さない又は十分に反応を示さない場合に、AEAの治療を必要としている患者に有効量の活性薬剤を投与することによる、AEAの治療方法を提供する。当業者は、本発明の開示を読めば、AEAの所見の重症度、改善及び悪化に基づいて、患者がSOCの治療に十分に反応を示さないのか又は全く反応を示さないのかを判断できよう。また別の態様において、本発明は、重度の持続性喘息発作又は1種以上のその所見がSOCによる治療に反応していない又は十分に反応していない場合に、重度の持続性喘息発作の治療を必要としている患者に有効量の活性薬剤を投与することによって、重度の持続性喘息発作を治療する方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、AEAを患う患者の入院を回避する又は入院の可能性を低減させる方法であって、AEAに罹患していると診断された患者への有効量の活性薬剤の投与を含む方法を提供する。一実施形態では、患者は、初期の気管支拡張剤若しくは副腎皮質ステロイドによる治療又はこれら治療の組み合わせに反応を示さない、重度の持続性喘息発作に罹患している。重度の持続性喘息発作としては、喘息に続いて発現する持続性の咳、喘息に続いて発現する息切れ及び/又は呼吸困難、喘息に続いて発現する低酸素症、又は初期の気管支拡張剤若しくは副腎皮質ステロイドによる治療又はこれら治療の組み合わせに反応を示さない、呼吸不能若しくは息切れに関連する不安が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書に記載する本発明の様々な態様及び実施形態のうち、一実施形態では、活性薬剤はMN−221である。
【0037】
関連実施形態において、治療を受けた患者には、AEA症状として、呼吸数の減少が発現する。また別の実施形態において、患者は、緊急治療室で治療を受けている。他の関連実施形態において、活性薬剤で治療を受けた患者のうち、約20%〜約30%のみ及び約40%〜約50%のみが入院する。また別の実施形態において、本発明による患者とは、アルブテロール又はメチルプレドニソロンの単独治療又はこれらの併用治療に反応を示さない患者を指す。
【0038】
また別の実施形態において、本発明は、AEAを患う患者のFEV、FEV%、最大呼気速度(peak expiratory flow rate:PEFR)又は動脈血酸素飽和度を改善する方法であって、患者への有効量の活性薬剤の投与を含む方法を提供する。FEVとは、1秒量の強制呼気中の肺から強制的に吐き出すことができる空気の量を指し、肺活量測定で測定され得る。FEV%とは、肺活量の百分率として表されるFEVを指し、気流制限を診断して定量する指標である。肺活量とは、完全吸気と最大呼気との間の肺の体積変化を指す。関連実施形態において、本発明は、AEAを患う患者のFEV、FEV%、PEFR若しくは動脈血酸素飽和度を向上させる方法又はAEAを患う患者の呼吸数を減少させる方法あって、AEAを患っていると診断された患者への有効量の活性薬剤の投与を含む方法を提供する。一般的に、FEV、FEV%、PEFR若しくは動脈血酸素飽和度の向上又は呼吸数の減少は、かかる投与を喘息の急性憎悪のための他の標準治療と組み合わせときに心拍数、最大血圧若しくは最低血圧又は血清カリウムに臨床上重要な変化を伴わずに達成される。
【0039】
別の実施形態において、FEVの向上、治療前FEVと比較して測定される。別の実施形態において、改善されたFEVは、ピーク効果の約50%以上のレベルを平均して少なくとも約5時間持続する。ここに使用されている「ピーク効果」という用語は、平均FEVにおける最高前治療改善率を意味する。別の実施形態において、FEVの向上は、活性薬剤の初期投与後に観測される最大平均FEV増加の約50%、約60%、約70%、又はそれを超えるレベルを約2時間〜約12時間、約4時間〜約10時間及び約6時間〜約8時間持続する。
【0040】
喘息発作の急性憎悪に罹患している患者であって、MN−221とSOCを組み合わせて治療された者におけるFEV向上の一例を、図1のグラフに示す。グラフは、SOCのみを受けた患者におけるベースラインFEVからの変化も含まれている(すなわち、「プラセボ+SOC」であって、継続的SOCのみを受けた患者を表し、「MN−221+SOC」は、MN−221とSOCの組み合わせを受けた患者を表す)。データを表2に集計する。
【0041】
【表2】

【0042】
上述のように、喘息の急性憎悪に罹患している患者においてMN−221を標準治療と組み合わせた場合、観測された臨床的利点は、入院の軽減であった。さらに、付加的な気管支拡張作用も、表2に示すようにFEVの測定時に確認された。プラセボ+SOC群(すなわち、継続的SOC群)は、FEV値に23%のプラス変化が認められた。一方、MN−221+SOC群は、FEV値に38%のプラス変化が認められた。ベースラインからの平均FEV(L)変化は、MN−221+SOC投与群のほうが、プラセボ+SOC投与群よりも200mL(0.20L)多かった。このMN−221投与群における付加的な気管支拡張効果は、図1のグラフにも表れている。
【0043】
重要なことに、観測された臨床的利点(例えば、入院率の低減、付加的な気管支拡張作用等)は、心拍数がほとんど増加させずに現れたため、他のβ−刺激薬の使用中も安全性を保ちかつ予想外の結果をもたらした。心拍数の変化がほとんどないことは、図2からも分かる。
【0044】
別の態様では、本発明は、MN−221の溶液又は薬学的に許容可能なMN−221の塩の溶液を含む有効量の医薬組成物を投与することによる患者の治療を含む、喘息の急性憎悪に罹患している患者の治療方法を提供する。別の実施形態において、患者は、治療前FEVに比べてFEVの向上を自覚する。別の実施形態において、FEVの向上は、ピーク効果の約50%以上のレベルを平均して少なくとも約5時間持続する。別の実施形態において、FEVの向上は、医薬組成物の初期投与後に観測される最大平均FEV増加の約50%、約60%、約70%、又はそれを超えるレベルを約2時間から約12時間、約4時間から約10時間及び約6時間から約8時間持続する
【0045】
好ましい実施形態において、活性薬剤は、SOCの投与と併用して投与される。よって、活性薬剤は、AEAの治療、AEAの症状の改善、活性薬剤の作用の増強又は他の治療上の利益の提供を目的とした他の薬剤又は他の手順と組み合わせてAEA患者に投与される。「併用して」薬剤を投与することには、平行投与(ある期間にわたって患者に両方の薬剤を投与すること)、同時投与(薬剤をほぼ同時に、例えばお互いを約数分以内から数時間以内に投与することであって、例えば、MN−221とアルブテロール、イプラトロピウム及び/又はプレドニゾン若しくはプレドニゾロンを同日に投与すること)及び併用処方(薬剤を、経口投与、吸入投与又は非経口投与に適した単回投与形態に混合又は配合すること)が含まれる。
【0046】
他の実施形態において、このように併用して投与されるSOCには、1種以上のβ−刺激薬、抗コリン薬及び副腎皮質ステロイドが含まれる。別の実施形態において、β−刺激薬は、吸入性β−刺激薬である。別の実施形態において、β−刺激薬はアルブテロールである。別の実施形態において、アルブテロールは、約5mg/時ないし20分毎に約5mgの速度で投与される。別の実施形態において、アルブテロールの投与は、間欠的又は連続的である。別の実施形態において、抗コリン薬は、イプラトロピウムである。また別の実施形態において、β−刺激薬又は抗コリン薬は、ネブライザー又はMDI(metered dose inhaler:定量吸入器)を用いて投与される。別の実施形態において、副腎皮質ステロイドは、プレドニゾン又はメチルプレドニゾロンである。別の実施形態において、副腎皮質ステロイドは、経口で又は非経口で投与される。
【0047】
別の態様において、本発明は、MN−221の溶液又は薬学的に許容可能なMN−221の塩の溶液を含む有効量の医薬組成物の投与と、MN−221以外のβ−刺激薬又は薬学的に許容可能なβ−作動薬の塩を含む有効量の吸入性医薬組成物の投与とを含み、それによって患者を治療する、喘息の急性憎悪に罹患している患者の治療方法を提供する。別の実施形態において、MN−221以外のβ−刺激薬はアルブテロールである。
【0048】
別の実施形態において、MN−221の溶液は、静脈内投与される。別の実施形態において、MN−221は、約600μgから約1200μgの1日量で投与される。別の実施形態において、MN−221の溶液又は薬学的に許容可能なMN−221の塩の溶液を含む有効量の医薬組成物は、約15分から約2時間かけて投与される。
【0049】
別の態様では、本発明は、喘息の急性憎悪を患う患者の治療方法であって、
(a)標準治療(SOC)の薬剤又は治療を与え、
(b)患者が前記(a)ステップに対して正の反応を示すか又は負の反応を示すかを判断し、
(c)患者が前記(a)ステップに対して正の反応を示す場合、患者を退院させ、
(d)患者が前記(a)ステップに対して負の反応を示す場合、MN−221の溶液又は薬学的に許容可能なその塩の溶液を含む有効量の注入可能な医薬組成物を投与し、
(e)患者が前記(d)ステップに対して正の反応を示すか又は負の反応を示すかを判断し、
(f)患者が前記(d)ステップに対して正の反応を示す場合、患者を退院させ、
(g)患者が前記(d)ステップに対して負の反応を示す場合、患者を入院させる、
ことを含む方法を提供する。別の実施形態において、(f)ステップにより退院した患者は、退院後、平均して少なくとも3時間症状がない状態が続く。別の実施形態において、(f)ステップにより退院した患者は、退院後、平均して少なくとも5時間症状がない状態が続く。
【0050】
急性呼吸器発作に罹患している患者の入院、診断及び治療に有望とされる計画は、図3のフローチャートに示されているが、このフローチャートは単なる例示目的で示すものである。(S.C.ラザロ(S. C. Lazarus)著、The New England Journal of Medicine(201年)363号、755〜764頁を参照のこと。)
【0051】
他の実施形態において、本明細書で提供する治療方法は、一次治療の一部である。他の実施形態において、本明細書で提供する治療方法は、二次治療の一部又は三次治療の一部である。
【0052】
別の態様では、本発明は、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む治療に適している可能性がある又は適している可能性が低い、喘息の急性憎悪に罹患している患者の選定方法であって、
患者に標準治療(SOC)を投与し、
患者のFEVを測定すること、
を含み、FEVが予測値の約55%以下の場合、患者は、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む治療を受ける可能性があり、そしてFEVが予測値の約55%超の場合、患者は、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む治療を受ける可能性が低くなるように患者を選定する方法を提供する。
【0053】
特定の実施形態において、FEVが予測値の約50%以下、約40%以下、約25%以下の場合、患者は、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む治療を受ける可能性がある。
【0054】
本明細書で使用するとき、FEVの「予測値」は、年齢、身長、性別及び人種、並びにFVC測定値、FEV測定値及びFEF25〜75%測定値に基づく周知の方法に従って算出され得るFEVの測度である。ここで使用されているFVCとは、強制肺活量(forced vital capacity)を指し、これは、最大吸気に続く強制呼気中に肺から吐き出され得る空気の総量である。ここで使用されているFEF25〜75%とは、強制呼気流(forced expiratory flow)25〜75%を指し、これは、FVC操作の中間以降の平均呼出流量であり、小さな気道狭窄についても感度良く測定できるものと考えられ得る。
【0055】
別の実施形態において、患者は、MN−221又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む治療に適している可能性がある。別の実施形態において、前記方法は、MN−221の溶液又は薬学的に許容可能なMN−221の塩の溶液を含む有効量の医薬組成物の患者への投与と、それによる喘息の急性憎悪の治療を更に含む。別の実施形態において、MN−221は、患者一人当たり約600μgから約1200μgの量で投与される。別の実施形態において、有効量の医薬組成物は、約15分から約2時間かけて投与される。別の実施形態において、MN−221以外のβ−刺激薬は、アルブテロールである。
【0056】
特定の実施形態では、本発明の方法を使用するために、患者を次の潜在患者集団から選んでよい。前記集団は、男性でも女性でもよく、医師が喘息と診断して3カ月以上治療したと自身が報告した病歴を持っていてよく、そして救急科(ED)で診察を受けたときに、呼吸困難、気管支けいれんの兆候及び既知の喘息病歴で定義されるように喘息の急性憎悪と診断されたことがあってもよい。EDで診察を受けたときに、このような患者は、次の治療を受けてもよい。バイタルサインのチェック及び聴診を含む簡単な理学的検査、並びに副呼吸筋の使用及び患者を襲った呼吸困難程度の診断、患者のFEV(予測値の%で表されるもの)を測定するための肺活量測定、パルス酸素濃度計で測定したときに90%以上の酸素飽和度を維持するための酸素補給の投与、ネブライザーによるβ2−刺激薬(例えば、限定されないが、約5mgのアルブテロール)の2回の吸入投与(各用量を1時間毎又は約20分毎に連続して与える)、ネブライザーによる抗コリン薬(例えば、限定されないが、約0.5mgのイプラトロピウム)の2回の吸入投与(各用量を約20分毎に連続して与える)、並びに約60mgの副腎皮質ステロイドの経口投与(プレドニゾン)又は静脈内投与(メチルプレドニゾロン)。投与されたSOCの回数及び量は変更してよいが、このことは当業者には自明であろう。さらに、適した患者は、直前に記載した通り、SOC治療を終えてから約10分以内にFEVが55%以下となる可能性があり、心電図(ECG)に律動不整(洞頻脈を除く)が現れない可能性があり、しかも虚血性心疾患の臨床兆候又は心電図所見を示さない可能性がある。
【0057】
患者の選定の一部でかつ患者の治療の一部として投与されるSOCは、本発明によれば、米国喘息教育予防プログラム(National Asthma Education and Prevention Program:NAEPP)の指針に合った標準治療を含んでいてよい。喘息の急性憎悪と診断されて治療のためにEDにいるとき、患者は、米国喘息教育予防プログラム(NAEPP)の指針に合った標準的な治療を受けてもよい。患者が標準的な初期の処置療法を受けて、その治療に反応を示す(喘息の急性憎悪の兆候及び症状)と診断された場合、12誘導心電図(12-lead ECG)、呼吸困難指数スケール評価及び肺活量測定のうち1種以上を行ってもよい。患者のFEVが予測値の55%以下であれば、患者は本発明の方法による治療に適している可能性がある。スクリーニングの過程において、患者は、喘息の急性憎悪の治療のために、NAEPPの指針に合った適切な医療を受け続けてもよい。
【0058】
特定の実施形態では、治療期間中、患者は、患者のFEVが予測値の約70%以上に達するまで、次の標準的な治療及び診断のうち1種以上を受け続けてよい。このような標準的な治療及び診断には、患者の兆候や症状の診断、呼吸困難指数スケールの完成、パルス酸素濃度計で測定したときに約90%以上の酸素飽和度を維持するための酸素補給、アルブテロール(2.5mg)を1時間毎又は20分毎にネブライザーで投与すること、イプラトロピウム(0.5mg)を1時間毎にネブライザーで投与すること、ネブライザー治療完了から10分以内の肺活量測定、その後の、兆候及び症状の再診断が含まれる。
【0059】
特定の実施形態において、患者のFEVが治療期間中に予測値の70%以上まで向上しない場合、患者は、入院を含む、更なる治療を受け続けてもよい。治療期間中、安全性、効能及び薬物動態(PK)パラメータをモニターしてもよい。最初の24時間の検査外来受診は、患者の健康状態を評価するためだけでなく、安全性及びPKパラメータを評価するために行われてよい。第2の経過観察接触は、電話による7日間の安全目的と患者の健康状態診断のための後無作為化で済ませてもよい。臨床兆候、症状、実験上の異常、毒性を示すECG異常又は効能分析結果(FEV、呼吸困難指数スケール)によって、投与量増加計画案を変更するか、服用レベルを繰り返すか、又はMN−221をそれ以上追加投与しないと診断するかを決定してよい。
【0060】
次の結果のうち1種以上を利用して、本発明の方法の有用性を判断してもよい。前記結果には次のものが含まれる。
アルビテロール(例えば、限定されないが、各約2.5mg〜約5mg)及びイプラトロピウム(例えば、限定されないが、各約0.5mg)を2回投与した後のFEVを、MN−221注入開始から2時間後(「2時間後」)のFEVと比較したときの、予測値%で表されるFEVの変化、
喘息の急性憎悪を患う患者にアルビテロール(例えば、限定されないが、各約5mg)及びイプラトロピウム(例えば、限定されないが、各約0.5mg)を2回投与した後の、MN−221の安全性、許容性及び薬物動態プロファイル、
約2時間後以外の時点(例えば、限定されないが、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後及び約8時間後)でのFEV(予測値%)の測定、
FEV(L)の測定、
PEFR(L/秒)の測定、
予測値パーセント(%)で表されるPEFRの測定、そして
呼吸困難指数スケールの測定。
本明細書で使用するとき、例えば「2時間後」とは、MN−221を投与してから2時間後を指しており、MN−221の投与停止から2時間後を含む。様々な前記結果は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間及び約24時間の間隔を空けて測定されてよく、また、呼吸困難指数スケールは、約8日目に測定されてよい。次の結果のうち1種以上を利用して、本発明の方法の有用性を判断してもよい。
50%以上、60%以上及び70%以上のFEVを達成するための、MN−221と併用されるアルブテロール治療回数の測定、
入院滞在時間の測定(時)、及び
集中治療室(ICU)入院率の測定。
【0061】
別の実施形態において、標準治療には、アルブテロール約2.5mgから約5mgをネブライザー又はMDIで投与すること、イプラトロピウム約1mgをネブライザー又はMDIで投与すること、プレドニゾン約50mgを経口投与すること又はメチルプレドニゾロン約50mgを静脈内投与すること、及び硫酸マグネシウム約2グラムを静脈内投与することが含まれる。
【0062】
本発明の様々な態様及び実施形態の範囲内の特定の他の実施形態において、活性薬剤は、一日の用量約2400μg(又は2.4mg)、約1200μg、約1000μg、約800μg、約600μg、約450μg、約250μgで静脈内(i.v.)投与される。他の実施形態において、活性薬剤は、一回の投与量が約200μg〜約2000μgで投与される。
【0063】
本発明の様々な態様及び実施形態の範囲内の特定の実施形態において、活性薬剤は、注入により投与される。一実施形態において、注入は、約3μg(μグラム又はμg)/分〜約60μg/分、約6μg/分〜約30μg/分、約12μg/分〜約15μg/分、約7μg/分〜約18μg/分、約9μg/分、約13μg/分、及び約16μg/分の速度で行われる。
【0064】
さらに別の実施形態において、患者は、約40μg/分で15分間静脈内投与された後、約13μg/分で約45分間静脈内投与される。さらに別の実施形態において、本発明の方法によれば、患者は、救急治療室に収容された者である。また別の実施形態において、患者は、喘息の急性憎悪を発症した場所の近くで治療されてもよく、又は病院への搬送中に(例えば、緊急救援車両内で又は救急車内で)治療されてもよい。
【0065】
さらに別の実施形態において、本発明の方法によれば、患者は、初期量の活性薬剤を患者一人につき約3μg/kg(又は患者一人当たり約200μg)から患者一人につき約60μg/kg(又は患者一人当たり約4mg)の範囲で投与される。活性薬剤は、約1分間〜最長約4時間かけて投与されてもよい。
【0066】
本発明の様々な態様及び実施形態の範囲内の特定の実施形態において、活性薬剤は、最長約3時間(h)、最長約2h、最長約1h、最長約45分間、最長約30分間及び最長約15分間投与される。活性薬剤は、様々な投与速度で様々な時間にわたって投与されてよい。
【0067】
一部の実施形態において、組成物は、静脈内注射又は注入、筋肉内投与、経皮投与及び皮下投与等の非経口投与経路に適した処方として投与される。非経口用途としては、溶液が特に適しており、油性溶液又は水溶液、並びに懸濁液、エマルジョン、又は座薬等の植込錠が好ましい。
【0068】
関連する実施形態において、静脈内投与製剤は、水性デリバリーシステム中に本発明の化合物を約0.20mgから約20mg、約0.20mgから約10mg、約0.20mgから約5mg、約0.20mgから約3mg、約0.20mgから約2mg又は約0.20mgから約1mg含んでいる。水性デリバリーシステムは、約0.02%から約0.5%(w/v)の緩衝酢酸溶液、リン酸緩衝液又はクエン酸緩衝液を含んでいてもよい。別の態様において、前記製剤のpHは約3.0から約7.0である。関連する態様において、静脈内投与製剤中の化合物の濃度は、約0.15マイクロモル/mLから約0.25マイクロモル/mLの範囲である。
【0069】
一部の実施形態において、被験者は、患者一人につき約3μg/kg(又は患者一人当たり約200μg)から患者一人につき約60μg/kg(又は患者一人当たり約4mg)の範囲の量で本発明の化合物を投与される。調剤は、被験者への単回ボーラス注入として静脈内投与されてもよく、単回ボーラス注入後に最長24時間、36時間、48時間又は72時間の持続輸注として静脈内投与されてもよく、又は最長24時間、36時間、48時間又は72時間の持続輸注として静脈内投与されてもよい。調剤は、4時間以上間隔を空けて、最長24時間、36時間、48時間又は72時間皮下投与又は静脈内投与されてもよい。一部の実施形態において、被験者は、約40μg/分で15分間静脈内投与された後、約13μg/分で約45分間静脈内投与される。
【0070】
一部の実施形態において、静脈内投与製剤は、本発明の化合物を含む凍結乾燥製剤を戻したものである。別の実施形態において、凍結乾燥製剤は、糖質及び/又は多価アルコールを更に含んでいる。糖質は、マンノース、リボース、トレハロース、マルトース、イノシトール又はラクトース等であってよい。多価アルコールは、ソルビトール又はマンニトールであってよい。活性薬剤を含む医薬組成物はまた、ネブライザーを用いて投与(すなわち、吸入)されてもよく、又は経腸的に(例えば口から)投与されてもよい。
【0071】
一実施形態において、液剤は、活性薬剤を約3μg/mLから約60μg/mL、約6μg/mLから約30μg/mL、約12μg/mLから約30μg/mL及び約15μg/mLから約20μg/mLの量で含んでいる。別の実施形態において、液剤はブドウ糖を更に含んでいる。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を例示する目的でかつ当業者が本発明を実施する際の補助目的で提供される。これら実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。特に、MN−221の投与が以下に例示されているが、「活性薬剤」を含む他の構成のどれを用いても同様の結果が得られるものと予測される。
【0073】
実施例1:MN−221の生体内投与の安全性と効能
前臨床試験では、ブタクサで感作されたイヌにおいて、ブタクサ誘発性気管支収縮作用のピークでMN−221(0.04から0.4mg/kg)を静脈内投与することにより、投与から0.75分と6.7分との間以後に気管支収縮作用からの統計学的に有意な近最大回復が立証された(p<0.001に関しては最長4.5分及びp<0.01に関しては最長6.7分)。
【0074】
ラブレース呼吸器研究所(Lovelace Respiratory Research Institute)におけるテレメーターを付けたイヌを用いた別の実験では、アルブテロールの吸入に加えてMN−221を静脈内(i.v.)投与するという効能を発揮させ、心血管変化と併用療法の安全性を評価した。アルブテロールは、5又は10μg/kgで吸入により投与され、また、MN−221は、0.3、3または30μg/kgを15分間かけて静脈内投与された。β−刺激薬に関する予測通りにかつ他のモデル系で示された通りに、アルブテロールとMN−221の両方を用いた場合にだけ、投与に応じて心拍数が適度なレベルまで上昇した。アルブテロール及びMN−221のどちらか一方を任意の投与量で用いた場合には、平均動脈圧(MAP)又は補正QT間隔(QTc)に不利な変化は認められなかった。ここに記載の発見にとって最も重要でかつ最も関連のあることには、臨床的に意義のあるアルブテロールの投与に、臨床的に意義のあるMN−221の投与を追加しても、心拍数の増加は生じなかった。図4を参照のこと。また、併用療法では、他の心血管系パラメータ(MAP、QTc)にも不利な変化は生じなかった。
【0075】
実施例2:AEA治療におけるMN−221の投与
救急科(ED)で治療を受けるAEA患者において、MN−221の投与量を240μgから1,080μgまで段階的に増やして試験した。この試験では、29名の重度のAEA患者が含まれていた(うち、13名はSOCのみで治療し、16名はSOCと併用してMN−221で治療した)。どの患者にも、次のSOC治療を受けさせた。パルス酸素濃度計で測定したときに90%以上の酸素飽和度を維持するための酸素補給、吸入性β2−刺激薬(この試験では、アルブテロール5mg)をネブライザーで約20分毎に2回投与、吸入性抗コリン薬(この試験では、イプラトロピウム0.5mg)をネブライザーで約20分毎に2回投与、副腎皮質ステロイドの経口投与を1回(この試験では、プレドニゾン60mg)又は静脈内投与を1回(この試験では、メチルプレドニゾロン125mg)、そしてEDでの治療時にFEVが予測値の25%以下の場合は、静注用硫酸マグネシウム(2グラム、50〜100mLの生理食塩水で希釈したもの)を10分かけて患者に投与する。
【0076】
MN−221は、次の投与量で投与した。16μg/分で15分間(合計240μg)、30μg/分で15分間(合計450μg)、並びに16μg/分で15分間及び8μg/分で105分間(合計1,080μg)。MN−221としては、10mL瓶にMN−221 2mgとラクトースを入れて凍結乾燥した単位用量を投与に使用した。MN−221 2mg(2000μg)入れた瓶と、プラセボを入れた瓶を、次のようにして再構成した。MN−221を含む10mL瓶それぞれに5%ブドウ糖液4mLを加えて、500μg/mLの貯蔵液を作製した(2000μg/4mL=500μg/mL)。5%ブドウ糖液123mLに貯蔵液2mL(1,000μg)を加えて、全容積を125mLとした(123mL+2mL=125mL)。このようにして、1,000μg/125mL又は8μg/mLの最終MN−221溶液を調製した。
【0077】
患者は、MN−221又はプラセボでの治療に加えて、SOC治療(吸入性アルブテロール、2.5mgをネブライザーで最長20分毎)及びイプラトロピウム(0.5mgをネブライザーで最長20分毎)が投与された。
【0078】
全MN−221群の入院率(患者4名/16名、16%)は、プラセボ群(患者7名/13名、54%)よりも低かった。この結果からは、MN−221で治療した患者では入院率が50%超の低減することが分かった。1秒量の強制換気値(FEV)の向上は、概して、SOC治療に加えてMN−221を受けた患者の方が大きく現れた。心電図(ECG)検査、室内実験データ及び有害事象データの結果からは、標準治療にMN−221を付加することに関する安全性に対する不安は確認されなかった。本実施例からは、本発明の様々な態様及び実施形態によるMN−221投与がAEA治療及び喘息重積状態の治療において有用であることが明らかである。
【0079】
実施例3:AEA患者へのMN−221投与による安全性及び効能の実証
本発明の方法の様々な態様及び実施形態によるMN−221の投与の効能及び安全性を実証するために、無作為化二重盲検プラセボ対照第二相(Phase II)臨床試験を行う。患者には、(米国喘息教育予防プログラム及び喘息のためのグローバルイニシアチブ(Global Initiative for Asthma:GINA)の指針に合った)次の初期SOCの処置療法を与える。SOCには、次のものが含まれる。必要に応じ、パルス酸素濃度計で測定したときに90%以上の酸素飽和度を維持するための酸素補給を行い、アルブテロール:適格肺活量検査前にアルブテロール10mgをネブライザーで投与すると同時に、イプラトロピウム:適格肺活量検査前にイプラトロピウム1.0mgをネブライザーで投与する(ネブライザーを使用しない場合、アルブテロール及びイプラトロピウムは、次のようにして、スペーサー付き定量吸入器(MDI)を用いて投与してもよい。アルブテロール:適格肺活量検査前にスペーサー付きMDIでアルブテロールを16パフ(1パフ(puff)当たり90μg)投与すると同時に、イプラトロピウム:適格肺活量検査前にスペーサー付きMDIでイプラトロピウムを16パフ(1パフ当たり18μg)投与する。)、患者がこの治療に反応を示すことを診断し、少なくとも50mgの副腎皮質ステロイドを経口で1回(プレドニゾン)又は静脈内に1回(メチルプレドニゾロン)投与する、或いは等量の別の副腎皮質ステロイドの投与し、そして硫酸マグネシウムによる治療であって、例えば、患者のFEVが予測値の25%以下の場合は、硫酸マグネシウム2mgの静注療法を受けることが有効である。
【0080】
特定の試験において、患者は、スクリーニング期間中に(事前スクリーニング期間中に受けたアルブテロールの投与及びイプラトロピウムの投与に加えて、)次の標準治療を受ける。必要に応じて、パルス酸素濃度計で測定したときに90%以上の酸素飽和度を維持するための酸素補給を行い、アルブテロール:少なくとも2.5mgかつ7.5mg以下のアルブテロールを、スクリーニング期間中にネブライザーで投与すると同時に、イプラトロピウム:0.5mgのイプラトロピウムをスクリーニング期間中にネブライザーで投与する。ネブライザーを使用しない場合、アルブテロール:スクリーニング期間中にスペーサー付きMDIで少なくとも6パフかつ18パフ以下(1パフ当たり90μg)を投与すると同時に、イプラトロピウム:スクリーニング期間中にスペーサー付きMDIで8パフ(1パフ当たり18μg)を投与する。患者のFEVが予測値の50%以下であり、しかも患者が他の試験の参加基準を全て満たしている場合、患者は、MN−221又はプラセボのどちらか一方を受けるように無作為に選ばれる。この試験に登録された患者は、MN−221試験薬剤又はプラセボを1時間静脈内注入される。2mgの凍結乾燥された単位用量形態のMN−221を製剤として使用する。5%ブドウ糖液(D5W)で再構成した後、MN−221を13.3μg/mL含む水性製剤を患者に投与する。MN−221を投与した患者は、総投与量1200μgを授与する(45μg/分を15分間[600μg]+13.3μg/分を45分間[600μg])。すなわち、患者は1時間かけて1200μgを授与する。
【0081】
前記試験に登録された患者は、MN−221又はプラセボを静脈内注入により投与されるが、必要に応じて、MN−221と併用してSOCも投与される。次のSOCが投与される。酸素補給は、必要に応じて、パルス酸素濃度計で測定したときに90%以上の酸素飽和度を維持するために任意に投与され、アルブテロール:少なくとも(2.5mg)かつ7.5mg以下のアルブテロールが治療期間中、1時間毎にネブライザーで投与され、イプラトロピウム:ネブライザーによる1回分(0.5mg)のイプラトロピウムが、治療期間中、1時間毎に任意に投与される。ネブライザーを使用しない場合、SOCは、MDIで行ってもよい。主な効能評価項目は、FEVの改善である。
【0082】
実施例4:静脈内投与用MN−221製剤
MN−221(2mg)は、以下の表に示す通り、無菌処理済の注入用凍結乾燥製品として処方される。
【0083】
【表3】

【0084】
前記製剤は、5%ブドウ糖液又は他の非経口投与に望ましい溶液5mLを用いて再構成してから静脈内投与される。
【0085】
実施例5:一次併用療法としてのMN−221の投与
救急科(ED)で受診し、又は、入院前の状況下にある、喘息憎悪症状を示す患者は、本実施例5に記載通り、MN−221を投与して治療され、そしてそれと併用して、SOCが投与又は適用される。SOCの一部として、イプラトロピウムを伴わずに又はイプラトロピウム(約1mg)と共に、アルブテロール(約10mg)がネブライザーで投与される。ネブライザーを使用しない場合、アルブテロール及びイプラトロピウムは、次のようにしてスペーサー付きMDIを用いて投与される。アルブテロールに関しては、アルブテロールを約16パフ(1パフ当たり90μg)投与し、また、イプラトロピウムに関しては、イプラトロピウムを約16パフ(1パフ当たり18μg)投与する。また、一部の患者には、副腎皮質ステロイド約50mgを経口投与(プレドニゾン)又は静脈内投与(メチルプレドニゾロン)する。さらに、一部の患者には、静注用硫酸マグネシウム約2mgも投与する。酸素補給もまた、パルス酸素濃度計で測定したときに90%以上の酸素飽和度を維持するために行われる。
【0086】
本発明の技術の特定の態様及び実施形態について例示しかつ記載してきたが、当業者には、本発明の技術から逸脱することなく、以下の特許請求の範囲において定義する通り更に広い態様で、変更及び修正が可能であることが分かるであろう。
【0087】
[関連特許出願の相互参照]
本出願は、2009年11月18日出願の米国仮出願第61/262,352号及び2010年10月13日出願の同第61/392,917号それぞれに基づく優先権を主張するものであり、これら全体は参照によって本明細書に組み込まれる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性可逆性気管支けいれん、重度の急性気管支けいれん及び喘息の急性憎悪からなる群から選択される急性呼吸器発作に見舞われた個体(individual)の1種以上の臨床結果を改善する方法であって、急性呼吸器発作に罹患している前記個体への有効量のベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の、標準治療(SOC)の処置療法と併用する投与を含む方法。
【請求項2】
前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩が、前記標準治療(SOC)の投与後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩が、前記標準治療(SOC)と同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩が、前記標準治療(SOC)の投与前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標準治療(SOC)の処置療法が、1種以上のβ−刺激薬(β−agonist bronchodilator)である気管支拡張剤、1種以上の抗コリン薬(anti−cholinergic drug)、1種以上の副腎皮質ステロイド又はこれらの組み合わせの投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標準治療(SOC)の処置療法が、マグネシウムの投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上のβ−刺激薬である気管支拡張剤又は前記1種以上の抗コリン薬が、吸入、注入又は静脈内注射によって投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上のβ−刺激薬である気管支拡張剤が、アルブテロール、ビトルテロール、レバルブテロール、ピルブテロール、エピネフリン、テルブタリン、ホルモテロール又はサルメテロールから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上の抗コリン薬が、イプラトロピウム又はチオトロピウムから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記1種以上の副腎皮質ステロイドが、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン及びプレドニゾロンから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩が静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩が吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記固体に投与される前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の量が、100から5,000μgの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
約500から約1,500μgの前記ベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩が、約5分間から約120分間かけて静脈内投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記個体が、救急治療室に入院している、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
改善される前記1種以上の臨床結果が、FEVの増加、入院の可能性の低減、呼吸困難スコア(dyspnea scores)の改善、挿管頻度の低減、集中治療室での滞在期間の短縮、及び呼吸困難を伴わない独立歩行能力の改善から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記FEVが、5%以上、10%以上又は15%以上改善する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記併用療法を受けた前記個体の前記入院の可能性が、前記SOCの処置療法のみを受けた個体に比べて低減する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記併用療法を受けた前記個体の前記入院の可能性が、約25%以下、約20%以下、又は約15%以下まで低減する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記個体が、吸入性β−刺激薬である気管支拡張剤に反応を示さない、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記吸入性β−刺激薬である気管支拡張剤がアルブテロールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記個体が、併用治療を受けてから約1時間以上、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上又は約8時間以上、急性呼吸器発作からの改善を自覚する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記個体が、併用治療を受けた後で、1種以上の臨床的に観測可能な有害事象を伴わずに、FEV(L)の向上、FEV(予測率(%))の向上、PEFRの改善、動脈血酸素飽和度の改善、呼吸数の改善又はこれらの組み合わせを自覚する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記1種以上の臨床的に観測可能な有害な事象が、心拍数の増加、血糖上昇、震え、頭痛、動悸及び不安感(jittery feeling)から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
急性可逆性気管支けいれん、重度の急性気管支けいれん及び喘息の急性憎悪からなる群から選択される急性気管支発作による1種以上の悪影響を緩和する方法であって、急性可逆性気管支けいれん、重度の急性気管支けいれん又は喘息の急性憎悪のいずれかに罹患していると診断された患者への有効量のベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の投与を含む方法。
【請求項27】
前記患者が、喘息の急性憎悪に罹患している、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記患者が、SOCの処置療法に反応を示さない、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が、当該患者の前治療FEVに比べてFEVが改善したことを自覚し、そして前記FEVの改善が、ピーク効果の約50%以上のレベルを、平均して少なくとも約6時間持続する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記患者に投与されるベドラドリン又は薬学的に許容可能なその塩の1日量が、約300から1500μgの範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記個体又は前記患者が、憎悪傾向にある喘息患者集団に属している、請求項1又は26に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−511528(P2013−511528A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540001(P2012−540001)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/057028
【国際公開番号】WO2011/062984
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(505476515)メディシノバ,インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】MEDICINOVA,INC.
【Fターム(参考)】